次に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態であるガスセンサ100の構成の一例を概略的に示した断面模式図である。図2は、図1のA−A断面図である。なお、ガスセンサ100は、例えば自動車の排気ガスなどの被測定ガスにおけるNOxなどの特定ガスの濃度を、センサ素子101により検出するものである。また、センサ素子101は長尺な直方体形状をしており、このセンサ素子101の長手方向(図1の左右方向)を前後方向とし、センサ素子101の厚み方向(図1の上下方向)を上下方向とする。また、センサ素子101の幅方向(前後方向及び上下方向に垂直な方向)を左右方向とする。
センサ素子101は、それぞれがジルコニア(ZrO2)等の酸素イオン伝導性固体電解質層からなる第1基板層1と、第2基板層2と、第3基板層3と、第1固体電解質層4と、スペーサ層5と、第2固体電解質層6との6つの層が、図面視で下側からこの順に積層された構造を有する素子である。また、これら6つの層を形成する固体電解質は緻密な気密のものである。係るセンサ素子101は、例えば、各層に対応するセラミックスグリーンシートに所定の加工および回路パターンの印刷などを行った後にそれらを積層し、さらに、焼成して一体化させることによって製造される。
センサ素子101の一先端部であって、第2固体電解質層6の下面と第1固体電解質層4の上面との間には、ガス導入口10と、第1拡散律速部11と、緩衝空間12と、第2拡散律速部13と、第1内部空所20と、第3拡散律速部30と、第2内部空所40とが、この順に連通する態様にて隣接形成されてなる。
ガス導入口10と、緩衝空間12と、第1内部空所20と、第2内部空所40とは、スペーサ層5をくり抜いた態様にて設けられた上部を第2固体電解質層6の下面で、下部を第1固体電解質層4の上面で、側部をスペーサ層5の側面で区画されたセンサ素子101内部の空間である。
第1拡散律速部11と、第2拡散律速部13と、第3拡散律速部30とはいずれも、2本の横長の(図面に垂直な方向に開口が長手方向を有する)スリットとして設けられる。なお、ガス導入口10から第2内部空所40に至る部位をガス流通部とも称する。
また、ガス流通部よりも先端側から遠い位置には、第3基板層3の上面と、スペーサ層5の下面との間であって、側部を第1固体電解質層4の側面で区画される位置に基準ガス導入空間43が設けられている。基準ガス導入空間43には、NOx濃度の測定を行う際の基準ガスとして、例えば大気が導入される。
大気導入層48は、多孔質セラミックスからなる層であって、大気導入層48には基準ガス導入空間43を通じて基準ガスが導入されるようになっている。また、大気導入層48は、基準電極42を被覆するように形成されている。
基準電極42は、第3基板層3の上面と第1固体電解質層4とに挟まれる態様にて形成される電極であり、上述のように、その周囲には、基準ガス導入空間43につながる大気導入層48が設けられている。また、後述するように、基準電極42を用いて第1内部空所20内や第2内部空所40内の酸素濃度(酸素分圧)を測定することが可能となっている。
ガス流通部において、ガス導入口10は、外部空間に対して開口してなる部位であり、該ガス導入口10を通じて外部空間からセンサ素子101内に被測定ガスが取り込まれるようになっている。第1拡散律速部11は、ガス導入口10から取り込まれた被測定ガスに対して、所定の拡散抵抗を付与する部位である。緩衝空間12は、第1拡散律速部11より導入された被測定ガスを第2拡散律速部13へと導くために設けられた空間である。第2拡散律速部13は、緩衝空間12から第1内部空所20に導入される被測定ガスに対して、所定の拡散抵抗を付与する部位である。被測定ガスが、センサ素子101外部から第1内部空所20内まで導入されるにあたって、外部空間における被測定ガスの圧力変動(被測定ガスが自動車の排気ガスの場合であれば排気圧の脈動)によってガス導入口10からセンサ素子101内部に急激に取り込まれた被測定ガスは、直接第1内部空所20へ導入されるのではなく、第1拡散律速部11、緩衝空間12、第2拡散律速部13を通じて被測定ガスの濃度変動が打ち消された後、第1内部空所20へ導入されるようになっている。これによって、第1内部空所20へ導入される被測定ガスの濃度変動はほとんど無視できる程度のものとなる。第1内部空所20は、第2拡散律速部13を通じて導入された被測定ガス中の酸素分圧を調整するための空間として設けられている。係る酸素分圧は、主ポンプセル21が作動することによって調整される。
主ポンプセル21は、第1内部空所20に面する第2固体電解質層6の下面のほぼ全面に設けられた天井電極部22aを有する内側ポンプ電極22と、第2固体電解質層6の上面の天井電極部22aと対応する領域に外部空間に露出する態様にて設けられた外側ポンプ電極23と、これらの電極に挟まれた第2固体電解質層6とによって構成されてなる電気化学的ポンプセルである。
内側ポンプ電極22は、第1内部空所20を区画する上下の固体電解質層(第2固体電解質層6および第1固体電解質層4)、および、側壁を与えるスペーサ層5にまたがって形成されている。具体的には、第1内部空所20の天井面を与える第2固体電解質層6の下面には天井電極部22aが形成され、また、底面を与える第1固体電解質層4の上面には底部電極部22bが形成され、そして、それら天井電極部22aと底部電極部22bとを接続するように、側部電極部(図示省略)が第1内部空所20の両側壁部を構成するスペーサ層5の側壁面(内面)に形成されて、該側部電極部の配設部位においてトンネル形態とされた構造において配設されている。
内側ポンプ電極22と外側ポンプ電極23とは、多孔質サーメット電極(例えば、Auを1%含むPtとZrO2とのサーメット電極)として形成される。なお、被測定ガスに接触する内側ポンプ電極22は、被測定ガス中のNOx成分に対する還元能力を弱めた材料を用いて形成される。
主ポンプセル21においては、内側ポンプ電極22と外側ポンプ電極23との間に所望のポンプ電圧Vp0を印加して、内側ポンプ電極22と外側ポンプ電極23との間に正方向あるいは負方向にポンプ電流Ip0を流すことにより、第1内部空所20内の酸素を外部空間に汲み出し、あるいは、外部空間の酸素を第1内部空所20に汲み入れることが可能となっている。
また、第1内部空所20における雰囲気中の酸素濃度(酸素分圧)を検出するために、内側ポンプ電極22と、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3と、基準電極42によって、電気化学的なセンサセル、すなわち、主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80が構成されている。
主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80における起電力V0を測定することで第1内部空所20内の酸素濃度(酸素分圧)がわかるようになっている。さらに、起電力V0が一定となるように可変電源24のポンプ電圧Vp0をフィードバック制御することでポンプ電流Ip0が制御されている。これによって、第1内部空所内20内の酸素濃度は所定の一定値に保つことができる。
第3拡散律速部30は、第1内部空所20で主ポンプセル21の動作により酸素濃度(酸素分圧)が制御された被測定ガスに所定の拡散抵抗を付与して、該被測定ガスを第2内部空所40に導く部位である。
第2内部空所40は、第3拡散律速部30を通じて導入された被測定ガス中の窒素酸化物(NOx)濃度の測定に係る処理を行うための空間として設けられている。NOx濃度の測定は、主として、補助ポンプセル50により酸素濃度が調整された第2内部空所40において、さらに、測定用ポンプセル41の動作によりNOx濃度が測定される。
第2内部空所40では、あらかじめ第1内部空所20において酸素濃度(酸素分圧)が調整された後、第3拡散律速部30を通じて導入された被測定ガスに対して、さらに補助ポンプセル50による酸素分圧の調整が行われるようになっている。これにより、第2内部空所40内の酸素濃度を高精度に一定に保つことができるため、係るガスセンサ100においては精度の高いNOx濃度測定が可能となる。
補助ポンプセル50は、第2内部空所40に面する第2固体電解質層6の下面の略全体に設けられた天井電極部51aを有する補助ポンプ電極51と、外側ポンプ電極23(外側ポンプ電極23に限られるものではなく、センサ素子101の外側の適当な電極であれば足りる)と、第2固体電解質層6とによって構成される、補助的な電気化学的ポンプセルである。
係る補助ポンプ電極51は、先の第1内部空所20内に設けられた内側ポンプ電極22と同様なトンネル形態とされた構造において、第2内部空所40内に配設されている。つまり、第2内部空所40の天井面を与える第2固体電解質層6に対して天井電極部51aが形成され、また、第2内部空所40の底面を与える第1固体電解質層4には、底部電極部51bが形成され、そして、それらの天井電極部51aと底部電極部51bとを連結する側部電極部(図示省略)が、第2内部空所40の側壁を与えるスペーサ層5の両壁面にそれぞれ形成されたトンネル形態の構造となっている。なお、補助ポンプ電極51についても、内側ポンプ電極22と同様に、被測定ガス中のNOx成分に対する還元能力を弱めた材料を用いて形成される。
補助ポンプセル50においては、補助ポンプ電極51と外側ポンプ電極23との間に所望の電圧Vp1を印加することにより、第2内部空所40内の雰囲気中の酸素を外部空間に汲み出し、あるいは、外部空間から第2内部空所40内に汲み入れることが可能となっている。
また、第2内部空所40内における雰囲気中の酸素分圧を制御するために、補助ポンプ電極51と、基準電極42と、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3とによって電気化学的なセンサセル、すなわち、補助ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル81が構成されている。
なお、この補助ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル81にて検出される起電力V1に基づいて電圧制御される可変電源52にて、補助ポンプセル50がポンピングを行う。これにより第2内部空所40内の雰囲気中の酸素分圧は、NOxの測定に実質的に影響がない低い分圧にまで制御されるようになっている。
また、これとともに、そのポンプ電流Ip1が、主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80の起電力の制御に用いられるようになっている。具体的には、ポンプ電流Ip1は、制御信号として主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80に入力され、その起電力V0が制御されることにより、第3拡散律速部30から第2内部空所40内に導入される被測定ガス中の酸素分圧の勾配が常に一定となるように制御されている。NOxセンサとして使用する際は、主ポンプセル21と補助ポンプセル50との働きによって、第2内部空所40内での酸素濃度は約0.001ppm程度の一定の値に保たれる。
測定用ポンプセル41は、第2内部空所40内において、被測定ガス中のNOx濃度の測定を行う。測定用ポンプセル41は、第2内部空所40に面する第1固体電解質層4の上面であって第3拡散律速部30から離間した位置に設けられた測定電極44と、外側ポンプ電極23と、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4とによって構成された電気化学的ポンプセルである。
測定電極44は、多孔質サーメット電極である。測定電極44は、第2内部空所40内の雰囲気中に存在するNOxを還元するNOx還元触媒としても機能する。さらに、測定電極44は、第4拡散律速部45によって被覆されてなる。
第4拡散律速部45は、セラミックス多孔体にて構成される膜である。第4拡散律速部45は、測定電極44に流入するNOxの量を制限する役割を担うとともに、測定電極44の保護膜としても機能する。測定用ポンプセル41においては、測定電極44の周囲の雰囲気中における窒素酸化物の分解によって生じた酸素を汲み出して、その発生量をポンプ電流Ip2として検出することができる。
また、測定電極44の周囲の酸素分圧を検出するために、第1固体電解質層4と、第3基板層3と、測定電極44と、基準電極42とによって電気化学的なセンサセル、すなわち、測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル82が構成されている。測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル82にて検出された起電力V2に基づいて可変電源46が制御される。
第2内部空所40内に導かれた被測定ガスは、酸素分圧が制御された状況下で第4拡散律速部45を通じて測定電極44に到達することとなる。測定電極44の周囲の被測定ガス中の窒素酸化物は還元されて(2NO→N2+O2)酸素を発生する。そして、この発生した酸素は測定用ポンプセル41によってポンピングされることとなるが、その際、測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル82にて検出された起電力V2が一定となるように可変電源46の電圧Vp2が制御される。測定電極44の周囲において発生する酸素の量は、被測定ガス中の窒素酸化物の濃度に比例するものであるから、測定用ポンプセル41におけるポンプ電流Ip2を用いて被測定ガス中の窒素酸化物濃度が算出されることとなる。
また、測定電極44と、第1固体電解質層4と、第3基板層3と、基準電極42とを組み合わせて、電気化学的センサセルとして酸素分圧検出手段を構成するようにすれば、測定電極44の周りの雰囲気中のNOx成分の還元によって発生した酸素の量と基準大気に含まれる酸素の量との差に応じた起電力を検出することができ、これによって被測定ガス中のNOx成分の濃度を求めることも可能である。
また、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3と、外側ポンプ電極23と、基準電極42とから電気化学的なセンサセル83が構成されており、このセンサセル83によって得られる起電力Vrefによりセンサ外部の被測定ガス中の酸素分圧を検出可能となっている。
このような構成を有するガスセンサ100においては、主ポンプセル21と補助ポンプセル50とを作動させることによって酸素分圧が常に一定の低い値(NOxの測定に実質的に影響がない値)に保たれた被測定ガスが測定用ポンプセル41に与えられる。したがって、被測定ガス中のNOxの濃度に略比例して、NOxの還元によって発生する酸素が測定用ポンプセル41より汲み出されることによって流れるポンプ電流Ip2に基づいて、被測定ガス中のNOx濃度を知ることができるようになっている。
さらに、センサ素子101は、固体電解質の酸素イオン伝導性を高めるために、センサ素子101を加熱して保温する温度調整の役割を担うヒータ部70を備えている。ヒータ部70は、ヒータコネクタ電極71と、ヒータ72と、スルーホール73と、ヒータ絶縁層74、圧力放散孔75とを備えている。また、ヒータ部70は、セラミックスからなる第1基板層1,第2基板層2,及び第3基板層3を備えている。ヒータ部70は、ヒータ72と、ヒータ72を囲む第2基板層2及び第3基板層3を備えたセラミックスヒータとして構成されている。ヒータ72は、図2に示すように、発熱部76とリード部79とを備えている。
ヒータコネクタ電極71は、第1基板層1の下面に接する態様にて形成されてなる電極である。ヒータコネクタ電極71を外部電源と接続することによって、外部からヒータ部70へ給電することができるようになっている。
ヒータ72の発熱部76は、第2基板層2と第3基板層3とに上下から挟まれた態様にて形成される電気抵抗体である。ヒータ72のリード部79は、スルーホール73を介してヒータコネクタ電極71と接続されており、該ヒータコネクタ電極71を通して外部より給電されることにより発熱部76が発熱し、センサ素子101を形成する固体電解質の加熱と保温を行う。
また、ヒータ72の発熱部76は、第1内部空所20から第2内部空所40の全域に渡って埋設されており、センサ素子101全体を上記固体電解質が活性化する温度に調整することが可能となっている。
ヒータ絶縁層74は、ヒータ72の上下面に、アルミナ等の絶縁体によって形成されてなる絶縁層である。ヒータ絶縁層74は、第2基板層2とヒータ72との間の電気的絶縁性、および、第3基板層3とヒータ72との間の電気的絶縁性を得る目的で形成されている。
圧力放散孔75は、第3基板層3を貫通し、基準ガス導入空間43に連通するように設けられてなる部位であり、ヒータ絶縁層74内の温度上昇に伴う内圧上昇を緩和する目的で形成されてなる。
ヒータ72の発熱部76及びリード部79について詳細に説明する。発熱部76は、抵抗発熱体であり、図2に示すように、両端がリード部79に接続された帯状の一筆書き形状をしている。発熱部76は、複数(本実施形態では3個)の屈曲部77と、複数(本実施形態では4個)の直線部78とを有している。複数の屈曲部77及び複数の直線部78は、電気的に直列に接続されている。発熱部76は、左右対称の形状をしている。
複数の直線部78は、センサ素子101の短手方向(左右方向)に沿って等間隔に並んでいる。複数の直線部78は、いずれも、長さ方向がセンサ素子101の長手方向(前後方向)に沿っている。本実施形態では、複数の直線部78は長さ方向が前後方向と平行になるように配設されている。複数の直線部78のうち最も左側に位置する直線部78は、後端が第1リード79aに接続されている。複数の直線部78のうち最も右側に位置する直線部78は、後端が第2リード79bに接続されている。
複数の屈曲部77の各々は、左右方向に隣り合う直線部78同士を接続している。屈曲部77は、隣り合う直線部78同士の前端側(一端側)を接続する先端側屈曲部77aと、隣り合う直線部78同士の後端側(他端側)を接続する後端側屈曲部77bとを有している。本実施形態では、屈曲部77は2個の先端側屈曲部77aと、1個の後端側屈曲部77bとを有している。複数の屈曲部77は、いずれも曲線状に屈曲しており半円の円弧状をしている。なお、屈曲部77は、折れ線状に屈曲した形状であってもよい。
発熱部76は、本実施形態では、貴金属とセラミックスとを含むサーメット(例えば、白金(Pt)とアルミナ(Al2O3)とのサーメット)とした。なお、発熱部76は、サーメットに限らず、例えば貴金属などの導電性物質を含むものであればよい。発熱部76に用いる貴金属としては、白金,ロジウム(Rh),金(Au),パラジウム(Pd)の少なくとも1以上の金属,又はその合金などが挙げられる。
屈曲部77は、使用時に発熱部76が加熱される可能性のある温度範囲である700℃以上900℃以下の温度範囲の少なくともいずれかの温度において、単位長さあたりの抵抗値が直線部78と比べて低くなっている。換言すると、屈曲部77の単位長さあたりの抵抗値を単位抵抗値R1[μΩ/mm]とし、直線部78の単位長さあたりの抵抗値を単位抵抗値R2[μΩ/mm]としたときに、上記の温度範囲の少なくともいずれかの温度における単位抵抗値比R1/R2が値1未満となっている。こうすることで、700℃〜900℃の少なくともいずれかの温度において、屈曲部77は直線部78と比べて発熱密度(単位長さあたりの発熱量)が小さくなり、温度が上昇しにくくなる。ここで、高温になるほど発熱部76は酸化(例えば発熱部76中の貴金属成分であるPtの酸化)などにより劣化しやすくなる。単位抵抗値比R1/R2を値1未満とすることで、屈曲部77の温度上昇を抑制でき、単位抵抗値比R1/R2が値1以上である場合と比較して、屈曲部77の劣化を抑制することができる。
なお、屈曲部77及び直線部78の長さ方向は、屈曲部77及び直線部78の軸方向,換言すると電流が流れる方向とする。また、単位抵抗値R1は、屈曲部77の単位長さあたりの抵抗値の平均値とする。同様に、単位抵抗値R2は、直線部78の単位長さあたりの抵抗値の平均値とする。そのため、屈曲部77の一部に直線部78よりも単位長さあたりの抵抗値が高い部分がある場合でも、全体として屈曲部77の方が単位長さあたりの抵抗値が低ければよい。ただし、いずれの屈曲部77のいずれの部分においても単位長さあたりの抵抗値が単位抵抗値R2より低いことが好ましい。また、発熱部76は、上記の温度範囲のいずれの温度においても単位抵抗値比R1/R2が値1未満であることが好ましい。また、発熱部76は、上記の温度範囲の少なくともいずれかの温度における単位抵抗値比R1/R2が、値0.87以下であることが好ましく、値0.80以下であることがより好ましい。また、上記の温度範囲のいずれの温度においても、単位抵抗値比R1/R2は値0.5以上としてもよい。
本実施形態では、屈曲部77と直線部78とは同じ材質(上述した白金を含むサーメット)とし、屈曲部77の長さ方向に垂直な断面積S1[mm2]が、直線部78の長さ方向に垂直な断面積S2[mm2]よりも大きくなるようにしている。すなわち、発熱部76は、断面積比S2/S1が値1未満である。こうすることで、700℃以上900℃以下の温度範囲のいずれにおいても、単位抵抗値比R1/R2が値1未満となる。断面積比S2/S1は、値0.87以下が好ましく、値0.80以下がより好ましい。なお、断面積比S2/S1の調整は、例えば、屈曲部77の幅W1を直線部78の幅W2より大きくするか、又は屈曲部77の厚さD1を直線部78の厚さD2より大きくするか、の少なくとも一方により行えばよい。例えば、幅W1>幅W2の場合、断面積比S2/S1が値1未満となるのであれば、厚さD1<厚さD2であってもよいし、厚さD1=厚さD2であってもよいし、厚さD1>厚さD2であってもよい。同様に、厚さD1>厚さD2の場合、断面積比S2/S1が値1未満となるのであれば、幅W1<幅W2であってもよいし、幅W1=幅W2であってもよいし、幅W1>幅W2であってもよい。なお、断面積S1,S2の値も、単位抵抗値R1,R2と同様に屈曲部77,直線部78の各々の平均値とする。本実施形態では、直線部78の断面積は、どの部分でも同じ値(=断面積S2)とした。屈曲部77は、直線部78との接続部分では直線部78と同じ断面積となり、直線部78から離れた位置ほど断面積が大きくなるような形状とした。すなわち、複数の屈曲部77の各々は、左右の中央部分の断面(例えば屈曲部77aであれば前方に最も突出した部分を通る断面)の断面積が最も大きくなるような形状とした。また、断面積比S2/S1は0.5以上としてもよい。幅W1,W2は、0.05mm以上1.5mm以下としてもよい。厚さD1,D2は、0.003mm以上0.1mm以下としてもよい。
リード部79は、発熱部76の左後方に配設された第1リード79aと、右後方に配設された第2リード79bとを有している。第1,第2リード79a,79bは発熱部76への通電用のリードであり、ヒータコネクタ電極71と接続されている。第1リード79aは正極リードであり、第2リード79bは負極リードである。この第1,第2リード79a,79b間に電圧が印加されることで発熱部76に電流が流れ、発熱部76が発熱する。リード部79は、導電体であり、発熱部76と比べて単位長さあたりの抵抗値が低くなっている。そのため、リード部79は発熱部76とは異なり通電時にはほとんど発熱しないようになっている。例えば、リード部79は、発熱部76と比べて体積抵抗率の低い材質であったり、断面積が大きかったりすることで、単位長さあたりの抵抗値が低くなっている。本実施形態では、リード部79は、発熱部76と比べて貴金属の割合が高いことで体積抵抗率が低くなっており、且つ、発熱部76と比べて幅が広いことで断面積が大きくなっている。なお、リード部79の左右方向の幅は、前方の直線部78との接続部分では直線部78と同じであるが、後方ほど幅が広くなっている。
こうして構成されたガスセンサ100の製造方法を以下に説明する。まず、ジルコニアなどの酸素イオン伝導性固体電解質をセラミックス成分として含む6枚の未焼成のセラミックスグリーンシートを用意する。このグリーンシートには、印刷時や積層時の位置決めに用いるシート穴や必要なスルーホール等を予め複数形成しておく。また、スペーサ層5となるグリーンシートにはガス流通部となる空間を予め打ち抜き処理などによって設けておく。そして、第1基板層1と、第2基板層2と、第3基板層3と、第1固体電解質層4と、スペーサ層5と、第2固体電解質層6のそれぞれに対応して、各セラミックスグリーンシートに種々のパターンを形成するパターン印刷処理・乾燥処理を行う。形成するパターンは、具体的には、例えば上述した各電極や各電極に接続されるリード線、大気導入層48,ヒータ72,などのパターンである。パターン印刷は、それぞれの形成対象に要求される特性に応じて用意したパターン形成用ペーストを、公知のスクリーン印刷技術を利用してグリーンシート上に塗布することにより行う。ヒータ72となるパターン形成用のペーストは、上述したヒータ72の材質からなる原料(例えば貴金属とセラミック粒子)と、有機バインダー及び有機溶剤等を混合したものを用いる。
このとき、ヒータ72となるパターンは、単位抵抗値比R1/R2が値1未満となるように、すなわち断面積比S2/S1が値1未満となるように形成する。例えば、幅W1>幅W2となるようにするには、そのようなパターンを形成できるような形状のマスクを用いる。また、厚さD1>厚さD2となるようにするには、例えば直線部78となる部分のパターンと比べて、屈曲部77となる部分のパターンを形成するペーストの粘度を高くしたり、屈曲部77となる部分のパターンを形成する際の印刷回数を増やしたりする。
このように各種のパターンを形成したあと、グリーンシートを乾燥する。乾燥処理についても、公知の乾燥手段を用いて行う。パターン印刷・乾燥が終わると、各層に対応するグリーンシート同士を積層・接着するための接着用ペーストの印刷・乾燥処理を行う。そして、接着用ペーストを形成したグリーンシートをシート穴により位置決めしつつ所定の順序に積層して、所定の温度・圧力条件を加えることで圧着させ、一つの積層体とする圧着処理を行う。こうして得られた積層体は、複数個のセンサ素子101を包含したものである。その積層体を切断してセンサ素子101の大きさに切り分ける。そして、切り分けた積層体を所定の焼成温度で焼成し、センサ素子101を得る。
このようにしてセンサ素子101を得ると、センサ素子101を組み込んだセンサ組立体を製造し、保護カバーなどを取り付けることで、ガスセンサ100が得られる。なお、単位抵抗値比R1/R2が値1未満となるようにする点を除いて、上記のようなガスセンサの製造方法は公知であり、例えば国際公開2013/005491号に記載されている。
こうして構成されたガスセンサ100では、使用時に、ヒータ72がヒータコネクタ電極71を介して電源(例えば自動車のオルタネータ)に接続され、第1リード79a,第2リード79b間に直流電圧(例えば12〜14V)が印加される。そして、印加された電圧により、発熱部76に電流が流れて発熱部76が発熱する。これにより、センサ素子101全体が上記固体電解質(各層1〜6)が活性化する温度(例えば、700℃〜900℃)に調整される。このとき、発熱部76は高温になるが、高温になるほど発熱部76は酸化して劣化しやすい。しかも、一般に、屈曲部は、直線部と比べて熱膨張による応力の影響を受けやすいため、直線部と比べて劣化による断線等が生じやすい。より具体的には、屈曲部は熱膨張による応力の影響で微少なクラックが発生しやすい。そして、クラックにより屈曲部の表面積が増加することで酸化が促進されたり、さらにクラックが伸展したりすることで、屈曲部は断線等が生じやすく寿命が短い傾向にある。しかし、本実施形態のヒータ部70では、700℃〜900℃の少なくともいずれかの温度における単位抵抗値比R1/R2が値1未満となっている。これにより、700℃〜900℃の少なくともいずれかの温度において、屈曲部77は直線部78と比べてその温度での発熱密度が小さくなり、温度が上昇しにくくなる。これにより、屈曲部77の劣化を抑制でき、屈曲部77の寿命が長くなる。
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態のヒータ部70が本発明のセラミックスヒータに相当し、ヒータ72が発熱体に相当し、屈曲部77が屈曲部に相当し、直線部78が直線部に相当し、第1基板層1,第2基板層2及び第3基板層3がセラミックス体に相当する。
以上詳述した本実施形態のガスセンサ100によれば、ヒータ部70は、ヒータ72が直線部78と屈曲部77とを有している。そして、屈曲部77は、700℃以上900℃以下の温度範囲の少なくともいずれかの温度における単位長さあたりの抵抗値が直線部と比べて低くなっている。これにより、700℃〜900℃の少なくともいずれかの温度において、屈曲部77は直線部78と比べて発熱密度が小さくなり、屈曲部77の劣化を抑制できる。このため、屈曲部77に例えば断線などが生じにくくなり、屈曲部77の寿命が長くなる。また、劣化による断線等が生じやすい屈曲部77の寿命が長くなることで、発熱部76全体としての寿命も長くなる。
また、上述した温度範囲の少なくともいずれかの温度における単位抵抗値比R1/R2が値0.87以下であることで、屈曲部77の劣化を抑制する効果がより高まる。単位抵抗値比R1/R2が値0.80以下であることで、屈曲部77の劣化を抑制する効果がさらに高まる。屈曲部77は、直線部78と比べて長さ方向に垂直な断面積が大きいため、屈曲部77の単位長さあたりの抵抗値(単位抵抗値R1)が直線部78の単位抵抗値R2と比べて低くなりやすい。発熱部76は、帯状であり、屈曲部77は、厚さが直線部78の厚さ以上になっている。断面積比S2/S1が値0.87以下であるため、上述した温度範囲の少なくともいずれかの温度における単位抵抗値比R1/R2が値0.87以下になりやすい。また、断面積比S2/S1が値0.80以下であることで、上述した温度範囲の少なくともいずれかの温度における単位抵抗値比R1/R2が値0.80以下になりやすい。
さらに、セラミックス体(第1基板層1,第2基板層2及び第3基板層3)は、長手方向と短手方向とを有する板状体であり、ヒータ72は、直線部78として、短手方向(左右方向)に沿って並んでおり長さ方向が長手方向(前後方向)に沿った4以上の直線部78を有し、ヒータ72は、屈曲部77として、短手方向に隣り合う直線部78同士を長手方向の先端側で接続する複数の先端側屈曲部77aと、短手方向に隣り合う直線部同士78を長手方向の後端側で接続する1以上の後端側屈曲部77bと、を有している。さらにまた、センサ素子101は、ヒータ部70を備えており、被測定ガス中の特定ガス濃度を検出する。ガスセンサ100は、センサ素子101を備えている。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
例えば、上述した実施形態では、断面積比S2/S1を値1未満としたが、700℃〜900℃の温度範囲の少なくともいずれかの温度における単位抵抗値比R1/R2が値1未満であればよい。例えば、屈曲部77が、直線部78と比べて上記の温度範囲の少なくともいずれかの温度における体積抵抗率が低くてもよい。すなわち、上記の温度範囲の少なくともいずれかの温度において、屈曲部77の体積抵抗率ρ1[μΩ・cm]と直線部78の体積抵抗率ρ2[μΩ・cm]との比である体積抵抗率比ρ1/ρ2が値1未満であってもよい。こうしても、上記の温度範囲の少なくともいずれかの温度における単位抵抗値比R1/R2を値1未満とすることができ、屈曲部77の劣化を抑制してヒータ72の寿命を長くできる。上記の温度範囲の少なくともいずれかの温度において体積抵抗率比ρ1/ρ2は値0.87以下であることが好ましく、値0.80以下であることがより好ましい。例えば、屈曲部77に含まれる貴金属(導体)の割合を直線部78と比べて高くすることで、体積抵抗率ρ1を体積抵抗率ρ2より低くすることができる。あるいは、例えば直線部78は白金を主成分とし、屈曲部77は白金に加えて又は代えて白金よりも体積抵抗率の低い貴金属(ロジウム,金など)を添加することでも、体積抵抗率ρ1を体積抵抗率ρ2より低くすることができる。すなわち、屈曲部77が、直線部78には含まれず直線部78に含まれる貴金属よりも体積抵抗率の低い貴金属を含有していてもよい。あるいは、屈曲部77に、主成分の貴金属と比べて抵抗温度係数(単位:[%/℃])の小さい材質を直線部78よりも多く含有させることで、上記の温度範囲の少なくともいずれかの温度における体積抵抗率ρ1を体積抵抗率ρ2より低くすることもできる。このような抵抗温度係数の小さい材質としては、ニクロム(ニッケル(Ni)とクロム(Cr)とを含む合金),カンタル(登録商標:鉄,クロム,及びアルミニウムを含む合金),二珪化モリブデン(MoSi2)などが挙げられる。なお、体積抵抗率ρ1,ρ2の値も、単位抵抗値R1,R2と同様に屈曲部77,直線部78の各々の平均値とする。また、上記の温度範囲のいずれの温度においても、体積抵抗率比ρ1/ρ2は0.5以上としてもよい。
なお、ヒータ部70において、断面積比S2/S1を値1未満とすることと、体積抵抗率比ρ1/ρ2を値1未満とすることと、を組み合わせてもよい。例えば、上記の温度範囲の少なくともいずれかの温度における断面積比S2/S1と体積抵抗率比ρ1/ρ2との積(=単位抵抗値比R1/R2)が、値1未満、値0.87以下、又は値0.80以下となるようにしてもよい。なお、断面積比S2/S1を値1未満とする場合でも、屈曲部77と直線部78との材質は異なっていてもよい。
ヒータ部70のヒータ72の形状(パターン)は、上述した実施形態に限られない。ヒータ72は、屈曲部77と直線部78とを有していればよい。例えば、直線部78は長さ方向がヒータ部70の長手方向(前後方向)に沿っていれば、平行でなくてもよい。図3は、変形例のヒータ72Aの説明図である。ヒータ72Aでは、4個の直線部78のうち、左右の中央の2個の長さ方向は、長手方向に沿っているが、長手方向に対して傾斜している。具体的には、左から2番目の直線部78は後方ほど左側に位置するように傾斜し、右から2番目の直線部78は後方ほど右側に位置するように傾斜している。こうすることで、上述した図2の形状のヒータ72と比べて、屈曲部77の半径(曲率半径)を大きくすることができる。換言すると、屈曲部77の曲率半径を小さくすることなく、発熱部76の左右方向の幅を小さくすることができる。また、リード部79は、図2とは異なり、前方の直線部78との接続部分も直線部78より幅が広くなっている。なお、リード部79の形状は図2と同じとしてもよいし、図2のヒータ72においてリード部79の形状を図3と同じとしてもよい。このような変形例のヒータ72Aでも、上述した実施形態と同様の効果が得られる。例えば、700℃〜900℃の温度範囲の少なくともいずれかの温度における単位抵抗値比R1/R2を値1未満とすることで、屈曲部77の劣化を抑制できる。
上述した実施形態では、発熱部76は3個の屈曲部77と4個の直線部78とを備えていたが、これに限られない。例えば屈曲部77は3個以上としてもよいし、1個又は2個としてもよいし、直線部78は4個以上としてもよいし、3個以下としてもよい。直線部78は4個以上の偶数としてもよい。先端側屈曲部77a及び後端側屈曲部77bの数についても、本実施形態では先端側屈曲部77aが2個,後端側屈曲部77bが1個としたが、接続される直線部78の数に応じて変更することができる。例えば、先端側屈曲部77aは1個としてもよいし、複数であれば2個以上であってもよい。後端側屈曲部77bは1以上であればよい。直線部78が2個で屈曲部77が1個である場合、発熱部76は後端側屈曲部77bを有さなくてもよい。
上述した実施形態では、直線部78は長さ方向が長手方向(前後方向)に沿っていたが、直線部78の長さ方向がヒータ部70の短手方向に沿っていてもよい。この場合、複数の直線部78がヒータ部70の長手方向に沿って並んでおり、屈曲部77は長手方向に隣り合う直線部78同士を短手方向の一端側や他端側で接続していてもよい。図4は、この場合の変形例のヒータ72Bの説明図である。このような変形例のヒータ72Bでも、上述した実施形態と同様の効果が得られる。例えば、700℃〜900℃の温度範囲の少なくともいずれかの温度における単位抵抗値比R1/R2を値1未満とすることで、屈曲部77の劣化を抑制できる。
上述した実施形態では、屈曲部77は直線部78から離れた位置ほど断面積が大きくなるような形状としたが、これに限られない。例えば、屈曲部77の断面積は、どの部分でも同じ値(=断面積S1)としてもよい。この場合、直線部78と屈曲部77との接続部分に段差が生じてもよい。ただし、発熱部76中には段差がない方が好ましいため、屈曲部77と直線部78とで断面積を異ならせる場合、図2のように屈曲部77は断面積が徐々に変化する形状とすることが好ましい。また、直線部78の断面積は、どの部分でも同じ値(=断面積S2)としたが、これに限られない。例えば、直線部78の中に断面積が徐々に変化する部分が存在していてもよい。また、発熱部76が複数の屈曲部77を有する場合、複数の屈曲部77のうち少なくとも1つが、他の屈曲部77とは断面積が異なっていてもよい。複数の直線部78についても同様である。
上述した実施形態では、ヒータ72は帯状としたが、これに限らず線状(例えば断面が円又は楕円)としてもよい。
上述した実施形態では、ヒータ部70を備えたガスセンサ100として説明したが、本発明はセンサ素子101単体としてもよいし、ヒータ部70単体すなわちセラミックスヒータ単体としてもよい。なお、ヒータ部70は第1基板層1,第2基板層2,第3基板層3を備えていたが、ヒータ72を囲むセラミックス体を有すればよい。例えば、ヒータ72の下側の層が第1基板層1及び第2基板層2の2層ではなく、1層だけであってもよい。また、ヒータ部70はヒータ絶縁層74を備えていたが、ヒータ72を囲むセラミックス体(例えば第1基板層1,第2基板層2)が絶縁性を有する材質(例えば、アルミナのセラミックス)であれば、ヒータ絶縁層74は省略してもよい。また、センサ素子101の大きさは、例えば前後方向の長さが25mm以上100mm以下、左右方向の幅が2mm以上10mm以下、上下方向の厚さが0.5mm以上5mm以下としてもよい。
図4に示したヒータ72Bのような、直線部78の長さ方向がヒータ部70の短手方向に沿っている態様のヒータにおいて、ヒータの折り返しのピッチに粗密を設けてもよい。図5は、変形例のヒータ72Cのの説明図である。ヒータ72Cの発熱部76は、図5に示すように、両端がリード部79に接続された帯状のジグザグの一筆書き形状をしている。発熱部76は、複数(図5では32個)の屈曲部91と、複数(図5では31個)の直線部78とを有している。複数の屈曲部91及び複数の直線部78は、電気的に直列に接続されている。発熱部76は、センサ素子101の左右方向の中心軸(図5の二点鎖線)を対称軸として左右対称の形状をしている。発熱部76のうち中心軸よりも左側の部分を左側発熱部76aと称し、左側発熱部76aと対称な右側の部分を右側発熱部76bと称する。
左側発熱部76a及び右側発熱部76bは、それぞれ、折り返し方向が左右方向に沿うように屈曲部91の部分で複数回折り返されながら、全体として前後方向に引き回されている。また、左側発熱部76aと右側発熱部76bとは、複数の直線部78のうち最も前方に位置する直線部78aにより接続されている。これにより、発熱部76は、全体として後方から前方に向かった後に直線部78a(及びこれに接続された左外側屈曲部92b,右外側屈曲部92d)の部分で後方に向けて折り返されるように引き回されている。すなわち、発熱部76は、全体として長手方向(前後方向)に沿って1回折り返されるように引き回されている。
屈曲部91は、いずれも折り返し方向が左右方向(短手方向)に沿っている折り返し部である。ここで、左側発熱部76aのうち左右方向でセンサ素子101の内側(右側)に位置する複数の屈曲部91を左内側屈曲部92aと称する。左側発熱部76aのうち左右方向でセンサ素子101の外側(左側)に位置する複数の屈曲部91を左外側屈曲部92bと称する。同様に、右側発熱部76bのうち左右方向でセンサ素子101の内側(左側)及び外側(右側)にそれぞれ位置する複数の屈曲部91を、右内側屈曲部92c及び右外側屈曲部92dと称する。発熱部76は、左内側屈曲部92a,左外側屈曲部92b,右内側屈曲部92c,及び右外側屈曲部92dをそれぞれ8個ずつ有している。左内側屈曲部92a及び右外側屈曲部92dは、左方(短手方向の一方)から右方(短手方向の他方)に向かった後に左方に向けて折り返された折り返し部である。左外側屈曲部92b及び右内側屈曲部92cは、右方から左方に向かった後に右方に向けて折り返された折り返し部である。複数の屈曲部91は、いずれも曲線状に屈曲しており半円の円弧状をしている。なお、屈曲部91は、折れ線状に屈曲した形状であってもよい。発熱部76は、これらの複数の屈曲部91と複数の直線部78とが1つずつ交互に接続されるように配置されている。すなわち、複数の屈曲部91の各々は、前後方向に隣り合う直線部78同士を接続している。より具体的には、左内側屈曲部92aは、左側発熱部76aの隣り合う直線部78同士の右端側を接続している。左外側屈曲部92bは、左側発熱部76aの隣り合う直線部78同士の左端側を接続している。同様に、右内側屈曲部92c及び右外側屈曲部92dは、右側発熱部76bの隣り合う直線部78同士の左端側及び右端側をそれぞれ接続している。左側発熱部76aの複数の屈曲部91のうち最も後方に位置する屈曲部91(後述する第2屈曲部96c)は、後端が第1リード79aに接続されている。右側発熱部76bの複数の屈曲部91のうち最も後方に位置する屈曲部91(後述する第2屈曲部96f)は、後端が第2リード79bに接続されている。
複数の直線部78は、センサ素子101の長手方向(前後方向)に沿って互いに離間して並んでいる。複数の直線部78は、いずれも、長さ方向がセンサ素子101の短手方向(左右方向)に沿っている。図5のヒータ72Cでは、複数の直線部78はいずれも長さ方向が左右方向と平行になるように配設されている。なお、直線部78の長さ方向は、直線部78の軸方向,換言すると電流が流れる方向とする。屈曲部91の長さ方向についても同様とする。
また、発熱部76は、左右方向に沿った折り返しのピッチに粗密の変化がつけられており、このピッチの違いによって前方から後方に向かってこの順に第1〜第4領域90a〜90dに分かれている。第1〜第4領域90a〜90dの各々は、左右方向に沿った折り返しのピッチがピッチP1〜P4に設定されている。なお、折り返しのピッチとは、折り返しの周期であり、発熱部76の前後方向の線幅(図5では直線部78の線幅)と、発熱部76のうち前後に隣り合う部分(図5では直線部78)の前後方向の間隔(距離)と、の和である。図5のヒータ72Cでは、P1=P3<P2=P4とした。このように、発熱部76は、折り返しのピッチが密な領域88(第1,第3領域90a,90c)と、折り返しのピッチが粗な領域89(第2,第4領域90b,90d)とを有しており、これらの領域が前後方向に沿って配置されている。なお、第1領域90a及び第3領域90cは、互いに線幅が等しく、互いに直線部78の前後の間隔が等しい。また、第3領域90c及び第4領域90dは、互いに線幅が等しく、互いに直線部78の前後の間隔が等しい。第1〜第4領域90a〜90dの各々は、互いの接続部分(互いの境界の前後)では線幅が変化しているが、それ以外の部分は同じ領域内であれば線幅は一定である。例えば、第1領域90aと第2領域90bとにまたがる屈曲部91a,91dは、第1領域90a側から第2領域90b側に向かうにつれて線幅が徐々に大きく(太く)なっている。第2領域90bと第3領域90cとにまたがる屈曲部91b,91eや、第3領域90cと第4領域90dとにまたがる屈曲部91c,91fについても同様に線幅が徐々に変化する形状をしている。
発熱部76は、このように前後方向に沿って1以上の密な領域88と1以上の粗な領域89とを有することで、発熱時のセンサ素子101の前後方向の温度分布が調整されている。図5のヒータ72Cでは、前後方向に沿って第1〜第4領域90a〜90dの各々の周辺(各層1〜6のうち各領域90a〜90dの上下に位置する部分)の平均温度を比較すると、第1領域90aの周辺が最も高温となり、第2領域90b,第3領域90c,第4領域90dの順に周辺の温度が低くなっている。なお、基本的には折り返しのピッチが密である領域の周辺ほど高温になる傾向にあるが、図5のヒータ72Cでは、第3領域90cの周辺は第2領域90bの周辺よりやや低温になっている。これは、第3領域90cは第1領域90aよりも占有面積が小さい(前後方向の長さが小さい)ことや、第2領域90bの周辺は第1領域90aによっても加熱されることなどが理由である。また、発熱部76の発熱時には密な領域88のうち第1領域90aの温度(平均温度)が第3領域90cの温度(平均温度)よりも高温になり、発熱部76のうち第1領域90aの温度(平均温度)が最も高温になることから、第1領域90aを最高温度領域と称する。なお、密な領域88(第1領域90a,第3領域90c)のうちどの領域が最高温度領域であるかの判断は、発熱部76全体の平均温度が700℃〜900℃になるように調整した状態での各領域の平均温度に基づいて行うものとする。
また、発熱部76の密な領域88及び粗な領域89は、内側ポンプ電極22,補助ポンプ電極51,及び測定電極44との位置関係が調整されている。これについて説明する。図5では、内側ポンプ電極22を発熱部76に向けて厚さ方向(ここでは下方向)に投影した領域である内側ポンプ電極投影領域Apを一点鎖線枠で示している。同様に、補助ポンプ電極51及び測定電極44をそれぞれ発熱部76に投影した内側補助ポンプ電極投影領域Aq,測定電極投影領域Amも一点鎖線枠で示している。なお、図1に示すように、測定電極44の真上には補助ポンプ電極51の天井電極部51aが存在する。そのため、図5における内側補助ポンプ電極投影領域Aqと測定電極投影領域Amとは重複しており、より具体的には測定電極投影領域Amが内側補助ポンプ電極投影領域Aqに含まれている。図5からわかるように、密な領域88の第1領域90aは、内側ポンプ電極投影領域Apと少なくとも一部が重複するように位置している。換言すると、第1領域90aの少なくとも一部が内側ポンプ電極22と上下に対向する(内側ポンプ電極22の真下に位置する)ように配設されている。また、図5では、内側ポンプ電極投影領域Apは第1領域90aに含まれるように位置している。粗な領域89の第2領域90bは、内側補助ポンプ電極投影領域Aqと重複するように位置しており、内側補助ポンプ電極投影領域Aqのうち測定電極投影領域Amよりも前方の部分は第2領域90bに含まれている。密な領域88の第3領域90cは、測定電極投影領域Amと少なくとも一部が重複するように位置しており、図5のヒータ72Cでは測定電極投影領域Amが第3領域90cの前後にはみ出すように両者が重複している。
このように、密な領域88及び粗な領域89と、内側ポンプ電極22,補助ポンプ電極51,及び測定電極44との位置関係が調整されていることで、各電極やその周辺の温度分布が調整されている。上述したように、発熱部76の発熱時には、第1領域90aの周辺が最も高温となり、第2領域90b,第3領域90c,第4領域90dの順に周辺の温度が低くなる。そのため、内側ポンプ電極22,補助ポンプ電極51,測定電極44の温度をそれぞれ温度Tp,Tq,Tm[℃]とすると、温度Tp>温度Tq>温度Tmとなっている。なお、測定電極投影領域Amが密な領域88の第3領域90cと重複していることで、温度Tmは温度Tqよりも低いものの、その差はわずかであり、温度Tmが低くなりすぎないようになっている。なお、密な領域88や粗な領域89の折り返しのピッチは、発熱部76の発熱時の温度Tp,Tq,Tmを所望の値にするように定めることができる。特にこれに限定するものではないが、密な領域88のピッチP1,P3はそれぞれ例えば0.4mm〜0.7mmであり、粗な領域89のピッチP2,P4はそれぞれ例えば0.7mm〜0.9mmである。
また、発熱部76は、屈曲部91の一部として、第1屈曲部95,第2屈曲部96,第3屈曲部97を有している。ここで、第1屈曲部95とは、最高温度領域(第1領域90a)内に存在し折り返しの頂点が左右方向に互いに対向する屈曲部91(折り返し部)である。すなわち、第1屈曲部95は、第1領域90a内で互いに対向する第1屈曲部95a,95cと、第1屈曲部95b,95dとの4個の屈曲部91である。また、第2屈曲部96とは、粗な領域89内に存在し折り返しの頂点が左右方向に互いに対向する屈曲部91(折り返し部)である。すなわち、第2屈曲部96は、第2領域90b内で互いに対向する第2屈曲部96a,96dと、第4領域90d内で互いに対向する第2屈曲部96b,96eと、第2屈曲部96c,96fとの6個の屈曲部91である。また、第3屈曲部97とは、最高温度領域(第1領域90a)内に存在し第1屈曲部95よりも短手方向(左右方向)で外側に存在する屈曲部91(折り返し部)である。すなわち、第3屈曲部97は、左外側屈曲部92bのうち第1領域90a内に存在する3つの屈曲部91と、右外側屈曲部92dのうち第1領域90a内に存在する3つの屈曲部91と、の6個の屈曲部91である。なお、密な領域88と粗な領域89とにまたがっている(密な領域88及び粗な領域89の両方と重複している)屈曲部91は、第1屈曲部95及び第2屈曲部96のいずれにも含めないものとする。すなわち、第1,第2領域90a,90bにまたがる屈曲部91a,91dと、第2,第3領域90b,90cにまたがる屈曲部91b,91eと、第3,第4領域90c,90dにまたがる屈曲部91c,91fは、第1屈曲部95にも第2屈曲部96にも含めない。一方、第3屈曲部97に関しては、最高温度領域(第1領域90a)とそれ以外の領域とにまたがっている屈曲部91についても、第1屈曲部95よりも短手方向(左右方向)で外側に存在する屈曲部91であれば、第3屈曲部97に含めるものとする。また、図5のヒータ72Cでは、密な領域88のうち最高温度領域(第1領域90a)内に存在する第1屈曲部95同士の距離X1[mm]が、粗な領域89内に存在する第2屈曲部96同士の距離X2[mm]と等しくなっている。ただし、ヒータ72Cは、X1=X2である場合に限らず、X1>X2であってもよいし、X1<X2であってもよい。なお、図5のヒータ72Cでは、第1屈曲部95a,95c間の距離と、第1屈曲部95b,95d間の距離とはいずれも等しい値(=距離X1)とした。同様に、第2屈曲部96a,96d間の距離と、第2屈曲部96b,96e間の距離と、第2屈曲部96c,96f間の距離とはいずれも等しい値(=距離X2)とした。ただし、例えば第1屈曲部95a,95c間の距離と、第1屈曲部95b,95d間の距離とが異なるなど、複数の第1屈曲部95の各々の対向する距離が一定でないような場合には、各々の対向する距離の平均値を距離X1とする。距離X2についても同様とする。また、図5のヒータ72Cでは、第1屈曲部95及び第2屈曲部96のいずれにも含まれない屈曲部91a〜91fについても、互いに対向する距離は距離X2(=距離X1)に等しいものとした。距離X1,X2は、例えば、それぞれ0.2mm以上1.0mm未満としてもよい。
この変形例のヒータ72Cでは、第1屈曲部95の幅Wa1[mm]が直線部78の幅W2よりも大きくなっていることで第1屈曲部95の単位長さ当たりの抵抗値を変化させている。この変形例のヒータ72Cでは、700℃以上900℃以下の温度範囲の少なくともいずれかの温度において、第1屈曲部95の単位長さあたりの抵抗値である単位抵抗値Ra1[μΩ/mm]が、直線部78の単位長さあたりの抵抗値である単位抵抗値R2[μΩ/mm]よりも低くなっている。換言すると、上記の温度範囲の少なくともいずれかの温度における単位抵抗値比Ra1/R2が値1未満となっている。こうすることで、700℃〜900℃の少なくともいずれかの温度において、第1屈曲部95は直線部78と比べて発熱密度(単位長さあたりの発熱量)が小さくなる。詳細は後述するが、このように単位抵抗値Ra1が単位抵抗値R2よりも低い(すなわち単位抵抗値比Ra1/R2が値1未満)ことで、最高温度領域(第1領域90a)内で高温になりやすい第1屈曲部95の温度上昇を抑制でき、屈曲部91の中でも特に劣化しやすい第1屈曲部95の劣化を抑制できる。なお、図5のヒータ72Cでは、第1屈曲部95以外の屈曲部91(第3屈曲部97も含む)については、各領域内において直線部78と断面積(太さ及び線幅)が同じであり、単位長さあたりの抵抗値も同じとした。ただし、上述した実施形態で説明したように単位抵抗値R1及び単位抵抗値R2は、それぞれ屈曲部91及び直線部78の単位長さあたりの抵抗値の平均値である。そのため、図5のヒータ72Cにおいても、第1屈曲部95の単位抵抗値Ra1が直線部78の単位抵抗値R2より低いことで、R1<R2(単位抵抗値比R1/R2が値1未満)を満たしている。
なお、単位抵抗値Ra1は、第1屈曲部95の単位長さあたりの抵抗値の平均値とする。そのため、第1屈曲部95の一部に直線部78よりも単位長さあたりの抵抗値が高い部分がある場合でも、全体として第1屈曲部95の方が単位長さあたりの抵抗値が低ければよい。ただし、いずれの第1屈曲部95のいずれの部分においても単位長さあたりの抵抗値が単位抵抗値R2より低いことが好ましい。また、発熱部76は、上記の温度範囲のいずれの温度においても単位抵抗値比Ra1/R2が値1未満であることが好ましい。また、発熱部76は、上記の温度範囲の少なくともいずれかの温度における単位抵抗値比Ra1/R2が、値0.87以下であることが好ましく、値0.80以下であることがより好ましい。また、上記の温度範囲のいずれの温度においても、単位抵抗値比Ra1/R2は値0.5以上としてもよい。また、図5のヒータ72Cでは、帯状のヒータ72Cの第1屈曲部95の幅Wa1を直線部78の幅W2よりも大きくする(太くする)ことで、第1屈曲部95の断面積Sa1[mm2]を直線部78の断面積S2よりも大きく(断面積比S2/Sa1が値1未満)し、これにより単位抵抗値比Ra1/R2を値1未満としている。断面積Sa1は、第1屈曲部95の各々の長さ方向に垂直な断面積である。断面積比S2/Sa1を調整して単位抵抗値比Ra1/R2を値1未満とすることで、700℃以上900℃以下の温度範囲のいずれにおいても、単位抵抗値比Ra1/R2が値1未満となる。断面積比S2/Sa1は、値0.87以下が好ましく、値0.80以下がより好ましい。なお、図5のヒータ72Cでは、幅Wa1を幅W2より大きくすることで断面積比S2/Sa1を調整しているが、幅Wa1を幅W2より大きくするか、又は第1屈曲部95の厚さDa1を直線部78の厚さD2より大きくするか、の少なくとも一方により断面積比S2/Sa1を調整すればよい。断面積Sa1の値も、単位抵抗値Ra1と同様に第1屈曲部95の平均値とする。第1屈曲部95は、直線部78との接続部分では直線部78(及び第3屈曲部97)と同じ断面積となり、直線部78から離れた位置ほど断面積が大きく(ここでは幅Wa1が大きく)なるような形状とした。すなわち、複数の第1屈曲部95の各々は、前後の中央部分の断面(例えば第1屈曲部95a,95bであれば右方に最も突出した部分を通る断面)の断面積が最も大きくなるような形状とした。なお、第1屈曲部95と直線部78との接続部分に段差が生じるようにして、第1屈曲部95の断面積がどの部分でも同じ値(=断面積Sa1)となるようにしてもよい。また、断面積比S2/Sa1は値0.5以上としてもよい。幅Wa1は、0.05mm以上1.5mm以下としてもよい。厚さDa1は、0.003mm以上0.1mm以下としてもよい。
こうして構成された変形例のヒータ72Cを備えたガスセンサ100では、発熱部76の折り返しのピッチの粗密が調整されていることで、使用時(発熱部76の発熱時)に、上述した各電極の温度は温度Tp>温度Tq>温度Tmとなる。ここで、内側ポンプ電極22の周辺は、主ポンプセル21による第1内部空所20内の酸素濃度の調整前の被測定ガスがガス導入口10側から流入するため、酸素濃度が高い。そのため、主ポンプセル21が多量の酸素を汲み出せるように、温度Tpを温度Tq,Tmよりも高温にして、内側ポンプ電極22及びその周辺の固体電解質層をより活性化させている。一方、補助ポンプ電極51及び測定電極44の周辺は、内側ポンプ電極22の周辺と比較すると酸素濃度が低い。そのため、例えば被測定ガス中の水や二酸化炭素の還元などにより水素や一酸化炭素が生じる場合があり、これらがNOx中の酸素と化学反応してしまい測定精度が低下する場合がある。そして、このような特定ガス(NOx)以外の成分の還元は、高温になるほど生じやすい。そのため、温度Tq,Tmを温度Tpより低くすることで、このような測定精度の低下を抑制できるようにしている。
このように、変形例のヒータ72Cを備えたヒータ部70では、センサ素子101の前後方向については密な領域88及び粗な領域89(第1〜第4領域90a〜90d)を設けることで意図的に温度分布を生じさせている。これとは別に、第1〜第4領域90a〜90dの各々の領域の中でも、温度分布が生じる場合がある。例えば、一般的に、発熱部76の温度は、左内側屈曲部92a及び右内側屈曲部92cの方が左外側屈曲部92b及び右外側屈曲部92dよりも高温になりやすい。互いに対向する左内側屈曲部92a及び右内側屈曲部92c間で熱伝達が生じることや、左内側屈曲部92a及び右内側屈曲部92cの方が左外側屈曲部92b及び右外側屈曲部92dよりもセンサ素子101の左右の内側に位置することなどが理由である。そのため、一般的に、左内側屈曲部92a及び右内側屈曲部92cのうち特に第1屈曲部95は、最高温度領域(第1領域90a)内でさらに局所的に高温になりやすい。すなわち、屈曲部91の中でも第1屈曲部95は特に高温になりやすく、劣化しやすい。一方、直線部78は、第1屈曲部95と比べると高温になりにくい。変形例のヒータ72Cでは、第1屈曲部95が、上述した温度範囲の少なくともいずれかの温度における単位長さあたりの抵抗値が直線部78と比べて低くなっている(単位抵抗値比Ra1/R2が値1未満)。そのため、ヒータ72Cの最高温度領域(第1領域90a)内の局所的な加熱をより低減できる。すなわち、高温になりやすい第1屈曲部95の温度上昇をより抑制できる。これにより、屈曲部91の中でも特に劣化しやすい第1屈曲部95の劣化を抑制できる。また、劣化による断線等が生じやすい第1屈曲部95の寿命が長くなることで、ヒータ72C全体としての寿命も長くなる。図6は、発熱部76の最高温度領域(第1領域90a)周辺の左右方向に沿った温度分布の概念図である。図6の右側は、図5のうち第1領域90aの周辺を示した図であり、図6の左側は、図6の右側に示したB−B線に沿った第3基板層3(図1参照)の上面の温度分布のグラフである。図6のグラフに示すように、単位抵抗値Ra1=単位抵抗値R2である場合(グラフの太破線)には、第1屈曲部95周辺すなわちセンサ素子101の左右の中央部分が局所的に加熱されて高温になりやすい。一方、変形例のヒータ72Cのように単位抵抗値Ra1が単位抵抗値R2より低い場合(グラフの太実線)には、第1屈曲部95周辺の温度低下が他の部分の温度低下よりも大きくなり、局所的な加熱が低減される。
なお、図5のヒータ72Cでは、断面積比S2/Sa1を値1未満としたが、第1屈曲部95及び直線部78の体積抵抗率を調整することで単位抵抗値比Ra1/R2を値1未満にしてもよい。例えば、700℃〜900℃の少なくともいずれかの温度において、第1屈曲部95の体積抵抗率ρa1[μΩ・cm]と直線部78の体積抵抗率ρ2との比である体積抵抗率比ρa1/ρ2が値1未満であってもよい。こうしても、上記の温度範囲の少なくともいずれかの温度における単位抵抗値比Ra1/R2を値1未満とすることができる。上記の温度範囲の少なくともいずれかの温度において体積抵抗率比ρa1/ρ2は値0.87以下であることが好ましく、値0.80以下であることがより好ましい。なお、体積抵抗率ρa1と体積抵抗率ρ2との調整は、上述した体積抵抗率ρ1と体積抵抗率ρ2との調整と同様にして行うことができる。なお、体積抵抗率ρa1の値も、単位抵抗値Ra1と同様に第1屈曲部95の平均値とする。また、上記の温度範囲のいずれの温度においても、体積抵抗率比ρa1/ρ2は値0.5以上としてもよい。
また、図5のヒータ72Cでは、第1屈曲部95の幅Wa1が第3屈曲部97の幅Wa3[mm]よりも大きくなっている。これにより、ヒータ72Cは、700℃〜900℃の少なくともいずれかの温度における単位抵抗値比Ra1/Ra3が値1未満となっている。ここで、単位抵抗値Ra3[μΩ/mm]は、第3屈曲部97の単位長さあたりの抵抗値である。このように、第1屈曲部95が、上述した温度範囲の少なくともいずれかの温度における単位長さあたりの抵抗値が第3屈曲部97と比べて低いことによっても、第1屈曲部95の劣化を抑制できる。一般的に、第1屈曲部95は、上述したように最高温度領域(第1領域90a)の中で局所的に高温になりやすく、劣化しやすい。一方、第3屈曲部97は、第1屈曲部よりもヒータ部70の外側に位置することから、第1屈曲部95と比べると高温になりにくい。そのため、単位抵抗値比Ra1/Ra3を値1未満とすることで、最高温度領域(第1領域90a)内の局所的な加熱をより低減できる。すなわち、高温になりやすい第1屈曲部95の温度上昇をより抑制できる。これにより、単位抵抗値比Ra1/R2を値1未満とする場合と同様に、屈曲部91の中でも特に劣化しやすい第1屈曲部95の劣化を抑制でき、ヒータ72C全体としての寿命も長くなる。なお、単位抵抗値Ra3は、第3屈曲部97の単位長さあたりの抵抗値の平均値とする。また、図5のヒータ72Cでは、上述した温度範囲の少なくともいずれかの温度において、単位抵抗値比Ra1/R2が値1未満であることと、単位抵抗値比Ra1/Ra3が値1未満であることと、を共に満たしているが、両者の少なくとも一方を満たしていれば、第1屈曲部95の劣化を抑制する効果は得られる。例えば、複数の屈曲部91のいずれについても、第1領域90a〜第4領域90dの同じ領域内の直線部78よりも単位長さあたりの抵抗値を同じように低くした場合、単位抵抗値比Ra1/R2は値1未満になり且つ単位抵抗値比Ra1/Ra3は値1となる(第1屈曲部95及び第3屈曲部97の単位抵抗値が同じ)こともありうる。そのような場合でも、単位抵抗値比Ra1/R2が値1である場合と比べて第1屈曲部95の劣化を抑制する効果は得られる。
なお、単位抵抗値比Ra1/R2を値1未満とする場合と同様に、単位抵抗値比Ra1/Ra3を値1未満とする場合には、例えば、第1屈曲部95の断面積Sa1を第3屈曲部97の断面積Sa3[mm2]よりも大きく(断面積比Sa3/Sa1が値1未満)すればよい。断面積比Sa3/Sa1を値1未満とする場合には、第1屈曲部95の幅Wa1を第3屈曲部97の幅Wa3より大きくするか、又は第1屈曲部95の厚さDa1を第3屈曲部97の厚さDa3より大きくするか、の少なくとも一方を行えばよい。あるいは、上述した温度範囲の少なくともいずれかの温度において、第1屈曲部95の体積抵抗率ρa1と第3屈曲部97の体積抵抗率ρa3[μΩ・cm]との比である体積抵抗率比ρa1/ρa3を値1未満とすることで、単位抵抗値比Ra1/Ra3を値1未満としてもよい。断面積Sa3の値や体積抵抗率ρa3の値も、上述した単位抵抗値Ra3と同様に第3屈曲部97の平均値とする。図5のヒータ72Cでは、第3屈曲部97の断面積は、どの部分でも同じ値(=断面積Sa3)とした。
単位抵抗値比Ra1/Ra3,断面積比Sa3/Sa1,体積抵抗率比ρa1/ρa3の好ましい態様や値(数値範囲)については、単位抵抗値比Ra1/R2を値1未満とする場合において説明したものと同様の態様や値(数値範囲)を適用することができる。例えば、第1屈曲部95の一部に第3屈曲部97よりも単位長さあたりの抵抗値が高い部分がある場合でも、全体として第1屈曲部95の方が単位長さあたりの抵抗値が低ければよい。また、いずれの第1屈曲部95のいずれの部分においても単位長さあたりの抵抗値が単位抵抗値Ra3より低いことが好ましい。また、発熱部76は、上記の温度範囲のいずれの温度においても単位抵抗値比Ra1/Ra3が値1未満であることが好ましい。また、発熱部76は、上記の温度範囲の少なくともいずれかの温度における単位抵抗値比Ra1/Ra3が、値0.87以下であることが好ましく、値0.80以下であることがより好ましい。また、上記の温度範囲のいずれの温度においても、単位抵抗値比Ra1/Ra3は値0.5以上としてもよい。断面積比Sa3/Sa1,体積抵抗率比ρa1/ρa3についても同様である。幅Wa3は、0.05mm以上1.5mm以下としてもよい。厚さDa3は、0.003mm以上0.1mm以下としてもよい。
なお、上述したように、図5のヒータ72Cでは、第1屈曲部95以外の屈曲部91(第3屈曲部97も含む)については、各領域内において直線部78と断面積(太さ及び線幅)が同じであり、単位長さあたりの抵抗値も同じとした。ただし、第1屈曲部95以外の屈曲部91についても単位長さあたりの抵抗値が単位抵抗値R2より低くなるようにする(例えば屈曲部91を直線部78よりも太くする)ことが好ましい。こうすれば、第1屈曲部95以外の屈曲部91についても劣化を抑制できる。また、第1屈曲部95以外の屈曲部91(第3屈曲部97も含む)について単位長さあたりの抵抗値が単位抵抗値R2より低くなるようにしつつ(例えば直線部78よりも太くする)、第1屈曲部95については第3屈曲部97よりもさらに単位長さあたりの抵抗値が低くなるように(例えば第3屈曲部97よりも太くする)してもよい。こうすれば、屈曲部91全体の劣化を抑制しつつ、最高温度領域(第1領域90a)内の局所的な加熱を抑制して、第1屈曲部95については劣化をより抑制できる。
なお、上述した実施形態における単位抵抗値比R1/R2を値1未満とする場合と同様に、図5のヒータ72Cにおいて単位抵抗値比Ra1/R2を値1未満とする場合には、断面積比S2/Sa1を値1未満とすることと、体積抵抗率比ρa1/ρ2を値1未満とすることと、を組み合わせてもよい。同様に、図5のヒータ72Cにおいて単位抵抗値比Ra1/Ra3を値1未満とする場合には、断面積比Sa3/Sa1を値1未満とすることと、体積抵抗率比ρa1/ρa3を値1未満とすることと、を組み合わせてもよい。また、単位抵抗値Ra1と単位抵抗値R2との関係と同様に、単位抵抗値Ra1は、最高温度領域(第1領域90a)内に存在し第1屈曲部95の直近の直線部78(図5では8個の直線部78)の単位長さあたりの抵抗値である単位抵抗値Ra4[μΩ/mm]よりも低くてもよい。なお、第1屈曲部95の直近の直線部78とは、第1屈曲部95に直接接続されている直線部78を意味する。なお、単位抵抗値比Ra1/R2を値1未満とすることに代えて単位抵抗値比Ra1/Ra4を値1未満としてもよいし、単位抵抗値比Ra1/R2を値1未満とすることに加えて、単位抵抗値比Ra1/Ra4を値1未満としてもよい。
図5の変形例のヒータ72Cでは、発熱部76の密な領域88及び粗な領域89は、内側ポンプ電極22,補助ポンプ電極51,及び測定電極44との位置関係が図5に示したように調整されていたが、特にこれに限られない。温度Tp>温度Tq>温度Tmとなるようにした点についても、特にこれに限られない。ただし、最高温度領域(第1領域90a)の少なくとも一部が内側ポンプ電極投影領域Apと重複していることが好ましい。
図5に示したヒータ72Cのパターンと比べて屈曲部91及び直線部78の数を増減させてもよい。この場合、発熱部76は、屈曲部91として、2以上の第1屈曲部95(互いに対向する1対以上の第1屈曲部95)と、2以上の第2屈曲部96(互いに対向する1対以上の第2屈曲部96)と、を少なくとも有していればよい。単位抵抗値比Ra1/Ra3を値1未満とする場合には、発熱部76は1以上の第3屈曲部97を有していればよく、複数の第3屈曲部97を有していてもよい。また、左側発熱部76aと右側発熱部76bとは対称でなくてもよい。
密な領域88及び粗な領域89(第1〜第4領域90a〜90d)の配置についても、図5のヒータ72Cに限られない。例えば、第3領域90cのピッチP3がピッチP2,P4と等しいなど、第1領域90a以外は全て粗な領域89であってもよい。なお、このように密な領域88が1つしか存在しない場合、その領域が最高温度領域となる。また、図5のヒータ72Cでは発熱部76は密な領域88及び粗な領域89をそれぞれ2つずつ有していたが、ヒータの折り返しのピッチに粗密を設ける場合には、発熱部76は1以上の密な領域88と1以上の粗な領域89とを有していればよい。また、図5のヒータ72Cでは、密な領域88は粗な領域89と比べて線幅及び前後方向の間隔のいずれも小さくなっているが、密な領域88は粗な領域89と比べて折り返しのピッチが密(ピッチが小さい)であればよい。すなわち、密な領域88は粗な領域89と比べて線幅及び前後方向の間隔の少なくとも一方が小さくなっていればよい。
図5のヒータ72Cでは、直線部78は長さ方向がヒータ部70の短手方向(左右方向)と平行としたが、長さ方向が短手方向に沿っていれば、平行でなくてもよい。例えば、直線部78の長さ方向が短手方向から傾斜(ただし45°未満)していてもよい。
以下には、センサ素子を具体的に作製した例を実施例として説明する。実験例2〜9,11〜18が本発明の実施例に相当し、実験例1,10が比較例に相当する。また、実験例1Aが比較例に相当し、実験例2Aが本発明の実施例に相当する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実験例1〜9]
上述した実施形態のガスセンサ100の製造方法に従って、図1,2に示したセンサ素子101を作製して実験例1〜9とした。実験例1〜9は、屈曲部77の幅W1を変えることで断面積比S2/S1を以下の表1に示すように種々変更した点以外は、同じ構成とした。センサ素子101の大きさは、前後方向の長さが67.5mm、左右方向の幅が4.25mm、上下方向の厚さが1.45mmとした。実験例1の屈曲部77の幅W1及び直線部78の幅W2はいずれも0.25mmとした。また、実験例1の屈曲部77の厚さD1及び直線部78の厚さD2はいずれも0.01mmとした。なお、センサ素子101を作製するにあたり、セラミックスグリーンシートは、安定化剤のイットリアを4mol%添加したジルコニア粒子と有機バインダーと有機溶剤とを混合し、テープ成形により成形した。ヒータ部70の発熱部76用の導電性ペーストは、以下のように調整した。アルミナ粒子を4質量%,Ptを96質量%、及び溶媒としてのアセトンを所定量加えて予備混合を行い予備混合液を得た。ポリビニルブチラール20質量%を、ブチルカルビトール80質量%に溶解させて得た有機バインダー液を、予備混合液に添加して混合した後、適宜ブチルカルビトールを添加して粘度を調整することにより、導電性ペーストを得た。なお、実験例1は、屈曲部77と直線部78とで同じ導電性ペーストを用いており、700℃〜900℃のいずれの温度においても、体積抵抗率比ρ1/ρ2は値1である。実験例2〜9についても同様である。
[実験例10〜18]
体積抵抗率比ρ1/ρ2を以下の表1に示すように種々変更した点以外は実験例1と同様にして、実験例10〜18のセンサ素子101を作製した。なお、体積抵抗率比ρ1/ρ2の変更は、屈曲部77のPtの含有割合を変えることにより行った。なお、実験例10〜18の幅W1,W2及び厚さD1,D2はいずれも実験例1と同じであり、実験例10〜18の断面積比S2/S1はいずれも値1.00である。また、実験例10及び実験例1は、断面積比S2/S1の値及び体積抵抗率比ρ1/ρ2の値が同じである。
なお、実験例10〜18の体積抵抗率ρ1の測定は、以下のように作製したテストピースを用いて行った。まず、焼成後に第2基板層2となるセラミックスグリーンシート上に、ヒータ絶縁層74となる絶縁性ペーストを印刷した。次に、実験例10〜18の各々と同じ条件で作製した屈曲部77用の導電性ペーストを、絶縁性ペースト上に直方体形状に印刷した。その後、実験例10〜18と同じ条件で焼成して、直方体形状の発熱部を形成し、実験例10〜18の各々のテストピースを得た。そして、直方体形状の発熱部に抵抗値測定用リードを取り付けて、テストピースを電気炉で700℃〜900℃に加熱し、この状態で発熱部の抵抗値を測定した。そして、直方体形状の発熱部の長さ及び断面積と測定した抵抗値とに基づいて、体積抵抗率ρ1を算出した。体積抵抗率ρ2についても、同様にテストピースを用いて測定した抵抗値から算出した。なお、実験例10〜18の体積抵抗率比ρ1/ρ2の値は、700℃〜900℃の範囲ではほとんど変化しなかった。
[評価試験]
実験例1〜18について、発熱部76の耐久性(寿命)を評価した。具体的には、発熱部76の温度の平均値が所定温度になるようにリード部79に電圧を印加してヒータ72に通電した。そして、その状態で2000時間以内に発熱部76に断線が生じるか否かを判定した。2000時間を超えて断線が生じなかった場合を「A(優,実用レベル以上)」とし、1000時間を超えて2000時間以内に断線が生じた場合を「B(良,実用レベル)」とし、1000時間以内に断線が生じた場合を「C(不可,実用レベル未満)」とした。発熱部76の平均温度を700℃,750℃,800℃,850℃,900℃とした場合について、それぞれ発熱部76の耐久性を評価した。発熱部76の温度の調整は、リード部79に印加する電圧を変えることで行った。また、発熱部76の温度は、センサ素子101の下面の温度を放射温度計により測定することで、間接的に測定した。評価試験の結果を表1に示す。表1には、各実験例の単位抵抗値比R1/R2,断面積比S2/S1,及び体積抵抗率比ρ1/ρ2の値も示した。単位抵抗値比R1/R2の値は、断面積比S2/S1と体積抵抗率比ρ1/ρ2との積として算出した。
表1に示すように、単位抵抗値比R1/R2の値が小さいほど、発熱部76の断線が生じにくくなる傾向が見られた。単位抵抗値比R1/R2の値が小さいほど、より高い温度でも発熱部76の断線が生じにくくなる傾向が見られた。また、単位抵抗値比R1/R2が値0.87以下である実験例4〜9,13〜18では、700℃〜900℃のいずれの温度においても評価がA(優)又はB(良)であった。単位抵抗値比R1/R2が値0.80以下である実験例6〜9,15〜18では、700℃〜900℃のいずれの温度においても評価がA(優)であった。なお、評価がB(良)又はC(不可)である実験例では、いずれも屈曲部77に断線が生じていた。また、実験例1〜9と実験例10〜18との比較から、単位抵抗値比R1/R2の値が同じであれば、断面積比S2/S1を変化させた場合と体積抵抗率比ρ1/ρ2を変化させた場合とで、同じ結果が得られることがわかった。なお、屈曲部77の厚さD1を変えることで断面積比S2/S1を変化させた場合も、実験例1〜9と同じ結果になった。
[実験例1A,2A]
上述した実施形態のガスセンサ100の製造方法に従って、図5に示したヒータ72Cを備えたセンサ素子101を作製して実験例1A,2Aとした。ただし、実験例1Aでは、第1屈曲部95の幅Wa1は第1領域90a内の直線部78や第3屈曲部97と同じ線幅とし、厚さも同じとした。これにより、実験例1Aでは、単位抵抗値比R1/R2を値1.00とし、単位抵抗値比Ra1/R2を値1.29とし、単位抵抗値比Ra1/Ra3を値1.00とした。なお、実験例1Aでは、発熱部76のうち密な領域88の線幅はいずれも0.26mmとし、粗な領域89の線幅はいずれも0.41mmとした(密な領域88と粗な領域89との接続部分を除く)。折り返しのピッチP1,P3はいずれも0.56mmとした。折り返しのピッチP2,P4はいずれも0.82mmとした。実験例2Aは、第1屈曲部95の幅Wa1を0.46mmとして、図5のように第1屈曲部95の線幅を太くした点以外は、実験例1Aと同様とした。これにより、実験例2Aでは、単位抵抗値比R1/R2を値0.92とし、単位抵抗値比Ra1/R2を値0.73とし、単位抵抗値比Ra1/Ra3を値0.57とした。
[評価試験]
実験例1A,2Aについて、ヒータ72Cの発熱時の温度及び耐久性(寿命)を評価した。具体的には、リード部79に12Wの電圧を印加してヒータ72Cに通電した。そして、電圧印加後3分以上経過し、センサ素子101の温度が安定した状態における最高温度領域(第1領域90a)の温度分布を測定した。第1領域90aの温度分布は、センサ素子101の下面のうち第1領域90aの直下の矩形の領域の温度を放射温度計により測定することで間接的に測定し、測定結果から最高温度,平均温度,最小温度,及び最高温度と平均温度との差を導出した。また、耐久性の評価として、ヒータ72Cに電圧を印加した状態で、2000時間以内に発熱部76に断線が生じるか否かを判定した。2000時間を超えて断線が生じなかった場合を「A(優,実用レベル以上)」とし、1000時間を超えて2000時間以内に断線が生じた場合を「B(良,実用レベル)」とし、1000時間以内に断線が生じた場合を「C(不可,実用レベル未満)」とした。
実験例1A,2Aの単位抵抗値比R1/R2,Ra1/R2,Ra1/Ra3,第1領域90aの温度分布(最高温度,平均温度,最小温度,最高温度と平均温度との差),及び耐久性の評価を、表2にまとめて示す。
表2に示すように、単位抵抗値比R1/R2,Ra1/R2,Ra1/Ra3の値が1未満である実験例2Aは耐久性の評価がA(優)であった。一方、これらの値が1以上である実験例1Aは耐久性の評価がC(不可)であった。このことから、第1屈曲部95の単位抵抗値Ra1を小さくする(及びそれにより単位抵抗値比R1/R2,Ra1/R2,及びRa1/Ra3を小さくする)ことで、ヒータ72C全体としての寿命を延ばすことができていると考えられる。なお、実験例1Aでは、第1屈曲部95に断線が生じていた。また、実験例2Aは、実験例1Aと比べて、最高温度領域(第1領域90a)内の最高温度が低くなっており、最高温度と平均値との差も小さくなっていた。一方で、最高温度領域内の最小温度は、実験例1Aと2Aとでほとんど差はなかった。すなわち、実験例2Aでは、最高温度領域のうち第1屈曲部95の局所的な加熱を低減できていた。このことから、実験例2Aでは、特に劣化しやすい第1屈曲部95の劣化を抑制できており、これにより第1屈曲部95の劣化を抑制してヒータ72Cの寿命を長くできていると考えられる。