図1は、本発明の実施の一形態を示す構成図である。図中、1は検出部、2は通信部、3は制御部、4は被制御部、5は利用者、6は通信端末である。なお、被制御部4は複数の利用者が共用するものであり、制御部3による制御に従って動作する。
検出部1は、利用者5との距離を検出する。さらに、利用者5の移動を検出してもよい。利用者5の移動は、例えば、利用者5が接近してくる、遠ざかる、あるいは停止しているなどの動きを検出する。また、接近してくる際、あるいは遠ざかる際の移動の速さを検出してもよい。さらに他の種々の検出を行ってもよい。なお、検出方法は限定されない。例えば、音波、電波、光などの強度や強度変化を利用するとよい。
図1に示す例では、一例として通信部2を利用する例を示している。この通信部2は、検出部1による利用者5との距離や、利用者5の移動の検出に用いる構成として設けてもよいし、被制御部4が利用する通信手段を通信部2として利用してもよい。例えば利用者5が通信端末6を携帯しており、通信部2が通信端末6との通信を行う場合、通信端末6からの電波の受信強度によって、装置と利用者5との距離を検出部1が検出すればよい。また、電波の受信強度の変化により、利用者5の移動、例えば利用者5が動的に近づいてくるのか、遠ざかっているのか、止まっているのかや、その移動の速さなどを検出部1が検出してもよい。通信端末6は、例えば、無線通信機能が備わっているスマートフォン、タブレット型端末、ノートパソコン等のモバイル情報端末や、非接触通信が可能なICを備えたICカード等が挙げられる。
図2は、電波の受信強度による距離及び移動の検出方法の一例の説明図である。利用者5との距離や移動の検出には、利用者5が携帯する通信端末6から通信部2が受信する電波の強度の変化を利用する方法がある。図2(A)では電波の受信強度と距離との関係の一例を示している。例えば図2(A)に示すように電波の受信強度と距離とを対応づけておき、通信部2で受信した電波の強度から対応する距離を求めればよい。
また、利用者5が移動しているか否かを判定する方法としては、通信部2が受信する電波の強度の変化を検出するとよい。図2(B)、(C)、(D)では、時間と電波の強度との関係を示している。図2(B)に示す例では、時間の経過とともに電波の強度が強くなっている。この場合、利用者5は移動していると判定するとともに、接近してくるものと判定する。図2(C)に示す例では、時間の経過とともに電波の強度が弱くなっている。この場合には、利用者5は遠ざかっているものと推定され、移動していると判定するが、接近してくるとは判定しない。また図2(D)に示す例では、時間が経過しても電波の強度があまり変わっていない。この場合は利用者5が立ち止まっていることが推定され、移動していないし、接近もしていないと判定すればよい。もちろん、これらの判定方法は一例であって、他の方法を用いて接近しているか否かを判定してもよい。
なお、利用者5が被制御部4を使用する際に、その利用者5が携帯している通信端末6から受信した電波の強度をもとに、利用者5との距離を求める際の補正値を算出しておくとよい。算出された各利用者5に対応する補正値を用いて、電波強度から利用者5との距離を求めるとよい。通信端末6の機差によって生じる距離の誤差が、補正しない場合に比べて正確に得られる。
図1に戻り、制御部3は、利用要求を受け付けている利用者に対して、利用者からの利用要求に対応する処理を被制御部4に行わせる制御を行う。また、被制御部4は複数の利用者が共用し、利用者5からの利用要求を受け付けておき、その利用者5が被制御部4を実際に使用することにより利用要求に応じた処理を完了させる。制御部3は、利用者5が実際に被制御部4を使用するまでに事前に行う予め決められた段階までの処理を進め、あるいは、処理全体について処理を進めるように、被制御部4において行われる処理を制御する。
複数の利用者5から被制御部4の利用要求を受け付けている場合には、制御部3は、いずれの利用者5からの利用要求に対する処理を先に行うかを判断し、先に行うと判断した処理を被制御部4に行わせる。基本的には、先に被制御部4を使用するであろう利用者5を特定し、その利用者5からの利用要求に対する処理を行えばよい。いずれの利用者5が先に被制御部4を利用するかを判断する際に、制御部3は各利用者5の優先度を検出部1の検出結果に従って判定し、最も優先度が高い利用者5からの利用要求に対応する処理を被制御部4に行わせる。最も高い優先度からの差が予め決められた範囲内である優先度の利用者5が複数人である場合、当該複数の利用者5からの利用要求に対応する処理を並行して被制御部4に行わせるように制御してもよい。なお、被制御部4における利用要求に対応する処理が、事前に行う予め決められた段階まで進んだ場合には、その利用要求を行った利用者5を優先度の判定の対象から外すように制御するとよい。
ある時点で複数の利用者5のうちの1人が最も優先度が高いと判断されても、次の時点では他の利用者の優先度が最も高くなる場合がある。このような場合には、それまで被制御部4に行わせていた処理を、最も優先度が高くなった利用者からの利用要求に対応する処理に切り換えて被制御部4に行わせる。その際に、それまで行っていた処理に関する情報(処理情報)を保持させておいて、再開した際に処理が継続されるようにしておくとよい。
処理情報を保持させる場合、被制御部4の記憶容量にも限りがある。例えば、優先度の判定を行っている利用者5の人数あるいは保持している処理情報の量に応じて、処理情報を保持している利用者5のうち最も優先度が低い利用者の処理情報を削除するとよい。
また、検出部1により検出されなくなった利用者5については、当分は当該利用者5が被制御部4を利用することはないと判断し、当該利用者5からの利用要求に対応する処理を中止して、それまでの処理情報を破棄するように被制御部4を制御するとよい。
それぞれの利用者5の識別については公知の種々の方法を用いればよい。この例では通信部2を有しており、この通信部2を用いて利用者5の識別を行う。予め、利用者の識別情報(以下、利用者識別情報)と、通信部2で利用者が携帯する通信端末6から取得する通信端末6の識別情報(以下、端末識別情報)とを対応付けた情報を保持しておく。動作の要求を受け付けた際に、要求を行った利用者の利用者識別情報を取得する。その後、通信部2で通信端末6と通信を行って通信端末6から端末識別情報を取得すれば、対応する利用者5が特定される。また、特定された利用者5の利用者識別情報から、その利用者5が利用要求を行っているか否かについても分かる。利用要求を行っていない利用者5が存在していても、被制御部4を利用することはなく、優先度の判定は行わない。
それぞれの利用者5について優先度を判定する際には、種々の要素を勘案して判定すればよい。優先度を判定する際に用いる要素として、利用者5との距離や、利用者5の動きについて、検出部1による検出結果を用いるとよい。例えば接近してくる動きがある利用者5は、被制御部4を使用する目的で接近してくるものとみなし、被制御部4を使用する意思があると判断すればよい。例えば立ち止まっている利用者5は、いつ被制御部4を使用するのかわからず、あるいは席に座っていて被制御部4を使用する意思が無い場合がある。これとは逆に、ある利用者5が被制御部4を使用している場合、他の利用者5が被制御部4が空くのを待っている場合がある。この場合には、待っている利用者5については、立ち止まっている状態が検出されることになり、接近してくる利用者5は、これから列に並ぶことが推定される。これらのことから、被制御部4へ接近してくる利用者5は被制御部4を使用すると推定されるものの、被制御部4の空き待ちの列に並んでいる利用者5は立ち止まっており、待っている利用者5の方が処理の優先度は高いものと推定される。この実施の一形態では、このような利用者5の行動、状況をもとに優先度を判定する要素、判定の順序を決定し、優先度を判定する。
優先度の判定に際し、まず、予め決められた領域を、ここでは順番待ち領域として設定する。この順番待ち領域は、一例としては、利用者5との距離が予め決められた距離以内の領域として設定すればよい。そして、この順番待ち領域内にいる利用者5であるか否かにより、その利用者5に対する優先度の判定に用いる要素や、要素を判定する順序を異ならせる。上述のような利用者5の行動の例では、順番待ち領域外の利用者5については、被制御部4に接近してくる動作が検出されたか否かを要素の1つとして優先度を判定するとよく、接近してくる利用者5の優先度を、立ち止まっていたり遠ざかっていたりする利用者5よりも高くするとよい。
また、順番待ち領域内の利用者5については、移動が検出されるか否か、及び利用者5との距離を要素に含めて優先度を判定するとよい。被制御部4の使用を待っている利用者5は、被制御部4に近いほど先に使用すると想定され、また、待っている利用者5は移動していないものと想定される。従って、移動している利用者5よりも移動していない利用者5の方が優先度が高く、利用者5との距離が短いほど優先度が高くなるように、優先度の判定を行うとよい。
順番待ち領域内の利用者5と順番待ち領域外の利用者5とでは、順番待ち領域内の利用者5のほうが被制御部4を先に使用するであろうと推定されることから、順番待ち領域内の利用者5のほうが順番待ち領域外の利用者5よりも優先度が高くなるように判定するとよい。
なお、順番待ちが発生するのは、ある利用者5が被制御部4を使用している場合であることから、利用者5が被制御部4を使用している場合、及び、被制御部4の使用が終了してから予め決められた時間内に限って順番待ち領域を設定し、利用者の優先度を判定する際に、利用者が前記領域内にいるか否かにより優先度の判定に用いる要素または各要素を判定する順序を異ならせるとよい。被制御部4の使用が終了してから予め決められた時間は、利用者5が交代して次の利用者5が被制御部4の使用を開始するまでの要する時間であり、予め設定しておけばよい。
優先度を判定する際に用いる要素としては、このほかにも、例えば利用者5が接近してくる際の速さを検出部1で検出して、優先度を判定する際の要素として用いるとよい。例えば図2(B)、(C)などに示した電波強度の変化の割合を、利用者5の移動速度として用いればよい。
もちろん、例示した要素以外にも、種々の要素を優先度の判定に用いてもよいことは言うまでもない。優先度の判定の際には、これらの要素を選択的に用いたり、組み合わせて用いてもよい。上述のように、順番待ち領域内とそれ以外とで、優先度の判定に使用する要素を変更し、またその要素の判定順序を変更するとよい。
図3は、優先度の判定の一具体例の説明図である。図3(A)には、優先度を判定する要素とその判定順序を規定した判定要素管理表の一例を示している。この具体例では、優先度を判定する要素として、被制御部4の利用の有無、順番待ちの有無、接近レベル、接近の有無、距離、速さ、移動の有無、その他の要素を用いることとしている。
利用の有無は、被制御部4を実際に使用している、あるいは実際に使用しようとしている状態となっているか否かを示す。例えば利用者5が実際に装置まで到達し、操作を行った場合や、装置の使用認証を行った状態となったことにより利用有りとするなどがある。この例では、利用している場合を1,まだ利用していない場合を0としている。
順番待ちの有無は、利用者5が順番待ち領域内にいるか否かを示している。順番待ち領域内であるか否かは、検出部1で検出した装置と利用者5との距離が、予め決められた距離以内であるか否かを判定すればよい。あるいは、次に説明する接近レベルのうち、ある接近レベル以内にいる利用者5については順番待ち領域にいるものとしてもよい。利用者5が順番待ち領域にいる場合に1、順番待ち領域外にいるばあいには0としている。
接近レベルは、検出部1で検出した装置と利用者5との距離をいくつかのレベルに分け、いずれのレベルに利用者5が存在するかを示す。接近レベルの値は、装置に近いほど大きな値であるものとする。
接近の有無は、利用者5が装置に接近してくる動作を検出部1が検出しているか否かを示す。この例では、接近してくる動作が検出されている場合を1、立ち止まっていたり、遠ざかっている場合を0としている。
距離は、検出部1で検出した装置と利用者5との距離を示す。これらのうち、接近レベルと距離の要素は、いずれも距離に関するものであるが、接近レベルでは概略の距離の程度を示し、この距離は数値としての距離を示している。
速度は、検出部1で検出した利用者5の移動速度を示しており、近づいている場合をプラス、遠ざかっている場合をマイナスとして示している。
移動の有無は、利用者5が移動しているか否かを示す。検出部1で利用者5が近づいてきている動作を検出した場合や、遠ざかっている動作を検出した場合には、移動しているものとする。また、立ち止まっている場合など、動作を検出していない場合に移動していないものとする。ここでは、移動していない場合を1、移動している場合を0とする。接近の有無では利用者が接近してくる動作について判定しているが、この移動の有無では、接近してくる動作とともに遠ざかっている動作についても、移動しているものと判定している点で異なる。
これらの各要素について、いずれの要素を使用し、また、どの順序で判定して優先度を判定するかを、判定順序により示している。この判定順序は、利用者5が順番待ち領域内である場合とそれ以外の場合とで異ならせている。なお、判定順序が0の要素については、優先度の判定に使用しないことを示している。また、順番待ち領域を設定しない場合には、順番待ち領域外である場合の要素及び判定順序を用いることとする。
図3(A)に示す例では、順番待ち領域以外の利用者5に対しては、利用の有無、順番待ちの有無、接近レベル、接近の有無、距離、速さの各要素を、この順で優先度の判定に用いることを示している。この場合、移動の有無については優先度の判定に用いない。また、順番待ち領域の利用者5に対しては、利用の有無、順番待ちの有無、移動の有無、距離の各要素を、この順で優先度の判定に用いることを示している。この場合、接近レベル、接近の有無、速さの各要素については優先度の判定に用いない。
優先度の判定を行う際には、例えば図3(B)に示すような表(以下、優先度判定表と呼ぶ)を用いて行うとよい。図3(B)に示した優先度判定表の例では、7人以上の利用者5から利用要求を受け付けており、そのうちの7人の利用者5が携帯する携帯端末6と通信部2が通信している場合を示している。利用の有無、順番待ちの有無、接近レベル、接近の有無、距離、速さ、移動の有無、その他の要素の各欄については上述の通りであるが、数値で得られている距離、速さなどについては、それぞれの順序に従った番号を振る。例えば距離では、距離の遠い順に1から番号を振る。すると、距離が近い利用者に対して遠い利用者よりも大きな番号が振られることになる。また、速さについても、遅い順に1から番号を振る。すると、動きが速い利用者に対して動きが遅い利用者よりも大きな番号が振られることになる。
判定値は、優先度の判定を行う要素について、その判定順に値を並べたものである。例えば利用者5が順番待ち領域にいる(順番待ちの有無が1)の場合には、利用の有無、順番待ちの有無、移動の有無、距離の順番、その他の要素の順に値を並べる。また、例えば利用者5が順番待ち領域の外にいる(順番待ちの有無が0)の場合には、利用の有無、順番待ちの有無、接近レベル、接近の有無、距離の順番、速さの順番、その他の要素の順に値を並べている。例えば利用者識別子が100の利用者については、順番待ちの有無が1であることから、利用の有無(0)、順番待ちの有無(1)、移動の有無(0)、距離の順番(5)、その他の要素(0)の値を順に値を並べると01050となる。また、例えば利用者識別子が104の利用者については、順番待ちの有無が0であることから、利用の有無(0)、順番待ちの有無(0)、接近レベル(3)、接近の有無(0)、距離の順番(2)、速さの順番(3)、その他の要素(0)の値を順に並べると0030230となる。いずれも桁数を合わせて01050000、00302300とし、判定値とする。判定値の具体例としては、各要素の値を4ビットの値として、判定の順序に従って上位から順に並べて、ここでは全体として32ビットとしている。この32ビット全体を値とみなし、判定値とすればよい。もちろん、この判定値の生成方法は一例であって、そのほかの方法で判定値を生成してもよい。
なお、事前準備完了の欄は、利用者5からの利用要求に対応する処理が、事前に行う予め決められた段階まで進んだか否かを示している。以下、利用者5からの利用要求に対応する処理のうち、事前に行う予め決められた段階までの処理を事前準備処理と呼ぶことにする。事前準備処理が、利用要求に対応する処理の全体であってもよいことは言うまでもない。利用者5からの利用要求に対応する処理のうち、事前準備処理が完了した場合には、それ以上、利用者5が被制御部4を使用する前に行うべき処理はないものとし、その利用要求を行った利用者5を優先度の判定の対象から外す。この例では、判定値を0とする。例えば利用者識別子が103、105の利用者については、判定値を00000000としている。
優先度は、判定値の大きい順とする。優先度を判定する要素は、判定する順に並べたことによって、優先される要素の値が大きいほど判定値の値が大きくなる。例えば、利用の有無が1である利用者の判定値は、利用の有無が0の利用者の判定値よりも大きな値となる。この場合、利用の有無以外の要素の値に影響されない。この例では利用者識別子が101の利用者について利用の有無が1であることから、この利用者の判定値は、利用の有無が0の他の利用者の判定値よりも大きくなる。これにより、装置を使用している利用者5からの利用要求に対応する事前準備処理が最優先されることになる。
また、利用の有無が1である利用者5について事前準備処理が完了していると判定値は0となり、そのほかの利用者5の優先度を判定することになる。この場合、利用の有無が0の利用者5について、続く順番待ちの有無の値により優先度が判定される。従って、この例では順番待ちの有無が1の利用者5(順番待ち領域内の利用者5)の方が、順番待ちの有無が0の利用者5(順番待ち領域外の利用者5)よりも優先度は高くなる。順番待ちの有無が1の利用者が複数人いる場合には、さらに、移動の有無を判定する。移動の有無の判定では、移動していない、例えば順番待ちで立ち止まっている利用者5の方が、移動している利用者5よりも優先度が高くなる。例えば、利用者識別子が100の利用者の移動の有無は0(移動有り)であり、利用者識別子が102の利用者の移動の有無は1(移動なし)であることから、この2人の判定値は、利用者識別子が102の利用者の方が利用者識別子が100の利用者よりも大きくなって、利用者識別子が102の利用者の方が優先度が高くなる。
このように、各要素の値を判定順序に従って並べた判定値を値として比較し、大きい順に並べると、優先度の欄のように順番付けがなされる。この優先度の欄の値は、小さいほど優先度が高いことを示している。この例では、利用者識別子が101の利用者の優先度が最も高い。従って、利用者識別子が101の利用者からの利用要求に対応する事前準備処理が行われるように制御すればよい。
なお、被制御部4を使用している利用者5が存在しない場合には順番待ち領域を設定せず、順番待ち領域外の場合の判定の要素及び判定順序に従って優先度を判定してもよい。
図4は、優先度の判定の具体例の説明図である。ここでは説明を簡単にすべく、接近レベルが5と4の領域について示し、接近レベルが5の領域を順番待ち領域としている。Mは被制御部4である。図4(A)において、利用者aは被制御部4を使用している。また、利用者b、cは利用者aによる被制御部4の使用が終了するのを待っており、利用者b、cとも接近レベルが5の領域に立ち止まっている。また、利用者dは接近レベルが5の領域で移動中である。
この場合、利用者aが被制御部4を使用中であることから順番待ち領域が設定されており、利用者a、b、c、dとも順番待ち領域内に存在する。従って、利用者a、b、c、dは順番待ち領域における判定の要素、判定順序により優先度の判定を行う。利用者aは被制御部4を利用していることから、利用者aの事前準備処理が完了していなければ、利用者aが最優先となる。
また、利用者aの事前準備処理が完了していれば、利用者aの判定値は0となることから、利用者a以外の利用者のうち、優先度が最も高い利用者の事前準備処理を行うことになる。順番待ちの有無では利用者b、c、dとも、この要素の値は1であり、移動の有無を判断する。すると、利用者b、cは移動しておらず、移動の有無は1となるが、利用者dは移動していることから、移動の有無は0となって、利用者dの優先度は利用者b、cの優先度より低くなる。利用者b、cについて、さらに距離を比較し、距離が近い利用者bの方が利用者cよりも優先度が高くなる。従って、被制御部4を使用している利用者aの事前準備処理が完了していれば、利用者bの優先度が最も高くなり、利用者bの事前準備処理を被制御部4に行わせることになる。
図4(B)に示す例では、利用者aが被制御部4を使用しており、利用者e、fとも接近レベルが4の領域にいる。この例では、利用者aの事前準備処理は既に終了しているものとする。利用者aが被制御部4を使用していることから順番待ち領域が設定されているが、利用者e、fは順番待ち領域の外にいる。ここで、利用者eは被制御部4に近づいているが、利用者fは遠ざかっているものとする。この場合、利用者e、fについて、利用の有無はともに0、順番待ちの有無もともに0である。2人とも順番待ち領域の外にいることから、次の判定に用いる要素は接近レベルである。これも2人とも4であり、次の判定の要素である接近の有無を判定する。すると、利用者eについては被制御部4に近づいてきている動作が検出されており、接近の有無は1である。これに対して利用者fは遠ざかっており、接近の有無は0である。従って、利用者eの方が利用者fよりも優先度が高いと判定される。
なお、順番待ち領域で判定の要素として使用する移動の有無では、利用者eのように近づいていても、利用者fのように遠ざかっていても移動の有無は移動を示す0となるが、接近の有無では近づいている動作について1としている。これは、順番待ち領域内では列に並んで立ち止まっている利用者を優先させることから移動の有無を判定し、順番待ち領域外では近づいてくる利用者は被制御部4を使用することが予測されるものの、遠ざかったり立ち止まったりしている利用者は被制御部4を使用しないであろうと予測していることから接近の有無を判定している。例えば順番待ち領域内での優先度の判定に接近の有無を使用すると、順番待ちで立ち止まっている利用者5よりも、これから列に並ぼうとして近づいてくる利用者5の方が優先されることになり、順番待ちの利用者5が被制御部4を使用する際に事前準備処理が行われておらず、さらに待つことになる。また、例えば順番待ち領域外での優先度の判定に移動の有無を用いると、近づいてきたり遠ざかっている利用者5よりも、途中で立ち止まったり、席に座ったままだったりした利用者5の方が優先されることになり、被制御部4を使用しようとしている利用者5が事前準備処理の完了まで待たされることになる。
図4(C)に示す例では、利用者g、hとも接近レベルが4の領域にいるとともに、被制御部4から同程度の距離にいる。なお、被制御部4を使用している利用者はいない状態にある。この場合、順番待ち領域は設定しない。利用者g、hとも、被制御部4への接近が検出されている。しかし、利用者hは被制御部4へ向けて接近してきており、利用者gは通り過ぎようとしている。検出部1で検出される速さは、利用者hの方が利用者gよりも速い。この場合、2人とも利用の有無は0、順番待ちの有無も0、接近レベルは4、接近の有無は1(あり)、距離も同程度となり、この2人の優先度は速さの要素で判定される。従って、利用者hの方が利用者gよりも優先度が高いと判定される。
なお、図3(A)に示した判定要素管理表および図3(B)に示した優先度判定表に示した各要素は一例であって、他の要素とともに取捨選択してもよい。また、その判定の順序も上述の例に限られるものではない。例えば、順番待ち領域における待ち時間、到達予測時間(距離÷速さ)、利用要求に対応する処理量(情報量)、過去に利用要求してから実際に被制御部4の使用を開始するまでの時間など、様々な要素がある。例えば待ち時間は、順番待ちの利用者5が被制御部4から離れる方向に並ぶとは限らない場合や、列をなさずに暗黙の順番待ちが成立している場合などでは、待ち時間が長いほど優先度が高くなるようにするとよい。待ち時間は、順番待ち領域で利用者5が停止した時刻で判断してもよい。
また、この例では距離については、得られた数値とともにレベル分けした値も用いている。これは、大まかな距離の相違でまず優先度を判定してから、細かな距離により優先度を決定するようにしたものである。例えば速さや、そのほかの数値で得られる要素についてもレベル分けするようにしてもよい。
順番待ち領域の内側、外側ともに、使用する要素の選択や、要素を判定する順序を予め決めておけばよい。使用する要素の選択、判定の順序の設定などを行う手段を設けておくとよい。あるいは、処理によって使用する要素及びその判定の順序の設定を行ってもよい。
優先度の判定に使用する要素及びその判定の順序の設定を行う処理の一例を示す。まず、優先度の判定に使用する要素とその判定の順序について、いくつかの候補を予め設定しておく。図5は、判定要素候補表の一例の説明図である。いくつかの候補は、例えば図5に示すように、判定要素候補表としてまとめておくとよい。ここでは、順番待ち領域内の利用者5について優先度を判定する際に使用する要素とその判定順序を登録した例を示している。初期状態としては、順位1で示した要素及び判定順序を使用するものとする。
利用者5が被制御部4の使用を開始するたびに、判定した優先度の順番通りに利用者5が被制御部4の使用を開始したか否かを記録しておく。そして、その記録から集計された予め決められた期間の誤判定率が、予め設定された閾値を超えると、優先度の判定で用いる要素及び判定順序を、例えば図5に示した判定要素候補表の次の候補に変更する。例えば順位1の要素及び判定順序を使用していた場合には順位2の要素及び判定順序を使用するものとして、判定要素管理表を書き換える。変更後も誤判定率が予め設定された閾値を超える場合には、さらに次の順位の要素及び判定順序を使用するように変更してゆけばよい。
図5に示した例では、順位1の要素及び判定順序で誤判定が閾値を超える場合、待っている利用者5は列を形成しておらず、利用者5の間で暗黙の了解の上で順番が形成されていることが想定される。これに対応すべく、順位2では待ち時間の要素を、距離よりも優先して判定に用いることとしている。また、順位2の要素及び判定順序でも誤判定が閾値を超える場合には、順番待ちの利用者5が動き回っている場合が想定される。これに対応すべく、順位3では移動の有無よりも待ち時間、距離を優先して判定することとしている。さらに、順位3の要素及び判定順序でも誤判定が閾値を超える場合には、順番待ちの利用者5が動き回り、暗黙の了解で順番が決定していることが想定される。これに対応すべく、順位4では待ち時間を優先して判定し、距離、移動の有無の判定順序としている。これらは一例であって、装置の使用形態や状況などに従って、予め、いくつかの要素や判定順序を設定しておけばよい。
なお、判定要素候補表に登録されているいずれの順位の要素及び判定順序でも誤判定率が閾値を超える場合には、判定要素候補表に登録されている要素及び判定順序の組み合わせのうち、誤判定率が最も低い要素及び判定順序の組み合わせを採用するとよい。図5では順番待ち領域内の場合の判定要素候補表の一例を示しているが、もちろん、順番待ち領域を設定していない場合を含めて用いる順番待ち領域外の場合の判定要素候補表についても作成しておくとよい。
優先度の判定に使用する要素及びその判定の順序の設定を行う処理の別の例としては、利用者5が被制御部4の使用を開始するたびに、判定した優先度の順で利用者5が被制御部4の使用を開始したか否かと、被制御部4の使用を開始した利用者5の順序を記録しておく。そして、記録した情報から集計される誤判定率を随時更新してゆく。また、利用者5が被制御部4の使用を開始した際の優先度判定表の情報も、履歴として保存しておく。そして、保存しておいた優先度判定表の情報を用いて、判定で用いる各要素の判定順序を総当たりで変更させながら、優先度の判定をシミュレーションする。そして、各シミュレーションで得られる判定結果の誤判定率が、現在の設定における誤判定率よりも低い判定順序が存在すれば、そのシミュレーションの際の要素及び判定順序を、その後の優先度の判定に使用するものとし、判定要素管理表に設定する。この処理を繰り返すことで、誤判定率はそれまでよりも低くなってゆく。
もちろん、これらの処理は一例であって、これらの処理以外の処理によって優先度の判定に用いる要素と判定順序を決めるようにしてもよいことは言うまでもない。
上述の説明では、優先度が最も高い利用者5について事前準備処理を被制御部4に行わせることとした。しかしこれに限らず、例えばある要素の値で判定がつかない場合に、複数の利用者について平等に扱うようにしてもよい。例えば利用の有無が1の利用者がおらず、順番待ちの有無が1である利用者5が複数人存在する場合、その複数の利用者5については平等に扱い、各利用者5に対応する事前準備処理を並行して行うように制御してもよい。
以下、本発明の実施の一形態における動作の一例について説明する。図6は、本発明の実施の一形態における基本動作の一例を示す流れ図である。この動作例では、図3に示した判定要素管理表及び優先度判定表を用いながら被制御部4の制御を行うものとして説明する。
まずS101において、現在、いずれかの利用者5によって被制御部4が使用中であるか否かを判定する。使用中であれば、S102において順番待ち領域を有効として、順番待ち領域内では領域外とは優先度の判定に用いる要素や判定順序を異ならせる。また、使用中でなければ、S103において順番待ち領域を無効とし、優先度の判定の際に順番待ち領域での要素及び判定順序は用いないものとする。なお、S101の被制御部4が使用中であるか否かの判定は、被制御部4の使用が終了した後、予め決められた時間についても使用中であると判定するとよい。この予め決められた時間は、被制御部4を使用する利用者5が交代するのに要する時間とすればよい。これにより、利用者5が順番待ちしているのにもかかわらず、被制御部4の使用終了で順番待ち領域を使用した制御が取り消されないようにする。
S104において、利用者の検知と、利用者の優先度判定表への登録を行う。通信部2が通信を行う通信端末6をそれぞれ検知して、対応する利用者5を特定する。特定した利用者5のうち、利用要求を受け付けている利用者5について、優先度判定表に登録されていない利用者5があれば、その利用者5を優先度判定表に登録する。
S105において、優先度判定表を更新する。優先度判定表に登録されている利用者5について、検出部1による検出結果に従って優先度の判定に用いる各要素の値を更新する。ここでは、順番待ち領域内の場合に用いる要素と、領域外の場合に用いる要素のいずれも更新する。もちろん、順番待ち領域内か否かを判定してから、順番待ち領域内か否かに応じて、各要素の更新を行ってもよい。
S106において、被制御部4の使用の有無を確認するとともに、優先度判定表をさらに更新する。更新後の各要素の値から判定値を算出し、優先度を判定して、最も優先度が高い利用者5を処理対象者として決定する。
S107において、処理対象者から受け付けている利用要求に対応する処理を実行する。その際に、処理対象者が変更になっている場合には、それまで行っていた処理の内容を保管させた上で、新たな処理対象者に対応する処理を実行する。また、予め決められた段階までの処理(事前準備処理)が終了した場合には、当該利用者について事前準備完了として優先度判定表を更新する。さらに、利用者5が被制御部4を使用する状態となっており、事前準備処理が完了していれば、利用要求に対応する処理の事前準備処理後の処理を実行する。このとき、利用者5は図3の優先度判定表に登録されておらず、それ故、優先度を付与されていない利用者5であってもよい。また、本実施例では、ある利用者5の事前準備処理後の処理の実行中は、優先度が最も高い別の利用者5の事前準備処理も並行して行う。被制御部4の使用が終了した場合には、優先度判定表から当該利用者5の情報を削除する。
このような処理を、予め決められた時間間隔で、あるいは予め決められたタイミングで、繰り返して行う。
図7は、優先度判定表への登録処理の一例を示す流れ図である。この処理は、図6に示す処理のうち、S104において行われる処理の一例である。S111において、通信部2が通信している通信端末6の台数から、利用者5の人数Lを取得する。そして、人数Lの利用者5のそれぞれについて、S112からS121までの処理を繰り返して行う。なお、1番目からL番目までの利用者5について、変数kにより処理対象の利用者を特定する。すなわち、繰り返しの処理では、変数kの値を1からLまで順に変えながら、S112からS121までの処理を繰り返す。
S113において、k番目の利用者5は、被制御部4の使用を許可する利用者として登録されているか否かを判断する。通信部2が通信端末6と通信を行っても、そもそも被制御部4の使用が許可された利用者が携帯する通信端末6でなければ、その利用者についての判定は不要である。従って、k番目の利用者が登録されている利用者でなければ、その利用者5についての処理は終了し、S121へ進む。
S114において、k番目の利用者5が優先度の判定の対象とする領域(判定対象領域)内にいるか否かを判定する。判定対象領域は、例えば通信部2が通信を行う領域を判定対象領域として設定してもよいし、それより狭い領域を判定対象領域として設定してもよい。ここでは、通信部2が通信を行う領域よりも狭い領域を判定対象領域として設定することとする。この場合、通信部2が通信を行っている通信端末6であっても、判定対象領域の外に存在する場合がある。
S114でk番目の利用者5は判定対象領域内であると判定された場合には、S115において、k番目の利用者5から利用要求を受け付けているか否かを判定する。利用要求を受け付けていない場合には、優先度の判定は不要であり、k番目の利用者5についての処理は終了してS121へ進む。
S116において、k番目の利用者5から受け付けている利用要求に対応する処理のうち、予め決められた段階までの処理である事前準備処理が完了しているか否かを判定する。事前準備処理が完了していれば、当該利用者5が被制御部4を使用する状態となるまでは、行うべき処理はない。従って優先度の判定を行う必要はなく、そのままS121へ進む。なお、事前準備処理が完了しているか否かは、例えば図3(B)に示した優先度判定表のうち、k番目の利用者に対応する事前準備完了の欄を参照すればよい。優先度判定表にk番目の利用者が登録されていない場合や、登録されていても事前準備完了の欄が完了(図3(B)に示した例では1)になっていない場合には、事前準備処理は未完了であると判定すればよい。
S116で事前準備処理が完了していないと判定された場合には、S117において、k番目の利用者5が優先度判定表に登録されていなければ登録する。既に登録されていれば、このS117では何もせずにS121へ進む。
S114で判定対象領域外であると判定された場合には、そのk番目の利用者は、この時点では被制御部4を使用しないものと判断する。S118において、k番目の利用者5から受け付けている利用要求に対応する事前準備処理を実行中であるか否かを判定し、実行中である場合にはS119において、その事前準備処理を中止する。S120において、事前準備処理中の情報や、これまでに事前準備処理を行って保存している情報があれば、それらを破棄する。このS120における情報の破棄は、被制御部4における記憶資源を活用するために行うものであり、破棄しなくてもよければS120の処理を行わなくてもよい。
S112からS121までの処理を、L人の利用者5のそれぞれについて行い、利用要求を受け付けていて、まだ優先度判定表に登録されていない利用者5が登録される。また、当分利用しないと判断される利用者5の事前準備処理を中止し、記憶資源を空ける。
図8は、優先度判定表の更新処理の一例を示す流れ図である。この処理は、図6に示す処理のうち、S105において行われる処理の一例である。ここでは、一例として優先度の判定で用いる要素とその判定順序について、変更する処理を含める場合を示している。S131において、優先度の判定で用いる要素とその判定順序を変更する設定か否かを判定し、変更する設定の場合にはS132において、優先度の判定で用いる要素とその判定順序を決定する処理を行う。例えば図3(A)に示した判定要素管理表を更新すればよい。優先度の判定で用いる要素とその判定順序を決定する処理については一例を上述したが、例えば、過去に行った優先度の判定結果と、実際に被制御部4を利用した利用者5とを保存しておき、これらの情報から統計的に優先度の判定で用いる要素及び判定順序を決定すればよい。もちろん、各要素を用いるか否かを含めて決定すればよい。判定要素管理表の更新は、順番待ち領域内及び順番待ち領域外のいずれも行ってよい。
S131で優先度の判定で用いる要素とその判定順序を変更する設定が行われていない場合には、順番待ち領域内及び順番待ち領域外とも、予め決められた要素及び判定順序に従うものとする。
なお、優先度の判定に用いる要素及び判定順序を変更しない構成でもよく、その場合にはS131及びS132の処理を設けず、予め判定要素管理表に登録されている要素及び判定順序に従えばよい。もちろん、優先度の判定に用いる要素とその判定順序について、ここで説明している処理とは別の処理によって予め変更しておくように構成してもよく、その場合には、変更後の要素及び判定順序が優先度の判定に用いられることになる。例えば利用者5が被制御部4を使用しない夜間や休日などに行っておくとよい。
S133からS139までの処理は、優先度判定表に登録されているそれぞれの利用者5について行う。優先度判定表に登録されている利用者5の数をNとし、1番目からN番目までの利用者5について、順番を示す変数iを変更しながら処理を繰り返す。
S134において、優先度判定表のi番目の利用者5について、優先度を判定する各要素の値を、検出部1で検出した値をもとに変更してゆく。優先度を判定する要素は、S132で変更されている場合には、変更後の各要素について求める。図3に示した例では、接近レベル、接近の有無、距離、速さ、移動の有無、その他の要素について、それぞれの値を求めて優先度判定表のi番目の利用者5の各要素の欄を更新してゆく。利用の有無、順番待ちの有無、事前準備完了などは、別途更新することとしている。なお、ここでは利用者5が順番待ち領域内であるか否かにかかわらず、いずれの場合でも優先度の判定に用いる各要素について求めることとするが、例えば順番待ち領域内であれば順番待ち領域内である場合の要素について、また順番待ち領域外であれば順番待ち領域外である場合の要素について、それぞれ更新するようにしてもよい。
S135において、順番待ち領域が有効であるか否かを判定する。これは、図6のS102あるいはS103で設定した内容を判定する。順番待ち領域が無効であれば、S138において、優先度判定表のi番目の利用者5の順番待ちの有無の欄を0(順番待ちなし)に更新し、S139へ進む。あるいは、S137において、優先度判定表のi番目の利用者5の順番待ちの有無の欄を0(順番待ち有り)に更新しておいてもよい。いずれも、順番待ち領域が無効である場合に、各利用者5の優先度の判定に順番待ちの有無の要素の値が影響しないようにしている。
S135で順番待ち領域が有効であると判定された場合には、S136において、i番目の利用者5が順番待ち領域内にいるか否かを判定する。この判定は、S132で更新された優先度判定表の距離の欄を参照して予め決められた距離と比較すればよい。あるいは接近レベルの欄を参照し、予め決められた接近レベルに達しているか否かを判定すればよい。i番目の利用者5が順番待ち領域内にいる場合には、S137において、優先度判定表のi番目の利用者5の順番待ちの有無の欄を1(順番待ち有り)に更新する。また、i番目の利用者5が順番待ち領域外にいる場合には、S138において、優先度判定表のi番目の利用者5の順番待ちの有無の欄を0(順番待ちなし)に更新する。
優先度判定表に登録されているN人の利用者について、優先度を判定する要素の値を更新したら、図8に示した処理は終了する。
図9は、処理対象者の決定処理の一例を示す流れ図である。この処理は、図6に示す処理のうち、S106において行われる処理の一例である。S141からS144の処理は、優先度の判定に用いる各要素について行う。優先度の判定に用いる要素の数をMとし、1番目の要素からM番目の要素までの各要素について、順番を示す変数mを変更しながら処理を繰り返す。この場合の要素は、順番待ち領域内の場合及び順番待ち領域外の場合のいずれかで用いられれば、S141からS144で処理を行う要素として含めることとする。なお、順番待ち領域を無効とする設定の場合には、順番待ち領域外の場合に用いる要素を処理対象としてもよい。
S142において、m番目の要素は加工する要素か否かを判定する。例えば図3(B)に示した優先度判定表において優先度の判定に用いる要素のうち、接近レベルや接近の有無は値をそのまま用いるが、距離や速さなどについては、順序づけを行う加工を行っている。S142では、m番目の要素が加工を行う要素であるか否かを判定し、加工を行う要素であれば、S143において、m番目の要素について加工した値を優先度判定表に登録する。例えば距離の要素では、得られている距離の値を、遠い順に順位付けして、近い利用者5ほど大きな値となるように加工する。また、速さの要素では、得られている速さの値を、速さが遅い順に順位付けして、速く動いている利用者5ほど大きな値となるように加工する。なお、S142でm番目の要素が加工を行う要素でなければ、S144へ進んで次の要素の処理に移る。
M個の要素についてS141からS144の処理を繰り返して行ったら、S145において、利用者5が被制御部4の使用を開始したか否かを判定する。例えば利用者5が被制御部4を使用する操作を行った場合や、認証を行った場合など、種々の場合があるが、被制御部4を使用する利用者5が特定されればよい。被制御部4の使用を開始した場合には、S146において、被制御部4の使用を開始した利用者5に対応する優先度判定表の利用の有無の欄を利用有りに変更し、S147へ進む。なお、被制御部4の使用を開始した利用者5と優先度とを記録しておき、図8のS132で説明した、優先度の判定で用いる要素とその判定順序を決定する際に、過去の判定結果として利用するとよい。もちろん別の処理で要素とその判定順序を決定する際において利用してもよいことは言うまでもない。S145で被制御部4の使用を開始していない、あるいは既に使用が開始されていると判定される場合には、そのままS147へ進む。
S147からS149の処理は、優先度判定表に登録されている利用者5の数だけ行う。登録されている利用者5の数をNとし、1番目からN番目の各利用者5について、順番を示す変数jを変更しながら処理を繰り返す。
S148において、これまでに設定された優先度の判定で用いる要素の値をもとに、その判定順序に従って各利用者5の判定値を求める。その際に、順番待ち領域を有効としている場合には、優先度判定表の順番待ちの有無の欄を参照し、順番待ち領域にいる利用者5に対しては、判定要素管理表の順番待ち領域内の場合の要素及び判定順序を用いて判定値を求める。また、順番待ち領域が無効の場合、あるいは、順番待ち領域が有効でも優先度判定表の順番待ちの有無の欄が順番待ち領域外であることを示している利用者5に対しては、判定要素管理表の順番待ち領域外の場合の要素及び判定順序を用いて判定値を求める。判定値の求め方については種々の方法を利用してよいが、例えば図3(B)を用いて説明した、優先度の判定を行う要素を判定順序の順に値を並べて求める方法を用いるとよい。なお、優先度判定表の事前準備完了の欄が1,すなわち事前準備処理が完了している場合には、判定値は0として優先度の判定対象から外す。
優先度判定表に登録されている利用者5の数だけS147からS149の処理を繰り返して行ったら、S150において、各利用者5の判定値が大きい順に優先度を割り当てて、優先度判定表の優先度の欄を更新する。そして、S151において、最も優先度が高い利用者5を処理対象者として決定する。例えば図3(B)に示した例のように、優先度が高い順に1,2,3,…と優先度を割り当てた場合、優先度が1の利用者5を処理対象者として決定する。なお、判定値が等しい利用者5が複数存在する場合もある。判定値が最大となる利用者5が複数存在する場合には、その複数の利用者5を処理対象者としてもよい。
図10は、利用要求の実行処理の一例を示す流れ図である。この処理は、図6に示す処理のうち、S107において行われる処理の一例である。S161において、図6のS106(図9に示した処理)において決定した処理対象者からの利用要求に対応する処理を、現在、被制御部4で実行中であるか否かを判定する。被制御部4で現在実行している処理が処理対象者からの利用要求に対応する処理である場合には、S163において、現在実行中の処理対象者からの利用要求に対応する処理を継続する。
例えば、各利用者5の優先度に変更が生じて、それまで処理対象者であった利用者5とは異なる利用者5が新たに処理対象者となる場合がある。このような場合に、S161で現在実行中の処理が処理対象者からの処理要求に対応する処理でないと判定される。具体的な一例としては、ある利用者5が近づいてきていたが立ち止まったり通過して遠ざかってしまい、別の利用者5が近づいてきた場合などがある。被制御部4で現在実行している処理が、処理対象者からの処理要求に対応する処理でないとS161で判定された場合には、S162において、被制御部4にそれまで実行していた処理の情報を保存させ、S163において、新たな処理対象者からの利用要求に対応する処理を被制御部4に実行させる。新たな処理対象者からの利用要求に対応する処理が過去に途中まで実行され、処理の情報が保存されている場合には、その保存されている処理の情報をもとに、処理を再開する。
なお、処理の情報を保存させる場合、別の処理の情報を削除し、情報を保存する資源が不足する場合に対処してもよい。例えば、最も古い処理の情報を削除するとよい。あるいは、処理の情報を保存している利用者5のうち、最も優先度が低い利用者5からの利用要求に対応する処理の情報から削除してもよい。または、事前準備処理が完了している利用者5を除く利用者5について、優先度が最も高い利用者5からp番目までの利用者5からの利用要求に対応する処理については処理の情報の保存に対応し、それ以外の処理の情報について削除するようにしてもよい。ここで、pは予め決められた値とするほか、設定により変更してもよいし、記憶資源の残量に応じて決定するなど、種々の方法により決定してもよい。
また、図9のS151で複数の利用者5を処理対象者として決定した場合には、複数の処理対象者からの利用要求に対する処理を並行して実行するように制御するとよい。
S164において、処理対象者からの利用要求に対応する処理について、事前準備処理が完了したか否かを判定する。事前準備処理が完了していない場合には、そのままS166へ進む。
処理対象者からの利用要求に対応する事前準備処理が完了している場合には、S165において、処理対象者について優先度判定表の事前準備完了の欄を更新する。事前準備完了となった利用者5については、この後、判定値は0とされ優先度の判定対象から外される。その後、優先度が最も高い他の利用者5からの利用要求に対応する処理を優先して実行する。
S166において、被制御部4が使用中となっているか否かを判定し、被制御部4が使用されている状態となっていない場合には、図10に示した処理を終える。被制御部4が使用されている状態となっているか否かは、制御部3が被制御部4に動作状態を問い合わせて、その返答により判断すればよい。
被制御部4が使用中の状態である場合には、S167において、被制御部4を使用する利用者5(使用者)からの利用要求に対応する処理について、事前準備処理が完了しているか否かを判定する。この判定は、使用者である利用者5について優先度判定表の事前準備完了の欄を参照すればよい。例えば優先度判定表に登録されていない利用者5が被制御部4を使用している場合などを含めて、被制御部4に問い合わせて、その回答により判定してもよい。事前準備処理が完了していない場合には、そのまま事前準備処理を続けることとし、図10に示した処理を終える。
使用者について事前準備処理が完了していれば、事前準備処理後の処理を行う。S168において、事前準備処理後の処理が完了したか否かを判定し、完了していなければS169において、事前準備処理後の処理を実行中であるか否かを判定する。事前準備処理後の処理が完了しておらず、実行中でもなければ、事前準備処理後の処理はまだ実行されていない状態である。S170において、使用者についての事前準備処理後の処理を被制御部4に開始させ、図10に示した処理を終える。また、S169で事前準備処理後の処理を実行中であると判定した場合には、そのまま事前準備処理後の処理の実行を続けることとし、図10に示した処理を終える。
S168で事前準備処理後の処理が完了したと判定された場合には、S171において、使用者が優先度判定表に登録されている利用者5であるか否かを判定する。使用者が優先度判定表に登録されている利用者5であれば、S172において、使用者である利用者5を優先度判定表から削除し、処理を終える。また、S171で使用者が優先度判定表に登録されていないと判定された場合には、そのまま処理を終える。事前準備処理後の処理が完了したか否かは、被制御部4に問い合わせを行ってもよいし、完了の際に被制御部4から通知を受けるようにしてもよい。
なお、上述の動作例で示す処理は、予め決められた時間毎、あるいは予め決められたタイミングで、繰り返して行われる。また、上述の動作例は一例であって、種々の変形を行ってもよいことは言うまでもない。
図11は、本発明の実施の一形態における変形例を示す構成図である。図中、7は検知部である。図1に示した構成例では、通信部2が受信する電波強度を用いて、優先度の判定に用いる各種の要素について検出部1が検出している。この場合、順番待ちの利用者5が携帯する通信端末6からの電波強度と変わらない電波強度の通信端末6を携帯する利用者5が周囲にいても、区別されることなく順番待ちの利用者5として判定してしまう場合がある。
図11に示した構成では、順番待ちの利用者5を検知する検知部7を、別途設けた例を示している。なお、検知部7における順番待ちの利用者5の検知方法は限定されない。例えば、音波、電波、光などの強度や強度変化を利用するとよい。
検知部7が電波を利用して順番待ちの利用者5を検知する場合、通信部2のように利用者5が携帯する通信端末6からの電波を受信すればよいが、その際に、順番待ちの利用者5が検知されるように工夫するとよい。図12は、検知部の一例の説明図である。図中、8はシールドである。例えば図12(A)や(B)に示すように、順番待ちの利用者5を検知する領域(検知領域)を除いて、検知部7をシールド8により囲み、検知部7が検知領域以外で利用者5を検知しないようにするとよい。例えば、利用者5が順番待ちのために並ぶ領域を検知領域としておけば、それ以外の位置に利用者5がいても、順番待ちの利用者5として誤って検知することはない。なお、シールド8を狭めたり広げたりして、検知領域を調節するとよい。
図12(C)に示した例は、図12(B)に示した例を実際の装置へ適用した場合の一例を示したものである。矩形で示した装置の前に、装置に向かって左方向に順番待ちの利用者が並ぶことをルールとして想定し、装置に向かって左側が検知部7の検知領域となるように、検知部7にシールド8を配している。この例の場合、装置を使用している利用者から、装置に向かって左側に並んでいる利用者について、順番待ちの利用者であるとして検知される。例えばルールに反し、装置を使用している利用者の後ろに立っている利用者や、装置に向かって右側に立っている利用者が、順番待ちの利用者として誤検知されることはない。
なお、順番待ち領域としてどのような領域を設定するかは、装置の利用形態などを考慮して決定すればよく、特に限定されない。オフィスのレイアウトなどに応じて適宜設定すればよい。
図12(D)に示した例では、検知部7を2つ用いた例を示している。装置の異なる位置に配置して、両者の検知条件により順番待ちの利用者を検知する例を示している。この例では、矩形で示した装置の前に検知部7−1を、後ろに検知部7−2を配置し、それぞれの検知範囲を円により示している。検知条件として、検知部7−1で検知したが検知部7−2では検知していない利用者を順番待ちの利用者として検知することとしている。この検知条件により順番待ち領域となる範囲に斜線を付して示している。この例では、装置の前にいる利用者が順番待ちの利用者として検知され、装置の後ろや横にいる利用者は順番待ちの利用者としては検知されない。もちろん、条件を変更すれば装置の後ろ側や横が順番待ち領域となるし、それぞれの検知部7の配置を変更して、例えば装置の横方向に順番待ち領域を設定してもよい。
なお、図12(D)に示した2つの検知部7のうち、一方を通信部2で代用してもよい。例えば検知部7−1を通信部2で代用し、通信部2における受信強度が予め決められた強度以上の領域であって検知部7−2で検知されない領域を順番待ち領域とすると、図12(D)に示した順番待ち領域での利用者の検知が行われる。もちろん、検知部7−2で検知される領域であって通信部2における受信強度が予め決められた強度以上の領域でない領域や、通信部2における受信強度が予め決められた強度以上の領域であって検知部7−2も検知される領域を順番待ち領域して設定してもよい。
また、上述の各例では検知部7は指向性を有しておらず、シールド8によって指向性を持たせているが、指向性を有する検知方法であれば、その指向性を利用して順番待ち領域を設定し、順番待ちの利用者5を検知すればよい。いずれの例においても、通信部2だけで順番待ち領域を設定する場合に比べて、状況に応じて順番待ち領域が限定され、順番待ちしていない利用者が誤検出されなくなる。
図13は、本発明の実施の一形態における応用例の説明図である。図中、11は画像形成装置、12は端末装置、13は通信路である。図1、図11に示した構成を含む応用例として、画像形成装置11を示している。この画像形成装置11は、検出部1、通信部2、制御部3を含み、これ以外の図示しない画像形成部およびその制御手段、使用する際の認証機構などの種々の構成を被制御部4として有している。例えば通信路13を通じて画像形成の要求を受け付け、受け付けた画像形成の要求に対して、通信路13を通じて画像を形成する情報を取得して画像を生成し、画像形成部で用紙等の媒体上に画像を形成して出力する。
利用者5は、この例では端末装置12から通信路13を通じて画像形成装置11に対して画像形成の要求を行う。あるいは、端末装置12を用いずに、利用者5が携帯している通信端末6から画像形成装置11に対して画像形成を要求する構成であってもよい。画像形成の要求の際には、利用者識別情報が付される。画像形成の要求を画像形成装置11に対する利用要求とすればよい。
画像形成の要求に対して行われる処理は、画像を形成する情報を取得し、その情報に従って画像を生成し、生成した画像を媒体上に形成する処理となる。複数の利用者が画像形成装置11を共用している場合、画像形成装置11で情報を画像形成して出力させた媒体を他人が持ち去るなどの不具合が生じることがある。この場合、秘匿性が損なわれることになる。対策として、利用者が画像形成装置11に対して認証の操作を行ってから画像を形成し、出力することが行われている。
このような利用形態を取る場合、画像を形成する情報を取得し、画像を生成するまでの処理は、画像形成部で画像を形成する前に行っておき、認証の後に画像を形成して出力することになる。画像を形成する情報を取得し、画像を生成するまでの処理については、事前準備処理として予め行っておくとよい。利用者5が画像形成装置11を使用する際に、事前準備処理が予め行われていると、事前準備処理を予め行わなかった場合に比べて待ち時間が減少する。
複数の利用者5から利用要求を受け付けている場合、例えば受付順に事前準備処理を行ったとしても、利用要求の受付順に利用者5が画像形成装置11に到達して認証を行うとは限らない。最後に受け付けた利用要求を行った利用者5が最初に画像形成装置11に対して認証を行い、使用を開始する場合もある。従って、画像形成装置11への到着するであろう順に事前準備処理を行えば、受付順に事前準備処理を行う場合に比べて、認証を行った利用者5が画像形成装置11の前で待つ時間が減少する。このような事前準備処理の処理順序を、上述の実施の一形態で説明した構成により制御している。
画像形成を要求した利用者5が通信端末6を携帯して画像形成装置11に近づいてくると、通信部2が受信する電波強度などから、検出部1は、画像形成装置11と利用者5との距離や、利用者5が接近してくるか否かや速さなどを検出する。検出された要素、さらに他の要素などとともに優先度を判定する。優先度が最も高い利用者5が最も速く画像形成装置11に到達する利用者であるとみなして処理対象者とし、事前準備処理を行う。例えば処理対象者が要求した画像形成の処理について、画像を形成する情報を取得し、画像を生成するまでの処理を予め行っておく。画像を形成する情報を取得する処理は、画像形成の要求とともに受け取る場合もあるが、通信路13に接続されているサーバや他の装置等から取得する場合もある。なお、優先度が最も高い利用者5が複数人存在する場合には、その複数の利用者5から受け付けている画像形成の要求に対する事前準備処理を並行して行えばよい。
利用者5が画像形成装置11まで到達し、認証を行うと、その利用者5が画像形成を要求した画像について、事前準備処理の後の処理、すなわちここでは事前準備処理により準備されている画像を形成して出力する処理を行い、要求された処理は終了する。事前準備が終了しても、画像を形成して出力するのは認証後であることから、他人による持ち去り等は生じず、秘匿性は保たれる。また、事前準備処理が行われた分だけ、事前準備処理を行わなかった場合に比べて待ち時間は減少する。例えば利用者5が画像形成装置11に到達した時点で事前準備処理が完了していない場合でも、処理を進めておく分だけ、事前準備処理を行わなかった場合に比べて待ち時間は減少する。
上述のように、画像形成装置11に先に到達する利用者5を特定して事前準備処理を行っておくことになり、その際に優先度を用いている。この優先度の判定には、例えば図3を用いて説明した例では、距離だけでなく、利用者5が接近してくるか否かや、その速さなどを勘案している。例えば、立ち止まっている利用者5よりも、画像形成装置11に近づいてきている利用者5の方が先に画像形成装置11を使用するであろうと予測する。また、例えば画像形成装置11に近づいてくる速さが速い利用者5の方が、先に画像形成装置11を使用するであろうと予測している。これらの要素を加味して優先度を判定することで、単に距離だけで利用者5の優先度を判定する場合に比べて、画像形成装置11を使用する利用者5の順序を予測する確度を高めている。
しかし、ある利用者5が画像形成装置11を使用して画像を形成して出力させている間に、別の利用者5が画像形成装置11を使用すべく画像形成装置11に到達すると、画像形成装置11の周囲に順番待ちの列が生まれる。この順番待ちの利用者5は、近々、画像形成装置11を使用するのであり、その利用者5からの利用要求に対する処理は優先して行っておくとよい。ここで、順番待ちの利用者5は画像形成装置11の近辺に立ち止まって画像形成装置11が空くのを待っており、近づいてくるなどの動作は検出されない。従って、順番待ちの利用者5については、立ち止まっていて移動していない利用者5の方が先に画像形成装置11を利用するものと予測する。すなわち、順番待ち領域では、移動していない利用者5を優先し、さらに画像形成装置11に近いほど優先度を高くする。また、順番待ち領域外では、上述のように近づいてきている、さらに速く近づいている利用者5を優先すればよい。このように、順番待ち領域の内と外で、優先度の判定に使用する要素や、その判定順序を異ならせている。
画像形成装置11が使用されていない場合には、順番待ちの列は生じないであろうと推測される。このような場合、順番待ち領域を設けず、よって近づいてくる動作などの順番待ち領域外の場合の優先度の判定を一律に行えばよい。
なお、優先度の判定に利用する要素やそれらの要素の判定順は、例えば図3に示した例に限られるものではなく、予め設定しておけばよいし、過去の実績などから要素の取捨選択や判定順を変更する処理を行ってもよい。
利用者5が画像形成装置11に到達して認証を行う前に事前準備処理が終了している場合、事前準備処理の先の処理である画像を形成する処理は行わないが、他の処理であれば実行する能力を有している。事前準備処理が完了したら、その事前準備処理の画像形成要求を行った利用者5については優先度の判定から外し、他の利用者5からの画像形成の要求に対する事前準備処理を行うように制御している。認証を行った利用者5からの画像形成の要求について、認証を行っても事前準備処理が終了していない場合には、その利用者5からの画像形成の要求に対する処理を最優先で実行する。
もちろん、利用者5の動きによって優先度は変化する。例えば、画像形成装置11のそばに並んでいた最も優先度が高い利用者5が、画像形成装置11から離れてゆく状況になると、当該利用者5によって画像形成装置11が使用されないと判断される。このような場合には、他の利用者5の方が優先度が高くなり、それまでの事前準備処理を中断してこれまで処理した情報を保存しておき、新たに最も優先度が高くなった利用者5の画像形成の要求に対して事前準備処理を行う。
事前準備処理を中断してこれまで処理した情報を保存する場合、画像形成装置11に備えられている記憶資源も有限であることから、保存していた情報を削除する場合も生じる。この場合、例えば情報を保存している画像形成の要求を行った利用者5のうち、最も優先度が低い利用者5からの画像形成の要求についての情報を削除する。あるいは、優先度がp番目までの利用者5からの画像形成の要求に対応する処理については処理の情報の保存に対応し、それ以外の処理の情報について削除するようにしてもよい。pは、固定、あるいは設定により予め決めておくほか、記憶資源の残量に応じて決まるようにしてもよい。なお、利用者5が判定対象領域から外へ出てしまうと、その利用者5は画像形成装置11をすぐには使用しないものと判断し、当該利用者5からの画像形成の要求に対する事前準備処理を行って情報を保存している場合には、その情報は削除する。
上述の説明では、画像形成装置は媒体に画像を形成して出力する機能を有するものとして説明しているが、これに限らず、例えば画像読取手段を有する構成や、さらにファクシミリ通信機能を有する構成などであってもよい。また、ここでは画像形成装置への応用例について示したが、これに限らず、複数の利用者が共用する種々の機器に対して適用してよいことは言うまでもない。
また、上述の説明では、利用者5が画像形成装置に到達して認証を行った後に画像の形成を行う例を示したが、これに限られるものではない。例えば、端末装置12及び通信端末6が、スマートフォンやタブレット端末などの携帯端末装置である場合、この携帯端末装置から画像形成の要求を行い、利用者5が画像形成装置11に近づいて、認証なしで画像形成出力する場合にも応用してよい。例えば、携帯端末装置は、この携帯端末装置から一番近い画像形成装置11をBlueTooth(登録商標)等の無線通信の距離検知により抽出し、この画像形成装置11の例えばIPアドレスを取得することで、画像形成出力する画像データを送信する画像形成装置11を特定する。そして、特定した画像形成装置11に対して、携帯端末装置からWiFi経由やBlueTooth(登録商標)等の無線通信で画像データを送信し、認証なしで画像形成出力を得る。この場合の事前準備処理についても、前述したとおり、利用要求に対応する処理の一部であっても全体であってもよく、例えば、画像形成出力までを事前準備処理としてもよい。
図14は、本発明の実施の一形態及びその変形例、応用例で説明した装置の機能をコンピュータプログラムで実現した場合におけるコンピュータプログラム及びそのコンピュータプログラムを格納した記憶媒体の一例の説明図である。図中、21はプログラム、22はコンピュータ、31は光磁気ディスク、32は光ディスク、33は磁気ディスク、34はメモリ、41はCPU、42は内部メモリ、43は読取部、44はハードディスク、45はインタフェース、46は第1通信部、47は第2通信部、48は画像形成部である。
上述の本発明の実施の一形態及びその変形例、応用例で説明した装置の機能の全部あるいは部分的に、コンピュータが実行するプログラム21によって実現してもよい。その場合、そのプログラム21およびそのプログラムが用いるデータなどは、コンピュータによって読み取られる記憶媒体に記憶させておけばよい。記憶媒体とは、コンピュータのハードウェア資源に備えられている読取部43に対して、プログラムの記述内容に応じて、磁気、光、電気等のエネルギーの変化状態を引き起こして、それに対応する信号の形式で、読取部43にプログラムの記述内容を伝達するものである。例えば、光磁気ディスク31、光ディスク32(CDやDVDなどを含む)、磁気ディスク33、メモリ34(ICカード、メモリカード、フラッシュメモリなどを含む)等である。もちろんこれらの記憶媒体は、可搬型に限られるものではない。
これらの記憶媒体にプログラム21を格納しておき、例えばコンピュータ22の読取部43あるいはインタフェース45にこれらの記憶媒体を装着して、コンピュータからプログラム21を読み出し、内部メモリ42またはハードディスク44(磁気ディスクやシリコンディスクなどを含む)に記憶し、CPU41によってプログラム21を実行し、上述の本発明の実施の一形態及びその変形例、応用例で説明した装置の機能が全部又は部分的に実現される。あるいは、通信路を介してプログラム21をコンピュータ22に転送し、コンピュータ22では第1通信部46でプログラム21を受信して内部メモリ42またはハードディスク44に記憶し、CPU41によってプログラム21を実行して実現してもよい。
なお、例えば図3に示した各種の情報や、利用要求、処理中の各種情報及び処理を中断して保存する情報などは、内部メモリ42やハードディスク44等を利用して記憶しておけばよい。利用者に関する登録情報を内部メモリ42に記憶する場合、電源が切断されても消去されない不揮発性のメモリ領域に記憶させておくとよい。
また、コンピュータ22には、図1に示した通信部2に対応する第2通信部47が接続されている。また、図1に示した被制御部4あるいは被制御部4の一部として機能する構成として、この例では上述の実施の一形態の応用例で説明した画像形成部を接続した例を示している。第2通信部47及び画像形成部48は、バスに直接接続されるほか、インタフェース45を介して接続されていてもよい。第1通信部46と第2通信部27は1つの通信部を共用するように構成してもよい。また、例えば図11に示した変形例における検知部7についても、バスあるいはインタフェース45に接続されていてよい。
このほかインタフェース45を介して様々な装置を接続してもよい。例えば、利用者の認証方法によっては、認証のための通信機器を接続していてよい。また、利用者が操作する各種のキー入力の受付手段、利用者に各種の情報を提示し、さらに形成する画像を予め提示する表示手段など、種々の装置がインタフェース45を介して、あるいはバスに直接、接続されていてもよい。
なお、各構成が1台のコンピュータにおいて動作する必要はなく、複数のコンピュータが協働して処理が実行されるように構成してもよい。また、用途に応じて、その用途におけるプログラムと一体として構成してもよい。さらに、部分的にハードウェアによって構成してもよいし、あるいは、すべてをハードウェアで構成してもよい。