以下、本発明の導電性基板、および、導電性基板の製造方法の一実施形態について説明する。
(導電性基板)
本実施形態の導電性基板は、透明基材と、
前記透明基材の少なくとも一方の面側に形成された銅層と、
前記透明基材の少なくとも一方の面側に形成された窒化銅層とを備えた構成とすることができる。
なお、本実施形態における導電性基板とは、銅層等をパターニングする前の透明基材の表面に銅層や窒化銅層を有する基板と、銅層等をパターニングして配線の形状にした基板、すなわち、配線基板とを含む。
ここでまず、本実施形態の導電性基板に含まれる各部材について以下に説明する。
透明基材としては特に限定されるものではなく、可視光を透過する絶縁体フィルムや、ガラス基板等を好ましく用いることができる。
可視光を透過する絶縁体フィルムとしては例えば、ポリアミド系フィルム、ポリエチレンテレフタレート系フィルム、ポリエチレンナフタレート系フィルム、シクロオレフィン系フィルム等の樹脂フィルム等を好ましく用いることができる。
透明基材の厚さについては特に限定されず、導電性基板とした場合に要求される強度や光の透過率等に応じて任意に選択することができる。透明基材の厚さとしては例えば20μm以上200μm以下とすることができる。特にタッチパネルの用途に用いる場合40μm以上120μmm以下であることが好ましい。
次に銅層について説明する。
銅層についても特に限定されないが、光の透過率を低減させないため、銅層と透明基材との間、または、銅層と窒化銅層との間に接着剤を配置しないことが好ましい。すなわち銅層は、他の部材の上面に直接形成されていることが好ましい。
他の部材の上面に銅層を直接形成するため、スパッタリング法、イオンプレーティング法や蒸着法等の乾式めっき法を用いて銅層を形成することが好ましい。
また銅層をより厚くする場合には、乾式めっき後に湿式めっき法を用いることが好ましい。すなわち、例えば透明基材または窒化銅層上に、乾式めっき法により銅薄膜層を形成し、該銅薄膜層を給電層として、湿式めっき法により銅めっき層を形成することができる。
上述のように乾式めっき法のみ、又は乾式めっき法と湿式めっき法とを組み合わせて銅層を形成することにより透明基材または窒化銅層上に接着剤を介さずに直接銅層を形成できるため好ましい。
銅層の厚さは特に限定されるものではなく、銅層を配線として用いた場合に、該配線に供給する電流の大きさや配線幅等に応じて任意に選択することができる。特に十分に電流を供給できるように銅層は厚さが80nm以上であることが好ましく、100nm以上とすることがより好ましい。銅層の厚さの上限値は特に限定されないが、銅層が厚くなると、配線を形成するためにエッチングを行う際にエッチングに時間を要するためサイドエッチが生じ、エッチングの途中でレジストが剥離する等の問題を生じ易くなる。このため、銅層の厚さは3000nm以下であることが好ましく、1200nm以下であることがより好ましい。なお、銅層が上述のように銅薄膜層と、銅めっき層を有する場合には、銅薄膜層の厚さと、銅めっき層の厚さとの合計が上記範囲であることが好ましい。
次に、窒化銅層について説明する。
銅層は金属光沢を有するため、透明基材上に銅層をエッチングした配線を形成したのみでは上述のように銅が光を反射し、例えばタッチパネル用の配線基板として用いた場合、ディスプレイの視認性が低下するという問題があった。そこで、黒化層を設ける方法が検討されてきたが、黒化層がエッチング液に対する反応性を十分に有していない場合があり、銅層と黒化層とを同時に所望の形状にエッチングすることは困難であった。
これに対して、本実施形態の導電性基板において黒化層として機能する窒化銅層は、銅の窒化物であり通常の銅層とエッチング液に対する反応性にほとんど差がなく、エッチング性も良好である。このため、銅層と黒化層である窒化銅層は同時にエッチングすることができる。
窒化銅層の成膜方法は特に限定されるものではなく、任意の方法により成膜することができる。ただし、比較的容易に窒化銅層を成膜できることから、スパッタリング法により成膜することが好ましい。
窒化銅層は、銅のターゲットを用い、チャンバー内に窒素ガスを供給しながらスパッタリング法により成膜することができる。特に、チャンバー内には、窒化銅層に供給する窒素の量を調整できるように、アルゴンガスと窒素ガスとを同時に供給し、窒素分圧を調整することが好ましい。
上述のようにアルゴンガスと、窒素ガスと、をチャンバーに供給しながらスパッタリング法により成膜する際、チャンバー内に供給するアルゴンガスと窒素ガスの比は限定されるものではない。ただし、窒化銅層を成膜する際、窒化銅層の被成膜表面に入射する窒素分子数(Γ(N2))と、窒化銅層の被成膜表面に堆積する銅の原子数(Γ(Cu))とが、(1)式を満たすことが好ましい。すなわち、以下の(1)式を充足するように窒素分圧を調整することが好ましい。
30≦Γ(N2)/Γ(Cu) ・・・(1)
これは、Γ(N2)/Γ(Cu)が30未満では、窒化銅層の黒化が不十分となり、黒化層としての機能を十分に果たせず、導電性基板の反射率を十分に低減できない場合があるためである。このため、上述のように、Γ(N2)/Γ(Cu)は30以上が好ましく、50以上がより好ましい。
Γ(N2)/Γ(Cu)の上限値は特に限定されるものではないが、Γ(N2)/Γ(Cu)を大きくするには、窒素ガスの分圧を大きくする、あるいは銅の堆積速度を小さくすることになる。窒素ガスの分圧を大きくするためには、アルゴンガスの分圧を小さくすることになるが、アルゴンガスの分圧を小さくすると銅のスパッタ収率が小さくなる。これは、スパッタ収率はイオン化されたガスの質量が大きい方が高いためである。一方、銅の堆積速度を小さくすることは生産性の低下を招く。このため、Γ(N2)/Γ(Cu)は、例えば2000以下であることが好ましく、1000以下であることがより好ましい。
なお、上述した窒化銅層の被成膜表面とは、窒化銅層を成膜する際の最表面部分を意味し、窒化銅層の成膜開始時であれば窒化銅層を成膜する下層、すなわち、透明基材または銅層の表面を意味する。また、窒化銅層の成膜開始後であれば成膜されている窒化銅層の最表面を意味する。
また、上述の(1)式のうち、窒化銅層の被成膜表面に入射する窒素分子数Γ(N2)は、以下の(2)式で求めることができる。
Γ(N2)=p/(2πmkT)0.5 [個/(m2s)] ・・・(2)
(2)式中各パラメータは、p:窒素の分圧[Pa]、m:窒素分子の質量[kg]、k:ボルツマン定数(1.38×10−23[J/K])、T:温度(K)を意味している。
上述の(1)式のうち窒化銅層の被成膜表面に堆積する銅の原子数(Γ(Cu))は、単位面積に堆積した銅の質量と成膜時間から算出することができる。具体的には以下の(3)式により算出することができる。
Γ(Cu)=W・Na/(M・A・t) [個/(m2s)] ・・・(3)
W:銅の質量 Na:アボガドロ数 M:銅の分子量 A:成膜面積 t:成膜時間
窒化銅層の厚さは特に限定されるものではないが、例えば20nm以上であることが好ましく、30nm以上であることがより好ましい。窒化銅層は、上述のように黒色をしており、銅層による光の反射を抑制する黒化層として機能するが、窒化銅層の厚さが薄い場合には、十分な黒色が得られず銅層による光の反射を十分に抑制できない場合がある。これに対して、窒化銅層の厚さを上記範囲とすることにより、銅層の反射をより確実に抑制できるため好ましい。
窒化銅層の厚さの上限値は特に限定されるものではないが、必要以上に厚くしても成膜に要する時間や、配線を形成する際のエッチングに要する時間が長くなり、コストの上昇を招くことになる。このため、窒化銅層の厚さは60nm以下とすることが好ましく、50nm以下とすることがより好ましい。
次に、本実施形態の導電性基板の構成例について説明する。
上述のように、本実施形態の導電性基板は透明基材と、銅層と、窒化銅層と、を備えている。この際、銅層と、窒化銅層と、を透明基材上に配置する際の積層の順番は特に限定されるものではない。また、銅層と、窒化銅層と、はそれぞれ複数層形成することもできる。なお、銅層表面での光の反射の抑制のため、銅層の表面のうち光の反射を特に抑制したい面に窒化銅層が配置されていることが好ましい。特に窒化銅層が銅層の表面に形成された積層構造を有することがより好ましい、すなわち、銅層は窒化銅層に挟まれた構造を有していることがより好ましい。
具体的な構成例について、図1、図2を用いて以下に説明する。図1、図2は、本実施形態の導電性基板の、透明基材、銅層、窒化銅層の積層方向と平行な面における断面図の例を示している。
例えば、図1(a)に示した導電性基板10Aのように、透明基材11の一方の面11a側に銅層12と、窒化銅層13と、を一層ずつその順に積層することができる。また、図1(b)に示した導電性基板10Bのように、透明基材11の一方の面11a側と、もう一方の面(他方の面)11b側と、にそれぞれ銅層12A、12Bと、窒化銅層13A、13Bと、を一層ずつその順に積層することができる。なお、銅層12(12A、12B)、及び、窒化銅層13(13A、13B)を積層する順は、図1(a)、(b)の例に限定されず、透明基材11側から窒化銅層13(13A、13B)、銅層12(12A、12B)の順に積層することもできる。
また、例えば窒化銅層を透明基材11の1つの面側に複数層設けた構成とすることもできる。例えば図2(a)に示した導電性基板20Aのように、透明基材11の一方の面11a側に、第1の窒化銅層131と、銅層12と、第2の窒化銅層132と、をその順に積層することができる。
この場合も透明基材11の両面に銅層、第1の窒化銅層、第2の窒化銅層を積層した構成とすることができる。具体的には図2(b)に示した導電性基板20Bのように、透明基材11の一方の面11a側と、もう一方の面(他方の面)11b側と、にそれぞれ第1の窒化銅層131A、131Bと、銅層12A、12Bと、第2の窒化銅層132A、132Bと、をその順に積層できる。
なお、図1(b)、図2(b)において、透明基材の両面に銅層と、窒化銅層と、を積層した場合において、透明基材11を対称面として透明基材11の上下に積層した層が対称になるように配置した例を示したが、係る形態に限定されるものではない。例えば、図2(b)において、透明基材11の一方の面11a側の構成を図1(a)の構成と同様に、銅層12と、窒化銅層13と、をその順に積層した形態とし、透明基材11の上下に積層した層を非対称な構成としてもよい。
ここまで、本実施形態の導電性基板について説明してきたが、本実施形態の導電性基板においては、透明基材上に銅層と、黒化層として機能する窒化銅層と、を設けているため、銅層による光の反射を抑制することができる。
本実施形態の導電性基板の光の反射の程度については特に限定されるものではないが、例えば本実施形態の導電性基板は、波長400nm以上700nm以下の光の反射率の平均は55%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましい。波長400nm以上700nm以下の光の反射率の平均は30%以下であることがより好ましく、20%以下であることが特に好ましい。これは波長400nm以上700nm以下の光の反射率の平均が55%以下の場合、例えばタッチパネル用の導電性基板として用いた場合でもディスプレイの視認性の低下を特に抑制できるためである。
反射率の測定は、窒化銅層に光を照射するようにして測定を行うことができる。すなわち、導電性基板に含まれる銅層及び窒化銅層のうち、窒化銅層側から測定を行うことができる。
具体的には例えば図1(a)のように透明基材11の一方の面11aに銅層12、窒化銅層13の順に積層した場合、窒化銅層13に光を照射できるように、図中Aで示した表面側から測定できる。
また、図1(a)の場合と銅層12と窒化銅層13との配置を換え、透明基材11の一方の面11aに窒化銅層13、銅層12の順に積層した場合、窒化銅層13に光を照射できるように、透明基材11の面11b側から反射率を測定できる。
なお、後述のように導電性基板は銅層及び窒化銅層をエッチングすることにより配線を形成できるが、上記反射率は導電性基板のうち透明基材を除いた場合に最表面に配置されている窒化銅層の、光が入射する側の表面における反射率を示している。このため、エッチング処理前、または、エッチング処理を行った後であれば、銅層及び窒化銅層が残存している部分での測定値が上記範囲を満たしていることが好ましい。
なお、光の反射率の平均とは、400nm以上700nm以下の範囲内で波長を変化させて測定を行った際の測定結果の平均値を意味している。測定の際、波長を変化させる幅は特に限定されないが、例えば、10nm毎に波長を変化させて上記波長範囲の光について測定を行うことが好ましく、1nm毎に波長を変化させて上記波長範囲の光について測定を行うことがより好ましい。
本実施形態の導電性基板は上述のように例えばタッチパネル用の導電性基板として好ましく用いることができる。この場合導電性基板にはメッシュ状の配線を備えた構成とすることができる。
メッシュ状の配線を備えた導電性基板は、ここまで説明した本実施形態の導電性基板の銅層及び窒化銅層をエッチングすることにより得ることができる。
例えば、二層の配線によりメッシュ状の配線とすることができる。具体的な構成例を図3に示す。図3はメッシュ状の配線を備えた導電性基板30を銅層、窒化銅層の積層方向の上面側から見た図を示している。図3に示した導電性基板30は、透明基材11と、図中X軸方向に平行な複数の配線31AとY軸方向に平行な配線31Bとを有している。なお、配線31A、31Bは銅層をエッチングして形成されており、該配線31A、31Bの上面および/または下面には図示しない黒化層である窒化銅層が形成されている。また、窒化銅層は配線31A、31Bと同じ形状にエッチングされている。
透明基材11と配線31A、31Bとの配置は特に限定されない。透明基材11と配線との配置の構成例を図4(a)、(b)に示す。図4(a)、(b)は図3のA−A´線での断面図に当たる。
まず、図4(a)に示したように、透明基材11の上下面にそれぞれ配線31A、31Bが配置されていてもよい。なお、この場合、配線31A、31Bの上面には、配線と同じ形状にエッチングされた窒化銅層(黒化層)32A、32Bが配置されている。
また、図4(b)に示したように、1組の透明基材11を用い、一方の透明基材11を挟んで上下面に配線31A、31Bを配置し、かつ、一方の配線31Bは透明基材11間に配置されてもよい。この場合も、配線31A、31Bの上面には配線と同じ形状にエッチングされた窒化銅層(黒化層)32A、32Bが配置されている。なお、既述のように、窒化銅層と、銅層との配置は限定されるものではない。このため、図4(a)、(b)いずれの場合でも窒化銅層32A、32Bと配線31A、31Bの配置は上下を逆にすることもできる。また、例えば窒化銅層を複数層設けることもできる。
ただし、黒化層は銅層表面のうち光の反射を特に抑制したい面に配置されていることが好ましい。このため、図4(b)に示した導電性基板において、例えば、図中下面側から光の反射を抑制する必要がある場合には、窒化銅層32Bの位置と、配線31Bの位置とを逆にすることが好ましい。また、窒化銅層32Bに加えて、配線31Bと透明基材11との間に窒化銅層をさらに設けてもよい。
図3及び図4(a)に示したメッシュ状の配線を有する導電性基板は例えば、図1(b)、図2(b)のように透明基材11の両面に銅層12A、12Bと、窒化銅層13A、13B(131A、132A、131B、132B)と、を備えた導電性基板から形成することができる。
図1(b)の導電性基板を用いて形成した場合を例に説明すると、まず、透明基材11の一方の面11a側の銅層12A及び窒化銅層13Aを、図1(b)中X軸方向に平行な複数の線状のパターンが所定の間隔をあけて配置されるようにエッチングを行う。図1(b)中のX軸方向とは、図1(b)中の各層の幅方向と平行な方向を意味している。
そして、透明基材11のもう一方の面11b側の銅層12B及び窒化銅層13Bを図1(b)中Y軸方向と平行な複数の線状のパターンが所定の間隔をあけて配置されるようにエッチングを行う。なお、図1(b)中のY軸方向は、紙面と垂直な方向を意味している。
以上の操作により図3、図4(a)に示したメッシュ状の配線を有する導電性基板を形成することができる。なお、透明基材11の両面のエッチングは同時に行うこともできる。すなわち、銅層12A、12B、窒化銅層13A、13Bのエッチングは同時に行ってもよい。
図3に示したメッシュ状の配線を有する導電性基板は、図1(a)または図2(a)に示した導電性基板を2枚用いることにより形成することもできる。図1(a)の導電性基板を用いた場合を例に説明すると、図1(a)に示した導電性基板2枚についてそれぞれ、銅層12及び窒化銅層13を、X軸方向と平行な複数の線状のパターンが所定の間隔をあけて配置されるようにエッチングを行う。そして、上記エッチング処理により各導電性基板に形成した線状のパターンが互いに交差するように向きをあわせて2枚の導電性基板を貼り合せることによりメッシュ状の配線を備えた導電性基板とすることができる。2枚の導電性基板を貼り合せる際に貼り合せる面は特に限定されるものではなく、図4(b)のように銅層12等が積層された図1(a)における面Aと、銅層12等が積層されていない図1(a)における面11bとを貼り合せてもよい。
なお、黒化層は銅層表面のうち光の反射を特に抑制したい面に配置されていることが好ましい。このため、図4(b)に示した導電性基板において、図中下面側から光の反射を抑制する必要がある場合には、窒化銅層32Bの位置と、配線31Bの位置とを逆に配置することが好ましい。また、窒化銅層32Bに加えて、配線31Bと透明基材11との間に窒化銅層をさらに設けてもよい。
また、例えば透明基材11の銅層12等が積層されていない図1(a)における面11b同士を貼り合せて断面が図4(a)に示した構造となるように貼り合せてもよい。
なお、図3、図4に示したメッシュ状の配線を有する導電性基板における配線の幅や、配線間の距離は特に限定されるものではなく、例えば、配線に流す電流量等に応じて選択することができる。
このように2層の配線から構成されるメッシュ状の配線を有する導電性基板は、例えば投影型静電容量方式のタッチパネル用の導電性基板として好ましく用いることができる。
(導電性基板の製造方法)
次に本実施形態の導電性基板の製造方法の構成例について説明する。
本実施形態の導電性基板の製造方法は、
透明基材を準備する透明基材準備工程と、
透明基材の少なくとも一方の面側に銅を堆積する成膜手段により銅層を形成する銅層形成工程と、
透明基材の少なくとも一方の面側に窒化銅を堆積する成膜手段により窒化銅層を成膜する窒化銅層形成工程と、を有することが好ましい。
そして、銅層形成工程と、窒化銅層形成工程と、は減圧雰囲気下において実施することが好ましい。
以下に本実施形態の導電性基板の製造方法について説明するが、以下に説明する点以外については上述の導電性基板の場合と同様の構成とすることができるため説明を省略している。
上述のように、本実施形態の導電性基板においては、銅層と、窒化銅層と、を透明基材上に配置する際の積層の順番は特に限定されるものではない。また、銅層と、窒化銅層と、はそれぞれ複数層形成することもできる。このため、上記銅層形成工程と、窒化銅層形成工程と、を実施する順番や、実施する回数については特に限定されるものではなく、形成する導電性基板の構造に合わせて任意の回数、タイミングで実施することができる。
透明基材を準備する工程は、例えば可視光を透過する絶縁体フィルムや、ガラス基板等により構成された透明基材を準備する工程であり、具体的な操作は特に限定されるものではない。例えば後段の工程での各工程に供するため必要に応じて任意のサイズに切断等を行うことができる。
次に銅層形成工程について説明する。
銅層は既述のように、乾式めっき法を用いて銅層を形成することが好ましい。また銅層をより厚くする場合には、乾式めっき後に湿式めっき法を用いることが好ましい。
このため、銅層形成工程は、例えば乾式めっき法により銅薄膜層を形成する工程を有することができる。また、銅層形成工程は、乾式めっき法により銅薄膜層を形成する工程と、該銅薄膜層を給電層として、湿式めっき法により銅めっき層を形成する工程と、を有していてもよい。
上述のように乾式めっき法のみ、又は乾式めっき法と湿式めっき法とを組み合わせて銅層を形成することにより透明基材または窒化銅層上に接着剤を介さずに直接銅層を形成できるため好ましい。
乾式めっき法としては特に限定されるものではないが、例えばスパッタリング法、イオンプレーティング法や蒸着法等を好ましく用いることができる。特に、銅薄膜層の形成に用いる乾式めっき法としては、膜厚の制御が容易であることから、スパッタリング法を用いることがより好ましい。すなわち、銅層形成工程における銅を堆積する成膜手段はスパッタリング成膜手段(スパッタリング成膜法)であることが好ましい。
銅薄膜層は例えばロール・ツー・ロールスパッタリング装置50を用いて好適に成膜することができる。
ロール・ツー・ロールスパッタリング装置を用いた場合を例に銅薄膜層を形成する工程を説明する。
図5はロール・ツー・ロールスパッタリング装置50の一構成例を示している。
ロール・ツー・ロールスパッタリング装置50は、その構成部品のほとんどを収納した筐体51を備えている。
図5において筐体51の形状は直方体形状として示しているが、筐体51の形状は特に限定されるものではなく、内部に収容する装置や、設置場所、耐圧性能等に応じて任意の形状とすることができる。例えば筐体51の形状は円筒形状とすることもできる。
ただし、成膜開始時に成膜に関係ない残留ガスを除去するため、筐体51内部は10−4Pa以下まで減圧できることが好ましく、10−3Pa以下まで減圧できることがより好ましい。なお、筐体51内部全てが上記圧力まで減圧できる必要はなく、スパッタリングを行う、後述するキャンロール53が配置された図中下側の領域のみが上記圧力まで減圧できるように構成することもできる。
筐体51内には、銅薄膜層を成膜する基材を供給する巻出ロール52、キャンロール53、スパッタリングカソード54a〜54d、前フィードロール55a、後フィードロール55b、テンションロール56a、56b、巻取ロール57を配置することができる。また、銅薄膜層を成膜する基材の搬送経路上には、上記各ロール以外に任意にガイドロール58a〜58hや、ヒーター61等を設けることもできる。
巻出ロール52、キャンロール53、前フィードロール55a、巻取ロール57にはサーボモータによる動力を備えることができる。巻出ロール52、巻取ロール57は、パウダークラッチ等によるトルク制御によって銅薄膜層を成膜する基材の張力バランスが保たれるようになっている。
キャンロール53の構成についても特に限定されないが、例えばその表面が硬質クロムめっきで仕上げられ、その内部には筐体51の外部から供給される冷媒や温媒が循環し、略一定の温度に調整できるように構成されていることが好ましい。
テンションロール56a、56bは例えば、表面が硬質クロムめっきで仕上げられ張力センサーが備えられていることが好ましい。
また、前フィードロール55aや、後フィードロール55bや、ガイドロール58a〜58hについても表面が硬質クロムめっきで仕上げられていることが好ましい。
スパッタリングカソード54a〜54dは、マグネトロンカソード式でキャンロール53に対向して配置することが好ましい。スパッタリングカソード54a〜54dのサイズは特に限定されないが、スパッタリングカソード54a〜54dの銅薄膜層を成膜する基材の巾方向の寸法は、銅薄膜層を成膜する基材の巾より広いことが好ましい。
銅薄膜層を成膜する基材は、ロール・ツー・ロール真空成膜装置であるロール・ツー・ロールスパッタリング装置50内を搬送されて、キャンロール53に対向するスパッタリングカソード54a〜54dで銅薄膜層が成膜される。
ロール・ツー・ロールスパッタリング装置50を用いて銅薄膜層を成膜する場合、銅ターゲットをスパッタリングカソード54a〜54dに装着し、銅薄膜層を成膜する基材を巻出ロール52にセットした装置内を真空ポンプ60a、60bにより真空排気する。そしてその後、アルゴン等のスパッタリングガスを気体供給手段59により筐体51内に導入する。この際、スパッタリングガスの流量と、真空ポンプ60bと筐体51との間に設けられた圧力調整バルブの開度と、を調整して装置内を例えば0.13Pa以上1.3Pa以下に保持し、成膜を実施することが好ましい。
この状態で、巻出ロール52から基材を例えば毎分1m以上20m以下の速さで搬送しながら、スパッタリングカソード54a〜54dに接続したスパッタリング用直流電源より電力を供給してスパッタリング放電を行う。これにより基材上に所望の銅薄膜層を連続成膜することができる。
湿式めっき法により銅めっき層を形成する工程における条件、すなわち、電気めっき処理の条件は、特に限定されるものではなく、常法による諸条件を採用すればよい。例えば、銅めっき液を入れためっき槽に銅薄膜層を形成した基材を供給し、電流密度や、基材の搬送速度を制御することによって、銅めっき層を形成できる。
次に、窒化銅層形成工程について説明する。
窒化銅層形成工程は既述のように、透明基材の少なくとも一方の面側に窒化銅を堆積する成膜手段により窒化銅層を成膜する工程である。窒化銅層形成工程における窒化銅を堆積する成膜手段は特に限定されるものではないが、例えば、スパッタリング成膜手段(スパッタリング成膜法)であることが好ましい。
また、窒化銅層形成工程は、窒化銅層の被成膜表面に入射する窒素分子数(Γ(N2))と、窒化銅層の被成膜表面に堆積する銅の原子数(Γ(Cu))とが、(1)式を満たすようにして行うことが好ましい。
30≦Γ(N2)/Γ(Cu) ・・・(1)
これは、Γ(N2)/Γ(Cu)が30未満では、窒化銅層の黒化が不十分となり、黒化層としての機能を十分に果たせず、導電性基板の反射率を十分に低減できない場合があるためである。このため、上述のように、Γ(N2)/Γ(Cu)は30以上が好ましく、50以上がより好ましい。
Γ(N2)/Γ(Cu)の上限値は特に限定されるものではないが、Γ(N2)/Γ(Cu)を大きくするには、窒素ガスの分圧を大きくする、あるいは銅の堆積速度を小さくすることになる。窒素ガスの分圧を大きくするためには、アルゴンガスの分圧を小さくすることになるが、アルゴンガスの分圧を小さくすると銅のスパッタ収率が小さくなる。これは、スパッタ収率はイオン化されたガスの質量が大きい方が高いためである。一方、銅の堆積速度を小さくすることは生産性の低下を招く恐れがある。このため、Γ(N2)/Γ(Cu)は、例えば2000以下であることが好ましく、1000以下であることがより好ましい。
Γ(N2)、Γ(Cu)については既に説明したため、ここでは説明を省略する。
窒化銅層は例えば上述のロール・ツー・ロールスパッタリング装置50を用いて好適に成膜することができる。ロール・ツー・ロールスパッタリング装置の構成については既述のため、ここでは説明を省略する。
ロール・ツー・ロールスパッタリング装置50を用いて窒化銅層を成膜する場合、銅ターゲットをスパッタリングカソード54a〜54dに装着し、窒化銅層を成膜する基材を巻出ロール52にセットした装置内を真空ポンプ60a、60bにより真空排気する。そしてその後、アルゴンと、窒素とからなるスパッタリングガスを気体供給手段59により筐体51内に導入する。この際、スパッタリングガスの流量と、真空ポンプ60bと筐体51との間に設けられた圧力調整バルブの開度と、を調整して装置内を例えば0.13Pa以上13Pa以下に保持し、成膜を実施することが好ましい。
なお、この際、上述のようにΓ(N2)/Γ(Cu)が所定の範囲を充足するように、窒素の分圧を調整することが好ましい。
この状態で、巻出ロール52から基材を例えば毎分0.5〜10m程度の速さで搬送しながら、スパッタリングカソード54a〜54dに接続したスパッタリング用直流電源より電力を供給してスパッタリング放電を行う。これにより基材上に所望の窒化銅層を連続成膜することができる。
そして、ここで説明した導電性基板の製造方法により得られる導電性基板は、既述の導電性基板と同様に、銅層は厚さが100nm以上であることが好ましく、150nm以上とすることがより好ましい。また、銅層の厚さの上限値は特に限定されないが、700nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがより好ましい。
また、ここで説明した導電性基板の製造方法により得られる導電性基板においても、窒化銅層の厚さは特に限定されるものではないが、例えば20nm以上であることが好ましく、30nm以上とすることがより好ましい。窒化銅層の厚さの上限値は特に限定されるものではないが、60nm以下とすることが好ましく、50nm以下とすることがより好ましい。
さらに、ここで説明した導電性基板の製造方法により得られる導電性基板は、波長400nm以上700nm以下の光の反射率の平均は55%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましい。特に30%以下であることがより好ましく、20%以下であることが特に好ましい。
そして、ここで説明した導電性基板の製造方法により得られる導電性基板は、メッシュ状の配線を備えた導電性基板とすることができる。この場合、上述の工程に加えて、銅層と、窒化銅層と、をエッチングすることにより、配線を形成するエッチング工程をさらに有することができる。
係るエッチング工程は例えば、まず、エッチングにより除去する部分に対応した開口部を有するレジストを、導電性基板の最表面に形成する。図1(a)に示した導電性基板の場合、導電性基板に配置した窒化銅層13の露出した面A上にレジストを形成することができる。なお、エッチングにより除去する部分に対応した開口部を有するレジストの形成方法は特に限定されないが、例えばフォトリソグラフィー法により形成することができる。
次いで、レジスト上面からエッチング液を供給することにより、銅層12、窒化銅層13のエッチングを実施することができる。
なお、図1(b)のように透明基材11の両面に銅層、窒化銅層を配置した場合には、導電性基板の最表面A及びBにそれぞれ所定の形状の開口部を有するレジストを形成し、透明基材11の両面に形成した銅層、窒化銅層を同時にエッチングしてもよい。
また、透明基材11の両側に形成された銅層及び窒化銅層について、一方の側ずつエッチング処理を行うこともできる。すなわち、例えば、銅層12A及び窒化銅層13Aのエッチングを行った後に、銅層12B及び窒化銅層13Bのエッチングを行うこともできる。
窒化銅層は銅層と同様のエッチング液への反応性を示すことから、エッチング工程において用いるエッチング液は特に限定されるものではなく、一般的に銅層のエッチングに用いられるエッチング液を好ましく用いることができる。エッチング液としては例えば、塩化第二鉄と、塩酸と、の混合水溶液をより好ましく用いることができる。エッチング液中の塩化第二鉄と、塩酸との含有量は特に限定されるものではないが例えば、塩化第二鉄を5重量%以上50重量%以下の割合で含むことが好ましく、10重量%以上30重量%以下の割合で含むことがより好ましい。また、エッチング液は例えば、塩酸を1重量%以上50重量%以下の割合で含むことが好ましく、1重量%以上20重量%以下の割合で含むことがより好ましい。なお、残部については水とすることができる。
エッチング液は室温で用いることもできるが、反応性を高めるため加温していること好ましく、例えば40℃以上50℃以下に加熱して用いることが好ましい。
上述したエッチング工程により得られるメッシュ状の配線の具体的な形態については、既述のとおりであるため、ここでは説明を省略する。
また、既述のように、図1(a)、図2(a)に示した透明基材11の一方の面側に銅層、窒化銅層を有する導電性基板を2枚貼り合せてメッシュ状の配線を備えた導電性基板とする場合には、導電性基板を貼り合せる工程をさらに設けることができる。この際、2枚の導電性基板を貼り合せる方法は特に限定されるものではなく、例えば接着剤等を用いて接着することができる。
以上に本実施形態の導電性基板及び導電性基板の製造方法について説明した。係る導電性基板によれば、銅層と窒化銅層とがエッチング液に対してほぼ同じ反応性を示すことから、容易に所望の配線を形成することができる。また、窒化銅層は黒色であるため黒化層として機能し、銅層による光の反射を抑制することができ、例えばタッチパネル用の導電性基板とした場合に、視認性の低下を抑制することができる。
以下に、本発明の実施例及び比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によって、なんら限定されるものではない。
(評価方法)
(1)反射率
以下の各実験例において作製した導電性基板について反射率の測定を行った。
測定は、紫外可視分光光度計(株式会社 島津製作所製 型式:UV−2550)に反射率測定ユニットを設置して行った。
各実験例で図2(a)の構造を有する導電性基板を作製したが、反射率の測定は図2(a)における第2の窒化銅層132の外部に露出した面に対して入射角5°、受光角5°として、波長400nm以上700nm以下の範囲の光を照射して実施した。なお、導電性基板に照射した光は、400nm以上700nm以下の範囲内で、1nm毎に波長を変化させて測定を行い、測定結果の平均を該導電性基板の反射率の平均とした。
(試料の作製条件)
以下に各実験例における導電性基板の製造条件を示す。
[実施例1]
図2(a)に示した構造を有する導電性基板を作製した。
まず、幅500mm、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)製の透明基材を図5に示したロール・ツー・ロールスパッタリング装置50にセットした。
次にロール・ツー・ロールスパッタリング装置50のヒーター61を100℃に加熱し、透明基材を加熱し、基材中に含まれる水分を除去した。
続いて筐体51内を1×10−4Paまで排気した後、アルゴンガスを300sccm、窒素ガスを200sccmで導入し、筐体51内の圧力が2Paになるように調整した。そして、透明基材を巻出ロール52から毎分2mの速さで搬送しながら、スパッタリングカソード54a〜54dに接続したスパッタリング用直流電源より電力を供給し、スパッタリング放電を行い、基材上に所望の窒化銅層を連続成膜した。係る操作により透明基材上に第1の窒化銅131を厚さ40nm形成した。
続いて、ロール・ツー・ロールスパッタリング装置50の筐体51内にアルゴンガスのみを導入し、圧力が0.3Paになるように調整した点以外は第1の窒化銅層の場合と同様にして第1の窒化銅層の上面に銅層を厚さ200nm形成した。
そして再度、第1の窒化銅層131と同条件で銅層12の上面に第2の窒化銅層132を形成した。
作製した導電性基板の反射率を、第2の窒化銅層132の露出している面側、すなわち、銅層12と対向していない面側から光を照射して、波長400nm以上700nm以下の光の反射率の平均を測定したところ反射率の平均は17.9%であった。
また、第1の窒化銅層131、第2の窒化銅層132を成膜したときのΓ(N2)/Γ(Cu)は、82であった。
[実施例2〜10、参考例11、12]
第1の窒化銅層131、第2の窒化銅層132を成膜する際のΓ(N2)/Γ(Cu)、及び、筐体51内の圧力、窒化銅層成膜時の透明基材の搬送速度、第1の窒化銅層131、第2の窒化銅層132の膜厚を表1に示した値にした点以外は実施例1と同様にして導電性基板を作製した。なお、いずれの例においても第1の窒化銅層131を成膜する際と、第2の窒化銅層132を成膜する際と、で成膜条件は同じにして窒化銅層の成膜を行っている。また、いずれの例においても銅層は実施例1と同じ条件で成膜している。
実施例1〜10、参考例11、12の窒化銅層を成膜する際の成膜条件、窒化銅層、銅層の膜厚、及び、得られた導電性基板の反射率の測定結果を表1に示す。また、第1、第2の窒化銅層成膜時のΓ(N2)/Γ(Cu)と、反射率との関係を図6に示す。なお、図6においては、形成した窒化銅層の膜厚毎にプロットのマークを変更している。
表1、図6に示した結果によると、実施例1〜1
0、参考例11、12の試料においては、反射率の平均は約50%以下となっており、窒化銅層が反射抑制効果を有することを確認できた。特に実施例1〜10の試料については反射率が40%以下となっており、窒化銅層がより高い反射抑制効果を示していることが確認できた。
そして、図6に示した結果によると、窒化銅層が一定以上の膜厚を有している場合、窒化銅層の膜厚によらず、Γ(N2)/Γ(Cu)と、反射率とは一定の相関関係を示していることが分かる。
ただし、窒化銅層の膜厚が10nmである参考例12においては、窒化銅層を成膜したときのΓ(N2)/Γ(Cu)から期待される反射率と比較して反射率が高くなっていることが分かる。このことから、窒化銅層の膜厚は10nmより厚いことが好ましいことが確認できた。
また、特にタッチパネルの用途等で用いる場合、反射率は40%以下であることがより好ましい。このため、上記実験結果から、窒化銅層を成膜するときのΓ(N2)/Γ(Cu)は20より大きいことがより好ましいことを確認できた。
なお、実験例1〜10、参考例11、12のいずれの導電性基板についても、塩化第二鉄10重量%と、塩酸10重量%と、残部が水と、からなるエッチング液に1分間浸漬したところ、第1、第2の窒化銅層、及び、銅層が溶解することを確認できた。