JP2016169428A - チタン板及びその製造方法 - Google Patents

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浩史 滿田
一浩 ▲高▼橋
一浩 ▲高▼橋
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Abstract

【課題】成形性に優れるチタン板及びその製造方法を提供する。
【解決手段】母材の炭素濃度をC(質量%)、表面からの深さdμmの炭素濃度をC(質量%)としたときに、C/C>1.5を満たす深さd(炭素濃化層厚み)が1.0μm以上10.0μm未満であり、表面における荷重0.245Nでのビッカース硬さHV0.025が200以上であり、表面における荷重0.49Nでのビッカース硬さHV0.05がHV0.025より低く、かつ、HV0.025とHV0.05との差が30以上であり、表面における荷重9.8Nでのビッカース硬さHVが150以下であり、張出し成形過程で圧延方向に25%のひずみを付与した際に表面に発生するクラックの平均間隔が50μm未満であり、深さが1μm以上10μm未満であることを特徴とするチタン板。
【選択図】図1

Description

本発明は、チタン板及びその製造方法に関する。特に、成形性に優れたチタン板及びその製造方法に関する。
チタン板は、耐食性に優れていることから、化学プラント、電力プラント、食品製造プラントなど、様々なプラントにおける熱交換器の素材として使用されている。その中でもプレート式熱交換器は、プレス成形によりチタン板に凹凸を付けて表面積を増加させることにより熱交換効率を高めるものであり、優れた成形性が要求される。
特許文献1には、酸化雰囲気又は窒化雰囲気で加熱することにより、酸化膜及び窒化膜を形成した後、曲げ又は引っ張りを加え、これらの皮膜に微細な割れを導入して金属チタンを露呈させ、その後、可溶な酸水溶液中で溶削することによって、密度が高く、深度の深い凹凸を形成させたチタン材が開示されている。特許文献1によれば、従来よりも平均粗さが大きく平均間隔の小さい凹凸を形成することにより潤滑油の担保性が高まり、チタン材の潤滑性が良くなる。また、酸化膜及び窒化膜を表面に残存させるか、又は、形成することよって、さらに潤滑性が良くなる。
特許文献2には、冷間圧延されたチタン板を所定の範囲の酸素分圧に制御した雰囲気下で焼鈍することにより、荷重4.9Nでのビッカース硬さを180以下にし、0.098Nでのビッカース硬さを4.9Nでの測定値の差を20以上であるチタン板が開示されている。これにより、チタン板自体の成形性が低下するのを防ぎ、表層のみを硬質にすることでプレス時の焼付きを防止し、チタン板の成形性が向上する。
特許文献3には、化学的又は機械的にチタン薄板の表面から0.2μmの部位を除去することにより、冷間加工時に表面に焼き付いた残留油分を排除し、その後に真空焼鈍を行うことにより、荷重200gf(1.96N)での表面硬さを170以下とし、かつ酸化皮膜の厚さを150Å以上にした、成形性に優れたチタン薄板が開示されている。特許文献3の方法によれば、チタン薄板の表層に硬化層が形成されないので、素材の成形性を損なうことがなく、成形時の金型及び工具との潤滑性が維持され、チタン薄板の成形性が向上する。
特許文献4には、大気焼鈍後に酸洗を行い、荷重0.098Nでの表面ビッカース硬さと、測定荷重4.9Nでのビッカース硬さの差を45以下とすることで、成形性が向上したチタン板が開示されている。また、酸洗後のスキンパスによってチタン板の表面形状を調整することで保油性が向上し、それにより耐焼付き性が向上することが開示されている。
特開2005−298930号公報 特開2002−3968号公報 特開2002−194591号公報 特開2010−255085号公報
特許文献1は、表面に密度の高い凹凸を形成させる技術が開示しているが、成形性との関係について開示していない。
特許文献2の技術は、焼鈍時の酸素分圧を制御する必要があり簡便性に劣る。真空焼鈍時に、炉材などからのガスの放出により酸素分圧を一定に保つことは極めて困難である。
特許文献3の技術は、冷間加工時の表面残留油分を機械的、又は化学的に除去する必要があり、生産性、歩留まりに劣る。
特許文献4の技術は、表面と母材の硬さ差を45以下とするために表面を片面約10μm以上除去する必要があり、歩留まりが悪くなる。また、酸洗を必須とするため表面に酸化皮膜や硬質層が存在せず、材料自体の耐焼付き性に劣る。
特許文献3〜4はチタン板の成形性を向上させるために、表面を軟質化しており、成形時のクラックの発生は抑制されるが、成形が進むにつれて発生する低頻度のクラックに応力集中が生じて局部くびれを促進させる。
本発明は、このような従来技術の問題を解決するためになされたものであり、複雑な工程を有することなく、表面に薄く硬質な層を形成することで成形過程で表面に微小のクラックを多数発生させ、それにより成形時の応力集中を緩和することで、優れた成形性を示すチタン板を提供することを目的とする。
本発明のチタン板は、JIS規格における純チタンである。
板材の成形性の評価には、比較的簡便なエリクセン試験が用いられるのが一般的である。エリクセン試験は、通常、固形又は液体の潤滑油を潤滑材として行われる。これらの潤滑条件の元で評価を行っている例は多数存在する。しかし、実際のプレス加工等の成形では金型によって変形する方向が異なるため、エリクセン試験のような等二軸変形に近い成形性評価では、素材のプレス成形性を評価できていない可能性がある。
一般的に、チタン板の最も厳しい変形は平面歪変形である。そこで、本発明者らは、最も厳しい変形である平面歪変形での成形性を評価するため、平面歪変形を模擬できる試験片形状を用いた球頭張出し試験によって成形性を評価した。これにより、素材の最も厳しい変形での成形性を評価することが可能となり、実際のプレスでの成形により近い成形性評価となった。
本発明者らは、チタン板のプレス成形性には金属組織に加え、表面特性、たとえば表面硬さと表面形状が大きく関係していると考えた。
そこで、チタン板の最表層の硬さの情報を正確に得るために、荷重を0.245N(25gf)から9.8N(1000gf)の間で変化させた表面ビッカース硬さの測定を試みた。ビッカース硬さ測定は荷重を変化させることでビッカース圧子の押し込み深さを変えることができる。0.245Nのような極低荷重ではビッカース圧子の押し込み深さが浅いため、チタン板の再表層部の硬さを評価することができ、逆に9.8Nと高荷重では、押込み深さが深くなり、素材の硬さを評価することができる。また、チタン板の表面状態について、成形試験後の表面凹凸や表面のクラックの状態を詳細観察した。
本発明者らは優れた成形性を示す表面特性について鋭意研究を重ねた結果、成形過程で表面に微小の表面クラックが多数発生することで成形性が向上することを突き止めた。具体的には、上記の平面歪変形を模擬した張出し成形過程において、圧延方向にひずみが25%付与されたときに表面に発生したクラックの平均間隔が50μm未満であり、クラックの深さが1μm以上、10μm未満の場合に成形性が向上することを突き止めた。
そして、このようなクラックを得るためには、チタン板の表面のビッカース硬さを適切な値とする必要があり、それは、表面に炭素を濃化させた炭素濃化層を形成することで実現可能であることを見出した。
本発明者らは、さらに、上記の表面硬さ及び炭素濃化層を得るための製造方法について鋭意研究を行った。その結果、上記の表面硬さ及び炭素濃化層を得るためには、冷間圧延工程の条件及び焼鈍工程の条件を適正にすることが重要であることを見出した。
本発明は、このような知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
(1)母材の炭素濃度をC(質量%)、表面からの深さdμmの炭素濃度をC(質量%)としたときに、C/C>1.5を満たす深さd(炭素濃化層厚み)が1.0μm以上10.0μm未満であり、表面における荷重0.245Nでのビッカース硬さHV0.025が200以上であり、表面における荷重0.49Nでのビッカース硬さHV0.05がHV0.025より低く、かつ、HV0.025とHV0.05との差が30以上であり、表面における荷重9.8Nでのビッカース硬さHVが150以下であり、張出し成形過程で圧延方向に25%のひずみを付与した際に表面に発生するクラックの平均間隔が50μm未満であり、深さが1μm以上10μm未満であることを特徴とするチタン板。
(2)前記(1)のチタン板の製造方法であって、熱間圧延されたチタン板に、潤滑油として鉱油を用い、圧延率70%までの圧下率を各パスあたり15%以上として冷間圧延を施し、冷間圧延されたチタン板に、真空、又はArガス雰囲気で、750〜810℃の温度域で0.5〜5分間保持する焼鈍を施すことを特徴とするチタン板の製造方法。
本発明によれば、チタン板の表面に薄く硬質な炭素濃化層を形成することで、成形変形過程で表面に微小のクラックが多数発生し、それにより成形時の応力集中が緩和されることで優れた成形性を示すチタン板を提供することができる。このチタン板は、成形性に優れているため、たとえば、化学プラント、電力プラント、食品製造プラントなどの熱交換器の素材として特に有用である。
結晶粒径と球頭出し試験での張出し高さの関係を示す図である。 実施例における球頭張出し試験後の表面プロファイル測定結果の一例であり、(a)は本発明例、(b)は比較例である。 実施例における球頭張り出し試験後の表面SEM画像一例であり、(a)は本発明例、(b)は比較例である。
以下、本発明の実施形態について説明する。
(1)チタン板
(1−1)表面微小クラック:圧延方向にひずみが25%付与されたときに表面に発生したクラックの平均間隔が50μm未満であり、クラックの深さが1μm以上、10μm未満:
本発明のチタン板は、平面歪変形となる張出し成形過程において、圧延方向に25%ひずみを付与した際に表面に発生したクラックの平均間隔が50μm未満であり、深さ1μm以上10μm未満である。これにより、成形時のクラック先端部への応力集中が緩和され、素材の局部くびれの進行を防止することができ、その結果、成形性が向上する。このような微小クラックが発生しない場合、成形が進んだ際に、低頻度の粗大なクラックが発生し、この粗大なクラックに応力集中が生じ、局部くびれの要因となり成形性が低下する。
なお、本願における平均クラック間隔は、(株)キーエンス製:型番VK9700のレーザー顕微鏡を用いて、表面プロファイルを圧延方向に平行な方向に200μm測定し、深さ1μm以上の凹凸の個数を計測した後、下記(1)式より得られる値で定義する。
l=L/N…(1)
l:平均クラック間隔 L:測定長さ N:深さ1μm以上の凹凸の個数
以下、この平均間隔が50μm未満であり、深さ1μm以上10μm未満である表面クラックを「微小クラック」という。図1に成形性に大きく影響する金属組織特性である結晶粒径と、上記の球頭張出し試験における張出し高さの関係を示す。図1に示すように、同じ結晶粒径であっても、成形後の表面の微小クラックの発生有無により成形性が大きく変化する。なお、結晶粒径はチタンの延性に寄与する特性であり、15〜80μmが成形性に優れている。
(1−2)表面ビッカース硬さ:HV0.025が200以上かつ、HV0.05がHV0.025より低く、その差が30以上であり、HVが150以下:
本発明のチタン板は、表面における荷重0.245Nでのビッカース硬さHV0.025が200以上であり、表面における荷重0.49Nでのビッカース硬さHV0.05がHV0.025より低く、その差が30以上である。すなわち、ごく表層のみに硬い層が形成されている。このような表面ビッカース硬さを満たすことで、圧延方向に25%のひずみを付与した際に、チタン板の表面に上記の微小クラックを発生させることができる。また、素材の成形性を確保するために、高荷重である9.8Nでのビッカース硬さHVが150以下である必要がある。
HV0.025とHV0.05の差が小さい場合、すなわち硬い層が深くまで形成されている場合は、発生する表面クラックの深さが大きく粗大なクラックとなり、成形性に悪影響を及ぼす。また、HV0.025が200より低い場合、成形時の表面クラックは抑制されるが、成形が進んだ際に低頻度の表面クラックが発生し、クラック部への応力集中を緩和することができず、良好な成形性は得られない。HVが150以上であると、素材そのものの延性が低下し、良好な成形性は得られない。
(1−3)炭素濃化層厚み:C/C>1.5を満足する深さdが1.0μm以上10.0μm未満:
本発明のチタン板は母材の炭素濃度をC(質量%)、表面からの深さdμmの炭素濃度をC(質量%)としたときに、C/C>1.5を満たす深さ(以下「炭素濃化層厚み」という)dが1.0μm以上、10.0μm未満である必要がある。
本発明は、チタン板の表層に炭素を濃化させることにより、表面ビッカース硬さを調整している。炭素濃化層厚みが1.0μm以上、10.0μm未満であれば、上記の表面ビッカース硬さを得ることができる。炭素濃化層厚みが10.0μm以上である場合、HV0.05が高くなり、HV0.025との差を30以上とすることができず、その結果、所望の微小クラックを発生させることができず、表面に粗大なクラックが発生し、チタン板の成形性が悪化する。炭素濃化層厚みが1.0μm未満の場合、HV0.025を200以上とすることができない。
(1−4)金属組織:α相の平均結晶粒径:
本発明のチタン板は、α相の平均結晶粒径が15〜80μmであることが好ましい。α結晶粒径が15μm未満となると、素材の延性が低下し成形性が悪化しやすくなる。α相の平均結晶粒径が80μmより大きくなるとプレス加工等により肌荒れが生じる懸念がある。
(2)製造方法
本発明のチタン板は、溶解工程、分塊工程、熱間圧延工程、冷間圧延工程、真空又はArガス雰囲気焼鈍工程を実施することによって製造するに際し、冷間圧延工程と真空又はArガス雰囲気焼鈍工程の条件を適正化することが重要である。
(2−1)溶解工程、分塊工程、熱間圧延工程
溶解工程、分塊工程、熱間圧延工程には特に制約がなく、通常の条件で行うことができる。また、熱延工程後には酸洗処理によるスケールの除去を行う。熱間圧延工程後のチタン板の板厚は、後工程の加工を考慮し、4.0〜4.5mmであることが好ましい。
(2−2)冷間圧延工程、真空又はArガス雰囲気焼鈍工程
本発明のチタン板の製造においては、冷間圧延を高荷重で行う。具体的には、冷間圧延における圧延率70%までの圧延を、各パス当たり15%以上の圧下率で行う。
各パス当たりの圧下率を15%未満で行った場合、すなわち低荷重で圧延を行った場合、表面にTiCが十分に形成されず、その後の真空又はArガス雰囲気での焼鈍で炭素濃化層が形成されない。
圧延加工を70%以上行う場合の圧下率は特に制約はないが、各パス当たり3%以上とすることが好ましい。
一般的に冷間圧延時には潤滑油が用いられる。本発明のチタン板の製造方法においては、潤滑油として鉱油を用いる。上記の冷間圧延を行うことで、鉱油中に含まれる炭素とチタンが反応して表面にTiCが形成され、この表面のTiC中の炭素が真空又はArガス雰囲気焼鈍中にチタン板内方へ拡散し、炭素濃化層を形成することができ、本発明のチタン板を得ることができる。
潤滑油として鉱油を用いる理由は、鉱油の主成分は炭化水素系であり、この鉱油中の炭素成分が炭素濃化層への炭素の供給源となるためである。潤滑油として、たとえばエマルジョン油、シリコン油などの炭素を含まない又は炭素含有量の少ない圧延油を用いると、Ti−Cが表面に残存せず、後述する真空又はArガス雰囲気での焼鈍を行っても、所定の炭素濃化層が形成されない。
上記の冷間圧延を行った後に、真空又はArガス雰囲気で750〜810℃の温度域で0.5〜5分間保持する焼鈍を行う。なお、冷間圧延工程と、焼鈍工程の間にはアルカリ(水酸化ナトリウムを主成分とする水溶液)による洗浄工程を備える。これにより、炭素濃化層を所定の厚さとすることでき、その結果、表面ビッカース硬さを所定の値とすることができる。
焼鈍時の温度が750℃より低い場合、成形性に適した金属組織(結晶粒径)を得るために、長い時間保持する必要があり、その場合炭素濃化厚みが大きくなり、本発明のチタン板が得られない。焼鈍時の温度が810℃より高い場合、チタン中に第二相であるβ相が析出し、金属組織の制御が困難となる。
また、大気中で焼鈍を行った場合、表面に酸化スケールが生成するため、その後の酸洗工程が必須となり、その結果、表面の炭素濃化層が除去される。
したがって、本発明のチタン板の製造方法においては、高荷重での冷間圧延工程と、高温かつ短時間保持の条件で真空又はAr雰囲気での焼鈍工程を行う。
なお、冷間圧延板を焼鈍する場合、α相の平均結晶粒径は、焼鈍温度と保持時間によって決まる。本発明で規定する焼鈍温度であれば、保持時間を0.5〜5分程度とすることにより、α相の平均結晶粒径を上記の好ましい範囲とすることができる。
以下、実施例にて本発明のチタン板の効果を説明する。供試材として、電子ビーム溶解されたチタンJIS−1種のインゴットを、分塊圧延、熱間圧延をした後、硝ふっ酸を用いて酸洗処理を行って作製された厚さ4.5mmのチタン板を用いた。このチタン板に下記の1)〜3)の工程を順に施し、本発明材としての試験用チタン板を作製した(試験材No.1〜11)。
1)圧延率70%までを、各パス当たり15%以上の圧下率で圧延し、総圧延率90%まで圧延を行う冷間圧延工程
2)アルカリ(水酸化ナトリウムを主成分とする水溶液中)で行う洗浄工程
3)750〜810℃の温度域で0.5〜5分保持する真空、あるいはArガス雰囲気焼鈍工程
本発明における試験材に加え、下記の比較材を作製した。
比較材I:圧延率70%までの各パス当たりの圧下率を15%未満で冷間圧延した後に、3)に示す焼鈍を実施した試験用チタン板(試験材No.12A〜17)
比較材II:上記工程1)、2)を行った後に600〜700℃の温度域で240分保持する焼鈍を実施した試験用チタン板(試験材No.18〜23)
各試験材の平均結晶粒径、成形性、成形試験後の表面状態、表面ビッカース硬さ、炭素濃化層厚みを以下に示す条件で評価した。
・平均結晶粒径
光学顕微鏡により撮影した組織写真において、JIS G 0551(2005)に準拠した切断法によりα相の平均結晶粒径を算出した。
・成形性
(株)東京試験機製:型番SAS−350Dの深絞り試験機にてφ40mmの球頭ポンチを用いて、平面歪変形となるようにチタン板を70mm×95mmの形状に加工して球頭張出し試験を行った。なお、試験片は圧延方向が95mmとなるように加工を行った。
張出し成形は、日本工作油(株)製高粘性油(#660)を塗布し、この上にポリシートを乗せ、ポンチとチタン板が直接触れないようにし、試験片が破断した時の張出し高さを比較することで評価した。球頭張出し試験での張出し高さが20.5mm以上の試験材を、優れた成形性を示すチタン板と判定とした。
・成形試験後の表面状態
球頭張出し試験後の試験片の表面について、(株)キーエンス製:型番VK9700のレーザー顕微鏡を用いて、表面プロファイルを圧延方向に平行な方向に200μm測定し、深さ1μm以上の凹凸の個数を計測した後、(1)式より平均クラック間隔を計測した。また、(株)キーエンス製:型番VHX−D510のSEMを用いて成形試験後の表面観察を行った。
・表面ビッカース硬さ
明石製作所製:型番MVK−Eのマイクロビッカース硬さ試験機にて、荷重0.245N(25gf)、0.49N(50gf)、9.8N(1000gf)で、チタン板の表面ビッカース硬さを測定した。
・炭素濃化層厚み
(株)理学電機工業製:型番GDA 750Aのグロー放電発光分析装置を用いて、表面から深さ方向の炭素濃度分布を測定した。なお、それ以上深さが深くなっても一定の炭素濃度となった時の濃度値を母材の炭素濃度とした。ここで、母材の炭素濃度をC(質量%)、表面からの深さdμmの炭素濃度をC(質量%)としたときに、C/C>1.5を満たす深さdを炭素濃化層厚みとした。
これらの結果を、製造条件とともに表1に示す。また、表面の微小クラックの一例として、図2(a)には試験材No.4、(b)にはNo.19の球頭張出し試験後の表面プロファイル測定結果を示す。また図3(a)には試験材No.4、(b)にはNo.19の球頭張り出し試験後の表面SEM画像を示す。
図2(a)及び図3(a)に示すように、本発明材であるNo.4は、成形過程で表面に微小クラックが多数発生している。一方、比較材であるNo.19は表面に微小クラックが発生しておらず、粗大なクラックが発生している。
本発明に該当する試験片No.1〜11は、いずれも成形過程で表面に微小クラックが発生しており、成形時の応力集中が緩和されたため、張出し高さが20.5mm以上と優れた成形性を示した。
比較材IであるNo.12〜17は、各パス当たりの圧延率が15%未満と小さかったため、炭素濃化層が形成されず、それによりHV0.025が小さくなっている。そのため、成形過程で表面に微小クラックが発生せず、成形が進んだときに発生した低頻度のクラックに応力が集中し、成形性が劣っている。
比較材IIであるNo.18〜23は、結晶粒径は満足しているものの、焼鈍時の保持時間が長時間になっているため、炭素濃化層厚みが10.0μm以上となり、HV0.025とHV0.05の差が小さく30未満、又はHV0.05の方が大きくなっている。そのため、成形時に表面に粗大なクラックが発生し、応力集中が緩和されず、成形性が劣っている。
本発明によれば、表面に薄く硬質な層を形成することで、成形変形過程で表面に微小のクラックが多数発生し、それにより成形時の応力集中が緩和されるので、優れた成形性を示すチタン板を提供することができる。このチタン板は、成形性に優れているため、たとえば、化学プラント、電力プラント、食品製造プラントなどの熱交換器の素材として特に有用である。

Claims (2)

  1. 母材の炭素濃度をC(質量%)、表面からの深さdμmの炭素濃度をC(質量%)としたときに、C/C>1.5を満たす深さd(炭素濃化層厚み)が1.0μm以上10.0μm未満であり、
    表面における荷重0.245Nでのビッカース硬さHV0.025が200以上であり、表面における荷重0.49Nでのビッカース硬さHV0.05がHV0.025より低く、かつ、HV0.025とHV0.05との差が30以上であり、
    表面における荷重9.8Nでのビッカース硬さHVが150以下であり、
    張出し成形過程で圧延方向に25%のひずみを付与した際に表面に発生するクラックの平均間隔が50μm未満であり、深さが1μm以上10μm未満である
    ことを特徴とするチタン板。
  2. 請求項1に記載のチタン板の製造方法であって、
    熱間圧延されたチタン板に、潤滑油として鉱油を用い、圧延率70%までの圧下率を各パスあたり15%以上として冷間圧延を施し、
    冷間圧延されたチタン板に、真空、又はArガス雰囲気で、750〜810℃の温度域で0.5〜5分間保持する焼鈍を施す
    ことを特徴とするチタン板の製造方法。
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