JP2016138938A - 低屈折率膜及び反射防止膜 - Google Patents

低屈折率膜及び反射防止膜 Download PDF

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Abstract

【課題】低屈折率である組成物を供給するとともに、常温・常圧にて低屈折率膜を形成でき、充分な機械強度を有する低屈折率膜及び反射防止膜を提供する。【解決手段】低屈折率膜は、酸化ケイ素組成を主成分としフッ素を含有する低屈折率膜において、フッ素を8重量%から30重量%含有し、膜中にフッ素元素が均一に存在し、フッ素元素の組成ばらつきが厚み方向において±2重量%以内である。また反射防止膜は、前記低屈折率膜を構成層として形成する。【選択図】図8

Description

本発明は、酸化ケイ素組成を主成分としフッ素を含有した低屈折率膜に関する。より好ましくは、鈍角で構成された気孔を内包する低屈折率膜に関する。更には、反射防止膜に関する。
低屈折率組成物は、各種の光学デバイスの重要な構成部材である。特に低屈折率膜は、反射防止膜、反射膜、半透過半反射膜、可視光反射赤外線透過膜、赤外線反射可視光透過膜、青色反射膜、緑色反射又は赤色反射膜、輝線カットフィルター、色調補正膜に含まれる光学機能膜として光学部材に形成される。
表面形状が平坦な光学部材に限らず、液晶用バックライトの輝度向上レンズフィルムや拡散フィルム、ビデオプロジェクションテレビのスクリーンに用いられるフレネルレンズやレンチキュラーレンズ又はマイクロレンズなどの光学機能部材では、いずれも樹脂材料が微細構造体をもつことで所望の幾何光学的な性能を得ている。これらの微細構造体表面にも低屈折率膜を含む光学機能膜は必要とされている。
低屈折率膜を反射防止膜として用いる場合、単層構造の低屈折率膜はそのまま反射防止膜となる。単層構造の反射防止膜は、反射防止性能をより広い波長範囲で示し、さらに、層数低減によりコストが低減する。単層構造の反射防止膜の屈折率としては、基材が樹脂材料などの透明材料である場合は、1.2〜1.4の範囲の低屈折率が望まれる。
低屈折率膜の形成方法には蒸着法、スパッタ法等の気相法や、ディッピング法、スピンコート法等の塗布法が挙げられる。
気相法により得られる代表的な低屈折率の薄膜は、屈折率が1.38のMgFや1.39のLiFであり、これらの薄膜の単層反射防止膜としての性能は低い。一方、塗布法で得られる低屈折率膜の代表的な材料には、屈折率が1.35〜1.4のフッ素系高分子材料や、屈折率が1.37〜1.46であるフッ素モノマーの重合体からなる微粒子を融着させた多孔質材料があるが(例えば、特許文献1参照)、屈折率が1.3以下のフッ素系高分子材料は得られていない。
一方、低屈折率膜を用いた反射防止膜に防汚性を付与するためにフッ素系材料を最表面に配置することが特許文献2又は特許文献3に開示されている。
また、特許文献4には、パーフルオロ基含有(メタ)アクリル酸エステル樹脂と、一般式RnSiX(4−n)で表されるシランカップリング剤で処理された中空シリカ系微粒子を用いることで防汚機能を有する低屈折率膜が形成可能であることが開示されている。
しかし、中空粒子を使用する特許文献4の手法では膜の硬度を高く維持することが出来ない。
特許第3718031号公報 特開2013−84017号公報 特開2013−195456号公報 特開2006−291077号公報
本発明においては、低屈折率であり防汚機能を有する組成物を供給するとともに、充分な機械強度を有する低屈折率膜及び反射防止膜を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、下記に示す本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、以下の技術的手段から構成される。
〔1〕 酸化ケイ素組成を主成分としフッ素を含有する低屈折率膜において、フッ素を8重量%から30重量%含有し、膜中にフッ素元素が均一に存在し、フッ素元素の組成ばらつきが厚み方向において±2重量%以内であることを特徴とする低屈折率膜。
〔2〕 膜中に気孔が存在し、前記気孔が長手方向の気孔径が150nm以下である主として鈍角で構成される気孔であることを特徴とする前記〔1〕に記載の低屈折率膜。
〔3〕 前記〔1〕および前記〔2〕に記載の低屈折率膜を構成層として形成することを特徴とする反射防止膜。
〔4〕 フルオロアルキルアルコキシシラン溶液へ水を添加してアルコキシル基の部分加水分解を行った後、アルコキシシラン、アルコキシシラン重合体又はそれらの溶液を混合し反応させて、ポリシロキサンを含む塗布液を調整した後、前記塗布液を基材に塗布して加熱することを特徴とする低屈折率膜の製造方法。
本発明の低屈折率膜は、酸化ケイ素組成を主成分としフッ素を8重量%から30重量%とし、フッ素元素は膜表面から基板にかけて均質に分布することで目的とする低屈折率と機械特性が両立可能となる。一般に開示されているフッ素化合物を添加する方法ではフッ素成分が膜表面に偏在するため本発明の特性を得ることが出来ないが、本発明ではフッ素元素をフルオロアルキル基としてケイ素に直接導入することで厚み方向での均質な導入が可能となり目的の特性発現が可能になったと考えている。
また、膜中に明確な気孔が確認される場合には通常機械特性を向上することが困難であるが、本発明ではフッ素含有基を含むアルコキシシランの重縮合反応によりフッ素元素が膜中に均質に分散し、ケイ素成分の重合反応を阻害することなくシリカマトリックスが形成され、膜内部に存在する気孔/膜成分界面の角度を鈍角とすることが可能になり、屈折率の低減と十分な膜強度を並立して確保することが可能となった。更に、気孔の長手方向のサイズを150nm以下とすることで膜の散乱損失を小さくすることが可能となり、反射防止膜などを構成する光学薄膜として適用可能である。
膜中にフッ素成分を含有することで撥水・撥油特性(静的特性)を付与することが可能となった。その原理は明確でないが、酸化ケイ素を膜の主成分としフッ素と組み合わせることで、従来のフッ素系表面処理材料では発現できなかった小さな液滴転落特性(動的特性)を発現することが可能となった。
また、酸化ケイ素組成を膜の主成分とすることで紫外域での透過性が優れ、結果として耐光性などの耐候性に優れた低屈折率膜が形成可能となる。
気孔/膜成分界面が鋭角である気孔のイメージ図 気孔/膜成分界面が鈍角である気孔のイメージ図 実施例1の電子顕微鏡(SEM)写真 実施例1のXPSによる深さ方向の元素分布 実施例2の電子顕微鏡(SEM)写真 実施例2の原子間力顕微鏡(AFM)イメージ図 実施例2のXPSによる深さ方向の元素分布 実施例3の電子顕微鏡(SEM)写真
次に、本発明の低屈折率膜及び反射防止膜の具体的な実施の形態について説明する。
本発明の低屈折率膜は、酸化ケイ素組成を主成分とし、フッ素が8重量%から30重量%含有することが好ましい。フッ素量が8重量%未満であると膜内部に屈折率を低下させるために十分な微細細孔を導入できないために目的とする屈折率の低下が十分達成されない。30重量%を超え均質にフッ素の分布した膜を形成することは出来ない。より好ましくは、フッ素を15重量%から30重量%である。
本発明の低屈折率膜は、膜中にフッ素元素が均一に存在することが好ましい。特に、膜表面から基板までのフッ素元素の存在比率が一定であることがより好ましい。フッ素元素の存在比率が均質になることで微細細孔が均質に膜中に導入され、低屈折率化が達成されるだけでなく機械特性も維持することが出来る。膜中へ導入される膜表面から基板までの元素分布は、X線光電子分光法(XPS)などにより測定される。例えば、一定時間アルゴンスパッタ法により膜を削った後の元素変化を確認することで測定することが可能である。
膜最表面は汚れなどの影響により炭素成分が多く観察されることがあるが、膜内部での各元素の組成は±2重量%以内であることが好ましい。より好ましくは、±1重量%以内である。ケイ素量が25重量%未満であると十分な機械的特性を維持することが出来ない。50重量%を超えると低屈折率や撥水・撥油特性、動的特性を維持することが出来ない。好ましくは、25重量%から40重量%である。より好ましくは、25重量%から35重量%である。
フルオロアルキル基としてフッ素元素を膜中に導入する場合、炭素量が2重量%未満であると膜内にフッ素元素を均質に導入することが出来ない。15重量%を超えると十分な機械的特性を維持することが出来ない。好ましくは、5重量%から15重量%である。より好ましくは、8重量%から13重量%である。
フッ素元素の導入状態は目的の特性が発現可能であれば特に限定されないが、好ましくは化学式(5)(1≦x≦6、0≦y≦5)で表されるフルオロアルキル基として導入される。フルオロアルキル基はケイ素元素に直接結合した状態で導入することで、ケイ素化合物の重縮合反応に伴い膜中に導入される。より好ましくは、化学式(1)又は化学式(2)(Rfは炭素数1から6のペルフルオロアルキル基を含むアルキルシロキシル基(アルキルシロキシル基の一部がアルキル基であるものを含む)、Rはアルキル基、R1はアルキル基又はアルコキシシロキシル基、m≦n、4≦m+n≦20)で表される形態で導入され、化学式(1)又は(2)で表されるケイ素化合物の重縮合反応に伴いフッ素原子が膜中に導入される。
膜の機械特性は膜を構成する組成物の機械特性と膜内に導入された細孔により決定される。一般的な膜機械特性の評価方法として鉛筆硬度が用いられるが、バルクとしての膜の特性のみでなく表面状態、基材との密着性を含めた界面状態が大きく影響する。
膜を構成する素材の理論強度(σ)は、原子間結合力から(1)式で与えられる。しかし、実際の材料では内部欠陥を有するため、例えば楕円孔が存在する場合、長軸先端部の破壊に必要な応力(σ)は(2)式で与えられる。ここで、2(a/ρ)1/2は応力集中係数であり、楕円孔から十分に離れた点における引張り応力(σ:遠方応力)の楕円孔先端部での増幅率を示す。このことは、等方的な球状細孔の導入が欠陥への応力集中を抑え膜の機械特性の低減抑制に有効であることを示している。

σ=(Eγ/a)1/2 (1)
[E:ヤング率、γ:表面エネルギー、a:原子間距離]

σ=σ×2(a/ρ)1/2 (2)
[a:長軸半径、ρ:長軸先端の曲率半径(ρ=b×2/a、b:短軸半径)、
σ:遠方応力]
以上のことより、低屈折率化のために気孔が導入される場合には細孔の形状を可能な限り球状、円柱状にすることが膜の機械特性に重要となる。膜中の気泡が、鋭角(図1)では上記ρが小さくなり応力集中係数が増大、逆に、膜中の気泡が、鈍角(図2)では上記ρが大きくなり応力集中係数が減少し機械特性が向上する。
本発明の低屈折率膜で膜中に明確に気孔が存在する場合、長手方向の気孔径が150nm以下であることが好ましい。気孔系が150nmを超えると光学的散乱が顕著となり目的とする低屈折率膜として適用できない。より好ましくは、膜中に存在する気孔が長手方向の気孔径が100nm以下である。
膜中に存在する気孔は、気孔/膜成分界面が図2で示したように主として鈍角で構成される気孔であることが好ましい。
膜中に存在する気孔の形状は、気孔/膜成分界面が鋭角にならなければ特に限定されない。球形、楕円形、瓢箪型など鋭角部がない形状が好ましい。また、鋭角部がなければその対称性は問わない。気孔/膜成分界面が鋭角になると式2で示される応力集中係数(2(a/ρ)1/2)が大きくなり、楕円孔先端部に集中する応力の増幅率が大きくなるため小さな応力でも膜の破壊が進行するために好ましくない。
本発明の低屈折率膜は、化学式(1)又は(2)で表されるフッ素成分を含有する化合物の重合反応により形成される膜構成成分が、塗布液中の溶剤と自己組織的相分離により、膜中に目的の細孔を形成することにより形成される。成膜方法は特に限定されず、膜を形成する基材の種類や形状により選定される。例えば、一般的に用いられるスピンコート、ディップコート、フローコート、バーコート、スプレーコート、超音波噴霧コート法などが用いられる。
本発明の低屈折率膜を形成するための塗布液は、目的とする細孔構造が形成されるものであれば特に限定されないが、好ましくは化学式(1)又は(2)で表される主鎖のケイ素に側鎖としてアルコキシ基及びペルフルオロアルキル基を含む側鎖が結合してなるポリシロキサンを含むケイ素含有化合物を含む塗布液が用いられる。ケイ素含有化合物は、環境への配慮という点では、前記ペルフルオロアルキル基を含む側鎖が、炭素数6以下のペルフルオロアルキル基を含むアルキルシロキシル基(アルキルシロキシル基の一部がアルキル基であるものを含む)であることがより好ましい。
Figure 2016138938
Figure 2016138938
前記化学式(1)又は(2)中の、Rは炭素数1から6のペルフルオロアルキル基を含むアルキルシロキシル基(アルキルシロキシル基の一部がアルキル基であるものを含む)、Rはアルキル基、Rはアルキル基又はアルコキシシロキシル基、m≦n、4≦m+n≦20である。
前記炭素数6以下のペルフルオロアルキル基を含むアルキルシロキシル基及びRにおいて、アルキルシロキシル基がアルキルシロキシル基の一部がアルキル基であるものを含むアルキルシロキシル基である場合とは、本発明に好ましく用いられる塗布液に含まれるポリシロキサンを製造する過程において、主鎖のケイ素に副反応でアルキルシロキシル基ではなくアルキル基が結合する可能性がある場合があるからである。
アルキルシロキシル基の一部にアルキル基が導入されたとしても、末端にはペルフルオロアルキル基が結合しており、本発明に用いられるケイ素含有化合物を含む塗布液としての効果には全く変わりがない。
前記Rは、化学式(5)で表されるペルフルオロアルキル基を末端に有するアルキルシロキシル基(化学式(6))であり、化学式(5)及び化学式(6)中のxは1から6が好ましい。7を越えると最終形成物の分解物としてペルフルオロアルキル酸が形成するために好ましくない。また、化学式(5)及び化学式(6)中のyは、xとの関係で決まるため特に限定されないが、0から5が好ましい。
Figure 2016138938
Figure 2016138938
化学式(6)中で、R及びRはアルキル基、アルコキシル基及びフルオロアルキルシロキシル基のいずれかであり、RとRは同じでも異なっても構わない。
前記化学式(1)及び(2)の重合度(m+n)は、塗布液として用いる溶剤に可溶であれば特に限定されないが、4から20が好ましい。4より小さい場合、本発明の重合性ケイ素系化合物を構成することが困難となる。20を越えると溶解性の低下など取り扱い上の問題が発生する可能性があるため、20で十分である。
基が導入されたシロキサン部と未導入シロキサン部の量比(化学式(1)及び(2)のm/n比)は特に限定されないが、好ましくはm≦nである。また、R基が導入されたシロキサン部と未導入シロキサン部は、各々が交互に連続して存在してもブロックとして存在しても構わないが、できるだけ、未導入シロキサン部に対してR基が導入されたシロキサン部が均一に存在することが好ましい。
本発明の低屈折率膜を形成するための塗布液に含まれるポリシロキサンは、アルコキシシラン又はアルコキシシラン重合体とフルオロアルキルアルコキシシランとの反応により合成される。具体的には、フルオロアルキルアルコキシシラン溶液へ水を添加することでアルコキシル基の部分加水分解を行った後、アルコキシシラン又はアルコキシシラン重合体又はその溶液と混合することで、化学式(1)又は(2)で表されるケイ素系化合物を構成するペルフルオロアルキル基を含む側鎖が結合したポリシロキサンが得られる。
反応溶剤としては、原料及び生成物が可能又は分散可能であれば特に限定されないが、好ましくは下記の溶剤が用いられる。
すなわち、好ましく使用される溶剤としては、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族系溶剤、ヘキサン、ペンタン、オクタン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル系溶剤、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール等のアルコール系溶剤、グリコール、グリセロール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどのグリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコール−α−モノメチルエーテル、プロピレングリコール−α−モノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−α−アセテートなどのグリコール誘導体などが用いられる。
フルオロアルキルアルコキシシランの部分加水分解は、フルオロアルキルアルコキシシランを1〜60重量%の割合で上記溶剤に溶かした溶液中に、1から2モル倍の水を添加することによって行うことが好ましい。より好ましい水の添加量は、1.1から1.5モル倍である。水の添加量が少なければ十分な加水分解が進行せずに、目的とする側鎖としてアルコキシ基及びペルフルオロアルキル基を含む側鎖からなるポリシロキサンを効率よく形成することができない。水の添加量が多い場合、フルオロアルキルアルコキシシラン間での重縮合が進行し、側鎖としてアルコキシ基及びペルフルオロアルキル基を含む側鎖からなるポリシロキサンを効率よく形成することができない。
上記加水分解は、水を添加するだけでも進行するが、触媒を併用することが好ましい。触媒として、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸などの鉱酸、蟻酸、酢酸などの有機酸、アンモニア、アミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基が用いられる。
触媒の使用量は、水溶液として0.005から5M程度の濃度として用いることが好ましい。
フルオロアルキルアルコキシシランの加水分解の反応時間は、フルオロアルキルアルコキシシランの加水分解が進行し、形成した水酸基が安定に存在可能な時間であれば特に限定されないが、10分から2時間が好ましい。より好ましくは15分から1時間である。
反応温度は、フルオロアルキルアルコキシシランの加水分解が進行し、形成した水酸基が安定に存在可能な温度であれば特に限定されないが、好ましくは0から50℃の範囲が好ましい。
本発明に用いられるフルオロアルキルアルコキシシランとしては、ケイ素に1つのパーフルオロアルキル基及び3つのアルコキシル基が結合したフルオロアルキルトリアルコキシシラン、ケイ素に1つのパーフルオロアルキル基、1つのアルキル基及び2つのアルコキシル基が結合したフルオロアルキルアルキルジアルコキシシラン及びケイ素に1つのパーフルオロアルキル基、2つのアルキル基及び1つのアルコキシル基が結合したフルオロアルキルジアルキルアルコキシシランであって、前記パーフルオロアルキル基が炭素原子数1〜8のフルオロアルキル基、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ノナフルオロブチル基、ノナフルオロイソブチル基、ウンデカフルオロペンチル基、トリデカフルオロヘキシル基、ペンタデカフルオロヘプチル基、ヘプタデカフルオロオクチル基等の直鎖又は分枝を有するパーフルオロアルキル基のうちのいずれかであり、前記アルキル基が、メチル基、エチル基及びプロピル基のうちのいずれかであり、前記アルコキシ基が、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基のうちのいずれかであるフルオロアルキルアルコキシシラン等が挙げられる。
好ましくは、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ペンタフルオロブチルトリメトキシシラン、ヘプタフルオロペンチルトリメトキシシラン、ノナフルオロヘキシルトリメトキシシラン、ウンデカフルオロヘプチルトリメトキシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、ペンタデカフルオロノニルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ノナデカフルオロウンデシルトリメトキシシラン等のフルオロアルキルトリメトキシシラン類、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、ペンタフルオロブチルトリエトキシシラン、ヘプタフルオロペンチルトリエトキシシラン、ノナフルオロヘキシルトリエトキシシラン、ウンデカフルオロヘプチルトリエトキシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン、ペンタデカフルオロノニルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン、ノナデカフルオロウンデシルトリエトキシシラン等のフルオロアルキルトリエトキシシラン類、トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン、ペンタフルオロブチルメチルジメトキシシラン、ヘプタフルオロペンチルメチルジメトキシシラン、ノナフルオロヘキシルメチルジメトキシシラン、ウンデカフルオロヘプチルメチルジメトキシラン、トリデカフルオロオクチルメチルジメトキシシラン、ペンタデカフルオロノニルメチルジメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルメチルジメトキシシラン、ノナデカフルオロウンデシルメチルジメトキシシラン等のフルオロアルキルメチルジメトキシシラン類等が挙げられる。
より好ましくは、炭素数が3〜6のフルオロアルキル基を有するトリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ペンタフルオロブチルトリメトキシシラン、ヘプタフルオロペンチルトリメトキシシラン、ノナフルオロヘキシルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、ペンタフルオロブチルトリエトキシシラン、ヘプタフルオロペンチルトリエトキシシラン、ノナフルオロヘキシルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン、ペンタフルオロブチルメチルジメトキシシラン、ヘプタフルオロペンチルメチルジメトキシシラン、ノナフルオロヘキシルメチルジメトキシシラン等のアルコキシシラン類等が挙げられる。
得られたフルオロアルキルアルコキシシランの部分加水分解物とアルコキシシラン又はアルコキシシラン重合体を上記溶剤に溶かした溶液中で混合・反応することで目的とするケイ素含有塗布液に含まれるポリシロキサンが得られる。
アルコキシシランを用いる場合アルコキシシランは特に限定されないが、炭素数が1〜4のアルコキシル基を有するアルコキシシランが好ましい。特に好ましいアルコキシシランを列挙すると、テトラメトキシシラン、テトラトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等を挙げることができる。
アルコキシシランを用いる場合、まず、得られたフルオロアルキルアルコキシシランの部分加水分解物とアルコキシシランを上記溶剤に溶かした溶液中で混合・反応し、更に、アルコキシシランを追加で添加し加水分解・重合することで目的とするケイ素含有塗布液に含まれるポリシロキサンが得られる。
前段の前記フルオロアルキルアルコキシシランの部分加水分解物とアルコキシシランの溶液中での反応は、溶液の濃度が1〜60重量%で行われる。フルオロアルキルアルコキシシラン/アルコキシシランの各々の化合物に含まれるシリコン比としてのモル比率は、1/4〜3/2が好ましい。
反応時間は、フルオロアルキルアルコキシシランとアルコキシシランの反応が進行可能な時間であれば特に限定されないが、1分から24時間が好ましい。より好ましくは15分から6時間である。
反応温度は、反応が進行し、形成したシロキサンが安定に存在可能な温度であれば特に限定されず0から溶剤の沸点の範囲で行われる。0から50℃の範囲が好ましい。
後段のアルコキシシランを追加で添加し加水分解・重合する反応は、前段で得られた反応物溶液に、必要に応じアルコキシシランを追加した後、追加したアルコキシシランに対し1から2モル倍の水を添加することによって行う。好ましい水の添加量は、1.1から1.5モル倍である。水の添加量が少なければ十分な加水分解が進行せず目的とする本発明のポリシロキサンを得ることが出来ない。
水を添加するだけでも進行するが、フルオロアルキルシランの加水分解と同様の触媒を用いることが好ましい。
アルコキシシランの追加量は、追加したアルコキシシランを含めた総量としてフルオロアルキルアルコキシシラン/アルコキシシランの各々の化合物に含まれるシリコン比としてのモル比率が1/4〜1/50が好ましい。
反応時間は、前段で生成したフルオロアルキルアルコキシシランと追加のアルコキシシランの反応物の重合が進行可能な時間であれば特に限定されないが、1分から24時間が好ましい。より好ましくは15分から6時間である。
反応温度は、重合が進行し、形成したポリシロキサンが安定に存在可能な温度であれば特に限定されず0℃から溶剤の沸点の範囲で行われる。0から50℃の範囲が好ましい。
上記反応により本発明のケイ素含有塗布液に含まれるポリシロキサン溶液が得られる。得られたポリシロキサン溶液は、溶剤を除去してポリシロキサンとして、又は溶剤を除去又は追加することで所望の濃度に調整したポリシロキサン溶液として本発明のケイ素含有塗布液が得られる。
更に、本発明に用いられるケイ素含有塗布液に含まれるポリシロキサンを得るためには、アルコキシシラン重合体を用いることができる。アルコキシシラン重合体を用いる場合、アルコキシシラン重合体は、アルコキシシランの3から20量体が好ましく用いられる。より好ましくは、8から15量体である。重合度が3未満であると目的とする化学式1又は2の化合物の均質性が低下する。20を越えると目的の撥水特性を得ることができない。
アルコキシシラン重合体は、当業者にとって公知の方法であるテトラアルコキシシランの加水分解重合反応により合成するができるが、メチルシリケート51(コルコート社製、扶桑化学工業社製など)、エチルシリケート40(コルコート社製)、HAS−1(コルコート社製)、HAS−6(コルコート社製)、HAS−10(コルコート社製)、アトロン(日本曹達社製)など市販製品を用いることもできる。
アルコキシシラン重合体を用いる場合、得られたフルオロアルキルアルコキシシランの部分加水分解物とアルコキシシラン重合体を上記溶剤に溶かした溶液中で混合・反応することで目的とするケイ素含有塗布液に含まれるポリシロキサンが得られる。
前記フルオロアルキルアルコキシシランの部分加水分解物とアルコキシシラン重合体溶液中での反応は、溶液の濃度が1〜60重量%で行われる。フルオロアルキルアルコキシシラン/アルコキシシランの各々の化合物に含まれるシリコン比としてのモル比率は、1/4〜3/2が好ましい。
反応時間は、フルオロアルキルアルコキシシランとアルコキシシラン又はアルコキシシラン重合体の反応が進行可能な時間であれば特に限定されないが、1分から24時間が好ましい。より好ましくは15分から6時間である。
反応温度は、反応が進行し、形成したポリシロキサンが安定に存在可能な温度であれば特に限定されず0から溶剤の沸点の範囲で行われる。0から50℃の範囲が好ましい。
上記反応により本発明のケイ素含有塗布液に含まれるポリシロキサン溶液が得られる。得られたポリシロキサン溶液は、溶剤を除去してポリシロキサンとして、又は溶剤を除去又は追加することで所望の濃度に調整したポリシロキサン溶液として本発明のケイ素含有塗布液が得られる。
アルコキシシラン又はアルコキシシラン重合物を追加する場合、追加したアルコキシシラン又はアルコキシシラン重合物を含めた総量としてフルオロアルキルアルコキシシラン/アルコキシシランの各々の化合物に含まれるシリコン比としてのモル比率が1/4〜1/50が好ましい。
本発明に用いられるケイ素含有塗布液に含まれるポリシロキサンのRf基が導入されたシロキサン部と未導入シロキサン部の量比(化学式1及び2のm/n比)は、4≦m+n≦20の範囲であれば特に限定されないが、好ましくはm≦nであり、フルオロアルキルアルコキシシランとアルコキシシランの量比により変更可能である。例えば、アルコキシシラン重合体を用いる場合アルコキシシラン重合体の15量体1モルに対しフルオロアルキルアルコキシシラン1モルを用いれば、m+n=15、m/n=1/15のポリシロキサンが形成される。
さらに、本発明に用いられるケイ素含有塗布液は、塗布する異なる基材への親和性、反応性を確保するために、各種アルコキシシラン重合体を追加することができるし、反応性官能基を有するポリシロキサン、好ましくは化学式(3)及び(4)で記載される化合物を混合することもできる。
Figure 2016138938
Figure 2016138938
前記化学式(3)及び(4)の化合物に導入される官能基(R基)は、塗布すべき基材により選定されるので特に限定されない。前記R基へ導入される反応性官能基として、(メタ)アクリル基、エポキシ基、ビニル基、シアノ基、イソシアネート基、スチリル基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基などがある。反応性官能基を導入する場合、必要に応じて重合開始剤、触媒などを添加することも可能である。
親水性の高い基板の場合、主鎖のケイ素に側鎖としてアルコキシ基及びペルフルオロアルキル基を含む側鎖が結合してなるポリシロキサン(好ましいポリシロキサンとしては、前記化学式(1)及び(2)のポリシロキサン)のみで良いが、有機系基材に対しては、反応性官能基を有するポリシロキサン(好ましいポリシロキサンとしては、前記化学式(3)及び(4)のR基へ基材の化学構造に応じた官能基を導入したポリシロキサン)を混合することが好ましい。
主鎖のケイ素に側鎖としてアルコキシ基及びペルフルオロアルキル基を含む側鎖が結合してなるポリシロキサン(好ましいポリシロキサンとしては、前記化学式(1)及び(2)のポリシロキサン)と反応性官能基を有するポリシロキサン(好ましいポリシロキサンとしては、前記化学式(3)及び(4)のポリシロキサン)の混合比率は特に限定されず、目的とする膜物性により選定される。
本発明の低屈折率膜を形成するための塗布液は、前記のポリシロキサンを含むものであるが、前記のポリシロキサンそのものであっても良いし、前記のポリシロキサン以外にアルコキシシラン重合体、化学式(3)及び(4)の化合物を含む官能基で置換されたアルコキシシラン重合体等各種アルコキシシラン重合体及び各種アルコシラン重合体等の化合物を含んでいても良い。そして、これらのものが溶剤に溶かされた溶液であっても良い。
前記化学式(3)及び(4)で記載される化合物は、前記化学式(1)及び(2)のフルオロアルコキシシランを上記反応性末端を有するアルキルアルコキシシランに変更することで得られる。
本発明の低屈折率膜を形成するためのケイ素系塗布液は、低屈折率の形成に用いることができる。すなわち、得られるケイ素系塗布液を目的とする基材へ塗布することにより、低屈折率膜を得ることができる。
ケイ素含有塗布液は、化学式(1)又は(2)で表されるケイ素系化合物を構成するペルフルオロアルキル基を含む側鎖が結合したポリシロキサンを溶剤へ溶解又は分散した溶液の状態で使用することが好ましいが、溶解又は分散することが可能であれば特に限定されない。また、本発明に用いられるケイ素含有塗布液を用いて撥水膜を形成させる場合は、塗布する基材への親和性及び溶解性を考慮して化学式(3)及び(4)で記載される化合物を含むケイ素含有塗布液が選定される。
化学式(1)又は(2)で表されるケイ素系化合物を構成するペルフルオロアルキル基を含む側鎖が結合したポリシロキサンを含むケイ素含有塗布液を用いた低屈折率膜の形成では、空気中の水分により重合が促進されるため、相対湿度10から90%の範囲で放置することが好ましい。より好ましくは、30から60%である。また、塗布後室温から基板の耐熱温度に応じた温度までの範囲で加熱することで乾燥及び上記重合反応を促進することが可能である。
予め触媒や重合開始剤をケイ素系塗布液に添加し、塗布後、加熱処理、光照射処理などにより反応を促進することも可能である。加熱処理、光照射処理等により、膜中に含まれる重合性末端間での重合や基板表面との反応による結合形成が促進され、基板への密着性の強い膜、機械特性に優れた膜が形成可能となる。
本発明の反射防止膜は、本発明による低屈折率膜を単層又は他の高屈折率組成物膜との積層により形成される。
高屈折率組成膜としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化亜鉛、酸化錫、酸化セリウム、酸化アルミニウム、チタン酸バリウムやチタン酸ストロンチウム、ニオブ酸カリウム、タンタル酸カリウムなどのペロブスカイト化合物及びそれら固溶体、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウムなどのイルメナイト化合物及びそれら固溶体、又はこれら化合物を含む複合膜が用いられる。
また、上記の酸化物粒子を含む有機系複合膜が高屈折率膜として用いられる。有機マトリックスとして、(メタ)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、イミド系樹脂、アミド系樹脂、セルロース系樹脂、又はこれらの共重合体樹脂が用いられる。モノマーとして酸化物粒子と混合、成膜を熱・光硬化、又は、重合体と混合、成膜後乾燥することに形成される。
通常、本発明の反射防止膜は、透明基板上に形成される。反射防止膜が形成される透明基板としては、その用途により決定されるものであり光学材料として使用可能な透明性を具備すれば特に限定されないが、ガラス、ポリカーボネート、アクリル系樹脂、PETに代表されるポリエステル系樹脂、脂環式炭化水素系樹脂などが用いられる。
[ケイ素含有塗布液の合成1]
ノナフルオロヘキシルトリメトキシシラン1.48gを13.3gのエタノールに溶かした後、0.1M塩酸80mgを加え、室温で30分撹拌した。得られた反応溶液をエトキシシラン重合体のエタノール溶液(コルコート社製、HAS−6、平均10量体、シリカ酸化物換算濃度18重量%)6gに加えた。16時間室温で撹拌した後、60℃で1時間加熱撹拌し、ケイ素含有塗布液の構成成分であるフルオロアルキルシロキサン末端を有するケイ素含有塗布液を得た。化学式(1)において、RがC(CHSi(OCHO−、R及びRがC−、平均でm+nが10、m=1.8、n=8.2に相当する物質を得ることができた(塗布液1:仕込組成として形成された膜中のフッ素量30重量%、ケイ素27重量%、炭素13重量%)。
塗布液1を用いた形成膜の屈折率は、シリコン基板上に成膜
した膜を分光反射法により測定し、n値(589.3 nmの屈折率値)として1.37であることを確認した。
[ケイ素含有塗布液の合成2]
ノナフルオロヘキシルトリメトキシシラン1.48gを13.3gのエタノールに溶かした後、0.1M塩酸80mgを加え、室温で30分撹拌した。得られた反応溶液をエトキシシラン重合体のエタノール溶液(コルコート社製、HAS−6、平均10量体、シリカ酸化物換算濃度18重量%)12gに加えた。16時間室温で撹拌した後、60℃で1時間加熱撹拌し、ケイ素含有塗布液の構成成分であるフルオロアルキルシロキサン末端を有するケイ素含有塗布液を得た。化学式1において、RがC(CHSi(OCHO−、R及びRがC−、平均でm+nが10、m=1、n=9に相当する物質を得ることができた(塗布液2:仕込組成として形成された膜中のフッ素量20重量%、ケイ素34重量%、炭素9重量%)。
塗布液2を用いた形成膜の屈折率は、シリコン基板上に成膜した膜を分光反射法により測定し、n値として1.38であることを確認した。
[ケイ素含有塗布液の合成3]
ノナフルオロヘキシルトリメトキシシラン1.48gを13.3gのエタノールに溶かした後、0.1M塩酸80mgを加え、室温で30分撹拌した。得られた反応溶液をエトキシシラン重合体のエタノール溶液(コルコート社製、HAS−6、平均10量体、シリカ酸化物換算濃度18重量%)24gに加えた。16時間室温で撹拌した後、60℃で1時間加熱撹拌し、ケイ素含有塗布液の構成成分であるフルオロアルキルシロキサン末端を有するケイ素含有塗布液を得た。化学式(1)において、RがC(CH)2Si(OCHO−、R及びRがC−、平均でm+nが10、m=0.5、n=9.5に相当する物質を得ることができた(塗布液3:仕込組成として形成された膜中のフッ素量12重量%、ケイ素39重量%、炭素5重量%)。
塗布液3を用いた形成膜の屈折率は、シリコン基板上に成膜した膜を分光反射法により測定し、n値として1.39であることを確認した。
[低屈折率膜の形成]
先の方法で合成したケイ素含有塗布液を用い低屈折率膜の作製を行った。
[実施例1]
塗布液2を用い、低圧水銀ランプ下で10分処理したシリコン基板上にスピンコート法により回転数200rpm×5秒に引き続き1000rpm×20秒で膜形成後、120℃で6時間加熱処理を行い透明な膜を得た。得られた膜のn値(589.3nmの屈折率値)を分光反射法により測定し、1.38の値を得た。
得られた膜の断面の状態を電子顕微鏡(SEM)観察(図3左)により確認した。膜表面の状態をSEM(図3右)により確認した。SEM観察では明確な細孔は確認されず、均質な膜であった。
厚み方向の元素組成をXPS法(図4)により観察した結果、膜を構成するシリコン、酸素、フッ素、炭素の存在比率は厚み方向でほぼ均一であった。フッ素濃度はおよそ18重量%であり、膜内分布は±2重量%以内であった。
得られた膜の鉛筆硬度と水及びn−ヘキサデカンの静的接触角と転落角を測定した。結果を表1にまとめる。
[実施例2]
塗布液2をエタノールで5倍希釈した後に、低圧水銀ランプ下で10分処理したシリコン基板上にスピンコート法により回転数200rpm×5秒に引き続き1000rpm×20秒で膜形成後、120℃で6時間加熱処理を行い透明な膜を得た。
膜表面のSEM観察(図5右)及びAFMによる膜表面状態観察(図6)の結果、100nm以下の鈍角で構成された穴の存在が確認された。また、膜断面のSEM観察(図5左)より、膜表面で観察された細孔が面方向に鈍角で構成された楕円状に広がったものであることが確認された。
厚み方向の元素組成は、XPS法(図7)により観察した結果、膜を構成するシリコン、酸素、フッ素、炭素の存在比率は厚み方向でほぼ均一であった。フッ素濃度はおよそ18重量%であり、膜内分布は±2重量%以内であった。
得られた膜の鉛筆硬度と水及びn−ヘキサデカンの静的接触角と転落角を測定した。結果を表1にまとめる。
[実施例3]
塗布液2をエタノールで5倍希釈した後、低圧水銀ランプ下で10分処理したガラス基板上にスピンコート法により回転数200rpm×5秒に引き続き1000rpm×20秒で膜形成後、120℃で6時間加熱処理を行い透明な膜を得た。膜表面のSEM観察(図8)より150nm以下の細孔の存在が確認された。得られた膜の鉛筆硬度と水及びn−ヘキサデカンの静的接触角と転落角を測定した。結果を表1にまとめる。
[実施例4]
実施例3と同じ条件でポリカーボネート(PC)基板に成膜後、120℃で6時間加熱処理を行い、透明な膜を得た。
[実施例5]
実施例3と同じ条件でポリエチレンテレフタラート(PET)基板に成膜後、90℃で5時間加熱処理を行い透明な膜を得た。得られた膜の鉛筆硬度と水及びn−ヘキサデカンの静的接触角と転落角を測定した。結果を表1にまとめる。
[実施例6]
塗布液1を用い、低圧水銀ランプ下で10分処理したシリコン基板上にスピンコート法により回転数200rpm×5秒に引き続き1000rpm×20秒で膜形成後、120℃で6時間加熱処理を行い透明な膜を得た。得られた膜のn値(589.3nmの屈折率値)を分光反射法により測定し、1.38の値を得た。
厚み方向の元素組成は、X線光電子分光(XPS)法により観察した結果、膜を構成するシリコン、酸素、フッ素、炭素の存在比率は厚み方向でほぼ均一であった。フッ素濃度はおよそ28重量%であり、膜内分布は±2重量%以内であった。
得られた膜の鉛筆硬度と水及びn−ヘキサデカンの静的接触角と転落角を測定した。結果を表1にまとめる。
[実施例7]
塗布液1をエタノールで5倍希釈した後、低圧水銀ランプ下で10分処理したガラス基板上にスピンコート法により回転数200rpm×5秒に引き続き1000rpm×20秒で膜形成後、120℃で6時間加熱処理を行い透明な膜を得た。得られた膜の鉛筆硬度と水及びn−ヘキサデカンの静的接触角と転落角を測定した。結果を表1にまとめる。
[実施例8]
塗布液3を用い、低圧水銀ランプ下で10分処理したシリコン基板上にスピンコート法により回転数200rpm×5秒に引き続き1000rpm×20秒で成膜後、120℃で6時間加熱処理を行い透明な膜を得た。得られた膜のn値(589.3nmの屈折率値)を分光反射法により測定し、1.39の値を得た。
厚み方向の元素組成は、XPS法により観察した結果、膜を構成するシリコン、酸素、フッ素、炭素の存在比率は厚み方向でほぼ均一であった。フッ素濃度はおよそ10重量%であった。
得られた膜の鉛筆硬度と水及びn−ヘキサデカンの静的接触角と転落角を測定した。結果を表1にまとめる。
[実施例9]
塗布液3をエタノールで5倍希釈した後に、低圧水銀ランプ下で10分処理したガラス基板上にスピンコート法により回転数200rpm×5秒に引き続き1000rpm×20秒で成膜後、120℃で6時間加熱処理を行い透明な膜を得た。得られた膜の鉛筆硬度と水及びn−ヘキサデカンの静的接触角と転落角を測定した。結果を表1にまとめる。
[比較例1]
前述のケイ素含有塗布液を合成するのに使用したエトキシシラン重合体のエタノール溶液(コルコート社製、HAS−6、平均10量体、シリカ酸化物換算濃度18重量%)1mlを用い、低圧水銀ランプ下で10分処理したシリカ基板に回転数200rpm×5秒に引き続き1000rpm×20秒の条件にてスピンコートし、120℃で6時間加熱処理を行い透明な膜を得た。
得られた膜の屈折率は、分光反射法により測定し、n値として1.43であった。得られた膜の鉛筆硬度と水及びn−ヘキサデカンの静的接触角と転落角を測定した。結果を表1にまとめる。
[比較例2]
[ケイ素含有塗布液の合成4]
ノナフルオロヘキシルトリメトキシシラン1.48gを13.3gのエタノールに溶かした後、0.1M塩酸80mgを加え、室温で30分撹拌した。得られた反応溶液をエトキシシラン重合体のエタノール溶液(コルコート社製、HAS−6、平均10量体、シリカ酸化物換算濃度18重量%)4gに加えた。16時間室温で撹拌した後、60℃で1時間加熱撹拌し、ケイ素含有塗布液の構成成分であるフルオロアルキルシロキサン末端を有するケイ素含有塗布液を得た。化学式(1)において、RがC(CHSi(OCHO−、R及びRがC−、平均でm+nが10、m=2.5、n=7.5に相当する物質を得ることができた(塗布液1:仕込組成として形成された膜中のフッ素量36重量%、ケイ素24重量%、炭素15重量%)。
塗布液4の成膜を試みたが、はじきによりシリコン基板上に成膜することは出来なかった。ガラス、PETなどの基板でも同様に成膜できなかった。
[比較例3]
[ケイ素含有塗布液の合成5]
ノナフルオロヘキシルトリメトキシシラン1.48gを13.3gのエタノールに溶かした後、0.1M塩酸80mgを加え、室温で30分撹拌した。得られた反応溶液をエトキシシラン重合体のエタノール溶液(コルコート社製、HAS−6、平均10量体、シリカ酸化物換算濃度18重量%)50gに加えた。16時間室温で撹拌した後、60℃で1時間加熱撹拌し、ケイ素含有塗布液の構成成分であるフルオロアルキルシロキサン末端を有するケイ素含有塗布液を得た。化学式(1)において、RがC(CHSi(OCHO−、R及びRがC−、平均でm+nが10、m=0.3、n=9.7に相当する物質を得ることができた(塗布液5:仕込組成として形成された膜中のフッ素量7重量%、ケイ素42重量%、炭素3重量%)。
塗布液5を用いた形成膜の屈折率は、シリコン基板上に成膜した膜を分光反射法により測定し、n値(589.3nmの屈折率値)として1.41であることを確認した。
[比較例4]
ノナフルオロヘキシルトリメトキシシラン1.48gを13.3gのエタノールに溶かした後、エトキシシラン重合体のエタノール溶液(コルコート社製、HAS−6、平均10量体、シリカ酸化物換算濃度18重量%)50gに加えた。1時間室温で撹拌した後、低圧水銀ランプ下で10分処理したシリコン基板に回転数200rpm×5秒に引き続き1000rpm×20秒の条件にてスピンコートし、120℃で6時間加熱処理を行い透明な膜を得た。
得られた膜の屈折率は、分光反射法により測定し、n値として1.43であった。厚み方向の元素組成をXPS法により観察した結果、フッ素元素が表面付近に偏在することが確認された。
本発明の低屈折率膜は、屈折率が1.4未満であるにもかかわらずフッ素を含有しない通常の屈折率の大きなシリカ膜と同等の鉛筆硬度を有するものであった。また、フッ素元素が膜内に均質に存在するにもかかわらず優れた鉛筆硬度の値を示し、特に実施例4、実施例5のように膜内に明確な細孔が存在してもその形状が鈍角で形成される本発明の膜では優れた鉛筆硬度を維持している。
また、本発明の実施例の膜は、フッ素を含有することにより水や油(n−ヘキサデカン)に対する弾き性を有する撥水・撥油膜となっている。更には、非常に小さな転落角を有し、動的特性に優れていることも示された。
[実施例10]
無アルカリガラス(Corning7053)にジルコニアナノ粒子分散高屈折率液(ハリマ化成製、UHV−D−Zr)を90nmの厚みになるようにスピンコートした後、塗布液2を110nmの厚みになるように積層した。得られた積層基板の反射特性を評価し、580nmでの反射率が0.2%以下であり反射防止効果を確認した(基板のみの反射率は4.5%)。
Figure 2016138938
本発明の低屈折率組成物は、従来より知られている低屈折率材料に比べ機械的特性が優れること、耐光性に優れることより、反射防止膜としての適用範囲が広がる。従来タイプの機械強度の弱い低屈折率膜が直接触れることのない場所にその使用範囲が限定されていたのに対し、本発明の低屈折率組成物は反射防止膜として光学素子の最表面部への適用も可能となる。また、耐光性と撥水・撥油性に優れることより屋外で使用される太陽電池用の反射防止膜などへの使用も可能となる。

Claims (4)

  1. 酸化ケイ素組成を主成分としフッ素を含有する低屈折率膜において、フッ素を8重量%から30重量%含有し、膜中にフッ素元素が均一に存在し、フッ素元素の組成ばらつきが厚み方向において±2重量%以内であることを特徴とする低屈折率膜。
  2. 膜中に気孔が存在し、前記気孔が長手方向の気孔径が150nm以下である主として鈍角で構成される気孔であることを特徴とする請求項1に記載の低屈折率膜。
  3. 請求項1および請求項2に記載の低屈折率膜を構成層として形成することを特徴とする反射防止膜。
  4. フルオロアルキルアルコキシシラン溶液へ水を添加してアルコキシル基の部分加水分解を行った後、アルコキシシラン、アルコキシシラン重合体又はそれらの溶液を混合し反応させて、ポリシロキサンを含む塗布液を調整した後、前記塗布液を基材に塗布して加熱することを特徴とする低屈折率膜の製造方法。
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