JP6801474B2 - 撥水撥油膜 - Google Patents

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Description

本発明は、撥水性および撥油性に優れた撥水撥油膜に関する。
撥水性または撥油性を付与するために、基材の表面に撥水膜または撥油膜が設けられる。例えば、特許文献1には、ポリジメチルシロキサンを骨格とし、アルコキシ基と水酸基とを含む架橋基を有するポリオール樹脂膜が記載されている。また、特許文献2には、フルオロアルキルシランを含むポリジメチルシロキサン膜が記載されている。また、特許文献3には、アクリル樹脂等の樹脂層と、疎水性粒子と金属アルコキシドの混合物からなる撥水層とを積層した積層膜が記載されている。
特開2010−248468号公報 特開2006−144019号公報 特開2013−208818号公報
特許文献2に記載の膜は、ポリジメチルシロキサンにフルオロアルキルシランを混合させることによって高い撥水性と撥油性を得ている。しかしながら、フルオロアルキルシランはフッ素化合物であり、環境蓄積性が高いため、膜の製造時や廃棄時にフッ素樹脂が環境に蓄積し、汚染の原因となり得るという課題がある。特許文献3の積層膜では、撥水層に含まれる金属アルコキシドが撥水層の表面に露出した場合に撥水性が低下するおそれがある。また、積層膜の樹脂層に用いられている樹脂はいずれも撥油性が低いため、撥水層に欠陥が生じて油が樹脂層に触れた場合に、樹脂層が溶解する可能性があり、耐久性が不十分であるという課題がある。
上記に鑑み、本発明者らは、フッ素樹脂よりも環境負荷が低い材料を用いて、撥水性および撥油性に優れ、耐久性が高い撥水撥油膜を提供することを目的とする。
本発明は、シリコン原子に結合する側鎖基R1にフッ素原子を含まないシリコーン(T2m+6(m≧1)構造のオルガノシルセスキオキサンを除く)を含む樹脂層と、シリコン原子に結合する炭化水素基R2を有するT2m+6(m≧1)構造のオルガノシルセスキオキサンとを含み、前記オルガノシルセスキオキサンの少なくとも一部は、前記樹脂層の表面に露出している撥水撥油膜を提供する。
本発明の撥水撥油膜では、シリコン原子に結合する炭化水素基R2を有するT2m+6(m≧1)構造のオルガノシルセスキオキサンによって、高い撥水性と撥油性を得ることができる。オルガノシルセスキオキサンの少なくとも一部は、樹脂層の表面に露出しているため、オルガノシルセスキオキサンの有する高い撥水性と撥油性を有効に活用できる。また、本発明の撥水撥油膜では、樹脂層によって、基材と良好に密着するとともにオルガノシルセスキオキサンを保持するため、剥がれにくく、耐久性に優れている。さらには、本発明の撥水撥油膜では、樹脂層として用いているシリコーンは、T2m+6(m≧1)構造のオルガノシルセスキオキサンほどではないものの、撥水性と撥油性を有しているため、万一、水や油が樹脂層に触れた場合に、樹脂層が溶解する可能性は低く、この点においても耐久性に優れている。また、本発明の撥水撥油膜では、シリコーンおよびオルガノシルセスキオキサンのいずれもフッ素原子を含む官能基を有していないため、膜の製造時や廃棄時における環境負荷が低く、汚染の原因となりにくい。すなわち、本発明によれば、フッ素樹脂よりも環境負荷が低い材料を用いて、撥水性および撥油性に優れ、耐久性が高い撥水撥油膜を提供することができる。
オクタアルキルシルセスキオキサン(なお、オクタメチルシルセスキオキサンの場合、R2はメチル基である)を示す図である。 オルガノシルセスキオキサンのT構造を示す図である。 オルガノシルセスキオキサンのT10構造を示す図である。 オルガノシルセスキオキサンのT12構造を示す図である。 本発明に係る撥水撥油膜の一例を示す図である。 実施例に係る樹脂層の前駆体溶液の塗布について説明する図である。 実施例の撥水撥油膜の表面の50倍の光学顕微鏡像である。 実施例の撥水撥油膜の表面の100倍の光学顕微鏡像である。 実施例の撥水撥油膜の表面の200倍の光学顕微鏡像である。 実施例の撥水撥油膜の表面の400倍の光学顕微鏡像である。 プローブ液の表面張力γと静的接触角θとの関係を示す図である。 条件1の試料の水滴付着試験の様子を示す図であり、水滴の付着前を示している。 条件1の試料の水滴付着試験の様子を示す図であり、水滴が試料に接した時点を示している。 条件1の試料の水滴付着試験の様子を示す図であり、水滴を試料から引き離す直前を示している。 条件1の試料の水滴付着試験の様子を示す図であり、水滴を試料から引き離した後を示している。 条件2の試料の水滴付着試験の様子を示す図であり、水滴の付着前を示している。 条件2の試料の水滴付着試験の様子を示す図であり、水滴が試料に接した時点を示している。 条件2の試料の水滴付着試験の様子を示す図であり、水滴を試料から引き離す直前を示している。 条件2の試料の水滴付着試験の様子を示す図であり、水滴を試料から引き離した後を示している。 条件3の試料の水滴付着試験の様子を示す図であり、水滴の付着前を示している。 条件3の試料の水滴付着試験の様子を示す図であり、水滴が試料に接した時点を示している。 条件3の試料の水滴付着試験の様子を示す図であり、水滴を試料から引き離す直前を示している。 条件3の試料の水滴付着試験の様子を示す図であり、水滴を試料から引き離した後を示している。 本発明に係る撥水撥油膜の一例を示す図である。
本発明の撥水撥油膜は、シリコン原子に結合する側鎖基R1にフッ素原子を有さないシリコーン(T2m+6(m≧1)構造のオルガノシルセスキオキサンを除く)を含む樹脂層と、シリコン原子に結合する炭化水素基R2を有するT2m+6(m≧1)構造のオルガノシルセスキオキサンとを含む。この撥水撥油膜では、オルガノシルセスキオキサンの少なくとも一部は、樹脂層の表面に露出している。このため、オルガノシルセスキオキサンの有する高い撥水性と撥油性を有効に活用できる。
シリコーンは、下記式(1)に示すシロキサン結合を主骨格とする有機化合物である。シリコーンは、一般に、シラン類を加水分解し、生成したシラノールを脱水縮合することによって製造することができるオリゴマー、ポリマーであり、その多くが市販されている。シリコーンは、多くの産業分野で広く使用されており、特に、その安全性に対する評価を得て、食品添加物、食品用器具類、化粧品、医薬器具等への使用も必要な認可を得て、幅広く応用されている。シリコーンは常温で固体または液体として存在するものを好適に使用することができる。なお、シリコン原子に結合する2つの側鎖基R1の構造は、同一であってもよいし、相違していてもよい。また、シロキサン結合の構造単位毎に、側鎖基R1が相違していてもよい。
上記式(1)において、R1は、炭化水素基等の疎水基であることが好ましい。シリコーンは、側鎖基R1としてC2n+1(n≧1)を含むことが好ましく、側鎖基R1としてメタルオキシド基を含むことがより好ましい。
上記式(1)において、R1は、その一部に親水基を含んでいてもよい。例えば、基材との密着性を向上させるために、基材と親和性が高い官能基を含んでいてもよい。具体的には、例えば、金属基材との親和性を向上させるために、R1としてメタルオキシド基(−OM:Mは金属)等を含んでいてもよい。この場合、Mは、金属基材と親和性が高い金属元素であることが好ましく、金属基材に含まれている金属元素であることが特に好ましい。
本発明者は、撥水性および撥油性が高いシリコーンを選定するに際して、ハンセン溶解度パラメータを用いることが有効であることを見出した。ハンセン溶解度パラメータは、Hildebrandによって正則溶液理論から導かれる溶解度パラメータを分散項δ、分極項δ、水素結合項δの3成分に分割したものである。ハンセン溶解度パラメータの分散項δ、分極項δ、水素結合項δが小さいほど、その物質は、撥水性が高いことを意味する。また、ハンセン溶解度パラメータ値が近い溶媒が少なくなるほど、その物質と親和性が高い関係にある溶媒が少なくなる。
ハンセン溶解度パラメータの値は文献に掲載されているものを使用してもよいし、市販のハンセン溶解度パラメータ計算ソフト(例えば、HSPiP:Hansen Solubility Parameters in Practice等)によって計算されたものを使用してもよい。
下記の表1に、本発明において樹脂層の材料として好適に使用できるシリコーンの具体例と、そのハンセン溶解度パラメータとを示す。なお、表1に示す数値の単位はMPa1/2である。また、表1のハンセン溶解度パラメータの値は、文献値(出典:Hansen Solubility Parameters:A user’s handbook,2nd ed.,CRC Press.(2007))を示している。シリコーンのハンセン溶解度パラメータは、分散項δが10MPa1/2以上かつ15MPa1/2以下であり、分極項δが0MPa1/2以上かつ5MPa1/2以下であり、水素結合項δが0MPa1/2以上かつ5MPa1/2以下であることが好ましく、分散項δが11MPa1/2以上かつ13MPa1/2以下であり、分極項δが0MPa1/2以上かつ3MPa1/2以下であり、水素結合項δが0MPa1/2以上かつ1MPa1/2以下であることが特に好ましい。本発明では、ハンセン溶解度パラメータの分散項δ、分極項δ、水素結合項δが上記をみたす値であるシリコーンを用いた場合に、特に撥水性および撥油性に優れた撥水撥油膜を得ることができる。
オルガノシルセスキオキサンは、3官能性シランを加水分解することで得られる(R2SiO1.5)nの構造を持つネットワーク型ポリマー、または多面体クラスターである。オルガノシルセスキオキサンの一例として、図1に、オクタメチルシルセスキオキサンを示す。また、T2m+6(m≧1)構造の多面体クラスターの一例として、図2〜4に、T構造、T10構造、T12構造を示す。限定されないが、オルガノシルセスキオキサンとしては、図2に示すT構造であることが好ましい。
オルガノシルセスキオキサンの炭化水素基R2は、一部または全部が同一であってもよいし、互いに相違していてもよい。炭化水素基R2は、C2k+1(k≧1)で示されるアルキル基であることが好ましく、メチル基であることが特に好ましい。オルガノシルセスキオキサンの撥水性および撥油性をより高め、ひいては、撥水撥油膜の撥水性および撥油性をより高めることができる。
撥水性および撥油性が高いオルガノシルセスキオキサンを選定するに際して、ハンセン溶解度パラメータを用いてもよい。本発明に係るオルガノシルセスキオキサンのハンセン溶解度パラメータは、分散項δが10MPa1/2以上かつ15MPa1/2以下、分極項δが0MPa1/2以上かつ5MPa1/2以下、水素結合項δが0MPa1/2以上かつ5MPa1/2以下であることが好ましい。
オルガノシルセスキオキサンは、樹脂層内に分散されていてもよいし、撥水撥油層として樹脂層の表面に積層されていてもよい。図5に示すように、撥水撥油膜1が樹脂層11と撥水撥油層10との積層体であり、基材12の表面に樹脂層11が形成され、樹脂層11の表面にオルガノシルセスキオキサン101を主成分とする撥水撥油層10が積層されている場合には、オルガノシルセスキオキサンの有する高い撥水性と撥油性を有効に活用できるとともに、樹脂層によって、基材と良好に密着するとともにオルガノシルセスキオキサンを保持する効果をより顕著に得ることができ、特に好ましい。
基材として、耐水性研磨紙♯800で表面を研磨した炭素鋼S−50Cを材料とする20mm角かつ厚さ5mmの準備した。
次に、基材の表面にシリコーン樹脂層を形成した。まず、信越化学工業株式会社製の信越シリコーンSIM−360(主剤)を5.0wt%と、CAT−360(硬化剤)を0.5wt%含むヘキサン溶液を調製し、樹脂層の前駆体溶液とした。図6に示すように、スプレーガン80を用いて、基材92の表面中心位置921に対して上方にθ=45°、距離L=10cmの位置から上記の前駆体溶液5.0mLを噴射して塗布した。なお、前駆体溶液に含まれるシリコーンのHSPは、分散項δが12.3MPa1/2以下であり、分極項δが0。4MPa1/2であり、水素結合項δが0。3MPa1/2であった。 また、このシリコーン樹脂層の前駆体は、上記式(1)における側鎖基R1がメチル基であるポリジメチルシロキサンの一部がアルコキシ基(−OCH、−OCHCH、-OCH(CH)に置換された構造を有している。このため、前駆体からシリコーン樹脂層が合成される際に、前駆体の側鎖基R1の一部に含まれるアルコキシ基が、基材表面の酸化膜、又は水酸基と縮合反応し、−OM−結合(Mは基材に含まれる金属元素)を構成する。このため、シリコーン樹脂層は、基材と良好に密着することができる。
次に、樹脂層の表面に撥水撥油層を形成した。オルガノシルセスキオキサンとして、図1に示す構造を有するオクタメチルシルセスキオキサン(Sigma−Aldrich製、品番526835)を用いた。オクタメチルシルセスキオキサンのハンセン溶解度パラメータは、分散項δが10.6MPa1/2、分極項δが2.7MPa1/2、水素結合項δが2.9MPa1/2であり、ハンセン溶解球の相互作用半径は、4.5MPa1/2未満であった。このオクタメチルシルセスキオキサンを濃度が0.01g/mLとなるようにヘキサンに分散させ、撥水撥油層の分散液を調製した。なお、オクタメチルシルセスキオキサンは粒子状であり、ヘキサンには不溶である。
ハンセン溶解球の相互作用半径は、他の物質との相溶性の指標であり、ハンセン溶解球の相互作用半径が小さいほど他の物質との相溶性が小さい。オクタメチルシルセスキオキサンのハンセン溶解球の相互作用半径が4.5MPa1/2未満と小さいことは、オクタメチルシルセスキオキサンに対して親和性を示す物質が少ないことを意味しており、高い撥水撥油性が期待される。
表2に、オクタメチルシルセスキオキサン(OMS)と、樹脂層に用いたシリコーン、および代表的な樹脂(PP:ポリプロピレン。PE:ポリエチレン、PS:ポリスチレン、PA:ポリアセチレン)のHSP(単位はMPa1/2である)を示した。さらに、樹脂層に用いたシリコーン等については、オクタメチルシルセスキオキサンとの相対的エネルギー差:REDも表2に併記した。なお、REDは、ハンセン空間上のHSP間の距離Raと相互作用半径Roを用いて、RED=Ra/Roと表すことができる。他の樹脂と比較して、樹脂層に用いたシリコーンは、オクタメチルシルセスキオキサンとHSPが近く、REDが小さい。これは、樹脂層に用いたシリコーンは、他の樹脂と比較してオクタメチルシルセスキオキサンの親和性が高いことを示しており、樹脂層は、オクタメチルシルセスキオキサンを効果的に保持することができる。
図6と同様に、上記の分散液5.0mLをスプレーガン80を用いて、樹脂層形成後の基材92の表面中心位置921に対して噴射して塗布した。その後、基材を150℃で1時間熱処理した。これによって、図5に示すように、樹脂層11と撥水撥油層10との積層体である撥水撥油膜1を基材上に形成した。
成膜した撥水撥油膜の表面の光学顕微鏡像を図7〜10に示す。図7〜10は、同一の試料に対して撮像した倍率が50倍、100倍、200倍、400倍の画像である。図7〜10に示すように、粒子状のオクタメチルシルセスキオキサンが撥水撥油膜の表面を覆ってほぼ均質に分散していることがわかった。
(静的接触角の測定)
水または有機溶媒をプローブ液として用い、成膜した撥水撥油膜の表面に滴下し、撥水撥油膜に対するプローブ液の静的接触角を測定した。なお、プローブ液として用いた有機溶媒は、BN:ブロモナフタレン、DIM:ジヨードメタン、EG:エチレングリコール、BtOH:ブタノール、EtOH:エタノールである。測定は、試料の表面の5箇所に液滴を滴下して測定値を5点採取し、その平均値を測定結果として表3に示した。また、比較例として、樹脂層のみの膜、従来公知の膜としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)板の表面の静的接触角を測定し、併記した。なお、表3の単位は、°(degree)である。
また、図11に、プローブ液の表面張力γと各試料の静的接触角θとの関係を示す。なお、各プローブ液の表面張力は、水::72.8mN/m、DIM: 50.8 mN/m、EG: 47.7mN/m、BN: 44.6mN/m、BtOH::25.4mN/m、EtOH::22.4mN/mである。表3および図11に示すように、γ が40mN/m以上のプローブ液については、試料1の静的接触角θは試料2および3よりも大きく、特に、プローブ液が水である場合には、著しく高い静的接触角を示した。すなわち、γ が40mN/m程度以上と比較的高い溶媒に対して、本実施例に係る撥水撥油膜は著しく高い撥水撥油性を示すことがわかった。
一方、γ が30mN/m以下のプローブ液については、試料1の静的接触角θは試料2と同程度であり、試料3よりもやや小さかったが、液滴形状を維持する程度の撥液性を示した。すなわち、γ が30mN/m程度以下と比較的低い溶媒に対しては、本実施例に係る撥水撥油膜は、フッ素樹脂であるPTFEと比較するとやや撥油性が低いものの、実用に足る程度の一定の撥油性を有することが分かった。本実施例によれば、フッ素を含まない環境負荷の低い材料を用いて、γ が30mN/m程度以下と比較的低い溶媒に対してもある程度の撥油性を有する撥水撥油膜を提供できる。
(耐熱性試験)
実施例1に係る撥水撥油膜を用いて、耐熱性試験を行った。条件1(試験前)、条件2(350℃〜370℃で1時間処理)、条件3(400℃〜420℃で1時間処理)の試料を準備し、各試料の表面について水滴の付着試験を行い、耐熱性評価の指標とした。水滴付着試験の様子をそれぞれ図12A〜12D,図13A〜13D,図14A〜14Dに示す。なお、各図の添え字Aは、水滴の付着前、添え字Bは水滴が試料に接した時点、添え字Cは水滴を試料から引き離す直前、添え字Dは、水滴を試料から引き離した後の画像であることを示している。また、各図の参照番号51はディスペンサ、参照番号52は水滴、参照番号531〜533はそれぞれ条件1〜3の試料表面を示している。また、下向きの矢印は水滴52を試料の表面に近づけている様子を示し、上向きの矢印は水滴52を試料の表面から遠ざけている様子を示している。
条件1の試料では、全ての測定点において図12Dに示すように水滴の付着は観察されず、著しく高い撥水性を示した。これに対して、条件2,3では、図13D,図14Dに示すように、水滴の付着は観察されなかったが、一部において、水滴の付着が観察された箇所もあった。水滴の付着が観察された点においては、水の静的接触角を測定し、その値は、条件2で146.1°、 条件3で128.3°であった。以上の結果より、本実施例の撥水撥油膜は、350℃〜420℃の熱履歴を受けても撥水性を維持でき、高い耐熱性を有していることが確認できた。
上記のとおり、本実施例の撥水撥油膜では、オルガノシルセスキオキサンとして、シリコン原子に結合する炭化水素基R2がメチル基であり、T構造を有するオクタメチルシルセスキオキサンを用いており、これによって、高い撥水性と撥油性を得ることができる。オクタメチルシルセスキオキサンの少なくとも一部は、樹脂層の表面に露出しているため、オクタメチルシルセスキオキサンの有する高い撥水性と撥油性を有効に活用できる。特に、γ が40mN/m程度以上と比較的高い溶媒に対しては、本実施例に係る撥水撥油膜は、著しく高い撥液性を示した。また、本実施例の撥水撥油膜は、350℃〜420℃の熱履歴を受けても撥水性を維持でき、高い耐熱性を有していることが確認できた。
また、本実施例の撥水撥油膜では、樹脂層を構成する材料として、上記式(1)における側鎖基R1がメチル基であるポリジメチルシロキサンの一部が、−OM−結合(Mは基材に含まれる金属元素)に置換された構造を有しているシリコーンを用いている。表2に示すように、このシリコーンは、オクタメチルシルセスキオキサンに対する親和性が高く、オルガノシルセスキオキサンを良好に保持する。また、このシリコーンの前駆体はアルコキシ基を有し、アルコキシ基が基材表面の酸化膜、又は水酸基と縮合反応して−OM−結合(Mは基材に含まれる金属元素)を構成し、基材と良好に密着することができる。すなわち、本実施例の撥水撥油膜は、樹脂層によって、基材と良好に密着するとともにオルガノシルセスキオキサンを保持するため、剥がれにくく、耐久性に優れている。また、このシリコーンは、オクタメチルシルセスキオキサンほどではないものの、撥水性と撥油性を有しているため、万一、水や油が樹脂層に触れた場合に、樹脂層が溶解する可能性は低く、この点においても耐久性に優れている。また、本実施例の撥水撥油膜は、フッ素樹脂であるPTFEと比較して同程度またはそれ以上の高い撥水撥油性を示し、高性能かつ環境負荷の低い撥水撥油膜を実現するものである。
本発明の撥水撥油膜は、図15に示すように、樹脂層211内にオルガノシルセスキオキサン201が混在する撥水撥油膜2であってもよい。オルガノシルセスキオキサン201の粒子の少なくとも一部が、撥水撥油膜2の表面21から露出しているため、撥水撥油膜2の表面は、オルガノシルセスキオキサン201に由来する高い撥水性および撥油性を有する。また、撥水撥油膜2の裏面22(基材12に接する面)側は樹脂層211で構成され、オルガノシルセスキオキサン201の粒子が露出していないため、撥水撥油膜2は、基材12の表面と良好に密着することができる。撥水撥油膜2は、例えば、基材12の表面に樹脂層211のみの層を形成した後、そのさらに表面に、オルガノシルセスキオキサン201の粒子と樹脂層211との混合層を形成することによって、作製することができる。また、さらに、図15に示す撥水撥油膜2の表面を図5に示すようにオルガノシルセスキオキサンを主成分とする撥水撥油層10によって被覆してもよい。撥水撥油膜2のように、樹脂層211の表面のみならず内部にもオルガノシルセスキオキサン201が存在していると、撥水撥油膜2の表面側が摩耗した場合に樹脂層211の内部のオルガノシルセスキオキサン201が表面に露出するため、摩耗によって著しく撥水性および撥油性が低下することが抑制できる。
1、2 撥水撥油膜
10 撥水撥油層
11、211 樹脂層
12 基材
101,201 オルガノシルセスキオキサン

Claims (4)

  1. シリコン原子に結合する側鎖基R1にフッ素原子を有さないシリコーン(T2m+6(m≧1)構造のオルガノシルセスキオキサンを除く)を含む樹脂層と、
    該樹脂層上に積層され、シリコン原子に結合する炭化水素基R2を有するT2m+6(m≧1)構造のオルガノシルセスキオキサンを含み、オルガノシルセスキオキサンの少なくとも一部表面に露出している撥水撥油層とを備え、
    該シリコーンのハンセン溶解度パラメータは、分散項δ が10MPa 1/2 以上かつ15MPa 1/2 以下であり、分極項δ が0MPa 1/2 以上かつ5MPa 1/2 以下であり、水素結合項δ が0MPa 1/2 以上かつ5MPa 1/2 以下であり、
    該オルガノシルセスキオキサンは、オクタメチルシルセスキオキサンである撥水撥油膜。
  2. 前記シリコーンは、側鎖基R1としてC2n+1(n≧1)を含む請求項1記載の撥水撥油膜。
  3. 前記シリコーンは、側鎖基R1としてメタルオキシド基を含む請求項1または2に記載の撥水撥油膜。
  4. 前記シリコーンは、側鎖基R1としてメチル基およびメタルオキシド基を含請求項1〜のいずれかに記載の撥水撥油膜。
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