以下の実施の形態では、便宜上その必要があるときは、複数の形態またはセクションに分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
(実施の形態の代表例)
具体的な実施の形態の説明に先立ち、本明細書で提案する代表的な形態例について説明する。
以下で説明するプリント回路基板には、表面実装部品と挿入実装部品が混載されており、各部品は、はんだによってプリント回路基板の導電端子に接続されている。導電端子とは、例えばランド及びスルーホールである。例えばプリント回路基板上には、異なるまたは同じ大きさに構成される複数の表面実装部品の搭載位置に対応して複数のランドが形成されている。また、プリント回路基板には、異なるまたは同じ大きさに構成されるリード端子を有する複数の挿入実装部品の搭載位置に対応して複数のスルーホールが形成されている。
以下の各形態例では、表面実装部品と挿入実装部品が混載されるプリント回路基板の生産性向上のため、はんだペーストを、1つのメタルマスクを使用してプリント回路基板に転写及び充填する。すなわち、同一のメタルマスクを用い、表面実装部品用のランドの上に適正な量のはんだペーストを転写する工程と、挿入実装部品用のスルーホール内に適正な量のはんだペーストを充填する工程とをスキージを用いた一工程(場合によっては1回の転写作業で)で塗布することを実現する。しかし、このように1回の転写工程で、表面実装部品と挿入実装部品の実装に必要な量のはんだペーストを転写及び充填することは、いずれの特許文献にも考慮されていない。
ここで、塗布とは、ランドへのはんだペーストの転写とスルーホールへのはんだペーストを充填する概念を含むものである。
ところで、昨今における高周波回路化や高集積回路化に伴い、プリント回路基板の層数は増える傾向にあり、プリント回路基板の厚さも増加してきている。これに伴い、挿入実装部品を固定するために必要なはんだ量を、フローはんだ付け方式や噴流はんだ付け方式ではスルーホール内に十分供給できなくなっている。ところが、この技術課題も、いずれの特許文献でも考慮されていない。以下、説明する本願発明の代表的な実施例の一部では、このような課題に対しても有効な作用効果を奏するものである。
なお、前述したように、特許文献1には、挿入実装部品のリード端子に予めはんだ又ははんだペーストによるソルダーバンプを形成しておき、当該スルダーバンプをリフローすることにより挿入実装部品と表面実装部品を同時にはんだ付けする方法が提案されているが、この方法は、リード端子にソルダーバンプを予め形成する工程が必要であるのに加え、ソルダーバンプが形成されたリード端子を挿入可能な径を有するスルーホールを形成する必要があり、高密度実装の弊害になる課題がある。
そこで、各実施形態の例では、以下の特徴を有するスキージを、はんだペーストの転写及び充填に使用する。特徴の1つは、スキージをメタルマスクに押し当てたときに接触する位置よりも転写時の移動方向に対して前方側に凹部が形成されていることである。この凹部は、メタルマスクと接触する側の端辺とは反対の側(移動方向の側)の端辺がメタルマスクの側に突き出しており、凹部内に入り込んだはんだペーストを保持することができるようになっている。
他の特徴の1つは、スキージは、はんだペーストの転写時に(スキージの移動時に)、はんだペーストを凹部内に自然に取り込むことができるように、メタルマスクに対して位置決めされていることである。すなわち、スキージの移動方向に対して前方側に位置する凹部の端辺とメタルマスクの表面との間に隙間が開くように、スキージはメタルマスクに対して位置決めされている。
前記凹部は、前記隙間からスキージの凹部に取り込まれるはんだペーストを凹部の内部でローリングするような空間形状に形成されている。例えばスキージの移動方向を通るメタルマスクに対して垂直な面におけるスキージの断面について、前記凹部は円弧形状を有している。また、少なくとも凹部を含むスキージの移動方向側の表面は、はんだペースト中に含まれる液に対して撥液性を有している。この撥液性により、はんだペーストと前記凹部の内表面との摩擦力が低減し、凹部内におけるはんだペーストのローリングが容易になる。ローリングとは、凹部内に取り込まれたはんだペーストが、スキージの移動方向に対して凹部の最奥部(メタルマスクとの接触位置)から凹部の表面に沿ってスキージの移動方向(前方方向)に押し戻される動きをいう。このローリングによって押し戻されたはんだペーストは、開口以外の領域では前記隙間からスキージの外部に排出されるが、開口領域では凹部に新たに取り込まれるはんだペーストを開口内に押し込むように作用する。
スキージをメタルマスクに押し当てたときにスキージの移動方向に設けられる隙間は、はんだペーストが前記凹部に容易に入り込みやすい大きさである必要がある。この隙間がはんだペースト中のはんだ粒子の平均粒径の10倍より狭いと、スキージの凹部内に入ることが困難になり、はんだペーストがメタルマスク上を滑ってしまい、メタルマスクの開口部内にはんだペーストを十分に充填できなくなる。そこで、はんだペースト中のはんだ粒子の平均粒径の10倍以上の隙間が生じるように、スキージをメタルマスクに対して位置決めする。
ただし、この隙間が大きすぎると、スキージの凹部内に取り込まれたはんだペーストが凹部から外部に抜け出し易くなり、メタルマスクに形成された開口部内にはんだペーストを押し出す力が低減する。このため、隙間の大きさは、使用するはんだペースト中のはんだ粒子の平均粒径に基づいて適正な値に設定する。なお、はんだ粒子の平均粒径は、例えばレーザ回折法によって測定することができる。
表面実装に使用されているスキージは、機械的強度等の点で優れた金属製のメタルスキージが主流である。一方、メタルスキージは、メタルマスク表面へのダメージが大きく、メタルマスクの変形と開口部の位置ずれを生じさせる原因にもなる。そのため、実施の形態では、メタルマスクにダメージを与えないポリウレタンを主成分とするスキージを用いる。ポリウレタンを主成分とするスキージは、変形し易くメタルマスクに対する負担が少ない。しかし、スキージが変形しすぎると、メタルマスクとスキージのアタック角度が変化し、はんだペーストの転写性にばらつきを生じる原因になる。このため、スキージは、硬度が80度以上(好ましくは85度、さらに好ましくは95度)の樹脂で形成することが望ましい。この硬度であれば、印圧によるスキージ先端の変形を抑制することが出来る。
また、スキージの変形を抑制する他の手段として、ステンレス鋼等の導電性を有する材料をスキージの芯材に使用し、その周囲を、ポリウレタンを主成分とする樹脂で覆う手法を採用する。この構造を有するスキージを用いれば、メタルマスクとスキージのアタック角度の変化を一段と抑制することが出来る。
また、スキージの先端部(スキージの移動方向に対して前方側)のうち、はんだペースト中に含まれる液に対して撥液性を有している部分は、その表面に、SiO2、フッ素樹脂、炭化水素、フッ素基含有炭化水素のうち少なくとも一種以上の材料からなる膜が形成されている。前述したように、スキージの芯材にステンレス鋼等の導電性を有する材料を使用することで、撥液性を有する膜を成膜するときの電極を兼ねることが出来る。
メタルマスクには、所定の位置に、適正な量のはんだペーストを転写できるように必要な位置に必要な大きさの開口が形成されている。開口は、プリント回路基板に形成された表面実装部品用のランドの位置と挿入実装部品用のスルーホールの位置に対向する位置に形成されている。ここで、開口は、レーザ加工、メッキ法、エッチング法などで形成される。
例えばエッチング法では、前記メタル板の全域にフォトレジストを両面に塗布し、そのレジスト膜を所定パターンの露光マスクを用いて露光処理した後にエッチング処理することにより形成される。
ところで、プリント回路基板に実装される各種の表面実装部品は、必要とするはんだペーストの量が異なっている。しかし、寸法がいずれも同じ大きさの開口を用いてはんだペーストを転写すると、必要量以上のはんだペーストが転写されてしまうことがある。そこで、少量のはんだペーストが必要な小型の表面実装部品に対応する開口には、その内側にはんだペーストの転写量を抑制する部材(構造)を設け、それぞれの表面実装部品に対応したはんだペースト転写量の適正化を図る。例えば、はんだペーストの通過を妨げる、又は、保持されるはんだペーストの量を低減する構造体(例えば十字構造等)を開口の内部に配置することで実現できる。
はんだペーストの転写工程の対象となるプリント回路基板の表面には、前工程で銅電極配線やソルダーレジスト等が5μm〜80μm程度の形成されている。このため、プリント回路基板の表面は平坦で無く凹凸が形成されている。そのため、約100μm程度の厚みを有する一般的なメタルマスクでは、はんだペーストの転写時にプリント回路基板の表面と完全には密着できず(メタルマスクとプリント回路基板との間に隙間が形成され)、密着していない部分からはんだペーストが滲み出す可能性が高い。これを解決するため、形態例に係るメタルマスクには、プリント回路基板と接触する側の面に有機材料を形成し、プリント回路基板表面との密着度を高める。
また、メタルマスクの開口に充填されたはんだペーストが、メタルマスクの開口内の壁面に残存すると、転写されるはんだペーストの量が変化し、安定した生産を行うことが出来なくなる。そこで、各形態例では、少なくともメタルマスクの開口とメタルマスクの表面を、はんだペースト中に含まれる液に対して撥液性を有するように加工する。この撥液性により、メタルマスクからのはんだペーストの離型性が向上し、安定的にはんだペーストをプリント回路基板に転写することが出来る。また、メタルマスクの表面に撥液性の膜が形成されると、メタルマスクとスキージとの摩擦力が低減し、メタルマスクの変形が抑制され、はんだペースト転写位置の精度が向上する。
メタルマスクのはんだペースト中に含まれる液に対して撥液性を有している部分には、メタルマスクの表面にSiO2、フッ素樹脂、炭化水素、フッ素基含有炭化水素のうち少なくとも一種以上の材料からなる膜が形成される。
はんだペーストは、はんだ粒子の他、フラックス等の成分からなる。ところで、はんだ固形分量は体積比で約半分程度である。このため、プリント回路基板に形成されたスルーホールの充填に必要とされるはんだペーストは、スルーホールの内体積からリード端子体積を除いた量の倍程度が必要である。そのため、ある形態例では、十分なはんだペーストを供給できるように、プリント回路基板に形成されたスルーホールの断面形状を、挿入実装部品の挿入口側にスルーホールの径が広いテーパー状とする。当該形状により、リード端子を固定するのに十分なはんだペーストを充填するのが容易になる。また、他の形態例では、プリント回路基板に形成されたスルーホールの断面形状を、挿入実装部品の挿入口側でスルーホールの径が広い段差形状とする。
挿入実装部品は、はんだペーストを転写した上からリード端子をスルーホール内に装着する必要があるが、はんだペーストが転写されているため、スルーホールの位置をカメラ上で確認することが出来ない。そのため、挿入実装部品の自動挿入を確実にするため、リード端子の大きさに比べ、スルーホールの径を比較的大きく形成しておく必要がある。このようなスルーホール形状とすることにより、リード端子を有する挿入実装部品を搭載する自由度が増し、挿入実装部品の自動挿入が容易になる。
(各形態例に共通する特徴)
最初に、本明細書で提案する形態例に共通する特徴を説明する。前述したように、実施の形態に係る製造方法は、表面実装部品と挿入実装部品を混載するプリント回路基板を製造する方法に関する。この製造方法は、前記2種類の部品の実装に用いるはんだペーストを同一のメタルマスクを用いて一工程で(一度に)供給することを特徴とする。
すなわち、一度の転写工程によって、はんだペーストを、プリント回路基板の所定の位置に転写すると共に、スルーホール内に充填することを特徴とする。
図1に、後述する形態例に共通するプリント回路基板の製造プロセスの概要を示す。図1に示すプリント回路基板1は、表面実装部品7(71、72)と挿入実装部品8を同じ基板面に混載的に実装する基板である。工程(a)に示すように、プリント回路基板1には、スルーホール11、ランド12、銅電極配線14が形成されている。銅電極配線14は、ソルダーレジスト13等の絶縁層により保護されている。
図2に、はんだペーストの転写に使用するスキージ5の概要を示す。スキージ5は、芯材53の回りをポリウレタン52で覆った構造を有している。ポリウレタン52のうちメタルマスク6と接する角部には、凹部54が形成されている。凹部54は、スキージ5の移動方向4に対し、ポリウレタン52とメタルマスク6が接する位置よりも前方側に形成されている。
図3に、形態例で使用するメタルマスク6の概要構成を示す。メタルマスク6には、はんだペースト21の転写位置に開口62が形成されている。開口62は、メタルマスク6の一方の面から他方の面まで貫通している。メタルマスク6は、ステンレス鋼からなるメタル板61と、プリント回路基板1に接する側の本体表面に形成された有機層63とで構成される。
(比較例)
形態例の説明に先立ち、従来技術による実装工程を比較例として説明する。従来技術による実装工程は、(1) 表面実装部品7の搭載工程と、(2) 噴流はんだ付け方式による挿入実装部品8の搭載工程の2段階で実行される。
図4は、実装工程の第1段階であり、表面実装部品7(71、72)のみをプリント回路基板1に搭載する手順を表している。図5は、実装工程の第2段階であり、表面実装部品7(71、72)が実装されたプリント回路基板1に、噴流はんだ付け方式によって挿入実装部品8を追加的に搭載する手順を表している。
図4の工程(a)に示すプリント回路基板1には、スルーホール11とランド12が形成されている。プリント回路基板1の表面に形成された銅電極配線14の表面は、ソルダーレジスト13等の絶縁層により保護されている。これらの部材(スルーホール11、ランド12、ソルダーレジスト13、銅電極配線14)により、プリント回路基板1の表面に段差が生じる。図示していないが、プリント回路基板1を構成するガラスエポキシの凹凸、銅電極のめっき厚のばらつき、ソルダーレジスト13の塗布厚のばらつきなどもプリント回路基板1の表面に凹凸が生じる原因である。
図4の工程(b)では、まず、メタルマスク6Aをプリント回路基板1の表面に接触させる。メタルマスク6Aは、形態例で使用するメタルマスク6(図2)と異なり、有機層63も凹部54も形成されていない。次に、メタルマスク6Aの表面にはんだペースト21を塗布し、その後、メタルスキージ51をメタルマスク6Aの表面に沿って移動させる。メタルスキージ51も、形態例で使用するメタルスキージ5とは異なり、凹部54を有していない。メタルスキージ5の移動により、はんだペースト21は、メタルマスク6Aに形成された開口62を通じ、プリント回路基板1の表面実装部品7を搭載する位置に形成されたランド12の上に転写される。
この際、挿入実装部品8を搭載する位置(スルーホールの位置)には、はんだペースト21は転写されない。その理由は、プリント回路基板1をリフロー炉に通してはんだペースト21を溶融させ、表面実装部品7をランド12に固定する際に、もしスルーホール11内にはんだペースト21が存在していると、同時に溶融したはんだがスルーホール11を塞いでしまし、次の工程(c)で挿入実装部品8をスルーホールに挿入できなくなるためである。
また、メタルマスク6Aは、プリント回路基板1上のランド12、銅電極配線14、ソルダーレジスト13による段差のため、プリント回路基板1とメタルマスク6Aとが密着できないのみならず、図示しているように、メタルマスク6Aそのものが前記凹凸により変形してしまう。プリント回路基板1とメタルマスク6Aとの間に隙間が発生するので、この隙間にはんだペースト21が滲み出し、ブリッジ(はんだショート)やはんだボールなどの不良を起こす原因となる。
図4の工程(c)は、はんだペースト21を、プリント回路基板1のうち表面実装部品7を搭載する位置のランド12の表面に転写した状態を示している。小型の表面実装部品71を搭載するランド12aには、ランド12aより狭い領域にはんだペースト21を転写している。一方、大型の表面実装部品72を搭載するランド12bには、ランド12bより広い領域にはんだペースト21を転写している。これは、表面実装部品7の種類により必要とするはんだペースト21の量が異なるためである。
ランド21bよりはみ出してはんだペースと21を転写する場合、プリント回路基板1とメタルマスク6Aとの間に大きな隙間があると、はんだペーストが滲み出しすぎる可能性がある。この滲み出しは、ブリッジ(はんだショート)やはんだボールなどの不良を起こす原因になる。図4では、全体的に厚みが同じメタルマスク6Aを使用しているが、はんだペースト21の必要量が極端に異なる場合には、局部的にメタル板61の厚みを変化させたメタルマスク6Aを使用することもある。
図4の工程(d)は、プリント回路基板1のランド12にはんだペースト21を転写した位置に合わせて、表面実装部品7(71、72)をマウンタ装置(図示せず)で搭載した状態を示している。表面実装部品7として、小型の表面実装部品71と大型の表面実装部品72が搭載されている。
図4の工程(e)は、表面実装部品7を搭載したプリント回路基板1をリフロー炉(図示せず)に通すことによりはんだペースト21を融解し、表面実装部品7をプリント回路基板1のランド12に固定した状態を示した概要図である。このように、従来例では、第1工程において、表面実装部品7だけをリフロー方式でプリント回路基板1にはんだ付けする。
図5の工程(a)は、図4で作製したプリント回路基板1(表面実装部品7をプリント回路基板1に実装した状態)を示している。図5の工程(b)では、挿入実装部品8のリード端子81を、プリント回路基板1に形成されたスルーホール11に挿入する。
図5の工程(c)では、プリント回路基板1の裏面(実装面とは反対側の面)から、プリント回路基板1に形成されたスルーホール11と挿入実装部品8のリード端子81に向けて、フラックス3をフラックス塗布ノズル31から噴霧する。フラックス3の塗布により、プリント回路基板1に形成されたスルーホール11と挿入実装部品8のリード端子81の酸化皮膜等が除去され、はんだ2の濡れ性が向上される。
しかし、プリント回路基板1に形成されたスルーホール11に挿入実装部品8のリード端子81を挿入しているため、フラックス3がスルーホール11内に十分供給されない可能性があり、はんだ2の濡れ上がりを阻害する原因となる。
図5の工程(d)では、プリント回路基板1に形成されたスルーホール11に挿入した挿入実装部品8のリード端子81に向けて、プリント回路基板1の下方から溶融はんだ22を噴流はんだノズル23からフローする。図5は、説明の都合上、噴流はんだノズル23からフローしている溶融はんだ22がプリント基板1に到達していない状態を表している。実際には、溶融はんだ22が、スルーホール11およびスルーホール11に挿入した挿入実装部品8のリード端子81に到達し、保持される。これにより、溶融はんだ22が、挿入実装部品8のリード端子81とスルーホール11との間に入り、挿入実装部品8をプリント回路基板1に固定することが出来る。
挿入実装部品8には、リード端子81が複数設けられている。これらのリード端子81のピッチが、噴流はんだノズル23の径(溶融はんだ22の噴流の大きさ)より狭い場合、溶融はんだ22を複数のリード端子81に同時に供給することができる。一方、リード端子81のピッチが、噴流はんだノズル23の径(溶融はんだ22噴流の大きさ)より広い場合、位置を変えながら、溶融はんだ22を噴流はんだノズル23から複数回フローする必要がある。
なお、溶融はんだ22を噴流はんだノズル23からフローする際、溶融はんだ22の熱によりプリント回路基板1が過熱され、隣接するスルーホール11やリード端子81に塗布しておいたフラックス3が飛散する場合がある。フラックス3が飛散すると、はんだ2の濡れ性が悪くなるため、十分な量のはんだ2をスルーホール内に供給できなくなる恐れがある。
図5の工程(e)は、プリント回路基板1に、表面実装部品7と挿入実装部品8が実装された状態を示している。表面実装部品7は、適正な量のはんだペースト21を供給できれば、プリント回路基板1のランド12に実装することができる。一方、挿入実装部品8は、プリント回路基板1の下方から溶融はんだ22をフローして実装する。このため、プリント回路基板1の厚さが厚ければ厚いほど、プリント回路基板1の上部まではんだ2を供給することが困難になる。
そこで、この対策として、挿入実装部品8についても、表面実装部品7の場合と同様に、はんだペースト21をプリント回路基板1の表面に転写する手法が考えられている。この場合、図6に示すように、スルーホール11の周辺まではんだペースト21を転写する面積を広げ、はんだペースト21の体積を稼ぐ必要がある。例えば、プリント回路基板1の厚みが3.2mmであり、スルーホール11の径がφ1mmであり、リード端子81の径がφ0.6mmである場合、スルーホール11の体積は、約2.5mm3になる。因みに、スルーホール内に挿入したリード端子81の体積は、約0.9mm3である。このため、スルーホール11にリード端子81を挿入した状態で、スルーホール11の充填に必要となるはんだの体積は、1.6mm3になる。
はんだペースト21を構成する固形分の割合は、全体の約50vol%である。このため、はんだペースト21の転写に必要な体積は、3.2mm3となる。換言すると、充填する体積に対して2倍相当の体積が必要となる。そして、メタルマスク6Aの厚みが0.2mmの場合、はんだペースト21を転写する面積は、16mm2となる。この面積の確保には、プリント回路基板1上に、1つのスルーホール11について、例えば2mm×8mm(又は4mm×4mm)のエリアが必要になる。当然、メタルマスク6Aの厚みが薄い場合には、より広い面積を必要とする。
図7に、スルーホール11が3列で配置される例を示す。図7の場合、真ん中の列を構成するスルーホール11に対するはんだペースト21の転写面積が明らかに小さくなっていることが分かる。本来、真ん中の列のスルーホール11についても、1列目や3列目のスルーホール11と同じ面積のはんだペースト21が必要である。このため、スルーホール11が3列連続する場合には、真ん中の列のスルーホール11に対するはんだの充填不足が発生する。
以上より、プリント回路基板1の表面にスルーホール11用のはんだペースト21も転写する手法は、(1) 隣接するスルーホール11のピッチが十分に広く、(2) リード端子81の配置が2列以下であり、(3) 周辺(はんだの充填に必要な体積に対して2倍相当に対応するはんだペースト21の転写に必要な面積を確保でき)に表面実装部品7などが存在しないこと、(4) プリント回路基板1の厚さが薄いこと、が必要となる。
なお、例えば、プリント回路基板1の厚さが1.6mmでは充填不足が生じることとなる。
ところが、昨今におけるプリント回路基板1の高性能化に伴い、実装部品の高集積化は今後も進むものと推測される。また、プリント回路基板1に実装すべき部品数も増加している。この結果、プリント回路基板11に形成されたスルーホール11の周辺にはんだペースト21を転写するための十分なエリアを確保できない状況が生じている。このため、高密度実装が要求されているプリント回路基板1では、スルーホール11を充填するのに必要とされる量のはんだペースト21を、基板表面に転写するのに必要なスペースの確保することができない。結局、挿入実装部品8の実装に必要な量のはんだペースト21をプリント回路基板1の表面に転写する手法(図6、図7)は、実装密度が高いプリント回路基板1には採用できない。
図8に、噴流はんだ付け方式(図5)により挿入実装部品8をプリント回路基板1に搭載した場合の結果を示す。図8(a)は、挿入実装部品8を実装後のX線画像(斜視)であり、図8(b)は、実装部分を概念的に表す断面図である。図8(c)は、スルーホール11内におけるはんだ2の状態を説明する拡大図である。
図8に示すように、噴流はんだ付け方式(図5)では、プリント回路基板1に形成されたスルーホール11の半分程度の高さまでしかはんだ2が充填されていない。この際、はんだ2の先端部分の断面は、基板表面方向(挿入実装部品8が実装される面)に対して凸形状となる。なお、図8におけるプリント回路基板1の厚さは、3.2mmである。プリント回路基板1に形成されたスルーホール11内ではんだ2の濡れ上がりが不足し、スルーホール11を完全に充填できなかった原因は、噴流はんだ付け方式でのフラックス3の塗布不足、噴流はんだ付けの際の熱によるフラックス3の飛散などにより、スルーホール11内の銅電極表面および挿入実装部品8のリード端子81表面が酸化等により汚染されたためと考えられる。
プリント回路基板1に形成したスルーホール11内のはんだ量が75%未満の場合、温度サイクル等の信頼性試験(実用化試験)に耐えられない。このように、厚さが3.2mmのプリント回路基板1には、噴流はんだ付け方式(図5)は使用できないが、プリント回路基板1の厚さが1.6mm程度と薄い場合には、噴流はんだ付け方式(図5)によるはんだ接続が可能である。
(形態例1)
以下、本明細書で提案する形態例1について詳細に説明する。ここでは、再び、図1〜図3を用いて説明する。図1は、本形態例によるプリント回路基板の製造プロセスの概要を示し、図2は、本形態例で使用するスキージ5の概要を示し、図3は、本形態例で使用するメタルマスク6の概要を示している。
まず、図2を用い、スキージ5の構造を説明する。スキージ5は、ステンレス鋼からなる芯材53の周りをポリウレタン52で覆った構造を有している。この構造を有するスキージ5は、(1) 金型の中心部にステンレス鋼からなる芯材53を固定した状態で、(2) 液体のポリウレタン樹脂を流し込み、(3) 泡抜きし、(4) 熱処理を加えることにより形成することができる。
はんだペースト印刷機については図を割愛する。スキージ5は、はんだペースト印刷機のスキージホルダに取り付けられ、その取り付け角度により、はんだペースト21を印刷する(転写する)際のアタック角が決定される。一般的なアタック角度は60〜70°である。スキージ5がメタルマスク6の上面65と接する先端部に凹部54が形成されている。図2は、スキージ5をスキージホルダに取り付けた状態での概略を示している。
スキージ5は、スキージ5をメタルマスク6の上面65に押し当てたときに、スキージ5が上面65と接触する位置よりも印刷時(転写時)におけるスキージ5の移動方向4に対して前方側に凹部54を有している。図2に示すように、凹部54は、スキージホルダにスキージ5が所定のアタック角度で取り付けられた際に、スキージ5がメタルマスク6の上面65と接触する位置(凹部54の第1の端辺)とは反対の側の端部(凹部54の第2の端辺)が上面65の方向に突き出し、かつ、上面65との間に所定の隙間(凹部先端ギャップ56)が開くように形成されている。
スキージ5を、その移動方向に傾斜してスキージホルダに取り付けるため、凹部54における内部最高点の上面65からの高さ57は、メタルマスク上面65と凹部先端ギャップ56より高くなっている。そのため、はんだペースト21を印刷(転写)する場合には、スキージ5の先端に形成された凹部54の内部にはんだペースト21が閉じ込められる。また、凹部54の最奥部から表面に沿って凹部先端ギャップ56に戻ってきたはんだペースト21の動きにより、凹部先端ギャップ56から取り込まれるはんだペースト21をメタルマスク6の開口62に強く押し出すことができる。
なお、凹部54における内部最高点の上面65からの高さ57が、上面65と凹部先端ギャップ56より低い場合、凹部54に入ったはんだペースト21を十分に閉じ込めることが出来ず、メタルマスク6に形成された開口62に対するはんだペースト21の吐出力が低下する。吐出力が低下すると、プリント回路基板1に形成されたスルーホール11の内部へのはんだペースト21の充填性が低下し、はんだ2による挿入実装部品8の固定が不十分になり、実装信頼性が低下する可能性が生じる。従って、本形態例では、スキージ5を図2に示す姿勢に維持してはんだペースト21の吐出力を高め、スルーホール11の内容積全体へのはんだペースト21の充填を可能としている。
また、スキージ5の表面には、はんだペースト21に含有する液に対して撥液性を有する膜55が成膜されている。撥液性を有する膜55は、芯材53に使用したステンレス鋼を電極とし、真空中でプラズマ放電による基材表面の線状を施した後、炭化水素ガス、フッ素含有探査水素ガスなどのガスを注入することにより形成する。撥液性を有する膜55は、少なくともスキージ5の先端部に形成した凹部54の内側に成膜する。好ましくは、撥液性を有する膜55を凹部54の周囲のスキージ5の表面にも形成する。
撥液性を有する膜55をスキージ5の表面に成膜することにより、はんだペースト21に含有する液に対して撥液性が発揮され、スキージ5の先端部に形成した凹部54内におけるはんだペースト21のローリング性が向上し、はんだペーストの動的粘性が低下する。そのため、はんだペースト21の流動性が良好になり、プリント回路基板1に形成したランド12上へのはんだペースト21の転写性が向上するとともに、プリント回路基板1に形成したスルーホール11内へのはんだペースト21の充填性が向上する。
図3に、本形態例に使用したメタルマスク6の概要を示す。メタルマスク6は、平板状のメタル板61に対し、はんだペースト21を転写する位置に開口62を形成した構造を有している。
前述したように、プリント回路基板1の表面には、ランド12、銅電極配線14、ソルダーレジスト13による段差が生じており、既存のメタルマスク6Aによってはプリント回路基板1に密着できない問題がある。そこで、本形態例では、メタル板61のうちプリント回路基板1に接する側の面を、柔軟性を有する有機層63で被覆する。柔軟性を有する有機膜63の厚さは、プリント回路基板1の凹凸の大きさに応じて設定する。有機層63の厚さは、プリント回路基板1の凹凸の大きさよりも少なくとも大きくなるように設定する。
はんだペースト21を形成する位置では、プリント回路基板1の上面がメタルマスク6と完全に密着し、はんだペースト21が滲み出さないようにすることが重要である。本形態例では、有機層63がプリント回路基板1の凹凸に応じて変形するため、メタルマスク6とプリント回路基板1を完全に密着できる。このため、吐出力が向上したスキージ5(図2)を用いても、はんだペースト21の滲み出しを防止することができる。
ところで、実装部品は、その種類により、必要とするはんだペースト21の量が異なる。特に、0402サイズの微小なチップ部品のように、極端に必要とするはんだペースト21の量が少ないものがある。このような微小なチップ部品に対し、はんだペースト21の量が多いと、電極間距離が短いことからショート(ブリッジ)の原因となる。
そのため、それぞれの実装部品が必要とするはんだペースト21の量だけを転写することが重要である。本形態例に使用したメタルマスク6(図3)では、必要とするはんだペースト21の量が少ない実装部品に対応し、はんだペースト21の吐出性を抑制するための部材66を開口62内に形成している。吐出性を抑制するための部材66の形状を変えることにより、プリント回路基板1に供給するはんだペースと21の量を制御することができる。これにより、種類が異なる各種の実装部品が混在しても必要な量のはんだペースト21を確実に転写することができる。
図1に戻り、プリント回路基板1上に、表面実装部品と挿入実装部品を混載的に実装する製造プロセスの流れを説明する。図1の工程(a)に示すように、プリント回路基板1には、スルーホール11とランド12が形成されている。また、銅電極配線14の表面は、ソルダーレジスト13等の絶縁層により保護されている。そのため、ランド12、銅電極配線14、ソルダーレジスト13による段差が生じている。図示していないが、プリント回路基板1中のガラスエポキシの凹凸、銅電極のめっき厚ばらつき、ソルダーレジスト13の塗布厚ばらつきなどもプリント回路基板1の表面凹凸の原因である。
図1の工程(b)では、まず、メタルマスク6(図3)をプリント回路基板1の表面に接触させる。次に、メタルマスク6の表面にはんだペースト21を塗布し、その後、メタルマスク6の表面に沿ってスキージ5(図2)を移動させる。先端部に凹部54を有するスキージ5の移動により、はんだペースト21は、メタルマスク6の開口62を通じて、表面実装部品7を搭載する位置に形成されたランド12に転写されるだけでなく、挿入実装部品8を搭載する位置に形成されたスルーホール11の内部全体にも充填される。
図に示すように、スキージ5の移動時、メタルマスク6の有機層63は、プリント回路基板1の表面に形成されたランド12、銅電極配線14、ソルダーレジスト13による段差形状に応じて変形する。この結果、プリント回路基板1とメタルマスク6とが密着し、はんだペースト21の滲み出しが防止される。このため、本形態例で採用する製造方法の場合には、ブリッジ(はんだショート)やはんだボールなどの不良を起こすことがない。
図1の工程(c)は、メタルマスク6の表面に沿ってスキージ5を一方向に移動させ、プリント回路基板1にはんだペースト21を印刷した後の状態を表している。図に示すように、スキージ5の一度の移動により、はんだペースト21が、表面実装部品7を搭載する位置のランド12の表面だけでなく、挿入実装部品8を搭載する位置のスルーホール11の内部にも過不足なく供給できている。
また、本形態例の場合、メタルマスク6(図3)には、少量のはんだペースト21を転写できるように、メタルマスク6の開口部62にはんだペースト21の吐出性を制御するための部材66が形成されている。このため、小型の表面実装部品71を搭載するランド12aには、当該部品に適応した少量のはんだペーストを転写できている。一方、大型の表面実装部品72を搭載するランド12bには、はんだペースト21の吐出性を制御するための部材66が形成されていないため、メタルマスク厚(メタル板61の厚さ+有機層63の厚さ)に相当する大量のはんだペースト21を転写できている。工程(c)では、転写量の違いを、はんだペースト21の高さの違いで表している。
ところで、本形態例で使用するスキージ5は、前述した凹部54によって、はんだペースト21をスルーホール11の奥深くまで吐出することができる。このため、本形態例の場合、はんだペースト21は、図9及び図10に示すように、スルーホール11のパッド部にのみ転写すれば良く、比較例のように、スルーホール11の体積の2倍相当の面積まではんだペースト21を転写する必要がない。
従って、本形態例の場合、スルーホール11の隣接エリアにも表面実装部品7や挿入実装部品8を搭載することができ、各種電子部品を高密度に搭載することができる。すなわち、集積度の高いプリント回路基板を実現できる。
勿論、図10に示すように、スルーホール11が3列以上密に配置される場合でも、本形態例のスキージ5を用いれば、全てのスルーホール11に必要な量のはんだペースト21を充填することができ、比較例(図6、図7)のように無駄なエリアを必要とせずに済む。なお、スルーホール11の周辺に配置される導電端子の一部又は全部はランド12でも良い。
図1の工程(d)は、マウンタ装置(図示せず)によって、プリント回路基板1に部品を搭載した状態を表している。ランド12の位置には表面実装部品7(71、72)が搭載され、スルーホール11の位置には挿入実装部品8が搭載されている。本形態例の場合、プリント回路基板1上におけるはんだペースト21の転写領域は、スルーホール11の形成領域とほぼ一致する。このため、プリント回路基板1上に現れるはんだペースト21のほぼ中央位置にリード端子81を位置決めすれば、挿入実装部品8をスルーホール11内に挿入することができる。なお、プリント回路基板1の裏面からは、少量のはんだペースト21がリード端子81によって押し出されるように突出する。また、図1では、便宜上、挿入実装部品8のリード端子81のうち2本のみを示している。
図1の工程(e)は、表面実装部品7(71、72)及び挿入実装部品8を搭載したプリント回路基板1をリフロー炉(図示せず)に通し、表面実装部品7をプリント回路基板1のランド12に、挿入実装部品8をスルーホール11内にそれぞれ固定した状態を示している。このように、本形態例の場合、表面実装部品7と挿入実装部品8を同時にリフロー方式ではんだ付けすることができる。
図11には、形態例に係る製造プロセス(図1)を経て挿入実装部品8をプリント回路基板1に搭載した場合の結果を示す。図11(a)は、挿入実装部品8を実装後のX線画像(斜視)であり、図11(b)は、実装部分を概念的に表す断面図である。図11(c)は、スルーホール11内におけるはんだ2の状態を説明する拡大図である。
図11に示すように、本形態例の製造プロセス(図1)の場合、プリント回路基板1に形成されたスルーホール11の内部がはんだ2で完全に充填されている。ここで使用したプリント回路基板1の基板の厚さは、3.2mmである。もっとも、基板の厚さは、1.6mmでも、2.4mmでも、4.8mmでも構わない。厚さが大きいほど、本形態例による製造プロセスの優位性が高くなる。前述の通り、噴流はんだ付け方式では、スルーホール11の内部にはんだ2を十分に充填できなかったが、本形態例の方式では完全に充填することができた。
その理由は、はんだペースト21に含有するフラックス3の成分などがスルーホール11内の銅電極表面と挿入実装部品8のリード端子81の表面を清浄化したためと考えられる。このように、プリント回路基板1に形成したスルーホール11内のはんだ量が100%(75%以上)であり、温度サイクル等の信頼性試験(実用化試験)に十分耐えることができた。
なお、実プロセスでは、様々な要因で全てのスルーホール11が完全にはんだ2で充填されない可能性もある。図12に、そのような場合のスルーホール11内の構造を示す。この場合、はんだペースト21はプリント回路基板1の上面(実装面)側から充填されているため、スルーホール11内のはんだ2の断面は、挿入実装部品8の実装面側に窪む形状となる。この断面形状は、電子部品の実装面の側からはんだペースト21が充填される本形態例のプリント回路基板1に特有の構造である。
(形態例2)
以下、形態例2について説明する。本形態例は、プリント回路基板1に形成するスルーホール11の形状以外、前述した形態例1と同様である。すなわち、本形態例の場合も、形態例1で説明したスキージ5や製造プロセスを採用する。
図13は、本形態例で使用するプリント回路基板1の断面構造の概要である。図13(a)に示す構造は、スルーホール11の挿入実装部品8の投入側をテーパー形状15とした例である。スルーホール11の上部に形成されるランド12のサイズは形態例1の場合と変わらないため、表面に実装する部品の障害にはならない。図13(a)の構造の場合、スルーホール11は、表面側の径が最も大きく奥ほど径が狭いテーパー形状を有するため、はんだペースト21の充填が容易になると共に充填されるはんだペースト21の量が多くなり、挿入実装部品8のはんだ付けが容易になる。また、挿入側のスルーホール11がテーパー形状を有しているため、挿入実装部品8のスルーホール11内への挿入が容易になる。
図13(b)に示す構造は、スルーホール11の挿入実装部品8の投入側に段差形状16を有している。この場合も、スルーホール11の上部に形成されるランド12のサイズは形態例1と変わらないため、表面に実装する部品の障害にはならない。図13(b)の構造の場合、スルーホール11は、表面側が第1のサイズで奥側が第2のサイズ(<第1のサイズ)の段差形状になっている。このため、はんだペースト21の充填が容易になると共に充填されるはんだペースト21の量が多くなり、挿入実装部品8のはんだ付けが容易になる。また、挿入実装部品8のスルーホール11内への挿入が容易になる。
図13に示すプリント回路基板1に、図1に示す製造プロセスに従って表面実装部品7と挿入実装部品8を実装したところ、形態例1と同様の結果が得られ、温度サイクル等の信頼性試験(実用化試験)に十分耐えることができた。
(他の形態例)
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。本発明に係る製造プロセスは、表面実装部品7及び挿入実装部品8を混載して搭載するプリント回路基板1として好適である。特に、厚みが大きいプリント回路基板1の表面に形成されたランド12とスルーホール11に同時にはんだペースト21を転写及び充填するのに好適である。この製造プロセスの採用により、短タクト(低コスト)なプリント回路基板の生産に利用できる。
なお、図14に示すように、前述した製造プロセスで作製されたプリント回路基板110は、各種の電子機器100に搭載することができる。電子機器100は、例えば電子計算機(サーバ、ストレージ装置、パーソナルコンピュータ)、携帯電話機、スマートフォン、タブレット端末、液晶ディスプレイ装置、ナビゲーション装置、ゲーム機、AV機器、電卓、電子手帳、カメラ、プリンタ、ハードディスク装置が含まれる。