JP2016194017A - ポリテトラフルオロエチレンの非水系分散体 - Google Patents
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Description
しかしながら、ポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーは、粒子同士の凝集力が強く、特に、油性溶剤中に微粒子径で低粘度、保存安定性に優れた形で分散することは難しいという課題があった。
この特許文献4に記載の技術は、PTFE粒子と、少なくとも1つのモノ又はポリオレフィン系不飽和油又は油混合物とからなり、該オレフィン系不飽和油の分子はPTFE(一次)粒子表面上で、ラジカル反応により共有結合/化学結合されており、かつその際にPTFE粒子表面と結合された油分子との間の永久的な電荷分離、及び油又は油混合物中でのPTFE粒子の微細分散が存在する長期安定な油−PTFE分散液であり、その製法は、持続性のペルフルオロ(ペルオキシ)ラジカルを有する変性されたPTFE(エマルション)ポリマーが、少なくとも1つのオレフィン系不飽和油と一緒に、混合され、かつ次に変性されたPTFE(エマルション)ポリマーが機械的応力にかけられる方法等により得られるものであり、製法が複雑であり、また、汎用のPTFE粒子を用いるものでなく、本発明とは、技術思想(構成及びその作用効果)が全く相違するものである。
また、この特許文献5の段落〔0057〕には、「石英砂、カーボンブラック、ダイヤモンド、トルマリン、ゲルマニウム、アルミナ、窒化ケイ素、体質顔料などの添加剤を単に含むものであってもよい。」旨が記載されているが、これらの成分は任意成分であり、これらの成分がフルオロポリマー非水系分散液において、どのような作用効果等を発揮するかについての記載や示唆等は全くなく、しかも、文献5においては、実施例などでその効果等を実証しているものでない。
従って、上記特許文献5は、本発明の近接技術を開示するものであるが、当該特許文献5と本発明とは技術思想(構成及びその作用効果)が相違するものである。
(1) 少なくとも、ポリテトラフルオロエチレンと、微粒子セラミックスと、含フッ素基と親油性基を含有するフッ素系添加剤と、を含むことを特徴とするポリテトラフルオロエチレンの非水系分散体。
(2) 前記ポリテトラフルオロエチレンは、一次粒子径が1μm以下のポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーであることを特徴とする上記(1)に記載のポリテトラフルオロエチレンの非水系分散体。
(3) 前記微粒子セラミックスが、B、Na、Mg、Al、Si、P、K、Ca、Tiのうちのいずれかの元素を含むことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のポリテトラフルオロエチレンの非水系分散体。
(4) 前記微粒子セラミックスが、Al2O3、SiO2、CaCO3、ZrO2、SiC、Si3N4、ZnOのうちのいずれかの無機化合物からなることを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれか1項に記載のポリテトラフルオロエチレンの非水系分散体。
(5) 前記セラミックス粒子が、表面処理されていることを特徴とする上記(1)乃至(4)のいずれか1項に記載のポリテトラフルオロエチレンの非水系分散体。
本発明のポリテトラフルオロエチレンの非水系分散体は、少なくとも、ポリテトラフルオロエチレンと、微粒子セラミックスと、含フッ素基と親油性基を含有するフッ素系添加剤と、を含むことを特徴とするものである。
このようなPTFEマイクロパウダーは、乳化重合法により得られるものであり、例えば、ふっ素樹脂ハンドブック(黒川孝臣編、日刊工業新聞社)に記載されている方法など、一般的に用いられる方法により得ることができる。そして、前記乳化重合により得られたPTFEは、凝集・乾燥して、一次粒子径が凝集した二次粒子として微粉末として回収されるものであるが、一般的に用いられている各種微粉末の製造方法を用いることができる。
このPTFEの一次粒子径が1μm以下のものを用いると、非水系中で沈降が抑制され、安定して分散することとなり、好ましい。また、上記平均粒子径の下限値は、低ければ低い程良好であるが、製造性、コスト面等から、0.05μm以上が好ましい。
なお、本発明におけるPTFEの一次粒子径は、マイクロパウダーの重合段階においてレーザー回折・散乱法や動的光散乱法などによって得られた値を指し示すものであるが、乾燥して粉体状態にしたマイクロパウダーの場合には、一次粒子同士の凝集力が強く、容易に一次粒子径をレーザー回折・散乱法や動的光散乱法などによって測定することが難しいため、画像イメージング法によって得られた値を指し示すものであってもよい。測定装置としては、例えば、FPAR−1000(大塚電子株式会社製)による動的光散乱法や、マイクロトラック(日機装株式会社製)によるレーザー回折・散乱法や、マックビュー(株式会社マウンテック社製)による画像イメージング法などを挙げることができる。
このPTFEの含有量を5質量%以上とすることにより、油性溶剤などの非水系の量を良好にでき、極端な粘度の低下を抑制でき、PTFEの微粒子の沈降も抑制でき、樹脂などの材料と混合した際に油性溶剤などの非水系の量が最適化しやすくなり、例えば、溶剤の除去に時間を要することがなくなるなどのメリットがある。一方、70質量%以下とすることにより、PTFE同士の凝集を抑制でき、微粒子の状態を安定的に、流動性を有する状態で維持することができることとなる。
用いることができる微粒子セラミックスとしては、特に限定されないが、少なくとも、B、Na、Mg、Al、Si、P、K、Ca、Tiのうちのいずれか1種以上の元素を含むものが好ましく、これらの元素を含む酸化物系、水酸化物系、炭化物系、炭酸塩系、窒化物系、ハロゲン化物系、リン酸塩系から選ばれる少なくとも1種の微粒子セラミックスが挙げられる。
特に、好ましい微粒子セラミックスとしては、更なる非水系分散体の分散安定性、他の成分との相性、入手性、作業性などの点から、Al2O3、SiO2、CaCO3、ZrO2、SiC、Si3N4、ZnOのうちから選ばれる少なくとも1種の無機化合物からなるものが望ましい。
この微粒子セラミックスの一次粒子径としては、レーザー回折・散乱法、動的光散乱法、画像イメージング法などによって測定される体積基準の平均粒子径(50%体積径、メジアン径)を0.5μm以下のものを用いることにより、非水系中で安定に分散し、PTFEの非水系分散体の分散安定性を更に高度に維持する上で好ましく、望ましくは、0.3μm以下、さらに望ましくは、0.1μm以下とすることにより、さらに非水系分散体の分散安定性に優れたものとなる。また、上記一次粒子径の下限値は、低ければ低い程良好であるが、製造性、コスト面等から、0.02μm以上が好ましい。
なお、本発明における微粒子セラミックスの一次粒子径の測定において、セラミックス同士の凝集力が強く、容易に一次粒子径をレーザー回折・散乱法や動的光散乱法などによって測定することが難しい場合は、画像イメージング法によって得られた値を指し示すものであってもよい。測定装置としては、例えば、FPAR−1000(大塚電子株式会社製)による動的光散乱法や、マイクロトラック(日機装株式会社製)によるレーザー回折・散乱法や、マックビュー(株式会社マウンテック社製)による画像イメージング法などを挙げることができる。
この含有量が0.01質量%未満では、微粒子セラミックスの含有効果を発揮することができず、PTFEの非水系分散体の分散安定性を更に高度に維持することができない。一方、5質量%超過では、セラミックス粒子の持つ特性が強く出るようになり、PTFEの非水系分散体の安定性を阻害したり、各種の樹脂材料やゴム、接着剤、潤滑剤やグリース、印刷インクや塗料などに添加した際に、かえって性能を落とすこともあるため好ましくない。
これらのセラミックス微粒子は、あらかじめPTFEの非水系分散体に用いる溶剤(分散媒)中に分散してから、PTFEの分散前、分散中、分散後に添加することも可能であるし、PTFEパウダーとともに、セラミックス微粒子を調合して、一緒に分散することもできるものである。
少なくとも含フッ素基と親油性基を有するフッ素系添加剤を用いることにより、分散媒となる非水系となる油性溶剤の表面張力を低下させ、PTFE表面に対する濡れ性を向上させてPTFEの分散性を向上させると共に、含フッ素基がPTFE表面に吸着し、親油性基が分散媒となる油性溶剤中に伸長し、この親油性基の立体障害によりPTFEの凝集を防止して分散安定性を更に向上させるものとなる。
含フッ素基としては、例えば、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルケニル基などが挙げられ、親油性基としては、例えば、アルキル基、フェニル基、シロキサン基などの1種又は2種以上が挙げられ、親水性基としては、例えば、エチレンオキサイドや、アミノ基、ケトン基、カルボキシル基、スルホン基などの1種又は2種以上が挙げられる。
具体的に用いることできるフッ素系添加剤としては、パーフルオロアルキル基含有のサーフロンS−611などのサーフロンシリーズ(AGCセイミケミカル社製)、メガファックF−555、メガファックF−558、メガファックF−563などのメガファックシリーズ(DIC社製)、ユニダインDS−403Nなどのユニダインシリーズ(ダイキン工業社製)、610FM、730FMなどのフタージェントシリーズ(ネオス社製)などを用いることができる。
これらのフッ素系添加剤は、用いるPTFEと油性溶剤などの非水系溶媒及び微粒子セラミックスの種類によって、適宜最適なものが選択されるものであるが、1種類、または2種類以上を組み合わせて用いることも可能である。
この含有量がPTFEの質量に対して、0.1質量%未満では、PTFEのマイクロパウダー表面を充分に油性溶剤に濡らすことができず、一方、50質量%超過では分散体の泡立ちが強くなって分散の効率が低下し、分散体自体の取扱いやその後に樹脂材料などと混ぜ合わせる際にも不具合を生じることなどがあり、好ましくない。
例えば、ノニオン系、アニオン系、カチオン系などの界面活性剤やノニオン系、アニオン系、カチオン系などの高分子界面活性剤などを挙げることができるが、これらに限定されることなく、使用することができる。
本発明の上記非水系分散体に用いる溶剤(分散媒)の含有量は、上記PTFE、フッ素系添加剤の残部となるものである。
用いることができる消泡剤としては、シリコーン系やフルオロシリコーン系のエマルジョン型、自己乳化型、オイル型、オイルコンパウンド型、溶液型、粉末型、固形型などがあるが、用いる溶剤(分散媒)との組合せで、適宜最適なものが選択されることになる。特に、非水系の溶剤(分散媒)として用いる溶剤とPTFEとの界面よりも、溶剤と空気との界面に存在させるために、例えば、親水性や水溶性のシリコーン系消泡剤を用いることが好ましいが、これらに限定されることなく、用いることができるものである。消泡剤の含有量は、PTFEの含有量(濃度)等により変動するものであるが、分散体全量に対して、好ましくは、有効成分として1質量%以下である。
すなわち、少なくとも含フッ素基と親油性基を有するフッ素系添加剤を用いることにより、分散媒となる非水系の溶剤の表面張力を低下させ、PTFE表面に対する濡れ性を向上させてPTFEの分散性を向上させると共に、含フッ素基がPTFE表面に吸着し、親油性基が分散媒となる溶剤中に伸長し、この親油性基の立体障害によりPTFEの凝集を防止して分散安定性を更に向上させる。更に、微粒子セラミックスの含有により、PTFE粒子同士の接触を阻害し、また流動性を高めることから、フィルター通液性、保存安定性に優れ、長期保存後でも再分散性に優れたものになるものと推測される。
したがって、本発明のPTFEの非水系分散体は、各種の樹脂材料やゴム、接着剤、潤滑剤やグリース、印刷インクや塗料などに添加した際にも均一に混合させることができるものとなる。例えば、本発明のPTFEの非水系分散体は、カラーフィルターやブラックマトリクスなどのフォトレジスト、スクリーン印刷レジストなどのレジスト材料に添加することにより、また、電子機器の基板や封止材料として広く用いられているエポキシ樹脂材料中に添加することにより、更なる低誘電率化、低誘電正接化を図ることができるので、レジスト材料添加用、エポキシ樹脂材料添加用に好適に用いることができる。
下記表1に示す配合処方(各種PTFEマイクロパウダー、微粒子セラミックスとして炭酸カルシウム微粒子、酸化ケイ素微粒子、フッ素系添加剤として含フッ素基・親油性基含有オリゴマー、非水系の分散媒としてメチルエチルケトン、ジメチルホルムアミドなど)によりPTFEの非水系分散体を作製した。作製にあたっては、非水系溶媒中にフッ素系添加剤を充分に攪拌溶解した後、PTFEと微粒子セラミックス(比較例においてはPTFEのみ)を添加して、さらに攪拌混合を行った。
上記のようにして得られたPTFEの混合液を、横型のビーズミルを用いて、0.3mm径のジルコニアビーズにて分散を行い、実施例1〜5及び比較例1〜2の各PTFEの非水系分散体を得た。なお、実施例1〜5及び比較例1〜2の各非水系分散体のカールフィッシャー法による水分量を測定したところ、20000ppm以下であることを確認した。
得られたPTFEの非水系分散体の評価としては、分散後の平均粒子径と粘度の測定、具体的には、各分散体におけるPTFEの平均粒子径(nm)をFPAR−1000(大塚電子社製)で測定し、また、各粘度(mPa・s、25℃)をE型粘度計により測定した。また、得られたPTFEの非水系分散体を蓋付きガラス容器に収容した後、1ヶ月室温(25℃)にて保管後の沈降物と再分散性について下記評価方法により評価を行った。
これらの結果を下記表1に示す
保管後のPTFEの非水系分散体の沈降物の有無などを目視により官能評価〔沈降物なし(「なし」と略する)、沈降物が少しあり(「少」と略する)、沈降物が多くあり(「多」と略する)〕した。
得られた各PTFEの非水系分散体を、蓋付きガラス容器(30ml、以下同様)に入れ、25℃、1ヶ月保存後の再分散性を下記評価基準で評価した。
評価基準:
◎:容易に再分散する。
○:再分散する。
△:再分散にやや撹拌を要する。
×:再分散させるのに充分な攪拌を要する。
評価方法としては、実施例1〜3と比較例1については、φ25mmのメンブレンフィルター(孔径5μm)に、100kPaの圧力をかけて1分間加圧した場合のPTFEの非水系分散体の通液重量を測定した。また、実施例4及び5と比較例2については、φ13mmのメンブレンフィルター(孔径5μm)に、100kPaの圧力をかけて1分間加圧した場合のPTFEの非水系分散体の通液重量を測定した。
これらの結果を下記表2に示す。
各実施例及び比較例を個別的にみると、実施例1〜3は、比較例1よりも粘度が高くなっているものの、安定性の高い分散体となった。また、実施例2及び3はフッ素系添加剤の量を減量したにも拘らず、安定性やフィルター通液性が良い分散体となった。さらにまた、実施例4及び5は比較例2とほぼ同粘度であり、安定性も高い分散体であった。
次に、上記表2から明らかなように、実施例1〜3のフィルター通液重量は、比較例1に比べて多く、流動性が良くなってフィルターの目詰まりがしにくくなっていることが確認された。また、実施例4及び5も比較例2に比べてフィルター通液重量が多くなっており、流動性が良くなってフィルターの目詰まりがしにくくなっていることが確認された。
これらを綜合的に勘案すると、本発明のPTFEの非水系分散体は、微粒子径で低粘度、保存安定性に優れており、長期保存後でも再分散性に優れ、流動性が良くなってフィルターの目詰まりもなく、しかも、各種の樹脂材料やゴム、接着剤、潤滑剤やグリース、印刷インクや塗料などに添加した際にも均一に混合させることができることが判った。
Claims (5)
- 少なくとも、ポリテトラフルオロエチレンと、微粒子セラミックスと、含フッ素基と親油性基を含有するフッ素系添加剤と、を含むことを特徴とするポリテトラフルオロエチレンの非水系分散体。
- 前記ポリテトラフルオロエチレンは、一次粒子径が1μm以下のポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーであることを特徴とする請求項1に記載のポリテトラフルオロエチレンの非水系分散体。
- 前記微粒子セラミックスが、B、Na、Mg、Al、Si、P、K、Ca、Tiのうちのいずれかの元素を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のポリテトラフルオロエチレンの非水系分散体。
- 前記微粒子セラミックスが、Al2O3、SiO2、CaCO3、ZrO2、SiC、Si3N4、ZnOのうちのいずれかの無機化合物からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のポリテトラフルオロエチレンの非水系分散体。
- 前記セラミックス粒子が、表面処理されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のポリテトラフルオロエチレンの非水系分散体。
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