JP2016158596A - 天ぷら用バッターミックス、天ぷら用バッター、天ぷらの製造方法、及び天ぷら - Google Patents

天ぷら用バッターミックス、天ぷら用バッター、天ぷらの製造方法、及び天ぷら Download PDF

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Abstract

【課題】調理者の技量に依らず、追いダネにより適度な花チリが付いた良好な外観を有し、且つ良好な食感が長時間維持される天ぷらを容易に製造することができる天ぷら用バッターミックスの提供。【解決手段】天ぷらの製造に用いるバッターを調製するためのバッターミックスであって、前記バッターミックスの質量を基準として、おから粉末を1〜6質量%、及び食用油脂を1〜5質量%含有し、前記おから粉末の前記食用油脂に対する含有量の比(おから粉末/食用油脂)が、0.4〜2.5であり、且つ粘度V12rpmが、750〜1600mPa・sとなるように調製したバッターについて、チキソ係数T(ただし、T=V30rpm/V6rpm)が、0.5〜1であるバッターミックス。前記水以外のバッター材料の質量に対して、加水率が140〜180質量%であるバッター。【選択図】なし

Description

本発明は、天ぷらの製造に用いるバッターミックスに関し、特に、調理者の技量に依らず、適度な花チリが付いた良好な外観を有し、且つ良好な食感が長時間維持される天ぷらを、容易に安定して製造できるバッターミックスに関する。
天ぷらは、魚介類、野菜類、畜肉類等の具材に、小麦粉等を含むバッターを付着させたものを油ちょうしたものである。一般に、天ぷらは家庭や専門店で揚げたてが喫食される他、油ちょう後、スーパーの惣菜コーナー等に置かれたバットや皿等に並べて販売される場合がある。スーパーの惣菜コーナー等においては、商品の外観が売り上げに大きく寄与するため、外観に優れた天ぷらを製造する必要がある。特に、エビの天ぷら等の魚介類の天ぷらでは、適度に花チリ(「花咲き」ともいわれる細かい凹凸の針状の衣)が付いた見栄えの良い外観の衣を有する天ぷらが望まれている。通常、花チリをつけるために、具材にバッターを付着させたもの(以下「本体」という)を油中に投入して油面から一定の深さに沈めた後、バッターを追加して投入する工程(以下「追いダネ(工程)」という)が行われている。追いダネにより、本体の周りに追加のバッターが花チリとなって付着し、良好な外観の天ぷらが得られる。追いダネは、本体の油面からの深さやバッターの性質等によって花チリが本体に付着しなかったり、付着しても良好な花チリができなかったりするため、調理者に熟練した技量が必要である。しかしながら、一般に、スーパーの惣菜コーナー用に天ぷらを調理する場合は、専門店とは異なり、熟練した調理者を確保することは難しく、良好な外観の天ぷらを安定的に製造することが困難な場合がある。
一方、天ぷらの食感については、一般にサクサクとした口溶けの良い食感の衣が好まれるが、上述のスーパーの惣菜コーナー等においては、油ちょう後、消費者が喫食するまでに数時間経過するため、サクサクとした口溶けの良い食感が劣化していることが多い。
これらの問題に対して、従来から種々の開発が行われている。例えば、花咲きが良く、サクサクとした食感を持ち、時間が経過しても衣のへたりが起こりにくい天ぷら衣を得るため、イヌリンと高純度粉末レシチンとを含有する天ぷら用衣材(特許文献1)が開発されている。また、特許文献2には、天ぷら等の揚げ物の、サクサク感等の優れた食感を付与し、その食感を長時間維持することができる衣材として、所定の粗蛋白質含有量、不溶性食物繊維含有量、及び窒素溶解指数(NSI)を有する粉末状大豆素材を含む衣材が開示されている。
特開2011−62154号公報 国際公開2011/004893号
しかしながら、特許文献1の天ぷら用衣材においては、高価な添加剤を用いることで、コストの上昇につながる上、さらに花チリを付けるために追いダネを行う場合は、通常の衣材と同様に調理者の技量に依ることになる。また、特許文献2においても、追いダネにより花チリを付けることについては特に考慮されておらず、追いダネを行う場合は調理者の技量に依ることになる。したがって、これらの技術によっても、上記の追いダネにより花チリを付けることを容易に安定的に行なうという問題を解決できない。また、良好な食感を長時間維持する技術についてもさらなる開発が求められている。
したがって、本発明の目的は、調理者の技量に依らず、追いダネにより適度な花チリが付いた良好な外観を有し、且つ良好な食感が長時間維持される天ぷらを容易に安定して製造することができる天ぷら用バッターミックス、天ぷら用バッター、それらを用いた天ぷらの製造方法、及び天ぷらを提供することにある。
本発明者らは、天ぷらの製造に用いるバッターについて、配合面及び物性面から種々検討を行った結果、バッターに、おから粉末と食用油脂とを配合し、その配合バランス、及びバッターの滑らかさを調整することで、上記課題を解決することができることを見出した。
すなわち、上記目的は、天ぷらの製造に用いるバッターを調製するためのバッターミックスであって、前記バッターミックスの質量を基準として、おから粉末を1〜6質量%、及び食用油脂を1〜5質量%含有し、前記おから粉末の前記食用油脂に対する含有量の比(おから粉末/食用油脂)が、0.4〜2.5であり、且つ粘度V12rpmが、750〜1600mPa・sとなるように調製したバッターについて、チキソ係数T(ただし、T=V30rpm/V6rpm)が、0.5〜1であることを特徴とするバッターミックスによって達成される。
上記バッターミックスから調製されたバッターを用いることにより、容易に追いダネを行うことができ、追いダネにより適度な花チリが付いた良好な外観を有し、且つサクサクとした口溶けの良い良好な食感が長時間維持される天ぷらを安定して製造することができる。これは、上記の配合バランスで、おから粉末と食用油脂とを含有することで、上述の追いダネ工程において、油中に投入した追いダネが、外観及び食感の良好な花チリを発生すると共に、本体に十分に付着し、さらに上記バッターミックスから調製されたバッターが、上記のチキソ係数Tを有することで、追いダネを油中に投入する際に、バッターが滑らかに流動し、熟練した技量がなくても容易に均一に油中にバッターを投入することができるためと考えられる。なお、本発明において、バッターの粘度V12rpmは、B型粘度計を用いて、ローターNo.2、温度20℃、ローター回転数12rpm、ローター回転時間1分の条件で測定した粘度である。また、チキソ係数Tは、B型粘度計を用いて、ローターNo.2、ローター回転数30rpm及び6rpmの条件で測定した粘度を、それぞれV30rpm及びV6rpmとして、V30rpm/V6rpmを求めた値である。
また、上記目的は、本発明のバッターミックスを、粘度V12rpmが、700〜2100mPa・sとなるように水と混合して調製した天ぷら用バッターによって達成される。
さらに、上記目的は、天ぷらの製造に用いる、水及び水以外のバッター材料からなるバッターであって、粘度V12rpmが、700〜2100mPa・sであり、前記水以外のバッター材料の質量を基準として、おから粉末を1〜6質量%、及び食用油脂を1〜5質量%含有し、前記おから粉末の前記食用油脂に対する含有量の比(おから粉末/食用油脂)が、0.4〜2.5であり、且つチキソ係数T(ただし、T=V30rpm/V6rpm)が、0.5〜1であることを特徴とするバッターによって達成される。
本発明のバッターは、前記水以外のバッター材料の質量に対して、加水率が140〜180質量%であることが好ましい。これにより、容易に上記粘度V12rpmの範囲のバッターとすることができる。
また、上記目的は、本発明のバッターを、具材に付着させた後、油ちょうする天ぷらの製造方法によって達成される。本発明の天ぷらの製造方法は、前記バッターを具材に付着させたものを油中に投入した後、前記バッターを、油中に追加して投入する工程(追いダネ工程)を行うことが好ましい。本発明のバッターは、上述の通り、特に、追いダネ工程を行う天ぷらの製造方法に効果を発揮する。
さらに、上記目的は、本発明の製造方法によって製造された天ぷらによって達成される。
本発明の天ぷら用バッターミックスを用いることにより、調理者の技量に依らず、容易に追いダネを行うことができ、追いダネにより適度な花チリが付いた良好な外観を有し、且つサクサクとした口溶けの良い良好な食感が長時間維持される天ぷらを安定して製造することができる。さらに、本発明のバッターミックスは、特に高価な添加剤を使用する必要はなく、上記天ぷらを低コストで製造することができる。
[バッターミックス]
本発明のバッターミックスは、天ぷらの製造に用いるバッターを調製するためのバッターミックスである。そして、バッターミックスの質量を基準として、おから粉末を1〜6質量%、及び食用油脂を1〜5質量%含有し、前記おから粉末の前記食用油脂に対する含有量の比(おから粉末/食用油脂)が、0.4〜2.5であり、且つこのバッターミックスを用いて、粘度V12rpmが、750〜1600mPa・sとなるように調製したバッターについて、チキソ係数Tが、0.5〜1であることを特徴とする。後述する実施例で示す通り、上記の含有量及び比の範囲でおから粉末及び食用油脂を含有し、且つ上記の物性特性を有するバッターミックスから調製したバッターを用いることで、容易に追いダネを行うことができ、追いダネにより適度な花チリが付いた良好な外観を有し、且つサクサクとした口溶けの良い良好な食感が長時間維持される天ぷらを安定して製造することができる。
天ぷらの食感改良を目的として、食用油脂を天ぷら用のバッターに配合する技術は、従来公知の技術であるが、食用油脂を含有するバッターは、追いダネ工程の際、油中に散り易いため、投入したバッターが本体に付着し難く、適度な花チリが付いた天ぷらは容易には得られない。また、本発明者らの検討によると、おから粉末を配合した場合は、天ぷらの表面はサクサクとした食感が得られるものの、衣の内層が厚く、ソフトで歯切れが悪い食感になる傾向があり、サクサクとした口溶けの良い良好な食感の天ぷらを得ることは難しい。本発明においては、バッターミックス(すなわち、バッター)が、おから粉末と食用油脂とを上記の配合バランスで含有していることで、上述の追いダネ工程において、油中に投入した追いダネが、外観及び食感の良好な花チリを発生すると共に、本体に十分に付着するようになっている。この要因は明らかではないが、食用油脂の油中での散り易さを、おから粉末が抑制し、さらに、おから粉末及び食用油脂のバランスにより、衣にサクサクとした口溶けの良い良好な食感が付与され、且つその食感が長時間維持されるものと考えられる。
さらに、上記バッターミックスから粘度V12rpmが、750〜1600mPa・sとなるように調製したバッターが、上記のチキソ係数Tを有することで、追いダネを油中に投入する際に、バッターが滑らかに流動し、熟練した技量がなくても容易に均一に油中にバッターを投入することができる。本発明において、チキソ係数Tは、本発明者らが流体の滑らかさの指標として設計したパラメータであり、上述の通り、V30rpm/V6rpmを算出することで求めることができる。なお、本発明におけるチキソ係数Tは、上記の算出方法から理解できるように、粘度のずり速度依存性の指標とするものであり、所定のずり速度を印加した時間の経過が影響する本来のチキソ性の程度を示すものではない。チキソ係数Tが1の流体は、水や液状油等に代表される、一般にニュートン流体といわれるものである。また、チキソ係数Tが1より小さい流体は、一般に擬塑性流体といわれ、マヨネーズやケチャップ様の流体であり、チキソ係数Tが1より大きい流体は、一般にダイラタント流体といわれ、片栗粉と水との1:1混合物等で認められる。本発明においては、上記の加水率で調製したバッターのチキソ係数Tが、0.5〜1の範囲、すなわちニュートン流体にやや近い数値を示すことで、追いダネ工程において、バッターの流動性が一定になり、容易に均一にバッターを油中へ投入することができるものと考えられる。後述する実施例に示す通り、チキソ係数Tが0.5未満の場合は、追いダネ工程においてバッターを均一に投入し難く、適度な花チリがついた天ぷらを安定して製造することができない。チキソ係数Tの調整は、上記のおから粉末及び食用油脂の配合バランスによって行っても良く、後述するバッターミックスに配合できる他の材料の選択によって行っても良い。余分な材料を使用しなくて良い点で、上記のおから粉末及び食用油脂の配合バランスによって、上記の範囲のチキソ係数Tに調整することが好ましい。チキソ係数Tは、0.5超〜0.8が好ましく、0.5超〜0.7がさらに好ましく、0.5超〜0.6が特に好ましい。
本発明において、チキソ係数Tを求める際の粘度測定における温度条件は、一定条件であれば特に制限は無い。温度条件は、一般に5〜30℃、好ましくは10〜25℃、さらに好ましくは15〜20℃である。また、B型粘度計による粘度測定の際のローターの回転時間も粘度の測定値に影響する場合があるため、一定にすることが好ましい。ローターの回転時間は、0.5〜3分が好ましく、1〜2分が更に好ましい。たとえば、粘度V12rpmの測定条件と同様に、温度20℃、ローター回転時間1分の条件で測定することができる。
本発明のバッターミックスに含有されるおから粉末は、大豆又は脱脂大豆を原料として、豆乳、大豆ホエー等の水溶性たん白質等を抽出した残渣、「おから」を乾燥、粉砕して得られる粉末である。本発明においては、大豆を原料として豆乳を抽出した残渣を乾燥、粉砕したおから粉末が好ましい。本発明において、おから粉末は大豆から豆乳を製造する際に発生する残渣を乾燥後に粉砕して用いることができる。また、市販の乾燥おからやおからパウダーを使用してもよい。なお、後述する実施例で示す通り、おから粉末以外の大豆由来の粉末素材である大豆粉、脱脂大豆粉、分離脱脂大豆では、本発明の効果は得られない。
本発明のバッターミックスに含有される食用油脂としては、特に制限は無く、食用の植物性、動物性の油脂、又はそれらを加工した食用加工油脂を使用することができる。植物性油脂としては、大豆油、ひまわり油、なたね油、ごま油、コーン油、米油、オリーブ油、ぶどう種油、落花生油、パーム油、カカオ脂等が挙げられ、動物性油脂としては、牛脂、豚脂、魚油、鯨油等が挙げられ、これらの食用加工油脂としては、粉末油脂、ショートニング、マーガリン、ファットスプレッド、バター、精製ラード等が挙げられ、これらを単独で、又は2種以上の混合物で使用することができる。本発明のバッターミックスに配合する食用油脂は、風味の点でパーム油、なたね油、大豆油等の植物性油脂、又はそれらを加工した食用加工油脂が好ましい。また、液状油脂でも、固形状油脂でも、粉末油脂でも良いが、バッターミックスに配合し易い点で、粉末油脂が好ましい。粉末油脂は、一般に食用油脂に炭水化物やたん白質等を加えて均一化にした後、噴霧乾燥等により粉末化したものや、食用油脂をコーティング剤で覆って粉末化したものである。したがって、本発明のバッターミックスに粉末油脂を用いる場合は、粉末油脂中の食用油脂の含有率を考慮して配合量を設定する。
本発明のバッターミックスにおいて、おから粉末の含有量は、バッターミックスの質量を基準として1.5〜6質量%が好ましく、2.5〜5質量%がさらに好ましく、食用油脂の含有量は、バッターミックスの質量を基準として1.3〜5質量%が好ましく、1.3〜2.5質量%がさらに好ましい。また、おから粉末の食用油脂に対する含有量の比(おから粉末/食用油脂)は、0.5〜2.4が好ましく、1.0〜2.0がさらに好ましい。これにより、適度な花チリが付いた良好な外観を有し、良好な食感が長時間維持される天ぷらをさらに容易に安定して製造することができる。
本発明のバッターミックスにおいては、上記のおから粉末、食用油脂以外の材料は、本発明の効果を損なわない限り、特に制限は無く、通常の天ぷら用バッターミックスに配合される材料(おから粉末、食用油脂も含めてバッター材料ともいう)を使用することができる。例えば、小麦粉、米粉、コーンフラワー等の穀粉類;コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉等の澱粉類;澱粉類に化学的あるいは物理的処理を行った加工澱粉;デキストリン、オリゴ糖、糖類等の糖質;重曹(炭酸水素ナトリウム)、炭酸アンモニウム、炭酸カルシウム等の膨張剤;膨張剤を組み合わせて用いる酒石酸、酒石酸水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム等の酸性剤;グアガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、キサンタンガム等の増粘剤;グリセリン脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤;その他、かぼちゃ粉、色素、香料、卵粉、食塩、調味料等が挙げられる。
[バッター]
本発明の天ぷら用バッターは、本発明のバッターミックスを、粘度V12rpmが、700〜2100mPa・sとなるように水と混合して調製したバッターである。また、本発明のバッターは、本発明のバッターミックスを使用しなくても、同様な特性を有するバッターであれば、例えば、上述のバッター材料が別々に水に混合されて調製されたバッターであっても良い。すなわち、本発明のバッターは、天ぷらの製造に用いる、水及び水以外のバッター材料からなるバッターであって、粘度V12rpmが、700〜2100mPa・sであり、前記水以外のバッター材料の質量を基準として、おから粉末を1〜6質量%、及び食用油脂を1〜5質量%含有し、前記おから粉末の前記食用油脂に対する含有量の比(おから粉末/食用油脂)が、0.4〜2.5であり、且つチキソ係数T(ただし、T=V30rpm/V6rpm)が、0.5〜1であるバッターである。上述の本発明のバッターミックスにおける説明の通り、本発明のバッターを用いることで、容易に追いダネを行うことができ、追いダネにより適度な花チリが付いた良好な外観を有し、且つサクサクとした口溶けの良い良好な食感が長時間維持される天ぷらを安定して製造することができる。本発明のバッターは、調製が容易な点で、本発明のバッターミックスから調製されたものが好ましい。
本発明において、バッターを上記粘度V12rpmの範囲とするための加水率(バッターミックス(又は水以外のバッター材料)の100質量%に対して加える水の質量%)に特に制限はなく、バッターミックス、バッター材料の配合に応じて調節することができる。容易に上記粘度V12rpmの範囲のバッターとすることができる点で、前記水以外のバッター材料の質量に対して、加水率が140〜180質量%であることが好ましい。また、本発明のバッターは、粘度が低過ぎると、具材にバッターが付き難くなり、バッターの粘度が高過ぎると、流動性が低下し、追いダネ工程が難しくなる。したがって、本発明のバッターは、粘度V12rpmが、750〜2100mPa・sであることが好ましく、750〜1600mPa・sであることがさらに好ましい。粘度の調整については、上記のおから粉末及び食用油脂の配合バランスによって行っても良く、バッターミックスに配合できる他の材料の選択によって行っても良い。上記範囲の粘度であれば、バッターが適度に具材に付着し、且つさらに容易に安定して追いダネ工程を行うことができ、適度な花チリが付いた良好な外観を有し、良好な食感が長時間維持される天ぷらを、さらに安定して製造することができる。本発明のバッターの粘度をさらに好ましい粘度に調整するためには、バッターにおける加水率は140〜170質量%が好ましく、150〜170質量%がさらに好ましい。
[天ぷらの製造方法]
本発明の天ぷらの製造方法は、本発明の天ぷら用バッターを、具材に付着させた後、油ちょうする天ぷらの製造方法である。天ぷらの油ちょうは、常法に従って実施することができる。例えば、本発明のバッターに、野菜類、魚介類、畜肉類等を必要に応じて加工成形した具材を浸漬する、又はバッターを具材に塗布する等によりバッターを具材に付着させた後、適当な温度(通常160〜200℃)の油に投入し、適当な時間(通常1〜5分)油ちょうすることができる。また、本発明の天ぷら用バッターは、上述の通り、追いダネ工程が容易に安定して実施できるという効果を発揮するため、本発明の天ぷらの製造方法は、前記バッターを具材に付着させたものを油中に投入した後、前記バッターを、油中に追加して投入する工程(追いダネ工程)を行うことが好ましい。追いダネ工程は、常法に従って実施することができる。例えば、バッターを具材に付着させた「本体」を油中に投入して油面から約1cmの深さに沈め、少量のバッターを本体に向けて、油中に投入して、花チリを本体の周りに付けることができる。本発明の天ぷらの製造方法によれば、熟練した技量がなくても、容易に追いダネ工程を実施でき、したがって低コストで、適度な花チリが付いた良好な外観を有し、且つサクサクとした口溶けの良い良好な食感が長時間維持される天ぷらを安定して製造することができる。
[天ぷら]
本発明の天ぷらは、本発明の製造方法によって製造された天ぷらである。したがって、本発明の天ぷらは、低コストで製造され、適度な花チリが付いた良好な外観を有し、且つサクサクとした口溶けの良い良好な食感が長時間維持される天ぷらである。
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
1.バッターミックスの調製
表に示した各実施例、比較例及び参考例(コントロール)の配合で、各材料を混合してバッターミックスを作製した。
2.バッターの調製、バッター粘度の測定、及びチキソ係数の算出
表に示した各実施例、比較例及び参考例(おから粉末、食用油脂を含まないコントロール)の加水率になるように、水を入れたボールに、上記1.で作製したバッターミックスを投入し(例えば、加水率160質量%の場合は、水160gに対して100gのバッターミックスを投入した)、ホイッパーで15回叩き混ぜ、さらに左右20回ずつ撹拌した。バッター温度は20℃に設定した。撹拌後、すぐにB型粘度計(ブルックフィールド社製)を用い、ローターNO.2、回転数6rpm、12rpm、及び30rpmで、回転時間各1分で、粘度V6rpm、V12rpm、及びV30rpmを測定した。さらにチキソ係数T(V30rpm/V6rpm)を算出した。
3.天ぷらの調製
2Lサイズのえびに、薄力粉の打粉を付着させた後、各実施例、比較例及び参考例のバッターに浸漬したもの(本体)を、170℃の油中に投入し、本体を油面から1cm沈めて追いダネを本体に向けて小さじ2杯(約20g)投入し、2分30秒間油ちょうした。
4.バッターの評価
(1)追いダネ時の作業性
上記3.の天ぷらの調製を10名のパネラーで実施し、以下の評価基準で、追いダネ時の作業性を評価した。パネラーの評価点の平均値を評価結果として表に示す。なお、評価点は小数点2位を四捨五入して示した。
1:参考例と比較して、バッターの滑らかさが非常に劣り、均一に油中に投入できなかった。
2:参考例と比較して、バッターの滑らかさが劣り、均一に油中に投入しにくかった。
3:参考例と同程度のバッターの滑らかさであった。
4:参考例と比較して、バッターが滑らかに流動し、均一に油中に投入しやすかった。
5:参考例と比較して、バッターが非常に滑らかに流動し、容易に均一に油中に投入できた。
(2)追いダネによる衣の付き易さ
上記3.の天ぷらの調製を10名のパネラーで実施し、以下の評価基準で、追いダネによる衣の付き易さを評価した。パネラーの評価点の平均値を評価結果として表に示す。なお、評価点は小数点2位を四捨五入して示した。
1:参考例と比較して非常に衣が付き難い。
2:参考例と比較して衣が付き難い。
3:参考例と同程度の衣の付き易さである。
4:参考例と比較して衣が付き易い。
5:参考例と比較して非常に衣が付き易い。
(3)3時間放置後の食感
上記3.で調製した天ぷらを25℃で3時間放置した後、10名のパネラーで、以下の評価基準で、食感を評価した。パネラーの評価点の平均値を評価結果として表に示す。なお、評価点は小数点2位を四捨五入して示した。
1:参考例と比較してサクミと口溶けが非常に劣っている。
2:参考例と比較してサクミと口溶けが劣っている。
3:参考例と同程度のサクミと口溶けである。
4:参考例と比較してサクミと口溶けが良好である。
5:参考例と比較してサクミと口溶けが非常に良好である。
Figure 2016158596
表1に示す通り、バッターミックスの質量を基準として、おから粉末を1〜6質量%、及び食用油脂を1〜5質量%含有し、前記おから粉末の前記食用油脂に対する含有量の比(おから粉末/食用油脂)が、0.4〜2.5であり、加水率160質量%とすることで、粘度V12rpmが750〜1600mPa・sとなるように調製したバッターのチキソ係数Tが、0.5〜1である実施例1〜6のバッターミックスを用いて製造した天ぷらは、おから粉末及び食用油脂を配合していない参考例と比較して、追いダネ時の作業性が良好であり、追いダネによる衣の付き易さ、3時間放置後の食感も良好であった。一方、おから粉末を含み、食用油脂を含まない比較例1、及び食用油脂含有量が少なく、おから粉末/食用油脂の比が大きい比較例4では、チキソ係数Tは上記範囲内であり、追いダネ時の作業性は良好で、追いダネによる衣の付き易さも良好であったものの、参考例よりも3時間放置後の食感が低下した。また、食用油脂を含み、おから粉末を含まない比較例2、おから粉末含有量が少なく、おから粉末/食用油脂の比が小さい比較例3では、3時間放置後の食感は良好であったものの、チキソ係数Tが0.5未満となり、参考例より追いダネ時の作業性が低下した。さらに、おから粉末/食用油脂の比が上記範囲内でも、食用油脂の含有量が多い比較例5では、3時間放置後の食感は良好であったものの、チキソ係数Tが0.5未満となり、参考例より追いダネ時の作業性が低下し、おから粉末の含有量が多い比較例6では、追いダネによる衣の付き易さ、及び3時間放置後の食感は良好であったものの、チキソ係数Tが0.5未満となり、追いダネ時の作業性が極めて低下した。また、おから粉末及び食用油脂の含有量が少ない比較例7では、何れの評価も参考例と差がほとんどなく、効果が認められなかった。
Figure 2016158596
表2は、実施例3と同じバッターミックスを用いて、加水率を変えて調製したバッターを評価したものである。加水率140〜180質量%の範囲で、バッターの粘度V12rpmが700〜2070mPa・sであり、チキソ係数Tが0.5〜0.59のバッターが得られた。追いダネ時の作業性は、チキソ係数Tが大きいほど良好であった。また、粘度が高いほど追いダネによる衣の付き易さが良好になったが、3時間放置後の食感はやや低下した。また、粘度が低いほど3時間放置後の食感が良好になったが、追いダネによる衣の付き易さはやや低下した。この結果から、バッターの粘度(V12rpm)は、750〜2100mPa・sが好ましく、750〜1600mPa・sがさらに好ましいことが示された。
Figure 2016158596
表3は、実施例3と同じバッターミックスにおける食用油脂を、粉末油脂から液状油脂に置き換えた場合の影響を調べたものである。表3に示した通り、実施例12(実施例3と同じ)と液状油脂を用いた実施例13を比較すると、実施例12の方が、チキソ係数Tがやや高いため、追いダネ時の作業性の評価がやや高いものの、追いダネによる衣の付き易さ、3時間放置後の食感については同等であり、食用油脂はどのような形態のものを用いても本発明の効果が得られることが示された。
Figure 2016158596
表4は、実施例3と同じバッターミックスにおけるおから粉末を、別のおから粉末、又は他の大豆関連粉末と置き換えた場合の影響を調べたものである。実施例14(実施例3と同じ)と別のおから粉末を用いた実施例15を比較すると、実施例14の方が、チキソ係数Tがやや高いため、追いダネ時の作業性の評価がやや高いものの、追いダネによる衣の付き易さ、3時間放置後の食感については同等であり、おから粉末の種類に関わらず、本発明の効果が得られることが示された。一方、おから粉末の代わりに大豆粉、脱脂大豆粉、及び分離大豆蛋白を配合した比較例8、9及び10はチキソ係数Tが、上記の範囲を外れ、追いダネ時の作業性が低下した。したがって、本発明の効果は、おから粉末を配合することで初めて得られる効果であることが示唆された。
以上により、本発明の天ぷら用バッターミックスから調製されたバッターを用いることにより、容易に追いダネを行うことができ、追いダネにより適度な花チリが付いた良好な外観を有し、且つサクサクとした口溶けの良い良好な食感が長時間維持される天ぷらを安定して製造することができることが示された。
なお、本発明は上記の実施の形態の構成及び実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々変形が可能である。
本発明の天ぷら用バッターミックスを用いることにより、調理者の技量に依らず、容易に追いダネを行うことができ、追いダネにより適度な花チリが付いた良好な外観を有し、且つサクサクとした口溶けの良い良好な食感が長時間維持される天ぷらを、低コストで安定して製造することができる。

Claims (7)

  1. 天ぷらの製造に用いるバッターを調製するためのバッターミックスであって、
    前記バッターミックスの質量を基準として、おから粉末を1〜6質量%、及び食用油脂を1〜5質量%含有し、
    前記おから粉末の前記食用油脂に対する含有量の比(おから粉末/食用油脂)が、0.4〜2.5であり、且つ
    粘度V12rpmが、750〜1600mPa・sとなるように調製したバッターについて、チキソ係数T(ただし、T=V30rpm/V6rpm)が、0.5〜1であることを特徴とするバッターミックス。
  2. 請求項1に記載のバッターミックスを、粘度V12rpmが、700〜2100mPa・sとなるように水と混合して調製した天ぷら用バッター。
  3. 天ぷらの製造に用いる、水及び水以外のバッター材料からなるバッターであって、
    粘度V12rpmが、700〜2100mPa・sであり、
    前記水以外のバッター材料の質量を基準として、おから粉末を1〜6質量%、及び食用油脂を1〜5質量%含有し、
    前記おから粉末の前記食用油脂に対する含有量の比(おから粉末/食用油脂)が、0.4〜2.5であり、且つ
    チキソ係数T(ただし、T=V30rpm/V6rpm)が、0.5〜1であることを特徴とするバッター。
  4. 前記水以外のバッター材料の質量に対して、加水率が140〜180質量%である請求項2又は3に記載のバッター。
  5. 請求項2〜4のいずれか1項に記載のバッターを、具材に付着させた後、油ちょうする天ぷらの製造方法。
  6. 前記バッターを具材に付着させたものを油中に投入した後、前記バッターを、油中に追加して投入する追いダネ工程を行う請求項5に記載の天ぷらの製造方法。
  7. 請求項5又は6に記載の製造方法によって製造された天ぷら。
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