JP2016144416A - 細胞死誘導ベクター及びそれを有する部位特異的細胞死誘導カイコ系統 - Google Patents

細胞死誘導ベクター及びそれを有する部位特異的細胞死誘導カイコ系統 Download PDF

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Abstract

【課題】カイコをはじめとするチョウ目昆虫において細胞死誘導系の確立のために、細胞又は組織特異的エフェクター遺伝子を開発し、提供する。【解決手段】部位特異的プロモーター、及びそのプロモーターによる直接的又は間接的な発現制御を受ける哺乳動物由来のプロアポトーシス遺伝子等をチョウ目昆虫細胞内で発現可能な状態で含む、細胞死誘導ベクターを提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、チョウ目昆虫の任意の細胞又は組織で細胞死を誘導することのできる細胞死誘導ベクター及びそれを用いた部位特異的細胞死誘導カイコ系統に関する。
アポトーシスは、プログラム細胞死(PCD:programmed cell death)の一形態であり、器官形成等の発生や恒常性の維持、損傷した細胞や不要な細胞を除去する機構である。哺乳動物のアポトーシスは、カスパーゼと呼ばれるプロテアーゼ群の活性化によって進行する。この過程は、アポトーシスシグナルの受容によりミトコンドリアから細胞質中に放出されたシトクロムcが、アダプタータンパク質であるApaf-1(apoptotic protease activating factor-1)のWD-40ドメインに結合して、アポトソーム(apoptosome)を形成し、不活性型カスパーゼ(pro-caspase-9)を取り込んだ後、それを活性化させることによって達成される(非特許文献1〜3)。
ミトコンドリア外膜(MOM: mitochondrial outer membrane)に局在するBcl-2タンパク質ファミリーは、アポトーシスシグナルを受容した後、ミトコンドリア外膜の膜透過性を介してシトクロムcの放出を制御することが知られている(非特許文献4)。Bcl-2タンパク質ファミリーには、アポトーシス亢進機能を有するプロアポトーシス(proapoptotic)タンパク質と、アポトーシス抑制機能を有する抗アポトーシス(antiapoptotic)タンパク質が存在し、両タンパク質によって細胞の生死を制御している。
哺乳動物では、これまでに20種を越えるBcl-2タンパク質ファミリーが同定されている。例えば、Bax(Bcl-2 associated X protein)タンパク質やBak(Bcl-2 homologous antagonist/killer)タンパク質等はプロアポトーシスタンパク質として、またBcl-2やBcl-xL(Bcl-2 associated X protein large transcript)等は抗アポトーシスタンパク質として機能する。
一方、節足動物門(Arthropoda)に属する昆虫には、哺乳動物と異なり、Bcl-2タンパク質ファミリーをコードする遺伝子がゲノム中に1又は2種類しか存在しない。例えば、ハエ目(Diptera)に属するキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)には、Buffyタンパク質とDebclタンパク質の2種類のBcl-2タンパク質ファミリーをコードする遺伝子のみが存在する。Buffyタンパク質は、Bcl-2タンパク質のキイロショウジョウバエオルソログであり、抗アポトーシスタンパク質として機能する。またDebclタンパク質は、Baxタンパク質のキイロショウジョウバエオルソログであり、プロアポトーシスタンパク質として機能する(非特許文献5及び6)。しかし、キイロショウジョウバエでは、アポトソーム形成にシトクロムcが必須でないことや、Buffy遺伝子又はDebcl遺伝子をノックアウトしても個体は正常に発生する等、哺乳動物のアポトーシス機構と異なる点も多い。
同じ昆虫でもチョウ目昆虫のアポトーシス機構では、ハエ目昆虫以上に不明な点が多い。例えば、カイコ(Bombyx mori)は、ゲノム中にBcl-2タンパク質ファミリーをコードする遺伝子が1種類しか存在しない(非特許文献9)。この遺伝子は、Buffy遺伝子のカイコオルソログBmBuffyであり、そのタンパク質は抗アポトーシスタンパク質として機能することが培養細胞を用いた研究から明らかとなっている(非特許文献10)。つまり、カイコには、哺乳動物のBaxタンパク質やハエ目昆虫のDebclタンパク質のようなプロアポトーシスタンパク質のオルソログが存在せず、どのような機構でアポトーシスを亢進させているのか明らかになっていない。
特定の細胞や組織で人為的にアポトーシスを誘導させる技術は、個体発生や組織の分化、細胞分裂の制御等の機序を研究する上で有用であり、癌の治療にも応用可能なことから、世界各国で研究されている。また、昆虫のショウジョウバエでは、ヒトの癌と非常によく似た機序によって細胞が異常増殖することが報告されている(非特許文献11)。そのため、癌の作製や癌治療方法の開発におけるモデル生物として利用されている。昆虫のアポトーシス誘導系は、癌モデルのみならず、例えば、生殖腺での細胞死誘導によって不妊虫の作製に応用することができる。不妊虫開発は、SIT(不妊虫放飼法:Sterile Insect Technique)や、生物農薬などの害虫防除方法に用いる天敵昆虫及び外来種を用いた花粉媒介昆虫等の環境中への拡散防止といった昆虫制御の分野で活用できる。上記の理由から、現在、昆虫における細胞死誘導が可能なアポトーシスエフェクター因子の開発が進められている。
キイロショウジョウバエでは、哺乳類のBax遺伝子を過剰発現させると、アポトーシスが誘導されることが知られている(非特許文献7)。しかし、Debclタンパク質のノックアウト個体では、Bax遺伝子を過剰発現させても細胞死は誘導されない(非特許文献8)。つまり、Bax遺伝子の過剰発現によるキイロショウジョウバエ細胞の細胞死誘導には、Bax遺伝子のハエオルソログであるDebcl遺伝子の存在が必要であることが示唆されている。
一方、チョウ目昆虫では、これまでにアポトーシスエフェクター因子は開発されていない。前述のように、チョウ目昆虫にはプロアポトーシスタンパク質をコードする内在性のオルソログ遺伝子が存在しない。それ故、ハエ目昆虫とはアポトーシス制御機構が本質的に異なり、キイロショウジョウバエと同様の方法では細胞死を誘導できないというのが当該分野での通説であった。
ところで、チョウ目昆虫のカイコは、古くからシルク生産を行う産業上有用な昆虫である。また、近年の遺伝子組換え技術の躍進から、新素材の開発やバイオ医薬品などの有用生産物質生産系としても注目が集まっている。例えば、カイコの絹糸腺は、大量のタンパク質を短期間に合成する能力を有している。遺伝子組換え技術を用いることで、絹糸腺に大量の有用タンパク質を生産させることができる。これらの有用物質は、繭として回収可能な点で他の微生物を用いた有用物質生産系よりも優れている。したがって、カイコをはじめとするチョウ目昆虫においても、特定の細胞や組織で細胞死を自在に誘導できる技術やアポトーシスエフェクター因子の開発が強く求められていた。
Adams J.M., Cory S., 1998, Science, 281: 1322-1326 Green D.R. and Kroemer G., 2004, Science, 305: 626-629 Yuan S., et al., 2010, Structure, 18: 571-583 Youle R.J. and Strasser A., 2008, Nat. Rev. Mol. Cell. Biol., 9: 47-59 Igaki T., et al., 2000, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 97: 662-667 Quinn, L., et al., 2003, EMBO J. 22: 3568-3579 Gaumer S., et al., 2000, Cell Death Differ, 7: 804-814 Galindo K.A., et al., 2009, Development, 136(2): 275-283 Zhang, J.Y., et al., 2010, BMC Genomics. 11:611 Pan, C., et al., 2014, Biochem. Biophys. Res. Commun. 447:237-243 Nakamura et al., 2014, Nature communication 5: 5264.
本発明の課題は、カイコをはじめとするチョウ目昆虫において細胞死誘導系の確立のために、細胞又は組織特異的エフェクター遺伝子を開発し、提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、カイコ細胞内で哺乳動物のプロアポトーシスタンパク質をコードする遺伝子を過剰発現させることで、任意の細胞や組織で人為的に細胞死を誘導できることを見出した。これは、上述した当該分野における従来説を覆す発見であった。本願発明は、当該新規知見に基づくものであって、具体的には以下の発明を提供する。
(1)部位特異的プロモーター、及び哺乳動物由来のプロアポトーシスタンパク質又はその活性断片をコードするDNAをチョウ目昆虫細胞内で発現可能な状態で含み、前記DNAは、前記プロモーターによる直接的又は間接的な発現制御を受けるように配置されている細胞死誘導ベクター。
(2)前記プロアポトーシスタンパク質がBaxタンパク質又はBakタンパク質である、(1)に記載の細胞死誘導ベクター。
(3)部位特異的プロモーター及び該プロモーターの下流にプロアポトーシスタンパク質又はその活性断片をコードするDNAを機能的に連結した、(1)又は(2)に記載の細胞死誘導ベクター。
(4)部位特異的プロモーター及び該プロモーターの下流に機能的に連結した転写調節因子をコードする遺伝子を含む第1発現ユニット、及び該転写調節因子の標的プロモーター及び該標的プロモーターの下流に機能的に連結したプロアポトーシスタンパク質又はその活性断片をコードするDNAを含む第2発現ユニットから構成される、(1)又は(2)に記載の細胞死誘導ベクター。
(5)前記転写調節因子をコードする遺伝子がGAL4遺伝子であり、該転写調節因子の標的プロモーターがUASプロモーターである、(4)に記載の細胞死誘導ベクター。
(6)(3)に記載の細胞死誘導ベクターを含む部位特異的細胞死誘導カイコ系統。
(7)(4)又は(5)に記載の第2発現ユニットを含む部位特異的細胞死誘導カイコ系統。
(8)(4)又は(5)に記載の第1発現ユニットを有する遺伝子組換えカイコ系統と(7)に記載の部位特異的細胞死誘導カイコ系統とを交配させる工程、及び前記第1及び第2発現ユニットを有する部位特異的細胞死誘導カイコを選択する工程を含む部位特異的細胞死誘導カイコの作出方法。
本発明の細胞死誘導ベクターを用いることで、部位特異的細胞死誘導カイコ系統をはじめとするチョウ目昆虫の遺伝子組み換え系統を容易に作出することが可能となる。
本発明の部位特異的細胞死誘導カイコ系統によれば、任意の細胞や組織で細胞死を誘導することのできる系統を維持、及び管理できると共に、部位特異的細胞死誘導カイコを容易に作出することができる。
pBOS-T7-mBaxを過剰発現させたHeLa細胞の抗体染色を示す図である。Aは、抗T7抗体(αT7-tag)による染色図であり、Bは抗シトクロムc抗体(αcytoC)による染色図である。CはAとBを重ね合わせた図(merge)で、A及びBで重なり合う部位が明るく光っている。各図のスケールバーは10μmを示す。 中部絹糸腺でBax遺伝子を発現するMSG-GAL4/UAS-T7-mBaxカイコ個体における5齢幼虫4日目の絹糸腺の形態を示す図である。Aは中部絹糸腺でBax遺伝子を発現するMSG-GAL4/UAS-T7-mBaxカイコ個体における絹糸腺の実体顕微鏡による透過像図を、Bは中部絹糸腺でEGFP遺伝子を発現する対照区のMSG-GAL4/UAS-EGFPカイコ個体における絹糸腺の実体顕微鏡による透過像図を、CはBの蛍光画像を、Dは第2サブユニットのみを含む部位特異的細胞死誘導カイコ系統UAS-T7-mBax系統のカイコ個体における絹糸腺の実体顕微鏡による透過像図を、それぞれ示す。図中の矢印は、中部絹糸腺を示す。 後部絹糸腺でBax遺伝子を発現するPSG-GAL4/UAS-T7-mBaxカイコ個体における5齢幼虫4日目の絹糸腺の形態を示す図である。Aは後部絹糸腺でBax遺伝子を発現するPSG-GAL4/UAS-T7-mBaxカイコ個体における絹糸腺の実体顕微鏡による透過像図を、Bは後部絹糸腺でEGFP遺伝子を発現する対照用のPSG-GAL4/UAS-EGFPカイコ個体における絹糸腺の実体顕微鏡による透過像図を、CはBの蛍光画像を、それぞれ示す。図中の矢印は、後部絹糸腺を示す。 脂肪体でBax遺伝子を発現する30K-GAL4/UAS-T7-mBaxカイコ個体における5齢幼虫4日目の脂肪体の形態を示す図である。Aは脂肪体でBax遺伝子を発現する30K-GAL4/UAS-T7-mBaxカイコ個体における脂肪体の実体顕微鏡による透過像図を、Bは第1サブユニットのみを含む30K-GAL4系統のカイコ個体における脂肪体の実体顕微鏡による透過像図を、それぞれ示す。 脂肪体から抽出したゲノムDNAのアガロースゲル電気泳動の結果を示す図である。Aは5齢幼虫2日目の、またBは5齢幼虫4日目のカイコ由来のゲノムDNAの結果である。 Aは、羽ばたき行動実験用の装置を示す図である。Bは、ボンビコールの暴露のタイムコースを示す。 ボンビコールに対するオスカイコの反応性(羽ばたき行動)をグラフ化した図である。sumi4-4A/1bはフェロモンレセプター細胞でBax遺伝子を発現するBmOR1-GAL4/UAS-T7-mBaxカイコ系統のオス個体を、1bは第1サブユニットのみを含むpBmOR1-GAL4系統のオス個体を、そしてw1,pndは第1及び第2サブユニットのいずれも含まないバックグラウンド系統のオス個体を示す。各濃度で反応した個体の割合(%)を縦軸に、横軸にはボンビコールの濃度を示した。 雄成虫カイコの触角におけるBmOR1遺伝子の発現量を示す。レーン1は対照区のBmOR1-GAL4カイコ個体を、レーン2はフェロモン受容細胞でBax遺伝子を発現するBmOR1-GAL4/UAS-T7-mBaxカイコ個体を示す。レーンMはサイズマーカーである。RpS3遺伝子は、内部対照用として用いた。 全身でBax遺伝子を発現した場合、胚致死となることを示した交配実験の結果を示す図である。Redは第1発現ユニットのみを含むF1胚、GFPは第2発現ユニットのみを含むF1胚、doubleは第1、第2発現ユニットの両方を含むF1胚、Negativeはいずれの発現ユニットも持たないF1胚である。胚致死であったものは、lethalとしてカウントした。
1.細胞死誘導ベクター
1−1.概要
本発明の第1の態様は、細胞死誘導ベクターである。本発明の細胞死誘導ベクターは、発現ベクターであり、部位特異的プロモーターとその制御下にある脊椎動物由来、好ましくは哺乳動物由来のプロアポトーシスタンパク質、又はその活性断片をコードするDNAを含むことを特徴とする。本発明の細胞死誘導ベクターによれば、宿主であるチョウ目昆虫に導入することで、プロモーターが活性化される細胞又は組織において、細胞死を自在に誘導することができる。
1−2.定義
「チョウ目昆虫」とは、分類学上のチョウ目(鱗翅目:Lepidoptera)に属する昆虫であって、チョウ又はガをいう。チョウには、タテハチョウ科(Nymphalidae)、アゲハチョウ科(Papilionidae)、シロチョウ科(Pieridae)、シジミチョウ科(Lycaenidae)、及びセセリチョウ科(Hesperiidae)に属する昆虫が含まれる。ガには、ヤママユガ科(Saturniidae)、カイコガ科(Bombycidae)、イボタガ科(Brahmaeidae)、オビガ科(Eupterotidae)、カレハガ科(Lasiocampidae)、ミノガ科(Psychidae)、シャクガ科(Geometridae)、ヒトリガ科(Archtiidae)、ヤガ科(Noctuidae)、メイガ科(Pyralidae)、スズメガ科(Sphingidae)等に属する昆虫が含まれる。例えば、ガであれば、Bombyx属、Samia属、Antheraea属、Saturnia属、Attacus属、Rhodinia属に属する種、具体的には、カイコ、クワコ(Bombyx mandarina)、シンジュサン(Samia cynthia;エリサンSamia cynthia ricini及びシンジュサンとエリサンの交配種を含む)、ヤママユガ(Antheraea yamamai)、サクサン(Antheraea pernyi)、ヒメヤママユ(Saturnia japonica)、オオミズアオ(Actias gnoma)等が挙げられる。
本明細書で「発現ベクター」とは、目的のタンパク質をコードする遺伝子又はその活性断片をコードするDNAを発現可能な状態で含み、その遺伝子等の発現を制御できる、発現単位をいう。なお、本明細書では、目的のタンパク質をコードする遺伝子又はその活性断片をコードするDNAをまとめて、しばしば「目的の遺伝子等」と表記する。
本明細書で「発現可能な状態」とは、発現ベクター内で目的の遺伝子等をプロモーターの制御下に配置することをいう。
1−3.構成
1−3−1.細胞死誘導ベクターの構成要素
本発明の細胞死誘導ベクターは、宿主の特定の細胞内で目的の遺伝子等を発現できるように構成されている。
細胞死誘導ベクターには、宿主細胞内で複製可能な様々な遺伝子発現ベクターを利用することができる。例えば、プラスミド若しくはバクミド(Bacmid)のような自律複製可能な発現ベクター、ウイルスベクター、又は染色体中に相同又は非相同組換え可能な発現ベクター若しくはそれを宿主の染色体中に挿入した染色体の一部が挙げられる。また、大腸菌、枯草菌又は酵母内でも複製可能なシャトルベクターを利用することもできる。
細胞死誘導ベクターは、部位特異的プロモーター及び目的の遺伝子等を必須構成要素として含む。また、標識遺伝子、トランスポゾンの逆位末端反復配列、5’UTR、3’UTR、ターミネーター、エンハンサー、インスレーター、及びマルチクローニングサイト等を選択構成要素として含む。さらに、細胞死誘導ベクターが、後述する第1発現ユニットと第2発現ユニットの2つの遺伝子発現ユニットで構成される場合には、転写調節因子の遺伝子及び該転写調節因子の標的プロモーターを必須の構成要素として包含する。以下、本発明の細胞死誘導ベクターにおける各構成要素ついて具体的に説明をする。
(1)部位特異的プロモーター
「部位特異的プロモーター」とは、発現ベクターを導入した宿主個体の特定の細胞又は組織において、下流(3’末端側)に配置された遺伝子の発現を制御することのできるプロモーターである。本明細書では、宿主個体全体での発現を制御するユビキタスなプロモーター(全身性プロモーター)に対応する用語として使用する。
部位特異的プロモーターは、その発現制御の時期に基づいて構成的活性型プロモーター、発現誘導型プロモーター又は時期特異的活性型プロモーターに分類される。構成的活性型プロモーターは、宿主細胞内で目的の遺伝子等を恒常的に発現させることができる。発現誘導型プロモーターは、宿主細胞内で目的の遺伝子等の発現を任意の時期に誘導することができる。時期特異的活性型プロモーターは、宿主細胞内で目的の遺伝子等を発生段階の特定の時期のみに発現誘導することができる。いずれのプロモーターも、宿主細胞内で目的の遺伝子等の過剰な発現をもたらし得るので、本明細書における部位特異的プロモーターは、部位特異的過剰発現型プロモーターと解することができる。
部位特異的プロモーターは、特定の細胞又は特定の組織でのみ発現する遺伝子のプロモーターに由来する。例えば、カイコであれば、眼特異的発現をする3xP3遺伝子のプロモーター(3xP3プロモーター;配列番号21)、中部絹糸腺の前部で特異的発現をするセリシン3遺伝子のプロモーター(Ser3プロモーター;配列番号22)、中部絹糸腺特異的発現をするセリシン1遺伝子のプロモーター(Ser1プロモーター;配列番号23)、後部絹糸腺特異的発現をするフィブロインH遺伝子のプロモーター(Fib Hプロモーター;配列番号24)、フィブロインL遺伝子のプロモーター(Fib Lプロモーター;配列番号25)、又はp25遺伝子のプロモーター(p25プロモーター;配列番号26)、脂肪体特異的発現をする30K遺伝子のプロモーター(30Kプロモーター;配列番号27)、及び精巣で特異的発現をするelavlike遺伝子のプロモーター(elavlikeプロモーター;配列番号40)等が挙げられる。
部位特異的プロモーターの細胞又は組織特異性は、そのプロモーターが本来制御していた遺伝子に依存する。例えば、前述のSer1プロモーターであれば、Ser1遺伝子は中部絹糸腺で特異的に発現することから、中部絹糸腺特異的プロモーターとなる。本発明の細胞死誘導ベクターでは、細胞死を誘導したい細胞又は組織に特異的な部位特異的プロモーターを選択すればよい。このプロモーターの選択によって、宿主の細胞又は組織で自在に細胞死を誘導することが可能になる。
部位特異的プロモーターの由来となるドナー生物種は、細胞死誘導ベクターを導入するレシピエント側の宿主細胞内で作動可能である限り、特に限定はしない。好ましくは細胞死誘導ベクターを導入する宿主と分類学上で同目に属する種である。同科に属する種はより好ましく、同属に属する種はさらに好ましい。宿主と同じ種が最も好ましい。本発明の細胞死誘導ベクターを導入する宿主は、チョウ目昆虫であり、後述するように好適な宿主はカイコであることから、プロモーターのドナー生物種は、チョウ目昆虫であることが好ましく、カイコガ科(Bombycidae)に属する種であることがより好ましく、クワコ(Bombyx mandarina)のような同じBombyx属に属する種であることがさらに好ましい。最も好ましいドナー生物種は、同種のカイコである。
(2)プロアポトーシスタンパク質又はその活性断片をコードするDNA
本発明の細胞死誘導ベクターは、目的の遺伝子等として、プロアポトーシスタンパク質又はその活性断片をコードするDNA(本明細書では、しばしば「プロアポトーシス遺伝子等」と表記する)を含む。
「プロアポトーシス(pro-apoptotic)タンパク質」とは、Bcl-2(B-cell lymphoma 2)タンパク質ファミリーに属し、アポトーシス亢進機能を有するタンパク質をいう。
本発明の細胞死誘導ベクターに含まれるプロアポトーシス遺伝子は、脊椎動物由来の遺伝子、好ましくは哺乳動物由来の遺伝子である。本発明の細胞死誘導ベクターを導入すべき宿主であるチョウ目昆虫には内在性のプロアポトーシス遺伝子が存在しない。つまり、宿主にオルソログが存在しない他種生物のプロアポトーシス遺伝子を宿主内の特定の細胞や組織で過剰発現することが本発明の細胞死誘導ベクターの特徴である。
哺乳動物由来のプロアポトーシスタンパク質には、例えば、Baxタンパク質やBakタンパク質が挙げられる。Baxタンパク質やBakタンパク質等のプロアポトーシスタンパク質は、哺乳動物種間で高度に保存されていることから、由来する哺乳動物の種類は、特に限定しない。例えば、配列番号1で示すアミノ酸配列からなるマウス(Mus musculus)のBaxタンパク質(mBax)、配列番号3で示すアミノ酸配列からなるラット(Rattus norvegicus)のBaxタンパク質(rBax)、配列番号5で示すアミノ酸配列からなるイヌ(Canis lupus familiaris)のBaxタンパク質(cBax)、配列番号7で示すアミノ酸配列からなるウシ(Bos Taurus)のBaxタンパク質(bBax)、又は配列番号9で示すアミノ酸配列からなるヒト(Homo sapiens)のBaxタンパク質(hBax)、が挙げられる。
哺乳動物以外の脊椎動物由来のプロアポトーシスタンパク質には、例えば、配列番号11で示すアミノ酸配列からなるゼブラフィッシュ(Danio rerio)のBaxタンパク質、配列番号13で示すアミノ酸配列からなるヒラメ(Cynoglossus semilaevis)のBaxタンパク質、配列番号15で示すアミノ酸配列からなるアフリカツメガエル(Xenopus laevis)のBaxタンパク質、配列番号17で示すアミノ酸配列からなるビルマニシキヘビ(Python bivittatus)のregulator BAX-likeタンパク質、配列番号19で示すアミノ酸配列からなるキンカチョウ(Taeniopygia guttata)のapoptosis regulator BAX-likeタンパク質が挙げられる。
プロアポトーシスタンパク質は、野生型タンパク質が好ましいがアポトーシス亢進機能を維持する限り変異型タンパク質であってもよい。このような変異型プロアポトーシスタンパク質には、野生型プロアポトーシスタンパク質のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質、野生型プロアポトーシスタンパク質のアミノ酸配列に対して90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、98%以上又は99%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質が挙げられる。本明細書において「複数個」とは、例えば、2〜20個、2〜15個、2〜10個、2〜7個、2〜5個、2〜4個又は2〜3個をいう。「アミノ酸同一性」とは、二つのアミノ酸配列を整列(アラインメント)し、必要に応じていずれかのアミノ酸配列にギャップを導入して、両者のアミノ酸一致度が最も高くなるようにしたときの、野生型タンパク質の全アミノ酸残基数に対する同一アミノ酸残基の割合(%)をいう。
プロアポトーシス遺伝子は、前述の野生型又は変異型プロアポトーシスタンパク質をコードする塩基配列からなる。例えば、配列番号1で示すアミノ酸配列からなるmBaxタンパク質をコードする配列番号2で示す塩基配列からなるmBax遺伝子、配列番号3で示すアミノ酸配列からなるrBaxタンパク質をコードする配列番号4で示す塩基配列からなるrBax遺伝子、配列番号5で示すアミノ酸配列からなるcBaxタンパク質をコードする配列番号6で示す塩基配列からなるcBax遺伝子、配列番号7で示すアミノ酸配列からなるbBaxタンパク質をコードする配列番号8で示すbBax遺伝子、配列番号9で示すアミノ酸配列からなるhBaxタンパク質をコードする配列番号10で示す塩基配列からなるhBax遺伝子、配列番号11で示すアミノ酸配列からなるゼブラフィッシュのBaxタンパク質をコードする配列番号12で示す塩基配列からなるゼブラフィッシュのBax遺伝子、配列番号13で示すアミノ酸配列からなるヒラメのBaxタンパク質をコードする配列番号14で示す塩基配列からなるヒラメのBax遺伝子、配列番号15で示すアミノ酸配列からなるアフリカツメガエルのBaxタンパク質をコードする配列番号16で示す塩基配列からなるアフリカツメガエルのBax遺伝子、配列番号17で示すアミノ酸配列からなるビルマニシキヘビのregulator BAX-likeタンパク質をコードする配列番号18で示す塩基配列からなるビルマニシキヘビのregulator BAX-like遺伝子、又は配列番号19で示すアミノ酸配列からなるキンカチョウのapoptosis regulator BAX-likeタンパク質をコードする配列番号20で示す塩基配列からなるキンカチョウのapoptosis regulator BAX-like遺伝子が挙げられる。
「その活性断片」とは、プロアポトーシスタンパク質の一部からなり、アポトーシス亢進機能活性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド、又はそれをコードする塩基配列からなるポリヌクレオチドをいう。
本発明の細胞死誘導ベクターにおいて、プロアポトーシス遺伝子等は、前記プロモーターによる直接的又は間接的な発現制御を受けるように配置されている。本明細書において「直接的な発現制御」とは、プロアポトーシス遺伝子が部位特異的プロモーターの下流に発現可能な状態で配置され、部位特異的プロモーターの発現制御を直接的に受ける場合をいう。また、「間接的な発現制御」とは、部位特異的プロモーターが介在因子を介して間接的にプロアポトーシス遺伝子等の発現を制御する場合をいう。例えば、後述する転写調節因子及びその転写調節因子の標的プロモーターを介した発現制御が該当する。
(3)標識遺伝子
「標識遺伝子」は、選抜マーカーとも呼ばれる標識タンパク質をコードする遺伝子である。「標識タンパク質」とは、その活性に基づいて標識遺伝子の発現の有無を判別することのできるポリペプチドをいう。標識遺伝子は、細胞死誘導ベクターを保有する宿主、すなわち形質転換体を判別する目的、及び/又は細胞死誘導ベクターから発現した目的のタンパク質等をモニタリングする目的で用いられるが、本発明の細胞死誘導ベクターではいずれの目的で使用してもよい。いずれの場合にも、標識タンパク質の活性に基づいて形質転換体の判別や目的のタンパク等をモニタリングすることができる。ここで「活性に基づいて」とは、活性の検出結果に基づいて、という意味である。活性の検出は、標識タンパク質の活性そのものを直接的に検出するものであってもよいし、色素のような標識タンパク質の活性によって発生する代謝物を介して間接的に検出するものであってもよい。検出は、生物学的検出(抗体、アプタマー等のペプチドや核酸の結合による検出を含む)、化学的検出(酵素反応的検出を含む)、物理的検出(行動分析的検出を含む)、又は検出者の感覚的検出(視覚、触覚、嗅覚、聴覚、味覚による検出を含む)のいずれであってもよい。
標識遺伝子がコードする標識タンパク質の種類は、当該分野で公知の方法によりその活性を検出可能な限り、特に限定はしない。好ましくは検出に際して形質転換体に対する侵襲性の低い標識タンパク質である。例えば、タグペプチド、蛍光タンパク質、色素合成タンパク質、発光タンパク質、外部分泌タンパク質、外部形態を制御するタンパク質等が挙げられる。蛍光タンパク質、色素合成タンパク質、発光タンパク質、外部分泌タンパク質は、形質転換体の外部形態を変化させることなく特定の条件下で視覚的に検出可能なことから、形質転換体に対する侵襲性が非常に低く、また形質転換体の判別及び選抜が容易なため特に好適である。
「タグペプチド」は、タンパク質を標識化することのできる十数アミノ酸〜数十アミノ酸からなる短ペプチドであって、タンパク質の検出用、精製用として用いられる。通常は、標識すべきタンパク質をコードする遺伝子の5’末端側又は3’末端側にタグペプチドをコードする塩基配列を連結し、タグペプチドとの融合タンパク質として発現させることで標識化する。タグペプチドは、当該分野で様々な種類が開発されているが、いずれのタグペプチドを使用してもよい。タグペプチドの具体例として、FLAG、HA、His、及びmyc等が挙げられる。
「蛍光タンパク質」は、特定波長の励起光を照射したときに特定波長の蛍光を発するタンパク質をいう。天然型及び非天然型のいずれであってもよい。また、励起波長、蛍光波長も特に限定はしない。具体的には、例えば、CFP、RFP、DsRed(3xP3-DsRedのような派生物を含む)、YFP、PE、PerCP、APC、GFP(EGFP、3xP3-EGFP等の派生物を含む)等が挙げられる。
「色素合成タンパク質」は、色素の生合成に関与するタンパク質であり、通常は酵素である。ここでいう「色素」とは、形質転換体に色素を付与することができる低分子化合物又はペプチドで、その種類は問わない。好ましくは個体の外部色彩として表れる色素である。例えば、メラニン系色素(ドーパミンメラニンを含む)、オモクローム系色素、又はプテリジン系色素が挙げられる。
本明細書で「発光タンパク質」とは、励起光を必要とすることなく発光することのできる基質タンパク質又はその基質タンパク質の発光を触媒する酵素をいう。例えば、基質タンパク質としてのルシフェリン又はイクオリン、酵素としてのルシフェラーゼが挙げられる。
本明細書で「外部分泌タンパク質」とは、細胞外又は体外に分泌されるタンパク質であり、外分泌性酵素の他、フィブロインのような繊維タンパク質やセリシンが該当する。外分泌性酵素には、ブラストサイジンのような薬剤の分解又は不活化に寄与し、宿主に薬剤耐性を付与する酵素の他、消化酵素が該当する。
標識遺伝子は、細胞死誘導ベクターにおいてプロアポトーシス遺伝子等に連結した状態で、又はプロアポトーシス遺伝子等とは独立して、プロモーターの下流に発現可能な状態で配置される。
(4)トランスポゾンの逆位末端反復配列
「トランスポゾンの逆位末端反復配列(ITRs:inverted terminal repeat sequence)」は、本発明の細胞死誘導ベクターをゲノムDNAに相同組換え可能な発現ベクターとする場合に含まれ得る選択構成要素である。逆位末端反復配列は、通常は2個1組で使用され、トランスポゾンとしては、piggyBac、mariner、minos等を用いることができる(Shimizu,K. et al., 2000, Insect Mol. Biol., 9, 277-281;Wang W. et al.,2000, Insect Mol Biol 9(2):145-55)。
(5)5’UTR(5’untranslated region)及び3’UTR(3’untranslated region)
「5’UTR及び3’UTR」は、いずれもそれ自身がタンパク質やその断片、又は機能性核酸をコードしない非翻訳領域からなるポリヌクレオチドである。各UTRを構成する塩基配列は、限定はしないがプロアポトーシス遺伝子に由来する5’UTR及び3’UTRであることが好ましい。細胞死誘導ベクターにおいて5’UTRは、前記プロアポトーシス遺伝子等の開始コドンの上流(5’末端側)に配置され、3’UTRは、プロアポトーシス遺伝子等の終止コドンの下流(3’末端側)に配置される。なお、3’UTRは、ポリAシグナルを含むことができる。
(6)ターミネーター
「ターミネーター」は、本発明の細胞死誘導ベクターにおいて、プロアポトーシス遺伝子等の3’末端側、好ましくは終止コドンの下流に配置される塩基配列で、プロアポトーシス遺伝子等の転写を終結できる塩基配列で構成されている。例えば、配列番号28で示す塩基配列からなるhsp70ターミネーターや配列番号29で示す塩基配列からなるSV40ターミネーターが挙げられる。
(7)エンハンサー
「エンハンサー」は、本発明の細胞死誘導ベクターにおいて、部位特異的プロモーターの制御によるプロアポトーシス遺伝子等の発現をさらに増強することができる塩基配列からなる。
(8)インスレーター
「インスレーター」は、周囲の染色体のクロマチンによる影響を受けることなく、その配列に挟まれた遺伝子の転写を、安定的に制御できる塩基配列である。例えば、ニワトリのcHS4配列やショウジョウバエのgypsy配列などが挙げられる。
(9)マルチクローニングサイト
「マルチクローニングサイト」は、複数のクローニング用制限酵素部位からなるクラスター配列である。マルチクローニングサイトを構成する塩基配列や包含する制限酵素部位の種類及び数については、特に制限はしない。また、細胞死誘導ベクターにおけるマルチクローニングサイトの数や配置される位置についても、制限はしないが、前記部位特異的プロモーターの制御領域範囲内に配置することが好ましい。そのような位置に配置することで、プロアポトーシス遺伝子等を本発明の細胞死誘導ベクター内に容易に挿入できるからである。
(10)転写調節因子の遺伝子
「転写調節因子の遺伝子」は、後述する第1発現ユニットの必須構成要素である。本明細書でいう「転写調節因子」とは、後述する標的プロモーターに結合して、その標的プロモーターを活性化することのできるタンパク質因子をいう。例えば、酵母のガラクトース代謝活性化タンパク質であるGAL4タンパク質、及びテトラサイクリン制御性トランス活性化因子であるtTA及びその変異体等が挙げられる。
(11)転写調節因子の標的プロモーター
「転写調節因子の標的プロモーター」とは、後述する第2発現ユニットの必須要素であって、第1発現ユニットにコードされた転写調節因子が結合することによって、その制御下にある遺伝子発現を活性化することのできるプロモーターをいう。前記転写調節因子とその標的プロモーターは、前記転写調節因子とは対応関係にあり、通常は、転写調節因子が定まれば、その標的プロモーターも必然的に定まる。例えば、転写調節因子がGAL4タンパク質の場合には、UAS(Upstream Activating Sequence)が使用される。
1−3−2.細胞死誘導ベクターのユニット構成
細胞死誘導ベクターは、1つの遺伝子発現ユニットで構成される場合と、2つの遺伝子発現ユニットで構成される場合がある。以下、それぞれの場合について説明をする。
(1)1つの遺伝子発現ユニットで構成される場合
細胞死誘導ベクターは、宿主細胞内でプロアポトーシス遺伝子等を発現させるのに必要な全ての構成要素を1つの細胞死誘導ベクター内に含む。具体的には、必須の構成要素である部位特異的プロモーター及びそのプロモーターの下流に発現可能な状態で配置されたプロアポトーシス遺伝子等を含む。
細胞死誘導ベクターは、1つのプロモーター制御下にプロアポトーシス遺伝子等を2以上含んでいてもよい。
細胞死誘導ベクターが1つの遺伝子発現ユニットで構成される場合、細胞死誘導ベクターを宿主に導入するだけで、宿主細胞内でプロアポトーシス遺伝子等を過剰発現することができる。
(2)2つの遺伝子発現ユニットで構成される場合
細胞死誘導ベクターが第1発現ユニット及び第2発現ユニットの2つの遺伝子発現ユニットで構成される場合、プロアポトーシス遺伝子等の発現に必須の構成要素は各ユニットに分割されて存在する。本構成では、第1及び第2発現ユニットが宿主細胞内に併存してはじめて1つの細胞死誘導ベクターとして機能する。すなわち、同一細胞内で第1発現ユニットに含まれるプロモーターの活性化により第1発現ユニットから転写調節因子が発現し、それが第2発現ユニットの標的プロモーターを活性化することによって目的のプロアポトーシス遺伝子等を発現することができる。第1及び第2発現ユニットは、以下の構成を有する。
「第1発現ユニット」は、部位特異的プロモーターとそのプロモーターの下流に発現可能な状態で連結された転写調節因子の遺伝子を含んでなる。このとき、1つのプロモーター制御下に同一の又は異なる2以上の転写調節因子を含んでいてもよい。
また、第1発現ユニットは、部位特異的プロモーターとその制御下にある転写調節因子の遺伝子からなる組を2組以上有することもできる。この場合、各組は同一の組であっても、又は異なる組であってもよい。例えば、第1発現ユニットがSer3プロモーターとGAL4遺伝子からなる組、及びFib HプロモーターとGAL4遺伝子からなる組を含む場合が挙げられる。
第1発現ユニットが包含するプロモーターは、既知の部位特異的プロモーターを利用できることから、既存の遺伝子発現ベクターを利用することもできる。
「第2発現ユニット」は、前記第1発現ユニットにコードされた転写調節因子の標的プロモーターとその標的プロモーターの下流に機能的に結合したプロアポトーシス遺伝子等を含んでなる。第2発現ユニットに含まれる標的プロモーターは、第1発現ユニットにコードされる転写調節因子によって活性化されるプロモーターである。したがって、第1発現ユニットにコードされる転写調節因子によって第2発現ユニットに含まれる標的プロモーターは、原則として一義的に決定される。例えば、標的プロモーター第1発現ユニットに含まれる転写調節因子の遺伝子がGAL4遺伝子であれば、第2発現ユニットのGAL4標的プロモーターにはUASが使用される。第2発現ユニットは、1つの標的プロモーター制御下に同一の又は異なるプロアポトーシス遺伝子等を2以上含んでいてもよい。例えば、第2発現ユニットが1つのUASの制御下にmBax遺伝子とmBak遺伝子の2つの遺伝子を配置している場合が該当する。
また、第2発現ユニットは、標的プロモーターとその制御下にあるプロアポトーシス遺伝子等からなる組を2組以上有していてもよい。この場合、各組は同一の組であっても、又は異なる組であってもよい。例えば、第2発現ユニットが2つのUASを含み、1つのUASの制御下にmBax遺伝子を配置し、他のUASの制御下にmBak遺伝子を配置している場合が該当する。
さらに、第2発現ユニットは、プロアポトーシス遺伝子等を含む同一の又は異なる2以上のユニットで構成されていてもよい。この場合、1つの第1発現ユニットから発現した転写調節因子は、複数の第2発現ユニットの標的プロモーターを活性化することによって、それぞれの第2発現ユニットに含まれるプロアポトーシス遺伝子等を発現することができる。
本構成の細胞死誘導ベクターは、第1発現ユニットにコードされた転写調節因子を介して第2発現ユニットのプロアポトーシス遺伝子等の発現を増幅させることができる。したがって、プロアポトーシス遺伝子等を宿主細胞内で過剰発現させる上で好適である。
1−4.効果
本発明の細胞死誘導発現ベクターは、アポトーシスエフェクター因子をコードする発現ベクターであり、チョウ目昆虫の宿主、特にカイコに導入することによって、所望する細胞又は組織において、細胞死を自在に誘導することができる。
2.部位特異的細胞死誘導カイコ系統
2−1.概要
本発明の第2の態様は、部位特異的細胞死誘導カイコ系統である。本態様のカイコ系統は、第1態様に記載の細胞死誘導ベクターを有するカイコ及びその後代である。本系統を用いることで、細胞死によって任意の細胞又は組織を壊滅させたカイコ系統を自在かつ容易に作出することができる。
2−2.構成
本発明の「部位特異的細胞死誘導カイコ系統」は、第1態様に記載の細胞死誘導発現ベクターを有し、特定の細胞又は組織において細胞死を誘導する潜在性を有する継代可能な遺伝子組換え体又はその後代をいう。特定の細胞又は組織においてプロアポトーシスタンパク質等が発現しているか否かは問わない。
本明細書において「部位特異的細胞死誘導カイコ」とは、第1態様に記載の細胞死誘導発現ベクターを有し、そのベクターに包含されるプロアポトーシスタンパク質等が特定の細胞又は組織で発現している遺伝子組み換えカイコをいう。部位特異的細胞死誘導カイコでは、部位特異的プロモーターが活性化される特定の細胞又は組織で細胞死が誘導されている。
部位特異的細胞死誘導カイコ系統が有する細胞死誘導発現ベクターは、第1態様で記載した1つの遺伝子発現ユニットで構成される場合と2つの遺伝子発現ユニットで構成される場合のいずれであってもよい。
1つの遺伝子発現ユニットで構成される場合、その細胞死誘導ベクターを有する遺伝子組み換え系統が本発明の部位特異的細胞死誘導カイコ系統に該当する。この部位特異的細胞死誘導カイコ系統では、プロアポトーシスタンパク質等が発現状態であるか、又は誘導処理等により発現可能な状態であることから、同時に部位特異的細胞死誘導カイコでもある。
2つの遺伝子発現ユニットで構成される場合、第2発現ユニットのみを有する遺伝子組換えカイコ系統が本発明の部位特異的細胞死誘導カイコ系統に該当する。一方、第1発現ユニットのみを有する遺伝子組換えカイコ系統は、特定の細胞又は組織において細胞死を誘導する直接的な潜在性はないことから、本発明の部位特異的細胞死誘導カイコ系統には該当しない。第2発現ユニットのみを有する部位特異的細胞死誘導カイコ系統を、第1発現ユニットを含む遺伝子組換えカイコ系統と交配することによって、プロアポトーシス遺伝子等の発現を誘導することができる。つまり、この場合、第1及び第2発現ユニットの2つを有するカイコ個体が部位特異的細胞死誘導カイコとなる。
部位特異的細胞死誘導カイコ系統において、細胞死誘導ベクターは、カイコ細胞内に一過的に存在してもよいし、またゲノム中に挿入された状態等で安定的かつ継続的に存在してもよい。通常は、ゲノム中に挿入された状態で存在することが好ましい。
細胞死誘導ベクターが第1及び第2発現ユニットからなる2つの遺伝子発現ユニットで構成され、それぞれがカイコの染色体上に組み込まれている場合、第1及び第2発現ユニットは同一のカイコ個体の同一染色体上に存在していてもよいし、同一のカイコ個体の異なる染色体上に存在していてもよい。
第1の発現ユニットと第2の発現ユニットは、部位特異的細胞死誘導カイコ系統の継代や管理及び維持の観点から、それぞれ互いに異なるカイコ個体、又は異なる染色体に組み込まれていていることが望ましい。第1発現ユニットのみを(好ましくはホモ接合体で)有する遺伝子組換えカイコ系統と、第2発現ユニットのみを(好ましくはホモ接合体で)有する部位特異的細胞死誘導カイコ系統とを交配させることによって、F1で第1及び第2発現ユニットを有する部位特異的細胞死誘導カイコを容易に得ることができる。
一方、第1発現ユニット及び第2発現ユニットが同一のカイコ個体の同一染色体上に存在する場合には、継代過程で組換えによってそれぞれが分離しないように、発現ベクター間の距離が近く、互いに連鎖している方が好ましい。
2−3.部位特異的細胞死誘導カイコ系統の作出方法
本発明の部位特異的細胞死誘導カイコ系統の作出方法は、細胞死誘導ベクターを宿主であるカイコに導入することで達成し得る。細胞死誘導ベクターのカイコ導入方法について以下で具体的に説明をする。
細胞死誘導ベクターを導入する宿主は、カイコ個体、カイコ由来の細胞(株化細胞を含む)、又はカイコ由来の組織である。好ましくはカイコ個体である。細胞若しくは組織に導入する場合、採取された個体の発生ステージは、特に限定はしない。個体に導入する場合も、発生ステージや雌雄の限定は特になく、胚、幼虫、蛹、又は成虫のいずれのステージであってもよい。好ましくは、より高い効果が期待できる胚時期である。
細胞死誘導ベクターが1つの遺伝子発現ユニットで構成される場合には、その細胞死誘導ベクターを、また細胞死誘導ベクターが第1及び第2発現ユニットの2つの遺伝子発現ユニットで構成される場合には、第2発現ユニットを、カイコに導入することで目的の部位特異的細胞死誘導カイコ系統を得ることができる。
細胞死誘導ベクター導入方法は、導入する細胞死誘導ベクターに応じて当該分野で公知の方法によって行えばよい。例えば、細胞死誘導ベクターがトランスポゾンの逆位末端反復配列を有するプラスミドであり、導入する宿主がカイコであれば、Tamuraらの方法(Tamura T. et al., 2000, Nature Biotechnology, 18, 81-84)を応用することができる。例えば、適当な濃度に希釈した細胞死誘導ベクターを、トランスポゾン転移酵素の遺伝子を有するヘルパーベクターと共にカイコ卵の初期胚にインジェクションすればよい。ヘルパーベクターには、例えば、pHA3PIGが利用できる。本発明の細胞死誘導ベクターが標識遺伝子を含む場合には、前述のように、その遺伝子等の発現に基づいて目的の形質転換体を容易に選抜することができる。得られた遺伝子組換えカイコを必要に応じて兄妹交配又は同系交配を行い、染色体に挿入された発現ベクターのホモ接合体を得てもよい。
2−4.効果
本発明の遺伝子組換えカイコ系統によれば、特定の細胞又は組織を細胞死によって壊滅させる部位特異的細胞死誘導カイコを容易に作出でき、また継代管理することができる。
3.部位特異的細胞死誘導カイコの作出方法
3−1.概要
本発明の第3の態様は、部位特異的細胞死誘導カイコの作出方法である。本方法によれば、細胞死によって特定の細胞又は組織を壊滅させた部位特異的細胞死誘導カイコを作出することができる。
3−2.作出方法
前述のように、細胞死誘導ベクターが1つの遺伝子発現ユニットで構成される場合には、細胞死誘導ベクターを有する部位特異的細胞死誘導カイコ系統が、同時に部位特異的細胞死誘導カイコとなる。また、細胞死誘導ベクターが第1及び第2発現ユニットの2つの遺伝子発現ユニットで構成される場合、両遺伝子発現ユニットを1個体内に有する遺伝子組換えカイコも部位特異的細胞死誘導カイコである。
ここでは第1及び第2発現ユニットがそれぞれ異なるカイコ系統に存在する場合において、部位特異的細胞死誘導カイコを作出する方法について説明をする。
本発明の作出方法は、交配工程と選択工程を含む。
「交配工程」とは、第1発現ユニットを有する遺伝子組換えカイコ系統と第2発現ユニットを有する部位特異的細胞死誘導カイコ系統とを交配させる工程である。交配は、二つのカイコ系統を常法に基づいて交配させればよい。2つの発現ユニットを有する遺伝子組換えカイコは、予め兄妹交配又は同系交配を行い、各発現ユニットに関してホモ接合体にしておくことが好ましい。
「選択工程」とは、前記第1及び第2発現ユニットを有する遺伝子組換えカイコ系統を選択する工程である。本工程では、交配工程後に得られるF1個体から、それぞれの発現ベクターにコードされた標識タンパク質の活性に基づいて、両遺伝子発現ユニットを有する個体を選抜することによって達成し得る。
以下に本発明の態様について、具体的な実施例を挙げて説明をするが、本実施例は本発明の一概念に過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。
<実施例1:T7-mBax融合遺伝子のクローニングとmBaxタンパク質の細胞内局在の確認>
(目的)
本発明の細胞死誘導ベクターの構築に使用するプロアポトーシス遺伝子をクローニングし、その遺伝子がコードするタンパク質の細胞内局在を確認する。
(方法)
プロアポトーシス遺伝子として、マウス由来のBax遺伝子(mBax遺伝子)を選択した。mBax遺伝子をクローニングするために、マウス3T3-L1細胞から総RNAを抽出した。抽出は、Trizol(life technologies)を用いて行った。具体的な手順は、キットに添付のプロトコルに従った。得られた総RNAの2μgを鋳型としてHigh-Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(Roche-diagnostics)を用いて逆転写反応を行い、cDNAを合成した。具体的な手順は、キットに添付のプロトコルに従った。作製したcDNAライブラリを鋳型にmBax-F(配列番号30)及びmBax-R(配列番号31)のプライマーペアを用いてmBax遺伝子をPCRで増幅した。PCRは、KOD plus(TOYOBO)を用いて行い、反応液組成は、添付のプロトコルに記載されたスタンダードな方法に従った。PCRサイクルの条件は、94℃15秒、55℃30秒、68℃40秒を1サイクルとして、35サイクル行った。得られた増幅産物を、Bgl II制限酵素で消化した後、pEF-BOS-T7 vector (Kasashima et al., 1999, Genes Cells 4: 667-683.)のBamHIサイトへ挿入してクローニングを行い、哺乳細胞発現用ベクター「pEF-BOS-T7-mBax」を構築した。
HeLa細胞は、Dulbeccos’s modified eagle medium with high glucose (DMEM; WAKO)に10% fetal bovine serum、1%ペニシリン・ストレプトマイシンを添加した培養液にて、37℃、5% CO2濃度の条件で培養した。培養のデッシュは、35mmのpoly-L-lysine被覆したガラスボトムデッシュ(Matsunami Glass Ind.)を用いた。細胞へのpEF-BOS-T7-mBaxの導入(トランスフェクション)は、Lipofectamine(登録商標) 2000 Transfection Reagent (Life Technologies)を用いて、試薬に添付のプロトコルに記載された方法に従った。トランスフェクションの48時間後、細胞を固定液(4%のパラホルムアルデヒド、0.4% Triton X-100を含むPBS)で、室温で20分間固定した。免疫染色は次の順に行った。まず、抗T7-Tag抗体(Novus Biologicals; goat polyclonal; 1/1000)を抗体反応液(2% horse serum、0.05% Tween 20を含むPBS)に希釈し、室温で1時間反応させた。細胞をPBSで洗浄した後、Alexa Fluor(登録商標) 488-gonjugated rabbit anti-goat IgG (Life Technologies; 1/1000)を抗体反応液に希釈し、室温で1時間反応させた。次に抗シトクロムc抗体(PharMingen; mouse monoclonal; 1/150)を抗体反応液に希釈し、4℃、12〜15時間反応させた。細胞をPBSで洗浄した後、Cy3-conjugated goat anti-mouse IgG (GE Healthcare UK Ltd; 1/1000)を抗体反応液に希釈し、室温で1時間、反応させた。蛍光像の撮影は、Axio Observer D1 system (Carl Zeiss)を用いた。
なお、T7-mBaxタンパク質の発現は、pEF-BOS-T7-mBaxをトランスフェクションしたHeLa細胞から常法により抽出したタンパク質をSDS-PAGEで分離後、抗T7抗体によるウエスタンブロットで検出して確認した(結果は図示せず)。
(結果)
図1に結果を示す。図1は、pBOS-T7-mBaxをトランスフェクションしたHeLa細胞の抗体染色図である。細胞内で発現したT7-mBaxは、抗T7抗体(αT7-tag; A)によって緑色蛍光(図中、白点で示される)として検出された。同時に、抗シトクロムc抗体(αcytoC; B)も反応させ、ミトコンドリアを赤色蛍光(図中、白点で示される)で標識した。Cは、AとBを重ねた図で、AとBの蛍光が一致した部位が存在すれば白点となって現れる。図1CからT7-mBaxタンパク質とシトクロムcの局在が一致していることがわかる。この結果から、T7タグを融合したT7-mBaxタンパク質もミトコンドリアに局在することが確認された。
<実施例2:細胞死誘導ベクターの構築>
(目的)
本発明の細胞死誘導ベクターを構築する。
(方法)
本実施例では、第1発現ユニットと第2発現ユニットの2つの遺伝子発現ユニットからなる細胞死誘導ベクターを構築した。
第1発現ユニットには3種の既知遺伝子発現ベクターを用いた。具体的には、中部絹糸腺特異的プロモーターであるカイコ由来のセリシン1(Ser1)プロモーターと、その下流に発現可能な状態で転写調節因子GAL4をコードするGAL4遺伝子を有するpBac[Ser1-GAL4: 3xP3-DsRed(pMSG-GAL4)](Tatematsu et al., 2010. Transgenic Res. 19: 473-487)、後部絹糸腺特異的プロモーターであるヤママユガ由来のフィブロイン(AyFib)プロモーターと、その下流に発現可能な状態でGAL4遺伝子を有するpBac[AyFib-GAL4: 3xP3-DsRed(pPSG-GAL4)](Sezutsu et al., 2009, J. Insect Biochem. Mol. Biol., 78: 1-10.)、及び脂肪体特異的プロモーターであるカイコ由来の30Kプロモーターとその下流に発現可能な状態でGAL4遺伝子を有するpBac[30K-GAL4: 3xP3-DsRed(p30 K-GAL4)](H. Sezutsu, personal communication)である。
第2発現ユニットには、pUAS-mBaxベクターを構築した。具体的には、実施例1で調製したpEF-BOS-T7-mBaxを鋳型として、in fusion-T7_F(配列番号32)及びin fusion-mBax_R(配列番号33)のプライマーペアを用いて、PCRを行い、T7-mBax ORFの増幅産物を得た。In-Fusion(登録商標) HD Cloning Kit(Clontech)を用いて、T7-mBax ORFの増幅産物をカイコの形質転換用遺伝子発現ベクターであるpBacMCS[UAS-SV40, 3xP3-EGFP] ベクター(Sakudoh et al., 2007, Proc. Natl. Acad. Sci. U S A 104: 8941-8946.)のBln I サイトに挿入した。具体的な挿入方法は、キットに添付の方法に従った。得られた第2発現ユニットをpBacMCS[UAS-T7-mBax-SV40, 3xP3-EGFP](本明細書では、しばしば「pUAS-T7-mBax」と略記する)とした。第2発現ユニットにおける転写因子の標的プロモーターはUASであり、ターミネーターはSV40ターミネーターである。また、標識遺伝子は、胚、幼虫及び成虫の眼においてEGFPを発現する3xP3 EGFPである。さらに、UASの上流と標識遺伝子の下流に、トランスポゾンの逆位末端反復配列(ITRs)として、それぞれpiggyBacL及びpiggyBacRを含んでいる。
また、第2発現ユニットの対照用として既知のpBac[UAS-EGFP/3xP3-EGFP](本明細書では、しばしば「pUAS-EGFP」と略記する)を使用した(Uchino et al., 2006, J. Insect Biotech. Sericology 75: 89-97)。この対照用第2発現ユニットにおける転写因子の標的プロモーターはUASであり、その下流に発現可能な状態でEGFP遺伝子が連結されている。ターミネーターはSV40ターミネーターである。また、標識遺伝子は、胚、幼虫及び成虫の眼においてEGFPを発現する3xP3 EGFPである。さらに、UASの上流と標識遺伝子の下流に、トランスポゾンの逆位末端反復配列(ITRs)として、それぞれpiggyBacL及びpiggyBacRを含んでいる。
<実施例3:部位特異的細胞死誘導カイコ系統の作出>
(目的)
実施例2で構築した細胞死誘導ベクターを用いて本発明の部位特異的細胞死誘導カイコ系統を作出する。
(方法)
実施例2で構築した細胞死誘導ベクターの第2発現ユニットpUAS-T7-mBaxとその対照用第2発現ユニットpUAS-EGFPを、Qiagen Plasmid Midi Kit (Qiagen)を用いて精製した。具体的な生成方法は、キットに添付のプロトコルに従った。精製後のpUAS-T7-mBaxとpUAS-UASを、それぞれトランスポゾン転移酵素をコードするpiggyBacヘルパープラスミドpHA3PIG(Tamura T. et al., 2000, Nature Biotechnology, 18, 81-84)と1:1の割合で混合し、非休眠系統であるカイコw1, pnd系統の産卵後4〜8時間の卵に顕微注入した(Tamura et al. 2000;前述)。注入後の卵は、加湿状態下、25℃で孵化するまでインキュベートした。孵化後、12時間明期と12時間暗期の光条件で25℃の飼育室にて、全齢を人工飼料(シルクメイト原種1-3齢S、日本農産工)で飼育した。人工飼料は2〜3日毎に交換した(Uchino K. et al., 2006;前述)。羽化後、兄妹交配を行い、得られたF1卵を孵化させた後、3xP3-EGFPマーカーによる眼の蛍光の有無で選抜して目的の遺伝子組換えカイコ系統を得た。遺伝子組換えカイコ系統は、休眠系統であるw-cと交配させて系統を維持した。
(結果)
pUAS-T7-mBaxが染色体に組込まれた部位特異的細胞死誘導カイコ系統として「4-3D系統」及び「4-4A系統」の2系統を得た。この2系統について、pUAS-T7-mBaxの染色体への挿入は、サザンブロッティングにより確認した。その結果、いずれの系統もゲノム中への挿入は1コピーであることが明らかになった(図示せず)。また、4-3D系統と4-4A系統における細胞死誘導ベクターのゲノム挿入位置をインバースPCRによって検証したところ、4-3D系統は16番染色体に順方向で、また4-4A系統は26番染色体に逆方向で挿入されていることが明らかとなった。どちらも遺伝子間領域であり、ゲノム内の遺伝子を破壊する等といった挿入による影響はないと考えられた。
<実施例4:部位特異的細胞死誘導カイコにおける部位特異的細胞死誘導の検証(1)>
(目的)
本発明の部位特異的細胞死誘導カイコ系統を用いて作出された部位特異的細胞死誘導カイコにおいて、部位特異的プロモーターが活性化される細胞又は組織で細胞死が誘導されることを検証する。
(方法)
実施例3で樹立した4-4A系統のヘテロオス個体を、Ser1系統(MSG-GAL4系統)、AyFib431a系統(PSG-GAL4系統)、及びSS19-1系統(30K-GAL4系統)のヘテロメス個体とそれぞれ交配させてF1個体を得た。ここで、MSG-GAL4系統は中部絹糸腺特異的なプロモーターを含む第1発現ユニットpMSG-GAL4を染色体に組込んだ遺伝子組換えカイコ系統(Tatematsu et al., 2010, Transgenic Res. 19: 473-487)であり、PSG-GAL4系統は後部絹糸腺特異的なプロモーターを含む第1発現ユニットpAyfib-GAL4を染色体に組込んだ遺伝子組換えカイコ系統(文献名Tsubota et al., 2014, G3. 4: 1347-1357)であり、そして30K-GAL4系統は脂肪体特異的なプロモーターを含む第1発現ユニットp30K-GAL4を染色体に組込んだ遺伝子組換えカイコ系統(文献名H. Sezutsu, personal communication)である。さらに対照用として、UAS-EGFP系統のヘテロオス個体をMSG-GAL4系統、PSG-GAL4系統、及び30K-GAL4系統のヘテロメス個体とそれぞれ交配させてF1個体を得た。
4-4A系統及びUAS-GFP系統はGFPが、またMSG-GAL4系統、PSG-GAL4系統、及び30K-GAL4系統はDsRedが、個体の選択マーカー遺伝子である。得られた胚の選択マーカーを調べてEGFP及びRedの両方のマーカーを発現する個体を選択した。選択個体を飼育し、5齢4日目の各幼虫から絹糸腺及び脂肪体を摘出して、中部絹糸腺、後部絹糸腺、及び脂肪体の形態を観察した。
(結果)
図2〜4に結果を示す。図2及び図3は絹糸腺を、図4は脂肪体を示している。
図2Aは、第1発現ユニットを含むMSG-GAL4系統と第2発現ユニットを含む4-4A系統を交配させて得られたF1個体のうち、第1発現ユニットと第2発現ユニットを包含する個体(MSG-GAL4/UAS-T7-mBax個体)の絹糸腺を示している。この図が示すように中部絹糸腺でmBax遺伝子を発現させた場合、中部絹糸腺(矢印)の退縮が観察された。一方、図2B及びCは、MSG-GAL4系統と対照用のUAS-EGFP系統を交配させて得られたF1個体のうち第1発現ユニットと対照用第2発現ユニットを有する個体(MSG-GAL4/UAS-EGFP個体)の絹糸腺を示している。図2Cの蛍光図で示すように、このF1個体では、中部絹糸腺(矢印)でEGFP遺伝子が発現しているが、中部絹糸腺の退縮は認められなかった。また、図2Dは、第2サブユニットのみを有し、mBaxタンパク質の発現が誘導されない4-4A系統の絹糸腺を示している。この個体も中部絹糸腺の退縮は認められなかった。
図3Aは、PSG-GAL4系統と4-4A系統を交配させて得られたF1個体のうち第1発現ユニットと第2発現ユニットを有する個体(PSG-GAL4/UAS-T7-mBax個体)の絹糸腺を示している。この図が示すように後部絹糸腺でmBax遺伝子を発現させた場合、後部絹糸腺の消失が確認された。一方、図3B及びCは、PSG-GAL4系統と対照用のUAS-EGFP系統を交配させて得られたF1個体のうち第1発現ユニットと対照用第2発現ユニットを有する個体(PSG-GAL4/UAS-EGFP個体)の絹糸腺を示している。図3Cの蛍光図で示すように、このF1個体では、後部絹糸腺でEGFP遺伝子が発現しているが、後部絹糸腺(矢印)の形態に異常は認められなかった。
図4Aは、30 K-GAL4系統と4-4A系統を交配させて得られたF1個体のうち第1発現ユニットと第2発現ユニットを有する個体(30 K-GAL4/UAS-T7-mBax個体)の脂肪体を示している。この図が示すように脂肪体でmBax遺伝子を発現させた場合、脂肪体の著しい萎縮が確認された。また、このF1個体では、5齢で幼虫の生育が停止し、吐糸する前に全ての個体が死亡した。一方、図4Bで示すように、4-4A系統では、脂肪体の形態に異常は認められず、5齢以降の生育も問題はなかった。
以上の結果から、本発明の細胞死誘導ベクターを有する部位特異的細胞死誘導カイコ系統を用いることで部位特異的プロモーターの活性により、任意の細胞や組織で細胞死を誘導できることが立証された。
<実施例5:細胞誘導ベクターによる部位特異的細胞死の検証>
(目的)
本発明の細胞誘導ベクターによる部位特異的細胞死誘導カイコでの部位特異的細胞死がアポトーシスによる細胞死であることを検証する。
(方法)
アポトーシスによる細胞死は、ゲノムが断片化する特徴がある。そこで、細胞死を誘導した組織のゲノムが断片化されていることを電気泳動法により確認した。30K-GAL4/UAS-T7-mBaxカイコ、及び対照区の30K-GAL4系統のカイコの5齢2日目幼虫及び4日目幼虫から脂肪体を摘出し、その脂肪体からフェノール法によりゲノムDNAを抽出した。抽出したゲノムDNAを1.8%のアガロースゲルで電気泳動を行い、30 K-GAL4/UAS-T7-mBaxと対照区の30K-GAL4間でゲノムDNAのサイズについて確認した。
(結果)
図5に結果を示す。この図は脂肪体から抽出したカイコゲノムDNAのアガロース電気泳動の結果を示す図である。図5Aは5齢2日目幼虫由来の、また図5Bは5齢4日目幼虫由来の、カイコゲノムDNAの電気泳動を示す。
2日目、4日目ともに、対照区の30K-GAL4由来のゲノムDNAでは、バンドの移動度が小さい高分子DNAのみが観察されたのに対して、細胞死を誘導した30K-GAL4/UAS-T7-mBax個体では、バンドが全体的にスメアーとなり、中低分子のゲノムDNAがラダー状に検出された。以上の結果から、本発明の細胞誘導ベクターによって誘導された部位特異的細胞死による細胞死はアポトーシスであることが示唆された。
<実施例6:部位特異的細胞死誘導カイコにおける部位特異的細胞死誘導の検証(2)>
(目的)
本発明の部位特異的細胞死誘導カイコによる細胞死誘導が成虫段階でも可能か否かを検証する。
(方法)
細胞死を誘導する細胞として、触角に存在するフェロモン受容細胞を選択した。フェロモン受容細胞では、成虫の体形成がほぼ完了した羽化3日前からBmOR1遺伝子の発現が始まる。BmOR1タンパク質は、カイコフェロモン物質ボンビコール(BOL)の受容体である。そこで、フェロモン受容細胞で細胞死を誘導させて、カイコ成虫の雄個体におけるフェロモンに対する応答行動(羽ばたき行動)に異常を生じるか否かを検証した。
第1発現ユニットpBac[BmOR1-GAL4: 3xP3-DsRed](「pBmOR1-GAL4」と略記する)を染色体に組込んだBmOR1-GAL4系統(Sakurai et al., 2004,PLos Genetics 7: e1002115)を交配に用いた。pBmOR1-GAL4は、BmOR1プロモーター(配列番号34)と、その下流に発現可能な状態でGAL4遺伝子を連結している。BmOR1-GAL4系統のヘテロメス個体を、実施例4と同様に4-4A系統のヘテロオス個体と交配させてF1個体を得た。F1個体のうち第1発現ユニットと第2発現ユニットを有する個体(BmOR1-GAL4/UAS-T7-mBax個体)から雄成虫個体を選択し、フェロモンに対する応答行動として羽ばたき行動を観察した。正常なカイコのオスは、メスが発するフェロモンを受容すると、激しく羽ばたきながらメスの位置を探し出す。行動実験には羽化後、3〜6日目のオスカイコ個体を用いた。
羽ばたき行動実験の装置を図6Aに示した。密閉された直径150mmの円筒形の透明なチャンバー内に、オスカイコ成虫をセットした。該チャンバーには、空気の流入口(cleaned air)と排出口(exhaust ventilation)があり、チャンバー内部を換気することができる。また、チャンバー上部にはボンビコールを添付したフィルターをセットできる孔を有しており、この孔の開閉を調節して、ボンビコールの暴露(stimulus)を行った。羽ばたき行動実験の方法は、Sakurai et al., 2011, PLoS Genet 7: e1002115に従って行った。実験には、n-hexaneに溶解したボンビコールを0.01ng、0.1ng、1ng、10ng、及び100ngで添付したフィルターを準備した。チャンバー内部にオスカイコ成虫をセットしてチャンバー上部の孔を10秒間開き、ボンビコールを暴露した(図6B;斜線部)。その後、内部気体を30秒間排出し(図6B;黒塗部)、20秒間のインターバルを設けた(図6B;白抜部)。このように、1サイクルを60秒間とし、それぞれ0ng、0.01ng、0.1ng、1ng、10ng、100ng、及び1000 ngのボンビコールを連続的に暴露して、チャンバー内部のオス成虫の行動を記録した。実験で使用したオス個体は、フェロモン受容細胞でBax遺伝子を発現するBmOR1-GAL4/UAS-T7-mBax系統の23頭、対照区として第1サブユニットのみを含むpBmOR1-GAL4系統の19頭、及び第1、第2サブユニットのいずれも含まないバックグラウンド系統の体9個体の行動について調べた。羽ばたき行動は、ボンビコール暴露中から連続して10秒間羽ばたき続けた個体を反応個体としてカウントし、各濃度で反応した個体の割合(%)を縦軸にプロットして、図7に示すグラフを作成した。
また、BmOR1-GAL4/UAS-T7-mBax個体におけるBmOR1遺伝子の発現を半定量的PCRにより比較した。BmOR1-GAL4/UAS-mBaxの雄成虫から触角を切り取り、実施例1に記載の方法に準じて総RNAを抽出した後、cDNAライブラリを合成した。対照用にはBmOR1-GAL4カイコ雄を用いた。続いて、合成した各cDNAライブラリを鋳型に配列番号35と配列番号36のBmOR1増幅用プライマーペアと配列番号37と配列番号38のRpS3(ribosomal protein S3)増幅用プライマーペアを用いてPCRを行った。PCRの条件は、サイクル数を30回及び35回とした他は、実施例1に記載の条件に準じた。RpS3遺伝子は、恒常発現型の遺伝子で、PCRによる増幅の内部標準として用いた。増幅産物10μgを1.0%ポリアクリルアミドゲルにて電気泳動を行った。
(結果)
図7にオスカイコの羽ばたき行動の結果を、図8にオス触角におけるBmOR1の発現量の結果を示す。グラフの縦軸は反応した個体の割合(%)、横軸はボンビコール濃度を示す。図中、sumi4-4A/1bはBmOR1-GAL4/UAS-T7-mBax系統を、1bはpBmOR1-GAL4系統を、そしてw1,pndはバックグラウンド系統を示している。対照区の系統(1b及びw1,pnd)のどちらも0.1ngの濃度で反応する個体が見られ、10ngの濃度では、ほとんどすべての個体が反応した。一方、BmOR1-GAL4/UAS-T7-mBax系統のsumi4-4A/1bでは反応を示した個体の出現が1 ngであった。さらに、1000ngの暴露を行っても、一部の個体は全く反応しなかった。以上の結果からフェロモン受容細胞でmBaxを発現させたオスカイコ個体では、ボンビコールに対する反応性が著しく低下することが明らかとなった。
また、図8から、フェロモン受容細胞でmBax遺伝子を発現するBmOR1-GAL4/UAS-mBax個体では、BmOR1遺伝子の発現量が著しく低下していた。これは、BmOR1遺伝子を発現するフェロモン受容細胞で細胞死が誘導され、フェロモン受容細胞数が減少していることを示唆している。
これらの実験結果から、本発明の部位特異的細胞死誘導カイコは、成虫の体形成がほぼ完了した段階であっても細胞レベルで細胞死を誘導できることが明らかとなった。
<実施例7:全身性プロモーターを用いた細胞死誘導の検証>
(目的)
部位特異的プロモーターに代えて全身性プロモーターを有する第1発現ユニットを用いた場合、個体全体でも細胞死を誘導できるか否かを検証する。
(方法)
全身性プロモーターであるアクチン3プロモーター(配列番号39)とその下流に発現可能な状態でGAL4遺伝子を連結したpBac[Actin3-GAL4: 3xP3-DsRed](Uchino et al., 2006, J. Insect Biotechnol. Sericology 75: 89-97)(「pActin3-GAL4」と略称する)を第1発現ユニットとした。この第1発現ユニットのみを染色体に組込んだ遺伝子組換えカイコ系統であるActin3-GAL4系統(Uchino et al., 2008, Insect Biochem. Mol. Biol. 38: 116-1173)のヘテロメス個体を、実施例4と同様に第2発現ユニットのみを含む4-4A系統のヘテロオス個体と交配させて、得られたF1胚の選択マーカーを確認し、発現ユニットの有無や保有する発現ユニットの種類によってF1胚を分類した。なお、pUAS-mBaxは眼におけるEGFP遺伝子が、pActin3-GAL4はDsRed遺伝子が、個体の選択マーカー遺伝子である。
(結果)
図9に結果を示す。「GFP」はpUAS-mBaxのみを、「Red」はpActin3-GAL4のみを有する胚を示す。「double」は第1発現ユニットpActin3-GAL4と第2発現ユニットpUAS-mBaxの両方を有する胚である。「lethal」は初期胚で致死となった胚を、また「Negative」はpActin3-GAL4及びpUAS-mBaxのいずれも有さない胚を示す。
図9からも明らかなように、第1及び第2発現ユニットの両方を有する胚、すなわち全身でmBaxが発現した胚(double)は見いだせなかった。一方、分離比から胚発生初期で致死となった胚(lethal)が、第1及び第2発現ユニットの両方を有する胚と推察される。したがって、Actin3プロモーターのような全身性プロモーターを用いてBax遺伝子をカイコで発現させた場合、細胞死は全身レベルで誘導され、胚発生初期で致死となることが示唆された。

Claims (8)

  1. 部位特異的プロモーター、及び哺乳動物由来のプロアポトーシスタンパク質又はその活性断片をコードするDNAをチョウ目昆虫細胞内で発現可能な状態で含み、
    前記DNAは、前記プロモーターによる直接的又は間接的な発現制御を受けるように配置されている細胞死誘導ベクター。
  2. 前記プロアポトーシスタンパク質がBaxタンパク質又はBakタンパク質である、請求項1に記載の細胞死誘導ベクター。
  3. 部位特異的プロモーター及び該プロモーターの下流にプロアポトーシスタンパク質又はその活性断片をコードするDNAを機能的に連結した、請求項1又は2に記載の細胞死誘導ベクター。
  4. 部位特異的プロモーター及び該プロモーターの下流に機能的に連結した転写調節因子をコードする遺伝子を含む第1発現ユニット、及び
    該転写調節因子の標的プロモーター及び該標的プロモーターの下流に機能的に連結したプロアポトーシスタンパク質又はその活性断片をコードするDNAを含む第2発現ユニット
    から構成される、請求項1又は2に記載の細胞死誘導ベクター。
  5. 前記転写調節因子をコードする遺伝子がGAL4遺伝子であり、該転写調節因子の標的プロモーターがUASプロモーターである、請求項4に記載の細胞死誘導ベクター。
  6. 請求項3に記載の細胞死誘導ベクターを含む部位特異的細胞死誘導カイコ系統。
  7. 請求項4又は5に記載の第2発現ユニットを含む部位特異的細胞死誘導カイコ系統。
  8. 請求項4又は5に記載の第1発現ユニットを有する遺伝子組換えカイコ系統と請求項7に記載の部位特異的細胞死誘導カイコ系統とを交配させる工程、及び
    前記第1及び第2発現ユニットを有する部位特異的細胞死誘導カイコを選択する工程
    を含む部位特異的細胞死誘導カイコの作出方法。
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