JP2017024655A - インホイールモータ駆動装置 - Google Patents

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康人 渡邊
早織 杉浦
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Abstract

【課題】 回転ポンプの組み付け作業を簡易にし、左側駆動輪用と右側駆動輪用で組み付け間違いや組み付け忘れの発生を未然に防止する。
【解決手段】 モータ部Aと、平行軸歯車減速機38で構成された減速機部Bと、車輪用軸受部Cと、モータ部Aおよび減速機部Bを収容するハウジング22と、ハウジング22に取り付けられた回転ポンプ56によってモータ部Aおよび減速機部Bに潤滑油を供給する潤滑機構とを備えたインホイールモータ駆動装置21であって、回転ポンプ56は、左右非対称形状を有する吐出口76および吸入口77が形成されたケーシング67と、インナロータ68、およびインナロータ68の回転中心に対して偏心させた左右非対称状態で配置されたアウタロータ69とを備えたアッセンブリ体55で構成され、アッセンブリ体55をモータ部Aと減速機部Bとの間でハウジング22に左側駆動輪用と右側駆動輪用とで選択的に取り付ける。
【選択図】 図1

Description

本発明は、例えば、電動モータの出力軸と車輪用軸受とを減速機を介して連結したインホイールモータ駆動装置に関する。
従来のインホイールモータ駆動装置は、例えば、特許文献1に開示された構造のものがある。この特許文献1のインホイールモータ駆動装置は、駆動力を発生させる電動モータと、その電動モータの回転を減速して出力する平行軸歯車減速機と、その平行軸歯車減速機からの出力を車輪に伝達する車輪ハブとで構成されている。このインホイールモータ駆動装置は、電動モータと平行軸歯車減速機とをハウジングに収容した構造を具備する。
このインホイールモータ駆動装置では、電動モータおよび平行軸歯車減速機の冷却および潤滑を目的として、電動モータおよび平行軸歯車減速機に潤滑油を供給する潤滑機構を設ける必要がある。潤滑機構としては、回転ポンプを内蔵させ、回転ポンプから吐出される潤滑油を電動モータおよび平行軸歯車減速機に供給し、回転ポンプへ還流させる循環構造が有効であり、以下のような構造が可能である。
例えば、平行軸歯車減速機のカウンタ軸の回転を利用した回転ポンプをハウジングに設ける。回転ポンプから吐出される潤滑油を電動モータおよび平行軸歯車減速機に供給するための油路をハウジングに設ける。また、ハウジング内に貯溜する潤滑油を吸入して回転ポンプへ還流させるための油路をハウジングに設ける。
以上のような循環構造を具備した潤滑機構では、回転ポンプから圧送される潤滑油をハウジングの油路から電動モータおよび平行軸歯車減速機に供給する。この電動モータへの潤滑油の供給により、電動モータの冷却が行われる。また、平行軸歯車減速機への潤滑油の供給により、平行軸歯車減速機の歯車の跳ね掛けでもって、平行軸歯車減速機の冷却および潤滑が行われる。ハウジング内に貯溜した潤滑油は、ハウジングの油路から回転ポンプへ還流される。
特開2014−46742号公報
ところで、前述したインホイールモータ駆動装置では、電動モータおよび平行軸歯車減速機の冷却および潤滑のため、平行軸歯車減速機のカウンタ軸の回転を利用した回転ポンプを内蔵させている。このインホイールモータ駆動装置に内蔵される回転ポンプとしては、サイクロイドポンプがある。
このサイクロイドポンプは、平行軸歯車減速機のカウンタ軸と同軸的に取り付けられたインナロータと、ハウジングに回転自在に取り付けられたアウタロータとで主要部が構成されている。このインナロータおよびアウタロータを収容するポンプ室がハウジングに設けられている。このポンプ室には、潤滑油を減速機部から吸い上げるための吸入口と、潤滑油をモータ部へ圧送するための吐出口が設けられている。
前述の構成からなる回転ポンプでは、ハウジングのポンプ室に組み付けられるアウタロータがインナロータの回転中心に対して偏心させた左右非対称状態で配置されている。また、ハウジングのポンプ室に形成された吐出口および吸入口が左右非対称形状を有する。そのため、左側駆動輪用の回転ポンプと右側駆動輪用の回転ポンプとでは、ハウジングのポンプ室におけるアウタロータの偏心方向と吐出口および吸入口の形状が逆になる。
つまり、左側駆動輪用と右側駆動輪用とで専用のハウジングをそれぞれ必要とする。その結果、アウタロータの偏心方向と吐出口および吸入口の形状を考慮しながら、アウタローラおよびインナロータを左側駆動輪用と右側駆動輪用のハウジングにそれぞれ組み付けなければならない。
このことから、回転ポンプの組み付け作業が煩雑となって時間がかかり、左側駆動輪用と右側駆動輪用で組み付け間違いや組み付け忘れを招くおそれがある。
そこで、本発明は前述の課題に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、ポンプの組み付け作業を簡易にし、左側駆動輪用と右側駆動輪用で組み付け間違いや組み付け忘れの発生を未然に防止し得るインホイールモータ駆動装置を提供することにある。
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、モータ部と、平行軸歯車減速機で構成された減速機部と、車輪用軸受部と、モータ部および減速機部を収容するハウジングと、ハウジングに取り付けられた回転ポンプによってモータ部および減速機部に潤滑油を供給する潤滑機構とを備えたインホイールモータ駆動装置であって、回転ポンプは、左右非対称構造を有する収容部材と、収容部材に左右非対称状態で組み込まれる回転部材とを備えたアッセンブリ体で構成され、アッセンブリ体をモータ部と減速機部との間でハウジングに左側駆動輪用と右側駆動輪用とで選択的に取り付けたことを特徴とする。
本発明のインホイールモータ駆動装置では、左右非対称構造の収容部材と、その収容部材に左右非対称状態で組み込まれる回転部材とを備えたアッセンブリ体で回転ポンプを構成したことにより、そのアッセンブリ体をモータ部と減速機部との間でハウジングに左側駆動輪用と右側駆動輪用とで選択的に取り付けることで、回転ポンプを左側駆動輪用と右側駆動輪用とで共通化することができる。その結果、回転ポンプの組み付け作業を簡易にすることができ、左側駆動輪用と右側駆動輪用で組み付け間違いや組み付け忘れの発生を未然に防止することができる。
ここで、「アッセンブリ体をモータ部と減速機部との間でハウジングに左側駆動輪用と右側駆動輪用とで選択的に取り付ける」とは、左側駆動輪用の場合、回転部材の組み込み側をモータ部に向けた状態でアッセンブリ体をハウジングに取り付け、右側駆動輪用の場合、回転部材の組み込み側を減速機部に向けた状態でアッセンブリ体をハウジングに取り付けることを意味する。
本発明における回転ポンプの収容部材は、ポンプ駆動軸が挿通される孔をモータ部側および減速機部側の両側に開口させた構成を具備することが望ましい。このように、ポンプ駆動軸用の孔をモータ部側および減速機部側の両側に開口させておけば、回転ポンプを左側駆動輪用と右側駆動輪用とで共通化することが容易となる。
本発明における回転ポンプの収容部材は、回転ポンプからの潤滑油の吐出口と連通する油路と、回転ポンプへの潤滑油の吸入口と連通する油路とを、モータ部側および減速機部側の両側に開口させた構成を具備することが望ましい。このように、吐出口および吸入口と連通する油路をモータ部側および減速機部側の両側に開口させておけば、回転ポンプを左側駆動輪用と右側駆動輪用とで共通化することが容易となる。
本発明における回転ポンプの収容部材は、左右非対称形状を有するポートが形成されたケーシングであり、回転ポンプの回転部材は、ポンプ駆動軸と同軸的に配置されたインナロータ、およびインナロータの回転中心に対して偏心させた左右非対称状態で配置されたアウタロータであり、回転ポンプは、ケーシングにインナロータおよびアウタロータが組み込まれたサイクロイドポンプであることが望ましい。このように、回転ポンプにサイクロイドポンプを採用すれば、回転ポンプのコンパクト化が図れる点で有効である。
本発明によれば、回転ポンプをアッセンブリ化し、そのアッセンブリ体をモータ部と減速機部との間でハウジングに左側駆動輪用と右側駆動輪用とで選択的に取り付けることで、回転ポンプを左側駆動輪用と右側駆動輪用とで共通化することができる。その結果、回転ポンプの組み付け作業を簡易にすることができ、左側駆動輪用と右側駆動輪用で組み付け間違いや組み付け忘れの発生を未然に防止することができる。
その結果、左側駆動輪用と右側駆動輪用としてのインホイールモータ駆動装置の製作が容易となり、インホイールモータ駆動装置を左側駆動輪用および右側駆動輪として車両に搭載する上での信頼性の向上が図れる。
本発明の実施形態で、左側駆動輪用のインホイールモータ駆動装置の全体構成を示す断面図である。 本発明の実施形態で、右側駆動輪用のインホイールモータ駆動装置の全体構成を示す断面図である。 図1の平行軸歯車減速機を構成する歯車のみをモータ部側から見た概要図である。 図2の平行軸歯車減速機を構成する歯車のみをモータ部側から見た概要図である。 図1のアッセンブリ体をモータ部側から見た組立分解斜視図であり、また、図2のアッセンブリ体を減速機部側から見た組立分解斜視図である。 (A)は図4および図5のケーシングを示す右側面図、(B)は図4および図5のケーシングを示す左側面図である。 図1のアッセンブリ体をモータ部側から見た図で、(A)はケーシングの凹部に形成された吐出口および吸入口を示す要部拡大図、(B)はケーシングの凹部にアウタロータおよびインナロータを組み付けた状態を示す要部拡大図である。 図2のアッセンブリ体をモータ部側から見た図で、(A)はケーシングの凹部に形成された吐出口および吸入口を示す要部拡大図、(B)はケーシングの凹部にアウタロータおよびインナロータを組み付けた状態を示す要部拡大図である。 インホイールモータ駆動装置を搭載した電気自動車の概略構成を示す平面図である。 図9の電気自動車を示す後方断面図である。
本発明に係るインホイールモータ駆動装置の実施形態を図面に基づいて詳述する。
図9は、インホイールモータ駆動装置21を搭載した電気自動車11の概略平面図、図10は、電気自動車11を後方から見た概略断面図である。
電気自動車11は、図9に示すように、シャシー12と、操舵輪としての前輪13と、駆動輪としての後輪14と、後輪14に駆動力を伝達するインホイールモータ駆動装置21とを装備する。後輪14は、図10に示すように、シャシー12のホイールハウジング15の内部に収容され、懸架装置(サスペンション)16を介してシャシー12の下部に固定されている。
懸架装置16は、左右に延びるサスペンションアームにより後輪14を支持すると共に、コイルスプリングとショックアブソーバとを含むストラットにより、後輪14が地面から受ける振動を吸収してシャシー12の振動を抑制する。左右のサスペンションアームの連結部分には、旋回時などの車体の傾きを抑制するスタビライザが設けられている。懸架装置16は、路面の凹凸に対する追従性を向上させ、後輪14の駆動力を効率よく路面に伝達するために、左右の車輪を独立して上下させる独立懸架式としている。
電気自動車11は、ホイールハウジング15の内部に、左右それぞれの後輪14を駆動するインホイールモータ駆動装置21を設けることによって、シャシー12上にモータ、ドライブシャフトおよびデファレンシャルギヤ機構などを設ける必要がなくなるので、客室スペースを広く確保でき、かつ、左右の後輪14の回転をそれぞれ制御することができるという利点を有する。電気自動車11の走行安定性およびNVH特性を向上させるためにばね下重量を抑える必要があり、さらに、広い客室スペースを確保するためにインホイールモータ駆動装置21の小型化が求められる。
そこで、図1および図2に示す実施形態のインホイールモータ駆動装置21は、以下の構造を具備する。これにより、コンパクトなインホイールモータ駆動装置21を実現し、ばね下重量を抑えることで、走行安定性およびNVH特性に優れた電気自動車11を得ることができる。図1は、左側駆動輪用のインホイールモータ駆動装置21を示し、図2は、右側駆動輪用のインホイールモータ駆動装置21を示す。以下、左側駆動輪用と右側駆動輪用のインホイールモータ駆動装置21について共通して説明する。
この実施形態の特徴的な構成を説明する前にインホイールモータ駆動装置21の全体構成を説明する。以下の説明では、インホイールモータ駆動装置21を車両に搭載した状態で、車両の外側寄りとなる側をアウトボード側(図1の左側、図2の右側)と称し、中央寄りとなる側をインボード側(図1の右側、図2の左側)と称する。
インホイールモータ駆動装置21は、図1および図2に示すように、駆動力を発生させるモータ部Aと、モータ部Aの回転を減速して出力する減速機部Bと、減速機部Bからの出力を駆動輪としての後輪14(図9および図10参照)に伝達する車輪用軸受部Cとを備えている。モータ部Aと減速機部Bはハウジング22に収容されて、電気自動車11のホイールハウジング15(図10参照)内に取り付けられる。ハウジング22は、モータ部Aのモータハウジングと減速機部Bのギヤハウジングとからなる分割可能な構造でボルトにより締結一体化されている。
モータ部Aは、ハウジング22に固定されたステータ23と、ステータ23の径方向内側に隙間をもって対向するように配置されたロータ24と、ロータ24の径方向内側に配置されてロータ24と一体回転するモータ回転軸25とを備えたラジアルギャップ型の電動モータ26で構成されている。モータ回転軸25は、毎分一万数千回転程度で高速回転可能である。ステータ23は磁性体コアの外周にコイルを巻回することによって構成され、ロータ24は永久磁石または磁性体が内部に配置されている。
モータ回転軸25は、径方向外側へ一体的に延びるホルダ部27によりロータ24が保持されている。ホルダ部27は、ロータ24が嵌め込み固定された凹溝を環状に形成した構成としている。モータ回転軸25は、その軸方向一方側端部(図1の右側、図2の左側)が転がり軸受28に、軸方向他方側端部(図1の左側、図2の右側)が転がり軸受29によって、ハウジング22に対して回転自在に支持されている。
減速機部Bは、入力歯車である第1歯車30と、中間歯車である第2歯車31および第3歯車32と、出力歯車である第4歯車33とを有する。この減速機部Bは、第1歯車30と第2歯車31とが噛合し、第3歯車32と第4歯車33とが噛合することにより、モータ回転軸25の回転運動を2段に減速する平行軸歯車減速機38で構成されている。
第1歯車30は、インボード側に延びる軸部34をモータ回転軸25にスプライン嵌合によって連結することにより、モータ回転軸25に同軸的に取り付け固定されている。第2歯車31は、中間軸35のインボード側に延びる軸部36にスプライン嵌合によって連結することにより、中間軸35に同軸的に取り付け固定されている。第3歯車32は、中間軸35に一体的に形成されている。第4歯車33は、アウトボード側に延びる軸部37を後述のハブ輪44にスプライン嵌合によって連結することにより、減速機部Bの出力を後輪14(図9および図10参照)に伝達する。
第1歯車30のアウトボード側に延びる軸部39は、転がり軸受40によってハウジング22に対して回転自在に支持されている。第2歯車31が取り付け固定され、第3歯車32が一体的に形成された中間軸35は、転がり軸受41,42によってハウジング22に対して回転自在に支持されている。第4歯車33は、後述の車輪用軸受43によってハウジング22に対して回転自在に支持されている。
第1歯車30〜第4歯車33および各歯車の回転中心を図3および図4に基づいて説明する。図3は、図1の平行軸歯車減速機38を構成する第1歯車30〜第4歯車33のみをモータ部A側(インボード側)から見た概要図である。図4は、図2の平行軸歯車減速機38を構成する第1歯車30〜第4歯車33のみをモータ部A側(インボード側)から見た概要図である。
第1歯車30は、モータ回転軸25(図1および図2参照)に取り付け固定され、その軸心C1を中心にして回転する。第2歯車31は、中間軸35(図1および図2参照)に取り付け固定され、第3歯車32は、中間軸35に一体的に形成され、その軸心C2を中心にして回転する。第4歯車33は、車輪用軸受43のハブ輪44(図1および図2参照)に取り付け固定され、その軸心C3を中心にして回転する。なお、第1歯車30の軸部34,39と第4歯車33の軸部37とは同軸上に配置されていることから、それぞれの軸心C1と軸心C3は一致している。
このインホイールモータ駆動装置21では、モータ回転軸25、中間軸35および車輪用軸受43のハブ輪44の各軸心C1,C2,C3が、周辺車両部品との干渉を回避することを考慮して、垂直方向に対して傾斜した直線E−E上に配置され、減速機部Bの径方向のコンパクト化を図っている。ただし、各軸心C1,C2,C3の配置は、この実施形態のような配置に限らず、各歯車30〜33の噛合いを維持した状態で、ハウジング22のスペースなどを考慮して適宜ずらしてもよい。
ここで、平行軸歯車減速機38を構成する第1歯車30〜第4歯車33には、はすば歯車を用いている。はすば歯車は、同時に噛合う歯数が増え、歯当たりが分散されるので音が静かで、トルク変動が少ない点で有効である。歯車のかみあい率や限界の回転数などを考慮して、モジュールは1〜3程度が好ましい。
インホイールモータ駆動装置21は、ホイールハウジング15(図10参照)の内部に収められ、ばね下荷重となるため、小型軽量化が必須である。平行軸歯車減速機38を電動モータ26と組み合わせることで電動モータ26の小型化を図ることができる。例えば、減速比11の平行軸歯車減速機38を用いた場合、毎分一万数千回転程度の高速回転の電動モータ26を使用することにより電動モータ26を小型化することができる。この場合、ハウジング22のスペースなどを考慮すると、第1歯車30と第2歯車31からなる第1段の減速比は2〜4程度とし、第3歯車32と第4歯車33からなる第2段の減速比は3〜5程度とすることが好ましい。
車輪用軸受部Cは、図1および図2に示すように、以下のような構造の車輪用軸受43で構成されている。車輪用軸受43は、第4歯車33の軸部37にトルク伝達可能に連結されたハブ輪44と、ハブ輪44の外周に嵌合された内輪45と、ハブ輪44および内輪45の外側に配置された外輪46と、ハブ輪44および内輪45と外輪46との間に配置された複数の玉47と、複数の玉47を保持する保持器48とを備えた複列アンギュラ玉軸受である。車輪用軸受43の軸方向両端部には、泥水または潤滑油などの侵入防止および軸受内部に封入されたグリースの漏洩防止のためにシール部材49が設けられている。
車輪用軸受43は、第4歯車33の軸部37の端部に形成された雄ねじ部50にナット51を螺合させることにより、平行軸歯車減速機38に締め付け固定されている。車輪用軸受43の外輪46は、ハウジング22に取り付け固定されている。車輪用軸受43の内輪45は、ハブ輪44のインボード側に延びる小径段部52に圧入され、第4歯車33の肩部53に当接させることで抜け止めされている。車輪用軸受43のハブ輪44にハブボルト54で後輪14(図9および図10参照)が連結される。
インホイールモータ駆動装置21は、モータ部Aを冷却するために潤滑油を供給すると共に、減速機部Bを冷却および潤滑するために潤滑油を供給する潤滑機構を具備する。
この潤滑機構は、図1および図2に示すように、後述のアッセンブリ体55に組み込まれた回転ポンプ56および油路57,58と、ハウジング22に配設された油路59と、モータ回転軸25に配設された油路60,61と、第1歯車30およびその軸部34,39に配設された油路62,63と、ハウジング22に設けられた排油孔64,65と、減速機部Bの下部に配設された油タンク66とで構成されている。
この実施形態におけるインホイールモータ駆動装置21の全体構成は、前述のとおりであるが、その特徴的な構成を以下に詳述する。
このインホイールモータ駆動装置21における回転ポンプ56は、図5に示すように、左右非対称構造を有する収容部材であるケーシング67と、そのケーシング67に左右非対称状態で組み込まれる回転部材であるインナロータ68およびアウタロータ69とを主要構成部品としたアッセンブリ体55に組み込まれたサイクロイドポンプである。インナロータ68の歯数をnとすると、アウタロータ69の歯数は(n+1)となる。なお、この実施形態においては、n=7としている。
図1の左側駆動輪用のインホイールモータ駆動装置21におけるアッセンブリ体55と、図2の右側駆動輪用のインホイールモータ駆動装置21におけるアッセンブリ体55とは、同一構造のものである。つまり、アッセンブリ体55は、左側駆動輪用と右側駆動輪用とで共通して使用する1種のものである(図5参照)。
このアッセンブリ体55を構成するケーシング67には、図5および図6(A)(B)に示すように、ポンプ駆動軸である中間軸35(図1および図2参照)が挿通される孔70に凹部71が連設されており、この凹部71にアウタロータ69およびインナロータ68が収容される。この凹部71の周縁部に形成された段差部72にプレート73を嵌合し、そのプレート73をケーシング67にねじ74で固定する。これにより、ケーシング67にアウタロータ69およびインナロータ68が組み込まれる。
なお、このプレート73にも、中間軸35(図1および図2参照)が挿通される孔75が設けられている。また、図中の符号78は、モータ回転軸25および第1歯車30の軸部34(図1および図2参照)が挿通される孔である。
以上の構成からなるアッセンブリ体55をモータ部Aと減速機部Bとの間でハウジング22のモータハウジングとギヤハウジングとで挟み込むようにして左側駆動輪用のインホイールモータ駆動装置21と右側駆動輪用のインホイールモータ駆動装置21とで選択的に取り付けている。
つまり、左側駆動輪用のインホイールモータ駆動装置21では、図1に示すように、インナロータ68およびアウタロータ69の組み込み側(図示右側)をモータ部Aに向けた状態でアッセンブリ体55をハウジング22に取り付けている。これに対して、右側駆動輪用のインホイールモータ駆動装置21では、図2に示すように、インナロータ68およびアウタロータ69の組み込み側(図示右側)を減速機部Bに向けた状態でアッセンブリ体55をハウジング22に取り付けている。
図1および図2のアッセンブリ体55において、図7(A)および図8(A)に示すように、ケーシング67の凹部71の底部に、左右非対称形状を有する溝状の吐出口76および吸入口77が中間軸用の孔70の上下位置に形成されている。
図1および図2のアッセンブリ体55をモータ部A側から見た場合、吐出口76は、中間軸35の回転方向(図示矢印方向)に向けて幅狭となるような左右非対称形状となる。これに対して、吸入口77は、中間軸35の回転方向に向けて幅広となるような左右非対称形状となる。つまり、吐出口76および吸入口77は、左側駆動輪用と右側駆動輪用とで逆向きとなる。
また、図1および図2のアッセンブリ体55において、図7(B)および図8(B)に示すように、前述したケーシング67の凹部71にインナロータ68およびアウタロータ69が左右非対称状態で組み込まれる。
図1および図2のアッセンブリ体55をモータ部A側から見た場合、図1のアッセンブリ体55では、アウタロータ69の回転中心C4は、インナロータ68の回転中心C2(中間軸35の回転中心)に対して左側へ偏心させた左右非対称状態となる。これに対して、図2のアッセンブリ体55では、アウタロータ69の回転中心C4は、インナロータ68の回転中心C2に対して右側へ偏心した左右非対称状態となる。つまり、左側駆動輪用と右側駆動輪用とでは、インナロータ68の回転中心C2に対するアウタロータ69の偏心方向が逆となる。
以上のように、アッセンブリ体55は、中間軸35の軸部36に取り付けられたインナロータ68と、ケーシング67の凹部71に回転自在に保持されてインナロータ68の回転中心C2(中間軸35の回転中心)から偏心させた回転中心C4を持つように左右非対称状態で配置されたアウタロータ69と、インナロータ68とアウタロータ69との間に形成されたポンプ室79と、ケーシング67の上部で上下方向に形成された油路57と連通する吐出口76と、ケーシング67の下部で上下方向に形成された油路58と連通する吸入口77とで構成された回転ポンプ56を備えている。
このように、左右非対称形状を有する吐出口76および吸入口77が形成されたケーシング67と、インナロータ68、およびインナロータ68の回転中心C2に対して偏心させた回転中心C4を持つように左右非対称状態で配置されたアウタロータ69とを備えた回転ポンプ56を組み込んだアッセンブリ体55を、モータ部Aと減速機部Bとの間でハウジング22に左側駆動輪用と右側駆動輪用とで選択的に取り付けることで、回転ポンプ56を左側駆動輪用と右側駆動輪用とで共通化することができる。その結果、回転ポンプ56の組み付け作業を簡易にすることができ、左側駆動輪用と右側駆動輪用で組み付け間違いや組み付け忘れの発生を未然に防止することができる。
前述したように、アッセンブリ体55を構成するケーシング67は、図6(A)(B)に示すように、中間軸35が挿通される孔70をモータ部A側および減速機部B側の両側に開口させた構造を具備する(図1および図2参照)。このように、中間軸用の孔70をモータ部A側および減速機部B側の両側に開口させることで、回転ポンプ56を左側駆動輪用と右側駆動輪用とで共通化することが容易となる。
また、ケーシング67は、図6(A)(B)に示すように、回転ポンプ56からの潤滑油の吐出口76と連通する油路57と、回転ポンプ56への潤滑油の吸入口77と連通する油路58とを、ケーシング67の外周近傍部位で軸方向に屈曲させてモータ部A側および減速機部B側の両側に開口させた構造を具備する(図1および図2参照)。吐出口76および吸入口77と連通する油路57,58をモータ部A側および減速機部B側の両側に開口させることで、回転ポンプ56を左側駆動輪用と右側駆動輪用とで共通化することが容易となる。
回転ポンプ56において、インナロータ68は、モータ回転軸25の回転を第1歯車30および第2歯車31からなる第1段で減速して駆動されることにより、中間軸35の回転と同期して回転する。一方、アウタロータ69は、インナロータ68の回転に伴って従動回転する。ここで、インナロータ68は、回転中心C2を中心として回転し、アウタロータ69は、回転中心C4を中心として回転する。インナロータ68およびアウタロータ69は異なる回転中心C2,C4を中心として回転するので、ポンプ室79の容積は連続的に変化する。これにより、吸入口77から流入した潤滑油が吐出口76から油路57に圧送される。
この回転ポンプ56は、中間軸35の回転で駆動することから、別の駆動機構を必要としないので、部品点数の低減が図れる。このように、回転ポンプ56にサイクロイドポンプを採用することにより、回転ポンプ56のコンパクト化が図れる点で有効である。
以上の構成からなる回転ポンプ56を利用することにより、このインホイールモータ駆動装置21では、以下のような潤滑機構でもって、モータ部Aを冷却するために潤滑油を供給すると共に、減速機部Bを冷却および潤滑するために潤滑油を供給する。
図1に示す潤滑機構において、回転ポンプ56の吐出口76から延びる油路57は、ハウジング22の内部を周回する油路59と連通する。この油路59は、モータ回転軸25のインボード側端部で油路60と連通する。モータ回転軸25の内部を軸線方向に沿って延びる油路60は、その軸中央部でホルダ部27に向かって延びる油路61と連通し、アウトボード側端部で第1歯車30の軸部34の油路62と連通する。
第1歯車30の軸部34の内部を軸線方向に沿って延びる油路62は、第1歯車30の内部で径方向に沿って延びる油路63と連通する。モータ回転軸25の軸中央部の油路61は、ホルダ部27の凹溝内を経由して外周端部で開口する。第1歯車30の軸部34の油路62は、第1歯車30の軸部39の端部で開口する。第1歯車30の内部の油路63は、第1歯車30の歯面で開口する。
第1段の第1歯車30および第2歯車31と第2段の第3歯車32および第4歯車33との間に位置する隔壁部80の下部と、第3歯車32の下方に位置するハウジング22の底部には、排油孔64,65が設けられている。ハウジング22の底部に設けられた排油孔65は、減速機部Bの下部に設けられた油タンク66と連通する。この油タンク66は、回転ポンプ56の吸入口77から延びる油路58と連通する。
以上の構成からなる潤滑機構による潤滑油の流れは、以下のとおりである。図1および図2において、インホールモータ駆動装置21の内部に付した白抜き矢印は潤滑油の流れを示す。
モータ部Aの冷却として、回転ポンプ56の吐出口76から圧送された潤滑油は、油路57,59を経由してその一部がモータ回転軸25の回転に伴う遠心力およびポンプ圧力によって油路60,61を経てロータ24を冷却する。さらに、ホルダ部27から潤滑油が吐出されてステータ23を冷却する。このようにして、電動モータ26の冷却が行われる。
減速機部Bの冷却および潤滑として、油路60の潤滑油は、モータ回転軸25の回転に伴う遠心力およびポンプ圧力によって油路62,63を経由して第1歯車30の歯面に流出し、第1段の第1歯車30を潤滑する。この第1歯車30の回転による跳ね掛けでもって、第1歯車30と噛合する第2歯車31を潤滑する。第1歯車30の軸部39の油路62から吐出する潤滑油は、第2段の第3歯車32を潤滑する。この第3歯車32の回転による跳ね掛けでもって、第3歯車32と噛合する第4歯車33を潤滑する。このようにして、平行軸歯車減速機38の冷却および潤滑が行われる。
なお、第1歯車30に流入した潤滑油はギヤハウジング側に飛散する。この飛散した潤滑油を第4歯車側に流すため、隔壁部80の上部に流入させるための孔を設けてもよい(図示せず)。
モータ部Aの冷却を行った潤滑油は、ケーシング67および隔壁部80の表面を伝って重力により下部へ移動する。モータ部Aの下部へ移動した潤滑油は、排油孔64から減速機部Bの下部へ流入する。減速機部Bの冷却および潤滑を行った潤滑油は、ハウジング22および隔壁部80の表面を伝って重力により下部へ移動する。減速機部Bの下部へ移動および流入した潤滑油は、排油孔65から油タンク66に貯溜される。この油タンク66に貯溜された潤滑油は、ケーシング67の油路58から吸い上げられて回転ポンプ56の吸入口77へ還流する。
最後に、この実施形態におけるインホイールモータ駆動装置21の全体的な作動原理を説明する。
図1に示すように、モータ部Aにおいて、例えば、ステータ23に交流電流を供給することによって生じる電磁力を受けてロータ24が回転する。これにより、減速機部Bにおいて、モータ回転軸25の回転が、平行軸歯車減速機38を構成する第1歯車30、第2歯車31、第3歯車32および第4歯車33によって減速され、車輪用軸受部Cに伝達される。この時、モータ回転軸25の回転が減速機部Bによって減速されるので、モータ部Aにおいて、低トルク、高速回転型の電動モータ26を採用した場合でも、後輪14(図9および図10参照)に必要なトルクを伝達することが可能となる。
減速機部Bの減速比は、第1歯車30と第2歯車31の第1段で1/2.5、第3歯車32と第4歯車33の第2段で1/4.5とすれば、減速比は約1/11と大きな減速比を得ることができる。このように、大きな減速比を得ることができる平行軸歯車減速機38を採用することにより、コンパクトで高減速比のインホイールモータ駆動装置21を得ることができる。また、平行軸歯車減速機38は、はすば歯車を用いているので、製造が容易で、コストの低減が図れ、性能面でも、静粛かつ効率のよいインホイールモータ駆動装置21を実現することができる。
この実施形態では、モータ部Aとしてラジアルギャップ型の電動モータ26を例示したが、任意の構成のモータを適用可能である。例えば、ハウジングに固定されたステータと、ステータの軸方向内側に隙間をもって対向するように配置されたロータとを備えるアキシャルギャップ型の電動モータであってもよい。
また、この実施形態では、回転ポンプ56としてサイクロイドポンプを例示したが、これに限定されることなく、例えばトロコイドポンプなど、減速機部Bの中間軸35の回転を利用して駆動する左右非対称構造の回転ポンプを採用することができる。
この実施形態における作動の説明は、各部材の回転に着目して行ったが、実際にはトルクを含む動力がモータ部Aから後輪14に伝達される。従って、前述のように減速された動力は高トルクに変換されたものとなっている。また、モータ部Aに電力を供給してモータ部を駆動させ、モータ部Aからの動力を後輪14に伝達させる場合を示したが、これとは逆に、車両が減速したり坂を下ったりするようなときは、後輪14側からの動力を減速機部Bで高回転低トルクの回転に変換してモータ部Aに伝達し、モータ部Aで発電してもよい。さらに、ここで発電した電力は、バッテリーに蓄電しておき、後でモータ部Aを駆動させることや、車両に備えられた他の電動機器などの作動に用いてもよい。
この実施形態では、図9および図10に示すように、後輪14を駆動輪とした電気自動車11を例示したが、前輪13を駆動輪としてもよく、4輪駆動車であってもよい。なお、本明細書中で「電気自動車」とは、電力から駆動力を得る全ての自動車を含む概念であり、例えば、ハイブリッドカー等も含むものである。
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
21 インホイールモータ駆動装置
22 ハウジング
35 ポンプ駆動軸(中間軸)
38 平行軸歯車減速機
55 アッセンブリ体
56 回転ポンプ
57,58 油路
67 収容部材(ケーシング)
68 回転部材(インナロータ)
69 回転部材(アウタロータ)
70 孔
76 吐出口
77 吸入口
A モータ部
B 減速機部
C 車輪用軸受部

Claims (4)

  1. モータ部と、平行軸歯車減速機で構成された減速機部と、車輪用軸受部と、前記モータ部および減速機部を収容するハウジングと、前記ハウジングに取り付けられた回転ポンプによってモータ部および減速機部に潤滑油を供給する潤滑機構とを備えたインホイールモータ駆動装置であって、
    前記回転ポンプは、左右非対称構造を有する収容部材と、前記収容部材に左右非対称状態で組み込まれる回転部材とを備えたアッセンブリ体で構成され、前記アッセンブリ体をモータ部と減速機部との間で前記ハウジングに左側駆動輪用と右側駆動輪用とで選択的に取り付けたことを特徴とするインホイールモータ駆動装置。
  2. 前記回転ポンプの収容部材は、ポンプ駆動軸が挿通される孔をモータ部側および減速機部側の両側に開口させた構成を具備する請求項1に記載のインホイールモータ駆動装置。
  3. 前記回転ポンプの収容部材は、回転ポンプからの潤滑油の吐出口と連通する油路と、回転ポンプへの潤滑油の吸入口と連通する油路とを、モータ部側および減速機部側の両側に開口させた構成を具備する請求項1に記載のインホイールモータ駆動装置。
  4. 前記回転ポンプの収容部材は、左右非対称形状を有する吐出口および吸入口が形成されたケーシングであり、前記回転ポンプの回転部材は、ポンプ駆動軸と同軸的に配置されたインナロータ、および前記インナロータの回転中心に対して偏心させた左右非対称状態で配置されたアウタロータであり、前記回転ポンプは、前記ケーシングにインナロータおよびアウタロータが組み込まれたサイクロイドポンプである請求項1〜3のいずれか一項に記載のインホイールモータ駆動装置。
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