JP2016181954A - インホイールモータ駆動装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 電動モータの高速回転下であっても、平行軸歯車減速機での潤滑不良を未然に防止し得るインホイールモータ駆動装置を提供する。
【解決手段】 モータ部Aと、平行軸歯車減速機36で構成された減速機部Bと、車輪用軸受部Cと、モータ部Aおよび減速機部Bに潤滑油を供給する潤滑機構とを備えたインホイールモータ駆動装置であって、潤滑機構は、モータ部Aと減速機部Bとを区画するケーシング22に設けられて平行軸歯車減速機36に向けて開口し、モータ部Aから減速機部Bへ潤滑油を流通させる排油孔と、ケーシング22の排油孔下方部位に設けられて平行軸歯車減速機36に向けて開口し、減速機部Bの潤滑油を回転ポンプ50へ還流させる吸込口64とを備え、モータ部Aから排油孔を経由して減速機部Bへ流入する潤滑油を吸込口へ誘導する仕切板68を減速機部Bに設ける。
【選択図】 図1
【解決手段】 モータ部Aと、平行軸歯車減速機36で構成された減速機部Bと、車輪用軸受部Cと、モータ部Aおよび減速機部Bに潤滑油を供給する潤滑機構とを備えたインホイールモータ駆動装置であって、潤滑機構は、モータ部Aと減速機部Bとを区画するケーシング22に設けられて平行軸歯車減速機36に向けて開口し、モータ部Aから減速機部Bへ潤滑油を流通させる排油孔と、ケーシング22の排油孔下方部位に設けられて平行軸歯車減速機36に向けて開口し、減速機部Bの潤滑油を回転ポンプ50へ還流させる吸込口64とを備え、モータ部Aから排油孔を経由して減速機部Bへ流入する潤滑油を吸込口へ誘導する仕切板68を減速機部Bに設ける。
【選択図】 図1
Description
本発明は、例えば、電動モータの出力軸と車輪用軸受とを減速機を介して連結したインホイールモータ駆動装置に関する。
従来のインホイールモータ駆動装置は、例えば、特許文献1に開示された構造のものがある。この特許文献1のインホイールモータ駆動装置は、駆動力を発生させる電動モータと、その電動モータの回転を減速して出力する平行軸歯車減速機と、その平行軸歯車減速機からの出力を車輪に伝達する車輪ハブとで構成されている。
このインホイールモータ駆動装置は、電動モータと平行軸歯車減速機との間に中間プレートを設け、その中間プレートのインボード側に、電動モータを収容するモータハウジングを取り付けると共に、中間プレートのアウトボード側に、平行軸歯車減速機を収容するギヤハウジングを取り付けた構造を具備する。
このインホイールモータ駆動装置では、電動モータおよび平行軸歯車減速機の冷却および潤滑を目的として、電動モータおよび平行軸歯車減速機に潤滑油を供給する潤滑機構を設ける必要がある。潤滑機構としては、回転ポンプを内蔵させ、回転ポンプから吐出される潤滑油を電動モータおよび平行軸歯車減速機に供給し、回転ポンプへ還流させる循環構造が有効であり、以下のような構造が可能である。
例えば、平行軸歯車減速機のカウンタ軸の回転を利用した回転ポンプを中間プレートに設ける。回転ポンプから吐出される潤滑油を電動モータに供給するための油路をモータハウジングに設ける。また、モータハウジング内に貯溜する潤滑油をギヤハウジングへ流通させる排油孔を中間プレートに設ける。さらに、ギヤハウジングに貯溜する潤滑油を回転ポンプに還流させるための吸込口を中間プレートに設ける。
以上のような循環構造を具備した潤滑機構では、回転ポンプから圧送される潤滑油をモータハウジングの油路を経由して電動モータに供給することにより、電動モータの冷却が行われる。また、モータハウジング内に貯溜した潤滑油を排油孔を経由して平行軸歯車減速機に供給することにより、平行軸歯車減速機の歯車の跳ね掛けでもって、平行軸歯車減速機の冷却および潤滑が行われる。平行軸歯車減速機に供給された潤滑油は、中間プレートの吸込口から回転ポンプへ還流される。
ところで、従来のインホイールモータ駆動装置において、装置のコンパクト化の観点から、電動モータに低トルクで高速回転の小型モータを採用した場合、電動モータの高速回転時、回転ポンプによる潤滑油の吸込量が多くなる。前述の循環構造を具備した潤滑機構では、平行軸歯車減速機の歯車の跳ね掛けによる潤滑を行うため、中間プレートの排油孔から流入した潤滑油が平行軸歯車減速機の歯車に強く当たって撹拌される。
このような歯車による潤滑油の撹拌損失が増加すると、中間プレートの吸込口付近の潤滑油が不足し、回転ポンプがエアを噛み込むことになる。その結果、最悪の場合、平行軸歯車減速機における潤滑不良が発生することになる。
そこで、本発明は前述の課題に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、電動モータの高速回転下であっても、平行軸歯車減速機での潤滑不良を未然に防止し得るインホイールモータ駆動装置を提供することにある。
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、モータ部と、平行軸歯車減速機で構成された減速機部と、車輪用軸受部と、モータ部および減速機部に潤滑油を供給する潤滑機構とを備えたインホイールモータ駆動装置であって、潤滑機構は、モータ部と減速機部とを区画するケーシングに設けられて平行軸歯車減速機に向けて開口し、モータ部から減速機部へ潤滑油を流通させる排油孔と、ケーシングの排油孔下方部位に設けられて平行軸歯車減速機に向けて開口し、減速機部の潤滑油を回転ポンプへ還流させる吸込口とを備え、モータ部から排油孔を経由して減速機部へ流入する潤滑油を吸込口へ誘導する仕切板を減速機部に設けたことを特徴とする。
本発明のインホイールモータ駆動装置では、減速機部に設けた仕切板により、モータ部から排油孔を経由して減速機部へ流入する潤滑油を吸込口に誘導することができるので、排油孔から流入する潤滑油が平行軸歯車減速機の歯車に強く当たって撹拌されることを回避できる。このようにして、歯車による潤滑油の撹拌損失を低減することで、吸込口付近の潤滑油が不足することを未然に防止できる。そのため、回転ポンプがエアを噛み込むことを回避できるので、平行軸歯車減速機において十分な潤滑を確保することができる。
本発明における平行軸歯車減速機は、モータ部のモータ回転軸の軸端に同軸的に連結された第1歯車を備え、潤滑機構は、回転ポンプからモータ回転軸を経由して第1歯車へ潤滑油を供給する軸心給油構造をなす構成が望ましい。このような軸心給油構造を採用すれば、モータ回転軸の軸端に同軸的に連結された第1歯車について跳ね掛けによる潤滑が困難であっても、その第1歯車に潤滑油を十分に供給することができる。
本発明における平行軸歯車減速機は、第1歯車の下方に配置されて第1歯車と噛合する第2歯車を備え、仕切板は、排油孔および吸込口と対向するようにケーシングと第2歯車との間に介在させた構成が望ましい。このようにすれば、排油孔からの潤滑油が第2歯車に強く当たって撹拌されることを回避でき、第2歯車による潤滑油の撹拌損失を低減することで、吸込口付近の潤滑油が不足することを未然に防止できる。
本発明によれば、減速機部に設けた仕切板により、モータ部から排油孔を経由して減速機部へ流入する潤滑油を吸込口に誘導することができるので、排油孔から流入する潤滑油が平行軸歯車減速機の歯車に強く当たって撹拌されることを回避できる。これにより、歯車による潤滑油の撹拌損失を低減することで、吸込口付近の潤滑油が不足することを未然に防止できる。そのため、回転ポンプがエアを噛み込むことを回避できるので、平行軸歯車減速機において十分な潤滑を確保することができる。その結果、減速機部の冷却性能および潤滑性能の向上が図れ、信頼性の高い長寿命のインホイールモータ駆動装置を提供することができる。
本発明に係るインホイールモータ駆動装置の実施形態を図面に基づいて詳述する。
図8は、インホイールモータ駆動装置21を搭載した電気自動車11の概略平面図、図9は、電気自動車11を後方から見た概略断面図である。図8に示すように、電気自動車11は、シャシー12と、操舵輪としての前輪13と、駆動輪としての後輪14と、後輪14に駆動力を伝達するインホイールモータ駆動装置21とを装備する。図9に示すように、後輪14は、シャシー12のホイールハウジング15の内部に収容され、懸架装置(サスペンション)16を介してシャシー12の下部に固定されている。
懸架装置16は、左右に延びるサスペンションアームにより後輪14を支持すると共に、コイルスプリングとショックアブソーバとを含むストラットにより、後輪14が地面から受ける振動を吸収してシャシー12の振動を抑制する。左右のサスペンションアームの連結部分には、旋回時などの車体の傾きを抑制するスタビライザが設けられている。懸架装置16は、路面の凹凸に対する追従性を向上させ、後輪14の駆動力を効率よく路面に伝達するために、左右の車輪を独立して上下させることができる独立懸架式としている。
電気自動車11は、ホイールハウジング15の内部に、左右それぞれの後輪14を駆動するインホイールモータ駆動装置21を設けることによって、シャシー12上にモータ、ドライブシャフトおよびデファレンシャルギヤ機構などを設ける必要がなくなるので、客室スペースを広く確保でき、かつ、左右の後輪14の回転をそれぞれ制御することができるという利点を有する。
電気自動車11の走行安定性およびNVH特性を向上させるためにばね下重量を抑える必要があり、さらに、広い客室スペースを確保するためにインホイールモータ駆動装置21の小型化が求められる。そこで、図1〜図7に示す実施形態のインホイールモータ駆動装置21は、以下の構造を具備する。これにより、コンパクトなインホイールモータ駆動装置21を実現し、ばね下重量を抑えることで、走行安定性およびNVH特性に優れた電気自動車11を得ることができる。なお、この実施形態の特徴的な構成を説明する前にインホイールモータ駆動装置21の全体構成を説明する。
図1はインホイールモータ駆動装置21を正面から見た断面図、図2はインホイールモータ駆動装置21を上方から見た断面図である。図1および図2に示すように、インホイールモータ駆動装置21は、駆動力を発生させるモータ部Aと、モータ部Aの回転を減速して出力する減速機部Bと、減速機部Bからの出力を駆動輪としての後輪14(図8および図9参照)に伝達する車輪用軸受部Cとを備えている。モータ部Aと減速機部Bはケーシング22に収容されて、電気自動車11のホイールハウジング15(図9参照)内に取り付けられる。ケーシング22は、モータ部Aと減速機部Bとが分割可能な構造でボルトにより締結一体化されている。
モータ部Aは、ケーシング22に固定されたステータ23と、ステータ23の径方向内側に隙間をもって対向するように配置されたロータ24と、ロータ24の径方向内側に配置されてロータ24と一体回転するモータ回転軸25とを備えたラジアルギャップ型の電動モータ26で構成されている。このモータ回転軸25は、毎分一万数千回転程度で高速回転可能である。ステータ23は磁性体コアの外周にコイルを巻回することによって構成され、ロータ24は永久磁石または磁性体が内部に配置されている。
モータ回転軸25は、径方向外側へ一体的に延びるホルダ部27によりロータ24が保持されている。このホルダ部27は、ロータ24が嵌め込み固定された凹溝を環状に形成した構成としている。モータ回転軸25は、その軸方向一方側端部(図1および図2の左側)が転がり軸受28に、軸方向他方側端部(図1および図2の右側)が転がり軸受29によって、ケーシング22に対して回転自在に支持されている。
減速機部Bは、第1歯車30、第2歯車31、第3歯車32および第4歯車33を有する。第1歯車30は、モータ回転軸25のアウトボード側軸端部に同軸的に取り付け固定されている。第2歯車31と第3歯車32は、中間軸34に取り付け固定されている。第4歯車33は減速機出力軸35に一体的に形成されている。この減速機部Bは、第1歯車30と第2歯車31とが噛合し、第3歯車32と第4歯車33とが噛合することで、モータ回転軸25の回転運動を2段に減速する平行軸歯車減速機36で構成されている。
第2歯車31と第3歯車32が取り付け固定された中間軸34は、転がり軸受37,38によってケーシング22に対して回転自在に支持されている。第4歯車33が一体的に形成された減速機出力軸35は、転がり軸受39,40によってケーシング22に対して回転自在に支持されている。減速機出力軸35の軸端部41は、車輪用軸受部Cのハブ輪43にスプライン嵌合(セレーション嵌合を含む。以下、同じ)によって連結され、減速機部Bの出力を後輪14(図8および図9参照)に伝達する。
第1歯車30〜第4歯車33および各歯車の回転軸を図3に基づいて説明する。図3は、図1の平行軸歯車減速機36を構成する第1歯車30〜第4歯車33のみをアウトボード側から見た概要図である。第1歯車30は、モータ回転軸25(図1参照)に取り付けられ、その軸心C1を中心にして回転する。第2歯車31と第3歯車32は、中間軸34(図1参照)に取り付けられ、その軸心C2を中心にして回転する。第4歯車33は、減速機出力軸35(図1参照)に一体的に形成されており、その軸心C3を中心にして回転する。
この実施形態では、モータ回転軸25、中間軸34および減速機出力軸35の各軸心C1,C2,C3が垂直線E−E上に配置され、減速機部Bの径方向のコンパクト化を図っている。ただし、各軸心C1,C2,C3の配置は、この実施形態のような配置に限られず、各歯車30〜33の噛合いを維持した状態で、ケーシング22のスペースなどを考慮して適宜ずらしてもよい。
ここで、平行軸歯車減速機36を構成する第1歯車30〜第4歯車33には、はすば歯車を用いている。はすば歯車は、同時に噛合う歯数が増え、歯当たりが分散されるので音が静かで、トルク変動が少ない点で有効である。歯車のかみあい率や限界の回転数などを考慮して、モジュールは1〜3程度が好ましい。
インホイールモータ駆動装置21は、ホイールハウジング15(図9参照)の内部に収められ、ばね下荷重となるため、小型軽量化が必須である。平行軸歯車減速機36を電動モータ26と組み合わせることで電動モータ26の小型化を図ることができる。例えば、減速比11の平行軸歯車減速機36を用いた場合、15000min-1程度の高速回転の電動モータ26を使用することにより電動モータ26を小型化することができる。この場合、ケーシング22のスペースなどを考慮すると、第1歯車30と第2歯車31からなる第1段の減速比は2〜4程度とし、第3歯車32と第4歯車33からなる第2段の減速比は3〜5程度とすることが好ましい。
図1に示すように、車輪用軸受部Cは、以下のような構造の車輪用軸受42で構成されている。車輪用軸受42は、減速機出力軸35にトルク伝達可能に連結されたハブ輪43と、ハブ輪43の外周面に嵌合された内輪44と、ケーシング22に嵌合固定された外輪45と、ハブ輪43および内輪44と外輪45との間に配置された複数の玉46と、複数の玉46を保持する保持器47とを備えた複列アンギュラ玉軸受である。車輪用軸受42の軸方向両端部には、泥水などの侵入防止のためにシール部材48が設けられている。この車輪用軸受42のハブ輪43にハブボルト49で後輪14(図8および図9参照)が連結される。
次に、全体的な潤滑機構を説明する。潤滑機構は、モータ部Aを冷却するために潤滑油を供給すると共に、減速機部Bを冷却および潤滑するために潤滑油を供給するものである。この実施形態の潤滑機構は、図1に示すように、回転ポンプ50と、ケーシング22に配設された油路51,52と、モータ回転軸25に配設された油路53〜55と、第1歯車30に配設された油路56とを主な構成としている。回転ポンプ50は、押え板57によりケーシング22に組み付けられている。回転ポンプ50の吐出口58および吸入口59は、ケーシング22に設けられている。
また、モータ部Aと減速機部Bとを区画するケーシング22の隔壁部60には、潤滑油をモータ部Aから減速機部Bへ流通させる排油孔61(図4参照)が配設されている。さらに、平行軸歯車減速機36の第2歯車31と第3歯車32とを区画するケーシング22の隔壁部62には、第2歯車31が収容された空間と第3歯車32が収容された空間とを隔壁部62の下部で連通させる連通孔63(図1参照)が設けられている。
図1に示すように、回転ポンプ50の吐出口58から延びる油路51は、ケーシング22の内部を周回し(図2参照)、モータ回転軸25のインボード側軸端部で油路53と連通する。モータ回転軸25の内部を軸線方向に沿って延びる油路53は、その軸中央部でホルダ部27に向かって延びる油路54と連通し、アウトボード側軸端部で第1歯車30に向かって延びる油路55と連通する。この油路53は、モータ回転軸25のアウトボード側軸端部で開口する。
モータ回転軸25の軸中央部の油路54は、ホルダ部27の凹溝内を経由して外周端部で開口する。モータ回転軸25のアウトボード側軸端部の油路55は、第1歯車30の内部を径方向に沿って延びる油路56と連通する。この油路56は、第1歯車30の歯面で開口する。
回転ポンプ50へ潤滑油を還流させるための油路52は、その一端が第2歯車31に向けて開口する吸込口64を持ち、他端が回転ポンプ50の吸入口59と連通する。潤滑油を強制的に循環させるための回転ポンプ50は、吐出口58と連通する油路51と、吸入口59と連通する油路52との間に設けられている。
図1および図4に示すように、回転ポンプ50は、中間軸34のインボード側軸端部に取り付けられたインナロータ65と、ケーシング22に回転自在に支持されたアウタロータ66と、ポンプ室67と、油路51に連通する吐出口58と、油路52に連通する吸入口59とを備えるサイクロイドポンプである。
インナロータ65は、モータ回転軸25の回転を第1歯車30および第2歯車31からなる第1段で減速して駆動されることにより、中間軸34の回転と同期して回転する。一方、アウタロータ66は、インナロータ65の回転に伴って従動回転する。この回転ポンプ50をケーシング22内に配置することによって、インホイールモータ駆動装置21の大型化を防止することができる。
インナロータ65は、回転中心C4を中心として回転し、アウタロータ66は、回転中心C5を中心として回転する。インナロータ65およびアウタロータ66は異なる回転中心C4,C5を中心として回転するので、ポンプ室67の容積は連続的に変化する。これにより、吸入口59から流入した潤滑油が吐出口58から油路51に圧送される。インナロータ65の歯数をnとすると、アウタロータ66の歯数は(n+1)となる。なお、この実施形態においては、n=5としている。
潤滑機構による潤滑油の流れを以下に説明する。図1および図2において、インホールモータ駆動装置21の内部に付した白抜き矢印は潤滑油の流れを示す。また、図1のF−F線は、インホイールモータ駆動装置21が停止状態の時の潤滑油の油面を示す。インホイールモータ駆動装置21が運転状態においても、減速機部Bにおけるケーシング22の下部に潤滑油が貯留される。
なお、モータ部Aと減速機部Bとを区画するケーシング22の隔壁部60に排油孔61(図4参照)が設けられ、第2歯車31と第3歯車32とを区画するケーシング22の隔壁部62に連通孔63が設けられていることから、モータ部Aと減速機部Bとで油面が同一となっている。
モータ部Aの冷却として、回転ポンプ50から圧送された潤滑油は油路51,53を経由し、その一部がモータ回転軸25の回転に伴う遠心力およびポンプ圧力によって油路54を経てロータ24を冷却する。さらに、ホルダ部27から潤滑油が吐出されてステータ23を冷却する。このようにして、モータ部Aの冷却が行われる。
減速機部Bの冷却および潤滑として、油路53の潤滑油は、モータ回転軸25の回転に伴う遠心力およびポンプ圧力によって油路55,56を経由して第1歯車30の歯面に流出し、高速回転する第1段の第1歯車30を潤滑する。第1段の第2歯車31および第2段の第3歯車32と第4歯車33は、減速機部Bにおけるケーシング22の下部に貯留した潤滑油を跳ね掛けて潤滑される。このようにして、減速機部Bの冷却および潤滑が行われる。また、第1段の第1歯車30に流入した潤滑油はギヤハウジング側に飛散する。この飛散した潤滑油を第2段の歯車側に流すため、隔壁部62の上部に流入させるための孔を設けてもよい(図示せず)。
ここで、第1歯車30は、高速回転で使用される上、潤滑油の油面(図1のF−F線参照)から離れているので、特に、インホイールモータ駆動装置21の始動時などの潤滑が重要である。このことから、油路53,55,56を経由して第1歯車30に潤滑油を供給する軸心給油構造としている。このような軸心給油構造を採用することにより、潤滑油の油面から離れた位置にある第1歯車30が跳ね掛けによる潤滑が困難であっても、インホイールモータ駆動装置21の始動時などに、第1歯車30に潤滑油を十分に供給することができる。
この実施形態におけるインホイールモータ駆動装置21の全体構成は、前述のとおりであるが、その特徴的な構成を以下に詳述する。
この実施形態の潤滑機構において、図4に示すように、モータ部Aと減速機部Bとを区画するケーシング22の隔壁部60に、モータ部Aから減速機部Bへ潤滑油を流通させる排油孔61が設けられている。この排油孔61は、平行軸歯車減速機36の第2歯車31に向けて開口している。また、ケーシング22の隔壁部60の排油孔61下方部位に、減速機部Bの潤滑油を回転ポンプ50へ還流させる吸込口64が設けられている。この吸込口64は、第2歯車31に向けて開口している(図1参照)。
ここで、モータ部Aの電動モータ26が毎分一万数千回転程度で高速回転すると、回転ポンプ50による潤滑油の吸込量が多くなる。一方、平行軸歯車減速機36では、第2歯車31の跳ね掛けによる潤滑を行うため、前述の排油孔61から流入する潤滑油が第2歯車31に強く当たって撹拌されることになる。この第2歯車31による潤滑油の撹拌損失が増加すると、吸込口64付近の潤滑油が不足し、回転ポンプ50がエアを噛み込むことになり、平行軸歯車減速機36における潤滑不良が発生することになる。
そこで、この実施形態では、図1および図5に示すように、モータ部Aから排油孔61を経由して減速機部Bへ流入する潤滑油を吸込口64へ誘導する仕切板68を、排油孔61および吸込口64と対向するようにケーシング22の隔壁部60と第2歯車31との間に介在させている。仕切板68は、図6(A)(B)に示すように、略半円形の金属板で、その中央部分に中間軸34(図5参照)が挿通される貫通孔69を有する。この仕切板68は、プレス加工などにより成形された単純な形状のものであることから、製作が容易である。
この仕切板68は、平坦な上部両側に設けられた取り付けフランジ70でもってケーシング22の隔壁部60にねじ止め等により固定される。仕切板68の円弧状周縁部とケーシング22との間には隙間71(図5参照)が設けられており、この隙間71を介して潤滑油が吸込口64へ流入することが容易となる。なお、図7(A)(B)に示すように、仕切板68の下部に開口窓72を設けるようにしてもよい。このような開口窓72を設けることにより、潤滑油が吸込口64へ流入することがより一層容易となる。
以上のように、ケーシング22の排油孔61と平行軸歯車減速機36の第2歯車31との間に、仕切板68を介在させたことにより、モータ部Aから排油孔61を経由して減速機部Bへ流入する潤滑油は、固定状態の仕切板68に当たり吸込口64に誘導されて最短で到達することになる。従って、排油孔61から流入する潤滑油が回転状態の第2歯車31に強く当たって撹拌されることを回避できる。このようにして、第2歯車31による潤滑油の撹拌損失を低減することで、吸込口64付近の潤滑油が不足することを未然に防止できる。そのため、回転ポンプ50がエアを噛み込むことを回避できるので、平行軸歯車減速機36において十分な潤滑を確保することができる。
最後に、この実施形態におけるインホイールモータ駆動装置21の全体的な作動原理を説明する。
図1および図2に示すように、モータ部Aにおいて、例えば、ステータ23に交流電流を供給することによって生じる電磁力を受けてロータ24が回転する。これにより、減速機部Bにおいて、モータ回転軸25の回転が、平行軸歯車減速機36を構成する第1歯車30、第2歯車31、第3歯車32および第4歯車33によって減速され、減速機出力軸35を介して車輪用軸受部Cに伝達される。この時、モータ回転軸25の回転が減速機部Bによって減速されて減速機出力軸35に伝達されるので、モータ部Aにおいて、低トルク、高速回転型の電動モータ26を採用した場合でも、後輪14(図8および図9参照)に必要なトルクを伝達することが可能となる。
減速機部Bの減速比は、第1歯車30と第2歯車31の第1段で1/2.5、第3歯車32と第4歯車33の第2段で1/4.5とすれば、減速比は約1/11と大きな減速比を得ることができる。このように、大きな減速比を得ることができる平行軸歯車減速機36を採用することにより、コンパクトで高減速比のインホイールモータ駆動装置21を得ることができる。また、平行軸歯車減速機36は、はすば歯車を用いているので、製造が容易で、コストの低減が図れ、性能面でも、静粛かつ効率のよいインホイールモータ駆動装置21を実現することができる。
この実施形態では、モータ部Aとしてラジアルギャップ型の電動モータ26を例示したが、任意の構成のモータを適用可能である。例えば、ケーシングに固定されたステータと、ステータの軸方向内側に隙間をもって対向するように配置されたロータとを備えるアキシャルギャップ型の電動モータであってもよい。
また、この実施形態では、回転ポンプ50としてサイクロイドポンプを例示したが、これに限定されることなく、減速機部Bの中間軸34の回転を利用して駆動するあらゆる回転型ポンプを採用することができる。さらには、回転ポンプ50を省略して、遠心力のみによって潤滑油を循環させるようにしてもよい。
この実施形態における作動の説明は、各部材の回転に着目して行ったが、実際にはトルクを含む動力がモータ部Aから後輪14に伝達される。従って、前述のように減速された動力は高トルクに変換されたものとなっている。また、モータ部Aに電力を供給してモータ部を駆動させ、モータ部Aからの動力を後輪14に伝達させる場合を示したが、これとは逆に、車両が減速したり坂を下ったりするようなときは、後輪14側からの動力を減速機部Bで高回転低トルクの回転に変換してモータ部Aに伝達し、モータ部Aで発電してもよい。さらに、ここで発電した電力は、バッテリーに蓄電しておき、後でモータ部Aを駆動させることや、車両に備えられた他の電動機器などの作動に用いてもよい。
この実施形態では、図8および図9に示すように、後輪14を駆動輪とした電気自動車11を例示したが、前輪13を駆動輪としてもよく、4輪駆動車であってもよい。なお、本明細書中で「電気自動車」とは、電力から駆動力を得る全ての自動車を含む概念であり、例えば、ハイブリッドカー等も含むものである。
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
21 インホイールモータ駆動装置
22 ケーシング
25 モータ回転軸
30 第1歯車
31 第2歯車
36 平行軸歯車減速機
50 回転ポンプ
61 排油孔
64 吸込口
68 仕切板
A モータ部
B 減速機部
C 車輪用軸受部
22 ケーシング
25 モータ回転軸
30 第1歯車
31 第2歯車
36 平行軸歯車減速機
50 回転ポンプ
61 排油孔
64 吸込口
68 仕切板
A モータ部
B 減速機部
C 車輪用軸受部
Claims (3)
- モータ部と、平行軸歯車減速機で構成された減速機部と、車輪用軸受部と、前記モータ部および減速機部に潤滑油を供給する潤滑機構とを備えたインホイールモータ駆動装置であって、
前記潤滑機構は、モータ部と減速機部とを区画するケーシングに設けられて前記平行軸歯車減速機に向けて開口し、モータ部から減速機部へ潤滑油を流通させる排油孔と、前記ケーシングの排油孔下方部位に設けられて平行軸歯車減速機に向けて開口し、減速機部の潤滑油を回転ポンプへ還流させる吸込口とを備え、モータ部から前記排油孔を経由して減速機部へ流入する潤滑油を前記吸込口へ誘導する仕切板を減速機部に設けたことを特徴とするインホイールモータ駆動装置。 - 前記平行軸歯車減速機は、モータ部のモータ回転軸の軸端に同軸的に連結された第1歯車を備え、前記潤滑機構は、回転ポンプから前記モータ回転軸を経由して前記第1歯車へ潤滑油を供給する軸心給油構造をなす請求項1に記載のインホイールモータ駆動装置。
- 前記平行軸歯車減速機は、第1歯車の下方に配置されて第1歯車と噛合する第2歯車を備え、前記仕切板は、排油孔および吸込口と対向するようにケーシングと第2歯車との間に介在させた請求項1又は2に記載のインホイールモータ駆動装置。
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