JP2016149201A - リン酸鉄リチウム正極活物質の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
更に、資源的に豊富な鉄・リン等から安価に製造できるため、有力な正極材料として期待されている。
乾式法では、特許文献1に示されるように、固体(粉体)の原料を混合、粉砕処理した焼成前駆体を焼成してリン酸鉄リチウム正極活物質を製造する。
また、乾式法では、焼成前駆体の状態では3つの原料が混合されただけであり、反応はほとんど進んでいない。前記焼成前駆体を焼成する工程(以下、焼成工程と言う)において熱が加えられることにより、3つの原料が反応してリン酸鉄リチウム正極活物質が生成する。
本態様によれば、前記粉砕工程後の原料混合物に水(H2O)を加えて焼成前駆体を造粒するので、かさ密度の高い焼成前駆体を安定して得ることができる。以って、より高い生産性で安定したリン酸鉄リチウム正極活物質の製造を行うことができる。
このことにより、後段の焼成工程において反応を完結させるに当たり、焼成時間が短くて済む。尚、前記反応の具体的な反応式を示すと、以下の(1)式および(2)式のようになる
したがって、前記造粒工程において加えた水を乾燥等により除去する必要がなく、製造工程を少なくして製造時間を短縮できるとともに、乾燥等に必要な設備にかかるコストやエネルギーを抑えることができる。
本態様によれば、焼成前駆体の造粒粒子径が10mm以下であることにより、焼成工程において焼成前駆体の中心部にまで熱が確実に伝わり、より効果的に反応を進行させることができる。
以下において、本発明に係るリン酸鉄リチウム正極活物質の製造方法の概要について説明する。本発明に係るリン酸鉄リチウム正極活物質は、一般式LiFePO4で表される物質である。
原料の炭酸リチウムとリン酸二水素アンモニウムとシュウ酸鉄(II)・二水和物(以下、単にシュウ酸鉄と称する場合がある)を混合し、粉砕して原料混合物を得る。炭酸リチウムとリン酸二水素アンモニウムとシュウ酸鉄は、リチウム、鉄、リンの化学量論比が1:1:1となるように混合される。前記原料の混合は、例えばプラネタリーミキサー等の公知の混合装置を用いて行うことができる。また粉砕は、ボールミル等の公知の粉砕機を用いて行うことができる。
前記粉砕工程において粉砕された粉体の前記原料混合物に水(H2O)を加え、粒状に纏めて造粒して、焼成前駆体を形成する。
また、粒径の揃った焼成前駆体を形成することができるので、後段の焼成工程時に均一な焼成を行うことができる。均一な焼成が可能であることにより、反応が均一に進行するので、生成物であるリン酸鉄リチウム正極活物質の品質を安定させることができる。
焼成工程は、前記造粒工程によって得た焼成前駆体を焼成してLiFePO4を生成する工程である。本説明では、以下の(3-1)〜(3-4)の工程によって行う焼成工程について説明する。
前記造粒工程によって得た焼成前駆体を、焼成炉等の焼成装置において焼成する。
焼成温度は、室温から300℃以上450℃以下までの温度に昇温することが好ましく、360℃以上450℃以下までの温度であることがより好ましい。焼成時間は、数時間(例えば1時間〜8時間程度)である。
炭素前駆体添加工程では、前記焼成物解砕工程の焼成物(以下、一次焼成物という)に対して炭素前駆体を添加する。炭素前駆体を添加して後述する二段目焼成工程を行うことにより、リン酸鉄リチウムの表面に、導電性炭素を析出させることができる。表面に導電性炭素を析出させた電極材料は、炭素析出のない場合よりもさらに高い充放電特性を示すことが可能となる。
前記炭素前駆体としては、クエン酸等の有機酸の他、石炭ピッチ等のビチューメン類や糖類を添加することができる。
焼成物減容化工程では、炭素前駆体添加工程の後の一次焼成物を粉砕して減容化する。
粉砕は、例えば、ターボミルかジェットミル等の設備用いて行うことができる。粉砕後のメディアン径が100μm以下であることが好ましく、より好ましくは50μm以下である。
前記焼成物減容化工程後に、焼成炉等により室温から600℃以上800℃以下(より好ましくは、650℃以上780℃以下)までの温度に昇温して焼成を行う。尚、このときの「室温」とは、前記炭素前駆体添加工程の後の室温である。炉内を昇温後、数時間(例えば1時間〜8時間程度)焼成する。
二段目焼成工程を行うことにより、表面に導電性炭素を有するリン酸鉄リチウム正極活物質としての生成物が得られる。
前記粉砕工程後の原料混合物に対し、水(H2O)を加えて造粒し、焼成前駆体を得るので、かさ密度の高い焼成前駆体を安定して得ることができる。かさ密度が高いと、一度に多くの焼成前駆体を焼成炉に仕込むことが可能となり、以って、生産性を高めることができる。
このことにより、焼成工程において反応を完結させる際に、焼成時間が短くて済む。
したがって、造粒工程において加えた水を除去することなく焼成工程を行うことができ、製造時間を短縮することができる。また、乾燥等に必要な設備にかかるコストやエネルギーも抑えることができる。
リン酸鉄リチウム正極活物質を以下の手順で製造し、製造した活物質を用いてリチウムイオン二次電池を作成し、その電池特性を調べた(実施例1)。比較例として、従来法である乾式法(比較例1)と湿式法(比較例2)によりリン酸鉄リチウム正極活物質を製造した。
原料として、炭酸リチウム、73.8909gとリン酸二水素アンモニウム、115.0257gと、シュウ酸鉄(II)・二水和物、179.8946gを計量し、粉砕機を用いて混合、粉砕し、粒度分布がD50≦15μmの原料混合物を得た(粉砕工程)。粉砕した前記原料混合物を造粒機に入れ、20wt%の水を加えながら造粒し、焼成前駆体を得た(造粒工程)。焼成前駆体の造粒粒子径は10mmであった。
造粒した焼成前駆体に対し、一段目焼成工程(焼成温度:400℃、保持時間:4時間)を行った後、一段目焼成物に炭素源としての石炭ピッチを3.5wt%添加し、その混合物を解砕機により解砕し、二段目焼成工程(焼成温度:760℃、保持時間:6時間)を行い、リン酸鉄リチウム正極活物質としての生成物を得た(焼成工程)。
原料として、炭酸リチウム、73.8909gとリン酸二水素アンモニウム、115.0257gと、シュウ酸鉄(II)・二水和物、179.8946gを計量し、粉砕機を用いて混合、粉砕したものを焼成前駆体とした。この焼成前駆体に対し、実施例1と同様の焼成工程に供した。
原料として、炭酸リチウム、73.8909gとリン酸二水素アンモニウム、115.0257gと、シュウ酸鉄(II)・二水和物、179.8946gを計量し、前記原料を有機溶媒に分散してビーズミルによる混合粉砕処理を行い、スラリー化した。得られたスラリーに対して溶媒蒸発工程を行い、前記有機溶媒を除去したものを焼成前駆体とした。
この焼成前駆体に対し、実施例1と同様の焼成工程に供した。
セルタイプ:CR2032
正極電極組成:LFP:AB:PVdF=91:4:5
正極担持量:16 mg/cm2
負極:Li−Metal
電解液:1M LiPF6 in EC/EMC
温度:25℃
充電条件:0.1C(CC−CV):4.3V
1C(CC−CV):4.0V
放電条件:0.1, 1C(CC), 2.0V
尚、LFP=リン酸鉄リチウム、AB=アセチレンブラック、PVdF=ポリフッ化ビニリデン、LiPF6=六フッ化リン酸リチウム、EC=エチレンカーボネート、EMC=エチルメチルカーボネートである。
また、表1に示すように、比較例1(乾式法)は、実施例1よりも焼成前駆体を得るまでの時間は短いが、実施例1と同様の焼成条件では、十分な電池容量の二次電池を作成することはできなかった。
Claims (5)
- 一般式LiFePO4で表されるリン酸鉄リチウム正極活物質の製造方法であって、
炭酸リチウム(Li2CO3)とリン酸二水素アンモニウム(NH4H2PO4)とシュウ酸鉄(II)・二水和物(FeC2O4・2H2O)を混合し、粉砕する粉砕工程と、
前記粉砕工程後の原料混合物に水(H2O)を加えて造粒して焼成前駆体を得る造粒工程と、
造粒された前記焼成前駆体を焼成してリン酸鉄リチウムを生成する焼成工程と、を有することを特徴とする、リン酸鉄リチウム正極活物質の製造方法。 - 請求項1に記載のリン酸鉄リチウム正極活物質の製造方法において、
前記造粒工程における前記水の添加量は、前記原料混合物に対して25wt%以下であることを特徴とする、リン酸鉄リチウム正極活物質の製造方法。 - 請求項1または請求項2に記載のリン酸鉄リチウム正極活物質の製造方法において、
前記原料混合物の粒度分布がD50≦15μmであることを特徴とする、リン酸鉄リチウム正極活物質の製造方法。 - 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のリン酸鉄リチウム正極活物質の製造方法において、
前記造粒工程において造粒される焼成前駆体の造粒粒子径が10mm以下であることを特徴とする、リン酸鉄リチウム正極活物質の製造方法。 - 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のリン酸鉄リチウム正極活物質の製造方法において、
前記焼成工程は、室温から360℃以上450℃以下までの温度での焼成を含むことを特徴とする、リン酸鉄リチウム正極活物質の製造方法。
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