JP2016166144A - 害虫忌避剤並びにこれを用いた害虫忌避性樹脂組成物及び害虫忌避性加工品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】薬剤を無機多孔性物質に担持させてなる害虫忌避剤であって、前記薬剤は、分子量が325〜425であるピレスロイド系化合物であり、前記無機多孔性物質は、BET比表面積が550〜1000m2/gであり、かつ、細孔径が0.8〜15nmであることを特徴とする害虫忌避剤。
【選択図】なし
Description
このような問題に対して、薬剤である有機化合物を、無機化合物に担持させた害虫忌避剤が開示されている。例えば、特許文献1には、有機機能付与剤を、結晶水結合能力を有する吸水性無機物質に担持せしめた徐効性機能付与剤が開示されており、結晶水結合能力を有する吸水性無機物質としてゼオライト、シリカゲルなどが記載され、有機機能付与剤としてディートなどの各種薬剤が記載されている。特許文献2には、ディートなどの害虫忌避薬剤を、特定の層状珪酸塩の層内に担持させた耐久性害虫忌避剤が記載されている。また、特許文献3には、ピレスロイド化合物を、層状リン酸塩又は層状珪酸塩に担持させてなる害虫忌避剤組成物が開示されている。更に、特許文献4には、防虫・昆虫忌避機能等の生理活性機能を有する有機化合物を、無機物である粘土鉱物と複合一体化した粘土鉱物系複合材料が開示されている。
すなわち、本発明は以下の通りである。
1.薬剤を無機多孔性物質に担持させてなる害虫忌避剤であって、前記薬剤は、分子量が325〜425であるピレスロイド系化合物であり、前記無機多孔性物質は、BET比表面積が550〜1000m2/gであり、かつ、細孔径が0.8〜15nmであることを特徴とする害虫忌避剤。
2.上記薬剤の担持量が、無機多孔性物質のBET比表面積100m2あたり0.007〜0.09mlである上記1に記載の害虫忌避剤。
3.上記無機多孔性物質が、ケイ酸塩化合物、シリカゲル、ゼオライト、金属酸化物、金属水酸化物及びリン酸塩化合物からなる群より選択される少なくとも1種である上記1又は2に記載の害虫忌避剤。
4.薬剤を担持させる前の上記無機多孔性物質の水分が、3質量%以下である上記1〜3のいずれかに記載の害虫忌避剤。
5.上記1〜4のいずれかに記載の害虫忌避剤を含有することを特徴とする害虫忌避性樹脂組成物。
6.上記1〜4のいずれかに記載の害虫忌避剤を含有することを特徴とする害虫忌避性加工品。
本発明の害虫忌避剤は、薬剤を無機多孔性物質に担持させてなる害虫忌避剤であって、前記薬剤は、分子量が325〜425のピレスロイド系化合物であり、前記無機多孔性物質は、BET比表面積が550〜1000m2/gであり、かつ、細孔径が0.8〜15nmであることを特徴とする。本発明の構成成分について、具体的に説明する。
無機多孔性物質のBET比表面積は、600〜900m2/gであることが好ましく、650〜800m2/gであることがより好ましい。BET比表面積が550m2/g未満であると、害虫忌避効果が低下する傾向にある。一方、BET比表面積が1000m2/gを超えると、吸油量が低下するために、無機多孔性物質から薬剤がブリードし易くなる。その結果、適度な徐放性が得られない場合がある。なお、本発明のBET比表面積は、Quantachrome社製「AUTOSORB−1」(型式名)で測定した値である。
Al2O3・nSiO2・mH2O (1)
但し、式(1)におけるnは6以上の正数であり、より好ましくはnが6〜50で、かつ、mが1〜20の正数であり、特に好ましくはnが8〜15でmが3〜15である。また、ケイ酸マグネシウムは下記式(2)で表されるものである。
MgO・nSiO2・mH2O (2)
但し、式(2)におけるnは1以上の正数であり、より好ましくはnが1〜20で、かつ、mが0.1〜20の正数であり、更に好ましくはnが1〜15でmが0.3〜10であり、特に好ましくはnが3〜15でmが1〜8である。
アルミニウム塩又はマグネシウム塩の水溶液と、ケイ酸アルカリ金属塩の水溶液とを混合し、室温、大気圧条件下に必要に応じて酸もしくはアルカリを加えて、pH約3〜7の条件に維持して共沈せしめ、これを、例えば約40℃〜100℃程度において熟成し、もしくは熟成せずに共沈物を水洗、脱水、乾燥することにより合成することができる。
また、ゼオライトは、天然物あるいは合成物であってもよい。ゼオライトの構造は多様であるが、公知のものはいずれも使用することができる。構造としては、例えば、A型、X型、Y型、α型、β型、ZSM−5型等がある。
また、金属水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化チタン、及び水酸化ジルコニウム等が挙げられる。
(1)室温から80℃の温度で無機多孔性物質を撹拌し、これに薬剤を添加して混合する方法。
(2)室温から80℃の温度で無機多孔性物質を撹拌し、これに薬剤の溶液を添加して混合し、その後、溶媒を除去する方法。
(3)室温から80℃の温度で無機多孔性物質の分散溶液を撹拌し、これに薬剤を添加して混合し、その後、溶媒を除去する方法。
(4)室温から80℃の温度で無機多孔性物質の分散溶液を撹拌し、これに薬剤の溶液を添加して混合し、その後、溶媒を除去する方法。
上記無機多孔性物質の分散溶液、及び薬剤の溶液に用いる溶媒は、薬剤を無機多孔性物質に担持した後、容易に除去できるものであればよく、炭素数3以下のアルコール、アセトン、又は水などが好ましい。また、上記の製造方法において、無機多孔性物質と薬剤の添加順序を反対にしてもよい。すなわち、室温から80℃の温度で薬剤又はその溶液を撹拌し、これに無機多孔性物質又はその分散溶液を添加する方法でもよい。
なお、乾燥時間は、乾燥温度、処理量及び装置により最適な時間があるため、適宜設定すればよい。
本発明の害虫忌避剤を樹脂に配合することにより、害虫忌避性樹脂組成物を容易に得ることができる。用いることができる樹脂の種類は特に制限はなく、天然樹脂、合成樹脂、半合成樹脂のいずれであってもよく、また熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれであってもよい。具体的な樹脂としては成形用樹脂、繊維用樹脂、ゴム状樹脂のいずれであってもよく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、ABS樹脂、AS樹脂、MBS樹脂、ナイロン樹脂、ポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリカーボネート、PBT、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー、メラミン、ユリア樹脂、四フッ化エチレン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、レーヨン、アセテート、ポリビニルアルコール、キュプラ、トリアセテート、及びビニリデンなどの成形用又は繊維用樹脂、天然ゴム、シリコーンゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴム、クロルスルホン化ポリエチレンゴム、ブタジエンゴム、合成天然ゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、及びアクリルゴムなどのゴム状樹脂がある。また、本発明の害虫忌避剤を天然繊維の繊維と複合化させて、害虫忌避性繊維を作製することもできる。
上記の害虫忌避性樹脂組成物の成形には、各種樹脂の特性に合わせてあらゆる公知の加工技術と機械が使用可能であり、様々な加工品を得ることができる。具体的操作は常法により行えばよく、塊状、スポンジ状、フィルム状、シート状、糸状、パイプ状、及びこれらの複合体など、種々の形態に成形加工することができる。
本発明の害虫忌避剤を含有する害虫忌避性繊維としては、蚊・ダニ忌避性を必要とする各種の分野で利用可能である。例えば、当該繊維は、布団、布団カバー、座布団、毛布、じゅうたん、カーテン、ソファー、カバー、シート、カーシート、カーマット、エアーフィルターを始めとして、多くの繊維製品に使用できる。繊維製品への添加方法は繊維製品の表面あるいは裏面にバインダー樹脂を用いて添着する方法や繊維樹脂に練りこむ方法がある。
また、害虫忌避剤を含有する害虫忌避性塗料としては、害虫忌避性を必要とする各種の分野で利用可能である。例えば、当該塗料は、建物の内壁、外壁、鉄道車両の内壁などで使用できる。本発明の害虫忌避剤を含有する蚊・ダニ忌避性シートとしては、害虫忌避性を必要とする各種の分野で利用可能である。例えば、当該シートは、空気清浄フィルター等のフィルター、壁紙、不織布、紙、フィルムなどで使用できる。また、本発明の害虫忌避剤を含有する害虫忌避性樹脂成形品としては、害虫忌避性を必要とする各種の分野で利用可能である。例えば、当該樹脂成形品は、空気清浄器、冷蔵庫などの家電製品や、ゴミ箱、水切りなどの一般家庭用品、ポータブルトイレなどの各種介護用品、日常品などで使用できる。
(1)BET比表面積
JIS Z 8830(2013年改正)「ガス吸着による粉体(固体)の比表面積測定方法」に準拠し、Quantachrome社製「AUTOSORB−1」(型式名)を用いて測定した。
・細孔径2〜50nm(メソ細孔)の場合
JIS Z 8831−2(2010年制定)「粉体(固体)の細孔径分布及び細孔特性−第2部:ガス吸着によるメソ細孔及びマクロ細孔の測定方法」に準拠し、Quantachrome社製「AUTOSORB−1」(型式名)を用いて測定した。
・細孔径2nm未満(ミクロ細孔)の場合
JIS Z 8831−3(2010年制定)「粉体(固体)の細孔径分布及び細孔特性−第3部:ガス吸着によるミクロ細孔の測定方法」に準拠して測定することができる。
本明細書における2nm未満の細孔径は、東ソー社のカタログ値を用いた。
JIS K 0067(1992年改正)「化学製品の減量及び残分試験方法」4.1.1(1)第一法により測定した。但し、乾燥条件は150℃、2時間とした。
所定量の害虫忌避剤をナイロン樹脂(宇部興産製 ナイロン6 商品名「宇部ナイロン 1013B」)に添加し、ヘンシェルミキサーを用いて混合して害虫忌避性樹脂組成物を得た。ここで、実施例1に用いた害虫忌避剤A(実施例1)の薬剤担持量は20%であるので、樹脂組成物中の害虫忌避剤の含有量が2.0%のとき、薬剤(有効成分)の含有量は0.4%と算出される。
次に、前記害虫忌避性樹脂組成物を以下の条件で射出成形して、縦110mm×横110mm×厚さ2mmの平板を作製し、この平板の発泡状態を評価した。また、樹脂組成物を成形機内で5分間滞留させ、成形時の臭気を評価した。
<成形条件>
成形機:名機製作所社製 型式「M−50A(II)−DM」
成形温度:250℃
<発泡の評価基準>
〇:発泡なし、△:発泡が平板あたり1〜9個見られる、×:発泡が平板あたり10個以上見られる
<臭気の評価基準>
6段階臭気強度で判定した。
〇:臭気強度1以下、△:臭気強度2、×:臭気強度3以上
上記成形性の評価で作製した平板から、直径40mmの円盤を切り取り、試験片とした。評価は、JIS L 1920「繊維製品の防ダニ性能試験方法」に基づき、侵入阻止法で行い、初期忌避率を求めた。初期の忌避率が80%以上であれば、ダニ忌避性能は良好であると判断した。
上記成形性の評価で作製した平板を、81℃の乾燥機内で48時間保持した。この平板から、直径40mmの円盤を切り取り、加熱後の試験片とした。評価は、初期忌避性能と同様に行い、加熱後の忌避率を求めた。当該忌避率が50%以上であれば、ダニ忌避性は良好であり、80%以上であれば、非常に良好であると判断した。
上記成形性の評価で作製した平板を縦40mm×横55mmの長方形4枚に切り取り、試験片とした。評価は、以下の通り行った。
(a)縦200mm×横200mm×高さ500mmの金網をφ1mmのナイロン編地で覆う。
(b)縦100mm×横140mm×厚さ10mmのシャーレに寒天40mlを流し固める。
(c)その上に前記試験片を4枚載せる。次いで、1mlの純水を試験片にまんべんなく滴下する。
(d)このシャーレを金網内に入れ、並べて立て掛ける。害虫忌避剤を添加しないで成形した試験片をブランクとする。
(e)金網内に約50頭のアカイエカ雌成虫を放す。
(f)温度35℃、湿度10〜30%RHの環境下で遮光して静置し、30分後及び60分後に降着した蚊の数を合計する(1回目)。
(g)金網内の試験片を入れ換え、繰り返し試験を行う(2回目)。
(h)次式により忌避率を算出した。
忌避率(%)={(B−M)/B}×100
B:ブランク試験片に降着した蚊の合計
M:害虫忌避剤を含有する試験片に降着した蚊の合計(前記2回の試験の合計)
初期の忌避率が50%以上であれば蚊忌避性は良好であり、80%以上であれば、非常に良好であると判断した。
上記成形性の評価で作製した平板を、60℃の温水に50時間浸漬した。この平板を縦40mm×横55mmの長方形4枚に切断し、試験片とした。評価は、上記初期蚊忌避性能と同様な方法で行った。
当該忌避率が50%以上であれば、蚊忌避性は良好であり、80%以上であれば、非常に良好であると判断した。
<実施例1>
東ソーシリカ社製 商品名「ニップジェルCX−200」を120℃で、24時間減圧乾燥し、水分を1.5%とした。このシリカゲル80.0gを室温下で撹拌しながら、フェノトリン20.0gを添加し(薬剤と無機多孔性物質の合計を100gとする)、10分間撹拌して混合物を得た。次いで、当該混合物を80℃で4時間加熱して乾燥し、害虫忌避剤Aを製造した。
無機多孔性物質の水分が、1.5〜2.5質量%になるように予め乾燥した。次に、無機多孔性物質、及び薬剤担持量を表1の通りにした以外は、実施例1と同様にして製造し、害虫忌避剤B〜Iを得た。
無機多孔性物質の水分が、1.5〜2.5質量%になるように予め乾燥した。次に、薬剤、無機多孔性物質、及び薬剤担持量を表1の通りにした以外は、実施例1と同様にして製造し、害虫忌避剤J〜Tを得た。
なお、表2、3中の略号は、次の材料を示す。
・無機多孔性物質
CX−200:東ソー・シリカ社製商品名「ニップジェルCX−200」(シリカゲル)
BY−200:東ソー・シリカ社製商品名「ニップジェルBY−200」(シリカゲル)
NS−100:東亞合成社製商品名「ケスモン」(ケイ酸アルミニウム)
NS−20:東亞合成社製商品名「ケスモン」(ケイ酸アルミニウム)
サイリシア350:富士シリシア社製商品名「サイリシア350」(シリカゲル)
Y型ゼオライト:東ソー社製商品名「HSZ−385HUA」
β型ゼオライト:東ソー社製商品名「HSZ−960HOA」
合成雲母:コープケミカル製「ソマシフME−100」をCaCl2溶液で層間のNaイオンをCaイオンに置換したもの。
実施例1の方法で製造した害虫忌避剤Aを用いて、上記の成形性、初期忌避性能、及び忌避性能の持続性、を評価した。結果を表3に示した。
<実施例12〜19>
実施例2〜9の方法で製造した害虫忌避剤B〜Iを用いて、実施例11と同様に評価した。
比較例1〜11の方法で製造した害虫忌避剤J〜Tを用いて、実施例11と同様に評価した。
<比較例22>
無機多孔性物質を使用せず、フェノトリン0.4%のみをナイロン樹脂に添加して成形し、実施例11と同様に評価した。
無機多孔性物質を使用せず、ペルメトリン0.4%のみをナイロン樹脂に添加して成形し、実施例11と同様に評価した。
無機多孔性物質を使用せず、ディート0.4%のみをナイロン樹脂に添加して成形し、実施例11と同様に評価した。
Claims (6)
- 薬剤を無機多孔性物質に担持させてなる害虫忌避剤であって、
前記薬剤は、分子量が325〜425であるピレスロイド系化合物であり、
前記無機多孔性物質は、BET比表面積が550〜1000m2/gであり、かつ、細孔径が0.8〜15nmであることを特徴とする害虫忌避剤。 - 上記薬剤の担持量が、無機多孔性物質のBET比表面積100m2あたり0.007〜0.09mlである請求項1に記載の害虫忌避剤。
- 上記無機多孔性物質が、ケイ酸塩化合物、シリカゲル、ゼオライト、金属酸化物、金属水酸化物及びリン酸塩化合物からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1又は2に記載の害虫忌避剤。
- 薬剤を担持させる前の上記無機多孔性物質の水分が、3質量%以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の害虫忌避剤。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の害虫忌避剤を含有することを特徴とする害虫忌避性樹脂組成物。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の害虫忌避剤を含有することを特徴とする害虫忌避性加工品。
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