JP2016172708A - フィルムコーティング組成物並びに経口固形製剤及びその製造方法 - Google Patents

フィルムコーティング組成物並びに経口固形製剤及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】日米欧の公定書に記載されているPVAのけん化度規格に合致する、すなわち、けん化度が85.0モル%〜89.0モル%であるPVAを使用し、コーティングを行った場合に、コーティング中の錠剤同士の付着が発生しにくく、HPMC単独でコーティングを行った場合と同程度の高い生産性を発現しながらも防湿性に優れたフィルムコーティング組成物、並びにそれを用いた経口固形製剤及びその製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】平均けん化度が85.0モル%〜89.0モル%であるポリビニルアルコールと水溶性セルロース誘導体とを含む経口固形製剤用フィルムコーティング組成物であり、当該ポリビニルアルコールが、下記要件(A)又は要件(B)を満たす、経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。要件(A):ポリビニルアルコールの5.0質量%水溶液100.0gに対して、1−プロパノールを130.0ml加え、撹拌して得られる液の20℃における液の透明度が50.0%以下である。要件(B):ポリビニルアルコールの5.0質量%水溶液100.0gに対して、1−プロパノールを230.0ml加え、撹拌した液を、20℃で24時間静置して得られる上澄み液の濃度が0.75質量%以上である。【選択図】なし

Description

本発明は、医薬用経口固形製剤に用いるフィルムコーティング組成物並びにこれを被膜として用いた経口固形製剤及びその製造方法に関するもので、更には生産性が高く、ガスバリア性の高い医薬用経口固形製剤を製造するためのフィルムコーティング組成物、経口固形製剤及びその製造に関する。
フィルムコーティングや糖衣コーティングは、医薬用経口固形製剤において、薬物の不快な味に対するマスキング、酸素の遮断、防湿又は製品としての美観の向上等の目的で、薬物を含有する錠剤等の被覆用に、広く用いられる技術である。
フィルムコーティングは、糖衣コーティングに比べて、短時間で簡便に実施でき、またコーティング皮膜の厚みを薄くできることから、錠剤の大きさを小さくでき、得られた経口固形製剤の服用性に優れるという点でも有用である。
フィルムコーティングに用いられる基剤としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(以下、HPMCと略記する)をはじめとした様々なポリマーが用いられているが、近年ポリビニルアルコール(以下、PVAとも略記する)が注目されている。PVAフィルムは防湿性やガスバリア性に優れているため、臭いの強い薬物や酸化されやすい薬物、又は吸湿しやすい薬物を含む固形製剤にPVAのフィルムコーティングを施すことで、保存安定性の向上や臭気のマスキング効果を奏することができる。
一般に、医薬用あるいは医薬グレードとして市販されているPVAは、けん化度の範囲が85.0モル%〜89.0モル%の、いわゆる部分けん化タイプのPVAである。これは、日本、米国、ヨーロッパの公定書に記載されているPVAのけん化度規格の共通部分が85.0モル%〜89.0モル%であり、近年、医薬品のグローバル化が進む中で、製薬会社は日米欧3極で医薬品としての承認を受けるために、原料として使用するPVAも日本、米国、ヨーロッパのけん化度規格に合致した85.0モル%〜89.0モル%のPVAが望ましいという背景があるとともに、経口製剤に使用されるPVAとして、水溶性の高い部分けん化タイプのPVAが好適であるという理由があると考えられる。
しかしながら、これら医薬用で市販されているけん化度が85.0モル%〜89.0モル%のPVAをコーティング基剤として用いた場合、PVA水溶液の粘着性が高いため、コーティング中に固形製剤同士が付着したり、また固形製剤がコーティング機内に付着してしまうため、スプレー噴霧速度を高くすることができず、生産性が低いという問題があった。
PVAの粘着性を改善するための方法として、本発明者らは、けん化度が74.0〜89.0モル%のPVAとセルロース誘導体を含有するフィルムコーティング組成物を用いてコーティングを行う方法を開示している(特許文献1)。
この方法を用いることにより、PVAの粘着性を改善し、けん化度が85.0モル%〜89.0モル%の部分けん化タイプのPVA単独でコーティングを行った時よりもスプレー速度を上げられるため、コーティング時間を短縮することができる。
特開2013−253030号公報
しかしながら、上記方法を用いてコーティングを行った場合、従来の部分けん化タイプのPVAを単独でコーティングした場合に比べると、コーティング時間を短縮することができ、生産性は向上しているが、HPMCを単独でコーティングした場合に比べると、その生産性はまだ十分ではなく、改良の余地があった。
本発明は、上記現状に鑑み、日米欧の公定書に記載されているPVAのけん化度規格に合致する、すなわち、けん化度が85.0モル%〜89.0モル%であるPVAを使用し、コーティングを行った場合に、コーティング中の錠剤同士の付着が発生しにくく、HPMC単独でコーティングを行った場合と同程度の高い生産性を発現し、かつ高い防湿性を有したフィルムコーティング組成物、並びにそれを用いた経口固形製剤及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、PVAと水溶性セルロース誘導体を含有するフィルムコーティング組成物において、用いるPVAが同じけん化度であっても、けん化度の分布を変えることにより、コーティング時の粘着性やそれに伴う生産性が大きく変わることを見出した。
すなわち、けん化度85.0モル%〜89.0モル%のPVAの中で、けん化度分布を示す指標が特定の要件を満たす、けん化度分布の広いPVAと水溶性セルロース誘導体を組み合わせてフィルムコーティング剤として使用することで、HPMC単独と同等以上の高い生産性を実現でき、コーティング皮膜が優れた防湿性、ガスバリア性を発現するとともに、平滑性の高いコーティング錠が得られることを見出し、さらに研究を重ねて本発明を完成した。
即ち、本発明は、以下の経口固形製剤用フィルムコーティング組成物等に関する。
[1]平均けん化度が85.0モル%〜89.0モル%であるポリビニルアルコールと水溶性セルロース誘導体とを含む経口固形製剤用フィルムコーティング組成物であり、当該ポリビニルアルコールが、以下に示す要件(A)又は要件(B)を満たす、ポリビニルアルコールであることを特徴とする経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
要件(A):ポリビニルアルコールの5.0質量%水溶液100.0gに対して、1−プロパノールを130.0ml加え、撹拌して得られる液の20℃における液の透明度が50.0%以下である。
要件(B):ポリビニルアルコールの5.0質量%水溶液100.0gに対して、1−プロパノールを230.0ml加え、撹拌した液を、20℃で24時間静置して得られる上澄み液の濃度が0.75質量%以上である。
[2]平均けん化度が85.0モル%〜89.0モル%であるポリビニルアルコールと水溶性セルロース誘導体とを含む経口固形製剤用フィルムコーティング組成物であり、当該ポリビニルアルコールが、以下に示す要件(A)及び要件(B)を満たす、ポリビニルアルコールであることを特徴とする経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
要件(A):ポリビニルアルコールの5.0質量%水溶液100.0gに対して、1−プロパノールを130.0ml加え、撹拌して得られる液の20℃における液の透明度が50.0%以下である。
要件(B):ポリビニルアルコールの5.0質量%水溶液100.0gに対して、1−プロパノールを230.0ml加え、撹拌した液を、20℃で24時間静置して得られる上澄み液の濃度が0.75質量%以上である。
[3]フィルムコーティング組成物中におけるポリビニルアルコールと水溶性セルロース誘導体の質量比が、90:10〜60:40であることを特徴とする[1]または[2]に記載の経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
[4]水溶性セルロース誘導体がヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースから選ばれる少なくとも一種以上であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
[5]水溶性セルロース誘導体がヒドロキシプロピルメチルセルロースであることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
[6]ポリビニルアルコールが、4質量%水溶液粘度が2.0mPa・s以上10.0mPa・s以下であるという要件を満たすポリビニルアルコールであることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載の経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
[7]薬物を含有する錠剤に対して、[1]〜[6]のいずれかに記載のフィルムコーティング組成物で被覆されていることを特徴とする経口固形製剤。
[8]薬物を含有する錠剤に、[1]〜[6]のいずれかに記載のフィルムコーティング組成物を含む水溶液及び/又は水性溶液を塗布又は噴霧し、錠剤表面に当該フィルムコーティング組成物を被覆させる工程を含むことを特徴とする経口固形剤の製造方法。
本発明のフィルムコーティング組成物は、日米欧で医薬製剤に使用でき、コーティング中の錠剤同士の粘着が起こりにくく、大幅にコーティング時間を短縮することができる。
また、本発明のフィルムコーティング組成物を用いたコーティング錠は、表面の平滑性が高く、速溶錠として使用することができ、水溶性セルロース誘導体を用いたコーティング錠に比べて、高温、高湿度下での安定性に優れるフィルムコーティング組成物、それを用いた経口固形製剤及びその製造方法を提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
[PVA]
まず本発明の経口固形製剤用フィルムコーティング組成物に用いるPVAについて詳しく説明する。
本発明で用いられるPVAは、平均けん化度が85.0モル%〜89.0モル%であって、かつ、けん化度分布が従来のPVAより広いことが好ましい。
PVAの平均けん化度は、JIS K6726のけん化度測定方法に従って測定される。
けん化度分布を表す指標として、PVAが完全に溶解している水溶液に一定量の1−プロパノールを添加して混合した際に析出するPVA成分と析出しないPVA成分の量により表すことができ、本発明において、通常は、以下の要件(A)と要件(B)のいずれか、又は両方を満たすPVAを用いることが必要であり、その要件の意味について説明する。
「要件(A):ポリビニルアルコールの5.0質量%水溶液100.0gに対して、1−プロパノールを130.0ml加え、撹拌して得られる液の20℃における液の透明度が50.0%以下である。」
前記撹拌は、均一に行われることが好ましい。
前記撹拌方法は、特に限定されないが、例えば、スターラーを用いて500rpmで撹拌することが好ましい。
また、1−プロパノールの滴下速度は、特に限定されないが、例えば10ml/minが好ましい。
尚、前記「20℃における液」としては、十分に正確なものを得るために、液を20℃で所定時間(例えば、30分間から1時間程度)放置して液中の気泡が目視では確認できない液を使用してもよい。
該透明度は、好ましくは30.0%以下であり、より好ましくは20.0%以下である。
ここで、透明度の測定は、JIS K0115で規定される分光光度計を用い、光路長20mmの石英又はガラス製吸収セルを使用し、水を対照として430nmの透過率を求めるという方法で実施される。
ここで求められる透明度の意味としては、けん化度の高いPVA成分は1−プロパノールに溶解しにくいため、PVA水溶液に一定量の1−プロパノールを添加すると、高けん化度成分が析出し、濁り成分となるため、前記条件で透明度が50.0%以下になることということは、高けん化度成分を多く含んでいること、すなわち高けん化度側のけん化度分布が広いことを示す。
「要件(B):ポリビニルアルコールの5.0質量%水溶液100.0gに対して、1−プロパノールを230.0ml加え、撹拌した液を、20℃で24時間静置して得られる上澄み液の濃度が0.75質量%以上である。」
前記撹拌は、均一に行われることが好ましい。
前記撹拌方法は、特に限定されないが、例えば、スターラーを用いて500rpmで撹拌することが好ましい。
また、1−プロパノールの滴下速度は、特に限定されないが、例えば10ml/minが好ましい。
前記上澄み液の濃度は、好ましくは0.75質量%以上であり、より好ましくは0.80質量%以上である。
ここで、前記上澄み液は、例えば、ポリビニルアルコールの5.0質量%水溶液100.0gに対して、1−プロパノールを230.0ml加え、撹拌した液を、20℃で24時間静置して得られた液の液層から、該液の全量に対して30〜60重量%を採取することにより得ることができる。
上澄み液濃度の測定方法としては、例えば、当該上澄み液80gを沈殿成分が含まれないようにスポイトを用いてシャーレ上に採取し、60℃で5時間乾燥した後、105℃で24時間乾燥し、採取した液の重量と乾燥前後の重量の変化から算出することができる。
ここで求められる上澄み液濃度の意味としては、けん化度の低いPVA成分は、1−プロパノールを加えて析出しにくいため、PVA水溶液に一定量の1−プロパノールを添加すると、低けん化度成分は液中に溶解した状態で存在する。すなわち、上澄み液の濃度が0.75質量%以上になるということは、低けん化度側のけん化度分布が広いことを示す。
本発明のフィルムコーティング組成物に用いられるPVAは、通常は、平均けん化度が85.0モル%〜89.0モル%の範囲にあって、かつ、前記の要件(A)を満たす、すなわち高けん化度側のけん化度分布が広いものであるか、前記の要件(B)を満たす、すなわち低けん化度側のけん化度分布が広いものであり、要件(A)と要件(B)の両方を満たす、すなわち高けん化度側、低けん化度側の両方の分布が広いことが好ましい。
本発明のフィルムコーティング組成物に用いられるPVAは、前記要件(A)及び/又は前記要件(B)を満たすため、けん化度分布が広いものである。
使用するPVAの要件(A)の条件で測定される透明度が50.0%より大きい場合、このようなPVAを用いてコーティング試験を行っても、錠剤同士の付着が起きやすく、コーティング不良が起こったり、コーティング時間が長くなってしまうことがあるため好ましくない。
また、使用するPVAの要件(B)の条件で測定される上澄み液濃度が0.75質量%より小さい場合、このようなPVAを用いてコーティング試験を行っても、錠剤同士の付着が起きやすく、コーティング不良が起こったり、コーティング時間が長くなってしまうことがあるため好ましくない。
本発明で用いられるPVAの製造方法としては、ビニルエステル系モノマーの重合体をけん化する等の公知の方法が用いられ、かかるビニルエステル系モノマーとしては、酢酸ビニルが挙げられる。
酢酸ビニルの重合方法としては、特に限定されず、例えば、従来公知の塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等が挙げられるが、溶剤としてメタノールを用いた溶液重合が工業的に好ましい。該溶液重合には、過酸化物系、アゾ系等の公知の開始剤を用いることができ、酢酸ビニルとメタノールの配合比、重合収率を変えることにより、得られるポリ酢酸ビニルの重合度を調整することができる。また、本発明のPVAを得るための原料として、市販のポリ酢酸ビニル樹脂を使用することもできる。
得られたポリ酢酸ビニルのけん化方法としては、従来から公知のアルカリ触媒又は酸触媒を用いたけん化方法を適用することができ、中でもポリ酢酸ビニルのメタノール溶液又はポリ酢酸ビニルのメタノール、水、酢酸メチル等の混合溶液に水酸化ナトリウム等のアルカリを加えて、撹拌して混合しながら、ポリ酢酸ビニルのアセチル基を加アルコール分解する方法が、工業的に好ましい。
その後、得られた塊状物、ゲル状物あるいは粒状物を粉砕し、必要に応じて添加したアルカリを中和した後、固形物と液分を分離し、固形物を乾燥することによりPVAを得ることができる。
本発明で用いられるPVAは、けん化反応を通常より不均一な系で行うことで製造することができる。具体的な方法としては、けん化時のポリ酢酸ビニルのメタノール溶液の濃度を高くして(例えば、55質量%以上)けん化を行う方法、アルカリを添加して混合する際の撹拌速度を低くして(例えば、20rpm以下)けん化を行う方法、アルカリを添加して混合する際の撹拌及び混合時間を短縮してけん化を行う方法、アルカリ量を増やして短時間でけん化を行う方法、ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液と添加するアルカリの温度を調整する等して、けん化反応系に温度勾配又は温度分布を与えてけん化する方法が挙げられる。
その他にも、けん化反応速度に影響を与える水、酢酸メチル等の溶剤を不均一な状態になるように添加して、けん化反応を行う方法等があり、これらの操作を行うことで、作成したPVA中のけん化度にムラが生じやすくなり、それにより従来の方法で作成したPVAと同じ平均けん化度であっても、けん化度分布が広いPVAを製造することができる。
また、上記方法以外にも、加重平均けん化度が目的の値になるようにけん化度の異なる2種以上のPVA粉末を配合したPVAも、PVAの一形態として本発明において使用することができる。
本発明で用いられるPVAは、主として医薬用経口固形製剤のフィルムコーティング組成物に用いられることから、けん化度の範囲としては、医薬品添加物規格、米国薬局方及びヨーロッパ薬局方の3つの公定書に記載されているPVAのけん化度の規格内に入ることが求められ、また、体内で速やかに溶解することが求められるため、85.0モル%〜89.0モル%である。平均けん化度が85.0モル%未満の場合は、グローバルに販売される医薬用製剤の原料として使用できず、また、疎水性基の割合が多くなることから、親水性が低下したり、水溶液を調製する際に高温で析出する傾向が出てくるため、取扱いが難しくなるという問題がある。一方、平均けん化度が89.0モル%よりも大きい場合、グローバルに販売される医薬用製剤の原料として使用できず、PVAの水酸基の増加に伴う結晶性の向上により、水への溶解性が低下し、経口固形製剤のフィルムコーティングに使用した際、溶出速度が低下するという問題がある。
本発明で用いられるPVAの重合度は特に制限はないが、4質量%水溶液粘度(JIS K6726に従って測定)は、2.0mPa・s以上10.0mPa・s以下が好ましく、3.0mPa・s以上7.0mPa・s以下がさらに好ましい。
4質量%水溶液粘度が2.0mPa・s未満の場合、コーティング後に錠剤表面に形成されるフィルムの強度が低くなる恐れがあり、好ましくない。4質量%水溶液粘度が10mPa・sより大きい場合、粘度が高いため、コーティング時のスプレー速度を上げられず、生産性が低下する恐れがあり、好ましくない。
[水溶性セルロース誘導体]
本発明における水溶性セルロース誘導体としては、例えば、セルロースの水酸基の一部をエーテル化した非イオン性高分子等であり、該非イオン性高分子としては、例えば、メチルセルロース等のアルキルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース、HPMC(日本薬局方ではヒプロメロースとも称される。)等のヒドロキシアルキルアルキルセルロース等が好ましく挙げられる。これらは1種単独もしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
水溶性セルロース誘導体の粘度は特に制限されないが、通常は、20℃における2質量%水溶液の粘度が、2〜50mPa・sが好ましく、2〜25mPa・sがさらに好ましく、2〜15mPa・sが特に好ましい。2mPa・s未満では、水溶性セルロース誘導体の重合度が極端に低下するためフィルムとしての強度を保持できないおそれがある。一方、50mPa・sを超えると、コーティング水溶液の濃度を低く抑えなければならず実用的ではない。なお、上記粘度は第16改正日本薬局方に記載の粘度測定方法で測定できる。
水溶性セルロース誘導体の置換度は、特に制限されず、日本薬局方で規定されるHPMC、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が使用できる。
HPMCを用いる場合、メトキシ基の置換度は16.5〜30.0質量%が好ましく、19.0〜30.0質量%がさらに好ましく、28.0〜30.0質量%が特に好ましい。またHPMCのヒドロキシプロポキシ基の置換度は4.0〜32.0質量%が好ましく、4.0〜12.0質量%がさらに好ましく、7.0〜12.0質量%が特に好ましい。
メチルセルロースを用いる場合、メトキシ基の置換度は、26.0〜33.0質量%が好ましく、27.5〜31.5質量%が特に好ましい。
ヒドロキシプロピルセルロースを用いる場合、ヒドロキシプロポキシ基は53.4〜77.5質量%が好ましく、60.0〜70.0質量%が特に好ましい。
なお、これらの置換度は、第16改正日本薬局方に記載のヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースの置換度の測定方法に準拠した方法で測定できる。
これらの水溶性セルロース誘導体の中でも特にHPMCがPVAの粘着性を改善するのに好ましい。
[フィルムコーティング組成物]
本発明のフィルムコーティング組成物中におけるPVAと水溶性セルロース誘導体の含有量の質量比は、好ましくは90:10〜60:40であり、より好ましくは80:20〜70:30である。PVAの比率が90%を超えると、コーティング時の粘着性改善効果が十分でなく、コーティング時間が長くなるため好ましくない。一方で、水溶性セルロース誘導体の比率が40%を超えると、錠剤表面に形成されるフィルムの防湿効果が十分でないため好ましくない。
本発明のコーティング組成物は、必要に応じて、通常医薬製剤に用いられる薬物、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、クエン酸トリエチル等の可塑剤、酸化チタン、タルク、コロイダルシリカ等の無機化合物、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の滑択剤、PVAや水溶性セルロース誘導体以外のポリマー、界面活性剤、着色剤、顔料、甘味料、コーティング剤、消泡剤及びpH調製剤等の添加剤を含んでいても良い。これら添加剤は、1種又は2種以上を使用することができる。また、これらを添加する場合の含有量は、PVA100質量部に対して、好ましくは200質量部以下、より好ましくは100質量部以下である。この中でもタルクや酸化チタン等の無機添加物は、PVAの粘着性改善の効果が大きく、好適に用いることができる。
[経口固形製剤]
本発明は、薬物を含有する錠剤に対して、本発明のフィルムコーティング組成物で被覆された経口固形製剤も含有する。
本発明の経口固形製剤は、通常は、薬物を含有する芯部と、該芯部を被覆する被覆部からなり、該被覆部が前記フィルムコーティング組成物を少なくとも含む。芯部としては、錠剤、顆粒剤、細粒剤、カプセル剤等が挙げられるが、その中でも特に錠剤が好ましい。
また、前記薬物は、経口投与可能な薬物であれば特に限定されるものではない。
薬物を含有する芯部には、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑択剤、凝集防止剤、医薬化合物の溶解補助剤等、通常この分野で常用され得る種々の添加剤を配合してもよい。
賦形剤としては、白糖、乳糖、マンニトール、グルコース等の糖類、でんぷん、結晶セルロース、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム等が挙げられる。
結合剤としては、PVA、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルピロリドン、グルコース、白糖、乳糖、麦芽糖、デキストリン、ソルビトール、マンニトール、ヒドロキシエチルセルロース、HPMC、ヒドロキシプロピルセルロース、マクロゴール類、アラビアゴム、ゼラチン、寒天、でんぷん等が挙げられる。
崩壊剤としては、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース又はその塩、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポリビニルピロリドン、結晶セルロース及び結晶セルロース・カルメロースナトリウム等が挙げられる。
また、滑択剤、凝集防止剤としては、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、コロイダルシリカ、ステアリン酸、ワックス類、硬化油、ポリエチレングリコール類、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。
更に、医薬化合物の溶解補助剤としては、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸、アジピン酸等の有機酸等が挙げられる。
これら添加剤は、1種又は2種以上を使用することができる。また、これら添加剤の含有量は、薬剤の種類等に応じて適宜決定することができる。
次に、本発明の経口固形製剤の製造方法について説明する。
本発明のフィルムコーティング組成物の錠剤への被覆方法としては、特に限定されず、従来公知のコーティング手段を用いることができる。一般的に行われているのはスプレーコーティングであるが、その場合は、パンコーティング装置、ドラムタイプコーティング装置等を用いて行うことができ、これらの装置に付帯するスプレー装置にはエアースプレー、エアレススプレー等を用いることができる。
本発明のフィルムコーティング組成物の錠剤への被覆方法としては、例えば上述したコーティング装置を用い、薬物を含有する錠剤に、必要に応じて添加剤を添加した本発明のフィルムコーティング組成物を水又はエタノール等の有機溶媒あるいはこれらの混合液に溶解もしくは分散させた溶液を調製し、乾燥と同時に該溶液を塗布又は噴霧して錠剤表面へ被覆する方法等が挙げられる。
錠剤の表面にコーティングされるフィルムコーティング組成物の被覆量は、固形製剤の種類、形、大きさ、表面状態、更に固形製剤中に含まれる薬剤及び添加剤の性質等によって異なるが、錠剤全量に対して、好ましくは1〜10質量%、更に好ましくは1〜7質量%、特に好ましくは2〜6質量%である。被覆量が少なすぎると、完全な皮膜が得られず、十分な防湿効果、酸素バリア性、臭気マスキング効果が得られない。一方、被覆量が多すぎるとコーティングに要する時間が長くなるという問題がある。
本発明の経口固形製剤は、本発明のフィルムコーティング組成物によって形成されるフィルム層の下にHPMC等の通常、医薬製剤のコーティングに常用され得る種々のポリマーを成分として含有する組成物を用いてアンダーコーティングを行ったり、本発明のフィルムコーティング組成物によって形成される皮膜層の上に、医薬製剤のコーティングに常用され得る種々のポリマーを成分として含有する組成物を用いてオーバーコーティングを行う等して、複数の成分を含むフィルムを形成させた多層フィルムコーティング経口固形製剤としても良い。
以下、本発明について実施例をあげて具体的に説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。
尚、以下の実施例及び比較例中、特にことわりのないかぎり、「%」及び「部」は質量基準を表す。
<PVAの合成>
(比較合成例1)
市販のポリ酢酸ビニル樹脂(日本酢ビ・ポバール製 JMR-30LL 重合度590)を100℃で真空乾燥して水分を除去した後、メタノールに溶解し、ポリ酢酸ビニルの46質量%メタノール溶液を得た。この溶液500質量部を40℃に加温し、35℃に調整した水酸化ナトリウムの3質量%メタノール溶液16質量部を加え、プロペラタイプの撹拌翼を用いて300rpmで、1分間撹拌した後、40℃で40分間静置することでけん化反応を行った。得られたゲル状物を粉砕し、メタノール570質量部と酢酸メチル230質量部及び水17質量部からなる混合溶媒に浸漬し、ゆっくりと撹拌しながら更に1時間、40℃でけん化反応を行ったのち、pHが8〜9になるように1質量%酢酸水溶液を加えて中和を行った後、固形物と液分を分離し、固形物を60℃で8時間乾燥し、PVA樹脂(A)を得た。
JIS K6726の方法で測定したこのPVA樹脂(A)の平均けん化度は88.3モル%で、4質量%水溶液粘度は5.3mPa・sであった。また、このPVA樹脂(A)の5.0質量%水溶液100gに1−プロパノールを130ml加えた時の20℃における液の透明度は99.4%であり、このPVA樹脂(A)の5.0質量%水溶液100gに1−プロパノールを230ml加え、20℃で24時間静置した後の上澄み液濃度は、0.62質量%であった。PVA樹脂(A)の平均けん化度、4質量%水溶液粘度、及び1−プロパノールを添加した時の透明度と上澄み液濃度の値を表1に示す。
(合成例1)
ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液に水酸化ナトリウム溶液を加えて撹拌する際、撹拌速度を60rpmで、30秒間行い、通常の条件よりも不均一になるように混合を実施した以外は、比較合成例1と同様にして、PVA樹脂(B)を得た。
JIS K6726の方法で測定したこのPVA樹脂(B)の平均けん化度は88.2モル%で、4質量%水溶液粘度は5.2mPa・sであった。また、このPVA樹脂(B)の5.0質量%水溶液100gに1−プロパノールを130ml加えた時の20℃における液の透明度は18.5%であり、このPVA樹脂(B)の5.0質量%水溶液100gに1−プロパノールを230ml加え、20℃で24時間静置した後の上澄み液濃度は、0.83質量%であった。PVA樹脂(B)の平均けん化度、4質量%水溶液粘度、及び1−プロパノールを添加した時の透明度と上澄み液濃度の値を表1に示す。
(合成例2)
ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液に水酸化ナトリウム溶液を加えて撹拌する際、撹拌速度を20rpmで、60秒間行い、通常の条件よりも不均一になるように混合を実施した以外は、比較合成例1と同様にして、PVA樹脂(C)を得た。
PVA樹脂(C)の平均けん化度、4質量%水溶液粘度、及び1−プロパノールを添加した時の透明度と上澄み液濃度の値を表1に示す。
(合成例3)
けん化反応を行う際、ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液濃度を55質量%とし、この溶液500質量部に添加する水酸化ナトリウム溶液を23質量部とした以外は比較合成例1と同様にして、PVA樹脂(D)を得た。PVA樹脂(D)の平均けん化度、4質量%水溶液粘度、及び1−プロパノールを添加した時の透明度と上澄み液濃度の値を表1に示す。
(合成例4)
けん化反応を行う際、ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液と水酸化ナトリウムとの混合液の容器の上半分にバンドヒーターを巻いて50℃に加熱し、けん化反応時の温度が上半分を50℃、下半分が室温(25℃)になるように温度勾配を設け、静置する時間を50分とした以外は比較合成例1と同様にして、PVA樹脂(E)を得た。PVA樹脂(E)の平均けん化度、4質量%水溶液粘度、及び1−プロパノールを添加した時の透明度と上澄み液濃度の値を表1に示す。
(合成例5)
ポリ酢酸ビニルの46質量%メタノール溶液500質量部をそれぞれ別の容器に250質量部ずつに分け、40℃に加温し、35℃に調整した水酸化ナトリウムの3質量%メタノール溶液を、一方には10質量部、もう一方には6質量部を加え、いずれも同時に300rpmで1分間撹拌した後、40℃で40分静置して別々にけん化反応を行って得られたゲル状物を一緒に粉砕した以外は、比較合成例1と同様にして、PVA樹脂(F)を得た。PVA樹脂(F)の平均けん化度、4質量%水溶液粘度、及び1−プロパノールを添加した時の透明度と上澄み液濃度の値を表1に示す。
(合成例6)
市販のPVA樹脂(日本酢ビ・ポバール製 JL−05E けん化度:80.2モル%、4質量%水溶液粘度:5.1mPa・s)40質量部と市販のPVA樹脂(日本酢ビ・ポバール製 JT−05 けん化度:94.0モル%、4質量%水溶液粘度:5.6mPa・s)60質量部をポリエチレン袋に入れ、袋を約100回振り、PVA粉末を均一に混合して、けん化度分布の広いPVA樹脂(G)を作成した。PVA樹脂(G)の平均けん化度、4質量%水溶液粘度、及び1−プロパノールを添加した時の透明度と上澄み液濃度の値を表1に示す。
(合成例7)
市販のPVA樹脂(日本酢ビ・ポバール製 JP−05 けん化度:87.5モル%、4質量%水溶液粘度:5.3mPa・s)10質量部と市販のPVA樹脂(日本酢ビ・ポバール製 JT−05 けん化度:94.0モル%、4質量%水溶液粘度:5.6mPa・s)90質量部をポリエチレン袋に入れ、袋を約100回振り、PVA粉末を均一に混合して、けん化度分布の広いPVA樹脂(H)を作成した。PVA樹脂(H)の平均けん化度、4質量%水溶液粘度、及び1−プロパノールを添加した時の透明度と上澄み液濃度の値を表1に示す。
(合成例8)
市販のPVA樹脂(日本酢ビ・ポバール製 JL−05E けん化度:80.2モル%、4質量%水溶液粘度:5.1mPa・s)8質量部と市販のPVA樹脂(日本酢ビ・ポバール製 JP−05 けん化度:88.8モル%、4質量%水溶液粘度:5.3mPa・s)92質量部をポリエチレン袋に入れ、袋を約100回振り、PVA粉末を均一に混合して、けん化度分布の広いPVA樹脂(I)を作成した。PVA樹脂(I)の平均けん化度、4質量%水溶液粘度、及び1−プロパノールを添加した時の透明度と上澄み液濃度の値を表1に示す。
<コーティング条件>
装置:ハイコーター(HC−FZ−Labo、フロイント産業製)
錠剤仕込み量:1000g
給気温度:70−80℃
排気温度:44−52℃
給気空気量:0.6m3/min
スプレーガン数:1個
スプレーガン エア量(アトマイズドエア):30L/min
スプレーガン エア量(パターンエア):9L/min
スプレー速度:チューブポンプの吐出量で調整
パン回転数:18rpm
<コーティング時間の評価>
コーティング試験において、コーティング溶液をスプレー塗布する際のスプレー速度を3.0g/minで開始し、錠剤同士及び錠剤とパンとの貼り付きが起こらない場合は、徐々にスプレー速度を高くしていき、錠剤同士又は錠剤とパンとの貼り付きが発生するまでスプレー速度を上げた。その後、一旦、スプレー速度を落とし、錠剤同士又は錠剤とパンとの貼り付きが発生しない速度になったことを確認し、10分間そのスプレー速度でコーティング試験を継続して貼り付きが発生しないことを確認し、該スプレー速度を最大スプレー速度とした。一方、初期のスプレー速度3.0g/minで錠剤同士又は錠剤とパンとの貼り付きが起こる場合は、徐々にスプレー速度を落としていき、10分間そのスプレー速度で貼り付きが発生しないことを確認し、該スプレー速度を最大スプレー速度とした。さらに、最大スプレー速度から、錠剤に対し固形分で3質量%の被覆を施すための最短コーティング時間を算出した。
<水蒸気透過度の評価>
固形分濃度が10質量%のコーティング組成物の溶液もしくは分散液を、PETシート上にキャスティングし、25℃×65%RHの恒温恒湿機内で乾燥して、厚さ100μmのフィルムを得た。得られたフィルムの水蒸気透過度をL80−5000型水蒸気透過度計(Systech Instruments社製)を用いてJIS K7129の方法に従った方法で25℃、65%相対湿度差の水蒸気透過度を測定した。
(実施例1)
合成例1のPVA樹脂(B)24質量部とHPMC(信越化学工業製、TC−5R、メトキシ基置換度29質量%、ヒドロキシプロポキシ基置換度10質量%、2質量%水溶液粘度6mPa・s)6質量部を精製水270質量部に添加し、80℃まで加温しながら1時間撹拌し、その後、30℃まで冷却しながら撹拌を行い、コーティング溶液を調製した(PVA:HPMC=8:2 水溶液濃度:10質量%)。このコーティング溶液を用い、乳糖及びコーンスターチを主体とした素錠に対してコーティング試験を実施し、最大スプレー速度、最短コーティング時間及びコーティング組成物の水蒸気透過度を評価した。
合成例1のPVAとHPMCを含むフィルムコーティング液の最大スプレー速度は6.25g/minで、3質量%の被覆を施すためのコーティング時間は48分であった。また、水蒸気透気度は、57g/m・日であった。結果を表2に示す。
(実施例2〜8)
合成例1のPVA樹脂(B)に代えて、それぞれ合成例2〜8のPVA樹脂(C)〜(I)を用いた以外は、実施例1と同様にしてコーティング試験を実施し、最大スプレー速度、最短コーティング時間及び水蒸気透過度を評価した。結果を表2に示す。
(実施例9)
実施例1のHPMCに代えて、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達製、HPC−L、2質量%水溶液粘度6.3mPa・s)を用いた以外は、実施例1と同様にしてコーティング試験を実施し、最大スプレー速度、最短コーティング時間及び水蒸気透過度を評価した。結果を表2に示す。
(実施例10〜12)
実施例1のPVAとHPMCの質量比を表2に示した割合にした以外は実施例1と同様にしてコーティング試験を実施し、最大スプレー速度、最短コーティング時間及び水蒸気透過度を評価した。結果を表2に示す。
(実施例13)
実施例1のPVAとHPMCの質量比を表2に示した割合にした以外は実施例1と同様にしてコーティング試験を実施し、最大スプレー速度、最短コーティング時間及び水蒸気透過度を評価した。結果を表2に示す。
(比較例1)
合成例1のPVA樹脂(B)に代えて、比較合成例1のPVA樹脂(A)を用いた以外は、実施例1と同様にしてコーティング試験を実施し、最大スプレー速度、最短コーティング時間及び水蒸気透過度を評価した。結果を表2に示す。
(比較例2)
合成例1のPVA樹脂(B)に代えて、市販の部分けん化PVA(日本酢ビ・ポバール製 JP−05 けん化度:88.2モル%、4質量%水溶液粘度:5.3mPa・s)を使用した以外は、実施例1と同様にしてコーティング試験を実施し、最大スプレー速度、最短コーティング時間及び水蒸気透過度を評価した。結果を表2に示す。なお、使用したJP−05の1−プロパノールを添加した時の透明度と上澄み液濃度の値を表1に示す。
(比較例3)
市販のHPMC(信越化学工業製、TC−5R、メトキシ基置換度29質量%、ヒドロキシプロポキシ基置換度10質量%、2質量%水溶液粘度6mPa・s)30質量部を精製水399質量部に撹拌しながら添加し、2時間撹拌した後、一晩放置してコーティング溶液を調整した(水溶液濃度:7質量%)。実施例1において、コーティング溶液を、この作成したコーティング溶液に変更した以外は、実施例1と同様にしてコーティング試験を実施し、最大スプレー速度、最短コーティング時間及び水蒸気透過度を評価した。結果を表2に示す。
Figure 2016172708
Figure 2016172708
表2から明らかなように、実施例1〜8で使用された、要件(A)及び/又は(B)を満たす合成例1〜8のけん化度分布の広いPVA樹脂(B)〜(I)を使用することにより、比較例1〜2と比較して、スプレー速度を速くすることができ、短時間で錠剤に所定量のフィルムコーティングを施すことができる。また、比較例3のHPMC単独コーティングと比較しても、同程度のコーティング時間となることが確認された。このようにスプレー速度が速く、それによりコーティング時間が短くなるということは、錠剤同士及び錠剤とパンとの貼り付きが発生しにくいことを意味する。すなわち、本発明のフィルムコーティング組成物は、錠剤にコーティングする際の錠剤同士及び錠剤とパンとの貼り付きが発生しにくいものであることが確認された。
また、実施例1〜8のコーティング組成物によって形成されるフィルムは従来のPVAとHPMCからなるフィルムコーティング組成物と同様に低い水蒸気透過性を示しており、比較例3のHPMC単独コーティングと比べると、水蒸気透過性が著しく低くなっていた。
また実施例9のようにヒドロキシプロピルセルロースを用いた場合にも、HPMCを用いた時と同様の高い生産性と防湿効果を発現することが確認された。
このように、本発明のフィルムコーティング組成物を用いることで、防湿性の高い皮膜を形成した錠剤の製造を短時間で製造することが可能になる。
本発明のフィルムコーティング組成物は、日米欧で医薬製剤に使用でき、従来のPVAとHPMCを含むフィルムコーティング組成物を用いた場合に比べて、錠剤同士の粘着が発現されにくく、それによりコーティング時間を短縮でき、かつ防湿性に優れ、水溶性の高いコーティング皮膜を形成することができるため、本発明のフィルムコーティング組成物を用いて経口固形製剤を製造することは、工業的に極めて有用である。

Claims (8)

  1. 平均けん化度が85.0モル%〜89.0モル%であるポリビニルアルコールと水溶性セルロース誘導体とを含む経口固形製剤用フィルムコーティング組成物であり、当該ポリビニルアルコールが、以下に示す要件(A)又は要件(B)を満たす、ポリビニルアルコールであることを特徴とする経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
    要件(A):ポリビニルアルコールの5.0質量%水溶液100.0gに対して、1−プロパノールを130.0ml加え、撹拌して得られる液の20℃における液の透明度が50.0%以下である。
    要件(B):ポリビニルアルコールの5.0質量%水溶液100.0gに対して、1−プロパノールを230.0ml加え、撹拌した液を、20℃で24時間静置して得られる上澄み液の濃度が0.75質量%以上である。
  2. 平均けん化度が85.0モル%〜89.0モル%であるポリビニルアルコールと水溶性セルロース誘導体とを含む経口固形製剤用フィルムコーティング組成物であり、当該ポリビニルアルコールが、以下に示す要件(A)及び要件(B)を満たす、ポリビニルアルコールであることを特徴とする経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
    要件(A):ポリビニルアルコールの5.0質量%水溶液100.0gに対して、1−プロパノールを130.0ml加え、撹拌して得られる液の20℃における液の透明度が50.0%以下である。
    要件(B):ポリビニルアルコールの5.0質量%水溶液100.0gに対して、1−プロパノールを230.0ml加え、撹拌した液を、20℃で24時間静置して得られる上澄み液の濃度が0.75質量%以上である。
  3. フィルムコーティング組成物中におけるポリビニルアルコールと水溶性セルロース誘導体の質量比が、90:10〜60:40であることを特徴とする請求項1または2に記載の経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
  4. 水溶性セルロース誘導体が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースから選ばれる少なくとも一種以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
  5. 水溶性セルロース誘導体がヒドロキシプロピルメチルセルロースであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
  6. ポリビニルアルコールが、4質量%水溶液粘度が2.0mPa・s以上10.0mPa・s以下であるという要件を満たすポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
  7. 薬物を含有する錠剤に対して、請求項1〜6のいずれか1項に記載のフィルムコーティング組成物で被覆されていることを特徴とする経口固形製剤。
  8. 薬物を含有する錠剤に、請求項1〜6のいずれか1項に記載のフィルムコーティング組成物を含む水溶液及び/又は水性溶液を塗布又は噴霧し、錠剤表面に当該フィルムコーティング組成物を被覆させる工程を含むことを特徴とする経口固形剤の製造方法。
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