(実施形態1)
本実施形態の赤外線検出装置1は、図1に示すように、焦電素子2と、第1変換部3と、第2変換部4と、デジタル回路5とを備えている。
第1変換部3は、焦電素子2から出力される電流信号を電圧信号に変換する。第2変換部4は、第1変換部3の出力値をデジタル値に変換する。デジタル回路5には、第2変換部4の出力値が入力される。
デジタル回路5は、ノイズ補正部51と、切替部52とを有している。ノイズ補正部51は、第1変換部3の入力と第1変換部3の出力との少なくとも一方に生じる突発性ノイズの有無を検知し、前記突発性ノイズありと判定した場合に当該突発性ノイズによって第2変換部4の出力に生じたノイズ成分を除去する。切替部52は、ノイズ補正部51を有効にする第1モードとノイズ補正部51を無効にする第2モードとの2つの動作モードを切り替える。
この構成によれば、赤外線検出装置1は、第2変換部4の出力値(デジタル値)に対する演算処理によって、突発性ノイズを検知でき、且つ突発性ノイズありと判定された場合には突発性ノイズによって第2変換部4の出力に生じたノイズ成分を除去できる。したがって、赤外線検出装置1は、突発性ノイズに起因した赤外線の誤検出を低減できる。
しかも、この赤外線検出装置1は、切替部52を有するから、ノイズ補正部51が常に有効に機能する訳ではなく、ノイズ補正部51を有効にする第1モードと、ノイズ補正部51を無効にする第2モードとを切り替え可能である。つまり、赤外線検出装置1は、突発性ノイズの発生時にノイズ成分を除去する第1モードと、突発性ノイズの発生時にノイズ成分を除去しない第2モードとの2つの動作モードが切替部52によって切り替え可能である。したがって、赤外線検出装置1は、たとえば出荷前の検査等においては、動作モードが第2モードに設定されることにより、突発性ノイズの発生時にノイズ補正部51が機能せず、ノイズ成分が除去されずに残ることになる。その結果、赤外線検出装置1は、その出力からでも突発性ノイズの有無が判断可能になり、何らかの欠陥により頻繁に突発性ノイズを生じる不良品であれば、出荷前の検査等において不良品と判断可能になる。
ここでいう突発性ノイズは、第1変換部3の入力と第1変換部3の出力との少なくとも一方に生じるノイズのうち、定常的に発生するのではなく、突発的に発生するノイズである。
本実施形態においては、突発性ノイズは、焦電素子2で生じるポップコーンノイズや、第1変換部3を構成するIC(集積回路)製造時の結晶欠陥によるノイズのように、電荷性のノイズである。なお、ポップコーンノイズは、焦電素子2を構成する焦電体基板や回路基板等の熱膨張率の相違により生じたピッチング部分やマイクロクラック部分に力学的ストレスが集中し、不要な電荷が生じることによって発生する。また、焦電体基板が回路基板に取り付けられるときの位置ずれや誤差、焦電体基板自体の製造ばらつきなども、ポップコーンノイズの要因と考えられる。以下では、突発性ノイズは1kHz以上のインパルス状のノイズであると仮定して説明する。
ここで、第2変換部4は、所定の時間間隔で設定されるサンプリングタイミングで第1変換部3の出力値を量子化してデジタル値に変換するように構成されていることが好ましい。この場合、デジタル回路5は、連続する複数回分のサンプリングタイミングについてそれぞれ1つ前のサンプリングタイミングとの間でデジタル値の差分値を演算する演算部53を有していてもよい。この場合、ノイズ補正部51は、前記複数回分のサンプリングタイミングについて求めた前記差分値と所定の閾値との比較結果に基づいて突発性ノイズの有無を検知するように構成される。
また、この赤外線検出装置1において、切替部52は、前記第1モードに比べて前記第2モードにて、前記閾値を上げるように構成されていることが好ましい。
さらに、切替部52は、デジタル回路5に外部から入力される切替信号に従って、前記動作モードを切り替えるように構成されていることが好ましい。
以下、本実施形態の赤外線検出装置1について詳しく説明する。ただし、以下に説明する赤外線検出装置1は、本発明の一例に過ぎず、本発明は、下記実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
本実施形態においては、赤外線検出装置1が、検知エリア内の人の存否を検知する人体検知に用いられる場合を例とする。赤外線検出装置1は、焦電素子2が受光する赤外線量の変化に基づいて検知エリア内の人の存否を判定し、その判定結果を外部装置(外部回路)へ出力するように構成されている。ただし、赤外線検出装置1は、人体検知に限らず、たとえばガス検知等の他の用途で用いられてもよい。
本実施形態の赤外線検出装置1は、図1に示すように、上述した焦電素子2、第1変換部3、第2変換部4、デジタル回路5に加えて、第1変換部3を制御する制御部6を備えている。ここで、第2変換部4とデジタル回路5と制御部6とは、たとえばメモリおよびプロセッサを有するマイコン(マイクロコンピュータ)を主構成とし、プロセッサがメモリに記憶されているプログラムを実行することにより実現される。マイコンを第2変換部4、デジタル回路5、制御部6として機能させるプログラムは、たとえば記録媒体に記憶されて提供されてもよい。
焦電素子2は、検知エリアから赤外線を受光し、受光した赤外線量の変化に応じて電流信号を出力する。
第1変換部3は、図1に示すように電流信号を電圧信号に変換する電流電圧変換回路(以下、「IV変換回路」という)31と、IV変換回路31の出力する電圧信号を増幅する増幅回路32とを有している。
IV変換回路31は、図2に示すように、第1の演算増幅器311と、コンデンサ312と、スイッチ313とを有している。第1の演算増幅器311は、反転入力端子が焦電素子2に接続されている。第1の演算増幅器311の非反転入力端子は、基準電圧を発生する基準電源314に接続されている。
コンデンサ312は、第1の演算増幅器311の出力端子−反転入力端子間に接続されており、交流帰還用の容量素子として機能する。スイッチ313は、第1の演算増幅器311の出力端子−反転入力端子間において、コンデンサ312と並列に接続されている。
このように構成される容量型のIV変換回路31は、焦電素子2からの電流信号を、コンデンサ312のインピーダンスを用いて電圧信号に変換する。第1の演算増幅器311から出力される電圧は、基準電源314が発生する基準電圧からコンデンサ312の両端電圧を差し引いた値となる。そのため、IV変換回路31の出力は、基準電圧を動作点として、焦電素子2が赤外線を受光したことによる電流信号の変化に応じて動作点から変化する電圧信号となる。この種のIV変換回路31は、SN比が比較的高いという利点がある。
なお、以下では説明を簡単にするために、上記動作点(基準電圧)にあるときのIV変換回路31の出力をゼロとして説明する。つまり、IV変換回路31の出力は、第1の演算増幅器311から出力される電圧の動作点からの変化量を意味する。
さらに、IV変換回路31は、第2の演算増幅器315と、コンデンサ316と、抵抗317,318とからなるフィードバック回路を有している。
第2の演算増幅器315は、反転入力端子が抵抗317を介して基準電源314に接続され、出力端子−反転入力端子間にコンデンサ316が接続されることにより、積分回路を構成する。第2の演算増幅器315は、非反転入力端子が第1の演算増幅器311の出力端子に接続され、出力端子が抵抗318を介して第1の演算増幅器311の反転入力端子に接続されている。これにより、IV変換回路31は、フィードバック回路により所定周波数以下の不要な低周波成分(以下、「不要成分」という)を低減させた電圧信号を出力することになる。言い換えれば、第1変換部3はハイパスフィルタを有している。不要成分は、焦電素子2から出力される電流信号に対して、たとえば周囲温度の変化などに起因して検知対象(人体)とは無関係に生じる低周波の揺らぎ成分である。
スイッチ313は、制御部6からの第1制御信号によって制御され、オン時には、コンデンサ312に蓄積されている電荷を放電するための放電経路を形成する放電部として機能する。つまり、スイッチ313がオンすると、コンデンサ312の両端電圧がゼロにリセットされ、IV変換回路31の出力値はゼロ(動作点)にリセットされる。
増幅回路32は、第3の演算増幅器321と、入力コンデンサ322と、帰還コンデンサ323と、抵抗324と、スイッチ325とを有している。
第3の演算増幅器321は、反転入力端子が入力コンデンサ322を介して第1の演算増幅器311の出力端子に接続され、出力端子−反転入力端子間に帰還コンデンサ323が接続されている。つまり、増幅回路32は、容量型の電圧増幅回路を構成しており、その増幅率は、入力コンデンサ322の容量「C1」、帰還コンデンサ323の容量「C2」を用いて「C1/C2」で表される。この種の増幅回路32は、低消費電力であるという利点がある。
抵抗324およびスイッチ325は、第3の演算増幅器321の出力端子−反転入力端子間において、帰還コンデンサ323と並列に接続されている。第3の演算増幅器321の非反転入力端子には基準電源314が接続されている。
スイッチ325は、制御部6からの第2制御信号によって制御され、オン時には、帰還コンデンサ323の両端間を短絡する。つまり、増幅回路32は、スイッチ325がオンした状態では、増幅率「1」で動作し、第3の演算増幅器321の反転入力端子に入力される電圧信号をそのまま出力する。第3の演算増幅器321の出力端子は、第2変換部4に接続されている。
第2変換部4は、第1変換部3から入力されるアナログ値(電圧値)をデジタル値に変換(AD変換)してデジタル回路5に出力するAD変換器である。本実施形態では、一例として第2変換部4には、逐次比較型のAD変換器が用いられている。これにより、第2変換部4は、簡単な回路構成で高い分解能を実現できる。ただし、第2変換部4は、逐次比較型に限らず、その他の方式のAD変換器が用いられてもよい。たとえばΔΣ(デルタシグマ)方式のAD変換器が第2変換部4に用いられていれば、比較的小型で且つ高精度の第2変換部4を実現することができる。
一般的に、AD変換器は、AD変換可能な(つまりAD変換特性が保証される)入力電圧範囲(入力レンジ)がフルスケールとして個々に決められている。そのため、第2変換部4においても、フルスケール内のアナログ値についてのみデジタル値に変換可能であって、フルスケールの上限値を超えるアナログ値については当該上限値に相当するデジタル値に変換される。つまり、第2変換部4は、このフルスケール外の振幅を持つ信号が入力されると、出力が飽和することになる。
この第2変換部4は、所定の時間間隔(サンプリング周期)で設定されるサンプリングタイミングで第1変換部3の出力値を量子化してデジタル値に変換する。本実施形態では、第2変換部4は、一例として10msのサンプリング周期で設定されるサンプリングタイミングでAD変換を行うと仮定する。なお、人体検知においては検知対象は1Hz付近であるので、サンプリング周期は、1sよりも十分に短い周期(たとえば0.1s以下)に設定される。
デジタル回路5は、第2変換部4から入力されるデジタル信号に基づいて、検知エリア内の人体の存否を判定する。つまり、デジタル回路5は、第2変換部4の出力値(第1変換部3の出力に相当するデジタル値)と、予め定められている第1の閾値とを比較することにより検知エリア内の人体の存否を判定する判定部(図示せず)を有している。判定部は、第2変換部4の出力値の絶対値が第1の閾値を超えている期間には、検知エリア内に人がいると判定してHレベルの検知信号を出力し、閾値以下であれば検知エリア内に人はいないと判定して検知信号をLレベルとする。
また、デジタル回路5は、人体検知時に焦電素子2が発生する電流信号の周波数帯域(ここでは0.1Hz〜10Hz程度と仮定する)を通過帯域とするデジタルバンドパスフィルタ(以下、バンドパスフィルタを「BPF」という)としての機能を有している。
ここで、アナログBPFを用いる場合で、0.1Hz〜10Hz程度の信号を通過させるためには、回路定数の比較的大きなコンデンサ等の素子が必要になる。このような素子はIC(集積回路)に外付けされることになるので、この構成では赤外線検出装置1の回路部分をワンチップ化することができない。これに対して、本実施形態の赤外線検出装置1は、上述のようにデジタルBPFを用いたことにより、外付け部品が不要となり回路部分をワンチップ化することができるという利点がある。
上記構成の赤外線検出装置1では、焦電素子2から出力された電流信号は、第1変換部3のIV変換回路31にて電圧信号に変換された後、第1変換部3の増幅回路32で増幅され、第2変換部4に入力される。つまり、第2変換部4に入力される電圧信号は、焦電素子2の出力(電流信号)をIV変換回路31で電圧信号に変換後さらに増幅回路32で増幅した信号である。第2変換部4は、入力された電圧信号をデジタル値に変換し、デジタル回路5へ入力する。デジタル回路5は、入力されたデジタル値に基づいて検知エリア内の人体の存否を判断し、判断結果を外部装置(外部回路)に出力する。
また、デジタル回路5は、第2変換部4の出力値に応じたデジタル信号をシリアル出力するように構成されている。具体的には、デジタル回路5は、スタートビット、メインフィルタ出力、検知信号状態、動作モード判定結果、ストップビットからなる信号形式を採用する。メインフィルタ出力は、デジタルBPFを通すことにより第1変換部3の出力から少なくとも不要成分が除かれた信号の瞬時値を表す。デジタル回路5は、1回の通信でたとえば16ビットのデジタル信号を、送信クロック(たとえば20kHz)に同期してシリアル通信にて出力する。これにより、デジタル回路5は、クロックと各種のデータとを重畳させて1本の信号線で伝送可能となるので、端子数を少なくでき赤外線検出装置1の小型化につながるという利点がある。
なお、デジタル回路5は、第2変換部4の出力値を、そのままデジタル信号としてシリアル出力してもよい。つまり、デジタル回路5は、第2変換部4の出力するデジタル信号を、デジタルBPFを通すことなくシリアル出力してもよい。
また、制御部6は、IV変換回路31のスイッチ313をオンしてコンデンサ312をリセットすることにより、IV変換回路31の出力から所定周波数以下の不要成分を除去する。
すなわち、制御部6は、IV変換回路31の出力から不要成分を除去するようなタイミングで第1制御信号を出力し、スイッチ313をオンする。具体的に説明すると、制御部6は、不要成分を除去するように予め決められている周期でクロック信号を発生する発振器(図示せず)を有し、このクロック信号に基づいて第1制御信号を生成する。たとえば不要成分の上限の周波数が0.1Hzであれば、この周波数に対応する10秒という時間がクロック信号を発生する周期になる。制御部6が、このようにして決められている周期でスイッチ313をオンし、コンデンサ312をリセットすることにより、IV変換回路31の出力から不要成分を除去する。
また、制御部6は、第2制御信号によって増幅回路32のスイッチ325をオンし、増幅回路32を無効、つまり増幅回路32の増幅率を「1」とする。制御部6は、デジタル回路5に接続されており、デジタル回路5の入力(第2変換部4の出力)が飽和しているときに、第2制御信号を出力する。具体的には、制御部6は、第2変換部4の入力がフルスケールの上限値を超えており、第2変換部4の出力が飽和しているか否かを判定する機能(フルスケール判定機能)を有している。制御部6は、デジタル回路5の入力が飽和していれば第2制御信号を出力し、増幅回路32のスイッチ325をオンするように構成されている。
これにより、第2変換部4の入力がフルスケールの上限値を超える場合には、赤外線検出装置1は、増幅回路32が無効化され、第1変換部3の出力が小さくなるので、第2変換部4の入力がフルスケール内に収まるようになる。言い換えれば、増幅回路32は、比較的振幅の大きな入力信号が入力されることがあっても、第2変換部4に対してはフルスケールを超えない大きさのアナログ値を出力することになり、赤外線検出装置1が不感となることを防止できる。
また、制御部6は、後述する検知部511にて突発性ノイズありと判定された場合にも、IV変換回路31のスイッチ313と増幅回路32のスイッチ325との少なくとも一方をオンするように構成されていてもよい。これにより、第1変換部3は、突発性ノイズの発生時に、IV変換回路31と増幅回路32との少なくとも一方の利得を下げることにより、突発性ノイズの影響を抑制できる。
なお、赤外線検出装置1は、増幅回路32を無効にする構成として、スイッチ325および抵抗324に代えて、逆並列に接続された一対のダイオード(図示せず)を有していてもよい。この場合、赤外線検出装置1は、制御部6によるスイッチ325の制御が不要になり、より簡単な構成で、第2変換部4に対してはフルスケールを超えない大きさのアナログ値を出力することができる。
ところで、本実施形態に係る赤外線検出装置1は、たとえば第1変換部3の入力信号(電流信号)に図3に「A」で示すようなインパルス状の突発性ノイズが含まれていると、第1変換部3の出力信号(電圧信号)は図3に「B」で示すように急峻に変化する。図3では、横軸を時間軸として、「A」に第1変換部3の入力電流を示し、「B」に第1変換部3の出力電圧を示している。図3中の黒丸は各サンプリングタイミングで得られる第2変換部4の出力値(デジタル値)を表し、「ΔV」は突発性ノイズの振幅を表している。
すなわち、第1変換部3の入力にポップコーンノイズなどの電荷性のノイズが突発的に発生すると、第1変換部3の出力は急峻に立ち上がることになる。さらに、第1変換部3は、不要成分を低減させるためのハイパスフィルタ(フィードバック回路)が設けられているので、このハイパスフィルタの時定数により、一旦立ち上がった出力は比較的ゆっくりゼロ(動作点)に戻ることになる。
つまり、第1変換部3は、たとえば周囲温度の変化などに起因して検知対象である人体とは無関係に生じる低周波の揺らぎ成分(不要成分)に対する利得を、ハイパスフィルタにて抑えている。そのため、第1変換部3は、人体検知時に焦電素子2が発生する電流信号の周波数帯域(0.1Hz〜10Hz程度)に対して利得を持つように、ハイパスフィルタに比較的長い時定数を持つ。
したがって、第1変換部3の出力は、突発性ノイズの影響で急峻に立ち上がった後、比較的長い時間(数十秒程度、たとえば40秒)をかけてゼロに復帰するステップ応答(ステップ信号)となる。その結果、赤外線検出装置1は、突発性ノイズが生じると、突発性ノイズの影響により、焦電素子2の出力にかかわらず第1変換部3の出力が変動することになる。ステップ信号は、広い周波数帯域に強度を持つので、第1変換部3の出力変動に伴い、後段のBPF(デジタル回路5)を通った後の出力にも変動を生じることになる。ここでは、BPFの通過帯域は0.1Hz〜10Hz程度であるので、赤外線検出装置1は0.1Hz〜10Hz程度を中心とする出力変動を生じ、誤検知の要因となる可能性がある。
そこで、本実施形態の赤外線検出装置1は、このような突発性ノイズの有無を検知するための構成として、演算部53とノイズ補正部51とをデジタル回路5に有している。ノイズ補正部51は、突発性ノイズの有無を検知する検知部511と、突発性ノイズに起因して第2変換部4の出力に生じたノイズ成分を除去する除去部512との2つの機能を有している。
演算部53は、連続する複数回分のサンプリングタイミングについてそれぞれ1つ前のサンプリングタイミングとの間でデジタル値の差分値を演算する。言い換えれば、演算部53は連続する2回分のサンプリングタイミングで得られたデジタル値の差分値を求める。本実施形態では、演算部53は、連続する3回分のサンプリングタイミングについてそれぞれ差分値を演算する。
ノイズ補正部51は、演算部53にて複数回分(3回分)のサンプリングタイミングについて求められた差分値と所定の閾値との比較結果に基づいて電流信号に含まれる突発性ノイズの有無を、検知部511によって検知する。検知部511は、各サンプリングタイミングについて演算部53で求められた差分値を第2の閾値と大小比較し、差分値が第2の閾値より大きければ比較結果を「大」とし、差分値が第2の閾値以下であれば比較結果を「小」とする。検知部511は、このような大小比較を複数回分のサンプリングタイミングについて行い、その際の比較結果の変化パターンから、突発性ノイズの有無を検知する。ここでは、検知部511が第2の閾値と比較する差分値は絶対値とするが、第2の閾値と比較される差分値は絶対値に限らない。
本実施形態においては、ノイズ補正部(検知部511)51は、差分値と閾値との比較結果が下記(1)の条件を満たす場合に、突発性ノイズが含まれていると判定するように構成されている。
(1)1回目のサンプリングタイミングについては差分値が第2の閾値を下回り、2回目のサンプリングタイミングについては差分値が第2の閾値を上回り、3回目のサンプリングタイミングについては差分値が第2の閾値を下回る。
つまり、検知部511は、1回目のサンプリングタイミングについては「小」、2回目のサンプリングタイミングについては「大」、3回目のサンプリングタイミングについては「小」の比較結果が得られると、突発性ノイズありと判定する。要するに、連続する3回分のサンプリングタイミングについての比較結果が、「小」→「大」→「小」の順で変化した場合に、検知部511は、突発性ノイズありと判定する。
また、ノイズ補正部51は、突発性ノイズありと検知部511にて判定した場合に、当該突発性ノイズによって第2変換部4の出力に生じたノイズ成分を、除去部512によって除去する。ここでは、ノイズ補正部51は、突発性ノイズありと判定した場合に、第2の閾値を上回った差分値の大きさをバッファ54内の値に加算し、バッファ54内の値を補正値として、当該補正値を第2変換部4の出力値から減算することによりノイズ成分を除去する。
すなわち、除去部512は、閾値を上回った差分値の大きさに基づいて補正値(デジタル値)を設定し、この補正値を第2変換部4の出力値(デジタル値)から減算することにより、突発性ノイズの影響を抑制する。具体的には、除去部512は、検知部511で突発性ノイズありと判定されると、そのときの判定に用いられた差分値のうち、第2の閾値より大きいと判断された差分値をバッファ54内の値に加算する。除去部512は、バッファ54内で積算された補正値を、第2変換部4の出力値から減算することにより、突発性ノイズの影響を抑制した補正後の出力値を出力する。
さらに、除去部512は、バッファ54内の補正値を時間経過に伴い一定の傾きで徐々に低下させるように構成されており、補正値はいずれゼロに戻る。補正値の傾き(低下率)は、第2変換部4の出力値の傾き、つまり、突発性ノイズに起因して立ち上がった第2変換部4の出力値が、その後低下する際の傾きに合わせて予め決められている。この第2変換部4の出力の傾きは、上述したように第1変換部3におけるハイパスフィルタ(フィードバック回路)の時定数によって決まっている。
なお、補正値の傾きと第2変換部4の出力値の傾きとが完全には一致しないために、補正値を第2変換部4の出力値から減算することで得られる補正後の出力値に、変動が生じることがある。ただし、補正後の出力値に生じる変動については、後段のBPF(デジタル回路5)が利得を持たない領域に設定され、この変動はBPF通過後の出力には影響しない。
ところで、本実施形態に係る赤外線検出装置1は、ノイズ補正部51を有効にする第1モードと、ノイズ補正部51を無効にする第2モードとの2つの動作モードを切り替える切替部52を、デジタル回路5に有している。言い換えれば、切替部52は、ノイズ補正部51を有効にする状態(第1モード)と、ノイズ補正部51を無効にする状態(第2モード)とを択一的に選択する。
すなわち、赤外線検出装置1は、ノイズ補正部51が常に有効に機能するのではなく、第1モードで動作中にだけノイズ補正部51が有効に機能し、第2モードで動作中にはノイズ補正部51としての機能が無効化される。つまり、赤外線検出装置1は、第1モードでは突発性ノイズの発生時にノイズ成分を除去し、第2モードでは突発性ノイズの発生時にノイズ成分を除去しないように、同様の突発性ノイズが発生しても動作モードによって異なる動作をする。
第1モードから第2モードへ切り替えるために、切替部52は、たとえばノイズ補正部51のうち検知部511と除去部512との少なくとも一方の動作を停止させる。あるいは、切替部52は、検知部511と除去部512との間で検知部511の検知結果を無効化することにより、ノイズ補正部51が有効な第1モードからノイズ補正部51が無効な第2モードへ切り替えてもよい。
また、切替部52は、ノイズ補正部51のうち検知部511での突発性ノイズの検知感度を低下させることにより、第1モードから第2モードへ切り替える構成であってもよい。具体的には、切替部52は、第1モードに比べて第2モードにて、第2の閾値を上げるように構成される。第2の閾値の上げ幅が大きくなるほど、検知部511の感度の落ち幅も大きくなる。これにより、赤外線検出装置1は、第2モードでの検知部511の感度が第1モードに比べて低くなり、第1モードでは突発性ノイズありと検知部511で判定されるような状況でも、第2モードでは突発性ノイズなしと検知部511に判定させることができる。
このように、切替部52は、第1モードと第2モードとで閾値(第2の閾値)の大きさを変えるだけの構成であれば、ノイズ補正部51の動作を停止する場合に比べて、構成の簡略化を図ることができる。
本実施形態においては、切替部52は、デジタル回路5に外部から入力される切替信号に従って、動作モードを切り替えるように構成されている。ここでいう切替信号は、たとえば赤外線検出装置1に設けられている検査端子(図示せず)に対して、検査装置などの外部装置(外部回路)から入力される電気信号であって、第1モードと第2モードとの一方を指定する内容の信号である。
これにより、赤外線検出装置1は、外部装置から検査端子に入力される切替信号に従って、ノイズ補正部51の有効な第1モードとノイズ補正部51の無効な第2モードとが切り替わることになる。たとえば、出荷前の検査においてノイズ補正部51を無効とする場合には、赤外線検出装置1の動作モードは、出荷前の検査の開始時に切替信号によって第2モードに切り替えられ、出荷前の検査の終了時に切替信号によって第1モードに切り替えられる。
ただし、赤外線検出装置1は、専用の検査端子を有している必要はなく、たとえば電源供給用の電源端子(図示せず)や、デジタル回路5の出力用の出力端子(図示せず)などを、検査端子に兼用してもよい。たとえば、電源端子を検査端子に兼用する場合、赤外線検出装置1は、電源投入時に電源電圧の定格値の1/2の大きさの電圧が電源端子に印加された場合には、第2モードで動作する。その後、電源電圧の定格値で電源が再投入されることにより、赤外線検出装置1は、動作モードが第1モードに切り替わり、第1モードで動作する。
このように、切替部52が、デジタル回路5に外部から入力される切替信号に従って動作モードを切り替える構成によれば、ユーザは、検査装置などの外部装置を用いて、赤外線検出装置1の動作モードを任意に切り替えることができる。したがって、赤外線検出装置1は、たとえば出荷前の検査においては動作モードを第2モードとし、その他は動作モードを第1モードとすることなどができる。
また、図1の例では、赤外線検出装置1は、ノイズ補正部51で突発性ノイズありと判定された回数を数えるカウンタ55をデジタル回路5に有している。ただし、本実施形態では、カウンタ55で数えられた回数はとくに使用しないので、カウンタ55は省略されていてもよい。
以下に、本実施形態に係る赤外線検出装置1の第1モードでの動作であって、突発性ノイズが発生した際の動作について、図4を参照して説明する。図4では、横軸を時間軸として、「A」に第1変換部3の出力電圧を示し、「B」に演算部53で求めた差分値を示し、「C」に補正値を示し、「D」に補正後の出力値を示している。また「ts1」〜「ts12」はそれぞれサンプリングタイミングを表している。図4では、サンプリングタイミングts4とサンプリングタイミングts5との間の時点で突発性ノイズが発生した例を示している。
すなわち、突発性ノイズが発生すると、第1変換部3の出力は、図4に「A」で示すように突発性ノイズが発生した時点において急峻に立ち上がり、その後、比較的長い時間をかけてゆっくりと低下する。そのため、図4に「B」で示すように、演算部53で求まる差分値は、突発性ノイズの発生時点の直前のサンプリングタイミングts4までは、いずれも第2の閾値よりも小さくなる。たとえばサンプリングタイミングts4についての差分値は、サンプリングタイミングts4での第2変換部4の出力値と、サンプリングタイミングts3での第2変換部4の出力値との差分であって、第2の閾値より小さくなる。
一方、突発性ノイズの発生時点の直後のサンプリングタイミングts5では、演算部53で求まる差分値は、第2の閾値より大きくなる。つまり、サンプリングタイミングts5についての差分値は、サンプリングタイミングts5での第2変換部4の出力値と、サンプリングタイミングts4での第2変換部4の出力値との差分であって、第2の閾値より大きくなる。
その後のサンプリングタイミングts6以降では、演算部53で求まる差分値は、第2の閾値より小さくなる。たとえばサンプリングタイミングts6についての差分値は、サンプリングタイミングts6での第2変換部4の出力値と、サンプリングタイミングts5での第2変換部4の出力値の差分であって、第2の閾値より小さくなる。
したがって、ノイズ補正部51での差分値と第2の閾値との比較結果は、サンプリングタイミングts1〜ts4では「小」であり、サンプリングタイミングts5で「大」となり、サンプリングタイミングts6〜ts12で再び「小」となる。要するに、サンプリングタイミングts1〜ts12のうち、連続する3回分のサンプリングタイミングts4〜ts6に着目すると、ノイズ補正部51での比較結果は「小」→「大」→「小」の順で変化している。
そのため、ノイズ補正部51は、この比較結果に基づいて、検知部511にて突発性ノイズありと判定する。ただし、ノイズ補正部51は、連続する3回分のサンプリングタイミングts4〜ts6についての比較結果から突発性ノイズの有無を検知するので、3回目のサンプリングタイミングts6の時点で突発性ノイズありと判定することになる。
その後、ノイズ補正部51は、差分値が第2の閾値を上回ると判断されたサンプリングタイミングts5での差分値を、除去部512にて、図4に「C」で示すように補正値として設定し、この補正値をバッファ54に格納する。除去部512が補正値を設定するタイミングは、検知部511が突発性ノイズありと判定したタイミングであって、図4の例ではサンプリングタイミングts6の時点である。補正値は、補正タイミングts6の時点から一定の傾きで徐々に低下する。
ここで、除去部512が補正値を減算する対象となるのは、当該補正値と同じサンプリングタイミングにおける第2変換部4の出力値ではなく、1つ手前のサンプリングタイミングにおける第2変換部4の出力値である。つまり、除去部512は、たとえばサンプリングタイミングts5における第2変換部4の出力値からは、サンプリングタイミングts6の時点での補正値を減算する。同様に、除去部512は、たとえばサンプリングタイミングts6における第2変換部4の出力値からは、サンプリングタイミングts7の時点での補正値を減算する。
その結果、第2変換部4の出力値から補正値を減算した補正後の出力値は、図4に「D」で示すように突発性ノイズの影響が抑制され、突発性ノイズの発生時点の前後においても大きく変動することはない。ただし、補正後の出力値は、1つ手前のサンプリングタイミングにおける第2変換部4の出力値に基づくので、実際の第2変換部4の出力からサンプリング周期(たとえば10ms)の分だけ、遅延することになる。
図5は、上述した赤外線検出装置1の第1モードにおけるデジタル回路5の処理の説明図である。
すなわち、デジタル回路5は、第2変換部4の出力値から差分値を求め(S1)、その差分値と第2の閾値との比較結果から突発性ノイズの有無を検知する(S2)。突発性ノイズありと判定すると、デジタル回路5は、そのときの差分値を補正値としてバッファ54に格納し(S3)、第2変換部4の出力値から補正値を減算する(S4)。また、デジタル回路5は、バッファ54に格納した補正値を一定の傾きで徐々に低下させる(S5)。
デジタル回路5は、補正後の出力値についてBPFにて不要成分を除去し(S6)、補正後の出力値を用いて人体検知を行う(S7)。さらに、デジタル回路5は、BPFにて不要成分を除去した補正後の出力値を、シリアル出力する(S8)。また、デジタル回路5は、フルスケール判定機能により第2変換部4の出力が飽和しているか否かを判定し(S9)、判定結果に応じて増幅回路32を無効にする。
以上が、本実施形態に係る赤外線検出装置1の第1モードでの動作である。
次に、本実施形態に係る赤外線検出装置1の第2モードでの動作について説明する。
赤外線検出装置1は、第2モードにおいては、ノイズ補正部51が無効になるので、上述した第1モードにおける動作から、ノイズ補正部51の機能を除いた動作を行うことになる。つまり、赤外線検出装置1は、第2モードで動作中には、たとえ突発性ノイズが発生しても、突発性ノイズに起因したノイズ成分を第2変換部4の出力から除去することがない。
以上説明した本実施形態の赤外線検出装置1によれば、第2変換部4の出力値(デジタル値)に対する演算処理によって、突発性ノイズの有無を検知できる。したがって、赤外線検出装置1は、突発性ノイズの有無を検知するための検知回路を付加することなく、突発性ノイズの有無を検知する機能を付加することができる。すなわち、この赤外線検出装置1は、回路規模を大きくすることなく、突発性ノイズの有無を検知できるという利点がある。
さらに、本実施形態では、ノイズ補正部51は、突発性ノイズありと判定した場合には、突発性ノイズによって第2変換部4の出力に生じたノイズ成分を除去するので、突発性ノイズの影響を抑制することができる。したがって、この赤外線検出装置1は、突発性ノイズに起因した誤検出を低減できる。
しかも、この赤外線検出装置1は、切替部52を有するから、ノイズ補正部51を有効にする第1モードと、ノイズ補正部51を無効にする第2モードとを切り替え可能である。すなわち、赤外線検出装置1は、たとえば出荷前の検査等においては、動作モードが第2モードに設定されることにより、突発性ノイズの発生時にノイズ補正部51が機能せず、ノイズ成分が除去されずに残ることになる。その結果、赤外線検出装置1は、その出力からでも突発性ノイズの有無が判断可能になり、何らかの欠陥により頻繁に突発性ノイズを生じる不良品であれば、出荷前の検査等において不良品と判断可能になる。
また、デジタル回路5は、連続する複数回分のサンプリングタイミングについてそれぞれ1つ前のサンプリングタイミングとの間でデジタル値の差分値を演算する演算部53を有している。ノイズ補正部51は、複数回分のサンプリングタイミングについて求めた前記差分値と所定の(第2の)閾値との比較結果に基づいて突発性ノイズの有無を検知する。これにより、ノイズ補正部51は、第2変換部4の出力からでも突発性ノイズの有無を正確に検知可能になる。
なお、赤外線検出装置1の動作モードが第2モードにされる状況として、出荷前の検査時は一例に過ぎず、たとえばその他の検査時、あるいは各種のメンテナンス時などにおいて、赤外線検出装置1は、動作モードが第2モードにされてもよい。すなわち、本実施形態の赤外線検出装置1は、デジタル回路5に外部から入力される切替信号に従って切替部52が動作モードを切り替えるので、ユーザは、任意の状況で動作モードを第2モードとすることができる。
ところで、ノイズ補正部51の検知部511で用いられる第2の閾値は、単一の値に限らず、ある程度の幅を持っていてもよい。第2の閾値が幅を持つ場合、たとえば図6に示すように、第2の閾値について上限値「Vth2max」と下限値「Vth2min」とが定められる(Vth2max>Vth2min)。この場合、ノイズ補正部51は、差分値が第2の閾値の上限値よりも大きければ比較結果を「大」、差分値が第2の閾値の下限値よりも小さければ比較結果を「小」とし、差分値が第2の閾値の下限値以上且つ上限値以下の範囲内にあれば比較結果を「中」とする。なお、図6では、横軸を時間軸として、「A」に第1変換部3の出力電圧を示し、「B」に演算部53で求めた差分値を示している。
この場合においても、ノイズ補正部51は、差分値と閾値との比較結果が上記(1)の条件を満たす場合、つまり連続する3回分のサンプリングタイミングについての比較結果が「小」→「大」→「小」の順で変化した場合に、突発性ノイズありと判定する。
図6では、サンプリングタイミングts10とサンプリングタイミングts11との間の時点で突発性ノイズが発生した例を示している。すなわち、図6に「B」で示すように、演算部53で求まる差分値は、突発性ノイズの発生時点の直前のサンプリングタイミングts10までは、いずれも第2の閾値の下限値「Vth2min」よりも小さくなる。一方、突発性ノイズの発生時点の直後のサンプリングタイミングts11では、演算部53で求まる差分値は、第2の閾値の上限値「Vth2max」より大きくなる。その後のサンプリングタイミングts12以降では、演算部53で求まる差分値は、再び第2の閾値の下限値「Vth2min」より小さくなる。
したがって、ノイズ補正部51での差分値と第2の閾値との比較結果は、サンプリングタイミングts1〜ts10では「小」であり、サンプリングタイミングts11で「大」となり、サンプリングタイミングts12〜ts18で再び「小」となる。要するに、サンプリングタイミングts1〜ts18のうち、連続する3回分のサンプリングタイミングts10〜ts12に着目すると、ノイズ補正部51での比較結果は「小」→「大」→「小」の順で変化している。そのため、ノイズ補正部51は、この比較結果に基づいて、突発性ノイズありと判定する。
ただし、差分値に変動があっても、ノイズ補正部51は、比較結果がたとえば「小」→「中」→「小」の順で変化する場合や、「中」→「大」→「小」の順で変化する場合や、「小」→「大」→「中」の順で変化する場合には、突発性ノイズなしと判定する。つまり、各サンプリングタイミングにおける1つ前のサンプリングタイミングからの第1変換部3の出力電圧の変化量が、第2の閾値の幅(上限値−下限値)を超えない限り、ノイズ補正部51は突発性ノイズなしと判定する。そのため、第2の閾値の幅が、人体の存否を検知するための第1の閾値を超えないレベルで設定されていれば、ノイズ補正部51は、誤検出の原因となる突発性ノイズのみを検知して除去することが可能である。
(実施形態2)
本実施形態の赤外線検出装置1は、切替部52による動作モードの切り替えのための条件が実施形態1に係る赤外線検出装置1とは相違する。以下、実施形態1と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
すなわち、切替部52は、ノイズ補正部51で前記ノイズ成分が除去された時点から一定時間が経過するまでの期間に、前記動作モードを前記第2モードとするように構成されていてもよい。
また、ノイズ補正部51は、前記突発性ノイズありと判定した場合に、前記閾値を上回った前記差分値の大きさをバッファ54内の値に加算し、バッファ54内の値を補正値としてもよい。この場合、ノイズ補正部51は、当該補正値を第2変換部4の出力値から減算することにより前記ノイズ成分を除去し、且つ前記補正値を時間経過に伴って減少させるように構成される。この場合、切替部52は、前記補正値が所定の第1異常値を超えると、前記動作モードを前記第2モードとするように構成される。
また、デジタル回路5は、ノイズ補正部51で前記突発性ノイズありと判定された回数を数えるカウンタ55を有し、切替部52は、カウンタ55でのカウント値が所定の第2異常値に達すると、前記動作モードを前記第2モードとするように構成されてもよい。
以下、本実施形態の赤外線検出装置1について詳しく説明する。
実施形態1では、切替部52は、外部からの切替信号に従って赤外線検出装置1の動作モードを切り替えていたが、本実施形態では、下記第1〜3の構成例のように切替信号を用いずに動作モードの切り替えを行うように構成されている。
まず、第1の構成例として、切替部52は、ノイズ補正部51でノイズ成分が除去された時点から一定時間が経過するまでの期間に、動作モードを第2モードとするように構成される。第1の構成例によれば、切替部52は、外部からの切替信号に代えて、ノイズ成分がノイズ補正部51で除去されたことをトリガにして、赤外線検出装置1の動作モードを第1モードから第2モードへ切り替える。さらに、切替部52は、ノイズ成分がノイズ補正部51で除去された時点から一定時間をカウントし、一定時間が経過したことをトリガにして、赤外線検出装置1の動作モードを第2モードから第1モードへ切り替える。
第1の構成例によれば、赤外線検出装置1は、ノイズ補正部51によりノイズ成分の除去が一度行われると、その後、一定時間が経過するまでは動作モードを第2モードとして、つまりノイズ補正部51を無効として動作する。そのため、突発性ノイズが比較的短い時間間隔(たとえば1秒間隔)で2回以上発生するような場合には、赤外線検出装置1は、2回目以降の突発性ノイズに起因したノイズ成分については、ノイズ補正部51で除去せずに出力する。したがって、突発性ノイズが頻繁に発生するような場合(多発するような場合)には、赤外線検出装置1は、その出力からでも突発性ノイズの有無が検知可能になり、不良品の判断が可能になる。
第2の構成例として、切替部52は、補正値が所定の第1異常値を超えると、動作モードを第2モードとするように構成される。ここで、赤外線検出装置1は、実施形態1で説明したように、ノイズ補正部51が、突発性ノイズありと判定した場合に、第2の閾値を上回った差分値の大きさをバッファ54内の値に加算し、バッファ54内の値を補正値とすることを前提にしている。さらに、ノイズ補正部51は、バッファ54内の補正値を第2変換部4の出力値から減算することによりノイズ成分を除去し、且つ補正値を時間経過に伴って減少させるように構成されている。つまり、切替部52は、突発性ノイズが発生する度に増加し且つ時間経過に伴って減少する補正値を監視し、補正値が第1異常値に達したことをトリガにして、赤外線検出装置1の動作モードを第1モードから第2モードへ切り替える。
第2の構成例の動作について説明する。ここでは、ノイズ補正部(検知部511)51が突発性ノイズありと判定した際に出力するインパルス状の信号を、突発性ノイズの判定信号とする。また「ts1」〜「ts14」をそれぞれサンプリングタイミングとする場合に、サンプリングタイミングts6−ts7間、およびサンプリングタイミングts11−ts12間でそれぞれ突発性ノイズが発生した例を示す。
すなわち、1回目の突発性ノイズが発生すると、第1変換部3の出力は、突発性ノイズが発生した時点において急峻に立ち上がり、その後、比較的長い時間をかけてゆっくりと低下する。そのため、連続する3回分のサンプリングタイミングts6〜ts8に着目すると、演算部53で求まる差分値は第2の閾値と比較して「小」→「大」→「小」となる。ノイズ補正部51は、この比較結果に基づいて、検知部511にて突発性ノイズありと判定し、サンプリングタイミングts8にて判定信号を出力する。また、ノイズ補正部51は、サンプリングタイミングts7での差分値を、補正値としてバッファ54に格納する。この時点(サンプリングタイミングts8)では、バッファ54内の補正値は第1異常値より小さい。
その後、2回目の突発性ノイズが発生すると、ノイズ補正部51は、1回目と同様に検知部511にて突発性ノイズありと判定し、サンプリングタイミングts13にて判定信号を出力する。また、ノイズ補正部51は、サンプリングタイミングts12での差分値を、補正値としてバッファ54に格納する。この時点(サンプリングタイミングts13)で、バッファ54内の補正値は第1異常値に達する。そのため、切替部52は、動作モードを第2モードに切り替え、ノイズ補正部51を無効とする。
第2の構成例によれば、赤外線検出装置1は、バッファ54内の補正値が第1異常値に達すると、動作モードを第2モードとして、つまりノイズ補正部51を無効として動作する。そのため、たとえば突発性ノイズが比較的短い時間間隔(たとえば1秒間隔)で複数回発生するような場合や、1回の突発性ノイズの振幅(電荷量)が大きい場合には、赤外線検出装置1は、ノイズ成分をノイズ補正部51で除去せずに出力する。したがって、突発性ノイズが頻繁に発生する場合(多発するような場合)や、比較的振幅の大きな突発性ノイズが発生するような場合には、赤外線検出装置1は、その出力からでも突発性ノイズの有無が検知可能になり、不良品の判断が可能になる。
第3の構成例として、切替部52は、カウンタ55でのカウント値が所定の第2異常値に達すると、動作モードを第2モードとするように構成される。カウンタ55は、実施形態1で説明したように、デジタル回路5に設けられ、ノイズ補正部51で突発性ノイズありと判定された回数を数える機能を有している。具体的には、カウンタ55は、ノイズ補正部(検知部511)51が突発性ノイズありと判定した際に出力する判定信号を受ける度にカウント値を増加させる。つまり、切替部52は、突発性ノイズが発生する度に増加するカウント値が第2異常値に達したことをトリガにして、赤外線検出装置1の動作モードを第1モードから第2モードへ切り替える。
第3の構成例によれば、赤外線検出装置1は、ノイズ補正部51で突発性ノイズありと判定された回数が第2異常値に達すると、動作モードを第2モードとして、つまりノイズ補正部51を無効として動作する。そのため、突発性ノイズが複数回繰り返して発生するような場合には、赤外線検出装置1は、ノイズ成分をノイズ補正部51で除去せずに出力する。したがって、突発性ノイズが頻繁に発生する場合(多発するような場合)には、赤外線検出装置1は、その出力からでも突発性ノイズの有無が検知可能になり、不良品の判断が可能になる。
なお、第2の構成例並びに第3の構成例では、切替部52が赤外線検出装置1の動作モードを第2モードから第1モードへ切り替えるタイミングは任意である。たとえば、切替部52は、第2モードへ切り替えてから一定時間が経過したことをトリガにして、赤外線検出装置1の動作モードを第2モードから第1モードへ切り替える。その他にも、切替部52は、たとえば赤外線検出装置1の電源が再投入されることをトリガとして、赤外線検出装置1の動作モードを第2モードから第1モードへ切り替えてもよい。
また、切替部52は、第1〜3の構成例を適宜組み合わせて採用してもよい。さらにまた、切替部52は、実施形態1で説明したように外部からの切替信号に従って赤外線検出装置1の動作モードを切り替える構成と、第1〜3の構成例の1乃至複数とを適宜組み合わせて採用してもよい。
また、上記第1〜3の構成例によれば、赤外線検出装置1は、人体検知を行う通常動作の中で、規定の条件を満たした場合に、動作モードが第1モードから第2モードへと切り替わる。したがって、本実施形態に係る赤外線検出装置1は、出荷前の検査時などの特別な場合だけでなく、通常動作時においても、その出力から突発性ノイズの有無を判断可能となり、異常(欠陥)の有無を確認可能となる。
赤外線検出装置1は、通常動作時において第2変換部4の出力からノイズ成分が除去されなかった場合、つまり異常と判断されるような場合には、異常信号を出力する構成であってもよい。ここでいう異常信号は、外部装置に対して赤外線検出装置1の異常を知らせるための信号である。外部装置は、この異常信号に基づいてユーザに対して赤外線検出装置1の異常を報知できる。
なお、本実施形態においても、切替部52は、第1モードから第2モードへ切り替えるために、たとえばノイズ補正部51のうち検知部511と除去部512との少なくとも一方の動作を停止させる。また、切替部52は、第1モードに比べて第2モードにて第2の閾値を上げて、ノイズ補正部51のうち検知部511での突発性ノイズの検知感度を低下させることにより、動作モードを切り替える構成であってもよい。
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
(実施形態3)
本実施形態では、演算部53は、連続する4回分のサンプリングタイミングについてそれぞれ差分値を演算し、ノイズ補正部51は、差分値と閾値との比較結果が下記(2)の条件を満たす場合に突発性ノイズが含まれていると判定するように構成されている。
(2)1回目のサンプリングタイミングについては前記差分値が前記閾値を下回り、2回目および3回目のサンプリングタイミングについては前記差分値が前記閾値を上回り、4回目のサンプリングタイミングについては前記差分値が前記閾値を下回る。
以下、実施形態1と同様の構成については共通の符号を付して適宜説明を省略する。
本実施形態では、ノイズ補正部51は、1回目のサンプリングタイミングについて「小」、2回目および3回目のサンプリングタイミングについて「大」、4回目のサンプリングタイミングについて「小」の比較結果が得られると、突発性ノイズありと判定する。要するに、連続する4回分のサンプリングタイミングについての比較結果が、「小」→「大」→「大」→「小」の順で変化した場合に、ノイズ補正部51は、突発性ノイズありと判定する。
本実施形態においては、ノイズ補正部51は、電源電圧や第1変換部3の出力電圧に重畳する電圧性の外来ノイズや電源電圧の瞬時変動などに起因して、第1変換部3の出力電圧に生じる突発性ノイズを検知対象としている。この種の突発性ノイズが生じた場合、第1変換部3の出力電圧は急峻に立ち上がり、その後すぐに急峻に立ち下がることになる。
以下に、突発性ノイズが発生した際の第1モードでの赤外線検出装置1の動作について、図7を参照して説明する。図7では、横軸を時間軸として、「A」に第1変換部3の出力電圧を示し、「B」に演算部53で求めた差分値を示し、「C」に補正後の出力値を示している。また「ts1」〜「ts12」はそれぞれサンプリングタイミングを表している。図7では、サンプリングタイミングts5の前後に跨るようにして突発性ノイズが発生した例を示している。
すなわち、突発性ノイズが発生すると、第1変換部3の出力は、図7に「A」で示すように突発性ノイズが発生した時点において急峻に立ち上がり、その後、急峻に立ち下がる。そのため、図7に「B」で示すように、演算部53で求まる差分値は、突発性ノイズの立ち上がり時点の直前のサンプリングタイミングts4までは、いずれも第2の閾値よりも小さくなる。たとえばサンプリングタイミングts4についての差分値は、サンプリングタイミングts4での第2変換部4の出力値と、サンプリングタイミングts3での第2変換部4の出力値との差分であって、第2の閾値より小さくなる。
一方、突発性ノイズの立ち上がり時点の直後のサンプリングタイミングts5では、演算部53で求まる差分値は、第2の閾値より大きくなる。つまり、サンプリングタイミングts5についての差分値は、サンプリングタイミングts5での第2変換部4の出力値と、サンプリングタイミングts4での第2変換部4の出力値との差分であって、第2の閾値より大きくなる。
さらに、突発性ノイズの立ち下がり時点の直後のサンプリングタイミングts6でも、演算部53で求まる差分値は、第2の閾値より大きくなる。つまり、サンプリングタイミングts6についての差分値は、サンプリングタイミングts6での第2変換部4の出力値と、サンプリングタイミングts5での第2変換部4の出力値との差分であって、第2の閾値より大きくなる。
その後のサンプリングタイミングts7以降では、演算部53で求まる差分値は、第2の閾値より小さくなる。たとえばサンプリングタイミングts7についての差分値は、サンプリングタイミングts7での第2変換部4の出力値と、サンプリングタイミングts6での第2変換部4の出力値の差分であって、第2の閾値より小さくなる。
したがって、ノイズ補正部51での差分値と第2の閾値との比較結果は、サンプリングタイミングts1〜ts4では「小」であり、サンプリングタイミングts5,ts6で共に「大」となり、サンプリングタイミングts7〜ts12で再び「小」となる。要するに、サンプリングタイミングts1〜ts12のうち、連続する4回分のサンプリングタイミングts4〜ts7に着目すると、ノイズ補正部51での比較結果は「小」→「大」→「大」→「小」の順で変化している。
そのため、ノイズ補正部51は、この比較結果に基づいて、突発性ノイズありと判定する。ただし、ノイズ補正部51は、連続する4回分のサンプリングタイミングts4〜ts7についての比較結果から突発性ノイズの有無を検知するので、4回目のサンプリングタイミングts7の時点で突発性ノイズありと判定することになる。
ノイズ補正部51は、最初に差分値が第2の閾値を上回ると判断されたサンプリングタイミングts5での差分値を、補正値として設定し、この補正値をバッファ54に格納する。ノイズ補正部51は、バッファ54に格納した補正値を、第2変換部4の出力値から減算することにより、突発性ノイズの影響を抑制する。本実施形態では、ノイズ補正部51は、突発性ノイズによって立ち上がった第2変換部4の出力値についてのみ、補正値を減算することにより、突発性ノイズの影響を抑制する。つまり、図7の例では、ノイズ補正部51が補正値を減算する対象となるのは、最初に差分値が第2の閾値を上回ると判断されたサンプリングタイミングts5における第2変換部4の出力値である。
その結果、第2変換部4の出力値から補正値を減算した補正後の出力値は、図7に「C」で示すように突発性ノイズの影響が抑制され、突発性ノイズの発生時点の前後においても大きく変動することはない。
以上説明した本実施形態の赤外線検出装置1によれば、第2変換部4の出力値(デジタル値)に対する演算処理によって、第1変換部3の出力電圧に生じる突発性ノイズを検知できる。したがって、赤外線検出装置1は、突発性ノイズの有無を検知するための検知回路を付加することなく、突発性ノイズの有無を検知する機能を付加することができる。すなわち、この赤外線検出装置1は、回路規模を大きくすることなく、突発性ノイズの有無を検知できるという利点がある。
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
なお、実施形態2に係る構成と実施形態3に係る構成とは組み合わせて適用することも可能である。