JP6403615B2 - フィルムコーティング組成物並びに経口固形製剤及びその製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、これら医薬用で市販されているけん化度が85.0モル%〜89.0モル%のPVAをコーティング基剤として用いた場合、PVA水溶液の粘着性が高いため、コーティング中に固形製剤同士が付着したり、また固形製剤がコーティング機内に付着してしまうため、スプレー噴霧速度を高くすることができず、生産性が低いという問題があった。
この方法を用いることにより、PVAの粘着性を改善し、けん化度が85.0モル%〜89.0モル%の部分けん化タイプのPVA単独でコーティングを行った時よりもスプレー速度を上げられるため、コーティング時間を短縮することができる。
すなわち、けん化度85.0モル%〜89.0モル%のPVAの中で、けん化度分布を示す指標が特定の要件を満たす、けん化度分布の広いPVAと水溶性セルロース誘導体を組み合わせてフィルムコーティング剤として使用することで、HPMC単独と同等以上の高い生産性を実現でき、コーティング皮膜が優れた防湿性、ガスバリア性を発現するとともに、平滑性の高いコーティング錠が得られることを見出し、さらに研究を重ねて本発明を完成した。
[1]平均けん化度が85.0モル%〜89.0モル%であるポリビニルアルコールと水溶性セルロース誘導体とを含む経口固形製剤用フィルムコーティング組成物であり、当該ポリビニルアルコールが、以下に示す要件(A)又は要件(B)を満たす、ポリビニルアルコールであることを特徴とする経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
要件(A):ポリビニルアルコールの5.0質量%水溶液100.0gに対して、1−プロパノールを130.0ml加え、撹拌して得られる液の20℃における液の透明度が50.0%以下である。
要件(B):ポリビニルアルコールの5.0質量%水溶液100.0gに対して、1−プロパノールを230.0ml加え、撹拌した液を、20℃で24時間静置して得られる上澄み液の濃度が0.75質量%以上である。
[2]平均けん化度が85.0モル%〜89.0モル%であるポリビニルアルコールと水溶性セルロース誘導体とを含む経口固形製剤用フィルムコーティング組成物であり、当該ポリビニルアルコールが、以下に示す要件(A)及び要件(B)を満たす、ポリビニルアルコールであることを特徴とする経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
要件(A):ポリビニルアルコールの5.0質量%水溶液100.0gに対して、1−プロパノールを130.0ml加え、撹拌して得られる液の20℃における液の透明度が50.0%以下である。
要件(B):ポリビニルアルコールの5.0質量%水溶液100.0gに対して、1−プロパノールを230.0ml加え、撹拌した液を、20℃で24時間静置して得られる上澄み液の濃度が0.75質量%以上である。
[3]フィルムコーティング組成物中におけるポリビニルアルコールと水溶性セルロース誘導体の質量比が、90:10〜60:40であることを特徴とする[1]または[2]に記載の経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
[4]水溶性セルロース誘導体がヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースから選ばれる少なくとも一種以上であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
[5]水溶性セルロース誘導体がヒドロキシプロピルメチルセルロースであることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
[6]ポリビニルアルコールが、4質量%水溶液粘度が2.0mPa・s以上10.0mPa・s以下であるという要件を満たすポリビニルアルコールであることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載の経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
[7]薬物を含有する錠剤に対して、[1]〜[6]のいずれかに記載のフィルムコーティング組成物で被覆されていることを特徴とする経口固形製剤。
[8]薬物を含有する錠剤に、[1]〜[6]のいずれかに記載のフィルムコーティング組成物を含む水溶液及び/又は水性溶液を塗布又は噴霧し、錠剤表面に当該フィルムコーティング組成物を被覆させる工程を含むことを特徴とする経口固形剤の製造方法。
また、本発明のフィルムコーティング組成物を用いたコーティング錠は、表面の平滑性が高く、速溶錠として使用することができ、水溶性セルロース誘導体を用いたコーティング錠に比べて、高温、高湿度下での安定性に優れるフィルムコーティング組成物、それを用いた経口固形製剤及びその製造方法を提供することができる。
[PVA]
まず本発明の経口固形製剤用フィルムコーティング組成物に用いるPVAについて詳しく説明する。
本発明で用いられるPVAは、平均けん化度が85.0モル%〜89.0モル%であって、かつ、けん化度分布が従来のPVAより広いことが好ましい。
PVAの平均けん化度は、JIS K6726のけん化度測定方法に従って測定される。
前記撹拌は、均一に行われることが好ましい。
前記撹拌方法は、特に限定されないが、例えば、スターラーを用いて500rpmで撹拌することが好ましい。
また、1−プロパノールの滴下速度は、特に限定されないが、例えば10ml/minが好ましい。
該透明度は、好ましくは30.0%以下であり、より好ましくは20.0%以下である。
ここで求められる透明度の意味としては、けん化度の高いPVA成分は1−プロパノールに溶解しにくいため、PVA水溶液に一定量の1−プロパノールを添加すると、高けん化度成分が析出し、濁り成分となるため、前記条件で透明度が50.0%以下になることということは、高けん化度成分を多く含んでいること、すなわち高けん化度側のけん化度分布が広いことを示す。
前記撹拌は、均一に行われることが好ましい。
前記撹拌方法は、特に限定されないが、例えば、スターラーを用いて500rpmで撹拌することが好ましい。
また、1−プロパノールの滴下速度は、特に限定されないが、例えば10ml/minが好ましい。
本発明のフィルムコーティング組成物に用いられるPVAは、通常は、平均けん化度が85.0モル%〜89.0モル%の範囲にあって、かつ、前記の要件(A)を満たす、すなわち高けん化度側のけん化度分布が広いものであるか、前記の要件(B)を満たす、すなわち低けん化度側のけん化度分布が広いものであり、要件(A)と要件(B)の両方を満たす、すなわち高けん化度側、低けん化度側の両方の分布が広いことが好ましい。
使用するPVAの要件(A)の条件で測定される透明度が50.0%より大きい場合、このようなPVAを用いてコーティング試験を行っても、錠剤同士の付着が起きやすく、コーティング不良が起こったり、コーティング時間が長くなってしまうことがあるため好ましくない。
また、使用するPVAの要件(B)の条件で測定される上澄み液濃度が0.75質量%より小さい場合、このようなPVAを用いてコーティング試験を行っても、錠剤同士の付着が起きやすく、コーティング不良が起こったり、コーティング時間が長くなってしまうことがあるため好ましくない。
酢酸ビニルの重合方法としては、特に限定されず、例えば、従来公知の塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等が挙げられるが、溶剤としてメタノールを用いた溶液重合が工業的に好ましい。該溶液重合には、過酸化物系、アゾ系等の公知の開始剤を用いることができ、酢酸ビニルとメタノールの配合比、重合収率を変えることにより、得られるポリ酢酸ビニルの重合度を調整することができる。また、本発明のPVAを得るための原料として、市販のポリ酢酸ビニル樹脂を使用することもできる。
その後、得られた塊状物、ゲル状物あるいは粒状物を粉砕し、必要に応じて添加したアルカリを中和した後、固形物と液分を分離し、固形物を乾燥することによりPVAを得ることができる。
4質量%水溶液粘度が2.0mPa・s未満の場合、コーティング後に錠剤表面に形成されるフィルムの強度が低くなる恐れがあり、好ましくない。4質量%水溶液粘度が10mPa・sより大きい場合、粘度が高いため、コーティング時のスプレー速度を上げられず、生産性が低下する恐れがあり、好ましくない。
本発明における水溶性セルロース誘導体としては、例えば、セルロースの水酸基の一部をエーテル化した非イオン性高分子等であり、該非イオン性高分子としては、例えば、メチルセルロース等のアルキルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース、HPMC(日本薬局方ではヒプロメロースとも称される。)等のヒドロキシアルキルアルキルセルロース等が好ましく挙げられる。これらは1種単独もしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
HPMCを用いる場合、メトキシ基の置換度は16.5〜30.0質量%が好ましく、19.0〜30.0質量%がさらに好ましく、28.0〜30.0質量%が特に好ましい。またHPMCのヒドロキシプロポキシ基の置換度は4.0〜32.0質量%が好ましく、4.0〜12.0質量%がさらに好ましく、7.0〜12.0質量%が特に好ましい。
メチルセルロースを用いる場合、メトキシ基の置換度は、26.0〜33.0質量%が好ましく、27.5〜31.5質量%が特に好ましい。
ヒドロキシプロピルセルロースを用いる場合、ヒドロキシプロポキシ基は53.4〜77.5質量%が好ましく、60.0〜70.0質量%が特に好ましい。
なお、これらの置換度は、第16改正日本薬局方に記載のヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースの置換度の測定方法に準拠した方法で測定できる。
これらの水溶性セルロース誘導体の中でも特にHPMCがPVAの粘着性を改善するのに好ましい。
本発明のフィルムコーティング組成物中におけるPVAと水溶性セルロース誘導体の含有量の質量比は、好ましくは90:10〜60:40であり、より好ましくは80:20〜70:30である。PVAの比率が90%を超えると、コーティング時の粘着性改善効果が十分でなく、コーティング時間が長くなるため好ましくない。一方で、水溶性セルロース誘導体の比率が40%を超えると、錠剤表面に形成されるフィルムの防湿効果が十分でないため好ましくない。
本発明は、薬物を含有する錠剤に対して、本発明のフィルムコーティング組成物で被覆された経口固形製剤も含有する。
本発明の経口固形製剤は、通常は、薬物を含有する芯部と、該芯部を被覆する被覆部からなり、該被覆部が前記フィルムコーティング組成物を少なくとも含む。芯部としては、錠剤、顆粒剤、細粒剤、カプセル剤等が挙げられるが、その中でも特に錠剤が好ましい。
また、前記薬物は、経口投与可能な薬物であれば特に限定されるものではない。
賦形剤としては、白糖、乳糖、マンニトール、グルコース等の糖類、でんぷん、結晶セルロース、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム等が挙げられる。
結合剤としては、PVA、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルピロリドン、グルコース、白糖、乳糖、麦芽糖、デキストリン、ソルビトール、マンニトール、ヒドロキシエチルセルロース、HPMC、ヒドロキシプロピルセルロース、マクロゴール類、アラビアゴム、ゼラチン、寒天、でんぷん等が挙げられる。
また、滑択剤、凝集防止剤としては、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、コロイダルシリカ、ステアリン酸、ワックス類、硬化油、ポリエチレングリコール類、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。
更に、医薬化合物の溶解補助剤としては、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸、アジピン酸等の有機酸等が挙げられる。
これら添加剤は、1種又は2種以上を使用することができる。また、これら添加剤の含有量は、薬剤の種類等に応じて適宜決定することができる。
本発明のフィルムコーティング組成物の錠剤への被覆方法としては、特に限定されず、従来公知のコーティング手段を用いることができる。一般的に行われているのはスプレーコーティングであるが、その場合は、パンコーティング装置、ドラムタイプコーティング装置等を用いて行うことができ、これらの装置に付帯するスプレー装置にはエアースプレー、エアレススプレー等を用いることができる。
尚、以下の実施例及び比較例中、特にことわりのないかぎり、「%」及び「部」は質量基準を表す。
(比較合成例1)
市販のポリ酢酸ビニル樹脂(日本酢ビ・ポバール製 JMR-30LL 重合度590)を100℃で真空乾燥して水分を除去した後、メタノールに溶解し、ポリ酢酸ビニルの46質量%メタノール溶液を得た。この溶液500質量部を40℃に加温し、35℃に調整した水酸化ナトリウムの3質量%メタノール溶液16質量部を加え、プロペラタイプの撹拌翼を用いて300rpmで、1分間撹拌した後、40℃で40分間静置することでけん化反応を行った。得られたゲル状物を粉砕し、メタノール570質量部と酢酸メチル230質量部及び水17質量部からなる混合溶媒に浸漬し、ゆっくりと撹拌しながら更に1時間、40℃でけん化反応を行ったのち、pHが8〜9になるように1質量%酢酸水溶液を加えて中和を行った後、固形物と液分を分離し、固形物を60℃で8時間乾燥し、PVA樹脂(A)を得た。
ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液に水酸化ナトリウム溶液を加えて撹拌する際、撹拌速度を60rpmで、30秒間行い、通常の条件よりも不均一になるように混合を実施した以外は、比較合成例1と同様にして、PVA樹脂(B)を得た。
JIS K6726の方法で測定したこのPVA樹脂(B)の平均けん化度は88.2モル%で、4質量%水溶液粘度は5.2mPa・sであった。また、このPVA樹脂(B)の5.0質量%水溶液100gに1−プロパノールを130ml加えた時の20℃における液の透明度は18.5%であり、このPVA樹脂(B)の5.0質量%水溶液100gに1−プロパノールを230ml加え、20℃で24時間静置した後の上澄み液濃度は、0.83質量%であった。PVA樹脂(B)の平均けん化度、4質量%水溶液粘度、及び1−プロパノールを添加した時の透明度と上澄み液濃度の値を表1に示す。
ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液に水酸化ナトリウム溶液を加えて撹拌する際、撹拌速度を20rpmで、60秒間行い、通常の条件よりも不均一になるように混合を実施した以外は、比較合成例1と同様にして、PVA樹脂(C)を得た。
PVA樹脂(C)の平均けん化度、4質量%水溶液粘度、及び1−プロパノールを添加した時の透明度と上澄み液濃度の値を表1に示す。
けん化反応を行う際、ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液濃度を55質量%とし、この溶液500質量部に添加する水酸化ナトリウム溶液を23質量部とした以外は比較合成例1と同様にして、PVA樹脂(D)を得た。PVA樹脂(D)の平均けん化度、4質量%水溶液粘度、及び1−プロパノールを添加した時の透明度と上澄み液濃度の値を表1に示す。
けん化反応を行う際、ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液と水酸化ナトリウムとの混合液の容器の上半分にバンドヒーターを巻いて50℃に加熱し、けん化反応時の温度が上半分を50℃、下半分が室温(25℃)になるように温度勾配を設け、静置する時間を50分とした以外は比較合成例1と同様にして、PVA樹脂(E)を得た。PVA樹脂(E)の平均けん化度、4質量%水溶液粘度、及び1−プロパノールを添加した時の透明度と上澄み液濃度の値を表1に示す。
ポリ酢酸ビニルの46質量%メタノール溶液500質量部をそれぞれ別の容器に250質量部ずつに分け、40℃に加温し、35℃に調整した水酸化ナトリウムの3質量%メタノール溶液を、一方には10質量部、もう一方には6質量部を加え、いずれも同時に300rpmで1分間撹拌した後、40℃で40分静置して別々にけん化反応を行って得られたゲル状物を一緒に粉砕した以外は、比較合成例1と同様にして、PVA樹脂(F)を得た。PVA樹脂(F)の平均けん化度、4質量%水溶液粘度、及び1−プロパノールを添加した時の透明度と上澄み液濃度の値を表1に示す。
市販のPVA樹脂(日本酢ビ・ポバール製 JL−05E けん化度:80.2モル%、4質量%水溶液粘度:5.1mPa・s)40質量部と市販のPVA樹脂(日本酢ビ・ポバール製 JT−05 けん化度:94.0モル%、4質量%水溶液粘度:5.6mPa・s)60質量部をポリエチレン袋に入れ、袋を約100回振り、PVA粉末を均一に混合して、けん化度分布の広いPVA樹脂(G)を作成した。PVA樹脂(G)の平均けん化度、4質量%水溶液粘度、及び1−プロパノールを添加した時の透明度と上澄み液濃度の値を表1に示す。
市販のPVA樹脂(日本酢ビ・ポバール製 JP−05 けん化度:87.5モル%、4質量%水溶液粘度:5.3mPa・s)10質量部と市販のPVA樹脂(日本酢ビ・ポバール製 JT−05 けん化度:94.0モル%、4質量%水溶液粘度:5.6mPa・s)90質量部をポリエチレン袋に入れ、袋を約100回振り、PVA粉末を均一に混合して、けん化度分布の広いPVA樹脂(H)を作成した。PVA樹脂(H)の平均けん化度、4質量%水溶液粘度、及び1−プロパノールを添加した時の透明度と上澄み液濃度の値を表1に示す。
市販のPVA樹脂(日本酢ビ・ポバール製 JL−05E けん化度:80.2モル%、4質量%水溶液粘度:5.1mPa・s)8質量部と市販のPVA樹脂(日本酢ビ・ポバール製 JP−05 けん化度:88.8モル%、4質量%水溶液粘度:5.3mPa・s)92質量部をポリエチレン袋に入れ、袋を約100回振り、PVA粉末を均一に混合して、けん化度分布の広いPVA樹脂(I)を作成した。PVA樹脂(I)の平均けん化度、4質量%水溶液粘度、及び1−プロパノールを添加した時の透明度と上澄み液濃度の値を表1に示す。
装置:ハイコーター(HC−FZ−Labo、フロイント産業製)
錠剤仕込み量:1000g
給気温度:70−80℃
排気温度:44−52℃
給気空気量:0.6m3/min
スプレーガン数:1個
スプレーガン エア量(アトマイズドエア):30L/min
スプレーガン エア量(パターンエア):9L/min
スプレー速度:チューブポンプの吐出量で調整
パン回転数:18rpm
コーティング試験において、コーティング溶液をスプレー塗布する際のスプレー速度を3.0g/minで開始し、錠剤同士及び錠剤とパンとの貼り付きが起こらない場合は、徐々にスプレー速度を高くしていき、錠剤同士又は錠剤とパンとの貼り付きが発生するまでスプレー速度を上げた。その後、一旦、スプレー速度を落とし、錠剤同士又は錠剤とパンとの貼り付きが発生しない速度になったことを確認し、10分間そのスプレー速度でコーティング試験を継続して貼り付きが発生しないことを確認し、該スプレー速度を最大スプレー速度とした。一方、初期のスプレー速度3.0g/minで錠剤同士又は錠剤とパンとの貼り付きが起こる場合は、徐々にスプレー速度を落としていき、10分間そのスプレー速度で貼り付きが発生しないことを確認し、該スプレー速度を最大スプレー速度とした。さらに、最大スプレー速度から、錠剤に対し固形分で3質量%の被覆を施すための最短コーティング時間を算出した。
固形分濃度が10質量%のコーティング組成物の溶液もしくは分散液を、PETシート上にキャスティングし、25℃×65%RHの恒温恒湿機内で乾燥して、厚さ100μmのフィルムを得た。得られたフィルムの水蒸気透過度をL80−5000型水蒸気透過度計(Systech Instruments社製)を用いてJIS K7129の方法に従った方法で25℃、65%相対湿度差の水蒸気透過度を測定した。
合成例1のPVA樹脂(B)24質量部とHPMC(信越化学工業製、TC−5R、メトキシ基置換度29質量%、ヒドロキシプロポキシ基置換度10質量%、2質量%水溶液粘度6mPa・s)6質量部を精製水270質量部に添加し、80℃まで加温しながら1時間撹拌し、その後、30℃まで冷却しながら撹拌を行い、コーティング溶液を調製した(PVA:HPMC=8:2 水溶液濃度:10質量%)。このコーティング溶液を用い、乳糖及びコーンスターチを主体とした素錠に対してコーティング試験を実施し、最大スプレー速度、最短コーティング時間及びコーティング組成物の水蒸気透過度を評価した。
合成例1のPVAとHPMCを含むフィルムコーティング液の最大スプレー速度は6.25g/minで、3質量%の被覆を施すためのコーティング時間は48分であった。また、水蒸気透気度は、57g/m2・日であった。結果を表2に示す。
合成例1のPVA樹脂(B)に代えて、それぞれ合成例2〜8のPVA樹脂(C)〜(I)を用いた以外は、実施例1と同様にしてコーティング試験を実施し、最大スプレー速度、最短コーティング時間及び水蒸気透過度を評価した。結果を表2に示す。
実施例1のHPMCに代えて、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達製、HPC−L、2質量%水溶液粘度6.3mPa・s)を用いた以外は、実施例1と同様にしてコーティング試験を実施し、最大スプレー速度、最短コーティング時間及び水蒸気透過度を評価した。結果を表2に示す。
実施例1のPVAとHPMCの質量比を表2に示した割合にした以外は実施例1と同様にしてコーティング試験を実施し、最大スプレー速度、最短コーティング時間及び水蒸気透過度を評価した。結果を表2に示す。
実施例1のPVAとHPMCの質量比を表2に示した割合にした以外は実施例1と同様にしてコーティング試験を実施し、最大スプレー速度、最短コーティング時間及び水蒸気透過度を評価した。結果を表2に示す。
合成例1のPVA樹脂(B)に代えて、比較合成例1のPVA樹脂(A)を用いた以外は、実施例1と同様にしてコーティング試験を実施し、最大スプレー速度、最短コーティング時間及び水蒸気透過度を評価した。結果を表2に示す。
合成例1のPVA樹脂(B)に代えて、市販の部分けん化PVA(日本酢ビ・ポバール製 JP−05 けん化度:88.2モル%、4質量%水溶液粘度:5.3mPa・s)を使用した以外は、実施例1と同様にしてコーティング試験を実施し、最大スプレー速度、最短コーティング時間及び水蒸気透過度を評価した。結果を表2に示す。なお、使用したJP−05の1−プロパノールを添加した時の透明度と上澄み液濃度の値を表1に示す。
市販のHPMC(信越化学工業製、TC−5R、メトキシ基置換度29質量%、ヒドロキシプロポキシ基置換度10質量%、2質量%水溶液粘度6mPa・s)30質量部を精製水399質量部に撹拌しながら添加し、2時間撹拌した後、一晩放置してコーティング溶液を調整した(水溶液濃度:7質量%)。実施例1において、コーティング溶液を、この作成したコーティング溶液に変更した以外は、実施例1と同様にしてコーティング試験を実施し、最大スプレー速度、最短コーティング時間及び水蒸気透過度を評価した。結果を表2に示す。
また、実施例1〜8のコーティング組成物によって形成されるフィルムは従来のPVAとHPMCからなるフィルムコーティング組成物と同様に低い水蒸気透過性を示しており、比較例3のHPMC単独コーティングと比べると、水蒸気透過性が著しく低くなっていた。
このように、本発明のフィルムコーティング組成物を用いることで、防湿性の高い皮膜を形成した錠剤の製造を短時間で製造することが可能になる。
Claims (8)
- 平均けん化度が85.0モル%〜89.0モル%であるポリビニルアルコールと水溶性セルロース誘導体とを含む経口固形製剤用フィルムコーティング組成物であり、当該ポリビニルアルコールが、以下に示す要件(A)又は要件(B)を満たす、ポリビニルアルコールであることを特徴とする経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
要件(A):ポリビニルアルコールの5.0質量%水溶液100.0gに対して、1−プロパノールを130.0ml加え、撹拌して得られる液の20℃における液の透明度が50.0%以下である。
要件(B):ポリビニルアルコールの5.0質量%水溶液100.0gに対して、1−プロパノールを230.0ml加え、撹拌した液を、20℃で24時間静置して得られる上澄み液の濃度が0.75質量%以上である。 - 平均けん化度が85.0モル%〜89.0モル%であるポリビニルアルコールと水溶性セルロース誘導体とを含む経口固形製剤用フィルムコーティング組成物であり、当該ポリビニルアルコールが、以下に示す要件(A)及び要件(B)を満たす、ポリビニルアルコールであることを特徴とする経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
要件(A):ポリビニルアルコールの5.0質量%水溶液100.0gに対して、1−プロパノールを130.0ml加え、撹拌して得られる液の20℃における液の透明度が50.0%以下である。
要件(B):ポリビニルアルコールの5.0質量%水溶液100.0gに対して、1−プロパノールを230.0ml加え、撹拌した液を、20℃で24時間静置して得られる上澄み液の濃度が0.75質量%以上である。 - フィルムコーティング組成物中におけるポリビニルアルコールと水溶性セルロース誘導体の質量比が、90:10〜60:40であることを特徴とする請求項1または2に記載の経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
- 水溶性セルロース誘導体が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースから選ばれる少なくとも一種以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
- 水溶性セルロース誘導体がヒドロキシプロピルメチルセルロースであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
- ポリビニルアルコールが、4質量%水溶液粘度が2.0mPa・s以上10.0mPa・s以下であるという要件を満たすポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
- 薬物を含有する錠剤に対して、請求項1〜6のいずれか1項に記載のフィルムコーティング組成物で被覆されていることを特徴とする経口固形製剤。
- 薬物を含有する錠剤に、請求項1〜6のいずれか1項に記載のフィルムコーティング組成物を含む水溶液及び/又は水性溶液を塗布又は噴霧し、錠剤表面に当該フィルムコーティング組成物を被覆させる工程を含むことを特徴とする経口固形剤の製造方法。
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JP2015054471A JP6403615B2 (ja) | 2015-03-18 | 2015-03-18 | フィルムコーティング組成物並びに経口固形製剤及びその製造方法 |
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