JP6396220B2 - フィルムコーティング液並びに経口固形製剤及びその製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、これら医薬用で市販されている部分けん化PVAを水に溶解させて作製したフィルムコーティング溶液を用いて錠剤コーティングを行う場合、PVA水溶液の粘着性が高いため、コーティング中に固形製剤同士が付着したり、また固形製剤がコーティング機内に付着してしまうため、スプレー噴霧速度を高くすることができず、生産性が低いという問題があった。
さらに、本発明者らは、PVAとセルロース誘導体を含有するフィルムコーティング組成物を用いてコーティングを行う方法を開示している(特許文献3)。
これらのいずれの方法も、PVA水溶液の粘着性を改善し、部分けん化PVA単独でコーティングを行った時よりもスプレー速度を上げられるため、コーティング時間を短縮することができる。
また、特許文献2や特許文献3に記載の方法は、PVA以外の成分としてポリオキシエチレン類やセルロース誘導体を含んでいるため、これらと相互作用を起こすような薬物を含む固形製剤のコーティングには使用することができないという問題がある。さらに、ポリオキシエチレン類やセルロース誘導体などのPVA以外の添加剤を加えることは、PVAが本来有する防湿性やガスバリア性を低下させる要因にもなる。
[1]平均けん化度が85.0モル%未満のポリビニルアルコール(A)の水溶液及び/または水性液と、平均けん化度が89.0モル%より大きいポリビニルアルコール(B)の水溶液及び/または水性液を含むことを特徴とする経口固形製剤用フィルムコーティング液であり、かつ、当該経口固形製剤用フィルムコーティング液中のポリビニルアルコールの平均けん化度が85.0モル%〜89.0モル%である経口固形製剤用フィルムコーティング液。
[2]前記フィルムコーティング液中のPVAの総量に対し、平均けん化度が85.0モル%未満のPVA(A)の割合と、平均けん化度が89.0モル%より大きいPVA(B)の割合が、それぞれ2.0質量%以上であることを特徴とする前記[1]に記載の経口固形製剤用フィルムコーティング液。
[3]粘度が、200mPa・s以下であることを特徴とする前記[1]または[2]に記載の経口固形製剤用フィルムコーティング液。
[4]薬物を含有する錠剤に対して、前記[1]〜[3]のいずれか1項に記載のフィルムコーティング液が塗布または噴霧され、錠剤表面にポリビニルアルコールを含む被覆層が形成されていることを特徴とする経口固形製剤。
[5]薬物を含有する錠剤に、前記[1]〜[3]のいずれか1項に記載のフィルムコーティング液を塗布または噴霧し、錠剤表面にポリビニルアルコールを含む被覆層を形成させる工程を含むことを特徴とする経口固形製剤の製造方法。
[フィルムコーティング液]
まず本発明の経口固形製剤用フィルムコーティング液について詳しく説明する。
本発明の経口固形製剤用フィルムコーティング液は、平均けん化度が85.0モル%未満のPVA(A)の水溶液及び/または水性液と、平均けん化度が89.0モル%より大きいPVA(B)の水溶液及び/または水性液を含み、かつ、当該フィルムコーティング液中のPVAの平均けん化度が85.0モル%〜89.0モル%であるという特徴を有する。すなわち、フィルムコーティング液中のPVAの平均けん化度が85.0モル%〜89.0モル%でありながら、けん化度分布が、平均けん化度の範囲が85.0モル%〜89.0モル%の市販されている従来のPVAよりも広いことが重要である。
PVAの平均けん化度は、JIS K6726のけん化度測定方法に従って測定される。
また、本発明で使用されるPVAの水溶液、水性液に用いられる溶媒としては、水または水とエタノールなどの有機溶媒との混合溶媒を使用することができる。
本発明は、薬物を含有する錠剤に対して、本発明のフィルムコーティング液が塗布または噴霧され、錠剤表面にPVAを含む被覆層が形成されている経口固形製剤も含む。また、本発明の経口固形製剤は、薬物を含有するコア層を含むことが好ましい。
薬物を含有する錠剤には、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑択剤、凝集防止剤、医薬化合物の溶解補助剤等、通常この分野で常用され得る種々の添加剤を配合してもよい。賦形剤としては、白糖、乳糖、マンニトール、グルコース等の糖類、でんぷん、結晶セルロース、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム等が挙げられ、結合剤としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルピロリドン、グルコース、白糖、乳糖、麦芽糖、デキストリン、ソルビトール、マンニトール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、マクロゴール類、アラビアゴム、ゼラチン、寒天、でんぷん等が挙げられる。崩壊剤としては、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース又はその塩、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポリビニルピロリドン、結晶セルロース及び結晶セルロース・カルメロースナトリウム等が挙げられる。また、滑択剤、凝集防止剤としては、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、コロイダルシリカ、ステアリン酸、ワックス類、硬化油、ポリエチレングリコール類、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。更に、医薬化合物の溶解補助剤としては、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸、アジピン酸等の有機酸等が挙げられる。これら添加剤は、1種又は2種以上を使用することができる。また、これら添加剤の含有量は、薬剤の種類等に応じて適宜決定することができる。
本発明のフィルムコーティング液の錠剤への被覆方法としては、特に限定されず、従来公知のコーティング手段を用いることができる。一般的に行われているのはスプレーコーティングであるが、その場合は、パンコーティング装置、ドラムタイプコーティング装置等を用いて行うことができ、これらの装置に付帯するスプレー装置にはエアースプレー、エアレススプレー等を用いることができる。
なお同実施例中、特にことわりのないかぎり、「%」および「部」は質量基準を表す。
(製造例1)
市販のPVA樹脂(日本酢ビ・ポバール製 JT−05 平均けん化度:94.0モル%、4質量%水溶液粘度:5.6mPa・s)30質量部を精製水220質量部に添加し、80℃まで加温しながら1時間撹拌してPVA樹脂水溶液(PVA(B)の水溶液)を調製した(固形分濃度:12質量%)。同様の方法で、市販のPVA樹脂(日本酢ビ・ポバール製 JL−05E 平均けん化度:80.2モル%、4質量%水溶液粘度:5.1mPa・s)30質量部を精製水220質量部に溶解させ、固形分濃度が12質量%のPVA樹脂水溶液(PVA(A)の水溶液)を調製した。これらのPVA樹脂水溶液はそれぞれ250質量部ずつ作製した。得られた2種類のPVA樹脂水溶液のうち、JT−05の水溶液の60質量%(150質量部)と、JL−05Eの水溶液の40質量%(100質量部)をそれぞれ量りとり、室温(25℃)で混合した後、均一になるまで撹拌して、フィルムコーティング液250質量部を得た。得られたフィルムコーティング液の粘度を測定した後(B型粘度計、20℃、20rpm)フィルムコーティング液をPETシート上に流延し、室温(25℃)で24時間乾燥した後、メタノール洗浄を行い、室温(25℃)で24時間乾燥して得られた厚さ100μmの皮膜をJIS K6726に従って平均けん化度を測定した。製造例1のフィルムコーティング液中のPVAの平均けん化度およびフィルムコーティング液の粘度の値を表1に示す。
製造例1のPVA樹脂および各水溶液の混合割合を表1に記載の条件に代えた以外は製造例1と同じ方法でフィルムコーティング液を作製した。製造例2〜6のフィルムコーティング液中のPVAの平均けん化度およびフィルムコーティング液の粘度の値を表1に示す。
製造例1のPVA樹脂および各水溶液の混合割合を表1に記載の条件に代えた以外は製造例1と同じ方法でフィルムコーティング液を作製した。比較製造例1〜5のフィルムコーティング液中のPVAの平均けん化度およびフィルムコーティング液の粘度の値を表1に示す。
装置:ハイコーター(HC−FZ−Labo、フロイント産業製)
錠剤仕込み量:1000g
給気温度:70−80℃
排気温度:44−52℃
給気空気量:0.6m3/min
スプレーガン数:1個
スプレーガン エア量(アトマイズドエア):30L/min
スプレーガン エア量(パターンエア):9L/min
スプレー速度:チューブポンプの吐出量で調整
パン回転数:18rpm
コーティング試験において、コーティング液をスプレー塗布する際のスプレー速度を3.0g/minで開始し、錠剤同士および錠剤とパンとの貼り付きが起こらない場合は、徐々にスプレー速度を高くしていき、錠剤同士または錠剤とパンとの貼り付きが発生するまでスプレー速度を上げた。その後、一旦、スプレー速度を落とし、錠剤同士または錠剤とパンとの貼り付きが発生しない速度になったことを確認し、10分間そのスプレー速度でコーティング試験を継続し、貼り付きが発生しない最大スプレー速度を求めた。一方、初期のスプレー速度3.0g/minで錠剤同士または錠剤とパンとの貼り付きが起こる場合は、徐々にスプレー速度を落としていき、10分間そのスプレー速度で貼り付きが発生しないことを確認し、最大スプレー速度とし、最大スプレー速度から、錠剤に対し固形分で3質量%の被覆を施すための最短コーティング時間を算出した。
本発明のフィルムコーティング液を、PETシート上にキャスティングし、25℃×65%RHの恒温恒湿機内で乾燥して、厚さ100μmのフィルムを得た。得られたフィルムの水蒸気透過度をL80−5000型水蒸気透過度計(Systech Instruments社製)を用いてJIS K7129の方法に準拠した方法で25℃、65%相対湿度差の水蒸気透過度を測定した。
本発明のフィルムコーティング液を用いて錠剤に対しコーティングを行う際、乳糖を主成分とするプラセボ錠900gと乳糖を主成分としリボフラビンを2質量%含有するVB2錠100gの合計1000gの錠剤を用いてコーティングを行い、錠剤に対して固形分で3質量%の被覆を施した。コーティングされたVB2錠を用いて以下の条件で溶出試験を実施し、測定開始から10分後の錠剤中のリボフラビンの溶出性を確認した。
試験方法:日本薬局方一般試験法溶出試験第2法(パドル法)
使用装置:溶出試験機NTR-6400A(富山産業(株))
検出器 :検出器UV−1800((株)島津製作所)
試験液量:900ml
温度 :37±0.5℃
回転数 :50回転
試験液 :日本薬局方精製水
測定時間:30分(10分の時点の溶出率を確認)
測定波長:UV444nm
測定錠剤数:n=6
本発明のフィルムコーティング液を用いて、錠剤に対して上記した方法でコーティングを行い、錠剤に対して固形分で3質量%の被覆を施した。コーティングを行った錠剤を100mlのポリビンに50錠入れ、蓋を閉めた状態のまま50℃で3カ月間保管し、錠剤同士の付着の数やポリビンへ付着した錠剤の数を目視により確認し、付着錠剤個数とした。
製造例1のフィルムコーティング液250質量部を用い、乳糖、コーンスターチを主体とした素錠に対してコーティング試験を実施し、最大スプレー速度、最短コーティング時間を測定し、得られたコーティング錠剤の溶出率、長期保管(50℃で3カ月間保管)後の付着錠剤個数およびコーティング液から作製したフィルムの水蒸気透過度を評価した。
製造例1のフィルムコーティング液の最大スプレー速度は5.10g/minで、3質量%の被覆を施すためのコーティング時間は49分であった。また、製造例1のフィルムコーティング液を用いて得られたコーティング錠の溶出試験開始後10分における溶出率は94%、50℃×3カ月保管後の付着した錠剤は0個、コーティング組成物皮膜の水蒸気透気度は、38g/m2・日であった。結果を表2に示す。
製造例1のフィルムコーティング液に代えて、それぞれ製造例2〜6のフィルムコーティング液を用いた以外は、実施例1と同様にしてコーティング試験を実施し、最大スプレー速度、最短コーティング時間を測定し、得られたコーティング錠剤の溶出率、長期保管後の付着錠剤個数およびフィルムの水蒸気透過度を評価した。結果を表2に示す。
製造例1のフィルムコーティング液に代えて、比較製造例1〜5のフィルムコーティング液を用いた以外は、実施例1同様にしてコーティング試験を実施し、最大スプレー速度、最短コーティング時間を測定し、得られたコーティング錠剤の溶出率、長期保管後の付着錠剤個数およびフィルムの水蒸気透過度を評価した。結果を表2に示す。
また、実施例1〜6で使用された本発明のフィルムコーティング液を噴霧することによって形成されるフィルムは、比較例4と比較して、速やかな溶出性を示し、かつ、比較例5と比較して、長期保存時の付着性が低いことを示すことから、本発明のフィルムコーティング液を用いてコーティングを行うことで、速やかな溶出性と従来と同等の保存安定性を示すことが確認された。
Claims (4)
- 平均けん化度が85.0モル%未満のポリビニルアルコール(A)の水溶液及び/または水性液と、平均けん化度が89.0モル%より大きいポリビニルアルコール(B)の水溶液及び/または水性液を含むことを特徴とする経口固形製剤用フィルムコーティング液であり、かつ、当該経口固形製剤用フィルムコーティング液中のポリビニルアルコールの平均けん化度が85.0モル%〜89.0モル%である経口固形製剤用フィルムコーティング液であって、フィルムコーティング液中のポリビニルアルコールの総量に対し、平均けん化度が85.0モル%未満のポリビニルアルコール(A)の割合と、平均けん化度が89.0モル%より大きいポリビニルアルコール(B)の割合が、それぞれ2.0質量%以上である経口固形製剤用フィルムコーティング液。
- 粘度が、200mPa・s以下であることを特徴とする請求項1に記載の経口固形製剤用フィルムコーティング液。
- 薬物を含有する錠剤に対して、請求項1又は2に記載のフィルムコーティング液が塗布または噴霧され、錠剤表面にポリビニルアルコールを含む被覆層が形成されていることを特徴とする経口固形製剤。
- 薬物を含有する錠剤に、請求項1又は2に記載のフィルムコーティング液を塗布または噴霧し、錠剤表面にポリビニルアルコールを含む被覆層を形成させる工程を含むことを特徴とする経口固形製剤の製造方法。
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