以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(実施形態1)
図1に、本実施形態の電力変換装置1の回路構成図を示す。本実施形態の電力変換装置1は、インダクタL1、変換回路2、制御部3、トランス4、整流平滑回路5、電流検出部6、及び偏磁検出部7を備える。そして、電力変換装置1は、直流電源8の出力電圧を異なる電圧レベルに変換する絶縁型のDC−DCコンバータである。まず、図1を用いて、本実施形態の電力変換装置1の構成について説明する。
電力変換装置1は、直流電源8に電気的に接続され、直流電源8から入力電圧Viが印加される。電力変換装置1は、入力電圧Viが印加される入力端間に電気的に接続されたコンデンサC1を備えている。そして、このコンデンサC1と並列に、インダクタL1と変換回路2の直列回路が電気的に接続されている。
インダクタL1(リアクトル)は、昇圧用のコイルであり、入力電圧Viを昇圧して変換回路2に印加するために用いられる。
変換回路2は、フルブリッジ接続された4つのスイッチング素子(スイッチング素子Q1〜Q4)を備えており、スイッチング素子Q1〜Q4がオンとオフとを繰り返すことで直流電圧を交流電圧に変換するインバータ回路である。具体的には、スイッチング素子Q1及びスイッチング素子Q2の直列回路と、スイッチング素子Q3及びスイッチング素子Q4の直列回路とが並列に接続されている。スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q3との接続点がインダクタL1を介して直流電源8の高電位側に電気的に接続され、スイッチング素子Q2とスイッチング素子Q4の接続点が直流電源8の低電位側に電気的に接続されている。そして、スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2との接続点21、及びスイッチング素子Q3とスイッチング素子Q4との接続点22が、変換回路2の出力端を構成している。また、スイッチング素子Q1〜Q4のそれぞれは、エンハンスメント型のnチャネルMOSFET(Metal Oxide SemiconductorField Effect Transistor)で構成されている。なお、スイッチング素子Q1〜Q4は、MOSFETに限らず、IGBT(Insulated Gate BipolarTransistor)、バイポーラトランジスタ等の他の半導体素子で構成されていてもよい。
制御部3は、スイッチング素子Q1〜Q4それぞれのゲートに電気的に接続されており、スイッチング素子Q1〜Q4を個別に制御する。
トランス4は、一次巻線L11と二次巻線L12とを備える絶縁型の変圧器である。一次巻線L11は、変換回路2の出力端間(接続点21と接続点22との間)に電気的に接続されている。二次巻線L12は、整流平滑回路5の入力端間に電気的に接続されている。
整流平滑回路5は、整流回路51と、コンデンサC2とを備え、トランス4の二次側から出力される交流電圧を整流平滑する。
整流回路51は、フルブリッジ接続された4つのダイオード(ダイオードD1〜D4)を備えており、トランス4の二次側(二次巻線L12)から出力される交流電圧を全波整流する全波整流回路である。具体的には、ダイオードD1及びダイオードD2の直列回路と、ダイオードD3とダイオードD4の直列回路とが並列に接続されている。そして、ダイオードD1のアノードとダイオードD2のカソードとの接続点511、及びダイオードD3のアノードとダイオードD4のカソードの接続点512が、整流回路51(整流平滑回路5)の入力端を構成している。この整流回路51の入力端間(接続点511と接続点512との間)に、トランス4の二次巻線L12が電気的に接続されている。また、ダイオードD1とダイオードD3との接続点513、及びダイオードD2とダイオードD4との接続点514が、整流回路51の出力端を構成している。
コンデンサC2は、整流回路51の出力を平滑する平滑用のコンデンサであり、整流回路51の出力端間(接続点513と接続点514との間)に電気的に接続されている。このコンデンサC2の両端が整流平滑回路5の出力端を構成している。そして、コンデンサC2の両端間に整流回路51の出力を平滑した直流の出力電圧Voが生成される。また、コンデンサC2の両端間に負荷9が電気的に接続されている。この負荷9には出力電圧Voが印加される。
電流検出部6は、二次巻線L12に流れる電流(以降、二次電流I2という)を検出する電流センサであり、トランス4の二次巻線L12と、整流回路51の接続点512との間に設けられている。
偏磁検出部7は、フィルタ部71を備え、電流検出部6の検出結果に基づいてトランス4の偏磁を検出する。フィルタ部71は、抵抗、コンデンサ、オペアンプ等を用いたアナログのローパスフィルタ(積分回路)で構成されている。フィルタ部71は、電流検出部6の検出結果(二次電流I2の検出値)を積分し、積分結果を用いて単位期間(例えば、1周期の整数倍)当たりにおける二次電流I2の平均値を求める。すなわち、フィルタ部71は、電流検出部6の検出結果(二次電流I2の検出値)を平均化するように構成されている。なお、フィルタ部71は、二次電流I2の検出値を平均化する構成であれば、アナログのローパスフィルタに限定されない。例えば、フィルタ部71は、電流検出部6の検出結果をA/D変換して二次電流I2の平均値を求めるディジタルフィルタで構成されていてもよい。さらには、フィルタ部71は、アナログフィルタ及びディジタルフィルタを併用した構成であってもよい。
そして、制御部3は、フィルタ部71の出力(偏磁の検出結果)に基づいて、偏磁が解消されるようにスイッチング素子Q1〜Q4のデューティ比を調整(フィードバック制御)する。なお、偏磁検出、及びスイッチング素子Q1〜Q4のデューティ比の調整については後述する。
次に、制御部3によるスイッチング素子Q1〜Q4の制御について、図2に示す波形図を用いて説明する。図2は、スイッチング素子Q1〜Q4のオン・オフ状態、変換回路2の入力端間の電圧V1、インダクタL1に流れる電流I10、トランス4の一次巻線L11に流れる電流(以降、一次電流I1という)、トランス4の励磁電流Im、及び二次電流I2を示す。なお、図2は、偏磁が発生していない正常時の波形図である。また、以下の説明では、スイッチング素子Q1,Q4がオン、かつスイッチング素子Q2,Q3がオフのときにおける、一次電流I1の極性、及び一次巻線L11に印加される電圧の極性を「正」とする。また、スイッチング素子Q1,Q4がオフ、かつスイッチング素子Q2,Q3がオンのときにおける、一次電流I1の極性、及び一次巻線L11に印加される電圧の極性を「負」とする。また、接続点511から二次巻線L12を介して接続点512に向かって流れる二次電流I2の極性を「正」、接続点512から二次巻線L12を介して接続点511に向かって流れる二次電流I2の極性を「負」とする。
制御部3は、第1全オン期間T1、第1片オン期間T2、第2全オン期間T3、第2片オン期間T4それぞれの期間において、スイッチング素子Q1〜Q4を以下のように制御する。
第1全オン期間T1において、制御部3は、スイッチング素子Q1〜Q4の全てをオンする。スイッチング素子Q1〜Q4がオンされることによって、トランス4の一次巻線L11に印加される電圧がゼロになるので、一次巻線L11には励磁電流Imのみが流れ、二次電流I2がゼロとなる。また、スイッチング素子Q1〜Q4がオンされることで、インダクタL1に流れる電流I10が増大し、インダクタL1にエネルギーが蓄積される。
第1片オン期間T2において、制御部3は、スイッチング素子Q1及びスイッチング素子Q4をオンし、スイッチング素子Q2及びスイッチング素子Q3をオフする。すなわち、一次巻線L11には正極性の電圧(変換回路2の入力端間の電圧V1)が印加される。したがって、トランス4の一次側において、インダクタL1→スイッチング素子Q1→一次巻線L11→スイッチング素子Q4の経路で正極性の一次電流I1が流れる。これにより、トランス4の二次側において、二次巻線L12→ダイオードD1→コンデンサC2(負荷9)→ダイオードD4の経路で負極性の二次電流I2が流れる。また、第1片オン期間T2において、インダクタL1に蓄積されたエネルギーが放出されるので、一次巻線L11に印加される電圧(変換回路2の入力端間の電圧V1)は入力電圧Viよりも高くなる。
第2全オン期間T3において、制御部3は、スイッチング素子Q1〜Q4の全てをオンする。第1全オン期間T1と同様に、スイッチング素子Q1〜Q4がオンされることによって、トランス4の一次巻線L11に印加される電圧がゼロになるので、一次巻線L11には励磁電流Imのみが流れ、二次電流I2がゼロとなる。また、スイッチング素子Q1〜Q4がオンされることで、インダクタL1に流れる電流I10が増大し、インダクタL1にエネルギーが蓄積される。
第2片オン期間T4において、制御部3は、スイッチング素子Q1及びスイッチング素子Q4をオフし、スイッチング素子Q2及びスイッチング素子Q3をオンする。すなわち、一次巻線L11には負極性の電圧(変換回路2の入力端間の電圧V1)が印加される。したがって、トランス4の一次側において、インダクタL1→スイッチング素子Q3→一次巻線L11→スイッチング素子Q2の経路で負極性の一次電流I1が流れる。これにより、トランス4の二次側において、二次巻線L12→ダイオードD3→コンデンサC2(負荷9)→ダイオードD2の経路で正極性の二次電流I2が流れる。また、第2片オン期間T4において、インダクタL1に蓄積されたエネルギーが放出されるので、一次巻線L11に印加される電圧(変換回路2の入力端間の電圧V1)は入力電圧Viよりも高くなる。
上述した第1全オン期間T1、第1片オン期間T2、第2全オン期間T3、第2片オン期間T4で1周期を構成しており、第1全オン期間T1、第1片オン期間T2、第2全オン期間T3、第2片オン期間T4が順に繰り返される。
ここで、トランス4の励磁電流Imは、第1全オン期間T1、第1片オン期間T2、第2全オン期間T3、第2片オン期間T4すべての期間において一次巻線L11を流れており、一次巻線L11に印加される電圧の極性に応じて増減する。第1片オン期間T2では、一次巻線L11に正極性の電圧が印加されることによって励磁電流Imが増加し、第2片オン期間T4では、一次巻線L11に負極性の電圧が印加されることによって励磁電流Imが減少する。また、第1全オン期間T1、第2全オン期間T3では、負荷電流がゼロとなるので、一次電流I1に含まれる成分は励磁電流Imのみとなる。
次に、図3に示す波形図を用いて偏磁について説明する。図3は、偏磁が発生しているとき(トランス4に偏磁が発生していないとき)における一次電流I1、励磁電流Im、二次電流I2の波形図である。なお、図3において、正常時における励磁電流Im、二次電流I2を破線で示す。
偏磁が発生していない正常時では、励磁電流Imはゼロを中心に増減を繰り返し、第1全オン期間T1における励磁電流Imの絶対値と、第2全オン期間T3における励磁電流Imの絶対値とが同一となる。しかし、偏磁が発生した場合、励磁電流Imが正常時よりも正方向又は負方向に変化する。すなわち、偏磁発生時では、励磁電流Imに直流成分が生じる。図3に示す例では、励磁電流Imの直流成分がゼロよりも低くなる方向(負方向)に変化するような偏磁が発生しており、第1全オン期間T1における励磁電流Imの絶対値が、第2全オン期間T3における励磁電流Imの絶対値よりも大きくなっている。
偏磁が発生した場合、励磁電流Imが正常時に比べて正方向又は負方向に変化するので、第1片オン期間T2、第2片オン期間T4において、一次電流I1に含まれる励磁電流Imの割合が変化する。これにより、第1片オン期間T2、第2片オン期間T4において、トランス4の一次側から二次側に伝達されるエネルギーが増加又は減少するので、正常時に比べて二次電流I2が増加又は減少する。したがって、第1片オン期間T2における二次電流I2の絶対値と、第2片オン期間T4における二次電流I2の絶対値との間に差が生じる。図3に示す例では、正常時に比べて、第1片オン期間T2における二次電流I2の絶対値が大きくなり、第2片オン期間T4における二次電流I2の絶対値が小さくなっている。
そこで、偏磁検出部7は、二次電流I2に基づいて偏磁検出を行う。以下に、偏磁検出について具体的に説明する。
図3に示すように、トランス4に偏磁が発生していない正常時は、第1片オン期間T2における二次電流I2の絶対値と、第2片オン期間T4における二次電流I2の絶対値とが等しく直流成分は略ゼロとなる。一方、トランス4に偏磁が発生した場合、第1片オン期間T2における二次電流I2の絶対値と、第2片オン期間T4における二次電流I2の絶対値とに差が生じる。また、トランス4の偏磁発生の有無に関わらず、第1全オン期間T1、第2全オン期間T3における二次電流I2はゼロとなる。すなわち、トランス4に偏磁が発生していない正常時は二次電流I2に直流成分が発生しないが、トランス4に偏磁が発生した場合、二次電流I2に直流成分が発生する。そこで、本実施形態の偏磁検出部7は、電流検出部6の検出結果から二次電流I2の直流成分を抽出し、抽出した二次電流I2の直流成分に基づいてトランス4の偏磁を検出する。
フィルタ部71は、第1全オン期間T1、第1片オン期間T2、第2全オン期間T3、第2片オン期間T4すべての期間にわたって電流検出部6の検出結果の積分を継続して行うことで、二次電流I2の検出値を平均化する。これにより、フィルタ部71によって、二次電流I2の直流成分が抽出される。トランス4に偏磁が発生していない正常時は、二次電流I2の直流成分がゼロとなる。一方、トランス4に偏磁が発生した場合、二次電流I2に直流成分が発生し、偏磁方向(励磁電流Imが正常時に比べて変化した正負の方向)に応じてフィルタ部71の出力極性が正又は負となる。すなわち、フィルタ部71の出力が、トランス4の偏磁の有無を示すこととなる。そして、制御部3は、フィルタ部71の出力に基づいて、フィルタ部71の出力がゼロになるように、すなわち偏磁が解消されるようにスイッチング素子Q1〜Q4のデューティ比を調整することで偏磁量を低減させる。ここでいう偏磁量とは、正常時における励磁電流Imと、偏磁発生時における励磁電流Imとの差を示す。
例えば、励磁電流Imが正常時に比べて負の方向に変化する偏磁が発生した場合(図3参照)、制御部3は、第1片オン期間T2が現在よりも長くなり、第2片オン期間T4が現在よりも短くなるように、スイッチング素子Q1〜Q4のデューティ比を調整する。これにより、励磁電流Imの増加期間が長くなり減少期間が短くなるので、励磁電流Imが正の方向に変化し偏磁量が低減する。
また、励磁電流Imが正常時に比べて正方向に変化する偏磁が発生した場合、制御部3は、第1片オン期間T2が現在よりも短くなり、第2片オン期間T4が現在よりも長くなるようにスイッチング素子Q1〜Q4のデューティ比を調整する。これにより、励磁電流Imの増加期間が短くなり減少期間が長くなるので、励磁電流Imが負の方向に変化し偏磁量が低減する。
このように、偏磁検出部7は、フィルタ部71を用いて、第1全オン期間T1、第1片オン期間T2、第2全オン期間T3、第2片オン期間T4すべての期間にわたって二次電流I2を平均化することで二次電流I2の直流成分を抽出する。すなわち、本実施形態の電力変換装置1は、比較的短いデッドタイム(スイッチング素子の全オフ期間)よりも長い期間における二次電流I2を検出する。したがって、本実施形態の電力変換装置1は、比較的短いデッドタイム(スイッチング素子の全オフ期間)に二次電流を検出する従来構成に比べて、二次電流I2の検出が容易となる。そして、本実施形態の電力変換装置1は、検出した二次電流I2を平均化することによって、トランス4の偏磁を容易に検出することが可能となる。そして、偏磁発生時は、偏磁方向とは反対方向に励磁電流Imが変化するように、スイッチング素子Q1〜Q4のデューティ比が調整されるので、偏磁量を低減させることが可能となる。
さらに、本実施形態の電力変換装置1は、フィルタ部71を用いて二次電流I2の検出結果を平均化しており、二次電流I2の平均値に基づいて偏磁を検出している。偏磁の検出に二次電流I2の平均値を用いることによって、二次電流I2の検出精度、検出タイミングのばらつき等による二次電流I2の検出結果のばらつきが低減され、偏磁の検出精度を向上させることができる。
また、本実施形態の電力変換装置1は、直流電源8と変換回路2との間にインダクタL1を設け、デッドタイムの代わりにスイッチング素子Q1〜Q4の全てをオンする全オン期間(第1全オン期間T1、第2全オン期間T3)を設定している。したがって、第1全オン期間T1、第2全オン期間T3において、変換回路2のインピーダンスが低減することでインダクタL1に流れる電流I10が増加してエネルギーが蓄積される。そして、第1片オン期間T2、第2片オン期間T4において、インダクタL1に蓄積されたエネルギーが放出されるので、入力電圧Viが昇圧されて一次巻線L11に印加される。さらに、本実施形態の電力変換装置1は、スイッチング素子Q1〜Q4の全てがオフするデッドタイムがないので、直流電源8から電力変換装置1に電流が連続して供給される。上記構成により、電力変換装置1の電力変換効率が向上する。
なお、上述した例では、制御部3は、偏磁が検出されたときにスイッチング素子Q1〜Q4のデューティ比を調整することで第1片オン期間T2、第2片オン期間T4の両方を変化させているが、これに限らない。制御部3は、偏磁が検出されたときにスイッチング素子Q1〜Q4のデューティ比を調整することで第1片オン期間T2と第2片オン期間T4のいずれか一方のみを変化させてもよい。
また、本実施形態の電力変換装置1は、整流平滑回路5を備えるDC−DCコンバータで構成されているが、整流平滑回路5は必須の構成ではなく、例えば直流電源8から入力される直流電圧を交流電圧に変換するDC−ACインバータで構成されていてもよい。
以上説明したように、本実施例の電力変換装置1は、インダクタL1と、変換回路2と、制御部3と、トランス4と、電流検出部6と、偏磁検出部7とを備える。変換回路2は、ブリッジ接続された複数のスイッチング素子Q1〜Q4を有し、スイッチング素子Q1〜Q4がオンとオフとを繰り返すことで、直流電源8から入力される直流電圧を交流電圧に変換して出力する。インダクタL1は、変換回路2の入力端と直流電源8との間に電気的に接続される。制御部3は、スイッチング素子Q1〜Q4を制御する。トランス4は、一次巻線L11及び二次巻線L12を有し、一次巻線L11が変換回路2の出力端間に電気的に接続されている。電流検出部6は、二次巻線L12に流れる電流を検出する。偏磁検出部7は、電流検出部6の検出結果を平均化するフィルタ部71を有し、フィルタ部71の出力に基づいてトランス4の偏磁を検出する。
上記構成により、二次電流I2の検出が容易となり、検出した二次電流I2を平均化して二次電流I2の直流成分を求めることによって、トランス4の偏磁を容易に検出することが可能となる。
また、制御部3は、偏磁検出部7の検出結果に基づいてスイッチング素子Q1〜Q4のデューティ比を調整する。
上記構成により、偏磁発生時において、制御部3は、偏磁方向とは反対方向に励磁電流Imが変化するように、スイッチング素子Q1〜Q4のデューティ比を調整するので、偏磁量を低減させることが可能となる。
また、制御部3は、第1片オン期間T2(第1期間)と第2片オン期間T4(第2期間)との間の第1全オン期間T1、第2全オン期間T3(第3期間)において、スイッチング素子Q1〜Q4の全てをオンする。
上記構成により、第1全オン期間T1、第2全オン期間T3において、変換回路2のインピーダンスが低減することでインダクタL1に流れる電流I10が増加してエネルギーが蓄積される。そして、第1片オン期間T2、第2片オン期間T4において、インダクタL1に蓄積されたエネルギーが放出されるので、入力電圧Viが昇圧されて一次巻線L11に印加される。さらに、スイッチング素子Q1〜Q4の全てがオフするデッドタイムがないので、直流電源8から電力変換装置1に電流が連続して供給される。上記構成により、電力変換装置1の電力変換効率が向上する。
(実施形態2)
実施形態1の電力変換装置1は、第1全オン期間T1、第1片オン期間T2、第2全オン期間T3、第2片オン期間T4すべての期間にわたって二次電流I2を平均化する構成であるが、二次電流I2を平均化する期間は上記に限定しない。以下に、本実施形態の電力変換装置1Aについて説明する。本実施形態の電力変換装置1Aの回路構成図を図4、偏磁発生時における動作波形図を図5に示す。なお、実施形態1の電力変換装置1と同様の構成については、同一符号を付して説明を省略する。
本実施形態の電力変換装置1Aは、制御部3と偏磁検出部7Aとを一体に有するマイコン30(マイクロコンピュータ)を備えている。マイコン30は、プロセッサがメモリに格納されたプログラムを実行することにより制御部3、偏磁検出部7Aの機能を実現する。
偏磁検出部7Aは、フィルタ部71Aと区間制御部72Aと演算部73Aとを備えている。偏磁検出部7Aは、第1片オン期間T2、第2片オン期間T4それぞれを対象期間とし、対象期間内における電流検出部6の検出結果(二次電流I2)に基づいて、トランス4の偏磁を検出する。具体的には、対象期間である第1片オン期間T2の一部を第1有効区間T20、対象期間である第2片オン期間T4の一部を第2有効区間T40とする。偏磁検出部7Aは、第1有効区間T20における二次電流I2の平均値(区間平均値)と、第2有効区間T40における二次電流I2の平均値(区間平均値)とを用いた演算結果に基づいてトランス4の偏磁を検出する。
フィルタ部71Aは、ディジタルフィルタで構成されており、第1有効区間T20、第2有効区間T40それぞれにおける電流検出部6の検出結果(二次電流I2)をA/D変換し、二次電流I2の区間平均値を代表値として求める。第1有効区間T20は、第1片オン期間T2から第1開始期間T21と第1終了期間T22とを除いた区間である。第1開始期間T21とは、第1片オン期間T2が開始するタイミングから第1所定時間後までの期間である。第1終了期間T22とは、第1片オン期間T2が終了するタイミングの第2所定時間前から第1片オン期間T2が終了するまでの期間である。また、第2有効区間T40は、第2片オン期間T4から第2開始期間T41と第2終了期間T42とを除いた区間である。第2開始期間T41とは、第2片オン期間T4が開始するタイミングから第1所定時間後までの期間である。第2終了期間T42とは、第2片オン期間T4が終了するタイミングの第2所定時間前から第2片オン期間T4が終了するまでの期間である。
スイッチング素子Q1〜Q4がスイッチング動作を行った場合、トランス4の一次巻線L11が含まれる電流経路が急変し、トランス4の二次側にサージ電流が発生する、言い換えれば二次電流I2の絶対値が瞬間的に大きくなるおそれがある。具体的には、スイッチング素子Q1〜Q4のターンオフによってトランス4の一次側の電流経路が急変したときに、トランス4の漏れインダクタンスによりトランス4の二次側にサージ電流が発生するおそれがある。また、スイッチング素子Q1〜Q4のターンオンによってトランス4の一次側の電流経路が急変したときに、スイッチング素子Q1〜Q4の寄生容量によりトランス4の二次側にサージ電流が発生するおそれがある。したがって、第1全オン期間T1、第1片オン期間T2、第2全オン期間T3、第2片オン期間T4それぞれが開始したときにトランス4の二次側にサージ電流が発生する(二次電流I2の絶対値が瞬間的に大きくなる)おそれがある。
サージ電流による二次電流I2の電流値の変化が収まるまでの期間は、トランス4の特性(例えば漏れインダクタンス)によって変動する。本実施形態では、トランス4の特性、サージ電流による二次電流I2の電流値の変化が収まるまでの時間の計測結果等に基づいて、第1開始期間T21、第2開始期間T41の時間長さが設定される。本実施形態における第1開始期間T21は、第1片オン期間T2が開始してから、サージ電流による二次電流I2の電流値の変化が収まるまでの期間よりも長い期間(時間長さ)に設定されている。また、第2開始期間T41は、第2片オン期間T4が開始してから、サージ電流による二次電流I2の電流値の変化が収まるまでの期間よりも長い期間(時間長さ)に設定されている。なお、第1所定時間の長さと第2所定時間の長さとは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。すなわち、第1開始期間T21と第1終了期間T22とは、互いに同じ時間長さであってもよいし、互いに異なる時間長さであってもよい。第2開始期間T41と第2終了期間T42とは、互いに同じ時間長さであってもよいし、互いに異なる時間長さであってもよい。また、第1開始期間T21と第2開始期間T41とは、互いに同じ時間長さであることが好ましい。第1終了期間T22と第2終了期間T42とは、互いに同じ時間長さであることが好ましい。
また、フィルタ部71Aは、区間制御部72Aが出力するトリガ信号に同期して、電流検出部6の検出結果(二次電流I2の電流値)のサンプリングの開始、停止を行い、第1有効区間T20、第2有効区間T40における二次電流I2の区間平均値を求める。
区間制御部72Aは、カウンタを備えており、制御部3がスイッチング素子Q1〜Q4を制御する制御信号に同期して、第1有効区間T20、第2有効区間T40の開始、終了を示すトリガ信号をフィルタ部71Aに出力する。具体的には、区間制御部72Aは、第1片オン期間T2が開始するとカウントを開始し、第1開始期間T21を表すカウント値に達すると第1有効区間T20の開始を示すトリガ信号をフィルタ部71Aに出力する。フィルタ部71Aは、第1有効区間T20の開始を示すトリガ信号を受信すると、電流検出部6の検出結果(二次電流I2の電流値)のサンプリングを開始する。さらに、区間制御部72Aは、第1有効区間T20を表すカウント値に達すると第1有効区間T20の終了を示すトリガ信号をフィルタ部71Aに出力する。フィルタ部71Aは、第1有効区間T20の終了を示すトリガ信号を受信すると、電流検出部6の検出結果(二次電流I2の電流値)のサンプリングを停止する。そして、フィルタ部71Aは、第1有効区間T20においてサンプリングした二次電流I2の電流値をデータ要素として、第1有効区間T20における二次電流I2の区間平均値を求め演算部73Aに出力する。
また、区間制御部72Aは、第2有効区間T40についても第1有効区間T20と同様に、第2有効区間T40の開始、終了それぞれを示すトリガ信号をフィルタ部71Aに出力する。フィルタ部71Aは、区間制御部72Aからのトリガ信号に基づいて第2有効区間T40における二次電流I2の区間平均値を求め演算部73Aに出力する。
なお、区間制御部72Aは、カウンタのカウント値に基づいてフィルタ部71Aにトリガ信号を出力しているが、第1全オン期間T1から第2片オン期間T4を1周期とした周期における位相(位相角)に基づいてトリガ信号を出力する構成であってもよい。例えば、区間制御部72Aは、第1片オン期間T2(第2片オン期間T4)が開始してからの位相角に基づいて、第1有効区間T20(第2有効区間T40)の開始、終了それぞれを示すトリガ信号をフィルタ部71Aに出力する構成であってもよい。
また、電流検出部6とフィルタ部71Aとの間に半導体スイッチを設けた構成であってもよい。そして、区間制御部72Aは、この半導体スイッチを制御することで、電流検出部6の検出結果がフィルタ部71Aに入力される期間を制御する。区間制御部72Aによって、第1有効区間T20、第2有効区間T40にのみ電流検出部6の検出結果がフィルタ部71Aに伝達される。フィルタ部71Aは、第1有効区間T20、第2有効区間T40における二次電流I2の区間平均値を求める。
演算部73Aは、第1有効区間T20における二次電流I2の区間平均値(第1区間平均値とする)と、第2有効区間T40における二次電流I2の区間平均値(第2区間平均値とする)とを用いた演算処理を行い、演算結果を制御部3に出力する。負極性である第1区間平均値と、正極性である第2区間平均値との和は、正常時はゼロであるのに対し、偏磁発生時は偏磁方向に応じて正又は負の値となる。すなわち、演算部73Aの出力(第1区間平均値と第2区間平均値との和)が、偏磁の検出結果及び偏磁発生時の偏磁方向を表している。
制御部3は、演算部73Aの出力がゼロとなるように、すなわち偏磁が解消されるようにスイッチング素子Q1〜Q4のデューティ比を調整することで偏磁量を低減させる。例えば、励磁電流Imが正常時に比べて負の方向に変化する偏磁が発生した場合(図5参照)、制御部3は、第1片オン期間T2が現在よりも長くなり、第2片オン期間T4が現在よりも短くなるように、スイッチング素子Q1〜Q4のデューティ比を調整する。これにより、励磁電流Imの増加期間が長くなり減少期間が短くなるので、励磁電流Imが正の方向に変化し偏磁量が低減する。また、励磁電流Imが正常時に比べて正方向に変化する偏磁が発生した場合、制御部3は、第1片オン期間T2が現在よりも短くなり、第2片オン期間T4が現在よりも長くなるようにスイッチング素子Q1〜Q4のデューティ比を調整する。これにより、励磁電流Imの増加期間が短くなり減少期間が長くなるので、励磁電流Imが負の方向に変化し偏磁量が低減する。
また、第1区間平均値を‘I2a’、第2区間平均値を‘I2b’、一次巻線L11の巻数を‘n1’、二次巻線L12の巻数を‘n2’とした場合、偏磁量‘ΔIm’を下記式(1)より求めることができる。
ΔIm=(n2/n1)・(I2a+I2b)/2 …(1)
演算部73Aは、式(1)より求めた偏磁量ΔImを制御部3に出力する。制御部3は、偏磁量ΔImがゼロとなるように、スイッチング素子Q1〜Q4のデューティ比(第1片オン期間T2、第2片オン期間T4の時間長さ)を決定する。このように偏磁量ΔImを求めて第1片オン期間T2、第2片オン期間T4の時間長さを決定することによって、より素早く偏磁量を低減させることができる。
このように、本実施形態における電力変換装置1Aのフィルタ部71Aは、第1片オン期間T2から第1開始期間T21と第1終了期間T22とを除いた第1有効区間T20における二次電流I2の平均値(第1区間平均値)を代表値として求めている。また、フィルタ部71Aは、第2片オン期間T4から第2開始期間T41と第2終了期間T42とを除いた第2有効区間T40における二次電流I2の平均値(第2区間平均値)を代表値として求めている。第1開始期間T21、第2開始期間T41は、サージ電流の発生による二次電流I2の電流値の変化が収まるまでの期間よりも長い期間(時間長さ)に設定されている。したがって、第1片オン期間T2、第2片オン期間T4が開始したときにサージ電流が発生した場合でも、このサージ電流の電流値(二次電流I2の電流値)が第1区間平均値、第2区間平均値のデータ要素に含まれることが抑制される。
すなわち、第1区間平均値、第2区間平均値を求める際に用いる二次電流I2の電流値のサンプリングデータ(データ要素)に、サージ電流の電流値が含まれることが抑制される。これにより、サージ電流による第1区間平均値、第2区間平均値のばらつきが抑制され、トランス4の偏磁の検出精度の向上を図ることが可能となる。
また、特許文献1の電力変換装置では、トランスの一次側に設けられた複数のスイッチング素子の全てをオフするデッドタイムが設定されており、このデッドタイムにおける二次電流の検出結果に基づいて偏磁を検出している。このデッドタイムは、比較的短い期間であり、第1有効区間T20、第2有効区間T40は、デッドタイムよりも長い期間である。本実施形態の電力変換装置1Aは、第1有効区間T20、第2有効区間T40における二次電流I2の検出結果に基づいて偏磁を検出する構成である。したがって、本実施形態の電力変換装置1Aは、デッドタイムにおける二次電流の検出結果に基づいて偏磁を検出する構成に比べて、二次電流I2の検出が容易となり、トランス4の偏磁を容易に検出することが可能となる。
また、第1終了期間T22(第2終了期間T42)は、第1片オン期間T2(第2片オン期間T4)が終了するタイミングの第2所定時間前から第1片オン期間T2(第2片オン期間T4)が終了するまでの期間である。言い換えれば、第1終了期間T22(第2終了期間T42)は、第2全オン期間T3(第1全オン期間T1)が開始するタイミングの第2所定時間前から第2全オン期間T3(第1全オン期間T1)が開始するまでの期間である。すなわち、第1終了期間T22(第2終了期間T42)は、第2全オン期間T3(第1全オン期間T1)が開始したときのサージ電流の電流値が第1区間平均値(第2区間平均値)のデータ要素に含まれることを抑制するためのマージン期間である。したがって、第1全オン期間T1、第2全オン期間T3が開始したときにサージ電流が発生した場合でも、このサージ電流の電流値(二次電流I2の電流値)が第1区間平均値、第2区間平均値のデータ要素に含まれることが抑制される。例えば、フィルタ部71Aが、処理遅延等によって、電流検出部6の検出結果のサンプリングを停止するタイミングが第1有効区間T20、第2有効区間T40が終了するタイミングよりも遅れたとする。このような場合でも、マージン期間である第1終了期間T22、第2終了期間T42によって、サージ電流の電流値(二次電流I2の電流値)が第1区間平均値、第2区間平均値のデータ要素に含まれることが抑制される。これにより、第1区間平均値、第2区間平均値のばらつきが抑制され、トランス4の偏磁の検出精度の向上を図ることが可能となる。
なお、本実施形態では、第1有効区間T20は、第1片オン期間T2から第1開始期間T21と第1終了期間T22とを除いた期間であるが、この期間に限らない。同様に、第2有効区間T40は、第2片オン期間T4から第2開始期間T41と第2終了期間T42とを除いた期間であるが、この期間に限らない。
例えば、第1有効区間を、第1片オン期間T2から第1開始期間T21のみを除いた期間とし、この第1有効区間における二次電流I2の平均値をフィルタ部71Aが求める構成であってもよい。同様に、第2有効区間を、第2片オン期間T4から第2開始期間T41のみを除いた期間とし、この第2有効区間における二次電流I2の平均値をフィルタ部71Aが求める構成であってもよい。
また、第1有効区間を、第1片オン期間T2から第1終了期間T22のみを除いた期間とし、この第1有効区間における二次電流I2の平均値をフィルタ部71Aが求める構成であってもよい。同様に、第2有効区間を、第2片オン期間T4から第2終了期間T42のみを除いた期間とし、この第2有効区間における二次電流I2の平均値をフィルタ部71Aが求める構成であってもよい。さらにまた、第1有効区間を第1片オン期間T2の全期間とし、第2有効区間を第2片オン期間T4の全期間とし、この第1有効区間、第2有効区間における二次電流I2の平均値をフィルタ部71Aが求める構成であってもよい。
また、本実施形態では、フィルタ部71Aは、第1有効区間T20、第2有効区間T40それぞれにおける二次電流I2の平均値(区間平均値)を代表値として求める構成であるが、代表値は平均値に限らない。フィルタ部71Aは、第1有効区間T20、第2有効区間T40それぞれにおける二次電流I2の中央値を代表値として求める構成であってもよい。この場合、演算部73Aは、第1有効区間T20における二次電流I2の中央値と、第2有効区間T40における二次電流I2の中央値とを用いた演算処理(加算処理)を行う。演算部73Aの演算結果(加算結果)が偏磁の検出結果及び偏磁発生時の偏磁方向を表す。また、フィルタ部71Aが二次電流I2の中央値を代表値として求める場合、中央値を求める際に用いる二次電流I2の電流値のサンプリングデータ(データ要素)に、サージ電流の電流値が含まれていても中央値のばらつきが抑制される。したがって、第1片オン期間T2の全期間を第1有効区間、第2片オン期間T4の全期間を第2有効区間とした構成であっても、トランス4の偏磁の検出精度の向上を図ることが可能となる。
また、本実施形態の偏磁検出部7Aは、第1有効区間T20における二次電流I2の代表値と、第2有効区間T40における二次電流I2の代表値とを用いた演算処理(加算処理)により偏磁を検出しているが、偏磁を検出するための演算処理はこれに限らない。例えば、以下のような演算処理であってもよい。フィルタ部71Aは、第1有効区間T20と第2有効区間T40との少なくとも一方の二次電流I2の代表値を求める。そして、演算部73Aは、フィルタ部71Aが求めた二次電流I2の代表値と、基準値(基準範囲)とを比較する。演算部73Aは、二次電流I2の代表値が基準範囲内である場合、偏磁が発生していないと判断し、二次電流I2の代表値が基準範囲外である場合、偏磁が発生していると判断する。
このように、本実施形態の電力変換装置1Aは、インダクタL1と、変換回路2と、制御部3と、トランス4と、電流検出部6と、偏磁検出部7Aとを備える。変換回路2は、ブリッジ接続された複数のスイッチング素子Q1〜Q4を有し、スイッチング素子Q1〜Q4がオンとオフとを繰り返すことで、直流電源8から入力される直流電圧を交流電圧に変換して出力する。インダクタL1は、変換回路2の入力端と直流電源8との間に電気的に接続される。制御部3は、スイッチング素子Q1〜Q4を制御する。トランス4は、一次巻線L11及び二次巻線L12を有し、一次巻線L11が変換回路2の出力端間に電気的に接続される。電流検出部6は、二次巻線L12に流れる電流を検出する。一次巻線L11に正極性の電圧が印加される期間を第1片オン期間T2(第1期間)、一次巻線L11に負極性の電圧が印加される期間を第2片オン期間T4(第2期間)とする。
偏磁検出部7Aは、第1片オン期間T2(第1期間)と第2片オン期間T4(第2期間)との少なくとも一方の期間における電流検出部6の検出結果に基づいて、トランス4の偏磁を検出する。また、偏磁検出部7Aは、電流検出部6の検出結果を平均化するフィルタ部71Aを有し、第1片オン期間T2(第1期間)と第2片オン期間T4(第2期間)との少なくとも一方の期間におけるフィルタ部71の出力に基づいてトランス4の偏磁を検出する。言い換えれば、偏磁検出部7Aは、第1片オン期間T2(第1期間)と、第2片オン期間T4(第2期間)との少なくとも一方の期間を対象期間とし対象期間における電流検出部6の検出結果の代表値を求めるフィルタ部71Aを有する。偏磁検出部7Aは、フィルタ部71Aの出力に基づいてトランス4の偏磁を検出する。
第1有効区間T20、第2有効区間T40は、デッドタイム(スイッチング素子の全オフ期間)に比べて長い期間である。したがって、第1有効区間T20、第2有効区間T40における二次電流I2の検出が容易となり、トランス4の偏磁を容易に検出することが可能となる。
また、本実施形態の電力変換装置1Aは、第1有効区間T20、第2有効区間T40における二次電流I2の代表値(区間平均値、中央値)を偏磁の検出に用いている。これにより、二次電流I2の検出精度、検出タイミングのばらつき等による二次電流I2の代表値(検出結果)のばらつきが低減され、偏磁の検出精度を向上させることができる。
さらに、本実施形態の電力変換装置1Aは、第1有効区間T20、第2有効区間T40における代表値(区間平均値、中央値)に基づいて偏磁を検出する。したがって、第1全オン期間T1、第2全オン期間T3において、二次電流I2にノイズが発生するような場合であってもトランス4の偏磁を検出することができ、ノイズによる偏磁の検出精度の低下を抑制することが可能となる。
また、本実施形態の電力変換装置1Aにおいて、有効区間(第1有効区間T20、第2有効区間T40)は、対象期間(第1片オン期間T2、第2片オン期間T4)の一部の区間である。具体的には、対象期間(第1片オン期間T2、第2片オン期間T4)が開始してから第1所定時間後までの期間を開始期間(第1開始期間T21、第2開始期間T41)とする。また、対象期間(第1片オン期間T2、第2片オン期間T4)が終了する第2所定時間前から対象期間(第1片オン期間T2、第2片オン期間T4)が終了するまでの期間を終了期間(第1終了期間T22、第2終了期間T42)とする。有効区間(第1有効区間T20)は、対象期間(第1片オン期間T2)から開始期間(第1開始期間T21)と終了期間(第1終了期間T22)の少なくとも一方を除いた区間である。また、有効区間(第2有効区間T40)は、対象期間(第2片オン期間T4)から開始期間(第2開始期間T41)と終了期間(第2終了期間T42)の少なくとも一方を除いた区間である。
上記構成により、スイッチング素子Q1〜Q4がスイッチング動作を行ったときにサージ電流が発生した場合であっても、第1有効区間T20、第2有効区間T40における二次電流I2の代表値のばらつきが抑制される。これにより、トランス4の偏磁の検出精度の向上を図ることが可能となる。
また、偏磁検出部7Aは、電流検出部6の検出結果を平均化するフィルタ部71Aを有し、第1片オン期間T2(第1期間)と第2片オン期間T4(第2期間)との少なくとも一方の期間におけるフィルタ部71Aの出力に基づいてトランス4の偏磁を検出する。
偏磁の検出に二次電流I2の区間平均値を用いることによって、二次電流I2の検出精度、検出タイミングのばらつき等による二次電流I2の検出結果のばらつきが低減され、偏磁の検出精度を向上させることができる。
また、上述した例では、偏磁検出部7Aは、二次電流I2の区間平均値に基づいて偏磁を検出するように構成されているが、偏磁検出部7Aの変形例として二次電流I2の瞬時値に基づいて偏磁を検出するように構成されていてもよい。例えば、偏磁検出部7Aは、第1片オン期間T2、第2片オン期間T4それぞれが開始したタイミングから第3所定時間後における二次電流I2の瞬時値を検出し、それぞれの瞬時値を用いた演算処理を行うすることで偏磁を検出するようにしてもよい。第3所定時間の長さは、第1片オン期間T2(第2片オン期間T4)が開始してから、サージ電流による二次電流I2の電流値の変化が収まるまでの期間よりも長い期間(時間長さ)に設定されている。このように構成することによって、フィルタ部71Aを省略することができ、偏磁検出部7Aの構成を簡略化することが可能となる。また、偏磁検出部7Aは、第1有効区間T20と第2有効区間T40との少なくとも一方の期間における二次電流I2の瞬時値を求め、基準値(基準範囲)と比較することで偏磁を検出するように構成してもよい。
このように、本変形例の電力変換装置1Aは、インダクタL1と、変換回路2と、制御部3と、トランス4と、電流検出部6と、偏磁検出部7Aとを備える。変換回路2は、ブリッジ接続された複数のスイッチング素子Q1〜Q4を有し、スイッチング素子Q1〜Q4がオンとオフとを繰り返すことで、直流電源8から入力される直流電圧を交流電圧に変換して出力する。インダクタL1は、変換回路2の入力端と直流電源8との間に電気的に接続される。制御部3は、スイッチング素子Q1〜Q4を制御する。トランス4は、一次巻線L11及び二次巻線L12を有し、一次巻線L11が変換回路2の出力端間に電気的に接続される。電流検出部6は、二次巻線L12に流れる電流を検出する。一次巻線L11に正極性の電圧が印加される期間を第1片オン期間T2(第1期間)、一次巻線L11に負極性の電圧が印加される期間を第2片オン期間T4(第2期間)とする。
偏磁検出部7Aは、第1片オン期間T2(第1期間)と第2片オン期間T4(第2期間)との少なくとも一方の期間が開始してから第3所定時間後における電流検出部6の検出結果の瞬時値に基づいて、トランス4の偏磁を検出する。
上記構成により、偏磁検出部7Aの構成を簡略化することが可能となる。
なお、上述した実施形態1,2は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態1,2に限定されることはなく、この実施形態1,2以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることはもちろんのことである。