この発明は,頑強な底面部を備えるオートボトム容器を提供することを目的とする。
この発明は,起函された状態から元の折り畳まれた状態に戻りにくい,したがって起函された状態を安定して維持することができるオートボトム容器を提供することを目的とする。
第1の発明によるオートボトム容器は,被係合部および折り目が形成され,上記折り目に沿って折り畳み可能な底面パネル,ならびに上記底面パネルの周縁から立ち上がり,上記底面パネルが上記折り目に沿って折り畳まれたときに開口が閉じられ,かつ上記底面パネルの折り畳みが解消されて広げられたときに開口が形成される胴部を備え,上記胴部の両側部の少なくとも一方の最下部に,上記折り畳みが解消されて広げられた上記底面パネルの上記被係合部に係合する,内向きにのびる鉤部が設けられていることを特徴とする。胴部の両側部とは折り畳まれたときに両側部となる部分を意味する。
底面パネルに折り目が形成されており,この折り目に沿って底面パネルは折り畳むことができる。上記底面パネルの周縁から胴部が立ち上がっている。上記底面パネルが上記折り目に沿って折り畳まれたときに胴部の開口が閉じられ,上記底面パネルの折り畳みが解消されて広げられたときに胴部に開口が形成される。すなわち,折り目に沿って底面パネルを折り畳むことで,胴部の一方がわの面と他方がわの面とを重ね合わせて開口を無くす(内部空間をつぶす,フラットにする)ことができる。底面パネルは折り目に沿って山折りすることで胴部の内側(一方がわの面と他方がわの面の間に挟まれる向き)に折り畳んでもよいし,折り目に沿って谷折りすることで胴部の下がわから外向きに突き出す方向に折り畳んでもよい。
起函するときには,フラットな胴部の両側部を互いに近づく向きに押す。折り畳まれた状態で重ね合わされている胴部の一方がわの面と他方がわの面は,胴部の両側部を互いに近づく向きに押すことで互いに離れる向きに移動し,開口(内部空間)が形成される。胴部には底面パネルがつながっているので,胴部の一方がわの面と他方がわの面とが互いに離れる向きに移動するとそれに伴って底面パネルの折り畳みが次第に解消されて広がっていき,底面が張られていく。底面パネルが胴部の内側に挟まれる方向に折り畳まれている場合には底面パネルは次第に下向きに移動する。底面パネルが胴部の下がわから外向きに突き出す方向に折り畳まれている場合には底面パネルは次第に上向きに移動する。
この発明によると,上記胴部の両側部の少なくとも一方の最下部に,上記折り畳みが解消されて広げられた上記底面パネルの上記被係合部に係合する,内向きにのびる鉤部が設けられているので,胴部の両側部を互いに近づけるとこれに伴って鉤部も内向きに移動する。折り畳みが解消されて次第に広がる底面パネルと鉤部とが上下に重なりあい,ついには底面パネルに形成された被係合部に鉤部が係合する。鉤部が被係合部から外されて係合が解かれない限り,底面パネルを再び折り畳むことはできない。起函された状態を安定して維持することができる。また,内向きにのびる鉤部によって底面パネルを支えることができるので,頑強な底面部を備える容器が実現する。
被係合部は鉤部が引っ掛かる(係合する)縁部を有すればよく,その形態は穴(鉤穴)であっても,切欠きや切込みであってもよい。
好ましくは上記底面パネルに一対の被係合部が形成されており,上記一対の被係合部のそれぞれに係合する一対の鉤部が,上記胴部の両側部の最下部に設けられている。底面パネルに形成された一対の被係合部の両方に鉤部が係合するので,底面パネルの広がった状態が安定して維持され,容器の安定性が向上する。
上記折り畳み可能な底面パネルを上記折り目に沿って山折りすることで胴部の内側に挟む場合には,好ましくは上記鉤部には上向きの返しが設けられる。起函するときに底面パネルは次第に下向きに移動するので,下向きに移動する底面パネルに形成された被係合部に,上向きの返しを下側から入り込ませてしっかりと係合することができる。
上記折り畳み可能な底面パネルを上記折り目に沿って谷折りすることで下方に突出させる場合には,好ましくは上記鉤部には下向きの返しが設けられる。起函するときに底面パネルは次第に上方に移動するので,上向きに移動する底面パネルに形成された被係合部に,下向きの返しを上側から入り込ませてしっかりと係合することができる。
上記折り畳み可能な底面パネルを上記折り目に沿って谷折りすることで下方に突出させておき,次に底面パネルを上記折り目に沿って折り返して山折りにし,最後に,底面パネルに形成された被係合部に鉤部を係合してもよい。この場合には,上記鉤部には好ましくは上向きの返しが設けられる。
一実施態様では,上記底面パネルと上記胴部との境界が,上記胴部に向かう向きに弧状の膨らみを持って湾曲して形成されている。起函されたときに底面パネルを反った状態とすることができ,底面パネルの強度が増す。
好ましい実施態様では,片側または両側に把手部が設けられる。把手部を手で掴んでオートボトム容器を持ち上げることができる。
第2の発明によるオートボトム容器は,被係合部および折り目が形成され,上記折り目に沿って折り畳み可能な底面パネル,ならびに上記折り目を挟んで上記底面パネルの正面がわおよび背面がわのそれぞれから立ち上がり,両側部が互いに固定されることによって胴部を形成する第1パネルおよび第2パネルを備え,上記胴部の両側部の少なくとも一方の最下部に,上記折り畳みが解消されて広げられた上記底面パネルの上記被係合部に係合する,内向きにのびる鉤部が設けられていることを特徴とする。第1パネルと第2パネルの両側部が互いに固定されることで胴部が形成される。たとえば,第1パネルの両側部,第2パネルの両側部,または第1パネルと第2パネルの両方の両側部に糊代片(接着パネル)を設けておくことで,第1パネルと第2パネルの両側部同士を互いに固定して胴部を形成することができる。
第2の発明においても,上記胴部の両側部の少なくとも一方の最下部に,上記折り畳みが解消されて広げられた上記底面パネルの上記被係合部に係合する,内向きにのびる鉤部が設けられているので,胴部の両側部を互いに近づけると,これに伴って鉤部が内向きに移動する。折り畳みが解消されて次第に広がる底面パネルと鉤部とが上下に重なりあい,ついには底面パネルに形成された被係合部に鉤部が係合する。鉤部が被係合部から外されて係合が解かれない限り,底面パネルを再び折り畳むことはできない。起函された状態を安定して維持することができる。また,内向きにのびる鉤部によって底面パネルを支えることができるので,頑強な底面部を備える容器が実現する。
第3の発明によるオートボトム容器は,被係合部および折り目が形成され,上記折り目に沿って折り畳み可能な底面パネル,上記折り目を挟んで設けられ,上記底面パネルの正面がわおよび背面がわのそれぞれから立ち上がる正面パネルおよび背面パネル,ならびに上記正面パネルの左右両側および背面パネルの左右両側のそれぞれに設けられ,互いに接合される接合フラップを備え,上記正面パネルおよび背面パネルの一方側がわおよび他方側がわの少なくともいずれかの上記接合フラップの最下部に,上記折り畳みが解消されて広げられた上記底面パネルの上記被係合部に係合する,内向きにのびる鉤部が設けられていることを特徴とする。
正面パネルの左右両側,および背面パネルの左右両側のそれぞれに接合フラップが連設されており,この接合フラップが左右両側でそれぞれ接合(たとえば接着)される。接合フラップの内面同士を貼り合わせてもよいし,たとえば正面パネルの左右両側の接合フラップを,背面パネルの左右両側の接合フラップの外面にまで回り込ませて貼り合わせてもよい。いずれにしても正面パネルと背面パネルとは,左右両側の接合フラップが接合されることで両側部において一体化される。正面パネルと背面パネルとによって胴部が形成される。
起函するときには,左右両側の接合フラップを互いに近づく向きに押す。正面パネルおよび背面パネルは互いに離れる向きに移動し,開口が形成される。正面パネルおよび背面パネルには折り畳まれた底面パネルがつながっているので,正面パネルおよび背面パネルが互いに離れる向きに移動するとそれに伴って底面パネルの折り畳みが次第に解消されて広がっていき,底面が張られていく。
第3の発明においても,上記正面パネルおよび背面パネルの左右両側の接合フラップのうちの少なくとも一方の最下部に内向きに伸びる鉤部が形成されているので,左右両側の接合フラップを互いに近づけると,これに伴って鉤部も内向きに移動する。折り畳みが解消されて次第に広がる底面パネルと鉤部とが上下に重なりあい,ついには底面パネルに形成された被係合部に鉤部が係合する。鉤部が被係合部から外されて係合が解かれない限り,底面パネルを再び折り畳むことはできない。起函された状態を安定して維持することができる。また,内向きにのびる鉤部によって底面パネルを支えることができるので,頑強な底面部を備える容器が実現する。
以下,図面を参照してこの発明によるオートボトム容器を詳細に説明する。
図1から図8は第1実施例によるオートボトム容器を示している。この実施例によるオートボトム容器1は1枚の厚紙により作られる。図1はオートボトム容器1を形成する厚紙(ブランク)の展開図であり,容器1の内側となる面をみたものである。一点鎖線は容器1を作るときに山折りまたは谷折りされる折り目を示している。折り曲げを容易にするためにこの一点鎖線に沿って折り線加工,罫線加工,ミシン目加工,ハーフカット加工などが施される。厚紙に代えて,ボール紙,ミルクカートン紙,プラスチック・シート等を用いることもできる。
オートボトム容器1は,折り畳まれた状態から起函されることで容器として用いることができる。折り畳まれた容器1を起函するときに,後述するように底面部が形成される(容器の底部に底面部が張られる)(これを「オートボトム」と言う)。図2は図1に示す型取り(型抜き)されたブランクを折り曲げかつ後述する必要箇所を接着(糊付け)することにより完成した,折り畳まれた状態のオートボトム容器1を示している。図6は起函された(組み立てられた)オートボトム容器1を示している。オートボトム容器1は折り畳まれた状態(図2)で輸送ないし保管され,その後ユーザによって起函される(図6)。
はじめに図1を参照して,オートボトム容器1のブランクは,ほぼ正六角形の底面パネル30を備えている。底面パネル30には,底面パネル30を前後に等しく二分する位置に折り目31が形成されており,この折り目31上の左右の端部に一対の鉤穴32L,32Rがあけられている。詳細は後述するが,鉤穴32L,32Rは,以下に説明する鉤部を係合するための被係合部として用いられる。折り目31を挟む底面パネル30の前,後(正面,背面)がわにあたる折り目15,25から,正面パネル10および背面パネル20がそれぞれ連続して互いに反対方向にのびている。正面パネル10および背面パネル20は底面パネル30から遠ざかるにしたがってその幅が広がっており,起函されたときに上方が大きく口を開くようになっている。
正面パネル10は縦向きに伸びる2本の折り目13によって3つの分割領域11a,11b,11cに分割されている。中央の分割領域11bが折り目15を介して底面パネル30とつながっている。左右の分割領域11a,11cのそれぞれの側方に,長方形状の接合フラップ12L,12Rが折り目14を介してつながっている。接合フラップ12L,12Rの最下部には,内方(分割領域11a,11c)に向かい,かつ先端部に上向き(起函された状態において上向きの意味である)の返しを持つ鉤部16L,16Rがそれぞれ形成されている。さらに分割領域11a,11cの最下部に脚部17L,17Rがそれぞれ形成されている。
第1実施例のオートボトム容器1は底面パネル30の折り目31を境にして対称に形成されている。すなわち,背面パネル20にも縦向きに伸びる2本の折り目23が形成されており,背面パネル20は2本の折り目23によって3つの分割領域21a,21b,21cに分割されている。中央の分割領域21bに底面パネル30が折り目25を介してつながっており,左右の分割領域21a,21cのそれぞれの側方には接合フラップ22L,22Rが折り目24を介してつながっている。接合フラップ22L,22Rの最下部にも,内方に向かいかつ上向きの返しを持つ鉤部26L,26Rがそれぞれ形成されている。分割領域21a,21cの最下部にも脚部27L,27Rがそれぞれ形成されている。なお,正面,背面パネル10,20のそれぞれにおいて縦向きにのびて形成される2本の折り目13,23は,起函されたときのオートボトム容器1の形状(図6参照)を整形する(きれいに形付ける)ために設けられており,必ずしも必要ではない。また,正面,背面パネル10,20の一部分(たとえば,正面,背面パネル10,20の上端から下端に向かう途中まで)に形成してもよい。
上述のように型取り(型抜き)されたブランク1は,その折り目に沿って折り曲げられて,かつ所望箇所が接着されることで図2に示す形に形成される。
すなわち,底面パネル30を折り目31に沿って山折りし底面パネル30を2つに折り畳む。さらに折り目15,25に沿って正面パネル10および背面パネル20を谷折りする。正面パネル10と背面パネル20とが重ね合わされ,これらの間に折り畳まれた底面パネル30が挟まれる。背面パネル20の左右両側の接合フラップ22L,22Rの内面に設けられた糊部Nによって,背面パネル20の左右両側の接合フラップ22L,22Rと,正面パネル10の左右両側の接合フラップ12L,12Rとがそれぞれ接着される。両側部において接着される正面パネル10と背面パネル20とによって胴部が形成され,これにより折り畳まれた状態のオートボトム容器1が完成する(図2)。糊部Nによって接着されることで,正面パネル10の左がわの接合フラップ12Lと背面パネル20の左がわの接合フラップ22Lとが一体化され,これらの接合フラップ12L,22Lの最下部の鉤部16L,26Lも一体化される。同様にして,正面パネル10の右がわの接合フラップ12Rと背面パネル20の右がわの接合フラップ22Rとが一体化され,これらの接合フラップ12R,22Rの最下部の鉤部16R,26Rも一体化される。
折り畳まれた状態のオートボトム容器1は,左がわの接合フラップ12L,22Lと右がわの接合フラップ12R,22Rを互いに近づける(近づく向きに押す)ことで起函される。図3は図2のIII−III線に沿う端面図を拡大して示している。図4は起函途中の図3相当の端面図である。図5は起函完了後の図3相当の端面図である。図2から図5を参照して,左がわの接合フラップ12L,22Lと右がわの接合フラップ12R,22Rをそれぞれ指で掴み,互いに近づく向きに押すと,左がわの接合フラップ12L,22Lと右がわの接合フラップ12R,22Rとが互いに近づいていき,それと同時に正面パネル10と背面パネル20は外向きに互いに離れていく。正面パネル10と背面パネル20が外向きに互いに離れていくときに,正面パネル10は折り目13の箇所で,背面パネル20は折り目23の箇所で,それぞれ鈍角に曲がる。さらに,正面パネル10と背面パネル20との間に挟まれている底面パネル30は,互いに外向きに離れていく正面パネル10と背面パネル20の移動に伴って次第に折り畳み状態が解消されて徐々に広がり,かつ下方に向けて下がっていき,ついには正面パネル10と背面パネル20の最下部にほぼ面一に張られる。
図6は起函されたオートボトム容器1をやや上方から見た正面図である。図7は図6の状態のオートボトム容器1の底面図である。図8は左がわの接合フラップ12L,22Lの最下部に形成された鉤部16L,26Lが,底面パネル30に形成された鉤穴32Lに係合している様子を拡大して示している。
オートボトム容器1は,上述したように,左がわの接合フラップ12L,22Lと右がわの接合フラップ12R,22Rを互いに近づけることで起函される。左がわの接合フラップ12L,22Lと右がわの接合フラップ12R,22Rを互いに近づけると,接合フラップ12L,22Lの最下部の鉤部16L,26L,接合フラップ12R,22Rの最下部の鉤部16R,26Rも内向きに移動する。また,上述のように底面パネル30が次第に下方に向けて下がっていく。底面パネル30が下がっていく途中,底面パネル30に形成された一対の鉤穴32L,32Rのそれぞれに,左がわの接合フラップ12L,22Lの最下部の鉤部16L,26Lと,右側の接合フラップ12R,22Rの最下部の鉤部16R,26Rとが下側から入り込み,鉤穴32L,32Rの縁部に係合する。一旦係合させるとその係合は比較的外れにくく,ほぼ面一に張られた底面パネル30が再び折り畳まれてしまうことはない。起函された状態を安定して維持することができる。また,広げられた底面パネル30は左側の鉤部16L,26L,右側の鉤部16R,26Rによって下側から支えられるので,底面パネル30は比較的頑強に張られることになる。
また,起函した状態において,オートボトム容器1は正面パネル10の左右の分割領域11a,11cの下端部の脚部17L,17R,および背面パネル20の左右の分割領域21a,21cの下端部の脚部27L,27Rの4箇所で均等に支えられる。起函したオートボトム容器1は安定して自立させることもできる。
オートボトム容器1は,たとえば容器1の内側に貼り付けられるパウチ袋とともに用いられ,パウチ袋の上部開口を大きく開き,かつしっかりと安定して自立させるために用いることができる。
図9はオートボトム容器1とともに用いられるパウチ袋40の正面図を,図10は図9のX−X線に沿う断面図を,それぞれ示している。図11はパウチ袋40がオートボトム容器1の内側に貼り付けられた状態を示している。
パウチ袋40は正面から見て下方に向かってやや幅が狭くなる矩形状であり,表面,裏面を形成する表面フィルム41および裏面フィルム42と,まちとなる底部フィルム43とを備えている。パウチ袋40の上部では表,裏面フィルム41,42が外周部分で互いにシールされ,パウチ袋40の下部では底部フィルム43の外周部分と表,裏面フィルム41,42の外周部分とが互いにシールされている(シール部45)。シールはフィルムの接着(溶着を含む)により行なわれる。底部フィルム43はそのほぼ中央で2つに折り曲げられ,表面フィルム41と裏面フィルム42との間に挟まれている。表面フィルム41,裏面フィルム42および底部フィルム43によって密閉される内部空間に,たとえば加工食品47(フリーズドライ食品など)が収納される。
パウチ袋40の上部の表面フィルム41と裏面フィルム42とのシール部45に,一対のノッチ(切込み,切れ目)46が形成されている。ノッチ46はパウチ袋40をその幅方向に引裂いて開封しやすくするために形成されている。表面フィルム41および裏面フィルム42の一対のノッチ46を結ぶ直線上部分には,好ましくは引裂き易くするための弱部(ハーフカット等)48が形成される。
パウチ袋40はオートボトム容器1の内面(正面パネル10の内面および背面パネル20の内面)に接着される。図11を参照して,パウチ袋40の上方と下方の2箇所(接着箇所P1,P2)において,正,背面パネル10,20のそれぞれと,パウチ袋40の表,裏面フィルム41,42とが接着される。パウチ袋40はオートボトム容器1の底面パネル30には接着されない。折り曲げられたパウチ袋40の底部フィルム43(図10参照)の間に,山折りされるオートボトム容器1の底面パネル30(図2参照)が挟まれる。
ノッチ46および弱部48に沿ってパウチ袋40の上端部分を引き裂くことで,パウチ袋40の上部が開く。次に,上述したように,オートボトム容器1の左右の接合フラップ12L,22L,12R,22Rを互いに近づく向きに押す。パウチ袋40の表,裏面フィルム41,42がオートボトム容器1の正,背面パネル10,20のそれぞれに接着されているので,オートボトム容器1の上部が次第に口を開くと同時に,パウチ袋40の上部の口も次第に大きく広がっていく。正,背面パネル10,20が互いに離れる向きに移動し,これに伴ってパウチ袋40の表,裏面フィルム41,42も互いに離れていくことで,パウチ袋40の底部フィルム43は,その折り曲げ状態が解消されて次第に広がっていく(まちが形成される)。
上部が大きく開口したパウチ袋40の中にたとえば熱湯が注がれ,これにより加工食品47が熱湯に溶け,スープ等ができあがる。パウチ袋40はオートボトム容器1によってしっかりと支えられているので,オートボトム容器1が転倒して中身がこぼれてしまうおそれは少ない。また,比較的頑強に底面パネル30が張られるので,お湯が注がれても底面パネル30が壊れてしまう(底が抜けてしまう)おそれも少ない。たとえば非常食,キャンプ用品などに非常に便利である。もっとも,通常の家庭内などにおける使用にも適している。
上述した第1実施例では,ほぼ正六角形の形状の底面パネル30を備え,正面,背面パネル10,20が2本の折り目13,23によって3つの分割領域に分けられているオートボトム容器1を説明したが,底面パネル30の形状は六角形に限られず,四角形,五角形,その他の多角形,円形,楕円形などであってもよい。分割領域も3つに限らず,2つ,4つなどその他の数にすることもできる。また,容器1は,底面パネル30の折り目31を境にして完全に対称形にする必要は必ずしもない。たとえば正面パネル10よりも背面パネル20の高さ(長さ)を高くすることもできるし,左右の接合フラップの形状を異ならせることもできる。
図12から図16は第2実施例によるオートボトム容器を示している。第1実施例に示したものと同一物には同一符号を付し,重複説明を避ける。
第2実施例は,次の3つの点で第1実施例と異なっている。第1は,底面パネル30と正面,背面パネル10A,20Aとの間の境界の折り目15,25が,それぞれ正面パネル10A(中央分割領域11b)および背面パネル20A(中央分割領域21b)に向かう向きに弧状の膨らみを持って湾曲して形成されている点である。第2は,正面パネル10Aの左右の接合フラップ12L,12Rの最下部の鉤部16L,16Rの先端部の返し,および背面パネル20Aの左右の接合フラップ22L,22Rの最下部の鉤部26L,26Rの先端部の返しが,下向きに形成されている点である。第3は接合フラップ12L,12R,22L,22Rの側部に半円形の窪み41が形成されている点である。
図13を参照して,第2実施例のオートボトム容器2では,底面パネル30が折り目31に沿って谷折りされ,折り畳まれた状態において底面パネル30が下方に突出した状態にされる。折り畳まれたオートボトム容器2を起函するために左がわの接合フラップ12L,22Lと右がわの接合フラップ12R,22Rを互いに近づける(近づく向きに押す)と,底面パネル30は次第に上向きに上昇する。上向きに上昇する底面パネル30を指で押し上げて底面パネル30の上向きの移動を補助してもよい。接合フラップ12L,12R,22L,22Rの側部に半円形の窪み41が形成されているので,たとえばこの半円形の窪み41に人差し指をかけて容器2全体を支えることができ,底面パネル30を親指で上向きに押しやすい。図16を参照して,底面パネル30が上昇する途中,底面パネル30にあけられた一対の鉤穴32L,32Rに,左がわの接合フラップ12L,22Lの下端部の鉤部16L,26Lと,右がわの接合フラップ12R,22Rの下端部の鉤部16R,26Rとが上側から入り込む。
底面パネル30と正面,背面パネル10A,20Aとの境界の折り目15,25が,それぞれ正面パネル10Aおよび背面パネル20Aに向かう向きに弧状の膨らみを持っているので,底面パネル30は上方に向かって弧を描いて突出するようにして滑らかに反る(図14参照)。上向きに滑らかに反ることで,オートボトム容器2の底面に底面パネル30がしっかりと張られることになり,さらに底面パネル30にあけられた一対の鉤穴32L,32Rと,鉤部16L,26Lおよび鉤部16R,26Rもしっかりと係合される(図15,図16)。
図17から図20は第3実施例を示している。第1実施例とは底面パネルの形状が異なっている。
図17を参照して,第3実施例のオートボトム容器3の底面パネルは,折り目15を介して正面パネル10(中央分割領域11b)とつながる方形の底面パネル30Aと,折り目25を介して背面パネル20(中央分割領域21b)とつながる台形の底面パネル30Bを含む。台形の底面パネル30Bの幅の広い一辺の両端部が外方に斜めに突出しており,そこに鉤穴32L,32Rが形成されている。底面パネル30Aと底面パネル30Bとの境界が,底面パネルを折り畳むときの折り目31である。
図18を参照して,搬送時ないし保管時には,上述した第2実施例と同様に,オートボトム容器3の底面パネル30A,30Bは下方に突出した状態にされる。図19を参照して,オートボトム容器3を起函するときには,左がわの接合フラップ12L,22Lと右がわの接合フラップ12R,22Rを互いに近づけ,底面パネル30A,30Bを上向きに上昇させて一旦下向き(谷折り)から上向き(山折り)に折り返し,正面パネル10と背面パネル20の間に挟む。その後は,第1実施例と同様にして,再度左がわの接合フラップ12L,22Lと右がわの接合フラップ12R,22Rを互いに近づけることで,底面パネル30A,30Bが下向きに下降していき,底面パネル30Bの両端に形成された鉤穴32L,32Rに,鉤部16L,26Lおよび鉤部16R,26Rが下側から入り込む(図20)。
底面パネル30A,30Bを下向き(谷折り)から上向き(山折り)に折り返すときに,鉤部16L,26Lおよび鉤部16R,26Rが底面パネル30B(鉤穴32L,32Rがあけられている部分)に少し干渉するので,第3実施例のオートボトム容器3は鉤穴32L,32Rが形成された部分(枠部)を変形しやすくしている。鉤穴32L,32Rが形成されている枠部に切れ目を形成しておいてもよい。底面パネル30A,30Bを下向きから上向きに折り返すときに,鉤部16L,26Lおよび鉤部16R,26Rが枠部に形成された切れ目を通るので,鉤穴32L,32Rが形成されている部分を変形させることなく,下向き(谷折り)から上向き(山折り)に折り返すことができる。
図21および図22は第4実施例によるオートボトム容器を示している。図21の第4実施例のオートボトム容器4の展開図である。図22は折り畳まれた状態のオートボトム容器4を背面がわから示している。第4実施例のオートボトム容器4は,接合フラップを持たない点が第1実施例のオートボトム容器1と異なる。
図21を参照して,オートボトム容器4では,正面パネル10Bがわの鉤部16L,16Rが,正面パネル10Bの左右の分割領域11a,11cの最下部にそれぞれ形成されている。同様にして,背面パネル20Bがわの鉤部26L,26Rは,背面パネル20の左右の分割領域21a,21cの最下部にそれぞれ形成されている。
正面パネル10Bの両側に糊代18L,18Rが折り目14を介してそれぞれ連設されている。図22を参照して,糊代18L,18Rを折り目14に沿って内向きに折り,背面パネル20B(左右の分割領域21a,21c)の外面にそれぞれ接着することで,胴部が形成される。折り畳まれた状態のオートボトム容器4の両側部をそれぞれ内向きに押すことで,オートボトム容器4は起函される(上方が大きく口を開く)。底面パネル30の両端に形成された鉤穴32L,32Rに,鉤部16L,26Lおよび鉤部16R,26Rが下側から入り込んで係合するのは,第1実施例と同じである。
糊代18L,18Rは,正面パネル10Bに代えて背面パネル20Bに設けることができるのは言うまでもない。
図23および図24は第5実施例によるオートボトム容器を示している。図23は第5実施例のオートボトム容器5の展開図である。図24は折り畳み状態のオートボトム容器5を背面がわから示している。
第5実施例のオートボトム容器5は,背面パネル20Cが鉤部を備える接合パネルを持たない点が,第1実施例のオートボトム容器1(図1参照)と異なる。第1実施例において背面パネル20の左右に設けられている接合パネル22L,22Rは,第5実施例では,正面パネル10Cの左右の接合パネル12L,12Rのさらに側方に,折り目51を介してそれぞれ連設されている。
正面パネル10Cの左側では,折り目51に沿って接合フラップ22Lが折り返されて接合フラップ12Lに接着される。正面パネル10Cの右側では,折り目51に沿って接合フラップ22Rが折り返されて接合パネル12Rに接着される。図24を参照して,上述した第4実施例と同様にして,糊代18L,18Rを折り目52に沿って内向きに折って背面パネル20Cの外面に接着することで,胴部が形成される。底面パネル30の両端に形成された鉤穴32L,32Rに,鉤部16L,26Lおよび鉤部16R,26Rが下側から入り込んで係合するのは,第1実施例と同じである。
図25および図26は第6実施例によるオートボトム容器を示している。図25は第6実施例のオートボトム容器6の展開図である。図26は折り畳み状態のオートボトム容器6を背面がわから示している。
図25を参照して,第6実施例のオートボトム容器6は,貼り合わせのための糊代18L,18Rが背面パネル20Dに設けられている点,組み立てられたときに背面を構成する面部の一部(分割領域21a,21c)が展開図(ブランク)において正面パネル10Dに含まれている点が,第5実施例のオートボトム容器5(図23参照)と異なる。
正面パネル10Dの左側では,折り目51に沿って接合フラップ22Lが折り返されて接合フラップ12Lに接着される。正面パネル10Dの右側では,折り目51に沿って接合フラップ22Rが折り返されて接合パネル12Rに接着される。図26を参照して,背面パネル20D(中央分割領域21b)の左右の糊代18L,18Rは,展開図において正面パネル10Dに含まれる背面パネル20の左右の分割領域21a,21cの外面にそれぞれ接着され,これにより胴部が形成される。底面パネル30の両端に形成された鉤穴32L,32Rに,鉤部16L,26Lおよび鉤部16R,26Rが下側から入り込んで係合するのは,第1実施例と同じである。
図27および図28は第7実施例によるオートボトム容器を示している。図27は第7実施例のオートボトム容器7の展開図である。図28は起函完了後のオートボトム容器7の斜視図である。正面パネル10Eの左がわおよび背面パネル20Eの左がわに把手部(取っ手)51が設けられている点が,図21および図22に示すオートボトム容器4と異なる。
図27を参照して,正面パネル10Eの左がわの把手部51と背面パネル20Eの左がわの把手部51とが重ね合わされて糊部Nによって接着される。把手部51には長円形の切除部(開口部)51aが形成されている。図28を参照して,切除部51aに指を入れて持ち上げることができる,片側に把手部51を備えるオートボトム容器7が提供される。
図29および図30は第8実施例によるオートボトム容器を示している。図29は第8実施例のオートボトム容器8の展開図である。図30は起函完了後のオートボトム容器8の斜視図である。図17から図20に示すオートボトム容器3とは,正面パネル10Fの左右の接合フラップ12L,12Rのそれぞれ,および背面パネル20Fの左右の接合フラップ22L,22Rのそれぞれに,円形の切除部(開口)52aを備える把手部52が形成されている点が異なる。
図29を参照して,正面パネル10Fの両がわの把手部52と背面パネル20Fの両がわの把手部52とが重ね合わされて糊部Nによって接着される。切除部52aに指を入れて持ち上げることができる,両側に把手部52を備えるオートボトム容器8が提供される。
図31から図33は第9実施例のオートボトム容器を示している。図31は第9実施例のオートボトム容器9の展開図である。図32は折り畳み状態のオートボトム容器9を正面がわから示している。図33は起函完了後のオートボトム容器9の斜視図である。
第9実施例のオートボトム容器9は,一対の把手部53(把手部53を構成する切込み)が正面パネル10B(左右の分割領域11a,11c)に形成されている点が,図21および図22に示すオートボトム容器4と異なる。
オートボトム容器9の把手部53は正面パネル10Bの一部を用いて形成される。図32および図33を参照して,切込みによって囲まれた枠状部分を正面パネル10A(分割領域11a,11c)から型抜きすることで,型抜きされた部分が把手部53として用いられる。両側に把手部53を備えるオートボトム容器9が提供される。