JP2016068145A - チタン板およびその製造方法 - Google Patents

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浩史 滿田
Koji Mitsuta
浩史 滿田
高橋 一浩
Kazuhiro Takahashi
一浩 高橋
穣慧 伊藤
Joe Ito
穣慧 伊藤
英人 瀬戸
Hideto Seto
英人 瀬戸
秀徳 岳辺
Hidenori Takebe
秀徳 岳辺
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Abstract

【課題】良好な表面変形能を有するチタン板の提供
【解決手段】表面の荷重0.245Nでのビッカース硬度Hv0.025が150以下であり、かつJIS B0601:2013に規定される輪郭曲線要素の平均長さRSmが80μm以下である、チタン板。
【選択図】 図2

Description

本発明は、チタン板およびその製造方法に関する。
チタン板は、耐食性に優れていることから、化学プラント、電力プラント、食品製造プラントなど、様々なプラントにおける熱交換器の素材として使用されている。その中でもプレート式熱交換器は、プレス成形によりチタン薄板に凹凸を付けて表面積を増加させることにより熱交換効率を高めるものであり、優れた成形性が要求される。
特許文献1には、酸化雰囲気または窒化雰囲気で加熱することにより、酸化膜および窒化膜を形成した後、曲げまたは引っ張りを加え、これらの皮膜に微細な割れを導入して金属チタンを露呈させ、その後、可溶な酸水溶液中で溶削することによって、密度が高く、深度の深い凹凸を形成させている。特許文献1によれば、潤滑油の担保性が高まり潤滑性が良くなること、酸化膜および窒化膜を表面に残存させるか、または、形成することよって、さらに潤滑性が良くなることが記載されている。
特許文献2には、大気焼鈍後に酸洗、スキンパス圧延を行い、表面粗さRa、最大高さRz、ひずみ度(Rsk)を特定の数値範囲とすることにより、保油性の発揮とともに切欠効果による割れの誘発を防止でき、成形性が向上すると記載されている。また、表面における測定荷重0.098Nでのビッカース硬さが、測定荷重4.9Nでのビッカース硬さよりも高く、かつ、その差を45以下とすることにより、成形時の表面割れの発生を防止している。
特許文献3には、圧延方向と平行な方向における表面の算術平均粗さが0.25μm以上2.5μm以下であり、表面における試験荷重4.9Nによるビッカース硬さよりも試験荷重0.098Nによるビッカース硬さの方が20以上高く、かつ、試験荷重4.9Nによるビッカース硬さが180以下であるチタン板が記載されている。この文献では、チタン板の表面の粗さをある程度粗くすることにより、プレス成形時におけるチタン板と成形金型の間への潤滑剤の引き込み量を増大させ、成形性が向上することが記載されている。
特許文献4には、化学的または機械的に表面から0.2μmの部位を除去することにより、冷間加工時に表面に焼き付いた残留油分を排除すること、および、その後に真空焼鈍を行うことにより、荷重200gf(1.96N)での表面硬さを170以下とし、かつ酸化皮膜の厚さを150Å以上にすることが記載されている。この文献では、これにより、素材の成形性を損なうことなく、成形時の金型および工具との潤滑性を維持され、成形性が向上すると記載されている。
特開2005−298930号公報 特開2010−255085号公報 特開2002−003968号公報 特開2002−194591号公報
特許文献1には、成形性について記載されていない。そして、この技術のように、特定の表面形状を得るため酸洗前に酸化膜または窒化膜を形成させると、潤滑性は向上するが、張出し成形などにおいて割れの起点となり、逆に、成形性を低下させる要因となる可能性がある。
特許文献2には、酸洗とスキンパスによって表面形状を調整し、成形性を向上させることが記載されている。しかし、この技術では、焼鈍後の酸洗により形成させた凹凸の凸部をスキンパスで均しくする方法であるため、凹部の形状を制御することが困難であり、特に、大きな凹部が存在した場合、応力集中の起点となり割れを誘発する可能性がある。また、大気焼鈍の工程を有し、表面と母材の硬度の差を45以下とするために表面を片面約10μm以上除去する必要があり、歩留まりが悪くなる。
特許文献3の技術では、表面粗さRaのみを管理しており、凹凸の大きさの絶対値の定義ができず、局所に大きな凹凸が存在した場合の切欠効果により、成形性が低下する可能性がある。
特許文献1〜3は、いずれも潤滑剤の保油性を高めるための技術であり、材料自体の成形性については全く考慮されていない。一方、特許文献4は、材料自体の成形性を向上させることについて一応言及されている。
すなわち、特許文献4には、冷間加工後の表面処理により表面硬さ(Hv0.2)を下げることができることができ、それによって素材の成形性が向上することが記載されているが、その表面形状について全く考慮されておらず、表面形状が成形性に与える影響についても一切記載されていない。また、表面硬度測定が荷重200gf(1.96N)と比較的大きな荷重であるため、チタン板の最表層部の情報を得られていない可能性がある。
本発明は、このような従来技術の問題を解決するためになされたものであり、切欠効果の原因となる表面形状の改善および表層の脆い硬化層を抑制することで、良好な表面変形能を有する、チタン板を提供することを目的とする。
純チタン板の場合、その溶製過程において混入したCおよびNが硬質化合物(TiCまたはTiN)を形成し、チタン板の表層に存在する上記の硬質化合物が加工時に割れの起点となる。このような割れを防止するために、従来、化学組成、金属組織(粒径)などの冶金的因子について研究されたり、潤滑材の条件や保油性などが研究されたりしてきたが、チタン板自体の表面変形能について研究された例は皆無である。そこで、本発明者らは、化学組成および金属組織(粒径)が同程度の供試材を用い、特に、表面形状および表面硬度による成形性への影響を検討した。
まず、板材の成形性の評価方法として、比較的簡便なエリクセン試験が用いられるのが一般的である。エリクセン試験は、通常、固形または液体の潤滑油を潤滑材として行われ、これらの潤滑条件の元で評価を行っている例は多数存在する。しかし、潤滑材を用いることを前提とする試験では、潤滑材の性能および保油性などの影響によって測定値が大きく変化するため、素材そのものの表面変形能の評価にはふさわしくない。また、冷間圧延時の潤滑材には炭素成分が含まれ、チタン板表面に焼き付き、残存すると、表面に硬質なTiCが生じる。
そこで、本発明者らは、素材そのものの表面変形能の評価するため、表面変形能が顕著に表れるPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)シートを潤滑材とした極めて高潤滑条件のエリクセン試験(以下、「高潤滑エリクセン試験」と呼ぶ。)によってチタン板を評価した。ここで、高潤滑エリクセン試験に使用したPTFEシートの摩擦係数μは約0.04であり、潤滑油を用いた場合のチタンと試験冶具との摩擦係数約0.4〜0.5に比べ極めて小さく、素材と試験機との潤滑の影響を無視できる。このため、素材そのものの表面変形能を評価することが可能となる。
一方、チタン板の最表層部の硬さの情報を正確に得るために、本発明者らは、極低荷重、具体的には、荷重25gf(0.245N)で表面のビッカース硬度(以下、「Hv0.025」と呼ぶ。)の測定を試みた。このような低荷重であれば、ビッカース圧子の押し込み深さが浅いため、チタン板の最表層部の硬さを評価することができる。なお、表面硬度の結果より逆算した25gf(0.245N)での圧子深さは、およそ2〜3μmである。
図1には、Hv0.025と高潤滑エリクセン試験値の関係を示す。図1に示すように、Hv0.025を150以下にすることによって、高潤滑エリクセン値を14.0mm以上の良好な範囲とすることができる一方、Hv0.025が150を超えると、高潤滑エリクセン値が低くなり、200を超えると14.0mm未満にまで劣化する。したがって、大まかな傾向として、表面硬度が低いほど成形性が向上していることが分かり、具体的にはHv0.025を150以下にすることが重要であることを知見した。しかし、表面硬度Hv0.025が150以下の範囲においては、同程度の硬度であっても高潤滑エリクセン値に差がみられ、表面硬度以外の他の要因が影響していることが判明した。
本発明者らは、上記の他の要因について鋭意研究を重ねた結果、輪郭曲線要素の平均長さRSm(JIS B0601:2013参照。以下、「凹凸平均間隔」とも呼ぶ。)が素材そのものの表面変形能に大きな影響を及ぼすことを突き止めた。図2には、凹凸平均間隔RSmと、高潤滑エリクセン試験値の関係を示す。図2に示すように、表面硬度では明確ではなかった高潤滑エリクセン試験値の変化が、凹凸平均間隔RSmによれば、うまく整理することができ、特に、凹凸平均間隔RSmを80μm以下とすることが重要であることを知見した。
本発明者らは、さらに、上記の表面硬度および凹凸の状態を得るための製造方法について鋭意研究を行った。通常、チタン板は、溶製工程、熱間圧延工程、冷間圧延工程および焼鈍工程を備える。また、冷間圧延工程と焼鈍工程との間には脱脂工程(アルカリ洗浄工程)を備えるのが一般的である。そして、焼鈍工程を大気中で行う場合には、焼鈍時に生じたスケールの除去を目的として焼鈍工程後に酸洗工程を実施することもある。また、焼鈍は、連続焼鈍酸洗設備(AP:Annealing & Pickling)または連続光輝焼鈍設備(BA:Bright Annealing)で行われることもある。上記のAP設備は燃焼ガス雰囲気中で焼鈍した後に酸洗脱スケールを行う設備であり、中間焼鈍及び比較的板厚の厚い製品の仕上げ焼鈍に用いられる。上記のBA設備は炉内雰囲気としてArガスが用いられる。ここでは無酸化雰囲気で焼鈍されるため焼鈍前(圧延肌)と同等の表面状態を保つことができること及び脱スケールが不要であることから、極薄板の中間焼鈍及び仕上げ焼鈍に用いられる。さらにBA設備は結晶粒径コントロール、歪取り熱処理、表面窒化処理など機能性を高める手段としても活用される。
上記の脱脂工程では、冷間圧延工程における潤滑剤を除去することができ、焼鈍時のスケールの生成を抑制できるが、チタン板表層のTiCなどの硬化層を完全に除去することができない。一方、焼鈍後に酸洗を行えば、焼鈍時のスケールだけでなく、表層に濃化したTiC、TiNなどの硬化層の除去も行うことができる。しかし、歩留まりが大きくなる。また、本発明者らの研究により、凹凸平均間隔RSmを所定の範囲にコントロールするためには、焼鈍前に酸洗することが極めて重要であることが判明した。
一方、本発明者らは、酸洗以外の方法で凹凸平均間隔RSmを所定の範囲にコントロールする方法について検討し、焼鈍後に調質圧延を行うとともにその圧延ロールを所定の条件にすることを知見した。
本発明は、このような知見に基づいてなされたものであり、下記のチタン板を要旨とする。
(1)表面の荷重0.245Nでのビッカース硬度Hv0.025が150以下であり、かつJIS B0601:2013に規定される輪郭曲線要素の平均長さRSmが80μm以下である、チタン板。
(2)JIS B0601:2013に規定される輪郭曲線の最大高さRzが1.5μm以下である、上記(1)のチタン板。
(3)表面から深さ5μmの炭素濃度をCs、深さ20μmの炭素濃度をCbとするとき、Cs/Cbが2.0未満の範囲である、上記(1)または(2)のチタン板。
(4)冷間圧延工程後に、非酸化雰囲気焼鈍工程を実施するチタン板の製造方法であって、前記冷間圧延工程と前記非酸化雰囲気焼鈍工程との間に硝ふっ酸酸洗工程を実施する、チタン板の製造方法。
(5)冷間圧延工程後に、非酸化雰囲気焼鈍工程を実施し、その後、調質圧延工程を実施するチタン板の製造方法であって、
調質圧延工程が、表面が、JIS B0601:2013に規定される輪郭曲線要素の平均長さRSmが80μm以下であるロールを用いる工程である、チタン板の製造方法。
(6)非酸化雰囲気焼鈍工程後に、表面が、JIS B0601:2013に規定される輪郭曲線要素の平均長さRSmが80μm以下であるロールを用いる調質圧延工程を実施する、上記(4)のチタン板の製造方法。
(7)前記の非酸化雰囲気焼鈍工程が真空焼鈍工程である、上記の(4)〜(6)のいずれかのチタン板の製造方法。
本発明によれば、切欠効果の原因となる表面形状の改善とともに、表層の脆い硬化層を抑制することができるので、良好な表面変形能を有するチタン板を提供することができる。このチタン板は、成形性に優れているため、たとえば、化学プラント、電力プラント、食品製造プラントなどの熱交換器の素材として特に有用である。
Hv0.025と高潤滑エリクセン試験値の関係を示す図。 凹凸平均間隔RSmと、高潤滑エリクセン試験値の関係を示す図。 試験No.1、2、4および11のSEM画像。 試験No.1および4の元素分析結果を示す図。
以下、本発明の実施形態について説明する。
1.チタン板
ビッカース硬度Hv0.025:150以下
前述のように、熱間圧延工程、焼鈍工程などにおいてチタン板の表層にC、Nなどが濃化し、TiC、TiNなどの化合物が生成するが、これらの化合物は硬質であるため、加工時に割れの起点となる。そこで、チタン板の成形性を評価するためには、極表層の硬さを知ることが重要となる。従来技術(たとえば、特許文献4など)においては、荷重200gf(1.96N)と比較的大きな荷重でのビッカース硬度(Hv0.2)を測定しており、チタン板のバルクの硬度の影響も受けるため、チタン板の成形性への大きい表層の硬さを正確に知ることができない。このため、本発明者らは、荷重25gf(0.245N)でのビッカース硬度(Hv0.025)に着目した。このような低荷重であれば、ビッカース圧子の押し込み深さが浅く(2〜3μm程度)、チタン板の表層のみの硬さを評価することができるからである。
そして、この荷重25gf(0.245N)でのビッカース硬度(Hv0.025)が、150を超える場合には、高潤滑エリクセン試験値が劣化する。このため、ビッカース硬度(Hv0.025)は150以下とする。ビッカース硬度(Hv0.025)は、145以下とすることが好ましく、140以下とすることがより好ましい。
輪郭曲線要素の平均長さRSm:80μm以下
ビッカース硬度(Hv0.025)は150以下とすれば、高潤滑エリクセン試験値を14.0以上とすることができるが、同じ硬度でも高潤滑エリクセン試験値に差がある。そこで、チタン板の成形性、すなわち、素材そのものの表面変形能を向上させるためには、チタン板の表面の形状が重要である。従来技術においては、RaまたはRzを管理されているが、これは保油性の観点で定められており、高潤滑エリクセン試験のように潤滑剤を用いない試験方法による評価には無関係である。一方、輪郭曲線要素の平均長さRSm(JIS B0601:2013参照)は、チタン板表面の凹凸の平均間隔を意味し、このRSm値を80μm以下とすれば、高潤滑エリクセン試験値を安定して高い値とすることができる。RSm値は、75μm以下とすることが好ましく、70以下とすることがより好ましい。
輪郭曲線の最大高さRz:1.5μm以下
本発明のチタン板の表層は、輪郭曲線要素の平均長さRSm値に加えて、輪郭曲線の最大高さRzを1.5μm以下に管理することによって、更に優れた成形性を得ることが好ましい。Rzのより好ましい範囲は、1.3μm以下である。
ここで、表面から深さ5μmの炭素濃度をCs(表層炭素濃度)、深さ20μmの炭素濃度をCb(バルク炭素濃度)とするとき、Cs/Cbを2.0未満の範囲とすることが好ましい。前述のように、チタン板の表層にCが濃化し、硬質のTiCが生成すると、加工時に割れの起点となるからである。
2.チタン板の製造方法
本発明のチタン板は、冷間圧延工程後に、非酸化雰囲気焼鈍工程を実施することによって製造するに際し、前記冷間圧延工程と前記非酸化雰囲気焼鈍工程との間に硝ふっ酸酸洗工程を実施することが重要である。
前記の通り、本発明のチタン板の製造においては、焼鈍工程後に酸洗を行うのが一般的であるが、この段階で酸洗を行っても、表面のスケールおよび硬化層の除去を行えるものの、チタン板表面の凹凸状態を所望の範囲に調整することは困難である。したがって、前記冷間圧延工程と前記非酸化雰囲気焼鈍工程との間に硝ふっ酸酸洗工程を実施して、チタン板表面の輪郭曲線要素の平均長さRSmを80μm以下とする。
酸洗液の硝ふっ酸については、チタン板表面の輪郭曲線要素の平均長さRSmを80μm以下とすることができれば、特に制約はない。ただし、表面に存在するTiCなどを完全に除去するため、また歩留まり悪化を防ぐためには、たとえば、片面の酸洗溶削量は2〜4μmとするのがよい。また、酸洗は、たとえば、硝酸:40〜50g/l、ふっ酸:20〜30g/lを混合した、硝ふっ酸液を用い、50〜60℃の酸液中に10秒以上浸漬させるのがよい。
チタン板の表面に所望の凹凸を設けるために、焼鈍工程後に調質圧延工程を実施する場合には、表面が、JIS B0601:2013に規定される輪郭曲線要素の平均長さRSmが80μm以下であるロールを用いることが好ましい。調質圧延工程は、冷間圧延工程、硝ふっ酸酸洗工程および前記非酸化雰囲気焼鈍工程によって製造したチタン板に実施してもよいし、硝ふっ酸酸洗工程を省略した工程によって製造したチタン板に実施してもよい。
その他、冷間圧延工程後には脱脂工程を設けるのがよい。特に、特に、潤滑材を用いて冷間圧延を行う場合に、その潤滑材を取り除くためである。
冷間圧延工程の条件には特に制約がなく、通常の条件で行うことができる。たとえば、
熱間圧延後に脱スケールした厚さ4.5mmの工業用純チタン板を用いて、ゼンジミア圧延機で80〜90%の冷間加工による圧下を行うのがよい。冷間圧延中に圧延ロールにチタンがコーティングされ板表面の凹凸が大きくなる可能性があるため、圧延の最終1パスもしくは2パスでロール粗度をRa0.2〜0.4程度に調整したワークロールで仕上げ圧延を行うのがよい。
焼鈍工程は、大気中で行うと、焼鈍後に脱スケール工程を設ける必要が生じ、歩留まりを悪化させるので、非酸化雰囲気で行う必要がある。例えば、アルゴンガス雰囲気での焼鈍、または、真空焼鈍であることが好ましい。なお、窒素ガス雰囲気でも良いが、長時間の熱処理を行うと、チタン板表面に窒化もしくは窒素を固溶した硬化層が形成され安いという問題がある。焼鈍条件としては、たとえば、真空雰囲気でその真空度を1.33×10-3Pa(1.0×10−5torr)以下とし、板の温度が650〜700℃に到達した後に240分保持し、その後真空雰囲気を保ったまま炉冷を行うのがよい。これは、チタン板の粒径を、張出し成形性に優れる粒径50〜100μm(粒度番号:4〜6程度)の範囲に調整するためである。また、板の過加熱や不均一加熱を防止するため、昇温速度3.0℃/min以下で加熱を行うのがよい。
供試材として純チタンJIS−1種を使用し、下記の1)〜4)の工程を順に行って、本発明材としての試験用チタン板を作製した(試験No.1〜3)。
1)仕上げパスのロールおよびその直前パスのロールの表面粗さRa:0.4以下で、かつ圧下率:90%で行う冷間圧延工程、
2)アルカリ(水酸化ナトリウムを主成分とする水溶液中)で行う洗浄工程、
3)硝ふっ酸(硝酸:50s/l、ふっ酸:20g/l、酸液温度:約55〜60℃)に浸漬させ、片面1〜15μm溶削し微細な凹凸を多数形成させるとともに、冷間圧延時の焼付き油分を除去する酸洗工程、および、
4)650〜670℃の温度で240分保持する真空焼鈍工程(真空度は約1.33×10−4Pa)
なお、上記1)の冷間圧延工程では、脱スケールした厚さ4.5mmの純チタン板を厚さ0.5mmにまで圧下(圧下率:約89%)した。また、上記4)の真空焼鈍工程では、昇温速度を2.5〜2.7℃/min(昇温時間、約180分)の範囲で調整し、その後、真空雰囲気を保ったまま炉冷した。
上記1)、2)および4)の工程を順に行って、比較材としての試験用チタン板を作製した(試験No.4〜6)。また、上記1)、2)および4)の工程を順に行った後、硝ふっ酸に浸漬させ、片面5〜15μm溶削する工程を行って、比較材としての試験用チタン板を作製した(試験No.7〜12)。
得られた試験用チタン板について、荷重25gf(0.245N)でのビッカース硬さ、JIS B0601:2013に基づく輪郭曲線要素の平均長さRSmおよび輪郭曲線の最大高さRzを測定した。表面硬度は、マイクロビッカース硬さ試験機にて、荷重25gf(0.245N)で測定した。表面粗さは、触針式表面粗さ測定機を用いて圧延方向に平行な方向で測定長さ4mmを測定した。さらに、厚さ:50μm、摩擦係数μ:0.04のPTFEシートを、試験体と試験機との間に挟み、試験体と試験機と直接接触しない条件でエリクセン試験を行い、高潤滑エリクセン試験値を測定した。これらの結果を製造条件とともに表1に示す。また、図3には、試験No.1、2、4および11のSEM画像を示す。
図3(a)および(b)に示すように、本発明材であるNo.1およびNo.2は溶削量の大小にかかわらず微細な凹凸が形成されているが、図3(c)に示すように、酸洗を行わなかったNo.4では、冷延時に生じた微小亀裂が多数存在している。また、図3(d)に示すように、真空焼鈍後に酸洗を行ったNo.11では、結晶粒単位の大きな凹凸を形成されている。
表1に示すとおり、本試験材である試験No.1〜3は、焼鈍前に酸洗を行わなかったNo.4〜6に比べて、表面硬度を大幅に下げることができた。試験No.4〜6では、冷間圧延時の圧延油由来の炭素成分表面に残存しているか、圧延時の高荷重により圧延油が焼付き、TiCが表面に形成されており、真空焼鈍時にこれらの炭素が内方拡散し、硬化層を形成したものと考えられる。これに対して、試験No.1〜3では、冷間加工後の酸洗によって表面の残存油分由来の炭素およびTiCが除去されているため、真空焼鈍を行っても硬化層が形成されなかったと考えられる。
試験No.7〜12は、焼鈍後に酸洗を行っているため、表面硬度を試験No.1〜3と同程度にまで下げることができた。これは、真空焼鈍時に形成された硬化層を、その後の酸洗により除去したことによる。しかし、試験No.7〜12は、母材と同等の硬さを得るために約5〜10μmの溶削が必要であり、焼鈍後に酸洗を行っているため、焼鈍時に成長した結晶粒単位の凹凸が形成されてしまう。その結果、RSmが91.9〜177.0と高い値になった。
そして、試験No.1〜3では、試験No.4〜12に比べて高潤滑エリクセン試験値が高い値となった。
試験No.4〜6は、表面硬度が高いため表面変形能に劣り、成形時に表面に微小亀裂が発生しやすくなり、成形性が悪くなったためであると考えられる。また、これらの試験材は、Rsmが大きく比較的平滑であるが、冷間圧延時に形成されたと考えられる微小亀裂が存在し、張り出し成形時にこの微小亀裂に応力集中が起こり、成形性に悪影響を与えたと考えられる。
試験No.7〜12は、焼鈍後の酸洗によって、表面に結晶粒単位の大きな凹凸が存在し、Rsmが大きくなったため、凹凸部への切欠効果が大きく、また、凹凸の数が少ないことにより応力集中の分散が少なくなり、凹凸部への応力集中により、割れが発生しやすくなったと考えられる。
試験No.1(本発明例)および試験No.4(比較例)について、GDS(グロー放電発光表面分析)を用いて、チタン板表面の深さ方向での元素分析を行った。そのときの発光強度を図4に示す。図4に示すように、本発明例においては、表層でのCの濃化がほとんどないことがわかる。そして、発光強度から表面から深さ5μmの炭素濃度Csおよび深さ20μmの炭素濃度Cbを換算し、Cs/Cbを求めたところ、試験No.1のCs/Cbは1.4であり、試験No.4のCs/Cbは4.9であった。このように、焼鈍前に酸洗を行うことにより、表層におけるCの濃化を防止することができることがわかる。
本発明によれば、切欠効果の原因となる表面形状の改善とともに、表層の脆い硬化層を抑制することができるので、良好な表面変形能を有するチタン板を提供することができる。このチタン板は、成形性に優れているため、たとえば、化学プラント、電力プラント、食品製造プラントなどの熱交換器の素材として特に有用である。

Claims (7)

  1. 表面の荷重0.245Nでのビッカース硬度Hv0.025が150以下であり、かつJIS B0601:2013に規定される輪郭曲線要素の平均長さRSmが80μm以下である、チタン板。
  2. JIS B0601:2013に規定される輪郭曲線の最大高さRzが1.5μm以下である、請求項1に記載のチタン板。
  3. 表面から深さ5μmの炭素濃度をCs、深さ20μmの炭素濃度をCbとするとき、Cs/Cbが2.0未満の範囲である、請求項1または2のチタン板。
  4. 冷間圧延工程後に、非酸化雰囲気焼鈍工程を実施するチタン板の製造方法であって、前記冷間圧延工程と前記非酸化雰囲気焼鈍工程との間に硝ふっ酸酸洗工程を実施する、チタン板の製造方法。
  5. 冷間圧延工程後に、非酸化雰囲気焼鈍工程を実施し、その後、調質圧延工程を実施するチタン板の製造方法であって、
    調質圧延工程が、表面が、JIS B0601:2013に規定される輪郭曲線要素の平均長さRSmが80μm以下であるロールを用いる工程である、チタン板の製造方法。
  6. 非酸化雰囲気焼鈍工程後に、表面が、JIS B0601:2013に規定される輪郭曲線要素の平均長さRSmが80μm以下であるロールを用いる調質圧延工程を実施する、請求項4に記載のチタン板の製造方法。
  7. 前記の非酸化雰囲気焼鈍工程が真空焼鈍工程である、請求項4から7までのいずれかに記載のチタン板の製造方法。
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