以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
[インクジェット記録装置の構成例]
図1は実施形態に係るインクジェット記録装置10の全体構成図である。本例のインクジェット記録装置10は、枚葉の用紙Pに水性のインクを用いて画像を記録する印刷装置である。水性のインクとは、水及び水に可溶な溶媒に顔料や染料などの色材を溶解又は分散させたインクをいう。インクジェット記録装置10は「画像形成装置」の一形態に相当する。
インクジェット記録装置10は、給紙部12と、処理液付与部14と、処理液乾燥部16と、画像記録部18と、画像記録後に乾燥処理を行う乾燥部20と、排紙部24と、を備える。
<給紙部>
給紙部12は、給紙台30に積載された用紙Pを1枚ずつ処理液付与部14に給紙する。給紙部12は、給紙台30と、給紙装置32と、給紙ローラ対34と、フィーダボード36と、前当て38と、給紙ドラム40とを備える。
用紙Pは、多数枚が積層された束の状態で給紙台30に載置される。画像が記録される媒体としての用紙Pの種類は、特に限定されないが、例えば、上質紙、コート紙、アート紙などのセルロースを主体とする印刷用紙を用いることができる。
給紙装置32は、給紙台30に積載されている用紙Pを上から順に1枚ずつ取り上げて、給紙ローラ対34に給紙する。給紙装置32は、昇降自在かつ揺動自在に設けられたサクションフット32Aを備える。サクションフット32Aは、束の最上位に位置する用紙Pの先端側の上面を吸着保持して、用紙Pを引き上げ、引き上げた用紙Pの先端を、給紙ローラ対34の間に挿入する。
給紙ローラ対34は、上下一対のローラ34A、34Bで構成される。ローラ34Aは図示せぬモータに駆動されて回転する駆動ローラであり、ローラ34Bは従動ローラである。モータは、用紙Pの給紙に連動して駆動され、給紙装置32から用紙Pが給紙されるタイミングに合わせてローラ34Aを回転させる。ローラ34A、34Bの間に挿入された用紙Pは、ローラ34A、34Bにニップされて、フィーダボード36の設置方向に送り出される。
フィーダボード36は、給紙ローラ対34から送り出された用紙Pを受けて、前当て38までガイドする。前当て38は、スキュー防止のための部材であり、板状に形成され、用紙Pの搬送方向と直交して配置される。前当て38は、図示せぬモータに駆動されて、揺動可能である。フィーダボード36の上を搬送された用紙Pは、その先端が前当て38に当接されて、姿勢が矯正される。前当て38は、給紙ドラム40への用紙の給紙に連動して揺動し、姿勢を整えた用紙Pを給紙ドラム40に受け渡す。
給紙ドラム40は、前当て38を介してフィーダボード36から給紙される用紙Pを受け取り、処理液付与部14へと搬送する。給紙ドラム40は、図示しないモータに駆動されて回転する。給紙ドラム40の外周面上には、グリッパ40Aが備えられ、グリッパ40Aによって用紙Pの先端が把持される。給紙ドラム40は、グリッパ40Aによって用紙Pの先端を把持して回転することにより、用紙Pを周面に巻き掛けながら、処理液付与部14へと用紙Pを搬送する。
〈処理液付与部〉
処理液付与部14は、用紙Pの記録面に処理液を付与する。処理液は、後段の画像記録部18で用紙Pに打滴されるインク中の色材を凝集させる機能を有する液体である。処理液が塗布された用紙Pにインクを打滴することにより、着弾干渉が抑制され、高品位な印刷を行うことができる。
処理液付与部14は、処理液付与ドラム42と、処理液付与ユニット44と、を備える。処理液付与ドラム42は、給紙部12の給紙ドラム40から用紙Pを受け取り、処理液乾燥部16へと用紙Pを搬送する。処理液付与ドラム42は、図示せぬモータに駆動されて回転する。処理液付与ドラム42の外周面上には、グリッパ42Aが備えられ、グリッパ42Aによって用紙Pの先端が把持される。処理液付与ドラム42は、グリッパ42Aによって用紙Pの先端を把持して回転することにより、用紙Pを周面に巻き掛けながら、処理液乾燥部16へと用紙Pを搬送する。処理液付与ドラム42と給紙ドラム40は、互いの用紙Pの受け取りと受け渡しのタイミングが合うように、回転が制御される。すなわち、同じ周速度となるように駆動され、かつ用紙Pの受け渡し時に互いのグリッパ40A、42Aの位置が合うように駆動される。
処理液付与ユニット44は、処理液付与ドラム42によって搬送される用紙Pに処理液を付与するユニットである。処理液付与ユニット44は、塗布ローラ44Aと、処理液槽44Bと、汲み上げローラ44Cとを備える。
塗布ローラ44Aは、用紙幅に対応するローラ幅を有し、用紙Pに押圧当接されて、その周面に付与された処理液を用紙Pに塗布する。処理液槽44Bは処理液が貯留される容器である。汲み上げローラ44Cは、処理液槽44Bに貯留された処理液を計量して汲み上げて、塗布ローラ44Aに供給する。塗布ローラ44Aは、図示しない当接離間機構に駆動されて、処理液付与ドラム42の周面に当接する当接位置と、処理液付与ドラム42の周面から離間する離間位置との間を移動する。当接離間機構は、用紙Pの通過タイミングに合わせて、塗布ローラ44Aを移動させ、処理液付与ドラム42によって搬送される用紙Pの表面に処理液を塗布する。
本例では、処理液の付与方法としてローラ塗布の方式を採用しているが、処理液を付与する方法は、これに限定されるものではない。ローラ塗布に代えて、インクジェットヘッドを用いて付与する構成やスプレーにより付与する構成を採用することもできる。
〈処理液乾燥部〉
処理液乾燥部16は、処理液が付与された用紙Pを乾燥処理する。処理液乾燥部16は、処理液乾燥ドラム46と、用紙搬送ガイド48と、処理液乾燥処理ユニット50と、を備える。
処理液乾燥ドラム46は、処理液付与ドラム42から用紙Pを受け取り、画像記録部18へと用紙Pを搬送する。処理液乾燥ドラム46は、円筒状に組んだ枠体で構成され、図示せぬモータに駆動されて回転する。処理液乾燥ドラム46の外周面上には、グリッパ46Aが備えられ、グリッパ46Aによって用紙Pの先端が把持される。処理液乾燥ドラム46は、グリッパ46Aによって用紙Pの先端を把持して回転することにより、用紙Pを画像記録部18に搬送する。
本例の処理液乾燥ドラム46は、外周面上の2カ所にグリッパ46Aが配設され、1回の回転で2枚の用紙Pが搬送できるように構成されている。処理液乾燥ドラム46と処理液付与ドラム42は、互いの用紙Pの受け取りと受け渡しのタイミングが合うように、回転が制御される。
用紙搬送ガイド48は、処理液乾燥ドラム46による用紙Pの搬送経路に沿って配設され、用紙Pの搬送をガイドする。
処理液乾燥処理ユニット50は、処理液乾燥ドラム46の内側に設置され、処理液乾燥ドラム46によって搬送される用紙Pに向けて熱風を吹き当てて乾燥処理する。処理液乾燥処理ユニット50の乾燥処理により、処理液中の溶媒成分が除去される。これにより、用紙Pの記録面である表面に、インクの色材を凝集させる作用を持つインク凝集層が形成される。
〈画像記録部〉
画像記録部18は、画像記録ドラム52と、用紙押さえローラ54と、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kと、インラインセンサ58と、ドラム冷却ユニット62と、を備える。
画像記録ドラム52は、処理液乾燥ドラム46から用紙Pを受け取り、乾燥部20のチェーングリッパ64へと用紙Pを搬送する。画像記録ドラム52は、図示せぬモータに駆動されて回転する。画像記録ドラム52の外周面上には、グリッパ52Aが備えられ、グリッパ52Aによって用紙Pの先端が把持される。画像記録ドラム52は、グリッパ52Aによって用紙Pの先端を把持して回転することにより、用紙Pを周面に巻き掛けながら、用紙Pをチェーングリッパ64へと搬送する。
用紙押さえローラ54は、画像記録ドラム52の用紙受取位置の近傍に配設される。用紙受取位置とは、処理液乾燥ドラム46から用紙Pを受け取る位置をいう。用紙押さえローラ54は、ゴムローラで構成され、画像記録ドラム52の周面に押圧当接させて設置される。処理液乾燥ドラム46から画像記録ドラム52に受け渡された用紙Pは、用紙押さえローラ54を通過することにより、画像記録ドラム52の周面に密着させられる。
また、画像記録ドラム52は、その周面に多数の吸引穴(図示せず)が形成されている。用紙Pは、吸引穴から吸引されることにより、画像記録ドラム52の周面に吸着保持されながら搬送される。これにより、高い平滑性をもって用紙Pを搬送することができる。
画像記録ドラム52における吸引穴からの吸引は、画像記録ドラム52の一定の範囲でのみ作用する。「一定の範囲」の吸引開始位置は、用紙押さえローラ54の設置位置に設定され、吸引終了位置は、インラインセンサ58の設置位置の下流側に設定される。吸引終了位置は、例えば、用紙Pを乾燥部20に受け渡す位置に設定される。すなわち、少なくともインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kの設置位置である画像記録位置と、インラインセンサ58の設置位置である画像読取位置では、用紙Pが画像記録ドラム52の周面に吸着保持されるように、吸引区間の範囲が設定される。
なお、用紙Pを画像記録ドラム52の周面に吸着保持させる機構は、負圧による吸着方法に限らず、静電吸着による方法を採用することもできる。
また、本例の画像記録ドラム52は、外周面上の2カ所にグリッパ52Aが配設され、1回の回転で2枚の用紙Pが搬送できるように構成されている。画像記録ドラム52と処理液乾燥ドラム46は、互いの用紙Pの受け取りと受け渡しのタイミングが合うように、回転が制御される。
インクジェットヘッド56Cは、シアン(C)のインクの液滴を吐出する記録ヘッドである。インクジェットヘッド56Mは、マゼンタ(M)のインクの液滴を吐出する記録ヘッドである。インクジェットヘッド56Yは、イエロー(Y)のインクの液滴を吐出する記録ヘッドである。インクジェットヘッド56Kは、ブラック(K)のインクの液滴を吐出する記録ヘッドである。インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kのそれぞれには、対応する色のインク供給源である不図示のインクタンクから不図示の配管経路を介して、インクが供給される。
インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kは、画像記録ドラム52による用紙Pの搬送経路に沿って一定の間隔をもって配置される。インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kは、用紙幅に対応したラインヘッドで構成され、ノズル面が画像記録ドラム52の周面に対向するように配置される。各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kは、ノズル面に形成されたノズル列から、画像記録ドラム52に向けてインクの液滴を吐出することにより、画像記録ドラム52によって搬送される用紙Pに画像を記録する。インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kのそれぞれの打滴タイミングは、画像記録ドラム52に設置されたロータリエンコーダ(図1中不図示、図10及び図14の符号160として記載)から得られるロータリエンコーダ信号に同期させる。
なお、本例では、CMYKの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特色インクなどを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インク(淡インク)を吐出するインクジェットヘッドを追加する構成や、緑色やオレンジ色などの特色のインクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能であり、また、各色のインクジェットヘッドの配置順序も特に限定はない。
インラインセンサ58は、用紙Pに記録された画像を読み取る画像読取部である。インラインセンサ58は、例えば、CCD(charge-coupled device)ラインセンサを用いたラインスキャナで構成される。インラインセンサ58は、画像記録ドラム52による用紙Pの搬送方向に対して、最後尾のインクジェットヘッド56Kの下流側に設置され、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kで記録された画像を読み取る。インラインセンサ58によって読み取られた読取画像のデータから、画像の濃度やインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kの吐出不良などの情報が得られる。
ドラム冷却ユニット62は、画像記録ドラム52に冷風を吹き当てて、画像記録ドラム52を冷却する。本例のドラム冷却ユニット62は画像記録ドラム52のほぼ下側半分の領域に冷気を吹き当てて、画像記録ドラム52を冷却する構成とされている。
インラインセンサ58を通過した用紙P、画像記録ドラム52による吸着が解除された後、乾燥部20へ送られる。
<乾燥部>
乾燥部20は、画像記録後の用紙Pを乾燥処理し、用紙Pの表面に残存する液体成分を除去する。乾燥部20は、用紙Pを搬送する搬送機構の一例としてのチェーングリッパ64と、バックテンション付与機構66と、インク乾燥処理ユニット68とを備える。
チェーングリッパ64は、乾燥部20及び排紙部24において共通して使用される用紙搬送機構であり、画像記録部18から受け渡された用紙Pを受け取って、排紙部24まで搬送する。
チェーングリッパ64は、第1スプロケット64Aと、第2スプロケット64Bと、第1スプロケット64A及び第2スプロケット64Bに巻き掛けられる無端状のチェーン64Cと、チェーン64Cの走行をガイドする複数のチェーンガイド(図示省略)と、チェーン64Cに取り付けられた複数のグリッパ64Dとを含んで構成される。
第1スプロケット64Aと、第2スプロケット64Bと、チェーン64Cと、チェーンガイドとは、それぞれ一対で構成され、用紙Pの幅方向の両側に配設される。グリッパ64Dは、一対で設けられるチェーン64Cに掛け渡されて設置される。グリッパ64Dは用紙Pの先端部を保持する。用紙Pはグリッパ64Dによって先端部が保持された状態でグリッパ64Dと共に移動する。
第1スプロケット64Aは、画像記録ドラム52から受け渡される用紙Pをグリッパ64Dで受け取ることができるように、画像記録ドラム52に近接して設置される。この第1スプロケット64Aは、図示しない軸受に軸支されて、回転自在に設けられるとともに、図示しないモータが連結される。第1スプロケット64A及び第2スプロケット64Bに巻き掛けられるチェーン64Cは、このモータを駆動することにより走行する。
第2スプロケット64Bは、画像記録ドラム52から受け取った用紙Pを排紙部24で回収できるように、排紙部24に設置される。すなわち、の第2スプロケット64Bの設置位置が、チェーングリッパ64による用紙Pの搬送経路の終端とされる。この第2スプロケット64Bは、図示せぬ軸受に軸支されて、回転自在に設けられる。
チェーンガイドは、所定位置に配置されて、チェーン64Cが所定の経路を走行するようにガイドする。本例のインクジェット記録装置10では、第2スプロケット64Bが第1スプロケット64Aよりも高い位置に配設される。このため、チェーン64Cが、途中で傾斜するような走行経路が形成される。具体的には、チェーン64Cによる用紙搬送経路は、第1水平搬送経路70Aと、傾斜搬送経路70Bと、第2水平搬送経路70Cとを有する。
第1水平搬送経路70Aは、第1スプロケット64Aと同じ高さに設定され、第1スプロケット64Aに巻き掛けられたチェーン64Cが、水平に走行するように設定される。
第2水平搬送経路70Cは、第2スプロケット64Bと同じ高さに設定され、第2スプロケット64Bに巻き掛けられたチェーン64Cが、水平に走行するように設定される。
傾斜搬送経路70Bは、第1水平搬送経路70Aと第2水平搬送経路70Cとの間に設定され、第1水平搬送経路70Aと第2水平搬送経路70Cとの間を結ぶように設定される。
チェーンガイドは、第1水平搬送経路70Aと、傾斜搬送経路70Bと、第2水平搬送経路70Cとを形成するように配設される。チェーンガイドは、少なくとも第1水平搬送経路70Aと傾斜搬送経路70Bとの接合ポイント、及び、傾斜搬送経路70Bと第2水平搬送経路70Cとの接合ポイントに配設される。
グリッパ64Dは、チェーン64Cに一定の間隔をもって複数取り付けられる。グリッパ64Dの取り付け間隔は、画像記録ドラム52からの用紙Pの受け取り間隔に合わせて設定される。すなわち、画像記録ドラム52から順次受け渡される用紙Pを、グリッパ64Dがタイミングを合わせて画像記録ドラム52から受け取ることができるように、グリッパ64D同士の間隔は、画像記録ドラム52からの用紙Pの受け取り間隔に合わせて設定される。
バックテンション付与機構66は、チェーングリッパ64によって先端を把持されながら搬送される用紙Pにバックテンションを付与する。バックテンション付与機構66は、乾燥部20に配置される吸着板としてのガイドプレート72を備えている。
ガイドプレート72は、用紙幅に対応した幅を有する中空状のボックスプレートで構成されている。ガイドプレート72は、上面に形成される多数の吸引穴(図示省略)と、ガイドプレート72の下部側に配置されて多数の吸引穴から空気を吸引する吸引ファン(図示省略)と、を備えている。また、ガイドプレート72の下部側には、吸引ファンにより多数の吸引穴から吸引した空気を吐き出すための排気管(図示省略)が接続されている。
ガイドプレート72は、チェーングリッパ64による用紙Pの搬送経路に沿って、つまりチェーン64Cの走行経路に沿って配設される。ガイドプレート72は、チェーン64Cから離間して配設される。
チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pは、その裏面が、ガイドプレート72の上面の上を摺接しながら搬送される。用紙Pの裏面とは、画像が記録された記録面とは反対側の面を指す。ガイドプレート72の「上面」とは、チェーン64Cと対向する面であり、用紙Pが接触する摺接面を指す。
ガイドプレート72の吸引穴から空気が吸引されることにより、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pの裏面が吸引穴に吸引される。これにより、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pに用紙搬送方向と逆方向の力であるバックテンションが付与される。
インク乾燥処理ユニット68は、チェーングリッパ64の内部、特に第1水平搬送経路70Aを構成する部位に設置される。インク乾燥処理ユニット68は、第1水平搬送経路70Aを搬送される用紙Pに対して乾燥処理を施す。インク乾燥処理ユニット68は、第1水平搬送経路70Aを搬送される用紙Pの表面に熱風を吹き当てて乾燥処理する。用紙Pの表面とは、用紙Pの記録面を指し、画像記録部18のインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kによってインクが付与された面である。
本明細書で熱風という用語は、加熱された気体の流れを意味し、温風を含む概念の用語として用いる。気体の種類は空気とすることができるが、空気以外の気体であってもよい。熱風の温度は、周囲空気の温度よりも高い温度であればよく、所要の乾燥処理能力を達成できるように、周囲環境の温度と湿度の条件に応じて適宜の温度に設定される。
インク乾燥処理ユニット68は、第1水平搬送経路70Aに沿って配置されている。インク乾燥処理ユニット68の用紙搬送方向の長さ及び風量は、インク乾燥処理ユニット68の処理能力や用紙Pの搬送速度、つまり印刷速度等に応じて設定される。すなわち、インク乾燥処理ユニット68の用紙搬送方向の長さ及び風量は、画像記録部18から受け取った用紙Pが第1水平搬送経路70Aを搬送されている間に、目標とする水分量のレベルまで乾燥させることができるように設定される。
第1水平搬送経路70Aの長さは、インク乾燥処理ユニット68の能力を考慮して設計される。インク乾燥処理ユニット68の詳細な構成は図示しないが、インク乾燥処理ユニット68は、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pと対向する位置に配置された加熱手段の一例である赤外線ヒータと、送風手段の一例であるファンと、熱風噴出しノズルとの組み合わせにより構成されている。
インク乾燥処理ユニット68の熱風噴出しノズルは、規定の温度に制御された熱風を一定の風量で用紙Pに向けて吹き付けるように構成される。インク乾燥処理ユニット68は、熱源である複数個のヒータと、複数個のファンとを含んでいる。本例では、ヒータとして赤外線ヒータが用いられている。複数個のヒータの各々は、それぞれの設定温度に制御される。これらの熱風噴出しノズル及びヒータによって、用紙Pの記録面に含まれる水分が蒸発され、乾燥処理が行われる。
インク乾燥処理ユニット68による乾燥処理の際に、用紙Pはバックテンション付与機構66によってバックテンションが付与されながら乾燥処理が施される。これにより、用紙Pの変形を抑えながら乾燥処理を行うことができる。
インクジェット記録装置10の乾燥部20には、ジャムの検出手段として、つまり、用紙Pの滞留を検出するための手段として、乾燥部20の入口と出口にそれぞれ1個ずつ、第1センサ102と第2センサ104を備えている。
第1センサ102は、インク乾燥処理ユニット68よりも用紙搬送方向の上流側に設置され、乾燥部20の乾燥処理領域に進入するグリッパ64Dと用紙Pを検出する。第2センサ104は、インク乾燥処理ユニット68よりも用紙搬送方向の下流側に設置され、乾燥部20の乾燥処理領域を出てきたグリッパ64Dと用紙Pを検出する。乾燥部20の構成について詳細は後述する。
〈排紙部〉
排紙部24は、乾燥部20からチェーングリッパ64によって搬送されてくる用紙Pを受け取り、回収する。排紙部24は、用紙Pを積み重ねて回収する排紙台76を備えている。チェーングリッパ64は、排紙台76の上で用紙Pをリリースし、排紙台76の上に用紙Pをスタックさせる。
〈用紙搬送装置の構成〉
次に、インクジェット記録装置10の乾燥部20に適用されている用紙搬送装置100について説明する。
図2はインクジェット記録装置10の乾燥部20に適用されている用紙搬送装置100の構成図である。図2において、図1に示した構成と同一又は類似する要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
用紙搬送装置100は、チェーングリッパ64と、乾燥部20の入口側に設置される第1センサ102と、乾燥部20の出口側に設置される第2センサ104とを備える。
第1センサ102は、チェーングリッパ64による用紙Pの搬送方向上流側の第1検出位置に配置される。第1センサ102は、グリッパ64Dの通過と用紙Pの有無を検出する用紙検出センサであり、ジャムを検出する役割、つまり、用紙Pの滞留を検出する役割を果たす。第1検出位置は乾燥部20の用紙搬送方向上流側の端よりも更に用紙搬送方向上流側の位置である。
第2センサ104は、第1検出位置より用紙搬送方向下流側の第2検出位置に配置される。第2センサ104は、グリッパ64Dの通過と用紙Pの有無を検出する用紙検出センサであり、ジャムを検出する役割、つまり、用紙Pの滞留を検出する役割を果たす。第2検出位置は乾燥部20の用紙搬送方向下流側の端よりも更に用紙搬送方向下流側の位置である。
第1センサ102は、乾燥部20を構成するインク乾燥処理ユニット68の入口に配置されている。すなわち、第1センサ102は、チェーングリッパ64による用紙搬送方向における第1スプロケット64Aとインク乾燥処理ユニット68との間に配置されている。第2センサ104は、乾燥部20を構成するインク乾燥処理ユニット68の出口に配置されている。すなわち、第2センサ104は、チェーングリッパ64による用紙搬送方向におけるインク乾燥処理ユニット68を抜けた位置に設けられている。
第1センサ102及び第2センサ104は非接触式のセンサであることが好ましく、例えば、反射型又は透過型の光学式センサを用いることができる。本例では、第1センサ102及び第2センサ104のそれぞれは、反射型の光学式センサの一形態である光ファイバーセンサを用いている。光ファイバーセンサは、耐熱性があり、熱源の近くに設置するセンサとして好適である。
チェーングリッパ64による用紙搬送路を挟んで第1センサ102と対向する位置に図示せぬ反射板が配置されており、グリッパ64D又は用紙Pの通過によって第1センサ102の光路が遮られる。同様に、チェーングリッパ64による用紙搬送路を挟んで第2センサ104と対向する位置に図示せぬ反射板が配置されており、グリッパ64D又は用紙Pの通過によって第1センサ102の光路が遮られる。
また、用紙搬送装置100は、第1スプロケット64Aの側面に、第1センサドグ106Aと、第2センサドグ106Bとを備えている。第1センサドグ106Aと第2センサドグ106Bのそれぞれは第1スプロケット64Aの側面に固定されており、第1スプロケット64Aと一体で周方向に回転する。
本実施形態の第1スプロケット64Aは、画像記録ドラム52とほぼ同じ大きさであり、画像記録ドラム52と同じ周期で回転する。既述のように、画像記録ドラム52は、周面にグリッパ52Aにより2枚の用紙Pを保持しながら搬送する(図1参照)。第1センサドグ106Aは、第1スプロケット64Aの円形状の側面に、第1スプロケット64Aの周方向に沿って180°の位置関係となる2か所の位置にそれぞれ1個ずつ設けられている。第2センサドグ106Bは、第1スプロケット64Aの円形状の側面における前記第1センサドグ106Aと周方向及び径方向の異なる位置であって、かつ、第1スプロケット64Aの周方向に沿って180°の位置関係となる2か所の位置にそれぞれ1個ずつ設けられている。第1センサドグ106Aと第2センサドグ106Bは、第1スプロケット64Aの周方向に沿って約90°の位置関係の位置となる位置に設けられている。
第1センサドグ106Aは第1タイミングセンサ108が反応するセンサドグであり、第2センサドグ106Bは第2タイミングセンサ110が反応するセンサドグである。
用紙搬送装置100は、第1スプロケット64Aの回転に伴い、第1センサドグ106Aの通過を検出して第1センサ102の検出タイミングを決める第1タイミングセンサ108と、第2センサドグ106Bの通過を検出して第2センサ104の検出タイミングを決める第2タイミングセンサ110と、を備えている。第1タイミングセンサ108と第2タイミングセンサ110のそれぞれは、第1スプロケット64Aの第1センサドグ106A及び第2センサドグ106Bが設けられている側面と対向する位置に設置される。
第1タイミングセンサ108及び第2タイミングセンサ110として、例えば、それぞれフォトインタラプタが使用されている。フォトインタラプタは、発光部と受光部とが対向配置された構造を有する。第1センサドグ106Aと第2センサドグ106Bのそれぞれは、第1スプロケット64Aの側面から起立した遮光板で構成される。フォトインタラプタは、発光部からの光を受光部で受けるときに、遮蔽板からなるセンサドグ(106A又は106B)が光を遮蔽することで、センサドグ(106A又は106B)の通過を検出する。すなわち、第1スプロケット64Aの回転により、第1センサドグ106Aが第1タイミングセンサ108の検出範囲に入ったときに、第1センサドグ106Aが検出されるようになっている。同様に、第1スプロケット64Aの回転により、第2センサドグ106Bが第2タイミングセンサ110の検出範囲に入ったときに、第2センサドグ106Bが検出されるようになっている。
グリッパ64Dが第1センサ102の検出位置を過ぎ、第1センサ102の検出位置に用紙Pが有るタイミングで第1タイミングセンサ108が第1センサドグ106Aを検出するように、第1センサドグ106Aの設置位置と第1タイミングセンサ108の設置位置が設計されている。
同様に、グリッパ64Dが第2センサ104の検出位置を過ぎて第2センサ104の検出位置に用紙Pが有るタイミングで第2タイミングセンサ110が第2センサドグ106Bを検出するように、第2センサドグ106Bの設置位置と第2タイミングセンサ110の設置位置が設計されている。
また、本実施形態では、第1タイミングセンサ108が第1センサドグ106Aを検出するタイミングと、第2タイミングセンサ110が第2センサドグ106Bを検出するタイミングとが異なるタイミングとなるように、第1センサドグ106A、第1タイミングセンサ108、第2センサドグ106B、及び第2タイミングセンサ110のそれぞれの設置位置が設計されている。これにより、第1スプロケット64Aの回転により、第1タイミングセンサ108と第2タイミングセンサ110が交互にそれぞれのセンサドグの通過を検出するようになっている。
チェーングリッパ64は搬送機構の一形態に相当する。第1センサドグ106Aと第1タイミングセンサ108並びに第2センサドグ106Bと第2タイミングセンサ110との組み合わせがタイミング信号生成部の一形態に相当する。第1スプロケット64Aが搬送機構の動作中に回転する回転部材の一形態に相当する。
図3は用紙搬送装置100の一部を示した要部斜視図である。図3では用紙Pが図の左から右に向かって搬送される様子が示されている。図3において、図1及び図2に示した構成と同一の要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
第1センサ102は、乾燥部20(図3中不図示、図1及び図2参照)の乾燥処理領域21の入口側に設置された第1支持梁114に取り付けられている。乾燥処理領域21は、インク乾燥処理ユニット68(図3中不図示、図1及び図2参照)による乾燥処理が実施される処理空間を指す。第1センサ102は、図3に示したように、乾燥処理領域21の入口に1個だけ設置されている。第1センサ102は、この1個のセンサでグリッパ64Dの通過と用紙Pの通過を両方検出できる位置、例えば、用紙幅方向に対する用紙Pの中央部分を検出できる位置に設置される。
第2センサ104は、乾燥部20の乾燥処理領域21の出口側に設置された第2支持梁116に取り付けられている。第2センサ104も、図示のとおり、乾燥処理領域21の出口に1個だけ設置されている。第2センサ104は、この1個のセンサでグリッパ64Dの通過と用紙Pの通過を両方検出できる位置、例えば、用紙幅方向に対する用紙Pの中央部分を検出できる位置に設置される。
チェーングリッパ64は、2本のチェーン64Cの間にバー形状のグリッパ64Dが掛け渡されている。用紙Pはグリッパ64Dによって先端が保持された状態で搬送される。
第1タイミングセンサ108と第2タイミングセンサ110は、センサ支持プレート118に固定されている。センサ支持プレート118は、第1スプロケット64Aの側面に対向して配置された部材である。
<用紙搬送装置の制御系>
図4は第1実施形態に係る用紙搬送装置100の制御系の構成を示したブロック図である。用紙搬送装置100は、第1センサ102、第2センサ104、第1タイミングセンサ108、及び第2タイミングセンサ110の各々から得られるセンサ信号を処理するセンサ信号処理回路200を備えている。
センサ信号処理回路200は、第1センサ信号入力端子202、第2センサ信号入力端子204、第1タイミングセンサ信号入力端子208、第2タイミングセンサ信号入力端子210、第1用紙有無判定回路212、第1センサ故障判定回路214、第2用紙有無判定回路216、第2センサ故障判定回路218、タイミングセンサ故障判定回路220、遅延回路222、比較回路224、エラー判定回路226、及びエラー情報出力端子228を備える。センサ信号処理回路200は集積回路によって実現することができる。
第1センサ信号入力端子202は、第1センサ102から信号を取り込む端子である。第2センサ信号入力端子204は、第2センサ104から信号を取り込む端子である。第1タイミングセンサ信号入力端子208は、第1タイミングセンサ108から信号を取り込む端子である。第2タイミングセンサ信号入力端子210は、第2タイミングセンサ110から信号を取り込む端子である。
第1タイミングセンサ108から出力されるタイミング信号(第1タイミング信号)は、グリッパ64Dが第1センサ102を通過後に、用紙有無を監視するタイミングで第1用紙有無判定回路212が受信するように設定される。つまり、第1用紙有無判定回路212は、グリッパ64Dが第1センサ102を通過した後に、用紙有無を監視するタイミングで第1タイミングセンサ108から第1タイミング信号を受信する。第1用紙有無判定回路212は、第1タイミングセンサ108からの第1タイミング信号の受信タイミングで第1センサ102の状態を読み取り、用紙Pの有無を示す信号である第1用紙有無信号を出力する。
第2用紙有無判定回路216は、第2タイミングセンサ110からの第2タイミング信号の受信タイミングで第2センサ104の状態を読み取り、用紙Pの有無を示す信号である第2用紙有無信号を出力する。
また、第2タイミングセンサ110から出力されるタイミング信号(第2タイミング信号)は、グリッパ64Dが第2センサ104を通過後に、用紙有無を監視するタイミングで第2用紙有無判定回路216がタイミング信号を受信するように設定される。
既述のとおり、本例の第1センサ102と第2センサ104のそれぞれは、反射型センサで構成される。第1センサ102と第2センサ104のそれぞれの光路の先に反射板が設けられ、光路が用紙Pで遮られる場合に、戻り光が弱まり、用紙Pの有無が認識できる。
第1センサ故障判定回路214は、第1センサ102から得られる第1センサ信号と第1タイミングセンサ108から得られる第1タイミング信号とに基づき、第1センサ102の故障を検出する。第1センサ102の位置を用紙Pが通過しない場合でも、搬送機構が動作している間は、チェーングリッパ64が動き続けており、グリッパ64Dが第1センサ102と第2センサ104のそれぞれの光路を通過する。
このことを利用して、第1センサ故障判定回路214は、第1タイミング信号の受信間に第1センサ102の状態の変化の有無、つまり、第1センサ102の信号変化の有無を監視し、変化がない場合に第1センサ102が故障していると判定する。第1タイミング信号の受信間に第1センサ102の信号変化があれば、第1センサ102は正常と判定される。第1センサ故障判定回路214から出力される故障判定情報である第1センサ故障判定情報はエラー判定回路226に送られる。
同様に、第2センサ故障判定回路218は、第2センサ104から得られる第2センサ信号と第2タイミングセンサ110から得られる第2タイミング信号とに基づき、第2センサ104の故障を検出する。第2センサ故障判定回路218は、第2タイミング信号の受信間に第2センサ104の状態の変化の有無、つまり、第2センサ信号の変化有無を監視し、変化がない場合に第2センサ104が故障していると判定する。第2タイミング信号の受信間に第2センサ104の信号変化があれば、第2センサ104は正常と判定される。第2センサ故障判定回路218から出力される故障判定情報である第2センサ故障判定情報はエラー判定回路226に送られる。なお、第1センサ故障判定回路214及び第2センサ故障判定回路218に適用される具体的な回路例は後述する。
タイミングセンサ故障判定回路220は、第1タイミングセンサ108からの第1タイミング信号と第2タイミングセンサ110からの第2タイミング信号とに基づき、第1タイミングセンサ108及び第2タイミングセンサ110の故障を判定する。第1タイミングセンサ108の第1タイミング信号と第2タイミングセンサ110の第2タイミング信号のそれぞれは、1枚の用紙Pの搬送サイクルで必ず1回ずつ、受信タイミングが発生する。これを利用して、タイミングセンサ故障判定回路220は、第1タイミング信号と第2タイミング信号を交互に受信できていれば、正常と判定し、第1タイミング信号と第2タイミング信号のいずれか一方の信号を連続で受信した場合は、故障と判定する。タイミングセンサ故障判定回路220から出力される故障判定情報であるタイミングセンサ故障判定情報はエラー判定回路226に送られる。タイミングセンサ故障判定回路220に適用される具体的な回路例は後述する。
遅延回路222は、第1センサ102と第2センサ104の距離と用紙搬送速度に応じた両センサの検出時間差相当の遅延を設ける回路である。遅延回路222は、第1用紙有無判定回路212の出力信号である第1用紙有無信号を遅延させた第1用紙有無遅延信号を出力する。
比較回路224は、第2タイミングセンサ110からの第2タイミング信号のタイミングで、第1用紙有無遅延信号と第2用紙有無信号を比較し、比較結果を示すジャム判定情報を出力する。なお、ここでいう第2タイミング信号のタイミングとは、実際は、用紙有無判定に要する時間分を遅延させたタイミングである。比較回路224は、第1用紙有無遅延信号と第2用紙有無信号の両者に不一致が生じた場合はジャムと判定する。比較回路224は、第1センサ102及び第2センサ104のそれぞれから得られる情報を基に用紙Pの滞留を検出する役割を果たす。
エラー判定回路226は、比較回路224から得られるジャム判定情報と、第1センサ故障判定情報と、第2センサ故障判定情報と、タイミングセンサ故障判定情報と、のいずれかで異常を示すエラー判定を検出した場合、エラー判定結果に応じた情報を出力する。
エラー情報出力端子228は、エラー判定回路226から出力される信号を外部に取り出すための端子である。
用紙搬送装置100は、ヒータ250と、ヒータ制御回路252と、電源遮断回路254と、を備えている。ヒータ250は、図1で説明したインク乾燥処理ユニット68に搭載される加熱手段の熱源である。本例のヒータ250には、赤外線ヒータが用いられている。
ヒータ制御回路252は、ヒータ250を駆動させる制御回路である。ヒータ250を駆動する電力は、電力供給部256から電源遮断回路254を経由してヒータ制御回路252に供給され、ヒータ制御回路252を通じてヒータ250に供給される。電力供給部256は、ヒータ駆動用の電源に相当する。電源遮断回路254は、電力供給部256からヒータ制御回路252への電力供給を遮断する回路である。
エラー判定回路226にてエラー判定を検出した場合、エラー判定回路226は、ヒータ制御回路252への電力供給を遮断するための情報を電源遮断回路254に通知し、かつ、制御CPU(Central Processing Unit)260にステータスの情報を通知する。
電源遮断回路254は、エラー判定回路226から通知された情報を受けて、ヒータ制御回路252への電力供給を遮断する。エラーが検出された場合、電源遮断回路254によってヒータ制御回路252への電力供給が遮断されることで、ヒータ250が停止する。これにより、安全性が担保される。
制御CPU260は、用紙搬送装置100の全体の制御を司るコントローラとして機能する。制御CPU260は、インクジェット記録装置10のシステムコントローラ(図4中不図示、図14の符号350として記載)に搭載されるCPUとすることができる。
第1センサ故障判定回路214は第1センサ故障判定部の一形態に相当する。第2センサ故障判定回路218は第2センサ故障判定部の一形態に相当する。第1用紙有無判定回路212から出力される第1用紙有無信号又は遅延回路222から出力される第1用紙有無遅延信号は第1用紙有無情報の一形態に相当する。第2用紙有無判定回路216から出力される第2用紙有無信号は第2用紙有無情報の一形態に相当する。比較回路224は用紙滞留検出部の一形態に相当する。電源遮断回路254は熱源停止回路の一形態に相当する。タイミングセンサ故障判定回路220はタイミングセンサ故障判定部の一形態に相当する。
図5は正常な動作状態を示すタイミングチャートである。図5には、用紙Pを2枚搬送してエラーが発生していない場合のタイミングチャートが示されている。
第1タイミングセンサ108は、第1スプロケット64Aが一定の速度で回転することにより、一定の時間間隔で第1センサドグ106Aの通過を検出する。第1タイミングセンサ108は、第1センサドグ106Aの通過タイミングで第1タイミング信号を発生する。第2タイミングセンサ110は、第1スプロケット64Aが一定の速度で回転することにより、一定の時間間隔で第2センサドグ106Bの通過を検出する。第2タイミングセンサ110は、第2センサドグ106Bの通過タイミングで第2タイミング信号を発生する。
反射型センサである第1センサ102と第2センサ104のそれぞれは、光路が遮られていない状態、つまり戻り光が受光されている状態がオン(ON)、光路が遮られた状態、つまり戻り光が弱くなった状態がオフ(OFF)である。
第1センサ102と第2センサ104のそれぞれの光路が遮られる要因は、グリッパ64Dと用紙Pである。用紙Pを搬送していない場合であっても、チェーングリッパ64が駆動されている場合には、第1センサ102と第2センサ104のそれぞれは、グリッパ64Dによって光路が遮られる。また、用紙Pがグリッパ64Dに把持されて搬送されている場合、第1センサ102と第2センサ104のそれぞれは、グリッパ64Dと用紙Pによって光路が遮られる。
図5に示した第1センサ102の信号のうち、左から1番目と2番目のオフ状態は、グリッパ64Dが光路を遮ったことによるものである。3番目のオフ状態は1枚目の用紙Pの通過によるものである。4番目のオフ状態は2枚目の用紙Pの通過によるものである。なお、3番目のオフ状態と4番目のオフ状態との間のオン状態は、1枚目の用紙Pと2枚目の用紙Pとの用紙間の隙間によるものである。5番目のオフ状態は、2枚目の用紙Pの後に到来するグリッパ64Dによるものである。以後、一定の間隔でグリッパ64Dが光路を遮る。
第1用紙有無判定回路212は、第1タイミング信号のタイミングで第1センサ102の状態を監視し、第1用紙有無判定信号を出力する。図5の場合、第1タイミングセンサ108の左から3番目の第1タイミング信号のタイミングのときに第1センサ102がオフ状態、つまり「用紙有り」を検出しているため、第1用紙有無判定信号は、この3番目の第1タイミング信号のタイミングで「用紙有り」の状態になる。4番目の第1タイミング信号のタイミングにおいても第1センサ102はオフ状態であるため、第1用紙有無判定信号は、「用紙有り」の状態が維持される。5番目の第1タイミング信号のタイミングにおいて、第1センサ102がオン状態、つまり「用紙無し」を検出すると、このタイミングで用紙有無判定信号は「用紙無し」の状態になる。
第1用紙有無遅延信号は、第1用紙有無判定信号を遅延させたものである。
第2タイミングセンサ110の第2タイミング信号と第2センサ104の第2センサ信号と、第2用紙有無判定信号との関係は、上述した第1タイミングセンサ108の第1タイミング信号と第1センサ102の第2センサ信号と、第1用紙有無判定信号との関係と同様であるため、説明は省略する。
[第1センサ102及び第2センサ104の故障判定]
図6は第1センサ故障判定回路214(図5参照)が受信する信号のタイミングチャートである。図6では第1センサ102の信号において、符号Aで示した部分の信号が変化しなくなった様子が示されている。第1センサ故障判定回路214は、第1タイミングセンサ108からの第1タイミング信号の信号間における第1センサ102の信号の変化の有無を監視する。第1センサ故障判定回路214は、図6の符号Aで図示のように、第1タイミング信号の受信間隔の期間中に第1タイミング信号の変化がなく、第1タイミング信号を連続して受信した場合にエラー、つまり第1センサ102の故障と判定する。
図7は第1センサ故障判定回路214の判定ロジックを示した状態遷移図である。なお、以下の説明では、第1タイミングセンサ108の第1タイミング信号を受信することを「第1タイミングセンサ108を検出」と簡易表記し、図面にて「第1タイミングセンサ検出」と簡易表記する。また、第1センサ102の第1センサ信号の変化を検出することを「第1センサ信号変化検出」と簡易表記する。
図7に示したように、開始状態にて第1タイミングセンサ108から第1タイミング信号を受信すると第1遷移状態である状態SAとなる。状態SAにて第1センサ102からの第1センサ信号の変化の有無を監視し、第1センサ102の第1センサ信号の変化を検出したら、開始状態に戻る。
状態SAにて、第1センサ信号の変化無く、第1タイミングセンサ108を検出すると、エラー状態となる。
第2センサ故障判定回路218は、図6及び図7で説明した第1センサ故障判定回路214と同様であり、図6及び図7で説明した第1タイミングセンサ108、第1タイミング信号、第1センサ102、及び第1センサ信号のそれぞれに代えて、第2タイミングセンサ110、第2タイミング信号、第2センサ104、及び第2センサ信号に置き換えて理解される。
[第1タイミングセンサ108及び第2タイミングセンサ110の故障判定]
図8はタイミングセンサ故障判定回路220(図5参照)が受信する信号のタイミングチャートである。図8では第1タイミングセンサ108が故障して、第1タイミングセンサ108からの信号において、符号Bで示した部分の信号が受信できなかった様子が示されている。
第1タイミングセンサ108と第2タイミングセンサ110は、それぞれ1枚の用紙搬送サイクルで必ず1回ずつ、受信タイミングが発生する。このことを利用してタイミングセンサ故障判定回路220は、第1タイミングセンサ108からの第1タイミング信号と、第2タイミングセンサ110からの第2タイミング信号を常時監視し、両者が交互に受信できているか否かを監視する。
図8の符号Bで図示のように、第1タイミングセンサ108の第1タイミング信号が欠落し、第2タイミングセンサ110の第2タイミング信号を連続して受信した場合にエラー、つまり第1タイミングセンサ108の故障と判定する。第2タイミングセンサ110が故障した場合には、第1タイミング信号が連続して受信される。したがって、第1タイミング信号を連続して受信した場合は、第2タイミングセンサ110の故障と判定される。
図9はタイミングセンサ故障判定回路220(図5参照)における判定ロジックを示した状態遷移図である。以下の説明では、第1タイミングセンサ108の第1タイミング信号を受信することを「第1タイミングセンサ108を検出」と簡易表記し、図面にて「第1タイミングセンサ検出」と簡易表記する。同様に、第2タイミングセンサ110の第2タイミング信号を受信することを「第2タイミングセンサ110を検出」と簡易表記し、図面にて「第2タイミングセンサ検出」と簡易表記する。
図9に示したように、最初の開始状態で第1タイミングセンサ108を検出すると第1状態S1に遷移する。第1状態S1で第2タイミングセンサ110を検出すると第2状態S2に遷移する。第2状態S2で第1タイミングセンサ108を検出する第1状態S1に遷移する。第1状態S1にて第1タイミングセンサ108を検出するとエラー状態となる。つまり、連続して2回の第1タイミングセンサ108を検出するとエラー状態となる。また、第2状態S2にて第2タイミングセンサ110を検出するとエラー状態となる。つまり、連続して2回の第2タイミングセンサ110を検出するとエラー状態となる。
最初の状態で第2タイミングセンサ110を検出した場合は、第2状態S2に遷移する。第2状態S2で第1タイミングセンサ108を検出すると第1状態S1に遷移する。その後の状態遷移については、既に述べたとおりである。
[故障判定機能の無効設定について]
タイミングセンサ故障判定回路220、第1センサ故障判定回路214、及び第2センサ故障判定回路218はどれも、印刷処理相当の用紙搬送時以外の場合、例えば、メンテナンス処理時や手動操作時など、用紙Pが必ずしも連続的に順次搬送されない動作状況において、誤検出(誤判定)が発生する可能性がある。このようなケースを回避するために、必要に応じて故障判定の機能を無効化する無効設定ができるような構成とすることが好ましい。例えば、ユーザの選択操作により、故障判定機能を選択的に有効化又は無効化する設定を行うユーザインターフェースと、その選択操作に応動した設定処理を行う設定処理部とを備える構成とする。また、メンテナンスモードや手動操作モードに移行した場合には、プログラムによる自動選択により、故障判定機能が無効化される設定となる構成とする形態としてもよい。
[第2実施形態]
図10は第2実施形態に係る用紙搬送装置100Aの要部構成を示したブロック図である。図10において図4に示した構成と同一又は類似する要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
図10に示した用紙搬送装置100Aは、図4で説明した第1実施形態の用紙搬送装置100における第1タイミングセンサ108及び第2タイミングセンサ110の機能をロータリエンコーダ160で代替する構成である。ロータリエンコーダ160は、画像記録ドラム52(図1参照)の回転角度を検出する手段として設置されているロータリエンコーダである。ロータリエンコーダ160は、A相、B相、及びZ相の各信号を含むロータリエンコーダ信号を出力する。画像記録ドラム52は、「搬送機構と連動して回転するドラム」の一形態に相当する。
図1で説明した画像記録部18のインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kのそれぞれは、ロータリエンコーダ160が出力するロータリエンコーダ信号から生成される吐出タイミング信号にしたがって吐出タイミングが制御される。
図10に示す第2実施形態では、このロータリエンコーダ160から出力されるロータリエンコーダ信号を利用して、第1センサ102及び第2センサ104のそれぞれの用紙有無監視タイミングを規定する監視タイミング信号である第1タイミング信号と第2タイミング信号とを生成する。
図10に示すセンサ信号処理回路300は、A相信号入力端子306Aと、B相信号入力端子306Bと、Z相信号入力端子306Zと、タイミング信号生成回路310と、を備える。
A相信号入力端子306Aは、ロータリエンコーダ160が出力するA相信号を取り込む端子である。B相信号入力端子306Bは、ロータリエンコーダ160が出力するB相信号を取り込む端子である。Z相信号入力端子306Zは、ロータリエンコーダ160が出力するZ相信号を取り込む端子である。
タイミング信号生成回路310は、A相信号入力端子306A、B相信号入力端子306B及びZ相信号入力端子306Zから取り込んだロータリエンコーダ信号を基に、第1センサ102の監視タイミングを規定する第1タイミング信号と、第2センサの監視タイミングを規定する第2タイミング信号と、を生成する。タイミング信号生成回路310はタイミング信号生成部の一形態に相当する。第1センサ102の監視タイミングとは、第1センサ102によって用紙Pの有無を検出するタイミングのことを指す。第2センサの監視タイミングとは、第1センサ102によって用紙Pの有無を検出するタイミングのことを指す。
タイミング信号生成回路310から出力された第1タイミング信号は、第1用紙有無判定回路212、第1センサ故障判定回路214、及び遅延回路222に与えられる。
また、タイミング信号生成回路310から出力された第2タイミング信号は、第2用紙有無判定回路216、第2センサ故障判定回路218、及び比較回路224に与えられる。さらに、タイミング信号生成回路310は、アップダウンカウンタ(図10中不図示、図11の符号320として記載)のカウンタ値を制御CPU260に通知する。
図11はタイミング信号生成回路310の構成例を示すブロック図である。タイミング信号生成回路310は、アップダウンカウンタ320と、第1コンパレータ322と、第2コンパレータ324と、第3コンパレータ326と、第4コンパレータ328と、第5コンパレータ330と、第1オア回路332と、第2オア回路334と、アンド回路336とを含んで構成される。
アップダウンカウンタ320は、画像記録ドラム52の回転に同期してロータリエンコーダ信号のA相信号のパルスをカウントして、カウント値を出力する。A相とB相の二相の信号から画像記録ドラム52の回転方向を把握することができ、画像記録ドラム52の正方向回転時はカウントアップし、逆方向回転時はダウンカウントする。また、Z相の信号により、画像記録ドラム52の1回転ごとにリセットをかける。
第1コンパレータ322は、カウント値=0のときに信号を出力する。第2コンパレータ324は、第1センサ102(図11中不図示、図10参照)による用紙有無監視タイミングに対応した画像記録ドラム52の回転角度に相当する第1規定値とカウント値とを比較し、カウント値が第1規定値に一致したタイミングで第1入口タイミング信号を出力する。第3コンパレータ326は、第1センサ102(図11中不図示、図10参照)による用紙有無監視タイミングに対応した画像記録ドラム52の回転角度に相当する第2規定値とカウント値とを比較し、カウント値が第2規定値に一致したタイミングで第2入口タイミング信号を出力する。
第1オア回路332は、第2コンパレータ324の出力と第3コンパレータ326の出力との論理和を出力する。第1オア回路332から出力されるタイミング信号が第1センサ102(図11中不図示、図10参照)による用紙有無監視タイミングを規定する第1タイミング信号となる。
第4コンパレータ328は、第2センサ104(図11中不図示、図10参照)による用紙有無監視タイミングに対応した画像記録ドラム52の回転角度に相当する第3規定値とカウント値とを比較し、カウント値が第3規定値に一致したタイミングで第1出口タイミング信号を出力する。第5コンパレータ330は、第2センサ104(図11中不図示、図10参照)による用紙有無監視タイミングに対応した画像記録ドラム52の回転角度に相当する第4規定値とカウント値とを比較し、カウント値が第4規定値に一致したタイミングで第2出口タイミング信号を出力する。
第2オア回路334は、第4コンパレータ328の出力と第5コンパレータ330の出力との論理和を出力する。第2オア回路334から出力されるタイミング信号が第2センサ104(図11中不図示、図10参照)による用紙有無監視タイミングを規定する第2タイミング信号となる。
第1規定値、第2規定値、第3規定値及び第4規定値のそれぞれは、図1で説明した画像記録ドラム52の回転角度と、第1センサ102及び第2センサ104のそれぞれの用紙有無監視タイミングとの関係から予め設定されている。第1オア回路332及び第2オア回路334のそれぞれは、用紙Pの搬送周期に合わせて1枚に1回のタイミングでタイミング信号を出力する。
また、ロータリエンコーダ160自体が正常に機能しているか否かは、アップダウンカウンタ320の現在値であるカウンタ値を定期的に制御CPU260に送り、制御CPU260にてソフト的に異常の有無をチェックすることが可能である。すなわち、制御CPU260のプログラムにて、アップダウンカウンタ320のカウンタ状態を定期的に監視することで、ロータリエンコーダ160の故障などによるロータリエンコーダ機能の喪失を検出することができる。この場合、制御CPU260がロータリエンコーダ160の故障を判定するロータリエンコーダ故障判定部の一形態に相当する。
図12は図11に示したタイミング信号生成回路310のタイミングチャートである。図12において、第1規定値をE、第2規定値をG、第3規定値をF、第4規定値をHと記載した。E、F、G、及びHのそれぞれは予め定められた整数を表している。
図12に示したように、カウンタ値がE又はGと一致したタイミングで第1タイミング信号が生成され、カウンタ値がF又はHと一致したタイミングで第2タイミング信号が生成される。
図11及び図12で説明した構成によれば、画像記録ドラム52の回転中に、第1規定値、第2規定値、第3規定値、及び第4規定値にそれぞれに対応する特定の回転角度のタイミングでタイミング信号を発生させることができる。
図13は第2実施形態における正常な動作状態を示すタイミングチャートである。図13には、用紙Pを2枚搬送してエラーが発生していない場合のタイミングチャートが示されている。図13に示したタイミングチャートは、図5で説明したタイミングチャートと同等のものとなっている。
第2実施形態における第1センサ102及び第2センサ104の故障判定方法は、第1実施形態と同様の方法を採用することができる。なお、第2実施形態の構成の場合、図6で説明した第1タイミングセンサ108の第1タイミング信号に代えて、図11に示したタイミング信号生成回路310で生成される第1タイミング信号となる。
第2実施形態の構成によっても、第1実施形態で説明した構成と同様に、少ない部品点数で信頼性の確保が可能である。また、第2実施形態は、第1実施形態で用いた第1タイミングセンサ108と第2タイミングセンサ110が不要であり、更なる部品点数の削減が可能である。
[インクジェット記録装置10の制御系]
図14はインクジェット記録装置10の制御系の要部構成を示したブロック図である。図14では第1実施形態の構成を示している。なお、第2実施形態の構成については、図14における第1タイミングセンサ108と第2タイミングセンサ110とが省略された構成となり、かつ、センサ信号処理回路200に代えて、センサ信号処理回路300となり、ロータリエンコーダ160の信号が分岐されてセンサ信号処理回路300にも供給される構成となる。図14において、図1から図13で既に説明してある要素と同一の要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
図14に示したように、インクジェット記録装置10は、システムコントローラ350と、通信部352と、表示部354と、入力装置356と、搬送制御部362と、画像処理部364と、画像記録制御部366と、乾燥制御部368と、を備える。
システムコントローラ350は、インクジェット記録装置10の各部を統括制御する制御手段として機能し、かつ、各種演算処理を行う演算手段として機能する。システムコントローラ350は、制御CPU260と、リードオンリーメモリ(ROM;read-only memory)370と、ランダムアクセスメモリ(RAM:random access memory)372とを備えており、所定の制御プログラムに従って動作する。ROM370には、システムコントローラ350が実行する制御プログラム、及び、制御に必要な各種データが格納される。
通信部352は、所要の通信インターフェースを備える。インクジェット記録装置10は、通信部352を介して図示せぬホストコンピュータと接続され、ホストコンピュータとの間でデータの送受信を行うことができる。ここでいう「接続」には、有線接続、無線接続、又はこれらの組み合わせが含まれる。通信部352には、通信を高速化するためのバッファメモリを搭載してもよい。
通信部352は、印刷対象の画像を表す画像データを取得するための画像入力インターフェース部としての役割を果たす。
表示部354と入力装置356によってユーザインターフェースが構成される。入力装置356には、キーボード、マウス、タッチパネル、トラックボールなど、各種の入力装置を採用することができ、これらの適宜の組み合わせであってもよい。なお、表示部354の画面上にタッチパネルを配置した構成のように、表示部354と入力装置356とが一体的に構成されている形態も可能である。
オペレータは、表示部354の画面に表示される内容を見ながら入力装置356を使って印刷条件の入力や、画質モードの選択、故障判定機能の無効化の設定、その他の設定事項の入力、付属情報の入力/編集、情報の検索など各種情報の入力を行うことができる。また、オペレータは、入力内容その他の各種情報を表示部354の表示を通じて確認することができる。表示部354は、エラー情報を報知するエラー情報報知手段として機能し、ジャムの発生やセンサの故障が検出された場合に、表示部354の画面に異常を知らせるエラー情報が表示される。
搬送制御部362は、用紙Pの搬送系374を制御する。搬送系374は、図1で説明した給紙部12から排紙部24までの用紙Pの搬送に関わる用紙搬送部の機構の全体を含んでいる。図14では、画像記録ドラム52とチェーングリッパ64のみを示したが、搬送系374には、図1で説明した給紙ドラム40、処理液付与ドラム42、処理液乾燥ドラム46、及びバックテンション付与機構66なども含まれる。また、搬送系374には、図示せぬ動力源としてのモータ及びモータ駆動回路などの駆動部が含まれる。
搬送制御部362は、システムコントローラ350からの指令に応じて、搬送系374を制御し、給紙部12から排紙部24まで滞りなく用紙Pが搬送されるように制御する。
画像処理部364は、印刷対象の画像データに対する各種の変換処理や補正処理、並びにハーフトーン処理を行う。変換処理には、画素数変換、階調変換、色変換などが含まれる。補正処理には、濃度補正や、不吐ノズルによる画像欠陥の視認性を抑制するための不吐補正などが含まれる。
画像記録制御部366は、システムコントローラ350からの指令に応じてインクジェットヘッド56の駆動を制御する。インクジェットヘッド56は、図1で説明したインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kの各々を表しておいる。図14では、図示を簡略化するために、図1で説明したインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kをまとめてインクジェットヘッド56と記載した。
画像記録制御部366は、画像処理部364のハーフトーン処理を経て生成された各インク色のドットデータに基づき、画像記録ドラム52によって搬送される用紙Pに所定の画像が記録されるように、インクジェットヘッド56の駆動を制御する。
乾燥制御部368は、システムコントローラ350からの指令に応じてインク乾燥処理ユニット68を制御する。具体的には、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pに熱風が送風されるようにインク乾燥処理ユニット68の駆動を制御する。乾燥制御部368は、図4で説明したヒータ制御回路252を含んでいる。インク乾燥処理ユニット68は、図4で説明したヒータ250を含んでいる。
図4で説明したとおり、第1センサ102及び第2センサ104から得られる信号に基づき、用紙Pの滞留が検出された場合には、電源遮断回路254を通じてインク乾燥処理ユニット68のヒータ250が停止される。また、第1センサ102、第2センサ104、第1タイミングセンサ108及び第2タイミングセンサ110のいずれかのセンサの故障が検出された場合も、電源遮断回路254を通じてインク乾燥処理ユニット68のヒータ250が停止される。
[実施形態の利点]
(1)第1センサ102と第2センサ104のそれぞれに、故障診断機能を設けたことにより、検出機能の信頼性(冗長性)確保目的で複数個のセンサを設けることなく、乾燥部20の入口と出口のそれぞれに1個ずつの単一のセンサで用紙Pの滞留、すなわちジャムを検出することができる。これにより、部品点数を削減することができ、かつ、検出機能の信頼性を確保することができる。
(2)第1実施形態で説明したように、第1センサ102による用紙有無の監視タイミングを規定する第1タイミング信号を生成する第1タイミングセンサ108と、第2センサ104による用紙有無の監視タイミングを規定する第2タイミング信号を生成する第2タイミングセンサ110について、これらの故障診断機能を設けたことにより、信頼性(冗長性)確保目的で複数個のタイミングセンサを設けることが不要となっている。
第1タイミングセンサ108と第2タイミングセンサ110のそれぞれを1個ずつの単一のセンサとすることができ、少ない部品点数で、検出機能の信頼性を確保することができる。
(3)第2実施形態によれば、第1センサ102及び第2センサ104のそれぞれの用紙有無の監視タイミングを規定するための専用のタイミングセンサ(第1タイミングセンサ108及び第2タイミングセンサ110)を設けることなく、別用途で使用しているロータリエンコーダ160を利用して第1タイミング信号と第2タイミング信号とを生成することができる。第2実施形態によれば、部品点数の削減のみならず、部品種類も削減することができ、一層のコストダウンが可能である。
(4)第1実施形態及び第2実施形態のいずれの形態も、少ない部品点数で安価に信頼性が確保できる。
<実施形態の変形例>
[乾燥部の変形例]
紫外線硬化型インクを用いる場合、乾燥部20のインク乾燥処理ユニット68に代えて、又はこれと組み合わせて、乾燥部20に紫外線照射ユニットが設置される。紫外線照射ユニットは、紫外線ランプや紫外線発光ダイオードなどの紫外線光源を含んだ紫外線照射装置である。ヒータ250と同様に、エラーが検出された場合に、紫外線照射装置への電力供給が遮断され、紫外線照射装置による紫外線照射処理が停止される。
熱乾燥処理部であるインク乾燥処理ユニットと、光化学反応を利用する紫外線乾燥処理部である紫外線照射ユニットとを組み合わせて用いる場合、インク乾燥処理ユニットによる熱乾燥処理が施される熱乾燥処理領域と、紫外線照射ユニットによる紫外線照射処理が施される紫外線照射処理領域とを合わせた領域が「乾燥処理領域」となる。
なお、熱乾燥処理部と紫外線乾燥処理部とを組み合わせて用いる場合、熱乾燥処理後に紫外線照射を行う構成が好ましい。すなわち、用紙搬送方向の上流側に、熱乾燥の処理を行うインク乾燥処理ユニットを設置し、下流側に紫外線照射処理ユニットを設置する構成とする。
[第1センサ102及び第2センサ104の故障判定方法の変形例]
第2実施形態で述べたように、ロータリエンコーダ信号を基に生成される第1タイミング信号や第2タイミング信号は、画像記録ドラム52の回転に同期して生成される。したがって、第1タイミング信号の信号間における第1センサ102の信号変化の有無を監視する構成に代えて、画像記録ドラム52の回転に同期してロータリエンコーダ160から1回転に1回出力される信号(Z相)の信号間における第1センサ102の信号変化の有無を監視して第1センサ102の故障を判定してもよい。同様に、Z相信号の信号間における第2センサ104の信号変化の有無を監視して第2センサ104の故障を判定してもよい。
つまり、Z相信号の受信間に第1センサ102の信号変化の有無を監視し、信号変化が無い場合に、第1センサ102が故障していると判定することができる。同様に、Z相信号の受信間に第2センサ104の信号変化の有無を監視し、信号変化が無い場合に、第2センサ104が故障していると判定することができる。本実施形態では、Z相信号の受信間隔は、用紙Pの搬送周期の整数倍(本例の場合、2倍)に対応している。画像記録ドラム52が1回転で1枚の用紙Pを搬送する形態の場合は、Z相の受信間隔が用紙Pの搬送周期と一致するものとなる。
[用紙の搬送機構について]
乾燥部20において用紙Pを搬送する搬送機構は、図1で例示したチェーン搬送方式に限らず、ベルト搬送方式、ニップ搬送方式、テーブル搬送方式など、各種形態を採用することができ、これら方式を適宜組み合わせることができる。
[用紙について]
「用紙」とは、画像の記録に用いられる媒体を意味する。「用紙」という用語は、記録用紙、印刷用紙、印刷媒体、印字媒体、記録媒体、被印刷媒体、画像形成媒体、被画像形成媒体、受像媒体、被吐出媒体など様々な用語で呼ばれるものの総称である。用紙の材質や形状等は、特に限定されず、シール用紙、樹脂シート、フィルム、布、不織布、その他材質や形状を問わず、様々なシート体を用いることができる。枚葉の用紙は、予め規定のサイズに整えられたカット紙に限らず、連続用紙から随時、規定のサイズに裁断して得られるものであってもよい。
「画像」は広義に解釈するものとし、カラー画像、白黒画像、単一色画像、グラデーション画像、均一濃度(ベタ)画像なども含まれる。「画像」は、写真画像に限らず、図柄、文字、記号、線画、モザイクパターン、色の塗り分け模様、その他の各種パターン、若しくはこれらの適宜の組み合わせを含む包括的な用語として用いる。「画像の記録」は、画像の形成、印刷、印字、描画、プリントなどの用語の概念を含む。印刷装置という用語は、印刷機、プリンタ、画像記録装置、描画装置、画像形成装置などの用語と同義である。
[吐出方式について]
インクジェットヘッドのイジェクタは、液体を吐出するノズルと、ノズルに通じる圧力室と、圧力室内の液体に吐出エネルギーを与える吐出エネルギー発生素子と、を含んで構成される。イジェクタのノズルから液滴を吐出させる吐出方式に関して、吐出エネルギーを発生させる手段は、圧電素子に限らず、発熱素子や静電アクチュエータなど、様々な吐出エネルギー発生素子を適用し得る。例えば、発熱素子による液体の加熱による膜沸騰の圧力を利用して液滴を吐出させる方式を採用することができる。インクジェットヘッドの吐出方式に応じて、相応の吐出エネルギー発生素子が流路構造体に設けられる。
[画像記録部の変形例]
図1ではフルライン型のヘッドを用いるインクジェット記録装置10を説明したが、本発明の適用範囲はこれに限定されず、シリアル型(シャトルスキャン型)ヘッドなど、短尺の記録ヘッドを移動させながら、複数回のヘッド走査により画像記録を行う画像形成装置についても本発明を適用できる。
また、画像の記録方式はインクジェット方式に限らない。インクジェット記録装置の他、電子写真プリンタ、レーザープリンタ、オフセット印刷機、フレキソ印刷機など、各種の画像形成装置について、本発明を適用することができる。
[用紙搬送装置の応用例]
また、上述の実施形態では、インクジェットヘッドから吐出されたインクを付着させた用紙Pをチェーングリッパ64で搬送して、用紙P上のインクを乾燥させる例を説明したが、乾燥部によって乾燥する液の種類はインクに限らない。本発明の用紙搬送装置は、画像記録後の乾燥部に適用する以外に、様々な応用が可能である。例えば、画像記録部による画像記録を行う前の用紙に処理液その他の液体を付与する構成において、画像記録前の用紙の乾燥処理を行う乾燥部について本発明の用紙搬送装置を適用することができる。なお、本発明の用紙搬送装置は、用紙を搬送し、かつ乾燥を行う乾燥装置として理解することもできる。
以上説明した本発明の実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜構成要件を変更、追加、削除することが可能である。本発明は以上説明した実施形態に限定されるものでは無く、本発明の技術的思想内で当該分野の通常の知識を有するものにより、多くの変形が可能である。