JP2016170381A - 位相差フィルム積層体、偏光板及び位相差フィルム積層体の製造方法 - Google Patents

位相差フィルム積層体、偏光板及び位相差フィルム積層体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】偏光子等との接着強度に優れ、かつ製造工程におけるフィルムの搬送不良を抑制できる位相差フィルム積層体、偏光板、及び位相差フィルム積層体の製造方法を提供する。
【解決手段】脂環式構造を有する重合体を主成分として含む位相差フィルム1と、位相差フィルム1の一方の面に積層される易接着層2とを備え、易接着層2がウレタン樹脂及びアクリル樹脂を含み、ウレタン樹脂のアクリル樹脂に対する質量比が60/40以上99/1以下の位相差フィルム積層体3と、位相差フィルム積層体3における易接着層の位相差フィルム1とは反対側の面に接着剤を介して積層される偏光子4とを備える偏光板10である。
【選択図】図1

Description

本発明は、位相差フィルム積層体、偏光板及び位相差フィルム積層体の製造方法に関する。
近年、位相差フィルムと偏光子とを接着剤により貼り合わせて得られる偏光板が、スマートフォン等のモバイル通信機器、液晶テレビ、液晶モニター、パーソナルコンピューターなどの液晶表示機器の構成物品として幅広く用いられるようになっている。特に、環状オレフィン等の脂環式構造を有する重合体を主成分として含む位相差フィルムを用いた偏光板が、光学的に均一な複屈折性を示すため、多く用いられるようになっている。しかし、位相差フィルムと偏光子との間の接着強度が弱いと両者の界面で剥離等が発生し、製品不良の原因となる。そのため、位相差フィルムと偏光子との間の接着強度の向上が求められている。
この要求に対して、位相差フィルムの偏光子が接着される面にウレタン樹脂からなる易接着層を設けることが検討されている(特開2013−10853号公報参照)。なお、易接着層とは、接着剤を介してフィルムを何らかの部材と貼り合わせる際に、フィルムの接着力を補強して、より強固に接着させる層である。
しかし、ウレタン樹脂からなる易接着層は、タック性が強いため、製造工程におけるフィルムの搬送中に、フィルム同士の接触により易接着層の一部が剥がれたり、搬送ロール表面へ易接着層の一部が付着したりする搬送不良が起こりやすくなる不都合がある。
特開2013−10853号公報
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、偏光子等との接着強度に優れ、かつ製造工程におけるフィルムの搬送不良を抑制できる位相差フィルム積層体、偏光板、及び位相差フィルム積層体の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するためになされた本発明は、脂環式構造を有する重合体を主成分として含む位相差フィルムと、この位相差フィルムの一方の面に積層される易接着層とを備え、上記易接着層がウレタン樹脂及びアクリル樹脂を含み、上記ウレタン樹脂の上記アクリル樹脂に対する質量比が60/40以上99/1以下の位相差フィルム積層体である。
上記課題を解決するためになされた別の本発明は、当該位相差フィルム積層体と、この位相差フィルム積層体における上記易接着層の上記位相差フィルムとは反対側の面に接着剤を介して積層される偏光子とを備える偏光板である。
上記課題を解決するためになされたさらに別の本発明は、脂環式構造を有する重合体を主成分として含む位相差フィルムと、この位相差フィルムの一方の面に積層される易接着層とを備える位相差フィルム積層体の製造方法であって、樹脂成分及び溶媒を含む塗液により上記位相差フィルムの一方の面に塗膜を形成する工程と、上記塗膜の乾燥により上記易接着層を形成する工程とを備え、上記樹脂成分がウレタン樹脂及びアクリル樹脂を含み、上記ウレタン樹脂の上記アクリル樹脂に対する質量比が60/40以上99/1以下であることを特徴とする。
ここで、「主成分」とは、最も多い成分であり、例えば含有量が50質量%以上の成分をいう。
本発明によれば、偏光子等との接着強度に優れ、かつ製造工程におけるフィルムの搬送不良を抑制できる位相差フィルム積層体、偏光板、及び位相差フィルム積層体の製造方法を提供できる。
本発明の一実施形態の偏光板の模式的断面図である。
<位相差フィルム積層体>
本発明の位相差フィルム積層体は、位相差フィルムと、この位相差フィルムの一方の面に積層される易接着層とを備える。
[位相差フィルム]
位相差フィルムは、脂環式構造を有する重合体を主成分として含む。この脂環式構造を有する重合体としては、脂環式構造を有するものであれば特に限定されないが、環状ポリオレフィンが好ましい。脂環式構造を有する重合体として環状ポリオレフィンを用いることで、光学的に均一な複屈折性を発現させることができる上、透明性、耐熱性、耐薬品性等を向上させることができる。なお、脂環式構造を有する重合体は1種又は2種以上を用いることができる。
(環状ポリオレフィン)
上記環状ポリオレフィンは、環状オレフィン(シクロオレフィン)系単量体に由来する構造単位を有する樹脂であれば特に限定されず、その他の単量体に由来する構造単位を有してもよい。
上記環状オレフィン系単量体としては、例えば
シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロドデセン、ノルボルネン等の二重結合を1つ有する環状オレフィン又はその置換体;
1,4−シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロドデカトリエン等の複数の二重結合を有する環状オレフィン又はその置換体などが挙げられる。
環状ポリオレフィンは公知の方法に従って製造することができるが、市販品を用いてもよい。環状ポリオレフィンの市販品としては、例えばポリプラスチックス社の「TOPAS」、JSR社の「アートン(ARTON)」、同社の「アートンフィルム」、日本ゼオン社の「ゼオノア(ZEONOR)」、同社の「ゼオノアフィルム」、同社の「ゼオネックス(ZEONEX)」、三井化学社の「アペル」、積水化学工業社の「エスシーナ」、同社の「SCA40」等が挙げられる。
環状ポリオレフィンとしては、偏光板とした際に接着強度がより優れる観点から、下記式(1)で表される構造単位を有する環状ポリオレフィンが好ましい。
Figure 2016170381
上記式(1)中、mは、0、1又は2である。Xは、−CH=CH−又は−CHCH−である。R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の有機基又は有機基以外の極性基である。ただし、R〜Rの少なくとも1つは炭素数1〜10の極性を有する有機基である。なお、「有機基」とは、少なくとも1個の炭素原子を含む基をいう。
上記R〜Rで表される有機基以外の極性基としては、例えばヒドロキシ基、アミノ基等が挙げられる。
上記R〜Rで表される炭素数1〜10の極性を有する有機基としては、例えばアミド基、カルボキシ基、シアノ基、下記式(2)で表される基等が挙げられる。
Figure 2016170381
上記式(2)中、pは、0〜5の整数である。R’は、炭素数1〜9の炭化水素基である。ただし、上記式(2)で表される基の炭素数は1〜10である。なお、上記「炭化水素基」は、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基を含み、飽和炭化水素基でも不飽和炭化水素基でもよい。「鎖状炭化水素基」とは、環状構造を含まず、鎖状構造のみで構成された炭化水素基をいい、直鎖状炭化水素基及び分岐状炭化水素基の両方を含む。「脂環式炭化水素基」とは、環状構造として脂環構造のみを含み、芳香環構造を含まない炭化水素基をいい、単環の脂環式炭化水素基及び多環の脂環式炭化水素基の両方を含む。ただし、脂環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を含んでいてもよい。「芳香族炭化水素基」とは、環状構造として芳香環構造を含む炭化水素基をいい、単環の芳香族炭化水素基及び多環の芳香族炭化水素基の両方を含む。ただし、芳香環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造や脂環構造を含んでいてもよい。
上記pとしては、0及び1が好ましい。この場合、環状ポリオレフィンのガラス転移温度(Tg)が高くなるため、位相差フィルムの耐熱性を向上させることができる。
上記R’としては、上記pと同様の観点から、炭素数1〜3のアルキル基が好ましい。
上記R〜Rで表される炭素数1〜10の極性を有する有機基としては、接着強度をより向上させる観点から上記式(2)で表される基が好ましい。
上記式(1)で表される構造単位は、例えば下記式(1’)で表される環状オレフィン系単量体を開環重合するか、又はさらに水素添加して得ることができる。
Figure 2016170381
上記式(1’)中、m及びR〜Rは、上記式(1)と同義である。
上記その他の単量体としては、例えば
エチレン、プロピレン等の鎖状オレフィン;
スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族系単量体などが挙げられる。
環状ポリオレフィンが上記その他の単量体に由来する構造単位を含む場合、環状ポリオレフィンを構成する全構造単位に対する上記その他の単量体に由来する構造単位の含有割合の下限としては、5モル%が好ましく、15モル%がより好ましい。また、上記含有割合の上限としては、90モル%が好ましく、85モル%がより好ましい。上記含有割合が上記下限未満の場合、得られる環状ポリオレフィンのTgが高くなり過ぎて成形が困難になる場合がある。一方、上記含有割合を上記上限以下とすることにより、接着強度をより向上させることができる。
環状ポリオレフィンのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)の下限としては、10,000が好ましく、20,000がより好ましく、30,000がさらに好ましい。また、上記Mwの上限としては、3,000,000が好ましく、1,000,000がより好ましく、500,000がさらに好ましい。
環状ポリオレフィンのGPCで測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)の下限としては、8,000が好ましく、10,000がより好ましく、15,000がさらに好ましい。また、上記Mnの上限としては、1,000,000が好ましく、500,000がより好ましく、100,000がさらに好ましい。
環状ポリオレフィンのMw及びMnが上記下限未満であると、得られる位相差フィルムの機械的強度が低くなる場合がある。一方、環状ポリオレフィンのMw及びMnが上記上限を超えると、位相差フィルムの生産性や加工性が悪化する場合がある。
環状ポリオレフィンの分子量分布(Mw/Mn)の下限としては、1.5が好ましく、1.7がより好ましく、1.9がさらに好ましい。一方、上記分子量分布の上限としては、10が好ましく、8がより好ましく、5がさらに好ましい。分子量分布を上記範囲とすることで、接着強度をより向上させることができる。
なお、本明細書におけるMw及びMnは、GPCを用いて以下の条件で測定される値である。
GPCカラム:例えば東ソー社のGPCカラム(G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本)
カラム温度:40℃
溶出溶媒:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μL
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
環状ポリオレフィンのTgの下限としては、110℃が好ましく、115℃がより好ましく、120℃がさらに好ましい。また、上記Tgの上限としては、250℃が好ましく、220℃がより好ましく、200℃がさらに好ましい。Tgが上記下限未満の場合、耐熱性が低下するおそれがある。一方、Tgが上記上限を超えると、延伸加工する際に加工温度が過度に高くなり環状ポリオレフィンが熱劣化するおそれがある。
(その他の成分)
位相差フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分を含有していてもよい。
上記その他の成分としては、例えば
ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン等のその他の樹脂成分;
二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化マグネシウム等の滑剤;
オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物等の紫外線吸収剤;
層状結晶化合物、無機微粒子、熱安定剤、光安定剤、耐候安定剤、可塑剤、染料、顔料、帯電防止剤などが挙げられる。
位相差フィルムが上記その他の成分を含有する場合、その他の成分の含有量の上限としては、50質量%が好ましく、30質量%がより好ましく、10質量%がさらに好ましい。上記含有量が上記上限を超えると、光学的に均一な複屈折性を発現させることが困難になるおそれがある。
なお、環状ポリオレフィンを用いて位相差フィルムを製膜する方法としては、特に限定されず、公知の方法を採用できる。
[易接着層]
易接着層は、位相差フィルムの一方の面に積層される接着に寄与する層であり、ウレタン樹脂及びアクリル樹脂を含む。また、上記ウレタン樹脂の上記アクリル樹脂に対する質量比(ウレタン樹脂の質量/アクリル樹脂の質量)は、60/40以上99/1以下である。
当該位相差フィルム積層体は、ウレタン樹脂及びアクリル樹脂を上記特定割合で含む易接着層を備えるため、偏光子等との接着強度に優れ、かつ製造工程におけるフィルムの搬送不良を抑制できる。当該位相差フィルム積層体が上記構成を備えることで上記効果を奏する理由については必ずしも明確ではないが、例えば以下のように推察することができる。易接着層がウレタン樹脂及びアクリル樹脂を上記特定割合で含むことにより、易接着層のタック性が適度に調整される。その結果、従来のウレタン樹脂のみからなる易接着層に比べて過度な粘着性が抑制されるため、フィルムの搬送不良を抑制できると共に、偏光子等に対しては優れた接着性を発揮させることができると考えられる。
上記ウレタン樹脂の上記アクリル樹脂に対する質量比の下限としては、60/40であり、70/30が好ましく、80/20がより好ましい。また、上記質量比の上限としては、99/1であり、97/3が好ましく、95/5がより好ましい。上記質量比を上記下限以上とすることにより、偏光子等に対する接着強度をより向上させることができる。一方、上記質量比を上記上限以下とすることにより、フィルムの搬送不良をより抑制できる。
上記ウレタン樹脂としては、複数のウレタン結合を有する樹脂であれば特に限定されるものではなく、例えばポリエステル系ウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂等が挙げられる。これらのウレタン樹脂の中でも、接着強度と耐熱性の観点からポリエステル系ウレタン樹脂が好ましい。これらのウレタン樹脂は、一般的にポリオールとポリイソシアネートとから製造される。
上記ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、その他のポリオール等が挙げられる。
上記ポリエステルポリオールとしては、例えばアジピン酸、コハク酸、セバシン酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸等のジカルボン酸又はその無水物や、リシノール酸、オキシカプロン酸、オキシカプリン酸、オキシウンデカン酸、オキシリノール酸、オキシステアリン酸等の長鎖脂肪酸と多価アルコールとの付加重合物などが挙げられる。
上記ポリエーテルポリオールとしては、例えば多価アルコールとエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、α−オレフィンオキサイド等のアルキレンオキサイドとの付加重合物などが挙げられる。
その他のポリオールとしては、例えばアクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等の主鎖が炭素−炭素結合からなるポリオールや、ポリカーボネートポリオール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。
上記多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリヘプタメチレングリコール、ポリデカメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ハイドロキノン、ナフトハイドロキノン、アントラハイドロキノン、1,4−シクロヘキサンジオール、トリシクロデカンジオール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジオール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール等が挙げられる。これらは、単独又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
上記ポリイソシアネートとしては、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチルフェニレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアネートエチル)フマレート、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネート、4−ジフェニルプロパンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,5−ビス(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン等が挙げられる。これらは、単独又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
上記ウレタン樹脂のGPCで測定されるポリスチレン換算のMwの下限としては、10,000が好ましく、20,000がより好ましく、30,000がさらに好ましい。また、上記Mwの上限としては、500,000が好ましく、200,000がより好ましく、100,000がさらに好ましい。
上記アクリル樹脂としては、特に限定されず、例えばアクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ソーダ、アクリル酸アンモニウム、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ソーダ、メタクリル酸アンモニウム、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸グリシジル、アクリルアミド、メタクリルアミド等の不飽和単量体に由来する構造単位を有するものなどが挙げられる。また、上記アクリル樹脂は、上記例示した不飽和単量体と、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ジビニルベンゼン等の他の不飽和単量体とを共重合させたものであってもよい。
また、上記アクリル樹脂は、ポリエステル、シリコーン、エポキシ、フェノール樹脂等で変性したブロック共重合体、グラフト共重合体等の共重合体であってもよい。
上記アクリル樹脂のGPCで測定されるポリスチレン換算のMwの下限としては、10,000が好ましく、20,000がより好ましく、30,000がさらに好ましい。また、上記Mwの上限としては、500,000が好ましく、200,000がより好ましく、100,000がさらに好ましい。
易接着層の主成分としては、ウレタン樹脂が好ましい。易接着層の主成分をウレタン樹脂とすることで、偏光子等に対する接着強度をより向上させることができる。
易接着層中のウレタン樹脂の含有量の下限としては、50質量%が好ましく、60質量%がより好ましく、70質量%がさらに好ましい。また、上記含有量の上限としては、99質量%が好ましく、97質量%がより好ましく、95質量%がさらに好ましい。上記含有量を上記下限以上とすることにより、偏光子等に対する接着強度をより向上させることができる。一方、上記含有量を上記上限以下とすることにより、フィルムの搬送不良をより抑制できる。
易接着層の85℃における貯蔵弾性率の下限としては、1MPaが好ましく、1.5MPaがより好ましく、2MPaがさらに好ましい。また、上記貯蔵弾性率の上限としては、15MPaが好ましく、13MPaがより好ましく、10MPaがさらに好ましい。上記貯蔵弾性率を上記下限以上とすることで、高温下における劣化を抑制できるため、例えば夏場の自動車の車内等の高温下においても位相差フィルムと偏光子等との間の剥離を防止できる。一方、上記貯蔵弾性率が上記上限を超えると、易接着層を形成する際の塗液の塗工性が悪化するおそれがある。なお、上記「85℃における貯蔵弾性率」は、JIS−K−7244(1998年)に準拠する動的粘弾性測定法により、昇温速度5℃/分、周波数1Hz、歪み量0.05%で測定した貯蔵弾性率の温度85℃における値である。
易接着層の85℃における貯蔵弾性率は、例えば主成分となる樹脂に導入される極性基の種類及び量、主成分となる樹脂のMw、Mn及び架橋度等を調整することにより制御できる。
易接着層の平均厚みの下限としては、200nmが好ましく、300nmがより好ましく、400nmがさらに好ましい。また、上記平均厚みの上限としては、1,500nmが好ましく、1,200nmがより好ましく、900nmがさらに好ましい。上記平均厚みを上記下限以上とすることで、接着強度をより向上させることができる。一方、上記平均厚みが上記上限を超えると、光学的特性が低下するおそれがある。なお、本明細書における平均厚みは、反射分光膜厚計を用いて測定される値である。
[位相差フィルム積層体の物性]
(ヘーズ値)
当該位相差フィルム積層体のヘーズ値の下限としては、0.05%が好ましく、0.08%がより好ましく、0.1%がさらに好ましい。また、上記ヘーズ値の上限としては、1%が好ましく、0.8%がより好ましく、0.5%がさらに好ましい。上記ヘーズ値が上記下限未満の場合、製造コストが増大するおそれがある。一方、上記ヘーズ値が上記上限を超えると、光学的特性が低下するおそれがある。なお、「ヘーズ値」は、JIS−K−7136(2000年)に準拠し、易接着層側から光を入射して測定される値である。
(平均厚み)
当該位相差フィルム積層体の平均厚みの下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましい。また、上記平均厚みの上限としては、20μmが好ましく、15μmがより好ましく、14μmがさらに好ましい。上記平均厚みが上記下限未満の場合、機械的強度が低下するおそれがある。一方、上記平均厚みが上記上限を超えると、光学的特性が低下するおそれがある。
<位相差フィルム積層体の製造方法>
本発明の位相差フィルム積層体の製造方法は、脂環式構造を有する重合体を主成分として含む位相差フィルムと、この位相差フィルムの一方の面に積層される易接着層とを備える位相差フィルム積層体の製造方法であって、樹脂成分及び溶媒を含む塗液により上記位相差フィルムの一方の面に塗膜を形成する工程(以下、「塗膜形成工程」ともいう。)と、上記塗膜の乾燥により上記易接着層を形成する工程(以下、「易接着層形成工程」ともいう。)とを備える。また、上記樹脂成分がウレタン樹脂及びアクリル樹脂を含み、上記ウレタン樹脂の上記アクリル樹脂に対する質量比が60/40以上99/1以下である。当該位相差フィルム積層体の製造方法によれば、上述した偏光子等との接着強度に優れ、かつ製造工程におけるフィルムの搬送不良を抑制できる位相差フィルム積層体を簡便かつ確実に製造できる。
[塗膜形成工程]
塗膜形成工程に使用する位相差フィルムとしては、上述した当該位相差フィルム積層体における位相差フィルムと同様のものを採用できる。
上記樹脂成分としては、ウレタン樹脂及びアクリル樹脂を上記特定の質量比で含む限り、特に限定されない。この樹脂成分中のウレタン樹脂の含有量の下限としては、50質量%が好ましく、60質量%がより好ましく、70質量%がさらに好ましい。また、上記含有量の上限としては、99質量%が好ましく、97質量%がより好ましく、95質量%がさらに好ましい。上記含有量を上記下限以上とすることにより、ウレタン樹脂を主成分とする易接着層を形成できるため、偏光子等に対する接着強度をより向上させることができる。一方、上記含有量を上記上限以下とすることにより、過度な粘着性がより抑制された易接着層を形成できるため、フィルムの搬送不良をより抑制できる。
上記塗液における上記樹脂成分の含有量の下限としては、1質量%が好ましく、3質量%がより好ましい。また、上記塗液における上記樹脂成分の含有量の上限としては、20質量%が好ましく、10質量%がより好ましい。上記含有量を上記下限以上とすることにより生産性を向上させることができる。一方、上記含有量を上記上限以下とすることにより、上記塗液の塗工性を向上させることができる。
上記溶媒としては、炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒又はこれらの組み合わせである第1溶媒種を含む溶媒が好ましい。この第1溶媒種を含む溶媒を用いると、位相差フィルムの一方の面に塗膜を形成した際に、位相差フィルムに含まれる脂環式構造を有する重合体が塗膜中に僅かに溶出するため、位相差フィルムと易接着層との相溶性がより良好となる。これにより、位相差フィルムと易接着層との接着強度がより向上し、結果として、偏光子等との接着強度に優れる位相差フィルム積層体とすることができる。
また、上記溶媒がケトン系溶媒、アルコール系溶媒又はこれらの組み合わせである第2溶媒種をさらに含むとよい。第1溶媒種と第2溶媒種とを組み合わせることにより、脂環式構造を有する重合体の塗膜中への溶出性を適度に調整できる。これにより、位相差フィルムと易接着層との相溶性の調整が容易となる。さらに、上記溶媒は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分を含有していてもよい。
(第1溶媒種)
第1溶媒種は、炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒又はこれらの組み合わせである。
上記炭化水素系溶媒としては、例えば
n−ペンタン、i−ペンタン、n−ヘキサン、i−ヘキサン、n−ヘプタン、i−ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−オクタン、i−オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;
ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、i−プロピルベンゼン、ジエチルベンゼン、i−ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ−i−プロピルベンセン、n−アミルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。
上記エーテル系溶媒としては、例えば
ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル等のジ脂肪族エーテル;
アニソール、フェニルエチルエーテル等の芳香族−脂肪族エーテル;
ジフェニルエーテル等のジ芳香族エーテル;
テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン等の環状エーテルなどが挙げられる。
上記エステル系溶媒としては、例えば
ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート;
γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等のラクトン;
酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、酢酸メトキシトリグリコール等の酢酸エステル;
酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコール部分エーテルアセテート;
プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−アミル等のプロピオン酸エステル;
アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のアセト酢酸エステル;
シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル等のシュウ酸エステル;
乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル等の乳酸エステル;
マロン酸ジエチル等のマロン酸エステル;
フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等のフタル酸エステルなどが挙げられる。
第1溶媒種としては、これらの中で、炭化水素系溶媒及びエステル系溶媒が好ましく、メチルシクロヘキサン、トルエン、酢酸エステル及び多価アルコール部分エーテルアセテートがより好ましい。
上記塗液が上記第1溶媒種を含有する場合、上記塗液における上記第1溶媒種の含有量の下限としては、3質量%が好ましく、5質量%がより好ましい。また、上記第1溶媒種の含有量の上限としては、30質量%が好ましく、28質量%がより好ましく、25質量%がさらに好ましい。上記第1溶媒種の含有量が上記下限未満の場合、樹脂成分が十分に溶媒に溶解しないおそれがある。一方、上記第1溶媒種の含有量が上記上限を超えると、得られる位相差フィルム積層体において外観不良が発生するおそれがある。
(第2溶媒種)
第2溶媒種は、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒又はこれらの組み合わせである。
上記ケトン系溶媒としては、例えば
アセトン、メチルエチルケトン、メチルn−プロピルケトン、メチルn−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチルi−ブチルケトン、メチルn−ペンチルケトン、エチルn−ブチルケトン、メチルn−ヘキシルケトン、ジi−ブチルケトン、トリメチルノナノン等の鎖状脂肪族ケトン;
シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン等の環状脂肪族ケトン;
アセトフェノン、フェニルエチルケトン等の芳香族ケトン;
アセトニルアセトン等のγ−ジケトンなどが挙げられる。
上記アルコール系溶媒としては、例えば
メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、tert−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フルフリルアルコール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等のモノアルコール;
エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等の多価アルコール;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等の多価アルコール部分エーテルなどが挙げられる。
第2溶媒種としては、これらの中で、メチルエチルケトン、i−プロパノール及びn−ブタノールが好ましい。
上記塗液が上記第2溶媒種を含有する場合、上記塗液における上記第2溶媒種の含有量の下限としては、50質量%が好ましく、60質量%がより好ましく、70質量%がさらに好ましい。また、上記第2溶媒種の含有量の上限としては、90質量%が好ましい。上記第2溶媒種の含有量が上記下限未満の場合、脂環式構造を有する重合体が塗膜中へ過剰に溶出するおそれがある。一方、上記第2溶媒種の含有量が上記上限を超えると、上記重合体の塗膜中への溶解を過剰に妨げるおそれがある。
(その他の成分)
上記溶媒が含有してもよいその他の成分としては、例えば水等の無機溶媒、アミド系溶媒などが挙げられる。上記塗液が上記その他の成分を含有する場合、その含有量の上限は、例えば2質量%である。
得られる位相差フィルム積層体の外観不良を抑制する観点から、上記溶媒の含水率としては1質量%以下が好ましい。ここで、「含水率」は、JIS−K−0113(2005年)に準拠するカールフィッシャー法により測定した水分量から算出される値である。
(塗液の塗工法)
上記塗液の塗工法としては、例えばスプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法)、スリットダイ塗布法、バー塗布法、インクジェット法等が挙げられる。なお、塗工前に、位相差フィルムの塗膜が形成される面にコロナ処理等の改質処理を施してもよい。これにより、位相差フィルムと易接着層との接着強度がより向上する。
[易接着層形成工程]
上記位相差フィルムの一方の面に塗液を塗工することで塗膜を形成した後、この塗膜を乾燥し、必要に応じて塗膜を焼成することで易接着層を形成し、位相差フィルム積層体が得られる。
上記塗膜の乾燥は、例えば加熱装置による加熱、真空乾燥機による減圧乾燥、温風(熱風)発生機による温風(熱風)乾燥、自然乾燥、又はこれらの組み合わせにより行うことができる。加熱、減圧乾燥及び温風(熱風)乾燥による塗膜の乾燥条件は、樹脂成分の融点、溶媒の沸点、溶媒の容量等に応じて適宜設定すればよく、例えば50℃以上250℃以下、1分以上1時間以下とされる。
上記塗膜の焼成は、例えば加熱装置を用いて行うことができる。焼成条件は、樹脂成分の融点等に応じて適宜設定すればよく、例えば250℃以上400℃以下、5分以上1時間以下とされる。なお、塗膜の焼成は省略することができ、また塗膜の乾燥と同時に行ってもよい。
<偏光板>
次に、本発明の一実施形態の偏光板について、適宜図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態の偏光板の模式的断面図である。
図1に示す偏光板10は、位相差フィルム積層体3と、偏光子4とを備える。位相差フィルム積層体3は、上述の当該位相差フィルム積層体であり、位相差フィルム1と、この位相差フィルム1の一方の面に直接積層される易接着層2とを備える。偏光子4は、易接着層2の位相差フィルム1とは反対側の面に図示しない接着剤を介して積層されている。偏光板10は、位相差フィルム積層体3として上述した当該位相差フィルム積層体を備えるため、位相差フィルム積層体3と偏光子4との接着強度に優れる。また、偏光板10は、位相差フィルム積層体3として製造工程における搬送不良を抑制できる当該位相差フィルム積層体を備えるため、歩留まりを向上させることができる。以下、上述した当該位相差フィルム積層体の説明と重複する内容については省略する。
[偏光子]
偏光子4としては、入射する自然光から直線偏光を取り出す機能を有する材料を含有するものであればよく、例えば二色性色素が吸着配向された偏光層を有するフィルム等が挙げられる。上記フィルムとしては、例えば偏光層の両面に保護層が積層された積層体等が挙げられる。
上記偏光層のマトリックス樹脂としては、二色性色素による染色性に優れるポリビニルアルコールが好ましい。上記保護層の主成分としては、例えばトリアセチルセルロース(TAC)等が挙げられる。
上記二色性色素としては、例えばヨウ素、ジスアゾ化合物、トリスアゾ化合物、テトラキスアゾ化合物等が挙げられる。二色性色素は1種又は2種以上を用いることができる。
偏光子4の平均厚みは、例えば5μm以上50μm以下である。
[接着剤]
上記接着剤としては、例えばポリビニルアルコール系接着剤、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤等が挙げられる。これらの中では、ポリビニルアルコール系接着剤及びエポキシ系接着剤が好ましい。接着剤は1種又は2種以上を用いることができる。
接着強度をより向上させる観点から、偏光子4を接着剤により積層する前に、易接着層2の偏光子4が積層される面にプラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム処理等の改質処理を施してもよい。
なお、偏光板10は、偏光子4の易接着層2とは反対側の面や、位相差フィルム1の易接着層2とは反対側の面に他の層を備えていてもよい。他の層としては、例えば反射防止層、ハードコート層、帯電防止層、防眩層、防汚層、セパレーターフィルム等が挙げられる。
[偏光板の物性]
(接着強度)
易接着層2と偏光子4との間の接着強度の下限としては、2.5N/25mmが好ましく、2.6N/25mmがより好ましく、2.7N/25mmがさらに好ましく、2.8N/25mmが特に好ましい。また、上記接着強度の上限としては、5N/25mmが好ましく、4.5N/25mmがより好ましい。上記接着強度を上記下限以上とすることにより、易接着層2と偏光子4との間の剥離を効果的に抑制できる。一方、上記接着強度が上記上限を超える場合、製造コストが増大するおそれがある。ここで「接着強度」とは、偏光板10を幅25mm、長さ100mmに裁断して得られた試験片について、JIS−K−6854−1(1999年)に準拠して測定される接着強度である。
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されない。例えば位相差フィルム積層体における易接着層は、偏光子以外の材料と接着剤を介して接着させてもよい。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
<疑似偏光板の作製>
偏光層に積層される保護層の材料として使用されるトリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム)を偏光子の代わりに用い、評価用の疑似偏光板を作製した。使用した材料及び作製方法を以下に示す。なお、各溶媒種の含水率をJIS−K−0113(2005年)に準拠するカールフィッシャー法により測定した水分量から算出したところ、いずれも1質量%以下であった。
[第1溶媒種]
SA−1:トルエン
SA−2:酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル
SA−3:メチルシクロヘキサン
SA−4:酢酸n−ブチル
[第2溶媒種]
SB−1:メチルエチルケトン
SB−2:i−プロパノール
SB−3:n−ブタノール
[ウレタン樹脂成分溶液]
P−1:三洋化成工業社のウレタン樹脂成分溶液「サンプレンIB−422」、樹脂のMw=47,000、樹脂成分30質量%、溶媒組成(SB−1)/(SB−2)=2/1(質量比)
P−2:三洋化成工業社のウレタン樹脂成分溶液「サンプレンIB−465」、樹脂のMw=35,000、樹脂成分30質量%、溶媒組成(SA−1)/(SB−1)/(SB−2)=1/1/1(質量比)
P−3:DIC社のウレタン樹脂成分溶液「バーノック 16−416」、樹脂のMw=30,000、樹脂成分30質量%、溶媒組成(SB−1)/(SB−2)=2/1(質量比)
[アクリル樹脂成分溶液]
P−4:東亞合成社のアクリル樹脂成分溶液「サイマックUS−350」、樹脂のMw=93,000、樹脂成分30質量%、(SA−1)の単独溶媒
P−5:三井化学社のアクリル樹脂成分溶液「アルマテックスL1043」、樹脂のMw=79,000、樹脂成分40質量%、溶媒組成(SA−1)/(SB−3)=9/1(質量比)
P−6:三井化学社のアクリル樹脂成分溶液「アルマテックスL1044」、樹脂のMw=58,000、樹脂成分50質量%、(SA−1)の単独溶媒
[実施例1]
(塗液の調製)
第1溶媒種としての(SA−1)及び(SA−2)、第2溶媒種としての(SB−1)及び(SB−2)、ウレタン樹脂成分溶液としての(P−1)及び(P−2)、並びにアクリル樹脂成分溶液としての(P−4)を混合し、樹脂成分が6質量%となるように塗液を調整した。塗液中の第1溶媒種及び第2溶媒種の含有量は、第1溶媒種を12質量%とし、第2溶媒種を82質量%とした。また、(SA−1)と(SA−2)の混合比は質量比で2:1、(SB−1)と(SB−2)の混合比は質量比で2:1、(P−1)と(P−2)の混合比は質量比で2:8とした。また、ウレタン樹脂とアクリル樹脂の混合比については、質量比で90:10とした。なお、第1溶媒種及び第2溶媒種には、樹脂成分溶液(P−1)、(P−2)及び(P−4)中の溶媒が含まれる。
(位相差フィルム積層体の形成)
平均厚み12μmの環状オレフィン樹脂製位相差フィルム(JSR社の「ARTON」)の一方の面にコロナ処理を施し、この面に塗工機(安田精機製作所社の「AUTOMATIC FILM APPLICATOR」)を用いて上記塗液を塗工して塗膜を形成した。次いで、乾燥機を用いて80℃、3分間乾燥処理を行うことで易接着層を形成し、実施例1の位相差フィルム積層体を得た。
(位相差フィルム積層体とTACフィルムとの接着)
ポリビニルアルコール(クラレ社の「KL−318」)を純水に溶解し、30質量%濃度の水溶液とした。この水溶液に、架橋剤としてのエポキシ樹脂(田岡化学工業社の「Srz.650」)をポリビニルアルコール100質量部に対し40質量部となるように加えた。その後、純水で希釈して、水100質量部に対しポリビニルアルコール2.5質量部を含有する接着剤組成物を調製した。次に、上記位相差フィルム積層体の易接着層表面にコロナ処理を施し、この面に上記接着剤組成物を23℃の雰囲気下で塗布し、平均厚み40μmのTACフィルムを貼り合わせ、乾燥機により80℃で5分間乾燥した後、真空条件下(−760mmHg)、23℃で24時間静置し、実施例1の疑似偏光板を得た。
[実施例2〜5及び比較例1〜6]
疑似偏光板の製造に用いた成分の種類及び使用量を表1に記載のものとした以外は、実施例1と同様にして実施例2〜5及び比較例1〜5の疑似偏光板を得た。また、易接着層を設けずに、コロナ処理を施した位相差フィルムの一方の面に接着剤を介してTACフィルムを積層した以外は、実施例1と同様にして比較例6の疑似偏光板を得た。なお、表1中、第1溶媒種及び第2溶媒種の含有量には、樹脂成分溶液中の溶媒が含まれる。
Figure 2016170381
<評価>
以下の評価方法により、得られた位相差フィルム積層体及び疑似偏光板を評価した。評価結果を表2に示す。
[位相差フィルム積層体のヘーズ値(%)]
位相差フィルム積層体のヘーズ値は、JIS−K−7136(2000年)に準拠し、村上色彩技術研究所社の「HAZEMETER HM−150」を用いて易接着層側から光を入射して測定した。
[位相差フィルム積層体の平均厚み(μm)]
位相差フィルム積層体の平均厚みは、反射分光膜厚計(大塚電子社の「FE−3000」)を用いて測定した。
[易接着層とTACフィルムとの接着強度(N/25mm)]
疑似偏光板を幅25mm、長さ100mmに裁断し、試験片を得た。この試験片の長さ方向の一端におけるTACフィルムを、万能引張試験機(島津製作所社の「AG−1」)を用いて掴み、JIS−K−6854−1(1999年)に準拠し、温度23℃の条件下、クロスヘッドスピード(掴み移動速度)500mm/分で90°剥離することにより測定される90°剥離強度を易接着層とTACフィルムとの接着強度とした。なお、TACフィルムは偏光子の外層として使用されるものであるため、易接着層とTACフィルムとの接着強度を測定することにより、易接着層と偏光子との接着強度を評価できる。
[ステンレス鋼板からの剥離性]
位相差フィルム積層体を幅25mm、長さ100mmに裁断し、鏡面処理したステンレス鋼板に上記裁断後の易接着層の表面をラミネートし、温度23℃、相対湿度45%で30分静置することにより試験片を得た。なお、上記ラミネートの条件は、圧力0.1MPa、速度1m/分とした。この試験片の長さ方向の一端における位相差フィルム積層体を、万能引張試験機(島津製作所社の「AG−1」)を用いて掴み、JIS−K−6854−1(1999年)に準拠し、温度23℃の条件下、クロスヘッドスピード(掴み移動速度)500mm/分で90°剥離することにより易接着層とステンレス鋼板との接着強度を測定し、下記基準により評価した。ステンレス鋼板からの剥離性が下記Aの場合、ステンレス鋼製搬送ロールに対する易接着層の付着を抑制でき、ひいては製造工程におけるフィルムの搬送不良を抑制できると判断される。
(評価基準)
A:接着強度が0N/25mm以上0.03N/25mm未満
B:接着強度が0.03N/25mm以上0.05N/25mm未満
C:接着強度が0.05N/25mm以上
Figure 2016170381
表2に示すように、実施例は、いずれも易接着層とTACフィルムとの接着強度が2.5N/25mm以上の良好な値を示し、かつステンレス鋼板からの剥離性についてもA評価であった。一方、易接着層中においてウレタン樹脂のアクリル樹脂に対する質量比が60/40未満である比較例3及び4、易接着層がアクリル樹脂のみからなる比較例5、並びに易接着層を備えていない比較例6は、いずれも易接着層とTACフィルムとの接着強度が1.0N/25mm以下の低い値を示した。また、易接着層がウレタン樹脂のみからなる比較例1及び2はステンレス鋼板からの剥離性がC評価であった。
本発明によれば、偏光子等との接着強度に優れ、かつ製造工程におけるフィルムの搬送不良を抑制できる位相差フィルム積層体、偏光板、及び位相差フィルム積層体の製造方法を提供できる。
1 位相差フィルム
2 易接着層
3 位相差フィルム積層体
4 偏光子
10 偏光板

Claims (12)

  1. 脂環式構造を有する重合体を主成分として含む位相差フィルムと、この位相差フィルムの一方の面に積層される易接着層とを備え、
    上記易接着層がウレタン樹脂及びアクリル樹脂を含み、
    上記ウレタン樹脂の上記アクリル樹脂に対する質量比が60/40以上99/1以下である位相差フィルム積層体。
  2. 上記易接着層の主成分がウレタン樹脂である請求項1に記載の位相差フィルム積層体。
  3. ヘーズ値が1%以下である請求項1又は請求項2に記載の位相差フィルム積層体。
  4. 平均厚みが20μm以下である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の位相差フィルム積層体。
  5. 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の位相差フィルム積層体と、この位相差フィルム積層体における上記易接着層の上記位相差フィルムとは反対側の面に接着剤を介して積層される偏光子とを備える偏光板。
  6. 上記易接着層と上記偏光子との間の接着強度が2.5N/25mm以上である請求項5に記載の偏光板。
  7. 脂環式構造を有する重合体を主成分として含む位相差フィルムと、この位相差フィルムの一方の面に積層される易接着層とを備える位相差フィルム積層体の製造方法であって、
    樹脂成分及び溶媒を含む塗液により上記位相差フィルムの一方の面に塗膜を形成する工程と、
    上記塗膜の乾燥により上記易接着層を形成する工程と
    を備え、
    上記樹脂成分がウレタン樹脂及びアクリル樹脂を含み、
    上記ウレタン樹脂の上記アクリル樹脂に対する質量比が60/40以上99/1以下であることを特徴とする位相差フィルム積層体の製造方法。
  8. 上記溶媒が、炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒又はこれらの組み合わせである第1溶媒種を含む請求項7に記載の位相差フィルム積層体の製造方法。
  9. 上記溶媒が、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒又はこれらの組み合わせである第2溶媒種をさらに含む請求項8に記載の位相差フィルム積層体の製造方法。
  10. 上記塗液における上記第1溶媒種の含有量が3質量%以上30質量%以下である請求項8又は請求項9に記載の位相差フィルム積層体の製造方法。
  11. 上記溶媒の含水率が1質量%以下である請求項7から請求項10のいずれか1項に記載の位相差フィルム積層体の製造方法。
  12. 上記易接着層の主成分がウレタン樹脂である請求項7から請求項11のいずれか1項に記載の位相差フィルム積層体の製造方法。
JP2015145605A 2015-03-10 2015-07-23 位相差フィルム積層体、偏光板及び位相差フィルム積層体の製造方法 Active JP6651724B2 (ja)

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