以下、1つまたはそれ以上の実施形態を、適宜図面を参照して説明する。これらの図は、正確な縮尺ではない。そして、全図にわたって、同一または同様の要素には、同じ符号を付している。
1つの実施形態に係る半導体発光デバイスは、基板と、前記基板に接して設けられた第1の光反射構造と、前記第1の光反射構造を取り囲む埋め込み層と、前記第1の光反射構造上に設けられた、活性層を含む光半導体構造と、前記光半導体構造上に設けられた第2の光反射構造と、前記光半導体構造に通電するための一対の電極とを備える。前記第1の光反射構造の表面と前記埋め込み層の表面は、同一平面内に含まれる。
1つ又はそれ以上の実施形態において、前記第1の光反射構造及び第2の光反射構造の一方または両方は、屈折率が面内方向に周期的に変化する構造体を含む。
1つ又はそれ以上の実施形態において、前記第1の光反射構造及び第2の光反射構造の一方または両方は、屈折率が互いに異なる2つの材料を交互に積層した積層体から構成される。
1つ又はそれ以上の実施形態において、前記第1の光反射構造と第2の光反射構造の一方は、屈折率が互いに異なる2つの材料を交互に積層した積層体から構成され、他方は、屈折率が面内方向に周期的に変化する構造体層から構成される。
1つ又はそれ以上の実施形態において、前記基板は、前記光半導体構造を構成する半導体とは異種の半導体材料で構成されている。
1つ又はそれ以上の実施形態において、前記基板は、シリコン基板である。
1つ又はそれ以上の実施形態において、前記第1の光反射構造の反射率と、前記第2の光反射構造の反射率とは、異なる。
1つ又はそれ以上の実施形態において、前記活性層は、第1の反射構造より狭い。
1つ又はそれ以上の実施形態において、前記活性層は、第1の反射構造より広い。
1つ又はそれ以上の実施形態において、前記活性層は、イオン注入された半導体により取り囲まれている。
1つ又はそれ以上の実施形態において、前記光半導体構造は、III−V族化合物半導体を含む。
1つ又はそれ以上の実施形態において、前記第2の光反射構造は、前記一対の電極のうちの一方の電極を兼ねる金属層を含む。
1つ又はそれ以上の実施形態において、前記第1の光反射構造は、透明電極をさらに備え、前記基板上には、前記透明電極を囲包して前記透明電極と電気的に接続する金属層が形成されている。
1つ又はそれ以上の実施形態において、前記第1の光反射構造は、金属グリッド電極をさらに含む。
1つ又はそれ以上の実施形態において、前記基板内に、前記第1の光反射構造に対応する領域を囲むように配置された放熱性金属が埋設されている。
1つ又はそれ以上の実施形態において、半導体発光デバイスは、前記基板と前記第1の光反射構造との間に及び/又は前記第1の光反射構造と前記光半導体構造との間に形成された熱伝導性誘電体層をさらに含む。
1つ又はそれ以上の実施形態において、前記第1の光反射構造と第2の光反射構造の少なくとも一方がレンズ効果を有している。
1つ又はそれ以上の実施形態において、前記光半導体構造は、電流狭窄構造を含み、前記電流狭窄構造は、前記光半導体構造内に設けられた、抵抗が相対的に高い高抵抗領域と抵抗が相対的に低い低抵抗領域とを含む電流狭窄層により形成され、前記高抵抗領域と低抵抗領域は、前記構造体層における前記周期に対応する周期で配置され、前記一対の電極のうちの一方の電極は、前記電流狭窄層の表面の一部と接触している。
他の実施形態において、1つの基板と、前記基板上に形成された半導体発光デバイスと半導体受光デバイスを備える光半導体デバイスが提供される。この光半導体デバイスにおいて、前記半導体発光デバイスは、前記基板に接して設けられた第1の光反射構造と、前記第1の光反射構造を取り囲む埋め込み層と、前記第1の光反射構造上に設けられた、活性層を含む光半導体構造(半導体発光構造)と、前記光半導体構造上に設けられた第2の光反射構造と、前記光半導体構造に通電するための一対の電極とを備え、前記第1の光反射構造の表面と前記埋め込み層の表面は、同一平面内に含まれる。他方、前記半導体受光デバイスは、前記基板上に設けられた、活性層を含む光半導体構造(半導体受光構造)と、前記基板と前記光半導体構造との間に配置された、光が前記基板側から入射される、屈折率が周期的に変化する第1の構造体層と、前記光半導体構造の上側に配置された、屈折率が周期的に変化する第2の構造体層を含む光反射構造と、前記光半導体構造に通電するための一対の電極とを備える。前記半導体発光デバイスにおける光半導体構造と、前記半導体受光デバイスにおける光半導体構造とは、同一の層構造を有し、同一の半導体材料で形成されている。
さらに他の実施形態において、基板上に第1の光反射構造および該第1の光反射構造を取り囲む埋め込み層を前記第1の光反射構造表面及び前記埋め込み層表面が同一平面をなすように形成する工程と、前記第1の光反射構造上に活性層を含む光半導体構造を接合する工程と、前記光半導体構造上に第2の光反射構造を形成する工程とを含んでなることを特徴とする半導体発光デバイスの製造方法が提供される。
別の実施形態に係る半導体発光デバイスは、基板と、活性層を含む光半導体構造と、前記基板と前記光半導体構造との間に配置された第1の光反射構造と、前記光半導体構造の上側に配置された第2の光反射構造と、前記光半導体構造に電流を印加するための一対の電極を備える。前記光半導体構造は、電流狭窄構造を備える。前記第1の光反射構造は、屈折率が周期的に変化する第1の構造体層を含み、前記第2の光反射構造は、前記第1の光反射構造の光反射率よりも高い反射率を有する。前記基板は、前記活性層を形成する半導体材料が有するバンドギャップエネルギーよりも大きいバンドギャップエネルギーを有する半導体材料で形成されている。
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記第2の光反射構造は、半導体多層反射膜を含む。
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記半導体多層反射膜は、屈折率が互いに異なる2つの半導体層を交互に積層した積層体から構成される。
1つまたはそれ以上の実施形態において、半導体発光デバイスは、前記第1の構造体層上に形成された透明電極をさらに備え、前記基板上には、前記透明電極を囲包して前記透明電極と電気的に接続する金属層が形成されている。
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記半導体基板内に、前記第1の光反射構造に対応する領域を囲むように配置された放熱性金属が埋設されている。
1つまたはそれ以上の実施形態において、半導体発光デバイスは、前記基板と前記第1の光反射構造との間に形成された第1の熱伝導性誘電体層、および/又は前記第1の光反射構造と前記光半導体構造との間に形成された第2の熱伝導性誘電体層をさらに含む。
1つまたはそれ以上の実施形態において、半導体発光デバイスは、前記第1の構造体層上に形成された金属グリッド電極をさらに含む。
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記第2の光反射構造は、屈折率が周期的に変化する第2の構造体層を含む。
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記第2の構造体層は、周期的に二次元配置された、屈折率が相対的に高い高屈折率領域と、屈折率が相対的に低い低屈折率領域とにより構成されている。
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記第2の構造体層は、フォトニック結晶により構成されている。
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記電流狭窄構造は、前記光半導体構造内に設けられた、抵抗が相対的に高い高抵抗領域と抵抗が相対的に低い低抵抗領域とを含む電流狭窄層により形成され、前記高抵抗領域と低抵抗領域は、前記第2の構造体層における前記周期に対応する周期で配置され、前記一対の電極のうちの一方の電極は、前記電流狭窄層の表面の一部と接触している。
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記低抵抗領域は、前記光半導体構造の半導体を含み、前記高抵抗領域は、イオンが注入された前記半導体を含む。
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記第2の光反射構造は、前記一方の電極を兼ねる金属層を含む。
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記第1の構造体層は、周期的に二次元配置された、屈折率が相対的に高い高屈折率領域と、屈折率が相対的に低い低屈折率領域とによりそれぞれ構成されている。
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記第1の構造体層は、フォトニック結晶により構成されている。
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記光半導体構造は、III−V族半導体化合物を含む。
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記基板は、前記光半導体構造を構成する半導体とは異種の半導体材料で構成された異種基板である。
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記異種基板は、シリコン基板である。
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記第1の構造体層は、前記基板上に形成された、基板と同種の半導体により囲包され、かつその表面が前記同種半導体の表面を含む面に含まれるか、該面よりも下側に位置している(前記同種半導体により埋め込まれている)。あるいは、別の実施形態において、前記第1の構造体層は、前記基板内に設けられた凹部内に設けられ、その表面は前記基板の表面を含む面に含まれるか、該面よりも下側に位置している。
別の実施形態によると、基板上に、屈折率が周期的に変化する第1の構造体層を含む第1の光反射構造と、活性層を含む光半導体構造と、第2の構造体層を含む第2の光反射構造とを形成すること、前記光半導体構造に電流狭窄構造を提供すること、前記光半導体構造に電流を印加するための一対の電極を形成することを含む半導体発光デバイスの製造方法が提供される。
さらに別の実施形態によると、基板上に、屈折率が周期的に変化する第1の構造体層を含む第1の光反射構造と、活性層を含む光半導体構造と、屈折率が周期的に変化する第2の構造体層を含む第2の光反射構造とを形成すること、前記第2の構造体層をマスクとして、前記光半導体構造の電流狭窄構造形成予定領域にイオン注入を行い、前記イオン注入がなされた部分を、前記イオン注入がなされていない部分よりも高抵抗化させ、それにより抵抗が相対的に高い高抵抗領域と抵抗が相対的に低い低抵抗領域とが、前記第2の構造体層における前記周期に対応する周期で配置された電流狭窄層を形成することを含む半導体発光デバイスの製造方法が提供される。この半導体発光デバイスの製造方法は、前記光半導体構造に電流を印加するための一対の電極を形成することをさらに含む。前記一対の電極のうちの一方の電極は、前記電流狭窄層の表面の一部と接触している。
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記基板は、前記光半導体構造の半導体とは異種の半導体材料で構成された異種基板である。
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記基板上に前記第1の光反射構造と前記光半導体構造と前記第2の光反射構造とを形成することが、前記異種基板上に、前記第1の光反射構造を形成して第1の半導体構造を提供すること、前記光半導体構造の半導体と同種の半導体材料で構成された同種基板上に、前記光半導体構造を形成して第2の半導体構造を提供すること、前記第1の半導体構造と第2の半導体構造とを、前記第1の光反射構造と前記光半導体構造とが対面するように接合させて第3の半導体構造を提供すること、前記第3の半導体構造から前記同種基板を除去することを含む。
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記第1の半導体構造を提供することが、前記第1の光反射構造の上に接合用の第1の誘電体層を形成することを含み、前記第2の半導体構造を提供することが前記光半導体構造上に接合用の第2の誘電体層を形成することを含み、前記接合が、前記接合用の第1の誘電体層と接合用の第2の誘電体層を接触させることを含む。
1つまたはそれ以上の実施形態において、上記接合用の第1の誘電体層と接合用の第2の誘電体層は同じ誘電体材料、例えばシリコン酸化層で形成される。
他の実施形態において、1つの基板と、前記基板上に形成された半導体発光デバイスと半導体受光デバイスを備える光半導体デバイスが提供される。
前記光半導体デバイスにおける半導体発光デバイスは、前記基板上に設けられた活性層を含む光半導体構造と、前記基板と前記光半導体構造との間に配置された第1の光反射構造と、前記光半導体構造の上側に配置された第2の光反射構造と、前記光半導体構造に電流を印加するための一対の電極を備える。前記光半導体構造は、電流狭窄構造を備え、前記第1の光反射構造は、屈折率が周期的に変化する第1の構造体層を含む。前記第2の光反射構造は、前記第1の光反射構造の光反射率よりも高い反射率を有し、前記基板は、前記活性層を形成する半導体材料が有するバンドギャップエネルギーよりも大きいバンドギャップエネルギーを有する半導体材料で形成されている。
前記光半導体デバイスにおける半導体受光デバイスは、前記基板上に設けられた、活性層を含む光半導体構造と、前記基板と前記光半導体構造との間に配置された、光が前記基板側から入射される、屈折率が周期的に変化する第1の構造体層と、前記光半導体構造の上側に配置された、屈折率が周期的に変化する第2の構造体層を含む光反射構造と、前記光半導体構造に電圧を印加する一対の電極を備える。
前記光半導体デバイスにおいて、前記半導体発光デバイスにおける光半導体構造と、前記半導体受光デバイスにおける光半導体構造とは、同一の層構造を有し、同一の半導体材料で形成されている。
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記活性層を有する光半導体構造は、活性層を挟んで形成された第1および第2の光閉じ込め層、前記第1および第2の光閉じ込め層の両側に設けられた第1および第2のクラッド層、および前記第1および第2のクラッド層の両側に設けられた第1および第2のコンタクト層を備える。ここで、第1の光閉じ込め層、第1のクラッド層、第1のコンタクト層は、活性層の一方の側すなわち活性層と基板との間に形成されているものとし、第2の光閉じ込め層、第2のクラッド層および第2のコンタクト層は、活性層の他方の側に形成されているものとすることができる。
他の実施形態において、第1のクラッド層は、第1のコンタクト層を兼ねることができる。また、例えば前記第2の光反射構造が半導体多層反射膜を含む実施形態において、光半導体構造は第2のコンタクト層を備えず、半導体多層反射膜がコンタクト層として作用することができる。
図1は、第1の実施形態に係る半導体発光デバイス1を概略的に示す。この半導体発光デバイス1は、垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)デバイスである。
図1に示すように、半導体発光デバイス1は、基板11を備える。基板11は、その上に形成する、活性層(すなわち、発光層)を含む光半導体構造(半導体発光構造)の半導体と同種の半導体材料で形成された同種基板であってもよいし、上記光半導体構造の半導体とは異種の半導体材料で形成された異種基板(例えば、活性層を含む光半導体構造の半導体がIII−V族またはII−IV族化合物半導体である場合におけるシリコン基板)であってもよい。
基板11上には、誘電体層(例えばシリコン酸化物層)12を介して第1の光反射構造13が設けられている。この第1の光反射構造13は、屈折率が面内方向において周期的に変化する構造体層を含むか、該構造体からなり得る。構造体層13は、周期的に二次元配置された、屈折率が相対的に高い高屈折率領域と屈折率が相対的に低い低屈折率領域とにより構成されている。より具体的には、構造体層13は、フォトニック結晶の薄膜から構成することができる。すなわち、構造体層13は、高屈折率の材料からなる高屈折率層を母材とし、その母材に、母材よりも屈折率の低い誘電体材料が一定の間隔をもって埋め込まれている。母材としては、アモルファスシリコンを、誘電体材料としてはシリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン酸窒化物、アルミニウム窒化物またはアルミニウム酸化物を、それぞれ例示することができる。図1において、母材131を構成するアモルファスシリコンには、複数の空孔132が一定の間隔をもって穿設され、誘電体14が、アモルファスシリコン母材層131内の空孔132を埋め込んでいる。構造体層13は、平坦な表面を有する。
ここで、第1の光反射構造を構成する構造体層13を囲んで、基板11と同種の半導体層(以下埋め込み層といい、同種の半導体層を同種半導体層ということがある)15が配置されている。例えば、基板11がシリコン基板である場合、埋め込み層15は、シリコンで形成することができる。
構造体層13の表面と、埋め込み層15の表面は、同一平面内に含まれる。即ち、構造体層13の表面は、埋め込み層15の表面と同一平面を成すように形成されている。このように構造体層13、すなわち第1の光反射層の表面が平坦であり、そして埋め込み層15の表面も平坦であり、かつ第1の光反射層の表面と面一(同一平面)であるので、以後詳述する構造体層13の上に形成される光半導体構造16(その裏面は平坦である)が、面一表面全面に密に接し得るので、半導体構造16で発生する熱が基板を通じて効率よく放熱されるとともに、光半導体構造に掛かる応力が緩和され、構造体層13と光半導体構造16との接合界面での剥離が生ぜず、環境温度の変化や温度サイクルに供された場合でも、デバイスの特性が安定に維持され、高信頼性を確保することができる。
構造体層13の表面を含んで同種半導体層15の上には、コンタクト層を兼ねる第1導電型の第1のクラッド層161、第1導電型の第1の光閉じ込め層162、活性層163、第2導電型の第2の光閉じ込め層164、第2導電型の第2のクラッド層165を含む光半導体構造16が設けられている。本明細書において、第1導電型と第2導電型は、互いに反対の導電型をいい、一方がp型であれば、他方はn型であり、逆に一方がn型であれば、他方はp型である。
光半導体構造16の上には、第2の光反射構造が設けられている。この第2の光反射構造は、本実施形態では、半導体多層反射膜(分布ブラッグリフレクター(DBR))17を含む。
半導体多層反射膜17は、屈折率の互いに異なる半導体層171と172とを交互に積層した構造を有する。このようなDBR17は、AlGaInAsとInPとの交互積層体で構成することができる。これ以外にもAlGaAsSbとAlAsSbとの交互積層体でも構成することができる。第1のクラッド層161と第2のクラッド層165は、いずれもn型又はp型のInPで形成することが好都合である。
半導体発光デバイス1は、光半導体構造16に電流を印加するための一対の電極をさらに備える。一対の電極のうちの一方の電極2は、第1の光反射構造17、第2のクラッド層165、第2の光閉じ込め層164、活性層163及び第1の光閉じ込め層162を貫通し、第1のクラッド層161の途中まで達する環状溝3内に設けられており、第1のクラッド層161に接続されている。環状溝3の側壁には、絶縁層4及び5が形成されている。他方の電極6は、DBR17の最上層172の表面を覆って形成されている。すなわち、DBR17の最上層172は、電極6に対するコンタクト層として機能している。電極6は、金属層で形成することができる。この金属層は、前記一対の電極のうちの他方の電極を兼ねるものであることはいうまでもないが、それに加えて、第2の光反射構造17の反射率をさらに高めるものである。第2の光反射構造の反射率は、この金属層6をさらに設けることにより、ほぼ99.9%の反射率を達成し得る。かかる金属層6は、レーザから出射される光に応じて選択することができる。例えば出射光が可視光である場合、金属層6を銀で形成することができ、出射光が近赤外光である場合、金属層6を金、アルミニウムまたは銅で形成することができる。
このように、金属層202を第2の光反射構造の最上層として設けることにより、活性層163で発生した光を基板11側から取り出すことがより一層確実となる。
活性層163で発生した光は、1つの実施形態において、上記2つの光反射構造の間を往復しながら増幅され、第1の光反射構造13を通して基板11の面に垂直方向に放出され得る。その場合、活性層163で発生した光が基板11を透過するためには、基板11を形成する半導体材料として、バンドギャップエネルギーが活性層を形成する半導体材料のバンドギャップエネルギーよりも大きい半導体材料を用いる。例えば、活性層をIII-V族半導体またはII−IV族化合物半導体で形成した場合、基板11をシリコンで形成することができる。
なお、図1に示す半導体発光デバイス1においては、活性層163は、第1の光反射構造13よりも広い、すなわち活性層163の表面積は、第1の光反射層14の表面積よりも大きい。本開示において、DBRは、レンズ効果を有することができる。具体的には、DBRは、フレネルレンズ構造を有し得る。
図2は、第2の実施形態に係る半導体発光デバイス10を概略的に示す。この半導体発光デバイス10は、垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)デバイスであって、第2の光反射構造が、半導体多層反射膜(DBR)を含むものである。
図2に示すように、半導体発光デバイス10は、基板11を備える。基板11は、その上に形成する、活性層(すなわち、発光層)を含む光半導体構造(半導体発光構造)の半導体と同種の半導体材料で形成された同種基板であってもよいし、上記光半導体構造の半導体とは異種の半導体材料で形成された異種基板(例えば、活性層を含む光半導体構造の半導体がIII−V族またはII−IV族化合物半導体である場合におけるシリコン基板)であってもよい。
基板11上には、誘電体層(例えばシリコン酸化物層)12を介して第1の光反射構造13が設けられている。この第1の光反射構造13は、屈折率が面内方向において周期的に変化する第1の構造体層を含む。第1の構造体層13は、周期的に二次元配置された、屈折率が相対的に高い高屈折率領域と屈折率が相対的に低い低屈折率領域とにより構成されている。より具体的には、第1の構造体層13は、フォトニック結晶の薄膜から構成することができる。すなわち、第1の構造体層13は、高屈折率の材料からなる高屈折率層を母材とし、その母材に、母材よりも屈折率の低い誘電体材料が一定の間隔をもって埋め込まれている。母材としては、アモルファスシリコンを、誘電体材料としてはシリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン酸窒化物、アルミニウム窒化物またはアルミニウム酸化物を、それぞれ例示することができる。図2において、母材131を構成するアモルファスシリコンには、複数の空孔132が一定の間隔をもって穿設され、誘電体14が、アモルファスシリコン層131内の空孔132を埋め込んでいる。
ここで、第1の光反射構造を構成する第1の構造体層13を囲んで、基板11と同種の半導体層(以下同種半導体層という)15が配置されている(埋め込み層)。例えば、基板11がシリコン基板である場合、半導体層15は、シリコンで形成することができる。第1の構造体層13は、その表面が同種半導体層15の表面を含む面に含まれるように配置されていてもよいし、同種半導体層15に埋め込まれて配置されてもよい。あるいは、第1の構造体層13は、それに対応する凹部を基板11内に形成し、その凹部内に第1の構造体層を形成することもできる。その場合も、第1の構造体層の表面は、基板11の表面を含む面に含まれるが、該面よりも下側に位置することができる。
第1の構造体層13の表面と、埋め込み層15の表面が、同一平面内に含まれる、いいかえると、第1の構造体層13の表面が、埋め込み層15の表面と面一となっていると、以後詳述する構造体層13の上に形成される光半導体構造16(その裏面は平坦である)が、面一表面全面に密に接し得るので、半導体構造16で発生する熱が基板を通じて効率よく放熱されるとともに、光半導体構造に掛かる応力が緩和され、構造体層13と光半導体構造16との接合界面での剥離が生ぜず、環境温度の変化や温度サイクルに供された場合でも、デバイスの特性が安定に維持され、高信頼性を確保することができる。
第1の構造体層13の表面を含んで同種半導体層15の上には、コンタクト層を兼ねる第1導電型の第1のクラッド層161、第1導電型の第1の光閉じ込め層162、活性層163、第2導電型の第2の光閉じ込め層164、第2導電型の第2のクラッド層165を含む光半導体構造16が設けられている。
光半導体構造16の上には、第2の光反射構造が設けられている。この第2の光反射構造は、本実施形態では、半導体多層反射膜(DBR)17を含む。
半導体多層反射膜17は、屈折率の互いに異なる半導体層171と172とを交互に積層した構造を有する。このようなDBR17は、AlGaInAsとInPとの交互積層体で構成することができる。これ以外にもAlGaAsSbとAlAsSbとの交互積層体でも構成することができる。第1のクラッド層161と第2のクラッド層165は、いずれもn型又はp型のInPで形成することが好都合である。
光半導体構造16は、電流狭窄構造を備える。電流狭窄構造は、半導体レーザの内部で拡散する無効電流を低減するために、半導体レーザ内部を通過する電流を狭窄し、活性層163を含む発光領域あるいはアパーチャを画定する。
本実施形態では、光半導体構造16内に、電流狭窄層18が設けられている。電流狭窄層18は、例えばプロトン注入により形成することができる。すなわち、活性層163は、注入されたイオンを含む半導体層により取り囲まれる。
上記構造において、第1のクラッド層161の一部を含み電流狭窄層18は、図2に示すように、円錐台形状または角錐台形状を得るようにメサ加工することができる。
半導体発光デバイス10は、光半導体構造16に電流を印加するための一対の電極をさらに備える。電流狭窄層18の表面の一部およびDBR17の最上層172の表面を除き、電流狭窄層の周囲および第1のクラッド層161の表面を覆って、絶縁層19が形成されている。上記一対の電極のうちの一方の電極201は、絶縁層19を介して第1のクラッド層161に接続されている。電極201は、環状であり得る。
他方の電極202は、電流狭窄層18の周囲並びに絶縁層19から露出している電流狭窄層18の一部表面およびDBR17の最上層172の表面を覆って形成されている。すなわち、DBR17の最上層172は、電極202に対するコンタクト層として機能している。電極202は、金属層で形成することができる。この金属層は、前記一対の電極のうちの他方の電極を兼ねるものであることはいうまでもないが、それに加えて、DBRを含む第2の光反射構造17の反射率をさらに高めるものである。DBR17を含む第2の光反射構造の反射率は、この金属層202をさらに設けることにより、ほぼ99.9%の反射率を達成し得る。かかる金属層202は、レーザから出射される光に応じて選択することができる。例えば出射光が可視光である場合、金属層202を銀で形成することができ、出射光が近赤外光である場合、金属層202を金、アルミニウムまたは銅で形成することができる。
このように、金属層202を第2の光反射構造の最上層として設けることにより、活性層163で発生した光を基板11側から取り出すことがより一層確実となる。
活性層163で発生した光は、上記2つの光反射構造の間を往復しながら増幅され、第1の光反射構造13を通して基板11の面に垂直方向に放出される。その場合、活性層163で発生した光が基板11を透過するためには、基板11を形成する半導体材料として、バンドギャップエネルギーが活性層を形成する半導体材料のバンドギャップエネルギーよりも大きい半導体材料を用いる。例えば、活性層をIII-V族半導体またはII−IV族化合物半導体で形成した場合、基板11をシリコンで形成することができる。
図2に示す半導体発光デバイス10においては、活性層163は、第1の光反射構造13よりも狭い、すなわち活性層163の表面積は、第1の光反射層14の表面積よりも小さい。また、DBR17は、レンズ効果を有することができる。具体的には、DBR17は、フレネルレンズ構造を有し得る。
次に、図2に示す(第2の実施形態に係る)半導体発光デバイスの製造方法の一例を図3−1〜図3−3を参照して、説明する。
この方法は、基板11が光半導体構造16の半導体とは異種の半導体材料で形成された異種基板である図2に示す半導体レーザデバイスを製造するための方法の一例である。
まず、図3−1の(A)に示すように、シリコン基板等の異種基板11上に、誘電体層(例えば、シリコン酸化物層)12、アモルファスシリコン層131および誘電体層(例えば、シリコン酸化物層)21を形成する。
次に、誘電体層21をパターニングし、このパターニングした誘電体層21をマスクとして、アモルファスシリコン層131をウエットまたはドライエッチングして、アモルファスシリコン層131内に一定周期で離間する開口132を形成する(図3−1の(B))。
しかる後、誘電体層マスク21を除去することなく、アモルファスシリコン層131の開口132内を含みマスク21全面上に誘電体層を形成した後、この形成した誘電体層と、その下側の誘電体マスク21を化学的機械的研磨(CMP)で除去し、母材アモルファスシリコン層131の表面(およびアモルファスシリコン内に形成された誘電体14の表面)を露出させる(図3−1の(C))。
ついで、第1の構造体層13に対応する部分を除き、アモルファスシリコン層131およびその下の誘電体層12を順次エッチングにより除去し、基板11の表面を露出させる。その後、第1の構造体層13および露出した基板11表面上に基板11と同種の半導体、例えばアモルファスシリコン15を堆積させた後、アモルファスシリコン15を、第1の構造体層13の表面が露出するまで、CMPにより平坦化する(図3−2の(D))。すなわち、第1の構造体層13の表面と、アモルファスシリコン層(埋め込み層)15の表面は、それぞれ平坦であり、互いに面一である。この第1の構造体層13を備える半導体構造を第1の半導体構造ということとする。
他方、図3−2の(E)に示すように、同種基板(例えばIII−V族化合物半導体基板)30上に、屈折率の互いに異なる半導体層172と171とを交互に積層して半導体多層反射膜(DBR)17を形成する。上述のように、このようなDBR17は、AlGaInAsとInPとの交互積層体で構成することができる。その場合、後に説明する第1のクラッド層161と第2のクラッド層165は、いずれもn型又はp型InPで形成することが好都合である。DBR17の上に、第2のクラッド層165、第2の光閉じ込め層164、活性層163、第1の光閉じ込め層162、第1のクラッド層161(コンタクト層を兼ねる)を積層して、光半導体構造16を形成する。光半導体構造16は、例えばIII−V族化合物半導体で形成される。かくして、活性層を含む光半導体構造16を有する半導体構造が得られ、これを、以下、第2の半導体構造ということとする。
次に、上記第1の半導体構造と上記第2の半導体構造とを、第1の半導体構造における第1の構造体層13を含む表面と、第2の半導体構造における第1のクラッド層161とが対面するように両半導体構造を接合する。第1のクラッド層161がInPで形成されていると、アモルファスシリコン15層との直接接合が可能である。(図3−2の(F))。こうして得られた構造を、第3の半導体構造ということとする。
次に、第3の半導体構造から、機械研磨またはウエットエッチングにより、同種基板30を除去する。DBR17の表面が露出する(図3−3の(G))。
次に、電流狭窄層形成予定部以外の表面にマスク31を形成し、電流狭窄層形成予定部にイオン注入を行う。このイオン注入は、例えばプロトン注入である。このイオン注入により、DBR17を含め光半導体構造16内に電流狭窄層18が形成される(図3−3の(H))。この電流狭窄層18は、環状であり得る。
ついで、マスク31を除去した後、電流狭窄層18を、円錐台形状にメサ加工する(図3−3の(I))。
しかる後、絶縁層19、電極201および202を形成することにより、図2に示す構造の半導体発光デバイスが製造される。いうまでもなく、電流狭窄層18により画定された光半導体構造16と第2の光反射構造13および第1の光反射構造17とは、光共振器を構成する。
図3−1〜図3−3を参照して説明した製造方法によれば、完成した半導体発光デバイスは、異種基板(例えばシリコン基板)11上に、III−V族化合物半導体で形成された光半導体構造16を有するものの、光半導体構造16は同種基板30上に形成しているので格子整合性が達成されており、従って、異種基板上にIII−V族化合物半導体層を成長させる場合のような格子不整合について注意を払う必要がない。言い換えると、この手法によると、ヘテロエピタキシャル成長を行う必要がない。
ここで、図1に示す半導体発光デバイス1の製造方法を念のため簡単に説明する。まず、図3−1の(A)〜(C)、図3−2の(D)〜(F)及び図3−3の(G)に関して説明した手順により、図3−3の(G)に示す構造を作製する。ついで、図1に示す溝2を形成し、絶縁層4及び5を形成する。最後に、図1に示す電極3及び6を形成して、図1に示す半導体発光デバイス1を完成する。
図4は、第3の実施形態に係る半導体発光デバイスの概略断面図である。
図4に示す半導体発光デバイス40は、第1の構造体層13の上に、透明電極層41を有し、この透明電極41を囲包して金属層42が設けられている以外は、図2に示す半導体発光デバイス10と同じ構造を有する。透明電極層41は、インジウムチタン酸化物(ITiO)、インジウムスズ酸化物(ITO)等で形成することができる。また、金属層42は、タングステン等で形成することができる。透明電極41を設け、その周囲に金属層を形成することにより、一対の電極201および202間を流れる電流の経路ともなり得る。
図5は、第4の実施形態に係る半導体発光デバイスの概略断面図である。
図5に示す半導体発光デバイス50は、第1の構造体13の領域に対応する基板11内の領域を囲包するように、溝51が設けられ、その溝51内に放熱性の金属52が埋設されている以外は、図2に示す半導体発光デバイス10と同じ構造を有する。金属52としては、例えば銅を用いることができる。基板11内に埋設された放熱性金属52により、半導体発光デバイス50の放熱性が向上する。また、埋設金属52は、一対の電極201および202間を流れる電流の経路ともなり得る。埋設金属52の表面は、第1の構造体層13の表面と面一である。
このような埋設金属52を有する半導体発光デバイス50の製造方法を、図6を参照して説明する。まず、図3−2の(D)に関して説明したように基板11上に第1の構造体層13を形成した後、エッチングにより基板11内に金属埋設用の溝51を設ける(図6の(A))。
しかる後、この溝51内に、放熱性金属51を堆積させ、その表面をCMPにより第1の光反射構造13の表面と面一となるように平坦化して、前記第1の半導体構造に相当する半導体構造を提供する(図6の(B))。この工程以降は、図3−2の(E)および(F)、並びに図3−3の(G)〜(I)に関して説明した手法により、半導体発光デバイス50を製造することができる。
図7は、第5の実施形態に係る半導体発光デバイスの概略断面図である。
図7に示す半導体発光デバイス60は、基板11と、第1の光反射構造(第1の構造体層)13(およびその下の誘電体層12)との間に形成された第1の熱伝導性誘電体層61、および第1の光反射構造13と光半導体構造16との間に形成された第2の熱伝導性誘電体層62をさらに含む以外は、図2に示す半導体発光デバイス10と同じ構造を有する。熱伝導性誘電体としては、窒化アルミニウムを用いることができる。
図7に示す半導体発光デバイス60において、第1の構造体層13(およびアモルファスシリコン層15)と第2の熱伝導性誘電体層62との間に誘電体層(例えばシリコン酸化物層)63が介挿されているが、この誘電体層63は、前記第1の半導体構造に相当する半導体構造と、前記第2の半導体構造に相当する半導体構造を接合するためのものである。すなわち、図7に示す半導体発光デバイス60を製造するに際し、前記第1の半導体構造に相当する半導体構造の最上層は、第1の構造体層13(およびアモルファスシリコン層15)上に形成された誘電体層であり、前記第2の半導体構造に相当する半導体構造の最上層は、第2の熱伝導性誘電体層62上に形成された誘電体層である。両半導体構造における最上層(誘電体層)同士を接合する。
図8は、第6の実施形態に係る半導体発光デバイスの概略断面図ある。
図8に示す半導体発光デバイス70は、第1の構造体層13上にワイヤグリッド電極71が設けられ、そのワイヤグリッド電極71およびその下の第1の構造体層13を囲包するようにワイヤグリッド電極71を形成する金属のシリサイド層72が設けられている以外は、図2に示す半導体発光デバイスと実質的に同じ構造を有する。ワイヤグリッド電極71は例えばタングステンで形成することができる。半導体発光デバイス70において、第1の反射層は、(第1の構造体層13に加えて)、金属グリッド電極71を有する。金属グリッド電極71の表面は、金属シリサイド層(埋め込み層)72の表面と面一である。
図8に示す半導体発光デバイス70の製造方法を、図9を参照して説明する。まず、図3−1の(C)に関して説明したように、基板11上に設けた誘電体層12上のアモルファスシリコン層131に開孔を設け、この開孔を埋めて誘電体層14を形成した後、誘電体層14をCMPにより平坦化し、その誘電体層14にワイヤグリッド電極用のパターニングを施し、誘電体層14内にワイヤグリッド電極形成用金属を埋設するための凹部141を、マスクを介したエッチングにより設ける(図9の(A))。
ついで、第1の構造体層13に対応する部分を除き、アモルファスシリコン層131の部分およびその上の誘電体層14の部分を順次エッチングにより除去して、誘電体層12の表面を部分的に露出させる(図9の(B))。
しかる後、第1の構造体層13上に残存する誘電体層14およびその中に形成された凹部141内、並びに露出した誘電体層12上にグリッド電極用金属82を堆積させ、これを残存する誘電体層14の表面までCMPで平坦化した後、凹部が金属82により埋め込まれた残存誘電体層14および誘電体層12上の金属層82上にアモルファスシリコン層83を形成する(図9の(C))。
ついで、熱処理を行って、金属82とアモルファスシリコン83を反応させて金属82をシリサイド化して、金属シリサイド層72を形成する。その後、シリサイド化に寄与しなかったシリコンを除去する。
こうして、上記第1の半導体構造に相当する半導体構造を作製した後は、図3−2の(E)および(F)、並びに図3−3の(G)〜(I)に関して説明した手法により、半導体発光デバイス50を製造することができる。
図10は、第7の実施形態に係る半導体発光デバイス90を概略的に示す。この半導体発光デバイス90は、図1、図2、図4、図5、図7および図8にそれぞれ示す半導体発光デバイスと同様、垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)デバイスである。図10に示す半導体発光デバイス90において、第2の光反射構造は、DBRの代わりに、屈折率が面内方向において周期的に変化する構造体層を含む。
図10に示すように、半導体発光デバイス90は、基板91を備える。基板91は、その上に形成する活性層(すなわち、発光層)を含む光半導体構造の半導体と同種の半導体材料で形成された同種基板であってもよいし、上記光半導体構造の半導体とは異種の半導体材料で形成された異種基板(例えば、活性層を含む光半導体構造の半導体がIII−V族またはII−IV族化合物半導体である場合におけるシリコン基板)であってもよい。
基板91上には、誘電体層(例えばシリコン酸化層)92を介して第1の光反射構造93が設けられている。この第1の光反射構造93は、屈折率が面内方向に周期的に変化する第1の構造体層を含む。第1の構造体層93は、周期的に二次元配置された、屈折率が相対的に高い高屈折率領域と屈折率が相対的に低い低屈折率領域とにより構成されている。より具体的には、第1の構造体層93は、フォトニック結晶の薄膜から構成することができる。すなわち、第1の構造体層93は、高屈折率の材料からなる高屈折率層を母材とし、その母材に、母材よりも屈折率の低い誘電体材料が一定の間隔をもって埋め込まれている。母材としては、アモルファスシリコンを、誘電体材料としてはシリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン酸窒化物、アルミニウム窒化物またはアルミニウム酸化物を、それぞれ例示することができる。図10において、母材931を構成するアモルファスシリコンには、複数の空孔932が一定の間隔をもって穿設され、誘電体層94が、アモルファスシリコン層931を覆うとともにアモルファスシリコン層931内の空孔932を埋め込んでいる。第1の構造体93の表面は、第1の構造体93を取り囲むアモルファスシリコン層(埋め込み層)931の表面と面一である。
誘電体層94の上には、第1導電型の第1のコンタクト層951、第1導電型の第1のクラッド層952、第1導電型の第1の光閉じ込め層953、活性層954、第2導電型の第2の光閉じ込め層955、第2導電型の第2のクラッド層956および第2導電型の第2のコンタクト層957を含む光半導体構造95が設けられている。なおクラッド層952および956は設けなくともよいが、これらを設けることにより光閉じ込め効率が一層向上する。ここで、第1導電型と第2導電型は、互いに反対の導電型をいい、一方がp型であれば、他方はn型であり、逆に一方がn型であれば、他方はp型である。
光半導体構造95の上には、シリコン酸化層等の誘電体層96を介して、第2の光反射構造97が設けられている。この第2の光反射構造97は、この実施形態では、屈折率が周期的に変化する第2の構造体層971を含む。第2の構造体層971は、第1の構造体層93と同様、周期的に二次元配置された、屈折率が相対的に高い高屈折率領域と屈折率が相対的に低い低屈折率領域とにより構成されている。より具体的には、第2の構造体層971は、フォトニック結晶の薄膜から構成することができる。すなわち、第2の構造体層971は、高屈折率の材料からなる高屈折率層を母材とし、その母材に、母材よりも屈折率の低い誘電体材料が一定の間隔をもって埋め込まれている。母材としては、アモルファスシリコンを、誘電体材料としてはシリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン酸窒化物、アルミニウム窒化物またはアルミニウム酸化物を、それぞれ例示することができる。図10においては、母材971aを構成するアモルファスシリコン層には、複数の空孔971bが一定間隔をもって穿設され、誘電体層98が、アモルファスシリコン層971aを覆うとともにアモルファスシリコン層971a内の空孔971bを埋め込んでいる。
さて、光半導体構造95内には、電流狭窄層99が設けられている。電流狭窄層99は、半導体レーザの内部で拡散する無効電流を低減するために、半導体レーザ内部を通過する電流を狭窄し、活性層954を含む発光領域を画定する。
電流狭窄層99は、抵抗が相対的に高い高抵抗領域991と抵抗が相対的に低い低抵抗領域992とを含む。高抵抗領域991と低抵抗領域992は、平面視で、第2の構造体層971における屈折率が変化する周期に対応する周期で配置されている。より具体的には、低抵抗領域992は、光半導体構造95の半導体により構成され、高抵抗領域991は、イオン注入された該半導体により構成される。イオン注入は、プロトン注入により行うことができる。イオン注入された領域(高抵抗領域)991では注入イオンが光半導体構造95内で散乱され広がるため、光半導体構造95の下部領域ではすべての高抵抗領域991がつながり、結果として電流の流れにくい領域が形成できる。光半導体構造95の中央部分(共振器部分)はイオン注入されていないので電流は高抵抗領域991の上部を通り、低抵抗領域992を流れ、電流狭窄層99が形成されていない領域を通り、そこに存在する活性層954を通り、第1導電型の第1のコンタクト層951へと流れる。そのため、電流が流れる領域が、メサ中央部分に集中させることができ、内部で共振する光の分布と一致するため、電流注入効率が向上し、低消費電力で動作させることができる。すなわち、上述のように、電流狭窄層99には、低抵抗領域が周期的に存在しているので、すべてが高抵抗領域からなる電流狭窄層(例えば光半導体構造の電流狭窄層形成予定部全面にプロトン注入を行う場合に形成される)よりも、電極1002とのコンタクト抵抗が低減し、消費電力も低減でき、自己発熱も低減できる。
誘電体層96、第2の構造体層971および誘電体層98からなる構造は、光半導体構造95の表面全体と電流狭窄層99の表面の一部を覆うように形成されている。すなわち、電流狭窄層の表面の一部は誘電体層96、第2の構造体層971および誘電体層98からなる構造から露出している。
半導体発光デバイス90は、光半導体構造95に電流を印加するための一対の電極をさらに備える。一方の電極1001は、光半導体構造95における第1のコンタクト層951の表面と接触するとともに、誘電体層92、第1の構造体層93、誘電体層94および第1のコンタクト層951を通して基板91の表面と接触している。
ここで誘電体層96、第2の構造体層971および誘電体層98からなる構造の全面を覆い、かつ電流狭窄層99の前記露出表面と接触するように金属層1002が設けられている。この金属層1002は、第2の構造体層971を含む第2の光反射構造97の反射率をさらに高めるものであるとともに、前記一対の電極のうちの他方の電極を兼ねるものである。第2の構造体層971を含む第2の光反射構造97の反射率は、この金属層1002をさらに設けることにより、ほぼ99.9%の反射率を達成し得る。かかる金属層1002は、レーザから出射される光に応じて選択することができる。例えば出射光が可視光である場合、金属層1002を銀で形成することができ、出射光が近赤外光である場合、金属層1002を金、アルミニウムまたは銅で形成することができる。
このように、金属層1002を第2の構造体層971の上側に構造体層971の全面をカバーするように設けることにより、活性層954で発生した光は、基板91側から取り出すことができる。すなわち、活性層954で発生した光は、2つの光反射構造93と97との間を往復しながら増幅され、光反射構造93を通して基板面に垂直方向に放出される。その場合、活性層954で発生した光が基板91を透過するためには、基板91を形成する半導体材料として、バンドギャップエネルギーが活性層を形成する半導体材料のバンドギャップエネルギーよりも大きい半導体材料を用いる。例えば、活性層をIII-V族半導体またはII−IV族化合物半導体で形成した場合、基板91をシリコンで形成することができる。
半導体発光デバイス90において、活性層954は、第1の光反射構造93よりも狭い、すなわち活性層954の表面積は、第1の光反射層93の表面積よりも小さい。
上に説明した半導体発光デバイス90において、光反射構造を構成する第1の構造体および第2の構造体は、それぞれ、高屈折率の領域と低屈折率の領域とが二次元配置された構造体であったが、それら2つの光反射構造の一方又は両方は、高屈折率の領域と低屈折率の領域とが一次元配置された構造体、例えば図1及び図2に関して説明したDBRであってもよい。
次に、図10に示す半導体レーザデバイスの製造方法を、図11−1〜図11−4を参照して説明する。この方法は、基板91が光半導体構造95の半導体とは異種の半導体材料で形成された異種基板である図10に示す半導体レーザデバイスを製造するための方法の一例である。
図11−1の(A)に示すように、シリコン基板等の異種基板91上に、誘電体層(例えば、シリコン酸化層)92、アモルファスシリコン層931および誘電体層(例えば、シリコン酸化層)1011を形成する。
次に、誘電体層1011をパターニングし、このパターニングした誘電体層1011をマスクとして、アモルファスシリコン層931をウエットまたはドライエッチングして、アモルファスシリコン層931内に一定周期で離間する開口932を形成する(図11−1の(B))。
しかる後、シリコン酸化層マスク1011を除去することなく、アモルファスシリコン層931の開口932内を含みマスク1011全面上に誘電体層を形成する(この誘電体層とマスク1011とを併せて誘電体層941として示す)。ついで、誘電体層941を、CMPにより平坦化する。その際、誘電体層941が、後に説明する接合に十分な厚さで残るようにする。かくして、アモルファスシリコン層931内に、アモルファスシリコンとは屈折率が異なる誘電体(誘電体層941を形成する誘電体)が周期的に埋め込まれた第1の構造体層93が作製される(図11−1の(C)。この第1の構造体層93を備える半導体構造を第1の半導体構造ということとする。
他方、同種基板(例えばIII−V族化合物半導体基板)300上に、第2導電型の第2のコンタクト層957、第2導電型の第2のクラッド層956、第2導電型の第2の光閉じ込め層955、活性層954、第1導電型の第1の光閉じ込め層953、第1導電型の第1のクラッド層952、および第1導電型の第1のコンタクト層951を含む光半導体構造95を形成する(光半導体構造95は、例えばIII−V族化合物半導体で形成される)。しかる後、第1導電型の第1のコンタクト層951上に、接合用の誘電体層942を形成する(図11−2の(D))。かくして、活性層を含む光半導体構造95を有する半導体構造が得られ、これを、以下、第2の半導体構造ということとする。
次に、上記第1の半導体構造1の上に、上記第2の半導体構造を、両者の半導体構造における誘電体層941および942同士が接触するように重ね合わせ、両半導体構造を接合する。誘電体層941および942は合体して、図10に示す誘電体層94を構成する(図11−2の(E))。こうして得られた構造を、第3の半導体構造ということとする。
次に、第3の半導体構造から、機械研磨またはウエットエッチングにより、同種基板300を除去する。かくして第2のコンタクト層957が表面に露出する(図11−2の(F))。
上記露出した第2のコンタクト層957上に、誘電体層96、アモルファスシリコン層971aおよび誘電体層1012を順次形成する(図11−3の(G))。
そして、誘電体層1012に対し、パターニングを行い、そのパターン化された誘電体層をマスクとして、アモルファスシリコン層971aをエッチングする。こうして、アモルファスシリコン層971a内に一定周期で離間する開口971bを形成する。しかる後、誘電体層マスクを除去する(図11−3の(H))。
しかる後、アモルファスシリコン層971aの開口971b内を含みアモルファスシリコン層971a上に誘電体層98を形成する。ついで、誘電体層38を、CMPで平坦化する。かくして、アモルファスシリコン層971a内にアモルファスシリコンとは屈折率が異なる誘電体が周期的に埋め込まれた第2の構造体971が作製される(図11−3の(I))。
次に、活性層954を含む光半導体構造95中の電流狭窄層形成予定部に、イオン注入を行う。このイオン注入は、例えばプロトン注入である。その際、プロトンイオンは、第2の光反射構造97における第2の構造体層971のアモルファスシリコン部分において阻止されるが、誘電体部分を透過する。このプロトンイオンが注入された部分は、プロトンイオンが注入されない部分に比べて抵抗が高くなる。すなわち、活性層954を含む光半導体構造95の半導体を含む低抵抗領域992とこの半導体よりも電気抵抗が高い高抵抗領域991とが、平面視で、第2の構造体層971における屈折率が変化する周期に対応する周期で二次元配置された構造が提供される。イオン注入された領域(高抵抗領域)191では注入イオンが光半導体構造95内で散乱され広がるため、光半導体構造95の下部領域ではすべての高抵抗領域991がつながり、結果として電流の流れにくい領域が形成できる。この構造が、電流狭窄層99を構成する(図11−4の(J))。この電流狭窄層99は、円環状であり得る。
次に、誘電体層98、第2の構造体層971および誘電体層96を、電流狭窄層の表面が部分的に露出されるように、順次エッチングにより同一円錐台形状にメサに加工する。しかる後、第1のコンタクト層951および電流狭窄層99を除き、光半導体構造95を、円錐台形状にメサ加工する(図11−4の(K))。
しかる後、電極1001および1002を形成して、図10に示す構造の半導体発光デバイスが製造される。いうまでもなく、電流狭窄層99により画定された、光半導体構造95と上下の第2および第1の光反射構造93および97とは、光共振器を構成する。
図11−1〜図11−4を参照して説明した製造方法によれば、完成した半導体発光デバイスは、異種基板(例えばシリコン基板)上に、III−V族化合物半導体で形成された光半導体構造95を有するものの、光半導体構造95は同種基板300上に形成しているので格子整合性が達成されており、従って、異種基板上にIII−V族化合物半導体層を成長させる場合のような格子不整合について注意を払う必要がない。言い換えると、この手法によると、ヘテロエピタキシャル成長を行う必要がない。
ここで、上記活性層を含む光半導体構造を構成するIII−V族化合物半導体の例を以下に挙げる:
<InP系(その1)>
活性層:Inの組成比が異なるInGaAsP/InGaAsPの多重量子井戸構造 第1および第2の光閉じ込め層:InGaAsPまたはInP
第1および第2のクラッド層:InGaAsPまたはInP
第1および第2のコンタクト層:InPまたはInGaAs
発光波長帯:1.2〜1.7μm。
<InP系(その2)>
活性層:Inの組成比が異なるInGaAlAs/InGaAlAsの多重量子井戸構造
第1および第2の光閉じ込め層:InGaAlAsまたはInGaAsPまたはInP
第1および第2のクラッド層:InGaAlAsまたはInP
第1および第2のコンタクト層:InPまたはInGaAs
発光波長帯:1.3μm。
<GaAs系(その1)>
発光層:InGaAs/GaAsの多重量子井戸構造
第1および第2の光閉じ込め層:AlGaAsまたはGaAs
第1および第2のクラッド層:AlGaAsまたはGaAs
第1および第2のコンタクト層:GaAs
発光波長帯:0.9〜1.15μm。
<GaAs系(その2)>
活性層:AlGaAs/GaAsの多重量子井戸構造
第1および第2の光閉じ込め層:AlGaAsまたはGaAs
第1および第2のクラッド層:AlGaAsまたはGaAs
第1および第2のコンタクト層:GaAs
発光波長帯:0.62〜0.87μm。
<GaAs系(その3)>
活性層:AlGaInP/GaAsの多重量子井戸構造
第1および第2の光閉じ込め層:AlGaInPまたはAlGaAsまたはGaAs 第1および第2のクラッド層:AlGaInPまたはGaAs
第1および第2のコンタクト層:GaAs
発光波長帯:0.54〜0.7μm。
<GaN系>
活性層:InGaN/AlGaNの多重量子井戸構造
第1および第2の光閉じ込め層:AlGaNまたはGaN
第1および第2のクラッド層:AlGaNまたはGaN
第1および第2のコンタクト層:GaNまたはInGaN
発光波長帯:0.3〜0.6μm。
光半導体構造は、ZnSe系、例えばCdZnSSe等のII−VI族化合物半導体で形成することもできる。
また、電極を形成する金属材料の例を以下に示す。
<InP系光半導体構造の場合>
p−電極:Ti/Pt/Auの3層構造、An/Auの2層構造等
n−電極:Ti/Pt/Auの3層構造等。
<GaAs系光半導体構造の場合>
p−電極:Ti/Pt/Auの3層構造等
n−電極:AuGe/Ni/Auの3層構造等。
また、アモルファスシリコン層931の厚さは、例えば、0.2μm〜0.5μmであり、アモルファスシリコン層971aの厚さは、例えば、0.2μm〜0.5μmである。
光半導体構造95を構成する第1および第2のコンタクト層951および957の厚さは、それぞれ、例えば、0.2μm〜1.5μmであり、第1および第2のクラッド層952および956の厚さは、それぞれ、例えば、0.1μm〜0.5μmであり、第1および第2の光閉じ込め層953および955の厚さは、それぞれ、例えば、0.05μm〜0.2μmであり、活性層954の厚さは、例えば、0.05μm〜0.2μmである。そして、電流狭窄層99により画定されるアパーチャの直径は、例えば、5μm〜20μmである。
ところで、図3−1〜図3−3に関して説明した第2の実施形態に係る半導体発光デバイスの製造方法に準じて、同一基板(共通基板)上に、半導体発光デバイスに加えて、半導体受光デバイスを同時に製造することができる。このような半導体発光デバイスと半導体受光デバイスとが同一基板上に形成された光半導体デバイス(第8の実施形態に係る光半導体デバイス)の製造方法の一例を以下に説明する。
すなわち、図12−1の(A)に示すように、図2に示す基板11と同様の異種基板(例えばシリコン基板)2011上に、図3−1の(A)〜(C)および図3−2の(D)に関して説明した手法に準じて、発光デバイスの第1の(屈折率が周期的に変化する)構造体層2013aと、これと離間した受光デバイスの下側の(屈折率が周期的に変化する)構造体層2013bとを形成する。両構造体層2013aおよび2013bは、ぞれぞれ、誘電体層2012aおよび2012bの上に形成されており、誘電体層2012aと構造体層2013aとの積層体、および誘電体層2012bと構造体層2013bとの積層体は、アモルファスシリコン層2015により囲包されている。いうまでもなく、構造体層2013aおよび2013bにおいて、アモルファスシリコンからなる高屈折率領域とアモルファスシリコン内に設けられた空孔内に埋め込まれた誘電体層2014a、2014bからなる低屈折率領域が周期的に二次元配置されている。受光デバイスの第1の構造体2013bには、発光デバイスからの光が入射される。こうして得られた半導体構造(図12−1の(A)に示す半導体構造)を第1の半導体構造ということとする。
次に、図3−2の(E)に関して説明した手法に準じて、同種基板(例えばIII−V族化合物半導体基板)3000上に、屈折率の互いに異なる半導体層3172と3171とを交互に積層して半導体多層反射膜(DBR)3170を形成する。そして、DBR3170の上に、第2のクラッド層3165、第2の光閉じ込め層3164、活性層3163、第1の光閉じ込め層3162、第1のクラッド層(コンタクト層を兼ねる)3161を積層して、光半導体構造3160を形成して、活性層を含む光半導体構造3160を有する半導体構造(第2の半導体構造)を得る。次に、上記第1の半導体構造と上記第2の半導体構造とを、第1の半導体構造における第1の構造体層2013aおよび2013bを含む表面と、第2の半導体構造における第1のクラッド層3161とが対面するように両半導体構造を接合する。第1のクラッド層3161がInPで形成されていると、アモルファスシリコン層2015との直接接合が可能である。こうして得られた構造を、第3の半導体構造ということとする(図12−1の(B))。
次に、第3の半導体構造から、機械研磨またはウエットエッチングにより、同種基板3000を除去して、DBR3170(最上層3172)の表面を露出させる。ついで、発光デバイスにおける光半導体構造3160中の電流狭窄層形成予定部以外の表面にマスク3001を形成し、電流狭窄層形成予定部にイオン注入を行う。このイオン注入は、例えばプロトン注入である。このイオン注入により、発光デバイス領域におけるDBR3170を含め光半導体構造3160内に電流狭窄層3018が形成される(図12−2の(C))。この電流狭窄層3018は、環状であり得る。
ついで、図3−3の(I)に関して説明した手法に準じて、マスク3001を除去した後、第1のクラッド層3161の一部を含み電流狭窄層3018と、受光デバイスの光半導体構造およびDBRとを、それぞれ円錐台形状にメサ加工し、さらに第1のクラッド層3161を発光デバイスと受光デバイスとを分離するように、分離する。こうして、第1のクラッド層3161が受光デバイスにおける第1のクラッド層3161aと受光デバイスにおける第1のクラッド層3161bに分離されるとともに、第1の光閉じ込め層3162、活性層3163、第2の光閉じ込め層3164および第2のクラッド層3165を含む光半導体構造3160、並びに屈折率の異なる半導体層3171と3172との積層体からなるDBR3170も、発光デバイスにおける第1の光閉じ込め層3162a、活性層3163a、第2の光閉じ込め層3164aおよび第2のクラッド層3165aを含む光半導体構造3160a、並びに屈折率の異なる半導体層3171aと3172aとの積層体からなるDBR3170aと、受光デバイスにおける第1の光閉じ込め層3162b、活性層3163b、第2の光閉じ込め層3164bおよび第2のクラッド層3165bを含む光半導体構造3160b、並びに屈折率の異なる半導体層3171bと3172bとの積層体からなるDBR3170bとに分離される(図12−2の(D))。
最後に、図3−3の(I)に関して説明した手法に準じて、発光デバイス構造および受光デバイス構造にそれぞれ絶縁膜2019aおよび2019bを形成し、それぞれ電極2201aおよび2022a並びに電極2201bおよび2202bを形成する。こうして、半導体発光デバイス(レーザダイオード)LDおよび半導体受光デバイス(フォトダイオード)PDを同一基板上に設けた光半導体デバイスが製造される(図12−3)。
以上の説明からわかるように、図12−3に示す半導体発光デバイスLDは、図2に関して説明した半導体発光デバイス10と同じ構造を有する。そして、半導体発光デバイスLDにおける光半導体構造3160aと、半導体受光デバイスPDにおける光半導体構造3160bとは、層構成と構成材料が同じである。同様に、半導体発光デバイスLDにおけるDBR3170aと、半導体受光デバイスにおけるDBR3170bとも、層構成と構成材料が同じである。また、第1の構造体層2013aおよび2013bを構成する母材と誘電体材料も、同じであるが、屈折率が変化する周期は異なっていてもよい。
さらに、図11−1〜図11−4に関して説明した第7の実施形態に係る半導体発光デバイスの製造方法に準じて、同一基板(共通基板)上に、半導体発光デバイスに加えて、半導体受光デバイスを同時に製造することもできる。このような半導体発光デバイスと半導体受光デバイスとが同一基板上に形成された光半導体デバイス(第9の実施形態に係る光半導体デバイス)の製造方法の一例を以下に説明する。
すなわち、図13−1の(A)に示すように、図10に示す基板91と同様の異種基板(例えばシリコン基板)4091上に、図11−1の(A)〜(C)に関して説明した手法に準じて、誘電体層4092を形成し、アモルファスシリコン層4931、およびマスク用誘電体層(図示せず)を形成した後、マスク用誘電体層をパターニングする。このパターニングした誘電体層をマスクとして、発光デバイス領域におけるアモルファスシリコン層4931の部分と、受光デバイス領域におけるアモルファスシリコン層4931の部分とに一定の間隔で空孔を設け、上記マスクを除去することなく、前記空孔内を含み、上記マスク全面上に誘電体層を形成する(この誘電体層とマスクとを併せて誘電体層4941として示す)。かくして、発光デバイスの下側の(第1の)構造体層4093aと、これと離間した受光デバイスの下側の(第1の)構造体層4093bとが形成される。いうまでもなく、構造体層4093aおよび4093bにおいて、アモルファスシリコンからなる高屈折率領域とアモルファスシリコン層4931内に設けられた空孔内に埋め込まれた誘電体層4941からなる低屈折率領域は周期的に二次元配置されている。受光デバイスの第1の構造体層4093bには、発光デバイスからの光が入射される。こうして得られた半導体構造(図13−1の(A)に示す半導体構造)を半導体構造Aということとする。
次に、図11−2の(D)〜(E)に関して説明したように、同種基板5000上に、第2導電型の第2のコンタクト層4957、第2導電型の第2のクラッド層4956、第2導電型の第2の光閉じ込め層4955、活性層4954、第1導電型の第1の光閉じ込め層4953、第1導電型の第1のクラッド層4952、および第1導電型の第1のコンタクト層4951を含む光半導体構造4950を形成し、第1導電型の第1のコンタクト層4951上に、接合用の誘電体層4942を形成し、半導体構造Bを得る。しかる後、半導体構造Aの上に、半導体構造Bを、両者の半導体構造における誘電体層4941および4942同士が接触するように重ね合わせ、両半導体構造を接合する。誘電体層4941および4942は合体して誘電体層4940を構成する(図13−1の(B))。
次に、図11−3の(G)〜(I)に関して説明した手法に準じて、上記接合した半導体構造から、機械研磨またはウエットエッチングにより、同種基板5000を除去して、第2のコンタクト層4957を表面露出させた後、その上に、誘電体層4960、アモルファスシリコン層4971およびマスク用誘電体層(図示せず)を順次形成する。そして、マスク用誘電体層に対し、パターニングを行い、そのパターン化された誘電体層をマスクとして、アモルファスシリコン層4971をエッチングする。こうして、発光デバイス領域内のアモルファスシリコン層4971内および受光デバイス領域内のアモルファスシリコン層4971内にそれぞれ、一定間隔で離間する開口を形成する。しかる後、誘電体層マスクを除去することなく、アモルファスシリコン層4971の空孔内を含み誘電体層マスク上に誘電体層を形成する(この誘電体層と上記誘電体層マスクとを併せて誘電体層4098として示す)。ついで、誘電体層4098を、CMPで平坦化する。かくして、アモルファスシリコン層4971内にアモルファスシリコンとは屈折率が異なる誘電体が埋め込まれた第2の構造体4097aおよび4097bがそれぞれ作製される(図13−2の(C))。
次に、図11−4の(J)に関して説明した手法に準じて、発光デバイス領域における光半導体構造4950中の電流狭窄層形成予定部に、イオン注入を行う。このイオン注入は、例えばプロトン注入である。その際、プロトンイオンは、第2の構造体層4097aのアモルファスシリコン部分において阻止されるが、アモルファスシリコン層4971内に形成された空孔内を埋める誘電体を透過する。このプロトンイオンが注入された部分は、プロトンイオンが注入されない部分に比べて抵抗が高くなる。すなわち、活性層4954を含む光半導体構造4950の半導体を含む低抵抗領域4992とこの半導体よりも電気抵抗が高い高抵抗領域4991とが、平面視で、第2の構造体層4097aにおける屈折率が変化する周期に対応する周期で二次元配置された構造が提供される。イオン注入された領域(高抵抗領域)4991では注入イオンが光半導体構造4950内で散乱され広がるため、光半導体構造4950の下部領域ではすべての高抵抗領域4991がつながり、結果として電流の流れにくい領域が形成できる。この構造が、電流狭窄層4990を構成する(図13−2の(D))。この電流狭窄層4990は、円環状であり得る。いうまでもなく、受光デバイス領域には、上記イオン注入は行わない。
次に、図11−4の(K)に関して説明した手法に準じて、発光デバイス領域における誘電体層4098、第2の構造体層4097aおよび誘電体層4960、並びに受光デバイス領域における誘電体層4098、第2の構造体層4097bおよび誘電体層4960をそれぞれ順次エッチングによりそれぞれ同一円錐台形状にメサに加工する。しかる後、発光デバイス領域における第1のコンタクト層4951および電流狭窄層4990を除き、光半導体構造4950を円錐台形状にメサ加工するとともに、受光デバイスにおける第1のコンタクト層4951を除き光半導体構造4950を円錐台形状にメサ加工する。ついで、発光デバイスにおける一対の電極5011aおよび5011bを形成するとともに、受光デバイスにおける一対の電極5011bおよび5012bを形成する。こうして、半導体発光デバイス(レーザダイオード)LDおよび半導体受光デバイス(フォトダイオード)PDを同一基板上に設けた光半導体デバイスが製造される(図13−3)。
完成した光半導体デバイスを示す図13−3において、半導体発光デバイスLDにおける誘電体層4092、誘電体層4940、第1のコンタクト層4951、誘電体層4960および誘電体層4098を、それぞれ、誘電体層4092a、誘電体層4940a、第1のコンタクト層4951a、誘電体層4960aおよび誘電体層4098aとして示している。同様に、半導体受光デバイスPDにおける誘電体層4092、誘電体層4940、第1のコンタクト層4951、誘電体層4960および誘電体層4098を、それぞれ、誘電体層4092b、誘電体層4940b、第1のコンタクト層4951b、誘電体層4960bおよび誘電体層4098bとして示している。ここで、受光デバイスおける電極5012bは、発光デバイスにおける電極5012aと同様、第2の構造体層4097bの表面全体にわたって形成されており、それとともに光反射構造を構成する。
いうまでもなく、半導体発光デバイスLDと半導体受光デバイスPDとは互いに離間して設けられている。半導体発光デバイスLDにおける活性層は発光層として作用し、半導体受光デバイスPDにおける活性層は光吸収層として作用する。
以上の説明からわかるように、半導体発光デバイスLDは、図10に関して説明した半導体発光デバイス90と同じ構造を有する。そして、半導体発光デバイスLDにおける光半導体構造と、半導体受光デバイスPDにおける光半導体構造とは、層構成と構成材料が同じである。また、第1の構造体層および第2の構造体層を構成する母材と誘電体材料も同じであるが、屈折率が変化する周期は異なっていてもよい。
なお、図12−3及び図13−3に示す光半導体デバイスのそれぞれは、半導体発光デバイスLDの代わりに、図1に示す半導体発光デバイス1を有していてもよい。
かくして、1つの実施形態に係る光半導体デバイスは、1つの側面によると、同じ基板上に、半導体発光デバイスと半導体受光デバイスを備えるものとして記述することができる。
前記光半導体デバイスにおける半導体発光デバイスは、1つの実施形態において、前記基板に接して設けられた第1の光反射構造と、前記第1の光反射構造を取り囲む埋め込み層と、前記第1の光反射構造上に設けられた、活性層を含む光半導体構造と、前記光半導体構造上に設けられた第2の光反射構造と、前記光半導体構造に通電するための一対の電極とを備える。前記第1の光反射構造の表面と前記埋め込み層の表面は、同一平面内に含まれる。
前記光半導体デバイスにおける半導体発光デバイスは、別の実施形態において、前記基板上に設けられた活性層(発光層)を含む光半導体構造と、前記基板と前記光半導体構造との間に配置された第1の光反射構造と、前記光半導体構造の上側に配置された第2の光反射構造と、前記光半導体構造内に形成された電流狭窄層とを備え、前記第1の光反射構造は、屈折率が周期的に変化する第1の構造体層を含み、前記第2の光反射構造は、屈折率が周期的に変化する第2の構造体層を含む。前記電流狭窄層は、抵抗が相対的に高い高抵抗領域と抵抗が相対的に低い低抵抗領域とを含む。高抵抗領域と低抵抗領域は、前記第2の構造体層における前記周期に対応する周期で配置されている。そして、上記半導体発光デバイスは、前記光半導体構造に電流を印加するための一対の電極をさらに備え、その一方の電極は、前記電流狭窄層の表面の一部と接触している。
そして、前記光半導体デバイスにおける半導体受光デバイスは、前記基板上に設けられた、活性層(光吸収層)を含む光半導体構造と、前記基板と前記光半導体構造との間に配置された、光が前記基板側から入射される屈折率が周期的に変化する第1の構造体層と、前記光半導体構造の上側に配置された、屈折率が周期的に変化する第2の構造体層を含む光反射構造と、前記光半導体構造に電圧を印加する一対の電極を備える。
前記半導体発光デバイスにおける光半導体構造と、前記半導体受光デバイスにおける光半導体構造とは、同一の層構造を有し、同一の半導体材料で形成されている。
以上説明した実施形態において、活性層を有する光半導体構造が備える電流狭窄構造は、光半導体構造内にイオン注入により形成した電流狭窄層により提供されるものであったが、電流狭窄構造は、これに限らない。例えば、酸化により光半導体構造内に電流狭窄層を設けることができる。例えば光閉じ込め層とクラッド層との間に酸化用の層(GaAs系発光デバイスの場合、例えば、AlGaAs層;InP系発光デバイスの場合、例えばInAlAs;厚さはそれぞれ例えば50nm〜100nm)を介挿し、これを水蒸気酸化により酸化させて電流狭窄層を形成することができる。あるいは、電流狭窄構造は、ハイメサ構造に加工した光半導体構造(およびDBR)を囲包して半絶縁性半導体層(GaAs系発光デバイスの場合、例えばアンドープGaAs;InP系発光デバイスの場合、FeドープInPまたはRuドープInP)を形成することによって提供することができる。さらに、電流狭窄構造は、ハイメサ構造に加工した光半導体構造(およびDBR)を囲包して、絶縁性ポリマー(例えば、ポリイミド)を形成することによって提供することができる。さらには、電流狭窄構造は、光半導体構造(およびDBR)を単にハイメサ構造に加工する(メサ幅を例えば直径2〜10μmとする)ことによっても提供することができる。
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。