JP2016152998A - 摺動性被覆層保有医療用具およびシリンジ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明の摺動性被膜保有医療用具1は、医療用部材内面もしくは体腔内面に接触して移動する医療用具であり、医療用部材もしくは体腔と接触する部分に設けられた摺動性被覆層3を備える。摺動性被覆層3は、固体微粒子を含まず、ビニル基を有するシリコーンとケイ素原子と結合した水素基を有するシリコーンとの付加反応物であるシリコーン系樹脂を含有する組成物からなる。
【選択図】 図1
Description
特に薬液を充填した状態で長期間保管するプレフィルドシリンジにおいては、薬液の安定性を維持し続けられる、潤滑剤不要のものが望まれている。
そこで、上記の課題を解決するものとして、特許文献1(特開昭62−32970号公報)、特許文献2(特開2002−089717号公報)、特許文献3(米国特許7111848号公報)など、ガスケットの表面をガスケット本体材料より摩擦係数の低い材料であるフッ素系樹脂で被覆することにより、潤滑剤を不要としたプレフィルドシリンジが提案されている。
また、本出願人は、フッ素系樹脂、ケイ素系樹脂及びウレタン系樹脂により構成された被覆層を有するガスケットに関する特許文献4(特開2004−321614号公報)、摺動性付与成分と柔軟性付与成分とを含有する組成物により形成された被膜と、ガスケットに粗面表面を形成するため該被膜に保持された固体の微粒子とからなる被覆層を有するガスケットに関する特許文献5(特開2006−167110号公報)、特許文献6(特開2008−287号公報、米国公開2007−0299402)を提案している。さらには特許文献7(WO2009−084646号公報、米国公開2010−0324501)にて、摺動性付与成分、柔軟性付与成分及び密着性成分を含有する組成物を考案して、該固体の微粒子を含まない被覆層を有するガスケットも提案している。
すなわちシリンジポンプを用いた薬液投与においては、目視では確認できない程の極低速条件下(例えば、直径約24mmのシリンジにおいて、1mL/時間で吐出させた場合の移動速度は約2mm/時間程度である)において薬液を吐出させた場合、脈動と呼ばれる不安定な吐出の状態が生じがちであり、薬液の正確な投与が妨げられるおそれがあった。
液密性と摺動性を両立するものとして提案された、特許文献4(特開2004−321614号公報)及び特許文献5(特開2006−167110号公報)、特許文献6(特開2008−287号公報、米国公開2007−0299402)に示されたガスケットは、液密性を備えかつ、摺動面に潤滑剤を付与することなく、安定した摺動性を有するものである。しかし、前者においては被覆層を形成する材料が多種にわたり製造上およびコスト上の問題がある。後者においてはさらに被覆層に保持された固体の微粒子が離脱してしまい薬液中に不溶性微粒子が発生してしまう問題があった。特許文献7(WO2009−084646号公報、米国公開2010−0324501)で示されたガスケットはこれら問題点を解決できたものではある。しかしながら、末端シラノール基を有する反応性シリコーンを触媒の有機スズ化合物を使用して縮合反応により硬化させて被覆層を形成させる製造原理であるため、触媒の有機スズ化合物が必須の構成要件となっている。近年、その毒性や環境への影響の問題により地域や用途に応じて有機スズ化合物の使用を規制する検討が活発に行われている。
医療用部材内面もしくは体腔内面に接触して移動する医療用具であって、該医療用具は、前記医療用部材もしくは体腔と接触する部分に設けられた摺動性被覆層を備え、該摺動性被覆層は、固体微粒子を含まず、ビニル基を有するシリコーンとケイ素原子と結合した水素基を有するシリコーンとの付加反応物であるシリコーン系樹脂を含有する組成物からなるものである摺動性被覆層保有医療用具。
また、上記目的を達成するシリンジは、下記のものである。
シリンジ用外筒と、上記の摺動性被覆層保有医療用具でありかつ前記外筒内に摺動可能に収納されたシリンジ用ガスケットと、前記ガスケットに取り付けられた、あるいは取り付け可能なプランジャーとを有するシリンジ。
特に、本発明の摺動性被覆層保有医療用具の摺動性被覆層は、ビニル基を有するシリコーンとケイ素原子と結合した水素基を有するシリコーンとの付加反応物をシリコーン系樹脂として用いていることから、被覆層形成時の硬化反応時に触媒として有機スズ化合物を使用しないものであるため、将来有機スズ化合物の使用が規制された場合においても、市場に安定して供給することができる。
さらに、本発明の摺動性被覆層保有医療用具の摺動性被覆層は、微粒子を含む被覆層に比べ、低速摺動時に良好な摺動性を有するとともに、保存時に医療用部材(例えば、シリンジ用外筒)と摺動性被覆層保有医療用具(例えば、ガスケット)間の貼り付きが生じることがなく、使用時に滑らかな初動が可能となる。
本発明の摺動性被膜保有医療用具1は、医療用部材内面もしくは体腔内面に接触して移動する医療用具であり、医療用部材もしくは体腔と接触する部分に設けられた摺動性被覆層3を備える。摺動性被覆層3は、固体微粒子を含まず、ビニル基を有するシリコーンとケイ素原子と結合した水素基を有するシリコーンとの付加反応物であるシリコーン系樹脂を含有する組成物からなる。
そして、被覆層3を形成する組成物は、スズ系化合物を含有しないものであることが好ましい。また、被覆層3を形成する組成物は、白金族金属系触媒を含有するものであることが好ましい。そして、被覆層3を形成する組成物のシリコーン系樹脂は、後述するように、ビニル基を有するシリコーンのビニル基と、ケイ素原子と結合した水素基を有するシリコーンの水素基と結合しているケイ素とのヒドロシリル化により結合したシリコーン系樹脂である。
本発明の摺動性被膜保有医療用具をシリンジ用ガスケットおよびシリンジに応用した実施例を用いて説明する。
本発明の実施例であるガスケットについて説明する。
図1は、本発明の実施例であるガスケットの正面図である。図2は、図1に示すガスケットの断面図である。図3は、図1に示すガスケットの平面図である。図4は、図1に示すガスケットの底面図である。図5は、図1に示すガスケットを使用するプレフィルドシリンジの断面図である。
この実施例の摺動性被膜保有医療用具は、シリンジ用ガスケット1であり、医療用部材であるシリンジ用外筒11の内部に液密かつ摺動可能に収納されるものである。
本発明の摺動性被膜保有医療用具であるガスケット1は、シリンジの外筒内に摺動可能に接触するガスケットであって、シリンジと接触する部分に設けられた被覆層3を備えており、かつ、被覆層3は、固体微粒子を含まず、ビニル基を有するシリコーンとケイ素原子と結合した水素基を有するシリコーンとの付加反応物であるシリコーン系樹脂を含有する組成物により形成されている。
そして、この実施例のガスケットでは、被覆層は、上述した組成物により形成されているので、微粒子を含む被覆層に比べ、低速摺動時に良好な摺動性を有するとともに、保存時にシリンジとガスケットの貼り付きを起こすこともないため、使用時に滑らかな初動が可能となり、急激な注入が避けられ、一定速度での注入が可能となる。
また、血管確保の確認のために行われる事の多い吸引操作を行った場合でも、微粒子が入っている被覆層を有するガスケットでは、その微粒子の離脱の可能性が否定できないが、微粒子が無くなることにより薬液中に浮遊するリスクが皆無となるメリットを有している。
この実施例のガスケット1は、シリンジ用ガスケット1であり、シリンジ用外筒11の内部に液密かつ摺動可能に収納されるものである。また、ガスケット1は、外筒11と接触する部分に設けられた被覆層3を備えており、かつ、被覆層3は、後述する特定のシリコーン系樹脂を含有している。このガスケット1は、ガスケット本体(言い換えれば、コア部)2と、少なくともコア部2の外面であって外筒内面と接触する部分に設けられた被覆層3とを備えている。なお、コア部2の外面全体に被覆層3を設けてもよい。
環状リブ7a,7bは、シリンジ用外筒11の内径より若干大きく作製されているため、外筒11内で圧縮変形するものとなっている。また、実施例において、環状リブは、2つ設けられているが、1つあるいは3つ以上設けられていてもよい。
被覆層3は、コア部2を構成している前記弾性材料よりも、摩擦係数の低い材料で構成される樹脂で構成されている。被覆層3の樹脂はシリコーン系樹脂であり、シリコーン系樹脂を有機溶剤で溶解した溶剤系のコーティング液、および水に乳化、分散した水系コーティング液のいずれも適用できるが、溶剤系はガスケット材料への影響、残留溶剤の存在が懸念されるため、薬液収納容器としての適性が得られ易い水系コーティング液のものが好ましい。
なお、本発明のガスケットに形成された被覆層3では、「固体微粒子」を含まないものとなっている。ここでいう「固体微粒子」とは、被覆層3を形成した場合にその外表面の粗度に影響を与える程度の大きさを有する粒子をいい、具体的には被覆層3の厚みに対して10%より大きい粒径を有するものをいう。
以上のように被覆層3を有することにより、本発明のガスケット1は、摺動面に潤滑剤を付与することなく安定した摺動性を有するとともに、薬剤収納空間内の密封性を維持することができる。そして、被覆層(言い換えれば、被膜層を有するガスケット)は、初期摺動抵抗値が動的摺動抵抗値の最高値以下であることが好ましい。このようなものであれば、良好な初期摺動が開始できかつ、過剰な初期移動を起こすこともない。
硬化方法としては、常温放置でもよいが、加熱硬化が好ましい。加熱硬化させる方法としては、ガスケット基材を変質、あるいは変形させない方法であれば特に限定されるものではないが、熱風乾燥、赤外線を使用した乾燥炉などが挙げられる。あるいは減圧乾燥機を用いる方法など従来公知の方法で行うこともできる。形成される被覆層の厚さは、1〜30μm程度で良く、好ましくは3〜10μmである。このような被膜層を形成するにあたっては、混合液の濃度、あるいは浸漬手法、噴霧手法を適当に制御することで、容易に形成可能である。
成分1は2種類(成分1a、成分1b)の組み合わせである。成分1aは、被覆層3のシリコーンの主成分を含有するポリシロキサンのエマルジョンであり、そのポリシロキサンは一分子中に少なくとも2個のビニル基を有するポリシロキサンである。本エマルジョンの調製方法は大きく2つ挙げられる。一つは、環状シロキサンを使用した乳化重合により一分子中に少なくとも2個のビニル基を有するポリジメチルシロキサンのエマルジョンを調製する方法である(以下、「乳化重合法」と称す)。もう一つは、一分子中に少なくとも2個のビニル基を有するポリシロキサンを水へ分散、乳化させてエマルジョンを調製する方法である(以下、「分散乳化法」と称す)。
また、上記の3種類の有効成分を配合してコーティング液を調製する段階で、コーティング液を均一に乳化、懸濁、分散させておくために、界面活性剤や、アルコール等の添加剤を用いてもよい。
また、非イオン(ノニオン)界面活性剤を用いてもよい。非イオン(ノニオン)界面活性剤としては、どのようなものでもよいが、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン誘導体、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミドなどが使用できる。
具体的には、シリンジ10は、図5に示すように、先端部に注射針取付部15が設けられ後端部にフランジ16が対向して設けられたシリンジ用外筒11と、シリンジ用外筒11の内面12を液密かつ気密に摺動可能なシリンジ用ガスケット1と、シリンジ用ガスケット1に取り付けられもしくは取り付け可能なプランジャー17と、シリンジ用外筒11の注射針取付部15を封止する封止部材18と、封止部材18と外筒内面12とシリンジ用ガスケット1との間に形成された薬剤26を収納する薬剤収納部19からなる。なお、注射針取付部15には、封止部材18ではなく、注射針が取り付けられていてもよい。また、封止部材としては、図5に示すように、両頭針を直接挿通可能な刺通部を有するタイプであっても良いし、封止部材を外すことではじめて薬剤の排出が可能になるタイプであっても良い。また、ガスケット1は、上述した被腹層3を備えている。そして、このシリンジ10では、外筒11内でのガスケット1の低速摺動時(100mm/min)における動的摺動抵抗値が20N以下であることが好ましい。このような低動的摺動抵抗値は、ガスケット1が上述した被覆層3を有することにより得ることができる。特に、外筒11内でのガスケット1の低速摺動時(100mm/min)における動的摺動抵抗値は、1N〜20Nであることが好ましい。
シリンジ用外筒11は、先端部に注射針取付部15が設けられ、後端部にフランジ部16が設けられた円筒状部材である。シリンジ用外筒11は、透明もしくは半透明材料により形成されている。好ましくは、酸素透過性、水蒸気透過性の少ない材料により形成されている。また、形成材料としては、110℃以上のガラス転移点、または融点を有する材料であることが好ましい。
外筒11の形成材料としては、汎用される各種硬質プラスチック材料、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ(4−メチルペンテン−1)、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、非晶性ポリアレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、非晶性ポリエーテルイミドなどが好ましく、特に、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルペンテン−1)、環状ポリオレフィン、ポリエチレンナフタレート、及び非晶性ポリエーテルイミドが透明性、熱滅菌耐性の点で好ましい。これらの樹脂は外筒に限らず、薬剤を収納可能な容器に共通して使用可能なものである。さらに、ガラスを形成材料として用いてもよい。
また、図5に示すようにプランジャー17は、断面十字状の軸方向に延びる本体部20と、プランジャー取付部4と螺合するプランジャー17の先端部に設けられたプランジャー側螺合部21と、プランジャー側螺合部21と本体部20との間に設けられた円盤状のガスケット支持部と、本体部20の後端に設けられた押圧用の円盤部22と、本体部20の途中に設けられた円盤状のリブを備えている。
そして、プランジャー17および封止部材18の構成材料としては、ポリ塩化ビニル、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、アクリル樹脂等の硬質もしくは半硬質樹脂を用いることが好ましい。
また、本発明の医療用具は、体腔内面に接触して移動する医療用具であってもよい。このような体腔内面に接触して移動する医療用具としては、カテーテル、ガイドワイヤー、血管拡張用器具などがある。また、本発明の医療用具は、医療用部材内面および体腔内面に接触して移動する医療用具であってもよい。このような体腔内面に接触して移動する医療用具としては、医療用部材であるカテーテル(例えば、ガイディングカテーテル)内に挿入されるとともに、先端部が体腔の目的部位に誘導されるカテーテル、ガイドワイヤー、血管拡張用器具などがある。
図6は、本発明のガイドワイヤーの一実施例の断面図である。
この実施例のガイドワイヤー50は、内芯52と、内芯52を被包する摺動性被膜53を備えている。そして、摺動性被膜53は、シリコーンゴムにより構成されているとともに、カーボンナノチューブおよびシリコーン系樹脂微粒子を含有している。
特に、図6に示す実施例のガイドワイヤーは、剛性の高い本体部52aと、本体部52aより細径であり剛性の低い先端部52bとが一体に形成された内芯52と、内芯52の先端に設けられた高X線造影部54と、高X線造影部54を設けた内芯52の全体を被包する摺動性被膜53を備えている。また、摺動性被膜3は、微粒子を含有することにより、粗面化した表面となっている。
内芯52としては、超弾性金属、ステンレス鋼などが好ましい。超弾性金属としては、49〜58原子%NiのTiNi合金、38.5〜41.5重量%ZnのCu−Zn合金、1〜10重量%XのCu−Zn−X合金(X=Be,Si,Sn,Al,Ga)、36〜38原子%AlのNi−Al合金等の超弾性金属体が好適に使用される。特に好ましくは、上記のTiNi合金である。
また、内芯52の先端部52bの外径は、0.03〜0.15mm、より好ましくは、0.05〜0.10mmであり、長さは10〜300mm、好ましくは50〜150mmであり、曲げ負荷は、0.1〜10g、好ましくは0.3〜6.0g、復元負荷は、0.1〜10g、好ましくは0.3〜6.0gである。
この高X線造影部54は、内芯52の先端に機械的な圧着、または、内芯52の先端にメッキあるいは蒸着された金属とハンダ付されることにより固定されている。
そして、高X線造影部54は、外径が0.20〜0.90mm、好ましくは0.25〜0.40mm、内径が0.04〜0.16mm、好ましくは0.06〜0.11mm、長さが1.00〜10.00mm、好ましくは1.5〜4.0mmである。
また、高X線造影部54としては、例えば、上述のような高X線造影性を有する金属により形成された細線がコイル状に巻かれたものであってもよい。この細線としては、線径が0.02〜0.10mmのものが好適に使用される。また、巻き着けられる長さは、内芯の先端より1.0〜10.0mm、好ましくは1.5〜4.0mmである。
摺動性被膜53としては、上述した実施例のガスケットにおいて説明した摺動性被膜3と同じものが好適に使用できる。
摺動性被膜の外径は、0.25〜1.04mm、好ましくは0.30〜0.64mm、内芯52の本体部52a上での肉厚は、0.25〜1.04mm、好ましくは0.30〜0.64mmである。
なお、この実施例のガイドワイヤー50では、内芯52の全体が摺動性被膜53により被覆されているが、このようなものに限定されるものではない。摺動性被膜53は、内芯52の一部のみを被覆するもの、例えば、内芯52の先端部のみを被覆するもの、内芯52の本体部のみを被覆するものであってもよい。
コーティング液は、実施例1〜8、比較例1の通りに調製した。
実施例1)
(成分1a)
オクタメチルシクロテトラシロキサン125g、1,3,5,7-テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン5g、ドデシルベンゼンスルホン酸2.5g、水22.5gを300mLトールビーカーに量り採り、ホモミキサーを用いて回転数6,000rpmで10分間撹拌し、続いて回転数2,000rpmにて水100gを徐々に加えて粗乳化を行った。減圧脱泡後、圧力式ホモジナイザーを用いて圧力300kg/cm2の条件で2回通して精乳化を行った。精乳化品を70℃で6時間反応させ、続いて15℃で12時間保持し乳化重合を行い、10%炭酸ナトリウム水溶液を使用してpH6.0に調整し重合を完了させた。重合にて得られたポリシロキサンの分子量は33万、ビニル基の含有量は4.5wt%であった。得られた調製品を成分1aとして使用した。
(成分1b)
両末端がトリメチルシリル基であるポリメチルハイドロジェンシロキサン(ケイ素原子に結合する水素基含有量100mol%、粘度30mPa・s、分子量2,100)75g、ドデシルベンゼンスルホン酸1.5g、水73.5gを300mLトールビーカーに量り採り、ホモミキサーを用いて回転数6,000rpmで10分間撹拌して粗乳化を行った。減圧脱泡後、圧力式ホモジナイザーを用いて圧力300kg/cm2の条件で2回通して精乳化を行った。得られた調製品を成分1bとして使用した。
(成分2)
白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の両末端がビニル基であるポリジメチルシロキサン溶液(粘度50mPa・s、白金含量3wt%)75g、エチニルシクロヘキサノール7.5g、ドデシルベンゼンスルホン酸1.5g、水73.5gを300mLトールビーカーに量り採り、ホモミキサーを用いて回転数6,000rpmで10分間撹拌して粗乳化を行った。減圧脱泡後、圧力式ホモジナイザーを用いて圧力300kg/cm2の条件で2回通して精乳化を行った。得られた調製品を成分2として使用した。
(成分3)
メチルトリエトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、およびγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを成分3として使用した。
(コーティング液)
成分1aを100g、成分1bを3.4g、成分2を0.17g、成分3のメチルトリエトキシシランを1g、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシランを1g、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを5g、水を200gとを混合してコーティング液を調製した。
(成分1a)
実施例1での1,3,5,7-テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン5gを、1,3,5,7-テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン10gに変更した以外は実施例1と同じに行い、得られた調製品を成分1aとして使用した。なお、重合にて得られたポリシロキサンの分子量は31万、ビニル基の含有量は5.4wt%であった。
(成分1b)
実施例1と同じにして得られた調製品を成分1bとして使用した。
(成分2)
実施例1と同じにして得られた調製品を成分2として使用した。
(成分3)
フェニルトリエトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、およびγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを成分3として使用した。
(コーティング液)
成分1aを100g、成分1bを6.8g、成分2を0.34g、成分3のフェニルトリエトキシシランを1g、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシランを5g、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを5g、水を200gとを混合してコーティング液を調製した。
(成分1a)
実施例1での1,3,5,7-テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン5gを、1,3,5,7-テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン1gに変更した以外は実施例1と同じに行い、得られた調製品を成分1aとして使用した。なお、重合にて得られたポリシロキサンの分子量は35万、ビニル基の含有量は3.8wt%であった。
(成分1b)
実施例1と同じにして得られた調製品を成分1bとして使用した。
(成分2)
実施例1と同じにして得られた調製品を成分2として使用した。
(成分3)
フェニルトリエトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、およびγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを成分3として使用した。
(コーティング液)
成分1aを100g、成分1bを0.68g、成分2を0.17g、成分3のフェニルトリエトキシシランを1g、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン5g、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを5g、水を200gとを混合してコーティング液を調製した。
(成分1a)
実施例1と同じにして得られた調製品を成分1aとした。
(成分1b)
実施例1での両末端がトリメチルシリル基であるポリメチルハイドロジェンシロキサン(ケイ素原子に結合する水素基含有量100mol%、粘度30mPa・s、分子量2,100)を、両末端がトリメチルシリル基である、メチルハイドロジェンシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体(ケイ素原子に結合する水素基含有量30mol%、粘度35mPa・s、分子量2,000)に変更した以外は実施例1と同じに行い、得られた調製品を成分1bとして使用した。
(成分2)
実施例1と同じにして得られた調製品を成分2として使用した。
(成分3)
メチルトリエトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、およびγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを成分3として使用した。
(コーティング液)
成分1aを100g、成分1bを11.2g、成分2を0.17g、成分3のメチルトリエトキシシランを1g、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン1g、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを5g、水を200gとを混合してコーティング液を調製した。
(成分1a)
実施例1と同じにして得られた調製品を成分1aとして使用した。
(成分1b)
実施例1と同じにして得られた調製品を成分1bとして使用した。
(成分2)
実施例1と同じにして得られた調製品を成分2として使用した。
(成分3)
無水マレイン酸62gをエタノール200gに溶解させたものにγ-アミノプロピルトリエトキシシラン140gを室温で滴下し、続いて80℃でエタノール還流下にて15時間反応させた。得られた反応物、メチルトリエトキシシランおよびγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを成分3として使用した。
(コーティング液)
成分1aを100g、成分1bを3.4g、成分2を0.17g、成分3のメチルトリエトキシシランを1g、反応物を5g、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを5g、水を200gとを混合してコーティング液を調製した。
(成分1a)
実施例1と同じにして得られた調製品を成分1aとして使用した。
(成分1b)
実施例4と同じにして得られた調製品を成分1bとして使用した。
(成分2)
実施例1と同じにして得られた調製品を成分2として使用した。
(成分3)
実施例5の成分3での反応物、フェニルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを成分3として使用した。
(コーティング液)
成分1aを100g、成分1bを11.2g、成分2を0.17g、成分3のフェニルトリエトキシシランを1g、反応物を5g、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを5g、水を200gとを混合してコーティング液を調製した。
(成分1a)
両末端がビニル基であるポリジメチルシロキサン(ビニル基含有量0.4wt%、粘度500mPa・s、分子量17,200)125g、ドデシルベンゼンスルホン酸2.5g、水122.5gを300mLトールビーカーに量り採り、ホモミキサーを用いて回転数6,000rpmで10分間撹拌して粗乳化を行った。減圧脱泡後、圧力式ホモジナイザーを用いて圧力300kg/cm2の条件で2回通して精乳化を行った。得られた調製品を成分1aとして使用した。
(成分1b)
実施例1と同じにして得られた調製品を成分1bとして使用した。
(成分2)
実施例1と同じにして得られた調製品を成分2として使用した。
(成分3)
メチルトリエトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、およびγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを成分3として使用した。
(コーティング液)
成分1aを100g、成分1bを1g、成分2を0.17g、成分3のメチルトリエトキシシランを1g、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン5g、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを5g、水を200gとを混合してコーティング液を調製した。
(成分1a)
実施例7での両末端がビニル基であるポリジメチルシロキサン(ビニル基含有量0.4wt%、粘度500mPa・s、分子量17,200)を、両末端がビニル基であるポリジメチルシロキサン(ビニル基含有量0.04wt%、粘度10,000mPa・s、分子量62,700)に変更した以外は実施例7と同じに行い、得られた調製品を成分1aとして使用した。
(成分1b)
実施例1と同じにして得られた調製品を成分1bとして使用した。
(成分2)
実施例1と同じにして得られた調製品を成分2として使用した。
(成分3)
実施例5の成分3での反応物、メチルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを成分3として使用した。
(コーティング液)
成分1aを100g、成分1bを0.2g、成分2を0.34g、成分3のメチルトリエトキシシランを1g、反応物を5g、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを5g、水を200gとを混合してコーティング液を調製した。
(成分1a)
オクタメチルシクロテトラシロキサン125g、ドデシルベンゼンスルホン酸2.5g、水22.5gを300mLトールビーカーに量り採り、ホモミキサーを用いて回転数6,000rpmで10分間撹拌し、続いて回転数2,000rpmにて水100gを徐々に加えて粗乳化を行った。減圧脱泡後、圧力式ホモジナイザーを用いて圧力300kg/cm2の条件で2回通して精乳化を行った。精乳化品を70℃で6時間反応させ、続いて15℃で12時間保持し乳化重合を行い、10%炭酸ナトリウム水溶液を使用してpH6.0に調整し重合を完了させた。両末端がシラノール基であるポリシロキサンの分子量は33万であった。得られた調製品を成分1aとして使用した。
(成分1b)
比較例1では成分1bは使用しなかった。
(成分2)
ジオクチルスズジラウレート75g、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルシエチレン12.5g、水162.5gを300mLトールビーカーに量り採り、ホモミキサーを用いて回転数6,000rpmで10分間撹拌して粗乳化を行った。減圧脱泡後、圧力式ホモジナイザーを用いて圧力300kg/cm2の条件で2回通して精乳化を行った。得られた調製品を成分2として使用した。なお、実施例で使用した反応抑制剤は使用しなかった。
(成分3)
メチルトリエトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、およびγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを成分3として使用した。
(コーティング液)
成分1aを100g、成分2を1g、成分3のメチルトリエトキシシランを1g、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシランを1g、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを5g、水を200gとを混合してコーティング液を調製した。
そして、室温、常圧環境下において、上述のように作製したガスケットコア部材を、90℃、30分間加熱処理した後、その中心軸を中心として回転(300rpm)させるとともに、ガスケットの回転する側面側より、実施例1〜8、比較例1のコーティング液をスプレー塗布した後、150℃、30分間乾燥させることによって、本発明のガスケットを作製した。その後、作製したガスケット上の余分な被覆液を洗うために、80℃以上の精製水で、洗浄を実施した。なお、コア部材の表面に形成された被覆層の平均厚さは、約10μmであった。
(実験1:摺動抵抗測定試験)
シリンジ用外筒の形成材料として、ポリプロピレン(日本ポリケム株式会社製)を用いて、射出成形により、図5に示す形状のシリンジ用外筒を作製した。シリンジ用外筒の円筒部分の内径は、29mm、長さは、121mmであった。また、プランジャーの形成材料として、ポリプロピレン(日本ポリケム株式会社製)を用いて、射出成形により、図5に示す形状のプランジャーを作製した。
そして、上記のシリンジ用外筒、実施例1〜8及び比較例1の各ガスケット、上記のプランジャーを組み立て、シリンジを作製した。
各シリンジの摺動抵抗値を、オートグラフ(機種名 EZ−Test、会社名 島津製作所)により測定した。具体的には、シリンジの先端およびプランジャーの後端をオートグラフの測定対象物固定部に固定し、プランジャーを100mm/minの速度で60mm降下させたときの初期摺動抵抗値及び最大摺動抵抗値(N)を計測したところ、表3に示すような結果となった。
表1に示すように、実施例1〜8及び比較例1の各ガスケットを用いたシリンジは、初期摺動抵抗値及び最大摺動抵抗値ともに、同様なものであった。また、初期摺動抵抗値と最大摺動抵抗値との差が少なく、プランジャーを押し始めた際に薬液が設定量以上に飛び出すおそれがほとんどなく、薬液の吐出を安全かつ正確に行うことができる。初期摺動抵抗値と最大摺動抵抗値共に10N以下の良好な結果が得られた。
表2に示すとおり、実施例1〜8のガスケットを用いたシリンジは、比較例1のガスケットと同等の、100mm/minを境にして低い試験速度では摺動抵抗値が減少していることがわかり、薬剤を静脈内注射するのに適した速度における摺動性がより良好であることがわかった。
なお、各試験におけるサンプル数は10とし、表の数値はそれらの平均値である。
そして、上記のシリンジ用外筒、実施例1〜8及び比較例1のガスケット、上記のプランジャーを組み立て、シリンジを作製した。その後、精製水20mLを外筒内へ注入し、上記同様、オートグラフ(機種名 EZ−Test、島津製作所株式会社製)により摺動抵抗値を測定した。具体的には、シリンジの先端およびプランジャーの後端をオートグラフの測定対象物固定部に固定し、プランジャーを20、50、100、500mm/minの速度で45mm降下させたときの最大摺動抵抗値(N)を計測したところ、表3に示すような結果となった。
シリンジ用外筒の形成材料として、ポリプロピレン(日本ポリケム株式会社製)を用いて、射出成形により、図5に示す形状のシリンジ用外筒を作製した。シリンジ用外筒の円筒部分の内径は、29mm、長さは、121mmであった。また、プランジャーの形成材料として、ポリプロピレン(日本ポリケム株式会社製)を用いて、射出成形により、図5に示す形状のプランジャーを作製した。
そして、上記のシリンジ用外筒、実施例1〜8及び比較例1の各ガスケット、上記のプランジャーを組み立て、シリンジを作製した。
滅菌済みのプラスチック製の注射筒であり、そのまま直ちに使用でき、かつ、1回限りの使用で使い捨てる滅菌済み注射筒基準(平成10年12月11日医薬発第1079号医薬安全局長通知)における圧力試験に規定されている試験を実施した。その結果を表1に示した。
なお、試験におけるサンプル数は5とし、全て適合した場合、「適合」とした。
シリンジ用外筒の形成材料として、ポリプロピレン(日本ポリケム株式会社製)を用いて、射出成形により、図5に示す形状のシリンジ用外筒を作製した。シリンジ用外筒の円筒部分の内径は、29mm、長さは、121mmであった。また、プランジャーの形成材料として、ポリプロピレン(日本ポリケム株式会社製)を用いて、射出成形により、図5に示す形状のプランジャーを作製した。
そして、上記のシリンジ用外筒、実施例1〜8及び比較例1の各ガスケット、上記のプランジャーを組み立て、シリンジを作製した。
その後、プラスチック製軟包材ヒートシール部の密封性試験に用いられるエージレス(登録商標)チェッカー(三菱瓦斯化学株式会社製)を用い、密封性試験(シリンジの先端部に封止部材を嵌めて40mLを密封)を実施した。室温で一晩放置し、ガスケット摺動部からの液漏れを目視観察した結果を表1に示した。
なお、試験におけるサンプル数は5とし、全て適合した場合、「適合」とした。
シリンジ用外筒の形成材料として、ポリプロピレン(日本ポリケム株式会社製)を用いて、射出成形により、図5に示す形状のシリンジ用外筒を作製した。シリンジ用外筒の円筒部分の内径は、29mm、長さは、121mmであった。また、プランジャーの形成材料として、ポリプロピレン(日本ポリケム株式会社製)を用いて、射出成形により、図5に示す形状のプランジャーを作製した。
そして、上記のシリンジ用外筒、実施例1及び7、比較例1の各ガスケット、上記のプランジャーを組み立て、シリンジを作製した。その後、40℃、60℃、80℃恒温槽内で各々1日、さらに60℃恒温槽内で10日、20日、30日各々静置した。静置後のサンプルについて、ガスケットのシリンジ用外筒への固着度を評価するために、各シリンジの初期摺動抵抗値を、オートグラフ(機種名 EZ−Test、島津製作所株式会社製)により測定した。具体的には、シリンジの先端およびプランジャーの後端をオートグラフの測定対象物固定部に固定し、プランジャーを100mm/minの速度で60mm降下させたときの初期摺動抵抗値(N)を計測したところ、表4に示すような結果となった。
シリンジ用外筒の形成材料として、ポリプロピレン(日本ポリケム株式会社製)を用いて、射出成形により、図5に示す形状のシリンジ用外筒を作製した。シリンジ用外筒の円筒部分の内径は、29mm、長さは、121mmであった。また、プランジャーの形成材料として、ポリプロピレン(日本ポリケム株式会社製)を用いて、射出成形により、図5に示す形状のプランジャーを作製した。 そして、上記のシリンジ用外筒、実施例1及び7、比較例1の各ガスケット、上記のプランジャーを組み立て、シリンジを作製した。
その後、蒸留水40mLを注射筒内へ注入し、注射筒の先端部に封止部材を嵌めて密封し、オートクレーブ滅菌を行い、プレフィルドシリンジを製造した後、該プレフィルドシリンジを10分間激しく振とう後の精製水中の不溶性微粒子を測定した。結果を表5に示した。
シリンジポンプ(TE−331、テルモ株式会社製)を用い、シリンジの流量精度評価を実施した。シリンジ用外筒の形成材料として、ポリプロピレン(日本ポリケム株式会社製)を用いて、射出成形により、図5に示す形状のシリンジ用外筒を作製した。シリンジ用外筒の円筒部分の内径は、29mm、長さは、121mmであった。また、プランジャーの形成材料として、ポリプロピレン(日本ポリケム株式会社製)を用いて、射出成形により、図5に示す形状のプランジャーを作製した。
そして、上記のシリンジ用外筒、実施例1及び7、比較例1の各ガスケット、上記のプランジャーを組み立て、シリンジを作製した。
その後、精製水40mLを注射筒内へ注入し、注射筒の先端部に封止部材を嵌めて密封し、オートクレーブ滅菌を行った後、各シリンジをシリンジポンプへセットして、5mL/hの流量で精製水を8時間吐出させ、電子天秤を用いて、その重量を30秒間隔で経時的に測定したところ、実施例1及び7、比較例1の各ガスケットは安定した吐出であることが確認された。
(1) 医療用部材内面もしくは体腔内面に接触して移動する医療用具であって、該医療用具は、前記医療用部材もしくは体腔と接触する部分に設けられた摺動性被覆層を備え、該摺動性被覆層は、固体微粒子を含まず、ビニル基を有するシリコーンとケイ素原子と結合した水素基を有するシリコーンとの付加反応物であるシリコーン系樹脂を含有する組成物からなるものである摺動性被覆層保有医療用具。
(2) 前記ビニル基を有するシリコーンは、乳化重合法で調製されたものである上記(1)に記載の摺動性被覆層保有医療用具。
(3) 前記ビニル基を有するシリコーンは、分散乳化法で調製されたものである上記(1)に記載の摺動性被覆層保有医療用具。
(4) 前記組成物は、スズ系化合物を含有しないものである上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の摺動性被覆層保有医療用具。
(5) 前記組成物は、白金族金属系触媒を含有するものである上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の摺動性被覆層保有医療用具。
(6) 前記組成物の前記シリコーン系樹脂は、前記ビニル基を有するシリコーンの前記ビニル基と、前記ケイ素原子と結合した水素基を有するシリコーンの前記水素基と結合しているケイ素とのヒドロシリル化により結合したシリコーン系樹脂である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の摺動性被覆層保有医療用具。
(7) 前記ケイ素原子と結合した水素基を有するシリコーンは、両末端にトリメチルシリル基を有するポリメチルハイドロシロキサンのホモポリマー、あるいはコポリマーである上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の摺動性被覆層保有医療用具。
(8) 前記ケイ素原子と結合した水素基を有するシリコーンは、両末端にケイ素原子と結合した水素基を有するポリジメチルシロキサンのホモポリマー、あるいはコポリマーである上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の摺動性被覆層保有医療用具。
(9) 前記ビニル基を有するシリコーンは、ビニル基を有するシロキサンまたはシランである上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の摺動性被覆層保有医療用具。
(10) 前記組成物は、アルキルアルコキシシランまたはフェニルアルコキシシランを含有し、さらに、グリシドキシアルキルアルコキシシランを含有している上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の摺動性被覆層保有医療用具。
(11) 前記組成物は、ウレイド基またはウレイレン基を有するアルコキシシラン、または/およびアミノ基を有するアルコキシシランとカルボン酸無水物との反応生成物を含有している上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の摺動性被覆層保有医療用具。
(12) 前記シリコーン系樹脂は、熱硬化性型シリコーン系樹脂である上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の摺動性被覆層保有医療用具。
(13) 前記被覆層は、厚さが1〜30μmである上記(1)ないし(12)のいずれかに記載の摺動性被覆層保有医療用具。
(14) 前記被覆層は、初期摺動抵抗値が動的摺動抵抗値の最高値以下である上記(13)に記載の摺動性被覆層保有医療用具。
(15) 前記医療用具は、ガイドワイヤまたはカテーテルである上記(1)ないし(14)のいずれかに記載の摺動性被覆層保有医療用具。
(16) 前記医療用部材は、シリンジ用外筒であり、前記医療用具は、前記シリンジ用外筒内に摺動可能に収納されるシリンジ用ガスケットであり、該ガスケットは、弾性体からなるガスケット本体と、少なくとも前記シリンジ用外筒と接触する部分に設けられた前記摺動性被覆層を備えている上記(1)ないし(14)のいずれかに記載の摺動性被覆層保有医療用具。
(17) 前記医療用部材は、プラスチック製シリンジ外筒であり、前記医療用具は、前記プラスチック製シリンジ外筒用のガスケットである上記(16)に記載の摺動性被覆層保有医療用具。
(18) シリンジ用外筒と、上記(16)または(17)の摺動性被覆層保有医療用具でありかつ前記外筒内に摺動可能に収納されたシリンジ用ガスケットと、前記ガスケットに取り付けられた、あるいは取り付け可能なプランジャーとを有するシリンジ。
(19) 前記シリンジは、薬液が充填されたものである上記(18)に記載のシリンジ。
(20) 前記外筒内での前記ガスケットの低速摺動時(100mm/min)における動的摺動抵抗値が20N以下である上記(18)または(19)に記載のシリンジ。
(21) 前記外筒は、プラスチック製外筒である上記(18)ないし(20)のいずれかに記載のシリンジ。
医療用部材内面もしくは体腔内面に接触して移動する医療用具であって、前記医療用具は、前記医療用部材もしくは体腔と接触する部分に設けられた摺動性被覆層を備え、前記摺動性被覆層は、固体微粒子を含まず、ビニル基を有するシリコーンとケイ素原子と結合した水素基を有するシリコーンとの付加反応物であるシリコーン系樹脂を含有する組成物からなるものであり、かつ、スズ系化合物を含有しないものであり、前記ビニル基を有するシリコーンは、一分子中に少なくとも2個のビニル基を有するシロキサンと環状シロキサンとの重合物であり、一分子中に多数のビニル基を有するビニル基保有ポリシロキサンであり、前記ケイ素原子と結合した水素基を有するシリコーンは、ケイ素原子に結合した水素基を一分子中に少なくとも2個有する水素基保有ポリシロキサンであり、前記組成物は、アルキルアルコキシシラン、フェニルアルコキシシランまたはグリシドキシアルキルアルコキシシランを含有しており、前記付加反応物であるシリコーン系樹脂は、前記ビニル基を有するシリコーンの前記ビニル基と、前記ケイ素原子と結合した水素基を有するシリコーンの前記水素基と結合しているケイ素とのヒドロシリル化による結合を有している摺動性被覆層保有医療用具。
また、上記目的を達成するシリンジは、下記のものである。
シリンジ用外筒と、上記の摺動性被覆層保有医療用具でありかつ前記外筒内に摺動可能に収納されたシリンジ用ガスケットと、前記ガスケットに取り付けられた、あるいは取り付け可能なプランジャーとを有するシリンジ。
特に、本発明の摺動性被覆層保有医療用具の摺動性被覆層は、ビニル基を有するシリコーンとケイ素原子と結合した水素基を有するシリコーンとの付加反応物をシリコーン系樹脂として用い、被覆層形成時の硬化反応時に触媒として有機スズ化合物を使用しないものであるため、将来有機スズ化合物の使用が規制された場合においても、市場に安定して供給することができる。
さらに、本発明の摺動性被覆層保有医療用具の摺動性被覆層は、微粒子を含む被覆層に比べ、低速摺動時に良好な摺動性を有するとともに、保存時に医療用部材(例えば、シリンジ用外筒)と摺動性被覆層保有医療用具(例えば、ガスケット)間の貼り付きが生じることがなく、使用時に滑らかな初動が可能となる。
成分1は2種類(成分1a、成分1b)の組み合わせである。成分1aは、被覆層3のシリコーンの主成分を含有するポリシロキサンのエマルジョンであり、そのポリシロキサンは一分子中に少なくとも2個のビニル基を有するポリシロキサン(ビニル基保有ポリシロキサン)である。本エマルジョンの調製方法は大きく2つ挙げられる。一つは、環状シロキサンを使用した乳化重合により一分子中に少なくとも2個のビニル基を有するポリジメチルシロキサンのエマルジョンを調製する方法である(以下、「乳化重合法」と称す)。もう一つは、一分子中に少なくとも2個のビニル基を有するポリシロキサンを水へ分散、乳化させてエマルジョンを調製する方法である(以下、「分散乳化法」と称す)。
(1) 医療用部材内面もしくは体腔内面に接触して移動する医療用具であって、前記医療用具は、前記医療用部材もしくは体腔と接触する部分に設けられた摺動性被覆層を備え、前記摺動性被覆層は、固体微粒子を含まず、ビニル基を有するシリコーンとケイ素原子と結合した水素基を有するシリコーンとの付加反応物であるシリコーン系樹脂を含有する組成物からなるものであり、かつ、スズ系化合物を含有しないものであり、前記ビニル基を有するシリコーンは、一分子中に少なくとも2個のビニル基を有するシロキサンと環状シロキサンとの重合物であり、一分子中に多数のビニル基を有するビニル基保有ポリシロキサンであり、前記ケイ素原子と結合した水素基を有するシリコーンは、ケイ素原子に結合した水素基を一分子中に少なくとも2個有する水素基保有ポリシロキサンであり、前記組成物は、アルキルアルコキシシラン、フェニルアルコキシシランまたはグリシドキシアルキルアルコキシシランを含有しており、前記付加反応物であるシリコーン系樹脂は、前記ビニル基を有するシリコーンの前記ビニル基と、前記ケイ素原子と結合した水素基を有するシリコーンの前記水素基と結合しているケイ素とのヒドロシリル化による結合を有している摺動性被覆層保有医療用具。
(2) 前記ビニル基保有ポリシロキサンは、乳化重合法で調製されたものである上記(1)に記載の摺動性被覆層保有医療用具。
(3) 前記ビニル基保有ポリシロキサンは、分散乳化法で調製されたものである上記(1)に記載の摺動性被覆層保有医療用具。
(4) 前記摺動性被覆層は、前記ビニル基保有ポリシロキサン、前記水素基保有ポリシロキサンおよび前記アルコキシシランの水系コーティング液の硬化物である上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の摺動性被覆層保有医療用具。
(5) 前記組成物は、白金族金属系触媒を含有するものである上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の摺動性被覆層保有医療用具。
(6) 前記水素基保有ポリシロキサンは、両末端にトリメチルシリル基を有するポリメチルハイドロシロキサンのホモポリマー、あるいはコポリマーである上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の摺動性被覆層保有医療用具。
(7) 前記水素基保有ポリシロキサンは、両末端にケイ素原子と結合した水素基を有するポリジメチルシロキサンのホモポリマー、あるいはコポリマーである上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の摺動性被覆層保有医療用具。
(8) 前記組成物は、ウレイド基またはウレイレン基を有するアルコキシシラン、または/およびアミノ基を有するアルコキシシランとカルボン酸無水物との反応生成物を含有している上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の摺動性被覆層保有医療用具。
(9) 前記シリコーン系樹脂は、熱硬化性型シリコーン系樹脂である上記(1)ないし(8)いずれかに記載の摺動性被覆層保有医療用具。
(10) 前記被覆層は、厚さが1〜30μmである上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の摺動性被覆層保有医療用具。
(11) 前記被覆層は、初期摺動抵抗値が動的摺動抵抗値の最高値以下である上記(10)に記載の摺動性被覆層保有医療用具。
(12) 前記医療用具は、ガイドワイヤまたはカテーテルである上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の摺動性被覆層保有医療用具。
(13) 前記医療用部材は、シリンジ用外筒であり、前記医療用具は、前記シリンジ用外筒内に摺動可能に収納されるシリンジ用ガスケットであり、該ガスケットは、弾性体からなるガスケット本体と、少なくとも前記シリンジ用外筒と接触する部分に設けられた前記摺動性被覆層を備えている上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の摺動性被覆層保有医療用具。
(14) 前記医療用部材は、プラスチック製シリンジ外筒であり、前記医療用具は、前記プラスチック製シリンジ外筒用のガスケットである上記(13)に記載の摺動性被覆層保有医療用具。
(15) シリンジ用外筒と、上記(13)または(14)の摺動性被覆層保有医療用具でありかつ前記外筒内に摺動可能に収納されたシリンジ用ガスケットと、前記ガスケットに取り付けられた、あるいは取り付け可能なプランジャーとを有することを特徴とするシリンジ。
(16) 前記シリンジは、薬液が充填されたものである上記(15)に記載のシリンジ。
(17) 前記外筒内での前記ガスケットの低速摺動時(100mm/min)における動的摺動抵抗値が20N以下である上記(15)または(16)に記載のシリンジ。
(18) 前記外筒は、プラスチック製外筒である上記(15)ないし(17)のいずれかに記載のシリンジ。
Claims (21)
- 医療用部材内面もしくは体腔内面に接触して移動する医療用具であって、該医療用具は、前記医療用部材もしくは体腔と接触する部分に設けられた摺動性被覆層を備え、該摺動性被覆層は、固体微粒子を含まず、ビニル基を有するシリコーンとケイ素原子と結合した水素基を有するシリコーンとの付加反応物であるシリコーン系樹脂を含有する組成物からなるものであることを特徴とする摺動性被覆層保有医療用具。
- 前記ビニル基を有するシリコーンは、乳化重合法で調製されたものである請求項1に記載の摺動性被覆層保有医療用具。
- 前記ビニル基を有するシリコーンは、分散乳化法で調製されたものである請求項1に記載の摺動性被覆層保有医療用具。
- 前記組成物は、スズ系化合物を含有しないものである請求項1ないし3のいずれかに記載の摺動性被覆層保有医療用具。
- 前記組成物は、白金族金属系触媒を含有するものである請求項1ないし4のいずれかに記載の摺動性被覆層保有医療用具。
- 前記組成物の前記シリコーン系樹脂は、前記ビニル基を有するシリコーンの前記ビニル基と、前記ケイ素原子と結合した水素基を有するシリコーンの前記水素基と結合しているケイ素とのヒドロシリル化により結合したシリコーン系樹脂である請求項1ないし5のいずれかに記載の摺動性被覆層保有医療用具。
- 前記ケイ素原子と結合した水素基を有するシリコーンは、両末端にトリメチルシリル基を有するポリメチルハイドロシロキサンのホモポリマー、あるいはコポリマーである請求項1ないし6のいずれかに記載の摺動性被覆層保有医療用具。
- 前記ケイ素原子と結合した水素基を有するシリコーンは、両末端にケイ素原子と結合した水素基を有するポリジメチルシロキサンのホモポリマー、あるいはコポリマーである請求項1ないし8のいずれかに記載の摺動性被覆層保有医療用具。
- 前記ビニル基を有するシリコーンは、ビニル基を有するシロキサンまたはシランである請求項1ないし8のいずれかに記載の摺動性被覆層保有医療用具。
- 前記組成物は、アルキルアルコキシシランまたはフェニルアルコキシシランを含有し、さらに、グリシドキシアルキルアルコキシシランを含有している請求項1ないし9のいずれかに記載の摺動性被覆層保有医療用具。
- 前記組成物は、ウレイド基またはウレイレン基を有するアルコキシシラン、または/およびアミノ基を有するアルコキシシランとカルボン酸無水物との反応生成物を含有している請求項1ないし10のいずれかに記載の摺動性被覆層保有医療用具。
- 前記シリコーン系樹脂は、熱硬化性型シリコーン系樹脂である請求項1ないし11のいずれかに記載の摺動性被覆層保有医療用具。
- 前記被覆層は、厚さが1〜30μmである請求項1ないし12のいずれかに記載の摺動性被覆層保有医療用具。
- 前記被覆層は、初期摺動抵抗値が動的摺動抵抗値の最高値以下である請求項13に記載の摺動性被覆層保有医療用具。
- 前記医療用具は、ガイドワイヤまたはカテーテルである請求項1ないし14のいずれかに記載の摺動性被覆層保有医療用具。
- 前記医療用部材は、シリンジ用外筒であり、前記医療用具は、前記シリンジ用外筒内に摺動可能に収納されるシリンジ用ガスケットであり、該ガスケットは、弾性体からなるガスケット本体と、少なくとも前記シリンジ用外筒と接触する部分に設けられた前記摺動性被覆層を備えている請求項1ないし14のいずれかに記載の摺動性被覆層保有医療用具。
- 前記医療用部材は、プラスチック製シリンジ外筒であり、前記医療用具は、前記プラスチック製シリンジ外筒用のガスケットである請求項16に記載の摺動性被覆層保有医療用具。
- シリンジ用外筒と、請求項16または17の摺動性被覆層保有医療用具でありかつ前記外筒内に摺動可能に収納されたシリンジ用ガスケットと、前記ガスケットに取り付けられた、あるいは取り付け可能なプランジャーとを有することを特徴とするシリンジ。
- 前記シリンジは、薬液が充填されたものである請求項18に記載のシリンジ。
- 前記外筒内での前記ガスケットの低速摺動時(100mm/min)における動的摺動抵抗値が20N以下である請求項18または19に記載のシリンジ。
- 前記外筒は、プラスチック製外筒である請求項18ないし20のいずれかに記載のシリンジ。
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