以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
[1.第1の実施の形態]
[1−1.紙幣出金機の構成]
図1に模式的な側面図を示すように、紙幣出金機1は、いわゆるキャッシュディスペンサとなっており、例えば金融機関や各種商業施設等に設置され、利用者(すなわち金融機関や商業施設の顧客等)の操作に応じて紙幣を出金するようになっている。この紙幣出金機1は、大きく分けて下側の収納ユニット2及び上側の束搬送ユニット3により構成されており、さらに全体を制御する制御部4が組み込まれている。
制御部4は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心に構成されており、図示しないROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、出金処理等の処理を行う。また制御部4は、内部にRAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。
以下では、紙幣出金機1のうち顧客が対峙する側を前側とし、その反対を後側とし、当該前側に対峙した顧客から見て左及び右をそれぞれ左側及び右側とし、さらに上側及び下側を定義して説明する。
[1−1−1.収納ユニットの構成]
収納ユニット2は、直方体状の収納筐体10内に、紙幣に関する種々の処理を行う複数の部分が組み込まれている。この収納筐体10内には、4個の紙幣収納庫11、搬送部13、鑑別部14、切替部15、集積部16及びリジェクト収納庫17が設けられている。
紙幣収納庫11は、収納筐体10の後側における上下方向の中央から下側にかけて、互いに積み重なるように取り付けられ、それぞれに対して予め定められた金種の紙幣を収納する。また紙幣収納庫11の前側下部には、収納されている紙幣を1枚ずつに分離して繰り出す繰出部が設けられている。
搬送部13は、各紙幣収納庫11の前側に位置する下搬送部13Lと、最上段の紙幣収納庫11よりも上側に位置する上搬送部13Uとにより構成されている。下搬送部13L及び上搬送部13Uは、図示しないローラやベルト、或いはこれらを駆動するモータ等により、紙幣を搬送する経路である搬送路13Yを構成している。この搬送路13Yは、図中に実線で示すように、各紙幣収納庫11の繰出部と接続され、下搬送部13Lにおいて各紙幣収納庫11の前側を上下方向に沿って進行し、さらに上搬送部13Uにおいて最も上方に位置する紙幣収納庫11の上側における前後方向の中央付近まで到達するように配設されている。この搬送部13は、図示しないローラ等を回転させることにより、紙幣の短辺に沿った方向を進行方向として、搬送路13Yに沿って当該紙幣を搬送する。
鑑別部14は、最も上側に位置する紙幣収納庫11の前側に、下搬送部13Lと上搬送部13Uとの間に挟まれるようにして、搬送路13Yに沿って設けられている。この鑑別部14は、内部に厚みセンサやイメージセンサといった複数種類のセンサが組み込まれており、各センサから得られた情報を基に、搬送される紙幣の金種や走行状態等を鑑別し、その鑑別結果を制御部4へ供給する。制御部4は、得られた鑑別結果を基に、各紙幣の搬送先を決定する。具体的に制御部4は、出金すべき正常な紙幣の搬送先を集積部16に、搬送不良等により出金すべきで無い紙幣(以下これをリジェクト紙幣と呼ぶ)の搬送先をリジェクト収納庫17に、それぞれ決定する。
切替部15は、最も上側に位置する紙幣収納庫11の上側における前後方向のほぼ中央に配置されており、制御部4の制御に基づき、紙幣に当接して進行方向を変化させるブレード(図中三角形で示す)の傾斜角度を変更することにより、紙幣の搬送経路を切り替える。また切替部15は、上搬送部13Uにより、下側の鑑別部14、前側の集積部16及び後側のリジェクト収納庫17とそれぞれ接続されている。この切替部15は、下方から搬送されてきた紙幣それぞれの進行方向を、制御部4において決定された搬送先に応じて切り替え、前側の集積部16又は後側のリジェクト収納庫17へ進行させる。
集積部16は、収納筐体10内における最も上側の前側に位置しており、内部に紙幣を集積する集積空間16Sを形成している。この集積部16は、集積空間16S内に、上面に紙幣を集積するためのステージ16Tを有している。集積部16は、切替部15から搬送されてきた紙幣を所定の放出部により集積空間16S内へ放出し、ステージ16T上に束状に集積させていく。このため以下では、このように積み重ねられた紙幣を紙幣束Wとも呼ぶ。
さらにステージ16Tは、図示しないステージ移動機構により、上下方向へ移動することができる。また集積部16の上面には、集積空間16Sに相当する範囲に渡り、上下方向に貫通する集積孔16Hが穿設されている。この集積孔16Hは、収納筐体10の上面も貫通しており、集積空間16Sと収納筐体10よりも上側の空間とを連通させている。このため集積部16は、ステージ16Tに紙幣を集積した状態で当該ステージ16Tを上方へ移動させることにより、当該ステージ16T及び集積した束状の紙幣(紙幣束W)を収納筐体10の上面よりも上側、すなわち束搬送ユニット3の内部まで持ち上げることができる。
リジェクト収納庫17は、収納筐体10内における最も上側の後側に位置しており、内部に紙幣及び紙幣束Wを収納する空間を有し、また上面に取込孔17Hを有している。このリジェクト収納庫17は、切替部15から搬送されてきた紙幣(すなわちリジェクト紙幣)を内部に収納し、また上方に位置する束搬送ユニット3から落下された紙幣束Wを取込孔17Hから取り込んで内部に収納することができる。
さらに紙幣収納庫11及びリジェクト収納庫17は、収納筐体10に対し後方向へ引き抜かれることにより、当該収納筐体10から取り外すことができ、また当該収納筐体10の後側に対し位置を合わせて前方向へ押し込まれることにより、当該収納筐体10に装着することができる。
[1−1−2.束搬送ユニットの構成]
束搬送ユニット3は、全体として、上下方向に短く前後方向に長い、扁平な直方体状に形成されており、その前後方向の長さが収納ユニット2よりも長くなっている。束搬送ユニット3は、直方体状の束搬送筐体20内に組み込まれた種々の部材により、紙幣束Wを搬送するときに当該紙幣束Wが通過する経路である束搬送路3Yを形成している。また束搬送筐体20の前端、すなわち束搬送路3Yの前端には、紙幣束Wを利用者に引き渡す出金口26が形成されている。
因みに束搬送路3Yにおける複数の箇所、例えば出金口26の近傍等には、それぞれ紙幣束Wを検知するためのセンサが設けられている。制御部4は、各センサからの通知を基に、束搬送路3Y上における各箇所にそれぞれ紙幣束Wがあるか否かを判断することができる。
束搬送筐体20内における上側部分には、上搬送ベルト21が設けられている。上搬送ベルト21は、後端近傍及び前端近傍にそれぞれ配置されたローラの周囲に掛け回されており、制御部4の制御に基づき所定のモータ(図示せず)によってローラが回転されると、その下面を前後方向に沿って走行させる。説明の都合上、以下では、上搬送ベルト21における下面部分の走行方向を、当該上搬送ベルト21の走行方向と見なす。
束搬送筐体20内における上搬送ベルト21の下側部分、すなわち束搬送路3Yを挟んで上搬送ベルト21の反対側には、挟持搬送ガイド22及び下搬送ベルト24が設けられている。挟持搬送ガイド22は、上下方向に薄い扁平な直方体状ないし板状に形成されており、その上面を上搬送ベルト21の下面と対向ないし当接させている。また挟持搬送ガイド22は、収納ユニット2における収納筐体10の上面に対し、図示しない移動機構を介して、前後方向へ移動可能に取り付けられている。
下搬送ベルト24は、上搬送ベルト21を前後方向に短縮したような構成となっている。この下搬送ベルト24における上面部分は、挟持搬送ガイド22の上面と同等に揃えられ、上搬送ベルト21の下面と対向ないし当接している。また下搬送ベルト24の上面は、上搬送ベルト21の下面と同様、前後方向に走行する。説明の都合上、以下では、下搬送ベルト24における上面部分の走行方向を、当該下搬送ベルト24の走行方向と見なす。
また集積部16のステージ16Tは、挟持搬送ガイド22が前方へ移動された状態(図1)において、上方へ移動されることにより、その上面の高さを、挟持搬送ガイド22とほぼ同等に揃える。これによりステージ16Tは、束搬送路3Yの一部を形成することになる。
ラッセル部25は、挟持搬送ガイド22、下搬送ベルト24及びステージ16Tの上面に沿って、紙幣束Wを押すことにより前後方向へ移動させる。これにより紙幣束Wは、各紙幣の短辺を前後方向に沿わせた姿勢で、束搬送路3Yに沿って前後方向へ進行することができる。
[1−1−3.出金動作及び取込動作]
紙幣出金機1は、図示しない操作部により利用者から出金の指示及び出金額を受け付けると、出金動作を開始する。具体的に紙幣出金機1の制御部4は、紙幣収納庫11から出金額に応じた金種及び枚数の紙幣を順次繰り出させ、当該紙幣の短辺に沿った方向を進行方向として搬送部13により上方へ搬送し、鑑別部14により鑑別させる。このとき制御部4は、鑑別部14から得られる鑑別結果を基に、紙幣が出金可能であるか否かに応じて、その搬送先を集積部16又はリジェクト収納庫17に決定する。
続いて制御部4は、鑑別部14により鑑別された紙幣を、搬送部13により後方及び上方へ搬送して切替部15に到達させる。切替部15は、制御部4の制御に基づき、紙幣それぞれについて決定された搬送先に応じて進行方向を切り替え、集積部16又はリジェクト収納庫17へ進行させる。リジェクト収納庫17(図2)は、切替部15(図1)から搬送されてきた紙幣(すなわちリジェクト紙幣)を内部に収納する。
集積部16は、搬送されてきた紙幣を放出部により集積空間16S内へ放出し、ステージ16T上に集積させる。制御部4は、集積部16に集積した紙幣の合計金額が出金額に到達した段階で紙幣収納庫11からの紙幣の繰出を中止することにより、出金額の紙幣が束状に集積された紙幣束Wをステージ16T上に構成する。次に制御部4は、挟持搬送ガイド22を後方へ移動させてステージ16Tを上方へ移動させることにより、紙幣束Wを束搬送路3Y内に位置させる。
さらに制御部4は、上搬送ベルト21及び下搬送ベルト24を前方へ走行させると共にラッセル部25を前方へ移動させることにより、紙幣束Wを束搬送路3Yに沿って前方へ進行させる。やがて制御部4は、図示しないセンサからの通知を基に紙幣束Wが出金口26に到達したことを検知すると、上搬送ベルト21及び下搬送ベルト24の走行を停止させる。
このように制御部4は、出金口26から紙幣束Wの一部を露出させ、且つ上搬送ベルト21及び下搬送ベルト24により当該紙幣束Wの後端近傍を挟持した状態として、出金動作を終了する。これにより紙幣出金機1は、利用者にこの紙幣束Wを取り出させることができる。
ここで制御部4は、センサ(図示せず)からの通知を基に、出金口26から紙幣束Wが取り出されたか否かを監視している。そこで所定の待機時間(例えば30秒間)が経過しても紙幣束Wが取り出されなかった場合、制御部4は、紙幣束Wの取り忘れが発生したものと見なし、この紙幣束Wを取り込む取込動作を開始する。
具体的に制御部4は、上搬送ベルト21及び下搬送ベルト24を後方へ走行させると共に、ラッセル部25を紙幣束Wの前側に位置させた上で後方へ進行させることにより、当該紙幣束Wを束搬送路3Yに沿って後方へ進行させる。やがて制御部4は、紙幣束Wが取込孔17Hの上方に到達すると、この紙幣束Wを束搬送路3Yから落下させ、リジェクト収納庫17内に収納させる。
[1−2.上搬送部の構成]
次に、上搬送部13Uの構成について説明する。上搬送部13Uは、図2に示すように、大きく分けて搬送路13Yの上側に位置する固定搬送ガイド部31及び当該搬送路13Yの下側に位置する開閉搬送ガイド部32により構成されている。
固定搬送ガイド部31は、収納筐体10(図1)に固定されており、その下面が搬送路13Yに沿って形成されている。この下面は、前側部分がほぼ水平に形成される一方、後側部分が上方へ持ち上がるように傾斜されている。また固定搬送ガイド部31には、複数のローラが組み込まれている。この固定搬送ガイド部31は、複数のローラを適宜回転させることにより、下面部分により紙幣を案内しながら搬送路13Yに沿って進行させる。
開閉搬送ガイド部32は、図3に分解した状態を示すように、大きく分けて紙幣を案内する開閉ガイド体33、当該開閉ガイド体33の姿勢を維持又は変化させるロックレバー34及び付勢部材35により構成されている。
開閉ガイド体33は、ガイド本体部41を中心に構成されている。ガイド本体部41は、上下方向に薄い直方体状ないし板状に形成されている。このガイド本体部41における上面部分は、固定搬送ガイド部31の下面に合わせた形状となっており、前側ないし中央部分において概ね平坦に形成される一方、後側部分において上方へ向けて傾斜されている。またガイド本体部41には、固定搬送ガイド部31に組み込まれた複数のローラと対向する箇所に、複数のローラがそれぞれ組み込まれている。
図4に斜視図を示すように、ガイド本体部41の後面における左右の両端よりもやや内側には、複数のシャフト支持部41Sが設けられている。各シャフト支持部41Sは、比較的小さな直方体状でなり、左右方向から見て、後側部分を丸めたような形状となっている。また各シャフト支持部41Sには、ロックシャフト43が挿通されている。ロックシャフト43は、中心軸を左右方向に向けた細長い円柱状に形成されている。
ガイド本体部41の左右両側面における前端近傍、すなわちロックシャフト43から離隔した箇所には、開閉支点としてのガイド回動軸44が設けられている。ガイド回動軸44は、中心軸を左右方向に向けた小さな円柱状に形成されており、ガイド本体部41の左右両側面から左右の外方へ向けて立設されている。このガイド回動軸44は、収納筐体10により回動可能に支持されている。
かかる構成により開閉ガイド体33は、収納筐体10及び固定搬送ガイド部31に対し、ガイド回動軸44を回動中心として、図3における時計回りである開放方向としての矢印S1方向、又はその反対である閉塞方向としての矢印S2方向へ回動することができる。
また以下では、図2に示したようにガイド本体部41の上面を固定搬送ガイド部31の下面と対向させた状態を開閉ガイド体33の閉塞状態と呼び、また図4に示したようにガイド本体部41の上面を固定搬送ガイド部31の下面から大きく引き離した状態を当該開閉ガイド体33の開放状態と呼ぶ。
ロックレバー34は、図4に示したように、大きく分けて後側中央の中央部51と、当該中央部51の左右両端にそれぞれ接続された左腕部52及び右腕部53により構成されている。中央部51は、図2及び図3に示した状態において、前後方向に薄く、上下方向に短く、左右方向に長い薄板状に形成されている。
左腕部52は、左右方向に薄く前後方向に長い薄板状に形成されており、その下端が左外方へ折り曲げられている(図4)。また左腕部52における折り曲げ部分の前端には、作業者が指先で把持できる程度の大きさでなる薄板状の取手54が形成されている。右腕部53は、左腕部52と比較して、取手54以外の部分においてほぼ左右対称に構成されている。
因みに左腕部52及び右腕部53は、図4に示したように、搬送路13Yに沿って紙幣が通過する幅(以下これを通過幅と呼ぶ)の範囲内、すなわち収納筐体10における左右の内側面に挟まれた範囲内に、それぞれ配置されている。また、収納筐体10の左内側面から左腕部52までの間隔L1、当該左腕部52から右腕部53までの間隔L2、及び当該右腕部53から収納筐体10の右内側面までの間隔L3は、何れも搬送される全ての種類の紙幣における長辺の長さよりも短くなっている。
さらに左腕部52及び右腕部53には、溝部55が形成されている。溝部55は、概ね前後方向に沿って形成された直線状の長孔であり、前端55Fの近傍において上方に向けて緩やかに傾斜されている。この溝部55における溝幅は、ロックシャフト43の外径よりも僅かに広くなっている。
溝部55の後端55R近傍における下側部分には、規制部55L(図3)が形成されている。この規制部55Lは、図3に示した状態において、前側よりも後側が下方に位置するように、すなわちガイド回動軸44から離れるに連れて矢印S1方向に近づくように、水平方向に対して僅かに傾斜されている。
さらに左腕部52及び右腕部53における後端近傍の上寄りには、左右方向に貫通する丸孔でなる回動孔52H及び53Hがそれぞれ穿設されている。この回動孔52H及び53Hは、溝部55に設けられた規制部55Lのほぼ真上に位置している。回動孔52H及び53Hには、ロック支点としてのロック回動軸56が挿通されている。ロック回動軸56は、ガイド回動軸44から後方へ離隔した箇所に設けられ、ロックシャフト43と同様に左右方向に沿った細長い円柱状に形成されており、その両端が収納筐体10(図4)に固定されている。
かかる構成によりロックレバー34は、収納筐体10及び固定搬送ガイド部31に対し、ロック回動軸56を回動中心として、図3における時計回りとなる矢印R1方向又はその反対の矢印R2方向へ回動することができる。
以下では、図2に示したように溝部55の長手方向を概ね水平に向け、ロック回動軸56に対し取手54を概ね前側に位置させた姿勢を、ロックレバー34のロック姿勢と呼ぶ。また、ロックレバー34におけるロック姿勢以外の姿勢、例えば図4に示したように溝部55の長手方向を鉛直方向に近い角度まで傾斜させ、ロック回動軸56に対し取手54を概ね下側に位置させた姿勢を、ロックレバー34のロック解除姿勢と呼ぶ。
さらにロックレバー34の溝部55には、図2及び図4に示したように、ロックシャフト43が挿通される。これによりロックレバー34は、開閉ガイド体33との間で、相互に力を伝達することができる。これを換言すれば、ロックレバー34は、開閉ガイド体33の回動と連動して回動することができる(詳しくは後述する)。
付勢部材35は、トーションばねでなり、巻回部分がロック回動軸56に挿通されている(図2及び図4)。この付勢部材35は、一端が収納筐体10に係合され、他端がロックレバー34に係合されている。このため付勢部材35は、収納筐体10に対しロックレバー34を矢印R1方向へ付勢することができる。
このように上搬送部13Uの開閉搬送ガイド部32は、開閉ガイド体33及びロックレバー34を、収納筐体10に対し互いに離れたガイド回動軸44およびロック回動軸56をそれぞれ中心として回動可能に構成し、且つ両者をロックシャフト43及び溝部55により互いに連動させるようになっている。
[1−3.開閉搬送ガイド部の開閉動作]
次に、開閉搬送ガイド部32における開閉ガイド体33の開閉動作について説明する。ここでは、図面の都合上、図3及び図2をそれぞれ模式的に表した図5及び図6等を用いながら、開閉ガイド体33及びロックレバー34の動作を説明する。因みに図5では、シャフト支持部41Sをガイド本体部41と一体に表し、また付勢部材35を省略している。
開閉ガイド体33は、前側がガイド回動軸44により支持されているため、重力により、主に後側部分に対し下方へ向かう力が作用する。すなわち開閉ガイド体33は、ガイド回動軸44を中心として矢印S1方向へ回動するように、常に付勢されている。またロックレバー34は、付勢部材35(図2及び図3)の作用により、ロック回動軸56を中心として矢印R1方向へ回動するように、常に付勢されている。
開閉搬送ガイド部32は、図6に示すように、開閉ガイド体33が閉塞状態である時、ロックレバー34がロック姿勢となる。このときロックシャフト43は、ロックレバー34における溝部55内における後端55Rの近傍に位置しており、さらに開閉ガイド体33の矢印S1方向へ回動しようとする力により、規制部55Lに当接する。
規制部55Lは、上述したように、ロックレバー34がロック姿勢である場合、ロック回動軸56のほぼ真下に位置しており、且つ前側よりも後側が低くなるように、水平方向から僅かに傾斜されている。このため規制部55Lは、ロックシャフト43の下方へ向かおうとする力を受け止めて移動を規制し、開閉ガイド体33の矢印S1方向への回動を抑制する。
ロックレバー34は、付勢部材35(図3等)によって矢印R1方向へ付勢されているため、これに反するような外力が加えられない限り、このロック姿勢を維持しようとする。かくして開閉搬送ガイド部32は、ロックレバー34に設けた溝部55の規制部55Lによってロックシャフト43の移動を規制することにより、開閉ガイド体33の回動を制限し、閉塞状態を維持すること、すなわちロックすることができる。
ところで紙幣出金機1(図1)では、最上段に位置する紙幣収納庫11の真上に隣接して上搬送部13Uが配置されている。このため紙幣出金機1では、最上段の紙幣収納庫11が収納筐体10から引き出されると、当該紙幣収納庫11が収納されていた空間に、上搬送部13Uの下面部分を露出させることになる。またこのとき紙幣出金機1では、紙幣収納庫11が引き出された空間に作業員に手を挿入させることが可能となる。
このような状態において、上搬送部13Uの開閉搬送ガイド部32は、ロックレバー34の取手54に対して、作業員等の操作により付勢部材35(図3等)の力に反して後下方へ向かう外力が加えられると、図7に示すように、ロック回動軸56を中心として当該ロックレバー34を矢印R2方向へ回動させていく。
このときロックレバー34は、その回動により前端55F側を徐々に下降させるように溝部55を傾斜させていく。これに伴って開閉ガイド体33は、重力の作用により、ロックシャフト43を当該溝部55内で前端55F側へ近づけるように摺動させながら、ガイド回動軸44を中心として矢印S1方向へ徐々に回動していく。これを他の観点から見ると、ロックシャフト43は、ガイド回動軸44を中心とした開閉ガイド体33の回動に伴い、ロック回動軸56との距離を変化させることになる。
やがて開閉ガイド体33は、図8に示すように、ロックシャフト43を溝部55内で前端55Fの近傍まで到達させることにより、矢印S1方向へ最も回動した状態、すなわち開放状態(図4)に遷移する。ここでロックレバー34は、この姿勢において作業員等による外力が加えられなくなると、付勢部材35により矢印R1方向へ向かう力が作用する。その一方で開閉ガイド体33は、重力の作用により矢印S1方向へ向かう力が作用し続けており、その力の一部がロックシャフト43に伝達されている。
このためロックレバー34は、溝部55における前端55Fの近傍部分とロックシャフト43との間で、当該ロックシャフト43の矢印S1方向へ向かう力が当該溝部55により受け止められる一方、当該溝部55の矢印R1方向へ向かう力が当該ロックシャフト43により受け止める。このため開閉ガイド体33及びロックレバー34は、この開放状態において互いの力を釣り合わせ、何れも回動せずにその姿勢を維持する。
一方、開閉搬送ガイド部32は、開閉ガイド体33が開放状態であるときに(図8)、作業員等により、当該開閉ガイド体33の後端近傍又はロックレバー34の前端近傍に対して上方向へ向かう外力が加えられると、閉塞状態(図6)への遷移を開始する。具体的に開閉ガイド体33は、溝部55内でロックシャフト43を後端55Rへ向けて移動させながら、矢印S2方向へ回動していく。これと共にロックレバー34は、僅かずつ矢印R1方向へ回動し、ロック状態に近づいていく。
やがて開閉ガイド体33は、ロックシャフト43を溝部55に沿って、すなわち前端55F側から後端55R側へ向けてほぼ直線状に移動させることにより、図7に示した状態を介して図6に示した閉塞状態となる。このときロックレバー34は、付勢部材35(図3等)からの力により、ロックシャフト43が溝部55内で後端55Rへ近づくに連れて矢印R1方向へ回動していき、やがてロック姿勢(図6)となって開閉ガイド体33を閉塞状態に保持する。
このように開閉搬送ガイド部32は、ロックシャフト43を溝部55内で移動させることにより、開閉ガイド体33及びロックレバー34を互いに連動させながら回動させる。これにより開閉搬送ガイド部32は、開閉ガイド体33を閉塞状態としてロックレバー34をロック姿勢とした状態(図6)と、開閉ガイド体33を開放状態としてロックレバー34をロック解除姿勢とした状態(図8)との間を遷移することができる。
[1−4.効果等]
以上の構成において、第1の実施の形態による紙幣出金機1の上搬送部13Uは、開閉搬送ガイド部32において、ガイド回動軸44を中心に回動する開閉ガイド体33に設けたロックシャフト43を、ロック回動軸56を中心に回動するロックレバー34に設けた溝部55内で摺動させるようにした。
ここで、開閉搬送ガイド部32における開閉動作(図6〜図8)を、従来の開閉搬送ガイド部232における開閉動作(図12、図14〜図16)と比較する。本実施の形態による開閉搬送ガイド部32におけるロックレバー34は、従来の開閉搬送ガイド部232におけるロックレバー234及びステイ236に相当する。また本実施の形態による開閉搬送ガイド部32におけるロックシャフト43は、従来の開閉搬送ガイド部232におけるロックポスト243及びステイシャフト245に相当する。
従来のロックレバー234は、図示しない付勢部材により矢印R1方向へ付勢されており、外力が加えられているとき以外は、開放状態(図15)も含めて、ロック姿勢となっている。このため従来の開閉搬送ガイド部232では、開閉ガイド体233を開放状態(図15)から閉塞状態(図12)へ遷移させる場合、途中でロックレバー234を一時的にロック解除姿勢(図14)とする必要があった。また従来の開閉搬送ガイド部232では、上述したように、この際にロックレバー234がロックポスト243に引っ掛かる、といった問題が発生するおそれがあった(図16)。
これに対し、本実施の形態による開閉搬送ガイド部32では、従来のロックレバー234における爪部255の規制部255Lとステイ236の溝部265における長辺部分とを滑らかに連結させたような形状の溝部55を、ロックレバー34に設けた(図5)。
このロックレバー34は、開閉ガイド体33が閉塞状態であるときに(図6)、付勢部材35の力によりロック姿勢となり、ロックシャフト43の下方向への移動を規制部55Lにより規制する。このようなロックレバー34の状態は、従来の開閉搬送ガイド部232(図12)において、ロックレバー234の爪部255に形成された規制部255Lによりロックポスト243の下方向への移動を規制した状態と対応している。このときロックレバー34は、溝部55全体をロック回動軸56に近い高さに位置させ、当該溝部55における長手方向を概ね前後方向に沿わせた状態となる。
一方、開閉搬送ガイド部32では、開閉ガイド体33が閉塞状態以外の場合、当該開閉ガイド体33の後側部分やロックシャフト43が、閉塞状態よりも矢印S1方向側、すなわち下側に位置する。これに応じてロックレバー34は、溝部55をロックシャフト43に追従させることにより、前端55F側を下降させるようにして当該溝部55全体を傾斜させる(図7、図8)。
このときロックレバー34は、溝部55の規制部55Lを、ロック姿勢であるときの位置(すなわちロック回動軸56のほぼ真下)よりも後側に位置させている。これは、従来の開閉搬送ガイド部232であれば、図14に示したように、矢印R2方向へ外力を加えてロックレバー234を回動させ、ロック解除姿勢とした状態に相当する。
すなわち本実施の形態による開閉搬送ガイド部32は、開閉ガイド体33が閉塞状態以外の場合、ロックシャフト43が溝部55からの矢印R1方向へ向かう力を受け止めることにより、ロックレバー34をロック解除姿勢に維持することができる。これを他の観点から見れば、開閉搬送ガイド部32は、開閉ガイド体33を開放状態(図8)から閉塞状態(図6)へ遷移させる場合、ロックレバー34を当初からロック解除姿勢としており、最終的に当該閉塞状態に遷移する直前まで、このロック解除姿勢を保ち続ける。
このため開閉搬送ガイド部32は、溝部55内でロックシャフト43を前端55F側から後端55R側へ円滑に摺動させるだけで、当該ロックシャフト43を後端55Rの近傍まで到達させ、最終的に規制部55Lによりその移動を規制すること、すなわちロックすることができる。
これを換言すれば、開閉搬送ガイド部32では、従来の開閉搬送ガイド部232において必要であったロックレバー234を一時的にロック解除姿勢に遷移させること(図14)が不要となるため、当該ロックレバー234がロックポスト243に引っ掛かること(図16)が原理的に発生しない。また開閉搬送ガイド部32では、溝部55がほぼ直線状に形成されているため、ロックシャフト43を摺動させる際に、局所的に大きな抵抗を発生することなく、円滑に進行させることができる。
これにより開閉搬送ガイド部32は、開閉ガイド体33を中途半端な状態で停止させることなく、確実に閉塞状態に遷移させ、且つロックレバー34をロック姿勢とすることができる(図6)。この結果、上搬送部13U(図2)では、固定搬送ガイド部31と開閉搬送ガイド部32との間に適切な間隔の隙間でなる搬送路13Yを形成でき、紙幣を安定的に搬送することができる。
また開閉搬送ガイド部32では、付勢部材35によりロックレバー34を矢印R1方向へ付勢するようにした。このため開閉搬送ガイド部32は、開閉ガイド体33が閉塞状態でありロックレバー34がロック姿勢であるときに、特に外力を加えることなくこのロック姿勢を維持することができ、当該ロックレバー34が不用意に矢印R2方向へ回動して開閉ガイド体33を不用意に矢印S1方向へ回動させてしまうことを防止できる。これに加えて開閉搬送ガイド部32では、開閉ガイド体33を開放状態から矢印S2方向へ回動させて閉塞状態へ遷移させる場合に、ロックレバー34に対し特に外力を加えることなく、当該開閉ガイド体33の回動と連動して当該ロックレバー34を回動させ、ロック姿勢に近づけていくことができる。
さらにロックレバー34は、ロック姿勢である場合に(図6等)、溝部55の規制部55Lの前側よりも後側を下方に位置させるように、僅かに傾斜させるようにした。これによりロックレバー34は、開閉ガイド体33の自重によってロックシャフト43から下方へ向かう力が作用したとしても、当該ロックシャフト43を溝部55内で前方へ滑らせること、すなわちロックレバー34を不用意にロック解除姿勢に遷移させて開閉ガイド体33を開放させてしまうことを防止できる。換言すれば、ロックレバー34は、ロック姿勢である場合、従来のロックレバー234と同様に、ロックシャフト43を規制部55Lにより抱えるようにして保持することができる。
ところで上搬送部13U(図2)では、搬送路13Y、すなわち固定搬送ガイド部31と開閉搬送ガイド部32との間に紙幣が残っている状態で開閉ガイド体33を閉塞状態(図6)から開放状態(図8)へ回動させた場合、当該開閉ガイド体33の傾斜によりその上面から紙幣が滑り落ちるおそれがあった。この場合、紙幣出金機1(図1)では、この紙幣が収納筐体10内で下方へ落下し、各部の隙間等に入り込むおそれがあった。
この点において開閉搬送ガイド部32のロックレバー34は、収納筐体10の左内側面から左腕部52までの間隔L1(図4)、当該左腕部52から右腕部53までの間隔L2、及び当該右腕部53から収納筐体10の右内側面までの間隔L3は、何れも搬送される全ての種類の紙幣における長辺の長さよりも短くした。このため開閉搬送ガイド部32は、落下しようとする紙幣の長辺をロックレバー34の左腕部52及び右腕部53の少なくとも一方に当接させ、その落下を阻止することができる。
さらに開閉搬送ガイド部32は、ロック回動軸56をガイド回動軸44よりも後側に配置し、ロック解除姿勢(図8)からロック姿勢(図6)へ遷移するときに、ロックレバー34の回動によりその前端近傍を前上方へ変位させるようにした。このため開閉搬送ガイド部32は、仮に作業員等が開閉ガイド体33を閉塞状態に遷移させることを失念していたとしても、収納筐体10(図1)に対し紙幣収納庫11を装着させるべく、当該紙幣収納庫11を前方へ進行させたときに、その前面における上端近傍をロックレバー34に当接させ、さらに摺動させることができる。これにより開閉搬送ガイド部32は、この紙幣収納庫11が装着されるべく前方へ移動する力を利用して、ロックレバー34からロックシャフト43を介して開閉ガイド体33に矢印S2方向へ回動する力を加え、当該開閉ガイド体33を閉塞状態へ遷移させることができる。
以上の構成によれば、紙幣出金機1の上搬送部13Uは、開閉搬送ガイド部32において、ガイド回動軸44を中心に回動する開閉ガイド体33に設けたロックシャフト43を、ロック回動軸56を中心に回動するロックレバー34に設けた溝部55内で摺動させるようにした。開閉搬送ガイド部32は、開閉ガイド体33が閉塞状態以外の場合、ロックシャフト43によりロックレバー34をロック解除姿勢に維持するため、当該開閉ガイド体33を矢印S2方向へ回動させるだけで、溝部55内でロックシャフト43を円滑に摺動させて後端55Rの近傍まで到達させることができる。この結果、開閉搬送ガイド部32は、途中で引っ掛かることなく、開閉ガイド体33を閉塞状態に遷移させると共に、規制部55Lによりロックシャフト43の移動を規制するロック姿勢とすることができる。
[2.第2の実施の形態]
[2−1.開閉搬送ガイド部の構成]
第2の実施の形態では、開閉搬送ガイド部32に代わる開閉搬送ガイド部132が設けられている。開閉搬送ガイド部132は、図9に示すように、第1の実施の形態における開閉ガイド体33、ロックレバー34及び付勢部材35に代わる開閉ガイド体133、ロックレバー134及び付勢部材135により構成されている。
開閉ガイド体133は、第1の実施の形態による開閉ガイド体33と同様のガイド本体部41及びガイド回動軸44に加えて、ロックシャフト43に代わるロック回動軸156を有している。この開閉ガイド体133は、第1の実施の形態と同様、ガイド回動軸44を中心として矢印S1方向又は矢印S2方向へ回動することができる。
ロックレバー134は、全体として第1の実施の形態によるロックレバー34を上下方向に反転させたような構成となっている。具体的にロックレバー134は、第1の実施の形態における中央部51、左腕部52、右腕部53、取手54及び溝部55に代えて、それぞれを上下方向に反転させた中央部151、左腕部152、右腕部153、取手154及び溝部155を有している。溝部155は、後端155Rの近傍における上側に、規制部55Lと対応する規制部155Lが設けられている。因みに左腕部152及び右腕部153における左右方向の位置は、搬送路13Yの外側となっている。
また左腕部152、右腕部153における規制部155Lの下方には、孔部152H及び153Hがそれぞれ穿設されており、上述したロック回動軸156がそれぞれ挿通されている。すなわちロックレバー134は、開閉ガイド体133に設けられたロック回動軸156を中心として、当該開閉ガイド体133に対し、矢印R1方向又は矢印R2方向へ回動することができる。
付勢部材135は、付勢部材35と同様にトーションばねとなっており、巻回部分がロック回動軸156に挿通されており、一端が開閉ガイド体133に係合され、他端がロックレバー134に係合されている。このため付勢部材135は、開閉ガイド体133に対してロックレバー134を矢印R2方向へ付勢することができる。さらに開閉搬送ガイド部132では、ロックシャフト43に代わるロックシャフト143が、開閉ガイド体133ではなく収納筐体10側に固定された上で、溝部155に挿通されている。
このように開閉搬送ガイド部132は、開閉搬送ガイド部32と比較して、ロックレバー134が上下方向に反転されていると共に、ロック回動軸156及びロックシャフト143の取付位置が入れ替わったような構成となっている。
[2−2.開閉搬送ガイド部の開閉動作]
この開閉搬送ガイド部132は、開閉ガイド体133が閉塞状態である場合、ロックレバー134の溝部155を概ね前後方向に沿わせたロック姿勢となり、当該ロックレバー134が付勢部材135により矢印R2方向へ付勢される。
このとき開閉搬送ガイド部132では、開閉ガイド体133の自重により矢印S1方向へ回動しようとする力がロック回動軸156からロックレバー134に伝わり、溝部155の規制部155Lを下方へ引き下げようとするものの、この力がロックシャフト143により受け止められる。この結果、開閉搬送ガイド部132は、ロックレバー134がロック姿勢である限り、開閉ガイド体133を閉塞状態に維持できる。
ここでロックレバー134の取手154に対して上方向へ向かう力が加えられると、開閉搬送ガイド部132は、図10に示すように、開閉ガイド体133に対して当該ロックレバー134を矢印R1方向へ回動させ、ロック解除姿勢となる。これに伴って溝部155は、全体としてやや後方へ移動しながら前端155F側を持ち上げるように傾斜していくことにより、当該溝部155内におけるロックシャフト143の相対的な位置を前端155F側へ近づけ、規制部155Lから引き離していく。
他の観点から見れば、ロックレバー134は、開閉ガイド体133の回動に伴ってロック回動軸156が下方へ移動する一方、ロックシャフト143が固定されているために、当該ロックシャフト143により開閉ガイド体133から引き離されてロック解除姿勢となっている。因みにロックシャフト143は、収納筐体10に固定されているため、絶対的な位置は変化しない。
さらにロックレバー134の取手154に対して上方向ないし後方向へ向かう力が加えられると、開閉搬送ガイド部132は、開閉ガイド体133に対して当該ロックレバー134を矢印R1方向へ回動させると共に、開閉ガイド体133を矢印S1方向へ大きく回動させていく。またロックレバー134は、開閉ガイド体133に設けられたロック回動軸156が下方へ移動することに伴って回転及び変位し、溝部155内でロックシャフト143の相対的な位置を徐々に前端155Fに近づけていく。
やがて開閉搬送ガイド部132は、図11に示すように、ロックシャフト143を溝部155内で前端155F近傍に到達させて、開閉ガイド体133を開放状態に遷移させることができる。このときロックレバー134は、開閉ガイド体133に対し、ロック姿勢(図9)から矢印R1方向へ回動されたロック解除姿勢を維持している。
一方、開閉搬送ガイド部132は、開閉ガイド体133が開放状態である時に、当該開閉ガイド体133又はロックレバー134の下端、或いは取手154等に対して上方向へ向かう力が加えられると、ロックシャフト143を溝部155内で後端155Rへ近づけるように摺動させながら、開閉ガイド体133を矢印S2方向へ回動させていく。これに伴いロックレバー134は、徐々に矢印R2方向へ回動していく。やがて開閉搬送ガイド部132は、図10に示した状態を経て、図9に示したように、開閉ガイド体133を閉塞状態に遷移させると共にロックレバー134をロック姿勢とする。
このように開閉搬送ガイド部132は、ロックシャフト143を溝部155内で相対的に移動させることにより、開閉ガイド体133及びロックレバー134を互いに連動させながら回動させる。これにより開閉搬送ガイド部132は、第1の実施の形態と同様、開閉ガイド体133を閉塞状態としてロックレバー134をロック姿勢とした状態(図9)と、開閉ガイド体133を開放状態としてロックレバー134をロック解除姿勢とした状態(図11)との間を遷移することができる。
[2−3.効果等]
以上の構成において、第2の実施の形態による開閉搬送ガイド部132は、ガイド回動軸44を中心に回動する開閉ガイド体133にロック回動軸156を設け、当該ロック回動軸156を中心としてロックレバー134を回動させるようにした。そのうえで開閉搬送ガイド部132は、収納筐体10に固定されたロックシャフト143を、ロックレバー134に設けた溝部155内で摺動させるようにした。
開閉搬送ガイド部132は、第1の実施の形態による開閉搬送ガイド部32と同様、開閉ガイド体133が閉塞状態である場合以外において、ロックレバー134をロック解除姿勢に保つ。このため開閉搬送ガイド部132は、第1の実施の形態と同様、開閉ガイド体133を開放状態から閉塞状態へ遷移させる場合に、溝部155内でロックシャフト143を前端155F側から後端155R側へ円滑に摺動させることができる。
これにより開閉搬送ガイド部132は、最終的にロックシャフト143を溝部155内の後端155R近傍まで到達させ、当該ロックシャフト143によって規制部155Lを介してロックレバー134の移動を規制すること、すなわち開閉ガイド体133を閉塞状態に遷移させてロックすることができる。
その他の点についても、開閉搬送ガイド部132は、第1の実施の形態による開閉搬送ガイド部32と同様の作用効果を奏し得る。
以上の構成によれば、第2の実施の形態による開閉搬送ガイド部132は、ガイド回動軸144を中心に回動する開閉ガイド体133にロック回動軸156を設け、当該ロック回動軸156を中心に回動するロックレバー134に溝部155を設けて、固定されたロックシャフト143を当該溝部155に挿通させた。開閉搬送ガイド部132は、開閉ガイド体133が閉塞状態以外の場合、ロックシャフト143によりロックレバー134をロック解除姿勢に維持するため、当該開閉ガイド体133を矢印S2方向へ回動させるだけで、溝部155内でロックシャフト143を円滑に摺動させて後端155Rの近傍まで到達させることができる。この結果、開閉搬送ガイド部132は、途中で引っ掛かることなく、開閉ガイド体133を閉塞状態に遷移させると共に、ロックレバー134をロック姿勢とすることができる。
[3.他の実施の形態]
なお上述した第1の実施の形態においては、溝部55を概ね前後方向に沿って形成された直線状の長孔とし、且つ前端55Fの近傍において上方に向けて緩やかに傾斜させ、さらにロックシャフト43の外径よりも僅かに広いほぼ一定の溝幅とする場合について述べた(図3、図5等)。しかしながら本発明はこれに限らず、溝部55を例えば曲線状や折れ線状など、種々の形状としても良い。また溝幅についても、必ずしもほぼ一定とする必要は無く、少なくともロックシャフト43の外径よりも広くなっていれば良い。要は、溝部55としては、開閉ガイド体33が閉塞状態以外である間、特に開放状態から閉塞状態に遷移し終わる直前の段階で、ロックレバー34をロック解除姿勢に保つことができ、且つ開閉ガイド体33の回動に伴ってロックシャフト43を当該溝部55内で円滑に摺動させることができれば良い。第2の実施の形態についても同様である。
また上述した第1の実施の形態においては、溝部55の規制部55Lを、ロックレバー34がロック姿勢であるときに、前側よりも後側が下方に位置するように、すなわちガイド回動軸44から離れるに連れて矢印S1方向に近づくように、僅かに傾斜させる場合について述べた(図3、図5等)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば溝部55の規制部55Lを、ロックレバー34がロック姿勢であるときに、ほぼ水平としても良い。要は、ロックシャフト43を介して開閉ガイド体33から下方向へ向かう力が加えられたときに、当該ロックシャフト43を溝部55内で前方向へ進行させることなく、ロックレバー34をロック姿勢に維持できれば良い。この場合、付勢部材35により加えられる力に頼ることなく、ロックシャフト43を規制部55Lにより受け止めることにより、ロック姿勢を維持することが望ましい。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、ロックレバー34を矢印R1方向へ付勢する付勢部材35をトーションばねとする場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、板ばねやコイルばね、或いはゴム等、種々の構造又は材料により付勢部材35を構成しても良い。この場合、要はロックレバー34を矢印R1方向へ付勢することができれば良い。或いは、例えば周知の係合機構等を利用してロックレバー34を開閉ガイド体33や収納筐体10に係合させる場合や、ロックレバー34における重心の位置を調整して単体でロック姿勢を維持できるようにした場合などに、付勢部材35を省略しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、ロックレバー34に2本の腕部として左腕部52及び右腕部53を設け、収納筐体10から各腕部までの間隔及び各腕部同士の間隔をそれぞれ表す間隔L1、L2及びL3を、搬送される全ての種類の紙幣における長辺の長さよりも短くする場合について述べた(図4)。しかしながら本発明はこれに限らず、ロックレバー34に3本以上の腕部を設ける場合に、収納筐体10から各腕部までの間隔及び各腕部同士の間隔を、何れも搬送される全ての種類の紙幣における長辺の長さよりも短くしても良い。また、腕部同士の間や腕部と収納筐体10との間に、紙幣の落下を防止する板状部材や網状部材等を設けても良い。或いは、間隔L1、L2及びL3のうち少なくとも1箇所を、搬送される全ての種類の紙幣における長辺の長さよりも長くしても良い。
さらに上述した第1の実施の形態においては、ロックレバー34における左腕部52の折り曲げ部分における前端に、薄板状の取手54を設ける場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、ロックレバー34における種々の箇所に、種々の形状でなる取手を設けても良い。この場合、ロック回動軸56から比較的遠い箇所に設けることにより、比較的弱い力を加えるだけでロックレバー34を回動させ得るようにすることが望ましい。或いは、左腕部52及び右腕部53に対して作業員等の指先から容易に力を加えることができる場合などに、取手54を省略しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、上搬送部13U内で前後方向に沿った搬送路13Yの下側に位置する開閉搬送ガイド部32に本発明を適用する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば下搬送部13L(図1)内で上下方向に沿った搬送路13Yの前側や後側に位置する搬送ガイド部等、種々の方向に沿った搬送路を形成する搬送ガイド部に本発明を適用しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、紙幣を搬送する上搬送部13Uの一部分である開閉搬送ガイド部32に本発明を適用する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば種々の装置における開閉式の扉や蓋など、回動により開閉する種々の箇所に本発明を適用しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、媒体としての紙幣を搬送する上搬送部13Uの開閉搬送ガイド部32に本発明を適用する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば金券や証券、或いは葉書や封筒など、種々の紙葉状の媒体を搬送する搬送部に本発明を適用しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
さらに上述した第1の実施の形態においては、開閉体としての開閉ガイド体33と、ロックシャフトとしてのロックシャフト43と、ロック支点としてのロック回動軸56と、ロック体としてのロックレバー34と、溝部としての溝部55と、規制部としての規制部55Lとによって開閉装置としての開閉搬送ガイド部32を構成する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる開閉体と、ロックシャフトと、ロック支点と、ロック体と、溝部と、規制部とによって開閉装置を構成しても良い。
さらに上述した第1の実施の形態においては、固定ガイド体としての固定搬送ガイド部31と、開閉体としての開閉ガイド体33と、ロックシャフトとしてのロックシャフト43と、ロック支点としてのロック回動軸56と、ロック体としてのロックレバー34と、溝部としての溝部55と、規制部としての規制部55Lとによって媒体搬送装置としての上搬送部13Uを構成する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる固定ガイド体と、開閉体と、ロックシャフトと、ロック支点と、ロック体と、溝部と、規制部とによって媒体搬送装置を構成しても良い。
さらに上述した第1の実施の形態においては、収納庫としての紙幣収納庫11と、搬送部としての上搬送部13Uと、集積部としての集積部16と、束搬送部としての束搬送ユニット3とによって媒体処理装置としての紙幣出金機1を構成し、搬送部を、固定ガイド体としての固定搬送ガイド部31と、開閉体としての開閉ガイド体33と、ロックシャフトとしてのロックシャフト43と、ロック支点としてのロック回動軸56と、ロック体としてのロックレバー34と、溝部としての溝部55と、規制部としての規制部55Lとによって構成する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる収納庫と、搬送部と、集積部と、束搬送部とによって媒体処理装置を構成し、搬送部を、その他種々の構成でなる固定ガイド体と、開閉体と、ロックシャフトと、ロック支点と、ロック体と、溝部と、規制部とによって構成しても良い。