以下、本発明の導電性基板、積層導電性基板、導電性基板の製造方法、及び積層導電性基板の製造方法の一実施形態について説明する。
(導電性基板、積層導電性基板)
本実施形態の導電性基板は、絶縁性基材と、絶縁性基材の少なくとも一方の面上に配置された金属配線と、金属配線の上面、及び側面に配置された黒化層と、を有することができる。
ここでまず、本実施形態の導電性基板に含まれる各部材について以下に説明する。
絶縁性基材としては特に限定されるものではなく、例えば可視光を透過する樹脂基板(樹脂フィルム)や、ガラス基板等の透明基材を好ましく用いることができる。
可視光を透過する樹脂基板の材料としては例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の樹脂を好ましく用いることができる。特に、可視光を透過する樹脂基板の材料として、PET(ポリエチレンテレフタレート)、COP(シクロオレフィンポリマー)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、ポリイミド、ポリカーボネート等をより好ましく用いることができる。
絶縁性基材の厚さについては特に限定されず、導電性基板とした場合に要求される強度や静電容量、光の透過率等に応じて任意に選択することができる。絶縁性基材の厚さとしては例えば10μm以上200μm以下とすることができる。特にタッチパネルの用途に用いる場合、絶縁性基材の厚さは20μm以上120μm以下とすることが好ましく、20μm以上100μm以下とすることがより好ましい。タッチパネルの用途に用いる場合で、例えば特にディスプレイ全体の厚さを薄くすることが求められる用途においては、絶縁性基材の厚さは20μm以上50μm以下であることが好ましい。
絶縁性基材の全光線透過率は高い方が好ましく、例えば全光線透過率は30%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。絶縁性基材の全光線透過率が上記範囲であることにより、例えばタッチパネルの用途に用いた場合にディスプレイの視認性を十分に確保することができる。
なお絶縁性基材の全光線透過率はJIS K 7361−1に規定される方法により評価することができる。
絶縁性基材は第1の主平面と、第2の主平面とを有することができる。なお、ここでいう主平面とは絶縁性基材に含まれる面のうち最も面積の大きい平面部を指している。そして、第1の主平面と、第2の主平面とは1つの絶縁性基材の中で対向して配置された面を意味する。
次に、金属配線について説明する。
金属配線は、絶縁性基材の少なくとも一方の面上に配置することができる。そして、所望の配線パターンに対応したパターン形状を有することができる。
なお、金属配線の形成方法は特に限定されるものではない。金属配線は例えば、絶縁性基材の少なくとも一方の面上に金属層を形成し、該金属層をパターン化することにより形成することができる。このため、ここではまず、絶縁性基材の少なくとも一方の面上に金属層を形成し、該金属層をパターン化して形成する場合を例に金属配線について説明する。
金属層を構成する材料は特に限定されず用途にあった電気伝導率を有する材料を選択できるが、例えば、金属層を構成する材料は、Cuと、Ni,Mo,Ta,Ti,V,Cr,Fe,Mn,Co,Wから選ばれる少なくとも1種類以上の金属との銅合金、または銅を含む材料であることが好ましい。また、金属層は銅から構成される銅層とすることもできる。
絶縁性基材上に金属層を形成する方法は特に限定されないが、光の透過率を低減させないため、絶縁性基材と金属層との間に接着剤を配置しないことが好ましい。すなわち金属層は、絶縁性基材の少なくとも一方の面上に直接形成されていることが好ましい。なお、後述のように絶縁性基材と金属層との間に密着層を配置する場合には、金属層は密着層の上面に直接形成されていることが好ましい。
絶縁性基材、または密着層の上面に金属層を直接形成するため、金属層は金属薄膜層を有することが好ましい。また、金属層は金属薄膜層と金属めっき層とを有していてもよい。
例えば絶縁性基材上に、乾式めっき法により金属薄膜層を形成し該金属薄膜層を金属層とすることができる。これにより、絶縁性基材上に接着剤を介さずに直接金属層を形成できる。なお、乾式めっき法としては、例えばスパッタリング法や蒸着法、イオンプレーティング法等を好ましく用いることができる。
また、金属層の膜厚を厚くする場合には、金属薄膜層を給電層として例えば湿式めっき法の一種である電気めっき法により金属めっき層を形成することにより、金属薄膜層と金属めっき層とを有する金属層とすることもできる。金属層が金属薄膜層と金属めっき層とを有することにより、この場合も絶縁性基材上に接着剤を介さずに直接金属層を形成できる。
なお、ここでは絶縁性基材上に金属層を形成した例で説明したが、絶縁性基材と金属層との間に密着層を形成する場合、密着層上に同様にして金属薄膜層、または金属薄膜層と金属めっき層とを形成することで、密着層上に金属層を直接形成することができる。
金属層の厚さは特に限定されるものではなく、金属層を配線として用いた場合に、該配線に供給する電流の大きさや配線幅等に応じて任意に選択することができる。
ただし、金属層が厚くなると、金属配線を形成するためにエッチングを行う際にエッチングに時間を要するためサイドエッチが生じ易くなり、細線が形成しにくくなる等の問題を生じる場合がある。このため、金属層の厚さは5μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましい。
また、特に導電性基板の抵抗値を低くし、十分に電流を供給できるようにする観点から、例えば金属層は厚さが50nm以上であることが好ましく、60nm以上であることがより好ましく、150nm以上であることがさらに好ましい。
なお、金属層が上述のように金属薄膜層と、金属めっき層とを有する場合には、金属薄膜層の厚さと、金属めっき層の厚さとの合計が上記範囲であることが好ましい。
金属層が金属薄膜層により構成される場合、または金属薄膜層と金属めっき層とにより構成される場合のいずれの場合でも、金属薄膜層の厚さは特に限定されるものではないが、例えば50nm以上500nm以下とすることが好ましい。
金属層は所望の配線パターンに対応した形状にパターン化することにより金属配線とすることができる。金属配線のパターン形状は特に限定されるものではなく、導電性基板に要求される配線パターンに対応した形状とすることができる。
金属層をパターン化する方法は特に限定されるものはないが、例えば絶縁性基材の少なくとも一方の面上に金属層を形成した後、まず金属層の絶縁性基材と対向する面とは反対側の面上に、形成する配線パターンの形状に対応した開口部を有するマスクを配置する。そして、エッチング処理を行うことで金属配線を形成することができる。
金属配線は例えば上述の様に金属層をパターン化することで形成することができる。このため、金属層が金属薄膜層から構成されている場合には、金属配線はパターン化した金属薄膜層を有することができる。また、金属層が金属薄膜層と、金属めっき層とを有する場合には、金属配線は、パターン化した金属薄膜層と、パターン化した金属めっき層とを有することもできる。
金属層は導電層の材料として従来用いられていたITOよりも電気抵抗値を低くすることができるから、金属層をパターン化した金属配線を設けることにより導電性基板の電気抵抗値を小さくできる。
ここまで金属配線について、絶縁性基材の少なくとも一方の面上に金属層を形成後、金属層をパターン化することにより形成する場合を例に説明したが、金属配線の形成方法は係る形態に限定されるものではない。例えば、絶縁性金属層上に金属層を形成することなく、印刷法等により、絶縁性基材上に直接、金属配線を形成することもできる。また、金属配線はアディティブ法や、セミアディティブ法等により形成することもできる。
金属配線は、その形成方法により、例えば既述のように金属薄膜層と、金属めっき層とのように複数の層を有していてもよく、1つの層から構成されていてもよい。
なお、印刷法や、その他の方法により金属配線を形成する場合であっても、金属配線を構成する材料は特に限定されるものではない。
例えば既述の金属層を構成する材料として好適に用いることができる材料を、金属配線を構成する材料として好適に用いることができる。すなわち金属配線を構成する材料は、Cuと、Ni,Mo,Ta,Ti,V,Cr,Fe,Mn,Co,Wから選ばれる少なくとも1種の以上の金属との銅合金、または銅を含む材料であることが好ましい。また、金属配線は銅から構成される銅配線とすることもできる。
金属配線の厚さについても特に限定されるものではないが、例えば5μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましい。
また、金属配線の厚さの下限値についても特に限定されないが、特に導電性基板の抵抗値を低くし、十分に電流を供給できるようにする観点から、例えば金属配線は厚さが50nm以上であることが好ましく、60nm以上であることがより好ましく、150nm以上であることがさらに好ましい。
次に黒化層について説明する。
黒化層は、金属配線の上面、及び側面に配置することができる。
図1(A)、図1(B)を用いて、従来の導電性基板の黒化層、及び本実施形態の導電性基板の黒化層の構成について説明する。なお、図1(A)、図1(B)は絶縁性基材上に金属配線、及び黒化層を積層した導電性基板における、各層の積層方向と平行な面における断面図を示している。そして、図1(A)は従来の導電性基板の、図1(B)は本実施形態の導電性基板の構成例をそれぞれ示している。
まず、図1(A)を用いて従来の導電性基板における構成例について説明する。タッチパネル等を用途とする導電性基板において金属配線を用いる場合に、金属配線表面での光の反射を抑制するため、絶縁性基材1上に配置された金属配線2の上面に黒化層3を形成することが検討されてきた。従来の導電性基板の製造方法によれば、絶縁性基材の上面全体に金属層、及び黒化層を形成してからパターン化して金属配線、及びパターン化された黒化層とする必要があった。このため、金属配線2の側面部分2aは黒化層3に覆われておらず露出しているため光を反射し、係る導電性基板をディスプレイ上に配置した場合、ディスプレイの視認性が低下するという問題があった。
これに対して、図1(B)に示したように、本実施形態の導電性基板においては、絶縁性基材1上に配置された金属配線2の上面、及び側面に黒化層4が配置されている。すなわち、金属配線2は絶縁性基材1と接する面以外は、黒化層4により覆われた構成とすることができる。このため、金属配線2の表面での光の反射を特に抑制することができ、タッチパネル用の導電性基板として用いた場合にディスプレイの視認性を高めることができる。なお、図1(B)では絶縁性基材1上に直接金属配線2を配置した例を示しているが、絶縁性基材1と、金属配線2との間には密着層を配置することもできる。密着層を配置した場合、密着層も金属配線2と同様にパターン化されていることが好ましく、金属配線2は密着層に接する面以外が黒化層4により覆われていることが好ましい。
本実施形態の導電性基板において黒化層を形成する方法は特に限定されるものではなく、金属配線の上面、及び側面に黒化層を形成できる方法であればよいが、例えば黒化層は無電解めっき法により形成されていることが好ましい。
黒化層を形成する方法として、従来は主に乾式めっき法を用いることが検討されてきた。しかしながら、乾式めっき法により黒化層を形成する場合、既述のように絶縁性基材上に金属層を形成後、金属層の上面全体に黒化層を形成してから、金属層及び黒化層をパターン化する必要がある。このため、金属層をパターン化した金属配線の側面部分には黒化層を形成することができず、導電性基板の金属配線、及び黒化層、は例えば図1(A)に示したような断面構造を有していた。
これに対して、黒化層を無電解めっき法により形成する場合、所望の形状にパターン化された金属配線を形成してから、黒化層を形成することができる。そして、金属配線の露出した部分、すなわち金属配線の上面、及び側面に黒化層を形成できる。このため、本実施形態の導電性基板においては既述のように、黒化層は無電解めっき法により形成されていることが好ましい。
黒化層の材料は特に限定されるものではなく、金属配線表面における光の反射を抑制できる材料であれば好適に用いることができる。例えば黒色等、金属配線表面での光の反射を抑制できる色を有する材料を好ましく用いることができる。
ただし、黒化層は既述のように無電解めっき法により好適に形成することができるため、黒化層の材料は無電解めっき法により形成できる材料であることが好ましい。
上述の様に黒化層に含まれる材料は特に限定されるものではないが、例えば黒化層は、Ni(ニッケル)を含有することが好ましい。また、黒化層は2種類以上の元素を同時に含有することもでき、例えばNi(ニッケル)と、S(硫黄)、Sn(すず)、Co(コバルト)、Zn(亜鉛)から選択された1種類以上の元素と、を含むこともできる。
特に黒化層は、Ni、NiとSn、NiとS、NiとZn、NiとSとSn、NiとCoとS、NiとZnとSから選択されるNi、またはNiを含む2種類以上の元素の組み合わせのいずれかを含有することが好ましい。
なお、黒化層は、上述のNi、またはNiを含む2種類以上の元素の組み合わせのいずれかから構成することもできる。また、上述の元素、または2種類以上の元素の組み合わせのいずれかと、さらにそれ以外の成分とをさらに含有することもできる。
黒化層が上述の元素、または2種類以上の元素の組み合わせのいずれかから構成される場合でも、黒化層は例えば無電解めっき法により形成することができるため、めっき液由来の不可避成分等が含まれていてもよい。
特に、黒化層は、Ni及びSを含有することがより好ましい。これは本発明の発明者らの検討によると、黒化層がNi及びSを同時に含有する場合に、金属配線表面での光の反射を特に抑制することができ、導電性基板の光の反射率を特に抑制できるからである。なお、黒化層がNi及びSを含有する場合、黒化層はNi及びSから構成することもできるが、Ni及びS以外の成分、例えば既述のようにCoやSn、Zn等を含有していてもよい。
黒化層中で、黒化層に含まれる元素の状態は特に限定されるものではない。例えば元素単体の状態を保ったまま黒化層に含まれていてもよい。また、黒化層が2種類以上の元素を含有する場合、金属間化合物や、その他の化合物を形成し、黒化層内に含まれていてもよい。
黒化層が2種類以上の元素を含有する場合、2種類以上の元素の含有割合は特に限定されるものではなく、導電性基板について要求される光の反射の程度や、黒化層の色合い等に応じて任意に選択することができる。
導電性基板は上述の絶縁性基材、金属配線、黒化層以外に任意の層を設けることもできる。例えば密着層を設けることができる。
上述のように金属層や、金属配線は絶縁性基材上に形成することができるが、絶縁性基材上に金属層や金属配線を直接形成した場合に、絶縁性基材と、金属層や、金属配線との密着性は十分ではない場合がある。このため、絶縁性基材の上面に直接金属層、金属配線を形成した場合、製造過程、または、使用時に絶縁性基材から金属層、金属配線が剥離する場合がある。
そこで、本実施形態の導電性基板においては、絶縁性基材と、金属層や金属配線との密着性を高めるため、絶縁性基材上に密着層を配置することができる。
絶縁性基材と金属層、金属配線との間に密着層を配置することにより、絶縁性基材と金属層や金属配線との密着性を高め、絶縁性基材から金属層や金属配線が剥離することを抑制できる。
また、密着層は黒化層としても機能させることができる。このため、金属層や金属配線の下面側、すなわち絶縁性基材側からの光による金属配線表面での光の反射も抑制することが可能になる。
密着層を構成する材料は特に限定されるものではなく、絶縁性基材や、金属層、金属配線との密着力や、要求される金属配線表面での光の反射の抑制の程度、また、導電性基板を使用する環境(例えば湿度や、温度)に対する安定性の程度等に応じて任意に選択することができる。
密着層は例えば、Ni,Zn,Mo,Ta,Ti,V,Cr,Fe,Co,W,Cu,Sn,Mnから選ばれる少なくとも1種類以上の金属を含むことが好ましい。また、密着層は炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種類以上の元素をさらに含むこともできる。
なお、密着層は、Ni,Zn,Mo,Ta,Ti,V,Cr,Fe,Co,W,Cu,Sn,Mnから選ばれる少なくとも2種類以上の金属を含む金属合金を含むこともできる。この場合についても、密着層は炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種類以上の元素をさらに含むこともできる。この際、Ni,Zn,Mo,Ta,Ti,V,Cr,Fe,Co,W,Cu,Sn,Mnから選ばれる少なくとも2種類以上の金属を含む金属合金としては、Cu−Ti−Fe合金や、Cu−Ni−Fe合金、Ni−Cu合金、Ni−Zn合金、Ni−Ti合金、Ni−W合金、Ni−Cr合金、Ni−Cu−Cr合金を好ましく用いることができる。
密着層の成膜方法は特に限定されるものではないが、乾式めっき法により成膜することが好ましい。乾式めっき法としては例えばスパッタリング法、イオンプレーティング法や蒸着法等を好ましく用いることができる。密着層を乾式法により成膜する場合、膜厚の制御が容易であることから、スパッタリング法を用いることがより好ましい。なお、密着層には上述のように炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種類以上の元素を添加することもでき、この場合は反応性スパッタリング法をさらに好ましく用いることができる。
密着層が炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種類以上の元素を含む場合には、密着層を成膜する際の雰囲気中に炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種類以上の元素を含有するガスを添加しておくことにより、密着層中に添加することができる。例えば、密着層に炭素を添加する場合には一酸化炭素ガスおよび/または二酸化炭素ガスを、酸素を添加する場合には酸素ガスを、水素を添加する場合には水素ガスおよび/または水を、窒素を添加する場合には窒素ガスを、乾式めっきを行う際の雰囲気中に添加しておくことができる。
炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種類以上の元素を含有するガスは、不活性ガスに添加し、乾式めっきの際の雰囲気ガスとすることが好ましい。不活性ガスとしては特に限定されないが、例えばアルゴンを好ましく用いることができる。
密着層を上述のように乾式めっき法により成膜することにより、絶縁性基材と密着層との密着性を高めることができる。そして、密着層は例えば金属を主成分として含むことができるため金属層や金属配線との密着性も高い。このため、絶縁性基材と金属層や、金属配線との間に密着層を配置することにより、金属層、金属配線の剥離を抑制することができる。
密着層の厚さは特に限定されるものではないが、例えば3nm以上50nm以下とすることが好ましく、3nm以上35nm以下とすることがより好ましく、3nm以上33nm以下とすることがさらに好ましい。
密着層についても黒化層として機能させる場合、すなわち金属層や、金属配線における光の反射を抑制する場合、密着層の厚さを上述のように3nm以上とすることが好ましい。
密着層の厚さの上限値は特に限定されるものではないが、必要以上に厚くしても成膜に要する時間や、密着層をパターン化する際のエッチングに要する時間が長くなり、コストの上昇を招くことになる。このため、密着層の厚さは上述のように50nm以下とすることが好ましく、35nm以下とすることがより好ましく、33nm以下とすることがさらに好ましい。
次に、導電性基板の構成例について説明する。
上述のように、本実施形態の導電性基板は絶縁性基材と、金属配線と、黒化層と、を備えた構成とすることができる。
具体的な構成例について、図2(A)、図2(B)を用いて以下に説明する。
図2(A)、図2(B)は、本実施形態の導電性基板の一構成例を示している。そして、図2(A)は、絶縁性基材11の金属配線を配置した面と垂直な方向、すなわち絶縁性基材上に配置した金属配線等の積層方向、に沿って、上面側から導電性基板10を見た図を示している。図2(B)は、図2(A)におけるA−A´線での断面図を示している。
本実施形態の導電性基板は、例えば図2(A)、図2(B)に示した導電性基板10のように、絶縁性基材11の第1の主平面11a上に、金属配線12を配置し、金属配線12の上面12a、及び側面12bに黒化層13を配置した構成とすることができる(図2(B)を参照)。
なお、導電性基板10においては、金属配線12は複数の直線形状のパターンとなるように形成されており、該複数の直線形状のパターンは、図2(A)中のY軸に平行に、かつX軸方向に互いに離隔して配置されている。このため、金属配線12の上面、及び側面に配置された黒化層13についても、図2(A)に示したように図中のY軸と平行でかつ、X軸方向に互いに離隔して配置された複数の直線形状のパターンとなっている。
ただし、金属配線12のパターン形状は、図2(A)に示した形態に限定されるものではなく、導電性基板に要求される配線パターンに応じたパターン形状とすることができる。また、金属配線12の配線幅や、配線間距離についても特に限定されるものではなく、導電性基板に要求される性能等に応じて任意に選択することができる。
図2(A)、図2(B)に示した導電性基板10のように、金属配線12の上面12a、及び側面12bに黒化層13を配置することで、金属配線12の上面12aに入射した光だけではなく、側面12bに入射した光についても、金属配線12表面での反射を抑制できる。このため、導電性基板10をタッチパネル用の導電性基板として用いるため、ディスプレイの表示面上に配置した場合に、ディスプレイの視認性を高くすることができる。
本実施形態の導電性基板の他の構成例として、既述のように、絶縁性基材11と、金属配線12との間には、密着層を配置することもできる。
図3に絶縁性基材と金属配線との間に密着層を配置した場合の導電性基板の断面構成例を示す。
図3は、絶縁性基材11上に配置した密着層21や金属配線12等の積層方向と平行な面における導電性基板20の断面図を示しており、図2(A)、図2(B)と同じ部材には同じ番号を付している。なお、絶縁性基材11の金属配線を配置した第1の主平面11aと垂直な方向に沿って上面側から導電性基板20を見た場合、すなわち図中ブロック矢印22に沿って導電性基板20を見た場合、密着層は外部から視認できないため、図2(A)と同様の構成となり、図3は図2(A)のA−A´線での断面図に相当する。
図3に示した導電性基板20は、絶縁性基材11上に、密着層21、及び金属配線12が積層されている。そして、密着層21、及び金属配線12は略同一の形状にパターン化されており、金属配線12の上面、及び側面、さらに密着層21の側面には黒化層13が配置されることとなる。
図3に示した導電性基板20のように絶縁性基材11と、金属配線12との間に密着層21を配置することにより、絶縁性基材11と、金属配線12との密着性を高めることができる。また、絶縁性基材11側から金属配線12へと入射した光が、金属配線12の底面、すなわち金属配線12の絶縁性基材11と対向する面で反射することを抑制することができる。このため、導電性基板20をタッチパネル用の導電性基板として用いるため、ディスプレイの表示面上に配置した場合に、ディスプレイの視認性を特に高くすることができる。
ここまで、絶縁性基材の第1の主平面上に金属配線を形成した例を示したが、係る形態に限定されるものではない。絶縁性基材の第1の主平面、及び第2の主平面に金属配線を形成することもできる。
絶縁性基材の第1の主平面、及び第2の主平面に金属配線を形成した場合の、本実施形態の導電性基板の一構成例について、図4(A)、図4(B)を用いて以下に説明する。
図4(A)は、絶縁性基材11の第1の主平面と垂直な方向、すなわち絶縁性基材上に配置した金属配線等の積層方向に沿って、上面側から導電性基板30を見た図を示している。なお、金属配線のパターン形状が分かり易いように、絶縁性基材11を透過して見える第2の主平面11b側に形成した金属配線12B、及び黒化層13Bも、図4(A)中に示している。図4(B)は、図4(A)におけるB−B´線での断面図を示している。
図4(A)、図4(B)に示した導電性基板30では、絶縁性基材11の第1の主平面11a上に、金属配線12Aを配置し、金属配線12Aの上面、及び側面に黒化層13Aが配置されている。また、絶縁性基材11の第2の主平面11b上にも金属配線12Bを配置し、金属配線12Bの上面、及び側面に黒化層13Bが配置されている(図4(B)を参照)。
図4(A)、図4(B)においては、密着層を配置していない導電性基板の構成例を示したが、既述のように、絶縁性基材と、金属配線との間には密着層を配置することもできる。密着層を配置する場合、金属配線12Aと絶縁性基材11との間、および/または金属配線12Bと絶縁性基材11との間に密着層を配置することができる。密着層を配置する場合、密着層はそれぞれ金属配線12A、金属配線12Bと同じパターンとなるようにパターン化することが好ましい。
導電性基板30においては、金属配線12A、及び金属配線12Bは複数の直線形状のパターンとなるように形成されており、第1の主平面11a側に形成された金属配線12Aは、図4(A)中のY軸に平行に、かつX軸方向に互いに離隔して配置されている。なお、金属配線12Aはその上面、及び側面に黒化層13Aが配置されているため、図4(A)では金属配線12Aを視認できないが、金属配線12Aは、黒化層13Aと同様にY軸に平行な複数の直線形状のパターンとなるように形成されている。
また、第2の主平面11b側に形成された金属配線12Bは、図4(A)中のX軸に平行に、かつY軸方向に互いに離隔して配置されている。このため、金属配線12A、及び金属配線12Bにより、導電性基板30は、メッシュ状に配置された金属配線を有する構成となっている。
金属配線の形状、配置は図4(A)に示した形態に限定されるものではなく任意の形状、配置とすることができる。ただし、静電容量式のタッチパネル用の導電性基板においては、パネル表面に近接する物体により引き起こされる静電容量の変化を検出することにより、パネル表面上での近接する物体の位置の情報を電気信号に変換する。このため、静電容量式のタッチパネルの用途に用いる場合には、導電性基板30のようにメッシュ状の金属配線を備えた導電性基板とすることが好ましい。
図4(A)、図4(B)に示した導電性基板30においても、金属配線の上面、及び側面に黒化層が形成されているため、金属配線12A、12Bの上面に入射した光だけではなく、側面に入射した光についても、金属配線12A、12B表面での反射を抑制できる。このため、導電性基板30をタッチパネル用の導電性基板として用いるため、ディスプレイの表示面上に配置した場合に、ディスプレイの視認性を高くすることができる。
静電容量式のタッチパネル等に用いる導電性基板については、既述のように、メッシュ状に配置された金属配線を備えていることが好ましい。そして、メッシュ状に配置された金属配線を備えた導電性基板として、図4(A)、図4(B)では、絶縁性基材の第1の主平面11a、第2の主平面11bに金属配線を形成した例を示した。しかしながら、メッシュ状に配置された金属配線を備えた導電性基板は係る形態に限定されるものではなく、例えば既述の導電性基板10、または導電性基板20を複数枚積層することで、メッシュ状に配置された金属配線を備えた積層導電性基板とすることもできる。
図2(A)、図2(B)に示した導電性基板10を2枚用いてメッシュ状の金属配線を備えた積層導電性基板とする場合を例に説明する。
メッシュ状の金属配線を備えた積層導電性基板は、2枚用意した導電性基板10について、2枚の導電性基板を積層する際、一方の導電性基板10の金属配線12と、他方の導電性基板10の金属配線12と、が交差するように積層することで、形成することができる。
絶縁性基材の一方の主平面に金属配線を形成した導電性基板を用いて、メッシュ状に配置された金属配線を有する導電性基板を形成する場合の一構成例について、図5(A)、図5(B)を用いて説明する。
図5(A)は、絶縁性基材111(112)の第1の主平面と垂直な方向、すなわち絶縁性基材上に配置した金属配線等の積層方向に沿って、上面側から積層導電性基板40を見た図を示している。なお、金属配線のパターン形状が分かり易いように、絶縁性基材112を透過して見える黒化層131も図5(A)中に示している。図5(B)は、図5(A)におけるC−C´線での断面図を示している。
図5(B)に示した導電性基板101と、導電性基板102とは共に、図2に示した導電性基板10と同様の構成を有している。具体的には、絶縁性基材111、112の第1の主平面111a、112a上にそれぞれ、複数の直線形状のパターンとなるように形成された金属配線121、122が配置されている。また、金属配線121、122の上面、及び側面には黒化層131、132が配置されている。
そして、導電性基板101の絶縁性基材111の第1の主平面111aと、絶縁性基材112の第2の主平面112bとが対向するように積層することで積層導電性基板とすることができる。なお、上述の様に、積層する際に、絶縁性基材111の金属配線121と、絶縁性基材112の金属配線122とが交差するように積層することで、図5(A)に示すようにメッシュ状に配置された金属配線を有する積層導電性基板とすることができる。図5(A)においては、黒化層131、132の配置を示しているが、黒化層131、132は、金属配線121、122の表面に沿って形成されているため、金属配線についても同様にメッシュ状に配置されることとなる。
また、図5(A)、図5(B)の場合において、一方の導電性基板101の上下を逆にして、絶縁性基材111の第2の主平面111bと、他方の導電性基板102の絶縁性基材112の第2の主平面112bとが対向するように積層してもよい。この場合、図4(A)、図4(B)と同様の構成を有する積層導電性基板を形成できる。
2枚の導電性基板を積層した場合、2枚の導電性基板を固定する方法は特に限定されるものではないが、例えば接着剤等により接着、固定することができる。
図5(A)、図5(B)においては、密着層を配置していない積層導電性基板の構成例を示したが、既述のように、絶縁性基材と、金属配線との間には密着層を配置することもできる。例えば、図2(B)に示した断面形状の導電性基板10にかえて、図3に示した断面形状の導電性基板20を用いる点以外は上述の場合と同様に積層することで、絶縁性基材と、金属配線との間に密着層を有する積層導電性基板とすることができる。
なお、同じ構成の導電性基板を積層する必要はなく、例えば断面形状が図2(B)に示した導電性基板1枚と、図3に示した導電性基板1枚とを積層して積層導電性基板とすることもできる。
図4(A)、図4(B)、図5(A)、図5(B)において、複数の直線形状の金属配線を組み合わせてメッシュ状に配置された導電性基板とした例を示したが、係る形態に限定されるものではなく、金属配線の形状、配置は任意の形状とすることができる。例えばディスプレイの画像との間でモアレ(干渉縞)が発生しないようメッシュ状に配置された金属配線を構成する金属配線の形状をそれぞれ、直線形状ではなく、ぎざぎざに屈曲した線(ジグザグ直線)等の各種形状にすることもできる。
本実施形態の導電性基板、積層導電性基板の光の反射の程度については特に限定されるものではないが、例えば波長400nm以上700nm以下の光の平均反射率(正反射率)は35%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、20%以下であることがさらに好ましい。波長400nm以上700nm以下の光の平均反射率が35%以下の場合、例えばタッチパネル用の導電性基板として用いた場合でもディスプレイの視認性の低下をほとんど引き起こさないため好ましい。
反射率の測定は、黒化層に光を照射するようにして測定を行うことができる。図2(B)に示した導電性基板において、反射率の測定を行う場合を例に説明すると、黒化層13の表面13aに対して光を照射して測定を行うことができる。測定に当たっては波長400nm以上700nm以下の光を例えば波長1nm間隔で上述のように導電性基板の黒化層13の表面13aに対して照射し、測定した値の平均値を該導電性基板の反射率とすることができる。
また、本実施形態の導電性基板、積層導電性基板の黒化層の表面については、L*a*b*表色系のうちの明度(L*)の数値が小さいことが好ましい。これは明度(L*)の数値が小さくなるほど黒化層が目立たなくなるためであり、黒化層の表面の明度(L*)は65以下であることが好ましく、60以下であることがより好ましく、50以下であることがさらに好ましい。
以上に説明した導電性基板、及び該導電性基板を用いた積層導電性基板においては、金属配線の上面、及び側面に黒化層が配置されている。このため、金属配線表面での光の反射を抑制できる。また、金属配線を配置しているため、導電性基板、及び積層導電性基板の電気抵抗値を小さくすることができる。
(導電性基板の製造方法、積層導電性基板の製造方法)
次に本実施形態の導電性基板の製造方法の一構成例について説明する。
本実施形態の導電性基板の製造方法は、以下の工程を有することができる。
絶縁性基材の少なくとも一方の面上に金属配線を形成する金属配線形成工程。
金属配線の上面及び側面に黒化層を形成する黒化層形成工程。
以下に本実施形態の導電性基板の製造方法について説明するが、以下に説明する点以外については上述の導電性基板の場合と同様の構成とすることができるため説明を省略する。
金属配線形成工程に供する絶縁性基材は予め準備しておくことができる。用いる絶縁性基材の種類は特に限定されるものではないが、既述のように可視光を透過する樹脂基板(樹脂フィルム)や、ガラス基板等を好ましく用いることができる。絶縁性基材は必要に応じて予め任意のサイズに切断等行っておくこともできる。
そして、金属配線形成工程では、絶縁性基材の少なくとも一方の面上に金属配線を形成することができる。
金属配線形成工程において、金属配線を形成する方法は特に限定されるものではないが、金属配線形成工程は例えば以下のステップを有することができる。
絶縁性基材の少なくとも一方の面上に金属層を形成する金属層形成ステップ。
金属層をパターン化し、金属配線を形成するパターン化ステップ。
ここでまず金属層形成ステップについて説明する。金属層形成ステップでは、絶縁性基材の少なくとも一方の面上に金属層を形成できる。
そして、金属層は既述のように、金属薄膜層を有することが好ましい。また、金属層は金属薄膜層と金属めっき層とを有することもできる。このため、金属層形成ステップは、例えば乾式めっき法により金属薄膜層を形成する金属薄膜層形成ステップを有することができる。また、金属層形成ステップは、乾式めっき法により金属薄膜層を形成する金属薄膜層形成ステップと、該金属薄膜層を給電層として、湿式めっき法の一種である電気めっき法により金属めっき層を形成する金属めっき層形成ステップと、を有していてもよい。
金属薄膜層形成ステップで用いる乾式めっき法としては、特に限定されるものではなく、例えば、蒸着法、スパッタリング法、又はイオンプレーティング法等を用いることができる。なお、蒸着法としては真空蒸着法を好ましく用いることができる。金属薄膜層を形成する工程で用いる乾式めっき法としては、特に膜厚の制御が容易であることから、スパッタリング法を用いることがより好ましい。
金属薄膜層をスパッタリング法により成膜する場合、例えばロール・ツー・ロールスパッタリング装置を用いて好適に成膜することができる。
ロール・ツー・ロールスパッタリング装置50を用いた場合を例に金属薄膜層の形成方法を説明する。
図6はロール・ツー・ロールスパッタリング装置50の一構成例を示している。
ロール・ツー・ロールスパッタリング装置50は、その構成部品のほとんどを収納した筐体51を備えている。
図6において筐体51の形状は直方体形状として示しているが、筐体51の形状は特に限定されるものではなく、内部に収容する装置や、設置場所、耐圧性能等に応じて任意の形状とすることができる。例えば筐体51の形状は円筒形状とすることもできる。
ただし、成膜開始時に成膜に関係ない残留ガスを除去するため、筐体51内部は10−3Pa以下まで減圧できることが好ましく、10−4Pa以下まで減圧できることがより好ましい。なお、筐体51内部全てが上記圧力まで減圧できる必要はなく、スパッタリングを行う、後述するキャンロール53が配置された図中下側の領域のみが上記圧力まで減圧できるように構成することもできる。
筐体51内には、金属薄膜層を成膜する基材を供給する巻出ロール52、キャンロール53、スパッタリングカソード54a〜54d、巻取ロール55等を配置することができる。また、金属薄膜層を成膜する基材の搬送経路上には、上記各ロール以外に任意にガイドロールや、ヒーター56等を設けることもできる。
巻出ロール52、キャンロール53、巻取ロール55等にはサーボモータによる動力を備えることができる。巻出ロール52、巻取ロール55は、パウダークラッチ等によるトルク制御によって金属薄膜層を成膜する基材の張力バランスが保たれるように構成できる。
キャンロール53の構成についても特に限定されないが、例えばその表面が硬質クロムめっきで仕上げられ、その内部には筐体51の外部から供給される冷媒や温媒が循環し、略一定の温度に調整できるように構成されていることが好ましい。
スパッタリングカソード54a〜54dは、マグネトロンカソード式でキャンロール53に対向して配置することが好ましい。スパッタリングカソード54a〜54dのサイズは特に限定されないが、スパッタリングカソード54a〜54dの金属薄膜層を成膜する基材の幅方向の寸法は、金属薄膜層を成膜する基材の幅より広いことが好ましい。
金属薄膜層を成膜する基材は、ロール・ツー・ロール真空成膜装置であるロール・ツー・ロールスパッタリング装置50内を搬送されて、キャンロール53に対向するスパッタリングカソード54a〜54dで金属薄膜層が成膜される。
ロール・ツー・ロールスパッタリング装置50を用いて金属薄膜層を成膜する場合、成膜する組成に対応したターゲットをスパッタリングカソード54a〜54dに装着する。そして、金属薄膜層を成膜する基材を巻出ロール52にセットした装置内を真空ポンプ57a、57bにより真空排気した後、アルゴン等のスパッタリングガスを気体供給手段58により筐体51内に導入することができる。気体供給手段58の構成は特に限定されないが、図示しない気体貯蔵タンクを有することができる。そして、気体貯蔵タンクと筐体51との間に、ガス種ごとにマスフローコントローラー(MFC)581a、581b、及びバルブ582a、582bを設け、各ガスの筐体51内への供給量を制御できるように構成できる。図6ではマスフローコントローラーと、バルブとを2組設けた例を示しているが、設置する数は特に限定されず、用いるガス種の数に応じて設置する数を選択することができる。スパッタリングガスを筐体51内に供給する際、スパッタリングガスの流量及び、真空ポンプ57bと筐体51との間に設けられた圧力調整バルブ59の開度とを調整して装置内を例えば0.13Pa以上1.3Pa以下に保持し、成膜を実施することが好ましい。
この状態で、巻出ロール52から基材を例えば毎分1m以上20m以下の速さで搬送しながら、スパッタリングカソード54a〜54dに接続したスパッタリング用直流電源より電力を供給してスパッタリング放電を行う。これにより基材上に所望の金属薄膜層を連続成膜することができる。
なお、ロール・ツー・ロールスパッタリング装置50は上述した部材以外にも任意の部材を設けることができる。例えば図6に示したように、筐体51内の真空度を測定するための真空計60a、60bや、ベントバルブ61a、61b等を設けることができる。
次に金属めっき層形成ステップについて説明する。湿式めっき法により金属めっき層を形成する金属めっき層形成ステップにおける条件、すなわち、電気めっき処理の条件は、特に限定されるものではなく、常法による諸条件を採用すればよい。例えば、金属めっき液を入れためっき槽に金属薄膜層を形成した基材を供給し、電流密度や、基材の搬送速度を制御することによって、金属めっき層を形成できる。
次にパターン化ステップについて説明する。
パターン化ステップでは、金属層形成ステップで形成した金属層をパターン化し、金属配線を形成することができる。
金属層をパターン化する方法は特に限定されるものではなく、任意の手順により実施することができる。
例えば、パターン化ステップはマスク配置ステップと、エッチングステップとを有することができる。マスク配置ステップでは、金属層上に所望のパターンを有するマスクを配置することができる。次いで、エッチングステップでは、金属層の上面、すなわち、マスクを配置した面側にエッチング液を供給することができる。
エッチングステップにおいて用いるエッチング液は特に限定されるものではなく、金属層を構成する材料に応じて任意に選択することができる。
なお、後述するように、密着層形成工程を実施する場合には、エッチングステップでは、金属層に加えて、密着層もエッチングすることができる。この場合、金属層をエッチングするエッチング液と、密着層をエッチングするエッチング液とは、同じであっても良く、異なっていてもよい。金属層を構成する材料と、密着層を構成する材料とに応じて任意にエッチング液を選択することができる。
また、パターン化ステップで形成するパターンは特に限定されない。例えば金属層を、複数の直線形状のパターンの金属配線となるようにパターン化することができる。金属層を複数の直線形状のパターンの金属配線にパターン化した場合、図2(A)、図2(B)に示すように、金属配線12は互いに平行に、かつ離隔するようなパターンとすることができる。
ここまで金属配線形成工程が、金属層形成ステップと、パターン化ステップとを有する場合を例に説明したが、金属配線形成工程は、係る形態に限定されるものではない。
金属配線は例えば絶縁性基材上に印刷法等により形成することもできる。また、金属配線は、アディティブ法や、セミアディティブ法等により形成することもできる。
例えば金属配線を印刷法により形成する場合、金属配線形成工程は、絶縁性基材の少なくとも一方の面上に、金属配線を印刷する金属配線印刷ステップを有することができる。なお、この際の印刷方法としては、例えばスクリーン印刷法や、インクジェット印刷法等を用いることができる。
また、アディティブ法等その他の方法により金属配線を形成する場合においても、金属配線形成工程は、金属配線の形成方法に対応して、所定のステップを有することができる。
次に、黒化層形成工程について説明する。
黒化層形成工程においては、金属配線の上面、及び側面に黒化層を形成することができる。金属配線の上面、及び側面に黒化層を形成する方法は特に限定されるものではないが、例えば無電解めっき法により黒化層を形成することが好ましい。
黒化層を無電解めっき法により形成することで、金属層をパターン化して形成した金属配線の上面、及び側面に容易に黒化層を形成することができる。
無電解めっき法により黒化層を形成する場合に用いるめっき液の組成等は特に限定されるものではなく、形成する黒化層を構成する材料を含むめっき液を用いることができる。
既述のように黒化層に含まれる材料は特に限定されるものではないが、例えば黒化層は、Ni(ニッケル)を含有することが好ましい。また、黒化層は2種類以上の元素を同時に含有することもでき、例えばNi(ニッケル)と、S(硫黄)、Sn(すず)、Co(コバルト)、Zn(亜鉛)から選択された1種類以上と、を含むこともできる。
黒化層は特に、Ni、NiとSn、NiとS、NiとZn、NiとSとSn、NiとCoとS、NiとZnとSから選択される元素、または2種類以上元素の組み合わせを含有することが好ましい。
特に黒化層は、Ni及びSを含有することが好ましい。これは本発明の発明者らの検討によると、黒化層がNi及びSを含有する場合に、特に金属配線表面での光の反射を抑制する性能が高く、導電性基板の光の反射率を特に抑制できるからである。なお、この場合でもNi及びS以外の成分を含有していてもよく、例えばSnやCo、Zn等をさらに含有していてもよい。
また、本実施形態の導電性基板の製造方法は、さらに任意の工程を有することができる。例えば絶縁性基材と金属配線との間に密着層を配置する場合、絶縁性基材の金属配線を形成する面上に密着層を形成する密着層形成工程を実施することができる。密着層形成工程を実施する場合、金属配線形成工程は、密着層形成工程の後に実施することができる。なお、密着層形成工程を実施する場合、金属配線形成工程において金属層や、金属配線は本工程で絶縁性基材上に密着層を形成した基材上に形成することができる。
密着層を形成する場合、密着層は絶縁性基材の第1の主平面、および/または第2の主平面に形成することができる。
密着層を構成する材料は特に限定されるものではなく、絶縁性基材や、金属層、金属配線との密着力や、金属配線表面での光の反射の抑制の程度、また、導電性基板を使用する環境(例えば湿度や、温度)に対する安定性の程度等に応じて任意に選択することができる。密着層を構成する材料として好適に用いることができる材料については既述のため、ここでは説明を省略する。
密着層の成膜方法は特に限定されないが、例えば乾式めっき法により成膜することができる。乾式めっき法としては例えばスパッタリング法、イオンプレーティング法や蒸着法等を好ましく用いることができる。密着層を乾式法により成膜する場合、膜厚の制御が容易であることから、スパッタリング法を用いることがより好ましい。なお、密着層には既述のように炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種類以上の元素も添加することができ、この場合は反応性スパッタリング法をさらに好ましく用いることができる。
密着層が炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種類以上の元素を含む場合には、密着層を成膜する際の雰囲気中に炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種類以上の元素を含有するガスを添加しておくことにより、密着層中に添加することができる。例えば、密着層に炭素を添加する場合には一酸化炭素ガスおよび/または二酸化炭素ガスを、酸素を添加する場合には酸素ガスを、水素を添加する場合には水素ガスおよび/または水を、窒素を添加する場合には窒素ガスを、乾式めっきを行う際の雰囲気中に添加しておくことができる。
炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種類以上の元素を含有するガスは、不活性ガスに添加し、乾式めっきの際の雰囲気ガスとすることが好ましい。不活性ガスとしては特に限定されないが、例えばアルゴンを好ましく用いることができる。
反応性スパッタリング法により密着層を成膜する場合、ターゲットとしては、密着層を構成する金属種を含むターゲットを用いることができる。密着層が合金を含む場合には、密着層に含まれる金属種毎にターゲットを用い、絶縁性基材等の被成膜体の表面で合金を形成してもよく、予め密着層に含まれる金属を合金化したターゲットを用いることもできる。
密着層を上述のように乾式めっき法により成膜することにより、絶縁性基材と密着層との密着性を高めることができる。そして、密着層は例えば金属を主成分として含むことができるため金属層、金属配線との密着性も高い。このため、絶縁性基材と金属層、金属配線との間に密着層を配置することにより、金属層の剥離を抑制することができる。
密着層は例えば図6に示したロール・ツー・ロールスパッタリング装置50を用いて好適に成膜することができる。
ロール・ツー・ロールスパッタリング装置の構成については既述のため、ここでは説明を省略する。
ロール・ツー・ロールスパッタリング装置50を用いて密着層を成膜する場合、密着層を構成する金属のターゲットをスパッタリングカソード54a〜54dに装着し、密着層を形成する基材、例えば絶縁性基材を巻出ロール52にセットする。そして、装置内、例えば筐体51内を真空ポンプ57a、57bにより真空排気する。そしてその後、アルゴンガス等のスパッタリングガスを気体供給手段58により筐体51内に導入する。この際、スパッタリングガスの流量と、真空ポンプ57bと筐体51との間に設けられた圧力調整バルブ59の開度と、を調整して装置内を例えば0.13Pa以上13Pa以下に保持し、成膜を実施することが好ましい。
この状態で、巻出ロール52から基材を例えば毎分0.5m以上10m以下の速さで搬送しながら、スパッタリングカソード54a〜54dに接続したスパッタリング用直流電源より電力を供給してスパッタリング放電を行う。これにより基材上に所望の密着層を連続成膜することができる。
密着層を上述のように乾式めっき法により成膜することにより、絶縁性基材と密着層との密着性を高めることができる。そして、密着層は例えば金属を主成分として含むことができるため金属層や金属配線との密着性も高い。このため、絶縁性基材と金属層や金属配線との間に密着層を配置することにより、金属層の剥離を抑制することができる。
なお、密着層形成工程を実施する場合は、密着層形成工程を実施した後に、既述の金属配線形成工程を実施することができる。
密着層を形成した場合、密着層も金属配線のパターン形状にあわせてパターン化することが好ましいが、密着層をパターン化するタイミングは特に限定されない。
例えば金属配線形成工程で、金属層を形成し、金属層をパターン化する場合、金属層をパターン化する際に密着層もあわせてパターン化することもできる。
また、例えば密着層上に所定のパターンの金属配線を形成後、金属配線をマスクとして密着層をパターン化することもできる。
そして、ここまで説明した導電性基板を複数枚積層した積層導電性基板を製造することもできる。積層導電性基板の製造方法は、上述した導電性基板の製造方法により得られた導電性基板を複数枚積層する積層工程を有することができる。
積層工程では例えば、図2(A)、図2(B)に示したパターン化された導電性基板を複数枚積層することができる。具体的には、図5(A)、図5(B)に示したように、一方の導電性基板101の絶縁性基材111の第1の主平面111aと、他方の導電性基板102の絶縁性基材112の第2の主平面112bとが対向するように積層することにより実施できる。
積層後、2枚の導電性基板101、102は例えば接着剤等により固定することができる。
なお、一方の導電性基板101の上下を逆にして、一方の導電性基板101の絶縁性基材111の第2の主平面111bと、他方の導電性基板102の絶縁性基材112の第2の主平面112bとが対向するように積層してもよい。
メッシュ状の配線を備えた積層導電性基板とする場合、積層工程では、図5(A)、図5(B)に示したように、一方の導電性基板101に予め形成した金属配線121と、他方の導電性基板102に予め形成した金属配線122と、が交差するように積層できる。
図5(A)、図5(B)においては、直線形状にパターン化された金属配線を組み合わせてメッシュ状の配線(配線パターン)を形成した例を示しているが、係る形態に限定されるものではない。配線パターンを構成する金属配線の形状は任意の形状とすることができる。例えばディスプレイの画像との間でモアレ(干渉縞)が発生しないようメッシュ状の配線パターンを構成する配線の形状をそれぞれ、ぎざぎざに屈曲した線(ジグザグ直線)等の各種形状にすることもできる。
以上の本実施形態の導電性基板の製造方法により得られる導電性基板によれば、金属配線の上面、及び側面に黒化層が配置されているため、金属層表面での光の反射を抑制することができる。このため、ディスプレイの表示面上に配置した場合でも、ディスプレイの視認性が低下することを抑制できる。
また、本実施形態の導電性基板の製造方法により得られた導電性基板を用いて作製された積層導電性基板についても同様のことがいえる。
以下に具体的な実施例、比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(1)評価方法
まず、得られた導電性基板の評価方法について説明する。
(黒化層の形状の観察)
後述するように、以下の実施例では、上面から見た場合の形態が図2(A)、図2(A)のA−A´線での断面の形態が図3となる導電性基板を作製した。このため、作製した導電性基板について、図2(A)のA−A´線において切断し、断面を走査型電子顕微鏡(日本電子社製 型式:JSM−7001F)により観察した。そして、金属配線の上面、及び側面に黒化層が形成されているかについて確認を行った。
また、比較例においても絶縁性基材の一方の面上に複数の直線形状のパターンとなるように金属配線を形成した。このため、図2(A)のA−A´線に相当する絶縁性基材の一方の面、及び金属配線のパターンの直線方向と垂直な面で切断し、断面を走査型電子顕微鏡により観察した。
(視認性の評価)
視認性の評価方法について図7を用いて説明する。
以下の実施例、比較例で作製した導電性基板71を黒色の紙72上に載置した。なお、この際、導電性基板の金属配線、及び黒化層を形成した第1の主平面が上面となるように、すなわち、第1の主平面の反対側の面である第2の主平面が黒色の紙72と対向するように載置した。また、3波長昼白色ランプ73により、導電性基板71の表面において照度が2000lmとなるように導電性基板71に対して光を照射した。
光を照射した状態で、導電性基板71及び黒色の紙72を、図中の軸74を回転軸として、矢印75、または矢印76に沿って、導電性基板71の底面が図中の点線711、712の位置まで移動するように左右に80度ずつ徐々に動かした。そして、導電性基板71及び黒色の紙72を動かしている間に金属配線が視認できるか評価した。
なお、回転軸とした軸74は紙面と垂直方向と平行であり、導電性基板71の幅方向の中央、及び導電性基板71の底面を通る。
また、上記評価を行う際は、導電性基板71を水平に載置した際の、導電性基板71の第1の主平面の法線方向と平行な直線に沿って、すなわち図中のブロック矢印77に沿って、導電性基板71を観察した。
評価は3人で行い、3人全員が金属配線を視認できた場合には×、1人、または2人が金属配線を視認できた場合には△、金属配線を視認できた人数が0人の場合には〇と評価した。
(波長400nm以上700nm以下の光の平均反射率)
測定は、紫外可視分光光度計(株式会社 島津製作所製 型式:UV−2600)に反射率測定ユニットを設置して行った。
以下の実施例、比較例で作製した導電性基板の黒化層表面に対して、入射角5°、受光角5°として、波長400nm以上700nm以下の光を波長1nm間隔で照射して正反射率を測定し、その平均値を該導電性基板の波長400nm以上700nm以下の光の平均反射率(正反射率)とした。
(明度)
以下の実施例、比較例で作製した導電性基板の黒化層表面について、紫外可視分光光度計(株式会社 島津製作所製 型式:UV−2600)により波長400nm以上700nm以下の光を波長1nm間隔で照射して明度を測定した。
(2)試料の作製条件、評価結果
実施例、比較例として、以下に説明する条件で導電性基板を作製し、上述の評価方法により評価を行った。
[実施例1]
(密着層形成工程)
幅500mm、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)製の絶縁性基材を図6に示したロール・ツー・ロールスパッタリング装置50の巻出ロール52にセットした。なお、透明基材として用いたポリエチレンテレフタレート樹脂製の透明基材について、全光線透過率をJIS K 7361−1に規定された方法により評価を行ったところ97%であった。
そして、ロール・ツー・ロールスパッタリング装置50により、絶縁性基材の一方の主平面に密着層を成膜した。密着層としては酸素を含有するNi−Cu合金層を形成した。
密着層の成膜条件について説明する。
図6に示したロール・ツー・ロールスパッタリング装置50のスパッタリングカソード54a〜54dにニッケル65wt%と、銅35wt%とを含有するニッケル−銅合金のターゲットを接続した。
ロール・ツー・ロールスパッタリング装置50のヒーター56を100℃に加熱し、絶縁性基材を加熱し、絶縁性基材中に含まれる水分を除去した。
続いて筐体51内を1×10−4Paまで排気した後、筐体51内にアルゴンガスと酸素ガスとを導入した。アルゴンガス、酸素ガスを筐体51内に供給し、筐体51内の圧力が2Paになるように調整した。
そして、絶縁性基材を巻出ロール52から毎分2mの速さで搬送しながら、スパッタリングカソード54a〜54dに接続したスパッタリング用直流電源より電力を供給し、スパッタリング放電を行い、絶縁性基材上に所望の密着層を連続成膜した。係る操作により絶縁性基材の一方の主平面上に密着層を厚さ20nmになるように成膜した。
(金属配線形成工程)
金属配線形成工程では、金属層形成ステップ、及びパターン化ステップを実施した。また、金属層形成ステップでは、金属薄膜層形成ステップと、金属めっき層形成ステップと、を実施した。
まず、金属薄膜層形成ステップについて説明する。
金属薄膜層形成ステップでは、密着層上にロール・ツー・ロールスパッタリング装置50により金属薄膜層を成膜した。金属薄膜層としては銅薄膜層を形成した。
金属薄膜層形成ステップでは、図6に示したロール・ツー・ロールスパッタリング装置50のスパッタリングカソード54a〜54dに銅のターゲットを接続して成膜し、基材としては、密着層形成工程で絶縁性基材上に密着層を成膜したものを用いた。
金属薄膜層の成膜時の条件としては、以下の2点と上述のようにターゲットを変更した点以外は密着層形成工程と同様にして実施した。
筐体51内を1×10−4Paまで排気した後、アルゴンガスを導入し、筐体51内の圧力が1.3Paになるように調整した点。
金属薄膜層である銅薄膜層を膜厚が150nmになるように成膜した点。
次に、金属めっき層形成ステップにおいては、金属めっき層として銅めっき層を形成した。電気めっき法により、銅めっき層を厚さが2.0μmになるように成膜した。
次にパターン化ステップについて説明する。
金属層形成ステップで形成した金属層の上面、すなわち金属層の絶縁性基材と対向する面とは反対側の面上にマスクを形成した(マスク配置ステップ)。
この際、マスクには、エッチングを行った場合に、密着層及び金属層について、図2(A)に示したように互いに平行な複数の直線形状のパターンが残るように開口部を形成した。
そして、マスクの上面からエッチング液を供給することにより、金属層、及び密着層をエッチングした(エッチングステップ)。
なお、金属層をエッチングして形成した金属配線は上述の様に複数の直線形状のパターンとなるように形成しており、各直線形状のパターンは幅3μm、長さ500mmとなるように形成している。また、隣接する直線形状のパターン間の幅は0.2mmとしている。
(黒化層形成工程)
めっき液としては、NiとSnとを含有し、めっき液中のNiと、Snとが重量比でNi:Sn=3:1となるように調製した黒色無電解めっき液を用い、無電解めっき法により、金属配線の上面、及び側面に黒化層を厚さが60nmとなるように成膜した。
以上の工程により、絶縁性基材の金属配線等を配置した面、すなわち第1の主平面11aと垂直な方向に沿って、絶縁性基材の上面側から導電性基板を見た場合の構成が図2(A)となり、図2(A)のA−A´線における断面図が図3の構成となる導電性基板を得た。
得られた導電性基板について、上述の黒化層の形状の観察、視認性の評価、波長400nm以上700nm以下の光の平均反射率、明度を評価した。
黒化層の形状の観察を行ったところ、金属配線の上面、及び側面に黒化層が形成されていることを確認できた。その他の評価結果については表1に示す。
また、ここまで説明した方法と同様の手順により、同じ構成の導電性基板をもう1枚作製した。
そして、作製した2枚の導電性基板を図5(A)、図5(B)に示したように積層し、両導電性基板を接着剤により固定することによって積層導電性基板を作製した。なお、図5(A)、図5(B)においては密着層が設けられていない例が示されているが、本実施例では絶縁性基材111と金属配線121との間、及び絶縁性基材112と金属配線122との間に、金属配線121、金属配線122と同じパターンにパターン化された密着層が配置されている。
[実施例2]
黒化層形成工程において、めっき液を変更した点以外は実施例1と同様にして導電性基板を作製した。
めっき液としては、Niを含有する無電解めっき液を用いた。
得られた導電性基板について、上述の黒化層の形状の観察、視認性の評価、波長400nm以上700nm以下の光の平均反射率、明度を評価した。
黒化層の形状の観察を行ったところ、金属配線の上面、及び側面に黒化層が形成されていることを確認できた。その他の評価結果については表1に示す。
また、同様の手順により、同じ構成の導電性基板をもう1枚作製し、2枚の導電性基板を用いて実施例1の場合と同様にして積層導電性基板を作製した。
[実施例3]
黒化層形成工程において、めっき液を変更した点以外は実施例1と同様にして導電性基板を作製した。
めっき液としては、NiとSとを含有し、めっき液中のNiと、Sとが重量比でNi:S=5:1となるように調製した黒色無電解めっき液を用いた。
得られた導電性基板について、上述の黒化層の形状の観察、視認性の評価、波長400nm以上700nm以下の光の平均反射率、明度を評価した。
黒化層の形状の観察を行ったところ、金属配線の上面、及び側面に黒化層が形成されていることを確認できた。その他の評価結果については表1に示す。
また、同様の手順により、同じ構成の導電性基板をもう1枚作製し、2枚の導電性基板を用いて実施例1の場合と同様にして積層導電性基板を作製した。
[実施例4]
黒化層形成工程において、めっき液を変更した点以外は実施例1と同様にして導電性基板を作製した。
めっき液としては、NiとSとSnとを含有し、めっき液中のNiと、Sと、Snとが重量比で5:1:2となるように調製した黒色無電解めっき液を用いた。
得られた導電性基板について、上述の黒化層の形状の観察、視認性の評価、波長400nm以上700nm以下の光の平均反射率、明度を評価した。
黒化層の形状の観察を行ったところ、金属配線の上面、及び側面に黒化層が形成されていることを確認できた。その他の評価結果については表1に示す。
また、同様の手順により、同じ構成の導電性基板をもう1枚作製し、2枚の導電性基板を用いて実施例1の場合と同様にして積層導電性基板を作製した。
[実施例5]
黒化層形成工程において、めっき液を変更した点以外は実施例1と同様にして導電性基板を作製した。
めっき液としては、NiとSとCoとを含有し、めっき液中のNiと、Sと、Coとが重量比でNi:S:Co=7:2:1となるように調製した黒色無電解めっき液を用いた。
得られた導電性基板について、上述の黒化層の形状の観察、視認性の評価、波長400nm以上700nm以下の光の平均反射率、明度を評価した。
黒化層の形状の観察を行ったところ、金属配線の上面、及び側面に黒化層が形成されていることを確認できた。その他の評価結果については表1に示す。
また、同様の手順により、同じ構成の導電性基板をもう1枚作製し、2枚の導電性基板を用いて実施例1の場合と同様にして積層導電性基板を作製した。
[比較例1]
金属配線形成工程の金属層形成ステップまでは、実施例1と同様にして実施した。そして、金属層形成ステップ後、パターン化ステップを実施せずに、黒化層形成工程を実施した。
黒化層形成工程では、金属配線形成工程の金属層形成ステップで形成した金属層の上面、すなわち金属層の絶縁性基材と対向する面とは反対側の面、の全面に乾式めっき法により黒化層を形成した。
黒化層形成工程は、基材として、絶縁性基材の一方の面上に、密着層、及び金属層が形成された基材を用いた点を除いては、実施例1で既述の密着層形成工程の場合と同様にして成膜した。
絶縁性基材上に、密着層、金属層、黒化層を形成した後、密着層、金属層、及び黒化層を同じパターンとなるようにパターン化した。パターン化に当たってはまず、黒化層の上面、すなわち黒化層の金属層と対向する面とは反対側の面上にマスクを形成した(マスク配置ステップ)。
この際、マスクには実施例1のパターン化ステップで形成したマスクと同様の開口部を形成した。
そして、マスクの上面からエッチング液を供給することにより、黒化層、金属層、及び密着層をエッチングした(エッチングステップ)。
なお、金属層をエッチングして形成した金属配線は複数の直線形状のパターンとなるように形成しており、各直線形状のパターンは幅3μm、長さ500mmとなるように形成している。また、隣接する直線形状のパターン間の幅は0.2mmとしている。
以上の工程により得られた導電性基板について、上述の黒化層の形状の観察、視認性の評価、波長400nm以上700nm以下の光の平均反射率、明度を評価した。
黒化層の形状の観察を行ったところ、金属配線の上面のみに黒化層が形成されていることを確認できた。その他の評価結果については表1に示す。
表1に示した結果によると、金属配線の上面のみに黒化層を形成した比較例1の導電性基板においては、視認性の評価が×となることが確認できた。これに対して、金属配線の上面、及び側面に黒化層を形成した、実施例1〜実施例5においては、視認性の評価が〇となることが確認できた。
これは、金属配線の側面にも黒化層を形成することで、金属配線側面での光の反射を抑制することができたためといえる。
また、実施例1〜実施例5においては、いずれも波長400nm以上700nm以下の光の平均反射率が35%以下となっており、黒化層により金属配線表面での光の反射率を抑制できていることが確認できた。
特に黒化層がニッケル及び硫黄を含有する実施例3〜5においては、波長400nm以上700nm以下の光の平均反射率が21.2%、11.1%、18.3%となっており、特に金属配線表面での光の反射を抑制する効果が高いことを確認できた。
さらに実施例1〜実施例5においては、黒化層の表面の明度(L*)は65以下であることが確認できた。従って、目立ちにくい色調の黒化層を形成できたことを確認できた。