JP2016170138A - タイヤ用ゴムの粘着力試験方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】容易に且つ高精度にタイヤ用ゴムの粘着力を評価する試験方法の提供。【解決手段】本発明に係る粘着力試験方法は、試験ゴムが準備される準備工程と、この試験ゴムのウェット摩擦試験がされて、試験ゴムの表面に粘着物質が生成される摩擦試験工程と、この粘着物質の体積と単位面積当たりの粘着力とが測定される粘着物質測定工程と、この粘着物質の体積と単位面積当たりの粘着力とに基づいて試験ゴムの粘着力が評価される評価工程とを備えている。【選択図】図1

Description

本発明は、タイヤに使用される架橋ゴムの粘着力の試験方法に関する。
タイヤ用ゴムの摩擦力を向上させることは、タイヤが装着された車両の運動性及び安全性の向上に寄与する。タイヤの摩擦は、粘着摩擦、変形損失摩擦及び掘り起こし摩擦の3要素からなるとされている。粘着摩擦は、路面とゴムとの粘着による摩擦である。変形損失摩擦は、ゴムが路面に接地して周期的に変形する過程でエネルギー損失として消費される摩擦である。掘り起こし摩擦は、ゴムが削られたり引きちぎられたりする破壊に対して抵抗する摩擦である。
摩擦性能をより高めたタイヤを開発するために、この粘着摩擦を正確に評価することは重要である。この粘着摩擦を評価する方法として、ゴムの粘着力を評価する種々の方法が提案されている。特開平2−296134号公報、特開2001−188036号公報及び特開2009−210463号公報には、タイヤ用ゴムの粘着力の評価方法が開示されている。特開2010−24411号公報には、ゴム表面での液体の表面張力を規定して、粘着力を向上させたタイヤが開示されている。特開2013−19776号公報には、オーリング形状の接触子を表面に接触させて、粘着力を測定する方法が開示されている。これらの方法を用いることで、タイヤ用ゴムの粘着力が評価されうる。
特開平2−296134号公報 特開2001−188036号公報 特開2009−210463号公報 特開2010−24411号公報 特開2013−19776号公報
特開平2−296134号公報、特開2001−188036号公報及び特開2009−210463号公報の粘着力の評価方法は未加硫ゴムの粘着力の測定に適している。これらの方法は、未加硫ゴムに比べて粘着力が弱い加硫ゴムの粘着力の測定には適さない。また、タイヤの表面にはトレッドパターンのマクロな凹凸とゴムの表面粗さを主因にするミクロな凹凸とが形成されている。この様な凹凸を備えるタイヤの表面で、液体の表面張力を測定することは容易ではない。更に、特開2013−19776号公報の粘着力の測定方法では、接触子で局所の粘着力を測定する。この方法では、局所的な測定のため、測定箇所によるバラツキを生じ易い。この方法では、タイヤ表面全体の粘着力を高精度に測定することは、容易でない。
本発明の目的は、容易に且つ高精度にタイヤ用ゴムの粘着力を評価する方法の提供にある。
本発明に係る粘着力試験方法は、タイヤに使用される試験ゴムが準備される準備工程と、この試験ゴムのウェット摩擦試験がされて、試験ゴムの表面に粘着物質が生成される摩擦試験工程と、この粘着物質の体積と単位面積当たりの粘着力とが測定される粘着物質測定工程と、この粘着物質の体積と単位面積当たりの粘着力とに基づいて試験ゴムの粘着力が評価される評価工程とを備える。
好ましくは、上記評価工程において、粘着物質の体積と単位面積当たりの粘着力との積算値に基づいて試験ゴムの粘着力が評価される。
好ましくは、上記単位面積当たりの粘着力の測定は、ウェット摩擦試験の終了後5時間以内にされている。
好ましくは、上記摩擦試験工程において、摩擦試験装置が準備されている。この摩擦試験装置は、本体と、本体に対して回転する測定手段とを備えている。この測定手段は、路面に対向して回転する底面を備えている。上記試験ゴムは、この底面に取り付けられている。この測定手段は、慣性力により回転させられて、試験ゴムが路面を滑らされる慣性摩擦がされている。この試験ゴムが路面を滑べり始めたときから路面に停止するときまでを慣性摩擦の1サイクルとしたときに、この慣性摩擦が2サイクル以上7サイクル以下で繰り返されている。
本発明に係るタイヤの粘着力試験方法では、ウェット摩擦により、試験ゴムの表面に粘着物質が生成される。この粘着物質の体積と粘着物質の単位面積当たりの粘着力とに基づいて試験ゴムの粘着力が評価される。これにより、容易に且つ高精度に粘着力を評価しうる。
図1は、本発明の一実施形態に係る粘着力試験方法に使用される試験装置の前面図である。 図2は、図1の試験装置の底面図である。 図3(a)は図1の試験装置に取り付けられて粘着力が評価される試験前の試験ゴムが示された正面図であり、図3(b)はその底面図である。 図4(a)は図3の試験ゴムの試験後の状態が示された正面図であり、図4(b)はその底面図である。
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
図1及び図2には、本発明の粘着力試験方法に用いられる摩擦試験装置2が示されている。図2は、この試験装置2の底面図である。図1は、図2の線分I−Iで示された断面図である。ここでは、説明の便宜上、図1の上下方向を上下方向として、図1の左右方向を左右方向として、図1の紙面に垂直方向を前後方向として説明がされる。
この試験装置2は、本体4及び測定手段6を備えている。本体4は、図示されないが、支持部及び駆動部を備えている。本体4は、路面8に接地する据付座10を備えている。測定手段6は、駆動軸12、駆動円盤14、測定軸16、測定円盤18及び測定子20を備えている。
この測定手段6は、本体4の支持部に支持されている。本体4の支持部は、測定手段6を上下方向に移動可能に支持している。本体4の支持部は、測定手段6を回転可能に支持している。本体4の駆動部は、測定手段6の駆動軸12を回転させうる。本体4の駆動部により、測定手段6は、駆動軸12の軸線を回転軸に回転可能されている。
測定手段6の駆動円盤14は、駆動軸12の下端に一体に固定されている。駆動円盤14の中心線は、駆動軸12の軸線と一致している。測定軸16は、駆動軸12に回転可能に支持されている。測定軸16は、駆動軸12に対して、上下方向の移動が規制されている。測定円盤18は、測定軸16の下端に一体に固定されている。測定軸16の軸線と測定円盤18の中心線とは一致している。駆動軸12の軸線と測定軸16の軸線とは、一致している。
図示されないが、測定手段6は、駆動円盤14と測定円盤18とを連結する弾性手段と、駆動円盤14と測定円盤18との位置ずれを測定する位置センサとを備えている。弾性手段は、駆動円盤14と測定円盤18とを連結している。弾性手段は、駆動円盤14と測定円盤18との回転方向の位置ずれを可能にして連結している。位置センサーは、この弾性手段の変位を測定しうる。
測定円盤18は、底面22を備えている。この底面22は、路面8に対向している。底面22に、3つの測定子20が固定されている。3つの測定子30は、測定円盤18の円周方向に等間隔で並べられている。測定子20の固定端20aは、底面22に固定されている。測定子20は、固定端20aから固定されない自由端20bまで延びている。測定子20は、測定円盤18の円周方向に対する接線方向に延びている、この測定子20は、固定端20aから自由端20bまで、測定手段6の回転向きに対して逆向きに延びている。この測定子20は、固定端20aから自由端20bに向かって、底面22から路面に近付く向きに延びている。測定子20の自由端20bは、底面22から離れて位置している。
図3(a)及び図3(b)には、試験ゴムとしてのゴム試験片24と、測定子20の自由端20bの近傍が示されている。図3(a)の上下方向、左右方向及び前後方向は、図1のそれと同様にされている。図3(b)は、図2と同様に、ゴム試験片24の底面図を表している。このゴム試験片24は、測定子20の自由端24b側に固定されている。このゴム試験片24は、路面8に対向する表面24aを備えている。この表面24aは、略平面からなっている。表面24aは、左右端が曲面で面取りされている。
図4(a)及び図4(b)には、摩擦試験後のゴム試験片24が示されている。図4(a)の右方向はゴム試験24が路面8に擦られるときの回転方向前方であり、その左方向は回転方向後方である。図4(a)の一点鎖線は、摩擦試験前の図3(a)の表面24aの形状を示している。
図4(b)に示されるように、摩擦試験後のゴム試験片24の表面24aは、非接触部28、擦り部30及び堆積部32からなっている。非接触部28は、ゴム試験24が路面8に擦られるときの回転方向前方に位置している。この非接触部28は、摩擦試験において、路面8に接触しなかった部分である。堆積部32は、この回転方向後方に位置している。堆積部30は、粘着物質26が生成された部分である。擦り部30は、この回転方向において、非接触部28と堆積部32との間に位置している。擦り部30は、路面8に擦られた部分である。
図4(a)及び図4(b)に示されるように、ゴム試験片24と路面8とが擦られることで、表面24aに擦り傷が生じる。表面24aのうちで、擦り傷が生じた部分が擦り部30である。路面8が湿潤路面であるとき、擦り部30の形成に伴って、表面24aには粘着物質26が生成される。本発明では、表面24aに粘着物質26が生成されるように、湿潤路面である路面8とゴム試験片24とが擦られることを、ウエット摩擦という。この粘着物質26は、表面24aの回転方向後方に堆積している。表面24aのうちで、粘着物質26が堆積した部分が堆積部32である。この堆積部32は、表面24aから下方に向かって、突出している。この堆積部32は、回転方向に垂直な表面24aの幅方向一方から他方まで堆積している。
このウェット摩擦は、温度1℃以上60℃以下の水を用いて、摩擦の測定値10BPN以上100BPN以下の湿潤路面でされる。例えば、20℃の水を用いて、50BPNのアスファルト路面でされる。この湿潤路面の摩擦の測定値を測定する方法では、ASTM(米国試験及び材料規格)のE1337に規定された路面摩擦係数測定方法が用いられる。ASTMのE303に規定されたBPN試験機(英国式振り子型滑り試験機)が用いられる。
本発明にかかる粘着力試験方法は、準備工程、摩擦試験工程、粘着物質測定工程及び評価工程を備えている。図1及び図2の試験装置2と図3のゴム試験片24とを用いた試験方法が説明される。
準備工程では、試験装置2とゴム試験片24とが準備される。測定子20にゴム試験片24が固定される。ゴム試験片24の表面24aが路面8に対向させられる。この試験装置2では、3つの測定子20にそれぞれゴム試験片24が固定される。この測定子20とゴム試験片24は、1つであってもよいし、2つ、3つ更には4つ以上の複数であってもよい。
摩擦試験工程では、この試験装置2が湿潤路面である路面8に載置される。据付座10が路面8に接地する。試験装置2の支持部が測定手段6を上方に移動させる。これにより、ゴム試験片24が路面8から離れた状態にされる。
ゴム試験片24が路面8から離れた状態で、試験装置2の駆動部は、測定手段6を回転させる。駆動円盤14及び測定円盤18とが回転させられる。このとき、駆動円盤14及び測定円盤18とが一緒に回転する。この駆動部は、駆動円盤14及び測定円盤18とを所定の回転速度で回転させる。駆動部は、この所定速度に達すると駆動を停止する。この駆動部が駆動を停止した後、駆動円盤14及び測定円盤18とは、慣性力で回転し続ける。この所定の回転速度するとき、ゴム試験片24は所定の速度で回転している。この所定の速度は、後述する慣性摩擦の初速である。この初速は、例えば、15km/hである。
試験装置2の支持部が測定手段6の支持位置を徐々に下げていく。測定手段6は徐々に下方に移動する。この支持部は、測定手段6を下向きに付勢しない。この測定手段6は、その自重で下方に移動する。やがて、ゴム試験片24の表面24aが路面8に接地する。ゴム試験片24は、測定手段6の自重により路面8に押しつけられる。
ゴム試験片24の表面24aと路面8との間に摩擦抵抗が生じる。この摩擦抵抗により、測定円盤18の回転速度は減速される。駆動円盤14と測定円盤18との間に回転方向の位置ずれが生じる。言い換えると、駆動円盤14と測定円盤18との間に回転角の相対変位が生じる。やがて、この摩擦抵抗により、駆動円盤14の回転と測定円盤18の回転とが停止する。この発明では、慣性力で回転するゴム試験片24が路面8に接地されて摩擦抵抗を生じる状態を慣性摩擦と称する。
位置センサーは、駆動円盤14と測定円盤18とを連結する弾性手段の変位を測定する。位置センサーは、ゴム試験片24の表面24aが路面8に接地してから、駆動円盤14の回転と測定円盤18の回転とが停止するまで、弾性手段の変位を測定する。この弾性手段の変位から、駆動円盤14と測定円盤18との回転角の相対変位が測定される。駆動円盤14の回転と測定円盤18の回転とが停止すると、変位センサーは弾性手段の変位の測定を終了する。
駆動円盤14と測定円盤18との回転角の相対変位から、測定円盤18が受ける摩擦抵抗が計算される。この摩擦抵抗と測定手段6の自重とから、動摩擦係数が計算される。
この試験装置2は、図示されない出力装置、例えばX−Yレコーダーを備えている。この出力装置に、この駆動円盤14と測定円盤18との相対変位及び回転速度が出力される。更に、この試験装置2は、演算部を備えていてもよい。この演算部が、摩擦抵抗や動摩擦係数等を計算してもよい。これらの計算結果が、出力装置に出力されてもよい。
この方法では、ゴム試験片24が路面8に接地して路面8を滑り始めたときから路面8に停止するときまでを、慣性摩擦の1サイクルと称する。この摩擦試験工程では、この粘着物質26が生成されるまで、慣性摩擦が複数サイクル繰り返される。この摩擦試験工程では、試験装置2の支持部により、ゴム試験片24が路面8から離れた状態にされてから、ゴム試験片24が路面に接地されて、慣性力で回転する駆動円盤14と測定円盤18との回転が停止するまでの一連の工程がされればよい。この摩擦試験工程では、弾性手段の変位の測定、摩擦抵抗力の計算及び動摩擦係数の計算は、必ずしもされなくてもよい。
粘着物質測定工程では、粘着物質26の体積と粘着物質26の単位面積当たりの粘着力が測定される。粘着物質26の体積は、ゴム試験片24の表面24aにおいて、摩擦試験前の形状から摩擦試験後の形状のうちで突出している部分の体積が求められる。例えば、非接触型表面粗さ計が準備される。この表面粗さ計で、摩擦試験後のゴム試験片24の表面24aの表面形状が測定される。摩擦試験後の試験片24の表面24aの表面形状について、摩擦試験前のゴム試験片24の表面24aの表面形状から突出している体積が計算される。この体積が、粘着物質26の体積とされる。この非接触型表面粗さ計としては、例えば、株式会社キーエンス製の形状測定システム(KS−1100)とレーザ測定器測定部(LT−9010M)及びレーザ測定器コントローラ(LT−9500)とを組み合わせた表面粗さ計設備が用いられる。
粘着物質26はゴム試験片24から生成されており、軟らかく変形し易い。この粘着物質26の体積の測定には、非接触型表面粗さ計が好適である。また、この粘着物質26の厚さは小さい。この粘着物質26の体積を高精度に測定する観点から、前述の非接触型表面粗さ計は好適である。
粘着物質26の単位面積当たりの粘着力は、例えば、以下の様にして求められる。押し込み硬さ試験機が準備される。硬さ試験機の圧子が微小な荷重で粘着物質26に押し込まれる。この圧子が粘着物質26に圧接される。この圧接された圧子が粘着物質26から離される。この離されるときに働く圧子と粘着物質26との間の最大引力Fが測定される。この圧子の最大引力Fを単位面積当たりに換算して、粘着物質26の単位面積当たりの粘着力が算出される。この押し込み硬さ試験機として、例えば、株式会社エリオニクス製の超微小押し込み硬さ試験機ENT−2100が用いられる。この硬さ試験機では、球状の圧子がゴム試験片24の延着物質26に押し込まれる。この押し込み深さは、変形計で測定されている。この圧子が粘着物質26から離れ始めるときから離れるまでの間に、連続的に圧子とゴム試験片24との引力が測定される。この引力の最大値が最大引力Fとされる。
粘着物質26の厚さはゴム試験片24の厚さに比べて非常に小さい。粘着物質26の表面積はゴム試験片24の表面24aの面積に比べて非常に小さい。この粘着物質26の粘着力の測定には、この超微小押し込み硬さ試験機が好適である。
評価工程では、本発明の粘着摩擦力指数が算出される。この粘着摩擦力指数は、粘着物質測定工程で得られた粘着物質26の体積と単位面積当たりの粘着力とに基づいて、算出される指数を意味する。この粘着摩擦力指数は、粘着物質26の体積が大きいほど大きくなり、単位面積当たりの粘着力が大きくなるほど大きくなる指数である。例えば、この粘着摩擦力指数は、この粘着物質の体積と単位面積当たりの延着力と積算値として求められる。この粘着摩擦力指数が大きいほど、ゴム試験片24の粘着力は大きい。
発明者らの種々の試験で、摩擦試験で生成される粘着物質26の体積が大きいゴム試験片24は粘着力が大きいことが確認されている。この試験方法では、ゴム試験片24の表面24aに粘着物質26が生成されている。この粘着物質26の体積と単位面積当たりの粘着力とに基づいて、ゴム試験片24の粘着力が評価される。これにより、容易に且つ高精度にゴム試験片24の粘着力を評価しうる。
粘着物質26の粘着力は、摩擦試験の後経時的に低下する。この方法で、ゴム試験片24の単位面積当たりの粘着力の測定は、好ましくは、摩擦試験の終了後5時間以内にされ、更に好ましくは3時間以下にされ、特に好ましくは1時間以内にされる。この摩擦試験の終了後の時間は、摩擦試験工程において路面8を滑るゴム試験片24が路面8に停止した時からの経過時間として測定される。前述の慣性摩擦が複数サイクル繰り返される場合には、最後のサイクルでゴム試験片24が路面8に停止した時からの経過時間として測定される。
複数の異なる試験ゴムについて比較評価される場合には、摩擦試験の終了後の経過時間の差が小さいことが好ましい。好ましくは、摩擦試験の終了後の経過時間の差は、1時間以内にされる。
この試験装置2では、測定手段6の自重により、ゴム試験片24が路面8に接地している。この測定手段6の自重の他に、ゴム試験片24に付勢力が加えられない。ゴム試験片24が測定手段の自重で接地させられることで、粘着物質26が生成され易い。この観点から、ゴム試験片24を路面8に付勢する圧力は、好ましくは0を越え0.3MPa以下である。同様に、粘着物質26の生成の観点から、慣性摩擦の初速は、好ましくは7km/h以上である。安定的にゴム試験片24を路面8に接地させて滑らせる観点から、この初速は好ましくは15km/h以下である。
この試験装置2では、ゴム試験片24と路面8とは、前述の慣性摩擦されている。この慣性摩擦により、粘着物質26が生成され易くされている。この様に、粘着物質26を生成し易くする観点から、試験装置2としては、日邦産業株式会社製D.F.テスター(ダイナミックフリクションテスター)が好適である。
摩擦試験工程で生成される粘着物質26の量が少な過ぎると粘着力の評価制度が低下する。高精度に粘着力を評価する観点から、慣性摩擦が複数サイクル繰り返されることが好ましい。この観点から、この慣性摩擦が2サイクル以上繰り返されることが好ましい。一方で、前述の押し込み硬さ試験機で粘着力の測定では、測定面が平坦であるほど高精度に測定しうる。この粘着物質26の量が多すぎると、押し込み硬さ試験機での粘着力の測定精度が低下する。この観点から、この慣性摩擦が7サイクル以下で繰り返されることが好ましい。
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
この実施例では、3種類のゴム試験片A、B及びCが準備された。それぞれのゴム試験片は、下記の表1に示される配合のゴム組成物が混練され、加硫成型されて得られた。これらのゴム組成物は、表1に示された質量部で配合されていた。
Figure 2016170138
この表1のポリマーは、ゴム(旭化成製「E15」)である。シリカは、デグサ社製「ウルトラシルVN3」である。水酸化アルミニウムは、住友化学製「ATH#B」である。カップリング剤は、デグサ社製「テトラスルフィドシランSi69」である。酸化亜鉛は、三井金属鉱業製である。ステアリン酸は日本油脂製「椿」である。オイルは、ジャパンエナジー社製アロマオイル「プロセスX−260」である。老化防止剤は、住友化学製「アンチゲン6C」である。ワックスは、大内新興化学製「サンノックN」である。硫黄は、軽井沢硫黄製の粉末硫黄である。加硫促進剤CZは、大内新興化学製「ノクセラーCZ」である。加硫促進剤DPGは、大内新興化学製「ノクセラーD」である。
[摩擦係数の測定]
上記ゴム試験片Aの架橋ゴムをトレッドゴムとしたタイヤAが試作された。同様に、ゴム試験片Bの架橋ゴムを用いてタイヤBが試作され、ゴム試験片Cの架橋ゴムを用いてタイヤCが試作された。これらの試作タイヤが正規リムに組み込まれ、内圧180kPaで空気が充填された。これらの試作タイヤが、四輪自動車に装着された。この四輪自動車が、速度80km/hで走行して、停止線から急制動させられた。このとき、停止線から停止するまでの制動距離が測定された。この測定では、アンチロックブレーキシステムの機能は停止させた。この制動距離が短いほど、制動性能に優れている。制動性能に優れるほど、摩擦係数μが大きい。その結果、摩擦係数μは、タイヤAがタイヤBより小さく、タイヤBがタイヤCより小さかった。
[粘着力の評価]
走行後のタイヤAが準備された。このタイヤAを回転させながら、タイヤAのトレッド面の上方からガラスビーズを落下させて、トレッド面全体にガラスビーズを付着させた。このトレッド面全体に、空気が吹き付けられた。空気が吹き付けられた後に、深さ2mm以上の溝部分を除き、タイヤAのトレッド面に付着したガラスビーズが、刷毛で掻き落とされた。掻き落とされたガラスビーズの質量が測定された。このガラスビーズの質量に基づいて、タイヤAの粘着力が評価された。このガラスビーズとして、ユニチカ株式会社の高精度ユニビーズSPL100(平均粒径100μm)が用いられた。タイヤAと同様にして、タイヤB及びタイヤCについても、ガラスビーズの質量に基づいて、それぞれの粘着力が評価された。その結果が指数として表2に示されている。この指数は、数値が大きいほどビーズの質量が大きい。数値が大きいほど粘着力が高い。この粘着力の評価方法は、トレッド面全体の粘着力を高精度に評価できることが、発明者らの試験によって既に確認されている。
[粘着摩擦力指数の評価]
図1から図4を用いて説明がされた、本発明の粘着力試験方法により、ゴム試験片A、b及びCの粘着摩擦力指数が算出された。試験装置として、日邦産業株式会社製D.F.テスターが用いられた。この方法では、粘着物質が適当な大きさになる慣性摩擦のサイクル数が決定された。このサイクル数は5回であった。このサイクル数で、ゴム試験片A、B及びCについて、本発明の粘着力試験方法がされた。表面粗さ計設備として、株式会社キーエンス製の形状測定システム(KS−1100)とレーザ測定器測定部(LT−9010M)及びレーザ測定器コントローラ(LT−9500)とが用いられた。押し込み硬さ試験機として、株式会社エリオニクス製の超微小押し込み硬さ試験機ENT−2100が用いられた。その結果が表2に示されている。この指数は、数値が大きいほど粘着力が高い。
Figure 2016170138
表2に示される様に、最大摩擦係数μは、タイヤA、B、Cの順に、だんだん大きくなっている。粘着力指数も、タイヤA、B、Cの順に、だんだん大きくなっている。この結果に示す様に、最大摩擦係数μと粘着力との間に相関関係がある。
また、表2に示される様に、粘着力指数が大きくなると、粘着摩擦力指数も大きくなっている。この結果に示す様に、粘着力指数と粘着摩擦力指数との間に、相関関係がある。この方法によれば、ゴム試験片A、B及びCの粘着摩擦力指数を評価することで、タイヤA、B及びCのトレッド面全体の粘着力を評価しうる。この方法では、トレッド面全体の粘着力を、短時間でかつ高精度に評価しうる。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
以上説明された方法は、二輪自動車、四輪自動車を含む種々の車両に装着されるタイヤの粘着力の評価に適用されうる。
2・・・試験装置
4・・・本体
6・・・測定手段
8・・・路面
12・・・駆動軸
14・・・駆動円盤
16・・・測定軸
18・・・測定円盤
20・・・測定子
22・・・底面
24・・・ゴム試験片
26・・・粘着物質
28・・・非接触部
30・・・擦り部
32・・・堆積部

Claims (4)

  1. タイヤに使用される試験ゴムが準備される準備工程と、
    この試験ゴムのウェット摩擦試験がされて、試験ゴムの表面に粘着物質が生成される摩擦試験工程と、
    この粘着物質の体積と単位面積当たりの粘着力とが測定される粘着物質測定工程と、
    この粘着物質の体積と単位面積当たりの粘着力とに基づいて試験ゴムの粘着力が評価される評価工程とを備える粘着力試験方法。
  2. 上記評価工程において、粘着物質の体積と単位面積当たりの粘着力との積算値に基づいて試験ゴムの粘着力が評価されている請求項1に記載の試験方法。
  3. 上記単位面積当たりの粘着力の測定が、ウェット摩擦試験の終了後5時間以内にされている請求項1又は2に記載の試験方法。
  4. 上記摩擦試験工程において、
    摩擦試験装置が準備されており、
    この摩擦試験装置が本体と本体に対して回転する測定手段とを備えており、
    この測定手段が路面に対向して回転する底面を備えており、
    上記試験ゴムがこの底面に取り付けられており、
    この測定手段が慣性力により回転させられて、試験ゴムが路面を滑らされる慣性摩擦がされており、
    この試験ゴムが路面を滑べり始めたときから路面に停止するときまでを慣性摩擦の1サイクルとしたときに、この慣性摩擦が2サイクル以上7サイクル以下で繰り返されている請求項1から3のいずれかに記載の試験方法
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