次に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。図1は、本発明のセラミックス部品の一実施形態であるセンサ素子101を備えたガスセンサ100の断面模式図である。図2は、図1のA視図である。図3は、センサ素子101の上部コネクタパッド91周辺を第3面101c側から見た斜視図である。図4は、センサ素子101の上部コネクタパッド91周辺を第4面101d側から見た斜視図である。なお、図1のセンサ素子101の断面は、図2のB−B断面図に相当する。
このガスセンサ100は、被測定ガス中の特定ガス(本実施形態ではNOx)の濃度を検出するセンサ素子101を備えている。センサ素子101は長尺な直方体形状をしており、このセンサ素子101の長手方向(図1の左右方向)を前後方向とし、センサ素子101の厚み方向(図1の上下方向)を上下方向とする。また、センサ素子101の幅方向(前後方向及び上下方向に垂直な方向)を左右方向(図2の上下方向)とする。センサ素子101は直方体であるため、図1〜4に示すように、センサ素子101の固体電解質層の外表面として、第1面101a(上面),第2面101b(下面),第3面101c(左側面),第4面101d(右側面),第5面101e(前端面),第6面101f(後端面)、の6面を有している。
センサ素子101は、それぞれがジルコニア(ZrO2)等の酸素イオン伝導性固体電解質層からなる第1基板層1と、第2基板層2と、第3基板層3と、第1固体電解質層4と、スペーサ層5と、第2固体電解質層6との6つの層が、図面視で下側からこの順に積層された構造を有する素子である。また、これら6つの層を形成する固体電解質は緻密な気密のものである。係るセンサ素子101は、例えば、各層に対応するセラミックスグリーンシートに所定の加工および回路パターンの印刷などを行った後にそれらを積層し、さらに、焼成して一体化させることによって製造される。
センサ素子101の一先端部であって、第2固体電解質層6の下面と第1固体電解質層4の上面との間には、ガス導入口10と、第1拡散律速部11と、緩衝空間12と、第2拡散律速部13と、第1内部空所20と、第3拡散律速部30と、第2内部空所40とが、この順に連通する態様にて隣接形成されてなる。
ガス導入口10と、緩衝空間12と、第1内部空所20と、第2内部空所40とは、スペーサ層5をくり抜いた態様にて設けられた上部を第2固体電解質層6の下面で、下部を第1固体電解質層4の上面で、側部をスペーサ層5の側面で区画されたセンサ素子101内部の空間である。
第1拡散律速部11と、第2拡散律速部13と、第3拡散律速部30とはいずれも、2本の横長の(図面に垂直な方向に開口が長手方向を有する)スリットとして設けられる。なお、ガス導入口10から第2内部空所40に至る部位をガス流通部とも称する。
また、ガス流通部よりも先端側から遠い位置には、第3基板層3の上面と、スペーサ層5の下面との間であって、側部を第1固体電解質層4の側面で区画される位置に基準ガス導入空間43が設けられている。基準ガス導入空間43には、NOx濃度の測定を行う際の基準ガスとして、例えば大気が導入される。
大気導入層48は、多孔質セラミックスからなる層であって、大気導入層48には基準ガス導入空間43を通じて基準ガスが導入されるようになっている。また、大気導入層48は、基準電極42を被覆するように形成されている。
基準電極42は、第3基板層3の上面と第1固体電解質層4とに挟まれる態様にて形成される電極であり、上述のように、その周囲には、基準ガス導入空間43につながる大気導入層48が設けられている。また、後述するように、基準電極42を用いて第1内部空所20内や第2内部空所40内の酸素濃度(酸素分圧)を測定することが可能となっている。
ガス流通部において、ガス導入口10は、外部空間に対して開口してなる部位であり、該ガス導入口10を通じて外部空間からセンサ素子101内に被測定ガスが取り込まれるようになっている。第1拡散律速部11は、ガス導入口10から取り込まれた被測定ガスに対して、所定の拡散抵抗を付与する部位である。緩衝空間12は、第1拡散律速部11より導入された被測定ガスを第2拡散律速部13へと導くために設けられた空間である。第2拡散律速部13は、緩衝空間12から第1内部空所20に導入される被測定ガスに対して、所定の拡散抵抗を付与する部位である。被測定ガスが、センサ素子101外部から第1内部空所20内まで導入されるにあたって、外部空間における被測定ガスの圧力変動(被測定ガスが自動車の排気ガスの場合であれば排気圧の脈動)によってガス導入口10からセンサ素子101内部に急激に取り込まれた被測定ガスは、直接第1内部空所20へ導入されるのではなく、第1拡散律速部11、緩衝空間12、第2拡散律速部13を通じて被測定ガスの濃度変動が打ち消された後、第1内部空所20へ導入されるようになっている。これによって、第1内部空所20へ導入される被測定ガスの濃度変動はほとんど無視できる程度のものとなる。第1内部空所20は、第2拡散律速部13を通じて導入された被測定ガス中の酸素分圧を調整するための空間として設けられている。係る酸素分圧は、主ポンプセル21が作動することによって調整される。
主ポンプセル21は、第1内部空所20に面する第2固体電解質層6の下面のほぼ全面に設けられた天井電極部22aを有する内側ポンプ電極22と、第2固体電解質層6の上面の天井電極部22aと対応する領域に外部空間に露出する態様にて設けられた外側ポンプ電極23と、これらの電極に挟まれた第2固体電解質層6とによって構成されてなる電気化学的ポンプセルである。
内側ポンプ電極22は、第1内部空所20を区画する上下の固体電解質層(第2固体電解質層6および第1固体電解質層4)、および、側壁を与えるスペーサ層5にまたがって形成されている。具体的には、第1内部空所20の天井面を与える第2固体電解質層6の下面には天井電極部22aが形成され、また、底面を与える第1固体電解質層4の上面には底部電極部22bが形成され、そして、それら天井電極部22aと底部電極部22bとを接続するように、側部電極部(図示省略)が第1内部空所20の両側壁部を構成するスペーサ層5の側壁面(内面)に形成されて、該側部電極部の配設部位においてトンネル形態とされた構造において配設されている。
内側ポンプ電極22と外側ポンプ電極23とは、多孔質サーメット電極(例えば、Auを1%含むPtとZrO2とのサーメット電極)として形成される。なお、被測定ガスに接触する内側ポンプ電極22は、被測定ガス中のNOx成分に対する還元能力を弱めた材料を用いて形成される。
主ポンプセル21においては、内側ポンプ電極22と外側ポンプ電極23との間に所望のポンプ電圧Vp0を印加して、内側ポンプ電極22と外側ポンプ電極23との間に正方向あるいは負方向にポンプ電流Ip0を流すことにより、第1内部空所20内の酸素を外部空間に汲み出し、あるいは、外部空間の酸素を第1内部空所20に汲み入れることが可能となっている。
また、第1内部空所20における雰囲気中の酸素濃度(酸素分圧)を検出するために、内側ポンプ電極22と、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3と、基準電極42によって、電気化学的なセンサセル、すなわち、主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80が構成されている。
主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80における起電力V0を測定することで第1内部空所20内の酸素濃度(酸素分圧)がわかるようになっている。さらに、起電力V0が一定となるように可変電源24のポンプ電圧Vp0をフィードバック制御することでポンプ電流Ip0が制御されている。これによって、第1内部空所内20内の酸素濃度は所定の一定値に保つことができる。
第3拡散律速部30は、第1内部空所20で主ポンプセル21の動作により酸素濃度(酸素分圧)が制御された被測定ガスに所定の拡散抵抗を付与して、該被測定ガスを第2内部空所40に導く部位である。
第2内部空所40は、第3拡散律速部30を通じて導入された被測定ガス中の窒素酸化物(NOx)濃度の測定に係る処理を行うための空間として設けられている。NOx濃度の測定は、主として、補助ポンプセル50により酸素濃度が調整された第2内部空所40において、さらに、測定用ポンプセル41の動作によりNOx濃度が測定される。
第2内部空所40では、あらかじめ第1内部空所20において酸素濃度(酸素分圧)が調整された後、第3拡散律速部30を通じて導入された被測定ガスに対して、さらに補助ポンプセル50による酸素分圧の調整が行われるようになっている。これにより、第2内部空所40内の酸素濃度を高精度に一定に保つことができるため、係るガスセンサ100においては精度の高いNOx濃度測定が可能となる。
補助ポンプセル50は、第2内部空所40に面する第2固体電解質層6の下面の略全体に設けられた天井電極部51aを有する補助ポンプ電極51と、外側ポンプ電極23(外側ポンプ電極23に限られるものではなく、センサ素子101と外側の適当な電極であれば足りる)と、第2固体電解質層6とによって構成される、補助的な電気化学的ポンプセルである。
係る補助ポンプ電極51は、先の第1内部空所20内に設けられた内側ポンプ電極22と同様なトンネル形態とされた構造において、第2内部空所40内に配設されている。つまり、第2内部空所40の天井面を与える第2固体電解質層6に対して天井電極部51aが形成され、また、第2内部空所40の底面を与える第1固体電解質層4には、底部電極部51bが形成され、そして、それらの天井電極部51aと底部電極部51bとを連結する側部電極部(図示省略)が、第2内部空所40の側壁を与えるスペーサ層5の両壁面にそれぞれ形成されたトンネル形態の構造となっている。なお、補助ポンプ電極51についても、内側ポンプ電極22と同様に、被測定ガス中のNOx成分に対する還元能力を弱めた材料を用いて形成される。
補助ポンプセル50においては、補助ポンプ電極51と外側ポンプ電極23との間に所望の電圧Vp1を印加することにより、第2内部空所40内の雰囲気中の酸素を外部空間に汲み出し、あるいは、外部空間から第2内部空所40内に汲み入れることが可能となっている。
また、第2内部空所40内における雰囲気中の酸素分圧を制御するために、補助ポンプ電極51と、基準電極42と、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3とによって電気化学的なセンサセル、すなわち、補助ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル81が構成されている。
なお、この補助ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル81にて検出される起電力V1に基づいて電圧制御される可変電源52にて、補助ポンプセル50がポンピングを行う。これにより第2内部空所40内の雰囲気中の酸素分圧は、NOxの測定に実質的に影響がない低い分圧にまで制御されるようになっている。
また、これとともに、そのポンプ電流Ip1が、主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80の起電力の制御に用いられるようになっている。具体的には、ポンプ電流Ip1は、制御信号として主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80に入力され、その起電力V0が制御されることにより、第3拡散律速部30から第2内部空所40内に導入される被測定ガス中の酸素分圧の勾配が常に一定となるように制御されている。NOxセンサとして使用する際は、主ポンプセル21と補助ポンプセル50との働きによって、第2内部空所40内での酸素濃度は約0.001ppm程度の一定の値に保たれる。
測定用ポンプセル41は、第2内部空所40内において、被測定ガス中のNOx濃度の測定を行う。測定用ポンプセル41は、第2内部空所40に面する第1固体電解質層4の上面であって第3拡散律速部30から離間した位置に設けられた測定電極44と、外側ポンプ電極23と、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4とによって構成された電気化学的ポンプセルである。
測定電極44は、多孔質サーメット電極である。測定電極44は、第2内部空所40内の雰囲気中に存在するNOxを還元するNOx還元触媒としても機能する。さらに、測定電極44は、第4拡散律速部45によって被覆されてなる。
第4拡散律速部45は、セラミックス多孔体にて構成される膜である。第4拡散律速部45は、測定電極44に流入するNOxの量を制限する役割を担うとともに、測定電極44の保護膜としても機能する。測定用ポンプセル41においては、測定電極44の周囲の雰囲気中における窒素酸化物の分解によって生じた酸素を汲み出して、その発生量をポンプ電流Ip2として検出することができる。
また、測定電極44の周囲の酸素分圧を検出するために、第1固体電解質層4と、第3基板層3と、測定電極44と、基準電極42とによって電気化学的なセンサセル、すなわち、測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル82が構成されている。測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル82にて検出された起電力V2に基づいて可変電源46が制御される。
第2内部空所40内に導かれた被測定ガスは、酸素分圧が制御された状況下で第4拡散律速部45を通じて測定電極44に到達することとなる。測定電極44の周囲の被測定ガス中の窒素酸化物は還元されて(2NO→N2+O2)酸素を発生する。そして、この発生した酸素は測定用ポンプセル41によってポンピングされることとなるが、その際、測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル82にて検出された制御電圧V2が一定となるように可変電源46の電圧Vp2が制御される。測定電極44の周囲において発生する酸素の量は、被測定ガス中の窒素酸化物の濃度に比例するものであるから、測定用ポンプセル41におけるポンプ電流Ip2を用いて被測定ガス中の窒素酸化物濃度が算出されることとなる。
また、測定電極44と、第1固体電解質層4と、第3基板層3と基準電極42を組み合わせて、電気化学的センサセルとして酸素分圧検出手段を構成するようにすれば、測定電極44の周りの雰囲気中のNOx成分の還元によって発生した酸素の量と基準大気に含まれる酸素の量との差に応じた起電力を検出することができ、これによって被測定ガス中のNOx成分の濃度を求めることも可能である。
また、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3と、外側ポンプ電極23と、基準電極42とから電気化学的なセンサセル83が構成されており、このセンサセル83によって得られる起電力Vrefによりセンサ外部の被測定ガス中の酸素分圧を検出可能となっている。
このような構成を有するガスセンサ100においては、主ポンプセル21と補助ポンプセル50とを作動させることによって酸素分圧が常に一定の低い値(NOxの測定に実質的に影響がない値)に保たれた被測定ガスが測定用ポンプセル41に与えられる。したがって、被測定ガス中のNOxの濃度に略比例して、NOxの還元によって発生する酸素が測定用ポンプセル41より汲み出されることによって流れるポンプ電流Ip2に基づいて、被測定ガス中のNOx濃度を知ることができるようになっている。
さらに、センサ素子101は、固体電解質の酸素イオン伝導性を高めるために、センサ素子101を加熱して保温する温度調整の役割を担うヒータ部70を備えている。ヒータ部70は、ヒータ72と、ヒータ絶縁層74と、圧力放散孔75と、を備えている。
ヒータ72は、第2基板層2と第3基板層3とに上下から挟まれた態様にて形成される電気抵抗体である。ヒータ72は、外部より給電されることにより発熱し、センサ素子101を形成する固体電解質の加熱と保温を行う。
また、ヒータ72は、第1内部空所20から第2内部空所40の全域に渡って埋設されており、センサ素子101全体を上記固体電解質が活性化する温度に調整することが可能となっている。
ヒータ絶縁層74は、ヒータ72の上下面に、アルミナ等の絶縁体によって形成されてなる絶縁層である。ヒータ絶縁層74は、第2基板層2とヒータ72との間の電気的絶縁性、および、第3基板層3とヒータ72との間の電気的絶縁性を得る目的で形成されている。
圧力放散孔75は、第3基板層3を貫通し、基準ガス導入空間43に連通するように設けられてなる部位であり、ヒータ絶縁層74内の温度上昇に伴う内圧上昇を緩和する目的で形成されてなる。
また、センサ素子101の第6面101f側(後端側)には、上部コネクタパッド91,下部コネクタパッド92,側面導通部95が配設されている。上部コネクタパッド91は、第1面101aの後端側に配設され、センサ素子101と外部とを電気的に導通するためのコネクタ電極として機能する。上部コネクタパッド91は、複数(本実施形態では4個)配設されており、具体的にはセンサ素子101の左側から順に第1〜第4上部コネクタパッド91a〜91dが配設されている。下部コネクタパッド92は、第2面101bの後端側に配設され、センサ素子101と外部とを電気的に導通するためのコネクタ電極として機能する。下部コネクタパッド92は、複数(本実施形態では4個)配設されており、具体的にはセンサ素子101の左側から順に第1〜第4下部コネクタパッド92a〜92dが配設されている。側面導通部95は、第3,第4面101c,101dの後端側に配設され、センサ素子101内部の各電極等と上部コネクタパッド91,下部コネクタパッド92とを電気的に導通するリード線の一部として機能する。側面導通部95は、複数(本実施形態では5個)配設されている。具体的には、第3面101cに第1,第2側面導通部95a,95bが配設されており(図3)、第4面101dに第3〜第5側面導通部95c〜95eが配設されている(図4)。
上部コネクタパッド91及び下部コネクタパッド92と各電極等との接続について説明する。第1上部コネクタパッド91aは、第2側面導通部95b及び測定電極リード線44aを介して、測定電極44と電気的に導通している。なお、測定電極リード線44aは、測定電極44から第3面101cまでに亘って第1固体電解質層4とスペーサ層5との間に配設され、第3面101c側の端部(図3の破線部参照)が第2側面導通部95bと接続されている。第2側面導通部95bは、測定電極リード線44aと第1上部コネクタパッド91aとを接続している。
第2上部コネクタパッド91bは、第2固体電解質層6の第1面101aに配設された外側ポンプ電極用リード線23aを介して、外側ポンプ電極23と電気的に導通している。
第3上部コネクタパッド91cは、補助ポンプ電極リード線51d,第5側面導通部95e,及び補助ポンプ電極リード線51cを介して、補助ポンプ電極51と電気的に導通している。なお、補助ポンプ電極リード線51cは、補助ポンプ電極51から第4面101dまでに亘ってスペーサ層5と第2固体電解質層6との間に配設され、第4面101d側の端部(図4の破線部参照)が第5側面導通部95eと接続されている。第5側面導通部95eは、補助ポンプ電極リード線51cと第1面101aに配設された補助ポンプ電極リード線51dとを接続している。
第4上部コネクタパッド91dは、第4側面導通部95d及び内側ポンプ電極リード線22cを介して、内側ポンプ電極22と電気的に導通している。なお、内側ポンプ電極リード線22cは、内側ポンプ電極22から第4面101dまでに亘ってスペーサ層5と第2固体電解質層6との間に配設され、第4面101d側の端部(図4の破線部参照)が第4側面導通部95dと接続されている。第4側面導通部95dは、内側ポンプ電極リード線22cと第4上部コネクタパッド91dとを接続している。
第1下部コネクタパッド92aは、第1側面導通部95a及びヒータ用リード線76bを介して、ヒータ72と電気的に導通している。なお、ヒータ用リード線76bは、ヒータ72から第3面101cまでに亘って第2基板層2と第3基板層3との間に配設され、第3面101c側の端部(図3の破線部参照)が第1側面導通部95aと接続されている。第1側面導通部95aは、ヒータ用リード線76bと第1下部コネクタパッド92aとを接続している。
第2下部コネクタパッド92bは、スルーホール73及びヒータ用リード線76aを介してヒータ72と接続されている(図1参照)。第3下部コネクタパッド92cも、第2下部コネクタパッド92bと同様に、図示しないスルーホール及びヒータ用リード線を介してヒータ72と接続されている。
第4下部コネクタパッド92dは、第3側面導通部95c及び基準電極リード線42aを介して、基準電極42と電気的に導通している。なお、基準電極リード線42aは、基準電極42から第4面101dまでに亘って第3基板層3と第1固体電解質層4との間に配設され、第4面101d側の端部(図4の破線部参照)が第3側面導通部95cと接続されている。第3側面導通部95cは、基準電極リード線42aと第4下部コネクタパッド92dとを接続している。
センサ素子101は、これらの上部コネクタパッド91,下部コネクタパッド92,側面導通部95などを介して、外部から各電極(内側ポンプ電極22,外側ポンプ電極23,基準電極42,測定電極44,補助ポンプ電極51)に電圧又は電流を印加したり各電極の電圧や電流を測定したりすることができるようになっている。上述した可変電源24,可変電源46,可変電源52による電圧の印加や、ポンプ電流Ip1,起電力V0,V1,V2の検出なども、実際は上部コネクタパッド91や下部コネクタパッド92を介して行われる。また、ヒータ72は、上述したように第1〜第3下部コネクタパッド92a〜92cと電気的に導通しており、この第1〜第3下部コネクタパッド92a〜92cを外部電源と接続することによって、外部からヒータ部70へ給電することができるようになっている。
側面導通部95は、例えば、白金等の貴金属又はタングステン、モリブデン等の高融点金属などの材質を含んでいる。また、側面導通部95は、上述した各電極と同様に多孔質サーメットとしてもよい。また、第1〜第5側面導通部95a〜95dは、各々が導通する電極等と同じ材質からなるものとしてもよい。本実施形態では、側面導通部95は、PtとZrO2とのサーメットとした。上部コネクタパッド91,下部コネクタパッド92,及び各リード線についても、側面導通部95と同様の材質を用いることができる。また、特にこれに限定するものではないが、上部コネクタパッド91,下部コネクタパッド92,側面導通部95,各リード線の厚みは、例えば5〜50μmである。
次に、こうしたガスセンサ100のセンサ素子101の製造方法の一例を以下に説明する。本実施形態のセンサ素子101の製造方法は、
1以上のセラミックスグリーンシートを有するグリーン構造体109(後述する図5,9参照)を用意する準備工程と、
準備工程の後、グリーン構造体109の少なくとも一部を焼成後に側面導通部95となる導電性ペースト195(後述する図9,10参照)で被覆する被覆工程と、
被覆工程の後、グリーン構造体109に対して、0.8μm〜4μmの波長領域にピーク波長を有する赤外線を照射して導電性ペースト195を乾燥させる乾燥工程と、
乾燥工程の後、グリーン構造体109を焼成してセンサ素子101を得る焼成工程と、
を含む。
まず、準備工程について説明する。準備工程では、まず、ジルコニアなどの酸素イオン伝導性固体電解質をセラミックス成分として含む6枚の未焼成のセラミックスグリーンシートを用意する。このグリーンシートには、印刷時や積層時の位置決めに用いるシート穴や必要なスルーホール等を予め複数形成しておく。また、スペーサ層5となるグリーンシートにガス流通部となる空間を予め打ち抜き処理などによって設けておく。第1固体電解質層4となるグリーンシートにも、同様に基準ガス導入空間43となる空間を設けておく。そして、第1基板層1と、第2基板層2と、第3基板層3と、第1固体電解質層4と、スペーサ層5と、第2固体電解質層6のそれぞれに対応して、各セラミックスグリーンシートに種々のパターンを形成するパターン印刷・乾燥処理を行う。形成するパターンは、具体的には、例えば上述した各電極や各リード線、大気導入層48,ヒータ部70,上部コネクタパッド91,下部コネクタパッド92などのパターンである。パターン印刷は、それぞれの形成対象に要求される特性に応じて用意したパターン形成用ペーストを、公知のスクリーン印刷技術を利用してグリーンシート上に塗布することにより行う。乾燥処理についても、公知の乾燥手段を用いて行う。パターン印刷・乾燥が終わると、各層に対応するグリーンシート同士を積層・接着するための接着用ペーストの印刷・乾燥処理を行う。そして、接着用ペーストを形成したグリーンシートをシート穴により位置決めしつつ所定の順序に積層して、所定の温度・圧力条件を加えることで圧着させ、一つの積層体とする圧着処理を行う。こうして得られた積層体は、焼成後にセンサ素子101となるグリーン構造体109を複数包含したものである。その積層体を切断してセンサ素子101の大きさに切り分けることで、複数のグリーン構造体109を得る。このグリーン構造体109は、積層体の切断面(第3,第4面101c,10d)に形成する必要のあるパターン以外のパターンは、いずれも印刷及び乾燥済みの状態となっている。より具体的には、グリーン構造体109には、焼成後に側面導通部95(第1〜第5側面導通部95a〜95e)となる導電性ペースト195(第1〜第5導電性ペースト195a〜195e,詳しくは後述)は形成されていないが、それ以外の上部コネクタパッド91,下部コネクタパッド92,各電極及び各リード線等は、印刷及び乾燥済みの状態になっている。
次に、被覆工程及び乾燥工程について説明する。本実施形態では、乾燥システム200を用いて被覆工程及び乾燥工程を行う。図5は、乾燥システム200の構成の概略を示す説明図である。図6は、載置部材270の斜視図である。図7は、載置部材270にグリーン構造体109を載置した様子を示す上面図である。図8は、図5の赤外線ヒーター220のC−C断面図である。図9は、載置部材270に載置された反転後のグリーン構造体109を示す拡大上面図である。なお、乾燥システム200の説明においては、左右方向、前後方向及び上下方向は、図5〜図9に示した通りとする。
乾燥システム200は、載置部材270に載置されたグリーン構造体109を前方から後方へ搬送して被覆工程及び乾燥工程を自動的に行うグリーン構造体処理ラインとして構成されている。乾燥システム200は、第1印刷装置201(本発明の第1被覆装置に相当)と、第1検査装置203と、第1乾燥装置211と、反転装置240と、第2印刷装置202(本発明の第2被覆装置に相当)と、第2検査装置204と、を備えており、これらの装置は搬送方向に沿ってこの順で配置されている。また、乾燥システム200は、搬送装置250と、制御装置260と、を備えている。搬送装置250は、複数(本実施形態では5個)のベルトコンベア(第1〜第5ベルトコンベア251a〜251e)を備えており、これらはこの順で連続的に配置されている。第1〜第5ベルトコンベア251a〜251eの各々は、前後両端のローラー252,252と、このローラー252,252に掛け渡され掛け渡された左右一対のベルト253,253(図5下段の拡大斜視図参照)と、を備えている。載置部材270は、このベルト253上に配置されて第1〜第5ベルトコンベア251a〜251eによって前方から後方へ搬送される。第1ベルトコンベア251aは、第1印刷装置201及び第1検査装置203の前後における載置部材270の搬送を行う。第2ベルトコンベア251bは、第1乾燥装置211の前後における載置部材270の搬送を行う。第3ベルトコンベア251cは、反転装置240の前後における載置部材270の搬送を行う。第4ベルトコンベア251dは、第2印刷装置202及び第2検査装置204の前後における載置部材270の搬送を行う。第5ベルトコンベア251eは、第2乾燥装置212の前後における載置部材270の搬送を行う。
載置部材270は、例えば金属からなる略平板状の部材である。載置部材270は、アルミニウムやSUSなどの赤外線の反射率が高い材質とすることが好ましい。載置部材270は、図6に示す向きでベルト253上に配置されて搬送される。載置部材270は、貫通孔271,272と、凹部273と、複数の突出部274と、複数の突出部275と、を備えている。貫通孔271は載置部材270の左側端部付近に形成され、貫通孔272は載置部材270の右側端部付近に形成されている。貫通孔271,272は、いずれも載置部材270を上下に貫通しており、長手方向が前後方向に沿った角丸の長方形状に開口している。凹部273は、長手方向が前後方向に沿った角丸の長方形状をしており、左右方向で貫通孔271と貫通孔272との間に形成されている。突出部274は、左右方向で貫通孔271と凹部273との間に配設され、前後方向に沿って複数の突出部274が等間隔に配設されている。図6の拡大図に示すように、隣り合う突出部274同士の間には溝278が形成されている。溝278は、隣り合う突出部274の対向する側部276,276と、その間の底部277とで形成されている。本実施形態では、突出部274は46個配設されており、これにより45個の溝278が形成されている。突出部275は、左右方向で貫通孔272と凹部273との間に配設されている点以外は突出部274と同様に複数(本実施形態では46個)配設されている。この複数の突出部275により、溝278と同様に複数(45個)の溝279が形成されている。複数の溝278の各々は、右方の溝279と1対1に対応しており、対応する溝278,279同士は前後方向の位置が同じになっている。この対応する溝278,279間に跨がるようにグリーン構造体109が載置されることで(図7参照)、載置部材270はグリーン構造体109を溝278,279の側部及び底部で支持可能になっている。そのため、本実施形態では、載置部材270は、45本のグリーン構造体109の各々を長手方向が左右方向に沿うように並べ、且つ複数のグリーン構造体109を前後方向に等間隔に載置可能である。グリーン構造体109の間隔,すなわち突出部274,275の前後方向の幅は、例えば1mm以上である。上限は特に限定しないが、幅が大きすぎると品質への影響はないものの処理数が減るため、3mm以下が好ましい。なお、載置部材270は、前後対称及び左右対称の形状をしている。また、載置部材270は、前後左右の中央を通る上下方向の軸を回転軸として、2回対称の形状をしている。
第1印刷装置201は、載置部材270に載置されたグリーン構造体109の上面の少なくとも一部を導電性ペースト195で被覆する装置である。本実施形態では、第1印刷装置201は、乾燥及び焼成後に側面導通部95となる導電性ペースト195のパターンをグリーン構造体109に塗布する公知のスクリーン印刷機として構成されている。第2印刷装置202は、反転装置240により上下が反転された後のグリーン構造体109に対してスクリーン印刷を行う点以外は、第1印刷装置201と同様の装置として構成されている。
第1検査装置203は、第1印刷装置201によって印刷された導電性ペースト195のパターンの検査を行う装置である。第1検査装置203は、下方を撮像可能なカメラを備えている。第1検査装置203は、例えば以下のように検査処理を行う。まず、第1検査装置203は、載置部材270に載置されたグリーン構造体109が下方を通過する際にその上面を撮像する。次に、得られた画像データから導電性ペースト195の位置や形状を検出する。そして、予め記憶された導電性ペースト195の基準位置や基準形状との比較を行って、異常の有無を検査する。載置部材270に載置された複数のグリーン構造体109のいずれかに異常がある場合には、異常と判定されたグリーン構造体109を特定する情報(例えば載置部材270上の位置など)を制御装置260に出力する。第2検査装置204は、第2印刷装置202によって印刷された導電性ペースト195のパターンの検査を行う点以外は、第1検査装置203と同様の装置として構成されている。
第1乾燥装置211は、第1印刷装置201が印刷した導電性ペースト195を乾燥する装置である。この第1乾燥装置211は、0.8μm〜4μmの波長領域にピーク波長を有する赤外線を照射する赤外線ヒーター220と、赤外線ヒーター220の右側及び左側にそれぞれ配置され下方に開口した排気ダクト215,216と、排気ダクト215,216を介してグリーン構造体109周辺の雰囲気(本実施形態では大気)を上方に吸引して排気する排気ファン217と、を備えている。
赤外線ヒーター220は、発熱体であるフィラメント223を管224が囲むように形成されたヒーター本体222と、このヒーター本体222の全体を覆う略直方体形状のケーシング230と、を備えている。赤外線ヒーター10は、フィラメント223の長手方向が前後方向に沿うように配置され、フィラメント223からみて保護板234に向かう方向(下方向)に配置されたグリーン構造体109に対して、赤外線を放射する。
ヒーター本体222は、本実施形態ではハロゲンヒーターとして構成されているものとした。フィラメント223は、加熱すると赤外線を放射する発熱体であり、本実施形態ではW(タングステン)製とした。なおフィラメント223の材料としては、他にNi−Cr合金,Mo,Ta,及びFe−Cr−Al合金などを挙げることができる。フィラメント223の前後方向の両端には、ケーシング230の外部に配置された図示しない電力供給源から電力が供給される。管224は、円筒状の管であり、0.8μm〜4μmの赤外線を透過する材料(例えば、石英)で形成されている。管224の内部は、アルゴンガスにハロゲンガスを添加した雰囲気となっている。
ケーシング230は、下方に開口してヒーター本体222の上及び左右を覆うケーシング本体231と、ケーシング本体231の下面に配設された反射板232と、ケーシング本体231の下方の開口を塞いでヒーター本体222の下方を覆う保護板234と、を備えている。保護板234は、0.8μm〜4μmの赤外線を透過する材料(例えばガラスなど)で形成されている。
反射板232は、ケーシング本体231のうちヒーター本体222が配置された空間238に露出する面(下面)に配設されている。反射板232は、例えばSUS304やアルミニウムなどの金属で形成され、前後方向に垂直な断面が楕円の弧、円弧等の曲線形状となっている。本実施形態では、フィラメント223からの赤外線を下方の一部の領域に向けて集中的に反射するように(図8の破線矢印参照)、反射板232の曲面形状やフィラメント223の配置が定められているものとした。これにより、赤外線ヒーター220は、載置部材270及びグリーン構造体109のうち図7,図8に示す赤外線照射領域228に赤外線を照射し、それ以外の部分には赤外線を照射しないようになっている。
赤外線ヒーター230は、冷却機構を有するものが好ましい。本実施形態では、ケーシング本体231内部に形成された冷媒流路237内に外部から第1冷媒(例えば水などの液体)を流通させると共に、空間238内に外部から第2冷媒(例えば空気などの気体)を流通させることで、赤外線ヒーター230を冷却可能とした。
こうして構成された第1乾燥装置211は、赤外線ヒーター220により導電性ペースト195に赤外線を照射しつつ、排気ファン217及び排気ダクト215,216を用いて冷却ガス(雰囲気の流れであり、本実施形態では大気)によりグリーン構造体109を冷却する。第2乾燥装置212は、第2印刷装置202が印刷した導電性ペースト195を乾燥する点以外は、第1乾燥装置211と同様の構成をしている。なお、第1,第2乾燥装置211,212は、いずれもグリーン構造体109及び導電性ペースト195を密閉しない状態(本実施形態では大気雰囲気)で、導電性ペースト195に赤外線を照射する。
反転装置240は、載置部材270に載置されたグリーン構造体109の上下を反転させて別の載置部材270に載置する装置である。反転装置240は、第1,第2アーム241,242と、前後一対の第1挟持部243と、前後一対の第2挟持部244と、回転軸245と、支持部246と、昇降装置247と、昇降部材248と、を備えている。第1アーム241は、例えばシリンダやスライダなどのアクチュエータにより前後方向に伸縮可能に構成されている。第1アーム241の前後両端には、それぞれ第1挟持部243が接続されている。一対の第1挟持部243は、第1アーム241の伸縮によって載置部材270を前後方向から挟んでこれを挟持する。第2アーム242は、第1アーム241と同様に前後方向に伸縮可能に構成され、回転軸245を挟んで第1アーム241とは反対側(図5では下側)に配置されている。第2アーム242の前後両端には、それぞれ第2挟持部244が接続されている。一対の第2挟持部244は、第2アーム242の伸縮によって載置部材270を前後方向から挟んでこれを挟持する。回転軸245は、左右方向に沿った軸であり、支持部246によって回転(自転)可能に支持されている。回転軸245が図示しないサーボモータによって回転すると、これに伴って第1,第2アーム241,242、第1,第2挟持部243,244も回転する。昇降装置247は、昇降部材248を昇降させる機構である。昇降部材248は、一対のベルト253の左右方向の中央に配置されており、昇降装置247によって上下に昇降する。昇降部材248は、左右方向の幅が一対のベルト253の左右方向の間隔よりも小さくなっており、昇降部材248が昇降することで、ベルト253に支持されて直上を通過する載置部材270を昇降させる。昇降部材248は、上面に図示しない位置決めピンを有している。この位置決めピンが載置部材270図示しない位置決め孔に挿入されることで、昇降部材248は載置部材270を常に同じ位置で保持できるようになっている。
制御装置260は、CPUを中心とするマイクロプロセッサーとして構成されている。制御装置260は、第1,第2印刷装置201,202、第1,第2検査装置203,204,第1,第2乾燥装置211,212の排気ファン217,赤外線ヒーター220、反転装置240、及び搬送装置250の各ベルトコンベア251の図示しない駆動モータにと信号や情報の入出力を行って、これらを制御,管理する。また、制御装置260は、図示しないタッチパネルなどの表示操作部を備えており、作業者からの指示を入力したり作業者に情報を出力したりする。
こうして構成された乾燥システム200の動作及びそれによる被覆工程及び乾燥工程について説明する。まず、作業者は、制御装置260に処理開始を指示し、これを受けた制御装置260は搬送装置250を駆動させる。また、作業者は、上述したように載置部材270の複数の溝278,溝279に準備工程で得た複数(45本)のグリーン構造体109を載置し、第1ベルトコンベア251aの前端のベルト253上に載置して順次搬送させていく。なお、作業者は、図7中段の拡大図に示すように、複数のグリーン構造体109のいずれも第3面101cが上面になり且つ第6面101fが左面になるように配置する。
複数のグリーン構造体109を載置した載置部材270が第1印刷装置201に搬送されると、第1印刷装置201は、複数のグリーン構造体109の上面(第3面101c)に対してスクリーン印刷により導電性ペーストを塗布し導電性ペースト195を形成する被覆工程を行う(図7下段参照)。より具体的には、グリーン構造体109の未焼成第1下部コネクタパッド192aと未焼成ヒータ用リード線176bとを接続するように第1導電性ペースト195aを形成する。また、未焼成第1上部コネクタパッド191aと未焼成測定電極リード線144aとを接続するように第2導電性ペースト195bを形成する。なお、未焼成第1下部コネクタパッド192aは、焼成後に第1下部コネクタパッド92aとなる導電性ペースト(乾燥後の導電性ペースト)である。未焼成測定電極リード線144a等についても同様であり、焼成後の構成要素の符号に値100を加え且つ名称に未焼成を付すことで、個別の説明を省略する。また、第1,第2導電性ペースト195a,195bは、焼成後に第1,第2側面導通部95a,95bとなるものである。
なお、導電性ペースト195は、例えば上述した側面導通部95の材料となる粉末をアセトンなどの溶媒に分散させたものを用いる。導電性ペースト195には、焼結助剤を添加することが好ましい。また、側面導通部95を多孔質とする場合には、造孔材を添加することが好ましい。焼結助剤としては、例えば二酸化珪素,炭酸カルシウム,アルミナなどが挙げられる。造孔材としては、焼結時に消失する材料を用いることができ、例えばテオブロミン,アクリル樹脂などが挙げられる。造孔材の粒径や添加量は、例えば側面導通部95の気孔率に応じて適宜調整する。また、側面導通部95の厚みに応じて、導電性ペースト195の粘度を適宜調整する。
被覆工程が行われた後のグリーン構造体109は、第1検査装置203の下方を通過する際に導電性ペースト195(第1,第2導電性ペースト195a,195b)及びその周辺が撮像されて、上述した検査処理が行われる。検査処理の結果は制御装置260の記憶部に記憶される。なお、制御装置260は、撮像時に第1ベルトコンベア251aによる搬送を停止させてもよい。
検査処理が行われた後のグリーン構造体109は、第2ベルトコンベア251bによって第1乾燥装置211まで搬送される。制御装置260は、グリーン構造体109を載置した載置部材270が第1乾燥装置211の真下である所定位置(図5,8参照)まで搬送されると第2ベルトコンベア251bを停止する。また、制御装置260は、赤外線ヒーター220を制御してヒーター本体222に通電して赤外線を照射させると共に、排気ファン217を制御して排気ダクト215,216の下方の雰囲気を吸引させて、第1乾燥装置211に乾燥工程を行わせる。この乾燥工程により、導電性ペースト195(第1,第2導電性ペースト195a,195b)を乾燥させる。
ここで、乾燥工程における第1乾燥装置211とグリーン構造体109との位置関係について説明する。図7,図8に示すように、赤外線ヒーター220が赤外線を照射する赤外線照射領域228は、上面視で貫通孔271を含む載置部材270の左側の一部の領域となっている。赤外線照射領域228が乾燥対象である導電性ペースト195を全て含むように、ベルト253に対する赤外線ヒーター220の位置や反射板232の形状、載置部材270上のグリーン構造体109の位置などは予め定められている。また、本実施形態では、貫通孔271はフィラメント223の真下に位置し、排気ダクト215,216の開口の左右方向の中間に位置するようになっている。ここで、赤外線ヒーター220は上述したように0.8μm〜4μmの波長領域にピーク波長を有する赤外線を照射する。波長0.8μm〜4μmの赤外線(近赤外線)は、導電性ペースト195に含まれる水や溶剤などの分子中の水素結合を切断する能力に優れている。また、アセトンなどの溶剤は近赤外線を比較的吸収しやすい。そのため、赤外線照射領域228内に配置された導電性ペースト195は、例えば熱風乾燥を行う場合と比較して、短時間で効率よく水分や溶剤が除去され、効率よく乾燥される。なお、グリーン構造体109のうち導電性ペースト195が形成されていない領域には赤外線を照射する必要がないため、そのような領域(例えば、図7におけるグリーン構造体109の右側半分など)は赤外線照射領域228から外れるようにしておくことが好ましい。赤外線ヒーター220とグリーン構造体109との上下方向の距離(本実施形態では、保護板234とグリーン構造体109との距離)は、特にこれに限定するものではないが、例えば10mm〜80mmである。
また、導電性ペースト195の少なくとも一部が、グリーン構造体109側から見て(=上面視で)貫通孔271が存在する領域と重複するように、グリーン構造体109が載置部材270に載置されていることが好ましい。本実施形態では、導電性ペースト195(第1,第2導電性ペースト195a,195b)がいずれも上面視で貫通孔271が存在する領域内に位置するように、グリーン構造体109が載置されている(図7下段参照)。ここで、図8に示すように貫通孔271が排気ダクト215,216の下方に位置する状態で排気ファン217が吸引を行うと、吸引により貫通孔271を上方に通過する冷却ガス(大気)の流れが生じる(図8の白抜き矢印参照)。そのため、グリーン構造体109のうち上面視で貫通孔271が存在する領域内に位置する部分は、冷却ガスが集中的に流れるため、効率よく冷却される。赤外線照射領域228や、乾燥対象である導電性ペースト195及びその周辺は赤外線ヒーター220からの赤外線で過熱する場合があるが、これらが貫通孔271と重複するように配置されていることで、過熱を抑制することができる。排気ダクト215,216の排気の風速が小さいと冷却効果が小さく、風速が大きすぎると乾燥時間が長くなるため、排気ダクト215,216の吸引口における風速を0.5m/sec〜10m/secとすることが好ましい。
なお、乾燥工程における赤外線ヒーター220の出力P[W]及び赤外線の照射時間T[sec]は、予め制御装置260に記憶されている。制御装置260は、記憶された値に基づいてフィラメント223に出力Pの電力を通電すると共に排気ファン217による吸気を行う。そして、制御装置260は、照射時間T経過後にフィラメント223への通電を停止して第2ベルトコンベア251bにより乾燥後のグリーン構造体109を反転装置240に向けて搬送させる。この出力P[W]と照射時間T[sec]とは、下記式(1),(2)を共に満たすことが好ましい。
T≧(−20/13)P+380 式(1)
T≧(−2/3)P+(596/3) 式(2)
乾燥工程が行われた後のグリーン構造体109は、反転装置240によって上下が反転される。反転装置240がグリーン構造体109を反転させる際の動作について説明する。まず、第1挟持部243,243は予め載置部材270を上下逆の状態で挟持している。そして、図7に示すように複数のグリーン構造体109を載置した載置部材270が反転装置240の昇降部材248の直上まで搬送されると、昇降装置247が昇降部材248を上昇させ、載置部材270を第2挟持部244,244と同じ高さまで上昇させる。これにより、複数のグリーン構造体109が上下2枚の載置部材270で挟まれた状態になる(図5の右下拡大図参照)。より具体的には、昇降部材248によって上昇した載置部材270に載置されている複数のグリーン構造体109の上部が、第1挟持部243に挟持された載置部材270の溝278,279内に挿入される。次に、第2アーム242が縮むことで第2挟持部244,244が互いに接近する方向に移動し、上昇した載置部材270を前後から挟んでこれを挟持する。続いて、昇降部材248を下降させ、上下2枚の載置部材270の距離を保ったまま、回転軸245が180°回転する。これにより、第1アーム241,第2アーム242や上下2枚の載置部材270及びグリーン構造体109は上下が反転した状態になる。その後、昇降部材248を上昇させると共に一対の第1挟持部243,243を互いに離間する方向(前後方向)に移動して、第1挟持部243に挟持されていた載置部材270及びこれに載置されたグリーン構造体109を昇降部材248の上面に載置する。そして、昇降部材248を下降させることで、載置部材270及びこれに載置された複数のグリーン構造体109をベルト253上に載置する。以上により、載置部材270に載置されていたグリーン構造体109は、上下が反転した状態で別の載置部材270(予め第1挟持部243,243に挟持されていた載置部材270)に載置されて、ベルト253上に戻されることになる。これにより、乾燥が行われた第3面101c(反転前の上面)は下面となり、第4面101dが上面となる(図9参照)。なお、次に別の載置部材270が昇降部材248の直上に搬送されてきたときには、上述した動作と上下逆の動作を行う。すなわち、搬送された載置部材270を第1挟持部243,243が挟持し、予め第2挟持部244,244に挟持されていた載置部材270上にグリーン構造体109が上下反転して載置されて、ベルト253上に戻される。
反転装置240で反転された後のグリーン構造体109は、第2印刷装置202,第2検査装置204,第2乾燥装置212に順次搬送されて、上述した被覆工程及び乾燥工程と同様に導電性ペースト195の印刷や乾燥が行われる。まず、第2印刷装置202は、複数のグリーン構造体109の上面(第4面101d)に対してスクリーン印刷により導電性ペーストを塗布し導電性ペースト195を形成する被覆工程を行う(図9下段参照)。より具体的には、グリーン構造体109の未焼成第4下部コネクタパッド192dと未焼成基準電極リード線42aとを接続するように第3導電性ペースト195cを形成する。また、未焼成第4上部コネクタパッド191dと未焼成内側ポンプ電極リード線22cとを接続するように第4導電性ペースト195dを形成する。また、未焼成補助ポンプ電極リード線151c,151dを接続するように第5導電性ペースト195eを形成する。第3〜第5導電性ペースト195c〜195eは、焼成後に第3〜第5側面導通部95c〜195eとなるものである。
続いて、第2検査装置204により導電性ペースト195(第3〜第5側面導通部95c〜195e)の検査処理が行われる。そして、第2乾燥装置212によって導電性ペースト195(第3〜第5側面導通部95c〜195e)を乾燥する乾燥工程が行われる。なお、第2乾燥装置212の赤外線照射領域や乾燥工程時の貫通孔271及びグリーン構造体109との位置関係は、第1乾燥装置211の場合と同じとした。ただし、図9に示すように、第4面101dには第3,第4導電性ペースト195c,195dの他に第5導電性ペースト195eも形成されている。第3,第4導電性ペースト195c,195dは図7に示した第1,第2導電性ペースト195a,195bと同様に上面視で貫通孔271が存在する領域内に位置しているが、第5導電性ペースト195eは上面視で貫通孔271が存在する領域と重複していない。また、上記式(1),(2)を共に満たすように乾燥工程を行うことが好ましいのは第2乾燥装置212の場合も同様である。なお、第1乾燥装置211と第2乾燥装置212とで出力P[W]と照射時間T[sec]とが同じであってもよいし、異なっていてもよい。
第2乾燥装置212による乾燥工程が終了すると、制御装置260はベルトコンベア251eを制御して乾燥システム200から載置部材270を搬出する。以上の処理により、準備工程で用意されたグリーン構造体109の第3,第4面101c,101dの各々に対して被覆工程及び乾燥工程が行われて、導電性ペースト195(第1〜第5導電性ペースト195a〜195eの形成及び乾燥が行われる。
乾燥システム200による上記の被覆工程及び乾燥工程の後、作業者は、第1検査装置203及び第2検査装置204の検査結果に基づいて、異常と判定されたグリーン構造体109を取り除く。そして異常と判定されなかったグリーン構造体109を所定の焼成温度で焼成する。これにより、各グリーンシートや未焼成の上部コネクタパッド91,下部コネクタパッド92,各電極及び各リード線等が焼成され、導電性ペースト195(第1〜第5導電性ペースト195a〜195e)も焼成されて上述した側面導通部95(第1〜第5側面導通部95a〜95e)となり、センサ素子101を得る。このようにしてセンサ素子101を得ると、所定のハウジングに収容してガスセンサ100の本体(図示せず)に組み込むことで、ガスセンサ100が得られる。
以上詳述した本実施形態の第1,第2乾燥装置211,212における乾燥方法では0.8μm〜4μmの波長領域にピーク波長を有する赤外線を照射して、グリーン構造体109の一部を被覆する導電性ペースト195を乾燥させる。波長0.8μm〜4μmの赤外線(近赤外線)を用いることで、例えば熱風乾燥を行う場合と比較して、短時間で効率よく乾燥を行うことができる。なお、例えば熱風乾燥をバッチ炉内で行う場合、バッチ炉のサイズが比較的大きいため乾燥システム200のラインに組み込みにくい、炉内の場所による温度差が発生しやすいという問題がある。本実施形態では、赤外線ヒーター220を用いることで、炉内にグリーン構造体109を搬入する必要がなく開放状態で乾燥を行うことができ、上記のような問題が生じにくい。また、熱風乾燥をバッチ炉内で行う場合、バッチ炉にグリーン構造体109を搬出入する際に内部の温度が低下するため乾燥に適した温度に上昇するまで待ち時間が生じるという問題がある。本実施形態では、赤外線ヒーター220は通電後に比較的短時間で使用可能になるため、待ち時間が長くなりにくくラインへの組み込みに適している。また、本実施形態では、導電性ペースト195は焼成後に多孔質サーメットとなるものとした。一方、グリーン構造体109のセラミックスグリーンシートは焼成後にセラミックスとなるものである。一般に、多孔質サーメットはセラミックスよりも色が黒く、波長0.8μm〜4μmの赤外線の吸収率が高い傾向にある。そのため、フィラメント223から照射された赤外線は導電性ペースト195で効率よく吸収される一方、グリーン構造体109の本体(セラミックスグリーンシート)には比較的吸収されない。この色の違いにより、導電性ペースト195を効率よく乾燥しつつグリーン構造体109の本体については過熱が抑制される。また、例えばバッチ炉内で熱風乾燥を行う場合、特に短時間で乾燥を行うためには乾燥温度を高温にする必要があり、素子母体(グリーン構造体109本体)への影響が出る場合がある。本実施形態では、グリーン構造体109の加熱が抑制されることで、そのような影響を抑制できる。
また、第1,第2乾燥装置211,212による乾燥工程では、赤外線を照射しながら排気ファン217を用いて冷却ガスによりグリーン構造体109を冷却する。これにより、赤外線の照射に伴うグリーン構造体109の過熱による不具合を抑制することができる。過熱による不具合としては、例えば、乾燥工程でグリーン構造体109のグリーンシートが部分的に焼成されてしまうことによる後の焼成工程での焼成むらや反りの発生が挙げられる。グリーン構造体109の温度が80℃以下となるように冷却すると、上記の焼成工程での不具合を抑制できるため好ましい。
さらに、第1,第2乾燥装置211,212による乾燥工程では、貫通孔271を有する載置部材270上に、グリーン構造体109側(上側)からみて導電性ペースト195の少なくとも一部が貫通孔271が存在する領域と重複するようにグリーン構造体109を載置した状態で、赤外線を照射しながら貫通孔271内に冷却ガスを流通させる。これにより、載置部材270の貫通孔271によって冷却ガスを導電性ペースト195付近に集中的に流通させることができるため、効率よくグリーン構造体195を冷却できる。
そして、グリーン構造体109は、長尺な直方体形状である。そして、第1,第2乾燥装置211,212による乾燥工程では、載置部材270上に、複数のグリーン構造体109が各々のグリーン構造体109側(上側)からみて導電性ペースト195の少なくとも一部が貫通孔271が存在する領域と重複するように載置し且つグリーン構造体109の長手方向に垂直な方向(前後方向)に沿って複数のグリーン構造体109を隙間を空けて載置した状態で、赤外線を照射する。このように、長尺な直方体形状のグリーン構造体109を長手方向に垂直な方向に沿って隙間を空けて並べるため、隙間に冷却ガスを流通させて複数のグリーン構造体109を同時に効率よく冷却しつつ導電性ペースト195を乾燥できる。したがって、複数のグリーン構造体109の導電性ペースト195をまとめて効率よく乾燥することができる。
また、グリーン構造体109は、複数のセラミックスグリーンシートの積層体を切断して切り出された長尺な直方体形状をしており、且つ切断面(第3,第4面101c,101d)の少なくとも一部が導電性ペースト195で被覆されている。ここで、グリーン構造体109の切断面を導電性ペースト195で被覆する場合、積層体の切り出し前に導電性ペースト195で被覆することはできず、積層体からの切り出し後に導電性ペースト195による被覆や乾燥を行うことになる。上述した貫通孔271を有する載置部材270を用いた乾燥方法は、この場合の乾燥に適している。
さらにまた、第1,第2乾燥装置211,212による乾燥工程では、赤外線ヒーター220を用い、赤外線ヒーター220の出力P[W]と赤外線の照射時間T[sec]とが上記式(1),(2)を共に満たすように赤外線を照射する。これにより、導電性ペースト195を十分乾燥できる。なお、この式(1),(2)を共に満たす範囲でなるべく照射時間Tを小さくすれば、なるべく乾燥時間を短くしつつ導電性ペースト195を十分乾燥することができる。照射時間Tの上限は特に限定しないが、長すぎると単位時間当たりの処理数が小さくなるため、例えば、照射時間Tは250[sec]以下としてもよい。また、式(1),(2)に出力Pを代入したときのTの値のうち大きい方をTminとして、照射時間T≦Tmin+100[sec]としてもよい。
そしてまた、第1,第2乾燥装置211,212による乾燥工程では、導電性ペースト195を含むグリーン構造体109の一部の領域である赤外線照射領域228に赤外線を照射する。これにより、導電性ペースト195がない不要な領域に赤外線を照射することを抑制でき、グリーン構造体109の過熱を抑制することができる。また、導電性ペースト195が存在する一部の領域にのみ赤外線を照射することで、赤外線ヒーター220の出力を比較的小さくしても乾燥を十分行うことができる。
そしてまた、第1,第2乾燥装置211,212による乾燥工程では、導電性ペースト195を密閉しない状態で、赤外線を照射する。本発明の乾燥方法では、赤外線を用いて乾燥を行うため空間全体を加熱する必要がなく、密閉する必要がない。密閉しない状態で乾燥工程を行うことで、例えばグリーン構造体195の炉内(密閉空間)への搬出入などが不要になり、作業効率が向上する。
そしてまた、乾燥システム200では、グリーン構造体101の上面について導電性ペースト195の被覆及び乾燥を行った後、反転装置240がグリーン構造体109の上下を反転させ、反転後の上面(反転前の下面)について導電性ペースト195の被覆及び乾燥を行う。そのため、直方体形状のグリーン構造体109の両面(2面)の導電性ペースト195の被覆及び乾燥を自動的に行うことができる。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
例えば、上述した実施形態では、図5に示した乾燥システム200を用いて被覆工程及び乾燥工程を行うものとしたが、これに限られない。例えば、乾燥システム200において第1,第2検査装置203,204を備えないものとし、検査処理を省略してもよい。また、乾燥システム200が反転装置240を備えないものとし、グリーン構造体109の上下の反転を作業者が行ってもよい。また、乾燥システム200において反転装置240及び第2印刷装置202,第2検査装置204,第2乾燥装置212を省略して、グリーン構造体109の1面についての被覆工程及び乾燥工程を行うシステムとし、これを用いて被覆工程や乾燥工程を行ってもよい。あるいは、搬送装置250を備えず各装置間のグリーン構造体109の搬送を作業者が行ってもよい。また、第1,第2印刷装置201,202はスクリーン印刷によりグリーン構造体109を導電性ペースト195で被覆する装置としたが、被覆する方法はスクリーン印刷に限られない。例えば、グラビア印刷、ドクターブレードなどの方法を用いて被覆を行ってもよい。反転装置240は図5に示した装置に限らず、グリーン構造体109の上下の反転を行うことができればよい。例えばグリーン構造体109を1つずつ反転させてもよい。
第1,第2乾燥装置211,212についても、0.8μm〜4μmの波長領域にピーク波長を有する赤外線を照射して、導電性ペーストを乾燥させる装置であれば、どのような装置でもよい。例えば、第1,第2乾燥装置211,212の少なくとも一方が反射板232を備えていなくてもよい。また、第1,第2乾燥装置211,212の少なくとも一方が排気ダクト215,排気ダクト216,排気ファン217を備えず、赤外線照射中の冷却を行わなくてもよい。あるいは、赤外線照射領域228の中にグリーン構造体109全体が含まれていてもよい。
上述した実施形態では、図6,7に示した載置部材270上にグリーン構造体109を載置して乾燥工程を行ったが、これに限られない。例えば、載置部材270が貫通孔貫通孔272を有しなくてもよいし、貫通孔271を有しなくてもよい。貫通孔271を有しない場合、例えばグリーン構造体109の上面に向けて冷却ガスを送風してグリーン構造体109を冷却してもよい。また、貫通孔271の形状は角丸の長方形状に限らず、貫通孔であればよい。また、載置部材270に複数のグリーン構造体109を載置したが、これに限らずグリーン構造体109を1本ずつ載置して乾燥工程を行ってもよい。
上述した実施形態では、グリーン構造体109の積層体からの切断面である第3,第4面101c,101dを被覆する導電性ペースト195を乾燥する際に0.8μm〜4μmの波長領域にピーク波長を有する赤外線を照射したが、これに限られない。例えば、積層する前のグリーンシートに形成された電極やリード線等の導電性ペーストのパターンの乾燥に、あるいは、切断前の積層体の状態で、電極やリード線等の導電性ペーストのパターンの乾燥に、0.8μm〜4μmの波長領域にピーク波長を有する赤外線を用いてもよい。
上述した実施形態では、第1乾燥装置211は1つの赤外線ヒーター220(フィラメント223)を備えるものとしたが、複数の赤外線ヒーター220を備えていてもよい。この場合、出力P[W]は複数の赤外線ヒーター220の合計出力とする。
上述した実施形態では、セラミックス部品としてのセンサ素子101を製造する場合について説明したが、1以上のセラミックスグリーンシートを有し少なくとも一部が導電性ペーストで被覆されたグリーン構造体を乾燥した後に焼成して得られるセラミックス部品であれば、これに限られない。
以下には、本発明の乾燥方法を具体的に実施した例を実施例として説明する。実験例2,7〜9,11,14,15,20,21,23、24,27〜29,32〜34,38,39,41〜46,48,50が本発明の実施例に相当し、それ以外が比較例に相当する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実験例1〜50]
上述した実施形態の第1乾燥装置211を用いて本発明の乾燥方法を行い、出力P[W]と照射時間T[sec]とを表1に示すように種々変更した場合の導電性ペーストの乾燥状態を調べ、実験例1〜50とした。なお、排気ファン217による吸引の風速は排気ダクト215,216の吸引口で2m/secとした。乾燥時の保護板234とグリーン構造体109との上下方向の距離は、30mmとした。また、フィラメント223からの赤外線のピーク波長は約1μmであった。
測定対象のグリーン構造体及び導電性ペーストは、以下のように作製した。まず、6枚のセラミックスグリーンシートを積層した積層体を作製し、積層体を切断してグリーン構造体を作製した。グリーン構造体は、前後方向の長さが70mm、左右方向の幅が6mm、上下方向の厚さが1.5mmとした。6枚のセラミックスグリーンシートは、安定化剤のイットリアを4mol%添加したジルコニア粒子と有機バインダーと有機溶剤とを混合し、テープ成形により成形した。なお、グリーン構造体の内部の電極等のパターンは形成しなかった。
次に、グリーン構造体のうち積層体から切り出した切断面に、スクリーン印刷により導電性ペーストのパターンを印刷して、切断面の一部を導電性ペーストで被覆した。導電性ペーストは、以下のように調整した。安定化剤のイットリアを4mol%添加したジルコニア粒子に、Pt、及び粒径0.3μmの造孔材(アルミナ)、及び溶媒としてのアセトンを所定量を加えて予備混合を行い予備混合液を得た。ポリビニルブチラール15質量%を、酢酸ジエチレングリコールブチルエーテル85質量%に溶解させて得た有機バインダー液を、予備混合液中のイットリア部分安定化ジルコニアと造孔材との合計体積に対して50体積%の割合となるように、予備混合液に添加して混合した後、適宜ブチルカルビトールを添加して粘度を調整することにより、導電性ペーストを得た。印刷後の導電性ペーストの厚みは15μm、大きさは1mm×1.5mmの長方形とした。
実験例1〜50の乾燥を行った後、導電性ペーストの乾燥状態を調べ、乾燥十分(○),乾燥不十分(△),未乾燥(×)、の三段階の評価を行った。評価は、評価用シート(紙製及びPET製)を一定圧力で導電性ペーストに押し付け、評価用シート側に導電性ペーストの材料成分が付着したか否かで行った。全く付着しなかった場合を乾燥十分、わずかに付着した場合を乾燥不十分、多く付着した場合を未乾燥、と評価した。表1に、実験例1〜50の出力P[W],照射時間T[sec],及び乾燥状態の評価結果をまとめて示した。また、図10は、出力P,照射時間Tに対する乾燥状態の評価をプロットしたグラフである。照射時間Tはフィラメント223に通電を開始した時刻からの時間として測定した。なお、フィラメント223は通電開始とほぼ同時に設定した出力Pで安定した。
図10に示すように、出力Pが高いほど、また照射時間Tが大きいほど、乾燥状態が十分となる傾向が見られた。また、実験例1〜50の結果より、乾燥状態が不十分又は未乾燥とならない下限の直線として2本の直線A,Bを図10のグラフに作図した。直線A,Bの式は以下の式(A),(B)のようになった。図10から分かるように、直線A,Bのいずれよりも照射時間Tが大きい領域(図10の斜線領域であり、直線A,Bの一部も含む)であれば、乾燥状態は十分であり、出力P及び照射時間Tの好ましい組み合わせであることがわかった。上述した式(1),(2)は、この領域を表す式である。なお、実験例1〜50のいずれにおいても、乾燥工程におけるグリーン構造体の温度は80℃を超えることはなかった。また、実験例1〜50について、照射時間Tの長短によるグリーン構造体の温度差はわずかであった。グリーン構造体を冷却しながら赤外線を照射することで、グリーン構造体の温度上昇が十分抑制されていると考えられる。
T=(−20/13)P+380 式(A)
T=(−2/3)P+(596/3) 式(B)
[実験例51]
バッチ炉にグリーン構造体を搬入し、80℃の熱風で導電性ペーストの乾燥を行った点以外は、実験例1〜51と同様にして導電性ペーストを乾燥させた。実験例51では、乾燥が十分となるまでに20分と長時間を要した。