JP2016136362A - 積層体基板、配線基板ならびにそれらの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 同時にエッチング処理を行うことができる銅層と、黒化層と、を備えた積層体基板及び配線基板並びにそれらの製造方法を提供する。
【解決手段】 積層体基板および配線基板は、透明基板の少なくとも一方の表面に設けた導電性の積層体を備え、積層体が、銅層と銅層の表面に積層される表面黒化層であり、表面黒化層が最も表面にあり、銅層は、表面黒化層側における銅層の結晶の(111)配向度指数が1.2以上である。銅層は、積層構造であり、透明基板側における銅層の結晶の(111)配向度指数が1未満であり、表面黒化層側における銅層の結晶の(111)配向度指数が1.2以上とすることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、配線基板、配線基板の製造方法に関する。
特許文献1に開示されているように、高分子フィルム上に透明導電膜としてITO(酸化インジウム−スズ)膜を形成したタッチパネル用の透明導電性フィルムが従来から用いられている。
ところで、近年タッチパネルを備えたディスプレイの大画面化が進んでおり、これに対応してタッチパネル用の透明導電性フィルム等の配線基板についても大面積化が求められている。しかし、ITOは電気抵抗値が高いため、配線基板の大面積化に対応できないという問題があった。
このため、例えば特許文献2、3に開示されているようにITO膜にかえて銅等のメッシュ構造の金属製細線(金属膜)の配線パターンを備えた配線基板を用いることが検討されている。しかし、例えば配線層に銅を用いた場合、銅は金属光沢を有しているため、反射によりディスプレイの視認性が低下するという問題がある。
そこで、上記透明導電膜と金属製細線(金属膜)を較べた場合、透明導電膜は、可視波長領域における透過性に優れるため電極等の回路パターンが殆ど視認されない利点を有するが、金属製細線(金属膜)より電気抵抗値が高いためタッチパネルの大型化や応答速度の高速化には不向きな欠点を有する。他方、金属製細線(金属膜)は、電気抵抗値が低いためタッチパネルの大型化や応答速度の高速化に向いているが、可視波長領域における反射率が高いため、例え微細なメッシュ構造に加工されたとしても高輝度照明下において回路パターンが視認されることがあり、製品価値を低下させてしまう欠点を有する。
そこで、電気抵抗値が低い上記金属製細線(金属膜)の特性を生かすため、樹脂フィルムから成る透明基板と金属製細線(金属膜)との間に金属酸化物や金属窒化物から成る黒化層を介在させて(特許文献4、特許文献5参照)、透明基板側から観測される金属製細線(金属膜)の反射を低減させる方法が提案されている。
一般的には、配線パターンを有する配線基板とするためには、透明基板の少なくとも一方の表面に形成された配線層と黒化層が積層された積層体膜を備えた積層体基板をエッチングして所望のパターンを形成している。
特開2003−151358号公報 特開2011−018194号公報 特開2013−069261号公報 特開2014−142462号公報 特開2013−225276号公報
タッチパネルに用いる配線基板を得るには、透明基板の少なくとも一方の表面に形成された配線層と黒化層が積層された積層体膜を備えた積層体基板をエッチングして所望のパターンを形成する必要がある。しかし、エッチング液に対する反応性が配線層と黒化層とで異なるという問題があった。すなわち、配線層と黒化層とを同時にエッチングしようとすると、いずれかの層が目的の形状にエッチングできないという問題があった。また、配線層のエッチングと黒化層のエッチングとを別の工程で実施する場合、工程数が増加するという問題があった。
上記従来技術の問題に鑑み、本発明は同時にエッチング処理を行うことができる銅層と黒化層とを備えた積層体基板及び配線基板並びにそれらの製造方法を提供することを目的とする。
本願発明者らは、黒化層側における銅層において、結晶の(111)配向度指数を1.2以上とすることで、配線層と黒化層とを同時にエッチングしようとする際に生じる、いずれかの層が目的の形状にエッチングできないという問題が発生することを抑えることができることを見出し、本発明を想到した。つまり、本願発明者らは、黒化層側における銅層において、結晶の(111)配向度指数を1.2以上とすることで、黒化層側における銅層のエッチング速度を遅くすることができ、銅層のサイドエッチングを抑制することができることを見出し、黒化層のはがれなどの問題の発生を抑制することができることを見出した。
本発明の第1の発明は、透明基板と、その透明基板の少なくとも一方の表面に設けた導電性の積層体を備え、その積層体が、銅層と前記銅層の表面に積層される表面黒化層であり、さらに表面黒化層が最も表面にあり、銅層は、前記表面黒化層側における銅層の結晶の(111)配向度指数が1.2以上であることを特徴とする積層体基板である。
本発明の第2の発明は、第1の発明における銅層が、積層構造であり、前記透明基板側における銅層の結晶の(111)配向度指数が1未満であり、前記表面黒化層側における銅層の結晶の(111)配向度指数が1.2以上であることを特徴とする積層体基板である。
本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明における銅層が、乾式めっき法により得られた第一銅膜と、前記乾式めっき法により得られた銅膜を給電層としてPR電流による電気めっき法で成膜して得られた第二銅膜とを含むことを特徴とする積層体基板である。
本発明の第4の発明は、第1〜第3の発明におけるPR電流による電気めっき法で成膜して得られた第二銅膜の厚さは、100nm以上であることを特徴とする積層体基板である。
本発明の第5の発明は、第1〜第4の発明における積層体が、前記透明基板の表面に形成される第一黒化層と、前記第一黒化層の表面に形成される銅層と、その銅層の表面に形成される前記表面黒化層の積層構造であることを特徴とする積層体基板である。
本発明の第6の発明は、第1〜第5の発明における第一黒化層および前記表面黒化層が、Ti、Al、V、W、Ta、Si、Cr、Ag、Mo、Ni、Cuから選択される1種以上の金属を含む窒化物または酸化物であることを特徴とする積層体基板である。
本発明の第7の発明は、第1〜第6の発明における銅層が厚さが100nm以上であり、前記表面黒化層の厚さが20nm以上であることを特徴とする積層体基板である。
本発明の第8の発明は、第1〜7の発明における積層体基板の製造方法であり、前記表面黒化層側における銅層をPR電流による電気めっき法で成膜する工程を含むことを特徴とする積層体基板の製造方法である。
本発明の第9の発明は、第2の発明における積層体基板の製造方法であり、前記銅層のうち前記透明基板側における銅層の全部または一部を乾式めっき法により成膜する工程(a)と、前記工程(a)の後に、前記表面黒化層側における銅層をPR電流による電気めっき法で成膜する工程を含むことを特徴とする積層体基板の製造方法である。
本発明の第10の発明は、透明基板と、その透明基板の少なくとも一方の表面に設けた積層構造の配線を備え、配線が、銅層と前記銅層の表面に積層される表面黒化層であり、前記表面黒化層が最も表面にあり、前記銅層は、前記表面黒化層側における銅層の結晶の(111)配向度指数が1.2以上であることを特徴とする配線基板である。
本発明の第11の発明は、第10の発明における銅層は、積層構造であり、前記透明基板側における銅層の結晶の(111)配向度指数が1未満であり、前記表面黒化層側における銅層の結晶の(111)配向度指数が1.2以上であることを特徴とする配線基板である。
本発明の第12の発明は、第10〜第11の発明おける銅層は、乾式めっき法により得られた第一銅膜と、前記乾式めっき法により得られた銅膜を給電層としてPR電流による電気めっき法で成膜して得られた第二銅膜とを含むことを特徴とする配線基板である。
本発明の第13の発明は、第10〜第12の発明におけるPR電流による電気めっき法で成膜して得られた第二銅膜の厚さは、100nm以上であることを特徴とする配線基板である。
本発明の第14の発明は、第10〜第13の発明における積層体が、前記透明基板の表面に形成される第一黒化層と、前記第一黒化層の表面に形成される前記銅層と、前記銅層の表面に形成される前記表面黒化層の積層構造であることを特徴とする配線基板である。
本発明の第15の発明は、第10〜第14の発明における第一黒化層および表面黒化層が、Ti、Al、V、W、Ta、Si、Cr、Ag、Mo、Ni、Cuから選択される1種以上の金属を含む窒化物または酸化物であることを特徴とする配線基板である。
本発明の第16の発明は、第10〜第15の発明における銅層は厚さが100nm以上であり、前記表面黒化層の厚さが10nm以上であることを特徴とする配線基板である。
本発明の第17の発明は、第1〜第9の発明の積層体基板をエッチングにより配線に加工することを特徴とする配線基板の製造方法である。
本発明によれば、黒化層の下に設けられている銅層のサイドエッチングを抑制することができるため、黒化層のはがれを防ぐことができる。また、本発明によれば、配線層と黒化層とを同時にエッチングしようとする際に生じる、いずれかの層が目的の形状にエッチングできないという問題が発生することを抑えることができ、配線層と黒化層とを同時にエッチングすることができる。さらに、配線層のエッチングと黒化層のエッチングとを別の工程で実施する必要がなくなり、工程数の削減と共に低コスト化を図ることができる。
本発明の実施形態に係る配線基板の断面図であり(a)は透明基板の片面に銅層及び表面黒化層を設けた例であり、(b)は透明基板の両面に銅層及び表面黒化層を設けた例である。 本発明の実施形態に係る配線基板の断面図であり(a)は透明基板の片面に第1黒化層、銅層及び表面黒化層を設けた例であり、(b)は透明基板の両面に第1黒化層、銅層及び表面黒化層を設けた例である。 本発明の実施形態に係るメッシュ状の配線を備えた配線基板の上面図である。 (a)は図3のA−A´線における断面図で、透明基板の両面に銅層及び表面黒化層を設けた例であり、(b)は一組の透明基板の間であって、2つの透明基板が対向するそれぞれの面に銅層及び表面黒化層を設けた他の例である。 本発明に係るロール・ツー・ロールスパッタリング装置の一構成例の説明図である。 本発明に係るロール・ツー・ロールめっき装置の一構成例の説明図である。 本発明におけるPR電流の時間と電流密度を模式的に示した図である。
以下、本発明の配線基板、および、配線基板の製造方法の一実施形態について説明する。
(配線基板)
本実施形態の配線基板は、透明基板と、透明基板の少なくとも一方の表面に設けた積層構造の配線を備え、配線が、銅層と銅層の表面に積層される表面黒化層であり、表面黒化層が最も表面に配される構成となっている。そして、本発明に係る配線基板は、本発明に係る積層体基板をエッチング等の加工より配線に加工される。
本発明に係る積層体基板は、透明基板の少なくとも一方の表面が積層体で覆われ、積層体が、銅層と銅層の表面に積層される表面黒化層であり、前記表面黒化層が最も表面に配される。透明基板と銅層との間に、黒化層を設けてもよい。
ここでまず、本実施形態の配線基板に含まれる各部材について以下に説明する。
透明基板としては特に限定されるものではなく、可視光を透過する絶縁体フィルムや、ガラス基板等を好ましく用いることができる。
可視光を透過する絶縁体フィルムとしては例えば、ポリアミド系フィルム、ポリエチレンテレフタレート系フィルム、ポリエチレンナフタレート系フィルム、シクロオレフィン系フィルム等の樹脂フィルム等を好ましく用いることができる。
透明基板の厚さについては特に限定されず、配線基板とした場合に要求される強度や光の透過率等に応じて任意に選択することができる。透明基板の厚さとしては例えば20μm以上200μm以下とすることができる。特にタッチパネルの用途に用いる場合40μm以上120μmm以下であることが好ましい。
配線は、銅層と銅層の表面に積層される表面黒化層であり、前記表面黒化層が最も表面に配される。
銅層についても特に限定されないが、光の透過率を低減させないため、銅層と透明基板との間、または、銅層と表面黒化層との間に接着剤を配置しないことが好ましい。すなわち銅層は、他の部材の上面に直接形成されていることが好ましい。
他の部材の上面に銅層を直接形成するため、スパッタリング法、イオンプレーティング法や蒸着法等の乾式めっき法を用いて銅層を形成することが好ましい。
また銅層をより厚くする場合には、乾式めっき後に湿式めっき法を用いることが好ましい。すなわち、例えば透明基板または必要に応じて設けられた黒化層上に、乾式めっき法により銅薄膜層を形成し、該銅薄膜層を給電層として、湿式めっき法により銅めっき層を形成することができる。
上述のように乾式めっき法のみ、又は乾式めっき法と湿式めっき法とを組み合わせて銅層を形成することにより透明基板または必要に応じて設けられた黒化層上に接着剤を介さずに直接銅層を形成できるため好ましい。
銅層の厚さは特に限定されるものではなく、銅層を配線として用いた場合に、該配線に供給する電流の大きさや配線幅等に応じて任意に選択することができる。特に十分に電流を供給できるように銅層の厚さはたとえば、100nmとすることができ、その厚さは110nm以上であることが好ましく、150nm以上とすることがより好ましい。
銅層の厚さの上限値は特に限定されないが、銅層が厚くなると、配線を形成するためにエッチングを行う際にエッチングに時間を要するためサイドエッチングが生じ、エッチングの途中でレジストが剥離する等の問題を生じ易くなる。このため、銅層の厚さは3000nm以下であることが好ましく、1200nm以下であることがより好ましい。なお、銅層が上述のように銅薄膜層と、銅めっき層を有する場合には、銅薄膜層の厚さと、銅めっき層の厚さとの合計が上記範囲であることが好ましい。
表面黒化層側の銅層は(111)面の配向度指数を1.2以上とし、透明基板側の銅層は(111)面の配向度指数を1未満にすることで、積層体基板を配線基板に配線加工する際にサイドエッチングによる表面黒化層の剥離を抑制することができる。(111)面の配向度指数が1.2以上の表面黒化層側の銅層の厚さは、100nm以上1500nm以下が好ましく、(111)面の配向度指数が1未満の透明基板側の銅層の厚さは、100nm以上1500nm以下が好ましい。
また、透明基板側における銅層の結晶の(111)配向度指数は1未満であってもよい。
次に、表面黒化層について説明する。
銅層は金属光沢を有するため、透明基板上に銅層をエッチングした配線を形成したのみでは上述のように銅が光を反射し、例えばタッチパネル用の配線基板として用いた場合、ディスプレイの視認性が低下するという問題があった。そこで、表面黒化層を設ける方法が検討されてきた。
本実施形態の配線基板において表面黒化層は、Ti、Al、V、W、Ta、Si、Cr、Ag、Mo、Ni、Cuから選択される1種以上の金属の窒化物または酸化物である。表面黒化層13の金属や酸化物の酸化の程度や窒化物の窒化の程度を適宜選択することで、銅層と同じエッチング液を用いてもエッチングが可能となる。このため、銅層と表面黒化層とを同時にエッチングすることができる。
表面黒化層の成膜方法は特に限定されるものではなく、任意の方法により成膜することができる。ただし、比較的容易に表面黒化層を成膜できることから、スパッタリング法により成膜することが好ましい。
表面黒化層は、黒化層を形成する金属のスパッタリングターゲットを用い、チャンバー内にアルゴンガスの他に窒素ガスや酸素ガスを供給しながらスパッタリング法により成膜することができる。特に、チャンバー内には、黒化層に供給する窒素や酸素の量を調整できるように、アルゴンガスと窒素ガスとを同時に供給し、窒素や酸素の分圧を調整することが好ましい。
表面黒化層の厚さは特に限定されるものではないが、例えば10nm以上であることが好ましく、30nm以上であることがより好ましい。表面黒化層は、上述のように黒色をしており、銅層による光の反射を抑制する黒化層として機能するが、表面黒化層の厚さが薄い場合には、十分な黒色が得られず銅層による光の反射を十分に抑制できない場合がある。これに対して、表面黒化層の厚さを上記範囲とすることにより、銅層の反射をより確実に抑制できるため好ましい。
表面黒化層の厚さの上限値は特に限定されるものではないが、必要以上に厚くしても成膜に要する時間や、配線を形成する際のエッチングに要する時間が長くなり、コストの上昇を招くことになる。このため、表面黒化層の厚さは100nm以下とすることが好ましく、60nm以下とすることがより好ましい。
次に、本実施形態の配線基板の構成例について説明する。
上述のように、本実施形態の配線基板は透明基板と、銅層と、表面黒化層と、を備えている。銅層と、表面黒化層と、はそれぞれ複数層形成することもできる。なお、銅層表面での光の反射の抑制のため、銅層の表面のうち光の反射を特に抑制したい面に黒化層が配置されている。特に黒化層が銅層の表面に形成された積層構造を有している。すなわち、銅層は透明基板と表面黒化層に挟まれた構造を有していることがより好ましい。
具体的な構成例について、図1、図2を用いて以下に説明する。図1、図2は、本実施形態の配線基板の、透明基板11、銅層12、表面黒化層13の積層方向と平行な面における断面図の例を示している。
例えば、図1(a)に示した配線基板10Aのように、透明基板11の一方の面11a側に銅層12と、表面黒化層13と、を一層ずつその順に積層することができる。また、図1(b)に示した配線基板10Bのように、透明基板11の一方の面11a側と、もう一方の面(他方の面)11b側と、にそれぞれ銅層12A、12Bと、表面黒化層13A、13Bと、を一層ずつその順に積層することができる。
また、例えば黒化層を透明基板11の1つの面側に複数層設けた構成とすることもできる。例えば図2(a)に示した配線基板20Aのように、透明基板11の一方の面11a側に、第一黒化層131と、銅層12と、表面黒化層132と、をその順に積層することができる。
この場合も透明基板11の両面に銅層、第一黒化層、表面黒化層を積層した構成とすることができる。具体的には図2(b)に示した配線基板20Bのように、透明基板11の一方の面11a側と、もう一方の面(他方の面)11b側と、にそれぞれ第一黒化層131A、131Bと、銅層12A、12Bと、表面黒化層132A、132Bとをその順に積層できる。
なお、図1(b)、図2(b)において、透明基板11の両面に銅層と、表面黒化層とを積層した場合において、透明基板11を対称面として透明基板11の上下に積層した層が対称になるように配置した例を示したが、係る形態に限定されるものではない。例えば、図2(b)において、透明基板11の一方の面11a側の構成を図1(a)の構成と同様に、銅層と、黒化層とをその順に積層した形態とし、透明基板11の上下に積層した層を非対称な構成としてもよい。
ここまで、本実施形態の配線基板について説明してきたが、本実施形態の配線基板においては、透明基板上に銅層と、黒化層として機能する表面黒化層とを設けているため、銅層による光の反射を抑制することができる。
本実施形態の配線基板の光の反射の程度については特に限定されるものではないが、例えば本実施形態の配線基板は、波長400nm以上700nm以下の光の反射率の平均は55%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましい。波長400nm以上700nm以下の光の反射率の平均は30%以下であることがより好ましく、20%以下であることが特に好ましい。
これは波長400nm以上700nm以下の光の反射率の平均が55%以下の場合、例えばタッチパネル用の配線基板として用いた場合でもディスプレイの視認性の低下を特に抑制できるためである。
反射率の測定は、黒化層に光を照射するようにして測定を行うことができる。すなわち、配線基板に含まれる銅層及び表面黒化層のうち、表面黒化層側から測定を行うことができる。
具体的には例えば図1(a)のように透明基板11の一方の面11aに銅層12、表面黒化層13の順に積層した場合、表面黒化層13に光を照射できるように、図中Aで示した表面側から測定できる。
また、図1(a)の場合と銅層12と表面黒化層13との配置を換え、透明基板11の一方の面11aに表面黒化層13、銅層12の順に積層した場合、表面黒化層13に光を照射できるように、透明基板11の面11b側から反射率を測定できる。
なお、後述のように配線基板は、積層体基板の銅層及び表面黒化層をエッチングすることにより配線を形成できるが、上記反射率は配線基板のうち透明基板を除いた場合に最表面に配置されている黒化層の、光が入射する側の表面における反射率を示している。このため、エッチング処理前、または、エッチング処理を行った後であれば、銅層及び黒化層が残存している部分での測定値が上記範囲を満たしていることが好ましい。
なお、光の反射率の平均とは、400nm以上700nm以下の範囲内で波長を変化させて測定を行った際の測定結果の平均値を意味している。測定の際、波長を変化させる幅は特に限定されないが、例えば、10nm毎に波長を変化させて上記波長範囲の光について測定を行うことが好ましく、1nm毎に波長を変化させて上記波長範囲の光について測定を行うことがより好ましい。
本実施形態の配線基板は上述のように例えばタッチパネル用の配線基板として好ましく用いることができる。この場合配線基板にはメッシュ状の配線を備えた構成とすることができる。
メッシュ状の配線を備えた配線基板は、ここまで説明した本実施形態の配線基板の銅層及び表面黒化層をエッチングすることにより得ることができる。
例えば、二層の配線によりメッシュ状の配線とすることができる。具体的な構成例を図3に示す。図3はメッシュ状の配線を備えた配線基板30を銅層、表面黒化層の積層方向の上面側から見た図を示している。図3に示した配線基板30は、透明基板11と、図中X軸方向に平行な複数の配線31AとY軸方向に平行な配線31Bとを有している。なお、配線31A、31Bは銅層をエッチングして形成されており、該配線31A、31Bの上面および/または下面には図示しない表面黒化層が形成されている。また、表面黒化層は配線31A、31Bと同じ形状にエッチングされている。
透明基板11と配線31A、31Bとの配置は特に限定されない。透明基板11と配線31A、31Bとの配置の構成例を図4(a)、(b)に示す。図4(a)は図3のA−A´線での断面図に当たる。
まず、図4(a)に示したように、透明基板11の上下面にそれぞれ配線31A、31Bが配置されていてもよい。なお、この場合、配線31A、31Bの上面には、配線と同じ形状にエッチングされた表面黒化層32A、32Bが配置されている。
また、図4(b)に示したように、1組の透明基板11を用い、1組の透明基板11の間であって各透明基板11の面に配線31A、31Bを配置してもよい。この場合も、配線31A、31Bの上面には配線と同じ形状にエッチングされた表面黒化層32A、32Bが配置されている。
ただし、表面黒化層32A、32Bは銅層表面のうち光の反射を特に抑制したい面に配置されていることが好ましい。このため、図4(b)に示した配線基板において、例えば、図中下面側から光の反射を抑制する必要がある場合には、表面黒化層32Bの位置と、配線31Bの位置とを逆にすることが好ましい。また、表面黒化層32Bに加えて、配線31Bと透明基板11との間に第一黒化層をさらに設けてもよい。
図3及び図4(a)に示したメッシュ状の配線31A、31Bを有する配線基板は例えば、図1(b)、図2(b)のように透明基板11の両面に銅層12A、12Bと、表面黒化層13A、13B(図2(b)では銅層131A、132A、表面黒化層131B、132B)とを備えた配線基板から形成することができる。
図1(b)の配線基板を用いて形成した場合を例に説明すると、まず、透明基板11の一方の面11a側の銅層12A及び表面黒化層13Aを、図1(b)中X軸方向に平行な複数の線状のパターンが所定の間隔をあけて配置されるようにエッチングを行う。図1(b)中のX軸方向とは、図1(b)中の各層の幅方向と平行な方向を意味している。
そして、透明基板11のもう一方の面11b側の銅層12B及び表面黒化層13Bを図1(b)中Y軸方向と平行な複数の線状のパターンが所定の間隔をあけて配置されるようにエッチングを行う。なお、図1(b)中のY軸方向は、紙面と垂直な方向を意味している。
以上の操作により図3、図4(a)に示したメッシュ状の配線を有する配線基板を形成することができる。なお、透明基板11の両面のエッチングは同時に行うこともできる。すなわち、銅層12A、12B、表面黒化層13A、13Bのエッチングは同時に行ってもよい。
図3に示したメッシュ状の配線を有する配線基板は、図1(a)または図2(a)に示した配線基板を2枚用いることにより形成することもできる。図1(a)の配線基板を用いた場合を例に説明すると、図1(a)に示した配線基板2枚についてそれぞれ、銅層12及び黒化層13を、X軸方向と平行な複数の線状のパターンが所定の間隔をあけて配置されるようにエッチングを行う。そして、上記エッチング処理により各配線基板に形成した線状のパターンが互いに交差するように向きをあわせて2枚の配線基板を貼り合せることによりメッシュ状の配線を備えた配線基板とすることができる。2枚の配線基板を貼り合せる際に貼り合せる面は特に限定されるものではなく、図4(b)のように銅層12等が積層された図1(a)における面Aと、銅層12等が積層されていない図1(a)における面11bとを貼り合せてもよい。
また、例えば透明基板11の銅層12等が積層されていない図1(a)における面11b同士を貼り合せて断面が図4(a)に示した構造となるように貼り合せてもよい。
なお、図3、図4に示したメッシュ状の配線を有する配線基板における配線の幅や、配線間の距離は特に限定されるものではなく、例えば、配線に流す電流量等に応じて選択することができる。
このように2層の配線から構成されるメッシュ状の配線を有する配線基板は、例えば投影型静電容量方式のタッチパネル用の配線基板として好ましく用いることができる。
(積層体基板の製造方法)
まず、はじめに、本実施形態の配線基板の製造方法を示す。
配線基板の製造方法は、透明基板11を準備する透明基板準備工程と、透明基板11の少なくとも一方の面側に銅を堆積する成膜手段により銅層12を形成する銅層形成工程と、透明基板11の少なくとも一方の面側に金属の窒化物または酸化物を堆積する成膜手段により表面黒化層13を成膜する黒化層形成工程と、を有する。
なお、銅層形成工程を乾式めっき法により行う場合には、減圧雰囲気下において実施することが好ましい。また、黒化層形成工程においても減圧雰囲気下において実施することが好ましい。
次に本実施形態の積層体基板の製造方法の構成例について説明する。
以下に本実施形態の積層体基板の製造方法について説明するが、以下に説明する点以外については上述の配線基板の製造方法の場合と同様の構成とすることができるため説明を省略している。
上述のように、本実施形態の積層体基板においては、銅層と、黒化層と、を透明基板上に配置する際の積層の順番は特に限定されるものではない。また、銅層と、黒化層と、はそれぞれ複数層形成することもできる。このため、上記銅層形成工程と、黒化層形成工程とを実施する順番や、実施する回数については特に限定されるものではなく、形成する配線基板の構造に合わせて任意の回数、タイミングで実施することができる。
透明基板を準備する工程は、例えば可視光を透過する絶縁体フィルムや、ガラス基板等により構成された透明基板を準備する工程であり、具体的な操作は特に限定されるものではない。例えば後段の工程での各工程に供するため必要に応じて任意のサイズに切断等を行うことができる。
次に銅層形成工程について説明する。
銅層の形成方法としては、表面黒化層側における銅層の結晶の(111)配向度指数を1.2以上となるように銅層を形成することができれば特に限定されず、例えば乾式めっき法により銅薄膜層を形成する工程を有することができる。また、銅層形成工程は、乾式めっき法により銅薄膜層を形成する工程と、該銅薄膜層を給電層として、湿式めっき法により銅めっき層を形成する工程と、を有していてもよい。
銅層は既述のように、乾式めっき法を用いて銅層を形成することが好ましい。また銅層をより厚くする場合には、乾式めっき後に湿式めっき法を用いることが好ましい。
上述のように乾式めっき法のみ、又は乾式めっき法と湿式めっき法とを組み合わせて銅層を形成することにより透明基板または表面黒化層上に接着剤を介さずに直接銅層を形成できるため好ましい。
乾式めっき法としては特に限定されるものではないが、例えばスパッタリング法、イオンプレーティング法や蒸着法等を好ましく用いることができる。特に、銅薄膜層の形成に用いる乾式めっき法としては、膜厚の制御が容易であることから、スパッタリング法を用いることがより好ましい。すなわち、銅層形成工程における銅を堆積させる成膜手段はスパッタリング成膜手段(スパッタリング成膜法)であることが好ましい。
銅薄膜層は例えばロール・ツー・ロールスパッタリング装置50を用いて好適に成膜することができる。
ロール・ツー・ロールスパッタリング装置を用いた場合を例に銅薄膜層を形成する工程を説明する。
図5はロール・ツー・ロールスパッタリング装置50の一構成例を示している。
ロール・ツー・ロールスパッタリング装置50は、その構成部品のほとんどを収納した筐体51を備えている。
図5において筐体51の形状は直方体形状として示しているが、筐体51の形状は特に限定されるものではなく、内部に収容する装置や、設置場所、耐圧性能等に応じて任意の形状とすることができる。例えば筐体51の形状は円筒形状とすることもできる。
ただし、成膜開始時に成膜に関係ない残留ガスを除去するため、筐体51内部は10−4Pa以下まで減圧できることが好ましく、10−3Pa以下まで減圧できることがより好ましい。なお、筐体51内部全てが上記圧力まで減圧できる必要はなく、スパッタリングを行う、後述するキャンロール53が配置された図中下側の領域のみが上記圧力まで減圧できるように構成することもできる。
筐体51内には、銅薄膜層を成膜する基材を供給する巻出ロール52、キャンロール53、スパッタリングカソード54a〜54d、前フィードロール55a、後フィードロール55b、テンションロール56a、56b、巻取ロール57を配置することができる。
また、銅薄膜層を成膜する基材の搬送経路上には、上記各ロール以外に任意にガイドロール58a〜58h、ヒーター61、圧力調整バルブ62、真空計63及びベントバルブ64等を設けることもできる。
巻出ロール52、キャンロール53、前フィードロール55a、巻取ロール57にはサーボモータによる動力を備えることができる。巻出ロール52、巻取ロール57は、パウダークラッチ等によるトルク制御によって銅薄膜層を成膜する基材の張力バランスが保たれるようになっている。
キャンロール53の構成についても特に限定されないが、例えばその表面が硬質クロムめっきで仕上げられ、その内部には筐体51の外部から供給される冷媒や温媒が循環し、略一定の温度に調整できるように構成されていることが好ましい。
テンションロール56a、56bは例えば、表面が硬質クロムめっきで仕上げられ張力センサーが備えられていることが好ましい。
また、前フィードロール55aや、後フィードロール55bや、ガイドロール58a〜58hについても表面が硬質クロムめっきで仕上げられていることが好ましい。
スパッタリングカソード54a〜54dは、マグネトロンカソード式でキャンロール53に対向して配置することが好ましい。スパッタリングカソード54a〜54dのサイズは特に限定されないが、スパッタリングカソード54a〜54dの銅薄膜層を成膜する基材の巾方向の寸法は、銅薄膜層を成膜する基材の巾より広いことが好ましい。
銅薄膜層を成膜する基材は、ロール・ツー・ロール真空成膜装置であるロール・ツー・ロールスパッタリング装置50内を搬送されて、キャンロール53に対向するスパッタリングカソード54a〜54dで銅薄膜層が成膜される。
ロール・ツー・ロールスパッタリング装置50を用いて銅薄膜層を成膜する場合、銅ターゲットをスパッタリングカソード54a〜54dに装着し、銅薄膜層を成膜する基材を巻出ロール52にセットした装置内を真空ポンプ60a、60bにより真空排気する。そしてその後、アルゴン等のスパッタリングガスを気体供給手段59により筐体51内に導入する。この際、スパッタリングガスの流量と、真空ポンプ60bと筐体51との間に設けられた圧力調整バルブの開度と、を調整して装置内を例えば0.13Pa以上1.3Pa以下に保持し、成膜を実施することが好ましい。
この状態で、巻出ロール52から基材を例えば毎分1m以上20m以下の速さで搬送しながら、スパッタリングカソード54a〜54dに接続したスパッタリング用直流電源より電力を供給してスパッタリング放電を行う。これにより基材上に所望の銅薄膜層を連続成膜することができる。
銅層のうち表面黒化層側の結晶配向を(111)配向とする製造方法の一例として、湿式めっき法による成膜方法を説明する。銅層のうち表面黒化層側の結晶の(111)配向度指数が1.20以上となるならば、製造方法は限定されない。また、銅層のうち表面黒化層側には(111)配向のほかに(200)、(220)、(311)配向も含むが、そのうち(111)配向が殆どを占め、その結晶配向度指数が1.20以上を示すということである。
湿式めっき法により銅めっき層を形成する工程における条件、すなわち、電気めっき処理の条件は、特に限定されるものではないが、図6は本発明に係る湿式めっき法に用いることができるロール・ツー・ロール連続電気めっき装置(以下めっき装置20という)の一例である。
銅薄膜層を成膜して得られた銅薄膜層付透明基板F2は、巻出ロール22から巻き出され、電気めっき槽21内のめっき液28への浸漬を繰り返しながら連続的に搬送される。なお、28aはめっき液の液面を指している。
銅薄膜層付透明基板F2は、めっき液28に浸漬されている間に電気めっきにより金属薄膜の表面に銅層が成膜され、所定の膜厚の銅層が形成された後、配線基板Sとして、巻取ロール29に巻き取れられる。なお、銅薄膜層付透明基板F2の搬送速度は、0.1m〜数十m/分の範囲が好ましい。
具体的に説明すると、銅薄膜層付透明基板F2は、巻出ロール22から巻き出され、給電ロール26aを経て、電気めっき槽21内のめっき液28に浸漬される。電気めっき槽21内に入った銅薄膜層付透明基板F2は、反転ロール23を経て搬送方向が反転され、給電ロール26bにより電気めっき槽21外へ引き出される。
このように、銅薄膜層付透明基板F2が、めっき液への浸漬を複数回(図6では10回)繰り返す間に、銅薄膜層付透明基板F2の金属薄膜上に銅層を形成するものである。
給電ロール26aとアノード24aの間には電源(図示せず)が接続されている。
給電ロール26a、アノード24a、めっき液、銅薄膜層付ポリイミドフィルムF2および電源により、電気めっき回路が構成される。また、不溶性アノードは、特別なものを必要とせず、導電性セラミックで表面をコーティングした公知のアノードでよい。なお、電気めっき槽21の外部に、めっき液28に銅イオンを供給する機構を備える。
めっき液28への銅イオンの供給は、酸化銅水溶液、水酸化銅水溶液、炭酸銅水溶液等で供給する。もしくはめっき液中に微量の鉄イオンを添加して、無酸素銅ボールを溶解して銅イオンを供給する方法もある。銅の供給方法は上記のいずれかの方法を用いることができる。
めっき中における電流密度は、アノード24aから搬送方向下流に進むにつれて電流密度を段階的に上昇させ、アノード24oから24tで最大の電流密度となるようにする。
このように電流密度を上昇させることで、銅層の変色を防ぐことができる。特に銅層の膜厚が薄い場合に電流密度が高いと銅層の変色が起こりやすいために、めっき中の電流密度は、後述するPeriodic Reverse電流の反転電流を除き0.1A/dm〜8A/dmが望ましい。電流密度が高くなると銅電気めっき層の外観不良が発生する。
本発明に係る配線基板を製造するためには銅電気めっき層の膜厚の表面から100nm以上の範囲でPR電流を用いて形成する。
Periodic Reverse電流(以下PR電流ということがある。)を使用する場合、反転電流は正電流の1〜9倍の電流を加えると良い。
反転電流時間割合としては1〜10%程度が望ましい。
また、PR電流の次の反転電流が流れる周期は、10m秒以上が望ましく、より望ましくは20m秒〜300m秒である。
図7はPR電流の時間と電流密度を模式的に示したものである。
なお、めっき電圧は、上述の電流密度が実現できるように適宜調整すればよい。
本発明に係る配線基板を、ロール・ツー・ロール連続電気めっき装置(めっき装置20)で製造するには、搬送経路の下流側から1つ以上のアノードでPR電流を流せばよく、PR電流を流すアノード数は、銅電気めっき層の表面から透明基板側にPR電流で成膜する範囲の割合をどのようにするかで決まる。すなわち、少なくともアノード24tはPR電流が流れ、必要に応じてアノード24s、アノード24r、アノード24qにPR電流が流れることとなる。
なお、全アノードにPR電流を流してもよいが、PR電流用の整流器が高価な為、製造コストが増加する。そこで、本発明に配線基板では、銅電気めっき層の表面から透明基板方向に100nm以上1500nm以下の膜厚をPR電流で成膜すれば、銅めっきの(111)面の結晶配向度指数が1.2以上にできるので、結果的にサイドエッチングを抑制することができる。
PR電流を使用した銅電気めっきが望ましい理由は、電流を反転させると、銅電気めっきが溶解し、溶けやすい(111)面以外の配向が優先的に溶解し、原子密度が最も高く、溶けにくい(111)面の結晶を優先的に成長することができる。
一般に電気めっき法では、めっき析出する銅は、銅めっきされる基材表面の影響を受けるが、銅電気めっき層の表面から膜厚の100nm以上をPR電流で成膜すれば、結晶配向を制御でき、配線基板の銅電気めっき層の表面から膜厚の100nm以上で(111)面の結晶配向度指数が1.2以上になっていれば、エッチングにより配線形成する際、サイドエッチングによる表面黒化層の剥離を抑制する効果が得られ、本発明の課題を達成することができる。
次に、銅層の表面に形成する表面黒化層形成工程について説明する。
表面黒化層形成工程は既述のように、銅層の表面に金属の窒化物や酸化物を堆積する成膜手段により表面黒化層を成膜する工程である。表面黒化層形成工程における窒化物や酸化物を堆積する成膜手段は特に限定されるものではないが、例えば、スパッタリング成膜手段(スパッタリング成膜法)であることが好ましい。
ロール・ツー・ロールスパッタリング装置50(図5)を用いて窒化銅による表面黒化層を成膜する場合、銅ターゲットをスパッタリングカソード54a〜54dに装着し、黒化層を成膜する基材を巻出ロール52にセットした装置内を真空ポンプ60a、60bにより真空排気する。そしてその後、アルゴンと、窒素とからなるスパッタリングガスを気体供給手段59により筐体51内に導入する。この際、スパッタリングガスの流量と、真空ポンプ60bと筐体51との間に設けられた圧力調整バルブ62の開度と、を調整して装置内を例えば0.13Pa以上13Pa以下に保持し、成膜を実施することが好ましい。
この状態で、巻出ロール52から基材を例えば毎分0.5〜10m程度の速さで搬送しながら、スパッタリングカソード54a〜54dに接続したスパッタリング用直流電源より電力を供給してスパッタリング放電を行う。これにより基材上に所望の表面黒化層を連続成膜することができる。
なお、第一黒化層を設ける場合は、銅薄膜層の成膜の前に、表面黒化層の成膜の手順に従い、成膜すればよい。
そして、ここで説明した積層体基板の製造方法により得られる積層体基板は、メッシュ状の配線を備えた配線基板とすることができる。この場合、上述の工程に加えて、銅層と、表面黒化層とをエッチングすることにより、配線を形成するエッチング工程をさらに有することができる。
エッチング工程は例えば、まず、エッチングにより除去する部分に対応した開口部を有するレジストを、配線基板の最表面に形成する。図1(a)に示した配線基板の場合、配線基板に配置した表面黒化層13の露出した面A上にレジストを形成することができる。なお、エッチングにより除去する部分に対応した開口部を有するレジストの形成方法は特に限定されないが、例えばフォトリソグラフィー法により形成することができる。
次いで、レジスト上面からエッチング液を供給することにより、銅層12、表面黒化層13のエッチングを実施することができる。
なお、図1(b)のように透明基板11の両面に銅層12A、12B、表面黒化層13A、13Bを配置した場合には、配線基板の最表面A及びBにそれぞれ所定の形状の開口部を有するレジストを形成し、透明基板11の両面に形成した銅層12A、12B、表面黒化層13A、13Bを同時にエッチングしてもよい。
また、透明基板11の両側に形成された銅層12A、12B及び表面黒化層13A、13Bについて、一方の側ずつエッチング処理を行うこともできる。すなわち、例えば、銅層12A及び表面黒化層13Aのエッチングを行った後に、銅層12B及び表面黒化層13Bのエッチングを行うこともできる。
本発明に係る積層体基板の積層体は、表面黒化層側の銅層12の結晶が(111)配向度指数が1.20以上であるので、配線加工のエッチングの際に表面黒化層側の銅層12がサイドエッチングを受けにくく、サイドエッチングによる表面黒化層の剥離を抑制できる。表面黒化層は金属の窒化物や酸化物であるため、銅層12よりもエッチング速度は遅く、表面黒化層のエッチングが終わる前に銅層12がサイドエッチングされて表面黒化層が剥離される問題を本発明に係る積層体基板は解決できる。
エッチング工程において用いるエッチング液は、銅層12および表面黒化層や第一黒化層がエッチングできれば特に限定されるものではなく、一般的に銅層12のエッチングに用いられるエッチング液を好ましく用いることができる。エッチング液としては例えば、塩化第二鉄と、塩酸と、の混合水溶液をより好ましく用いることができる。エッチング液中の塩化第二鉄と、塩酸との含有量は特に限定されるものではないが例えば、塩化第二鉄を5重量%以上50重量%以下の割合で含むことが好ましく、10重量%以上30重量%以下の割合で含むことがより好ましい。
また、エッチング液は例えば、塩酸を1重量%以上50重量%以下の割合で含むことが好ましく、1重量%以上20重量%以下の割合で含むことがより好ましい。なお、残部については水とすることができる。
エッチング液は室温で用いることもできるが、反応性を高めるため加温していることが好ましく、例えば40℃以上50℃以下に加熱して用いることが好ましい。
上述したエッチング工程により得られるメッシュ状の配線の具体的な形態については、既述のとおりであるため、ここでは説明を省略する。
また、既述のように、図1(a)、図2(a)に示した透明基板11の一方の面側に銅層12、黒化層を有する配線基板を2枚貼り合せてメッシュ状の配線を備えた配線基板とする場合には、配線基板を貼り合せる工程をさらに設けることができる。この際、2枚の配線基板を貼り合せる方法は特に限定されるものではなく、例えば接着剤等を用いて接着することができる。
以上に本実施形態の積層体基板及び配線基板の製造方法について説明した。係る積層体基板によれば、銅層と表面黒化層とがエッチング液に対してほぼ同じ反応性を示すことから、容易に所望の配線を形成することができる。また、黒化層は黒色であるため黒化層として機能し、銅層による光の反射を抑制することができ、例えばタッチパネル用の配線基板とした場合に、視認性の低下を抑制することができる。
以下に、本発明の実施例及び比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によって、なんら限定されるものではない。
(評価方法)
(1)反射率
以下の実施例において作製した配線基板について反射率の測定を行った。
測定は、紫外可視分光光度計(株式会社 島津製作所製 型式:UV−2550)に反射率測定ユニットを設置して行った。
配線基板は図2(a)の構造を有する配線基板を作製したが、反射率の測定は図2(a)における第2の黒化層132の外部に露出した面に対して入射角5°、受光角5°として、波長400nm以上700nm以下の範囲の光を照射して実施した。なお、配線基板に照射した光は、400nm以上700nm以下の範囲内で、1nm毎に波長を変化させて測定を行い、測定結果の平均を該配線基板の反射率の平均とした。
(2)エッチングによる配線評価
配線基板上にフォトレジスト配線を付与し、塩化第二鉄10重量%と、塩酸10重量%と、残部が水と、からなるエッチング液をスプレーノズルにより噴射して配線形成をした。
(3)結晶配向
結晶配向は、X線回折でWilsonの配向度指数を用い測定した。
(試料の作製条件)
以下に実施例1における配線基板の製造条件を示す。
図2(a)に示した構造を有する配線基板を作製した。
まず、幅500mm、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)製の透明基板を図5に示したロール・ツー・ロールスパッタリング装置により、透明基板上に黒化層を厚さ40nm形成した。
続いて、ロール・ツー・ロールスパッタリング装置により、第1の黒化層の上面に銅層を厚さ200nm形成した。
そして、電気めっき法で、直流電源により第一銅めっき層を200nm析出させた後、アノード24g、24hにてPR電源により第二銅めっき層を200nm析出させ、銅層12を形成した。
なお、PR電流は負電流時間割合を10%とした。
そして再度、第一黒化層131と同条件で銅層12の上面に第2の黒化層132を形成した。
作製した配線基板の反射率を、第2の黒化層132の露出している面側、すなわち、銅層12と対向していない面側から光を照射して、波長400nm以上700nm以下の光の反射率の平均を測定したところ反射率の平均は17.9%であった。
この配線基板に配線幅5μm、配線間スペース300μmのパターンを形成するフォトレジスト配線を付与し、エッチング処理をしたところ、配線が形成できた。
銅層の結晶配向は、第一銅めっき層成膜後および、第二銅めっき層成膜後、X線回折で測定し、第一銅めっき層の結晶の(111)配向度指数は0.84であり、第二銅めっき層の(111)配向度指数は1.31であった。
[比較例1]
電気めっき法で、直流電源により銅めっき皮膜を400nm析出させた、銅層12を形成した点以外は実施例1と同様にして配線基板に配線を形成しようとしたところ、配線側面が過剰にエッチングされ、配線加工ができなかった。なお、いずれの例においても第1の黒化層131を成膜する際と、第2の黒化層132を成膜する際とで成膜条件は同じにして黒化層の成膜を行っている。
銅層の結晶配向は、銅めっき層成膜後、X線回折で測定し、銅めっき層の結晶の(111)配向度指数は0.84であった。
Figure 2016136362
10A、10B、20A、20B、30 配線基板
11 透明基板
12、12A、12B 銅層
13、13A、13B、131、132、131A、131B、132A、132B、32A、32B 黒化層
31A、31B 配線

Claims (17)

  1. 透明基板と、
    前記透明基板の少なくとも一方の表面に設けた導電性の積層体を備え、
    前記積層体が、銅層と前記銅層の表面に積層される表面黒化層であり、前記表面黒化層が最も表面にあり、
    前記銅層は、前記表面黒化層側における銅層の結晶の(111)配向度指数が1.2以上であることを特徴とする積層体基板。
  2. 前記銅層は、積層構造であり、前記透明基板側における銅層の結晶の(111)配向度指数が1未満であり、前記表面黒化層側における銅層の結晶の(111)配向度指数が1.2以上であることを特徴とする請求項1に記載の積層体基板。
  3. 前記銅層は、乾式めっき法により得られた第一銅膜と、前記乾式めっき法により得られた銅膜を給電層としてPR電流による電気めっき法で成膜して得られた第二銅膜とを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の積層体基板。
  4. 前記PR電流による電気めっき法で成膜して得られた第二銅膜の厚さは、100nm以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の積層体基板。
  5. 前記積層体が、前記透明基板の表面に形成される第一黒化層と、前記第一黒化層の表面に形成される前記銅層と、前記銅層の表面に形成される前記表面黒化層の積層構造であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の積層体基板。
  6. 前記第一黒化層および前記表面黒化層が、Ti、Al、V、W、Ta、Si、Cr、Ag、Mo、Ni、Cuから選択される1種以上の金属を含む窒化物または酸化物であることを特徴する請求項1から5のいずれか1項に記載の積層体基板。
  7. 前記銅層は厚さが100nm以上であり、
    前記表面黒化層の厚さが20nm以上である請求項1から6のいずれか1項に記載の積層体基板。
  8. 請求項1から7のいずれか1項に記載の積層体基板の製造方法であり、前記表面黒化層側における銅層をPR電流による電気めっき法で成膜する工程を含むことを特徴とする積層体基板の製造方法。
  9. 請求項2に記載の積層体基板の製造方法であり、前記銅層のうち前記透明基板側における銅層の全部または一部を乾式めっき法により成膜する工程(a)と、その工程(a)の後に、前記表面黒化層側における銅層をPR電流による電気めっき法で成膜する工程を含むことを特徴とする積層体基板の製造方法。
  10. 透明基板と、
    前記透明基板の少なくとも一方の表面に設けた積層構造の配線を備え、
    前記配線が、銅層と前記銅層の表面に積層される表面黒化層であり、前記表面黒化層が最も表面にあり、
    前記銅層は、前記表面黒化層側における銅層の結晶の(111)配向度指数が1.2以上であることを特徴とする配線基板。
  11. 前記銅層は、積層構造であり、前記透明基板側における銅層の結晶の(111)配向度指数が1未満であり、前記表面黒化層側における銅層の結晶の(111)配向度指数が1.2以上であることを特徴とする請求項10に記載の配線基板。
  12. 前記銅層は、乾式めっき法により得られた第一銅膜と、前記乾式めっき法により得られた銅膜を給電層としてPR電流による電気めっき法で成膜して得られた第二銅膜とを含むことを特徴とする請求項10又は11に記載の配線基板。
  13. 前記PR電流による電気めっき法で成膜して得られた第二銅膜の厚さは、100nm以上であることを特徴とする請求項10から12のいずれか1項に記載の配線基板。
  14. 前記積層体が、前記透明基板の表面に形成される第一黒化層と、前記第一黒化層の表面に形成される前記銅層と、前記銅層の表面に形成される前記表面黒化層の積層構造であることを特徴とする請求項10から13のいずれか1項に記載の配線基板。
  15. 前記第一黒化層および前記表面黒化層が、Ti、Al、V、W、Ta、Si、Cr、Ag、Mo、Ni、Cuから選択される1種以上の金属を含む窒化物または酸化物であることを特徴する請求項10から14のいずれか1項に記載の配線基板。
  16. 前記銅層は厚さが100nm以上であり。
    前記表面黒化層の厚さが10nm以上である請求項10から15のいずれか1項に記載の配線基板。
  17. 請求項1から9のいずれか1項に記載の積層体基板をエッチングにより配線に加工することを特徴とする配線基板の製造方法。
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