JP2016133038A - 送風装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】回転騒音に関わるピーク騒音レベルを低減可能なファンシュラウドを備えた送風装置を提供する。
【解決手段】送風装置1は、ラジエータに空気を通風させる軸流型のファン3と、ファン3を回転可能に支持するファンシュラウド2と、を備える。ファンシュラウド2は、ファン3の外周との間に隙間をあけてファン3の外周を取り囲み回転軸方向に延びるリング部21と、ファンシュラウド2の外周縁22とリング部21とを連絡し、吸入される空気をリング部21の内側に導く導風部23と、を有する。ファンシュラウド2は、外周縁22のうち、リング部21の内周縁21aまでの距離が他の部分に比べて短い特定縁部22abを有する。ファンシュラウド2は、ファン3の先端における上流側の端部よりも下流側に位置する通路であり、かつ特定縁部22abの内側部位(狭小部23ab)から回転方向に延びるように設けられる逆流導入通路24を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、軸流ファンの外側を囲むように配されるファンシュラウドを備える送風装置に関する。
特許文献1には、自動車のラジエータを冷却するための軸流ファンを支持するファンシュラウドが記載されている。このファンシュラウドは、軸流ファンの外径側を取り囲むリング部とファンシュラウドの外周縁との間隔が、周方向について長い部分と短い部分とを有するように形成されている。例えば、導風部を形成するファンシュラウドの外周縁において、上部及び下部はリング部との間に形成される導風部の面積が小さく、左右の端部はリング部との間に形成される導風部の面積が大きくなっている。
特許第5549686号公報
近年、車両における静音性に係る要求の高さにより、ファンの回転騒音に関するピーク音、例えば1次成分やn次成分のピーク音を低減することが求められている。なお、回転騒音は、回転体とその周辺の空気との干渉現象により著しく増大し、単一周波数成分において特に高い音圧となることが知られている。
特許文献1のように、ファンシュラウドの導風部に広い部分と狭い部分とが形成されている場合には、ファンのブレードが回転運動において広い部分とを通るとき狭い部分を通るときとで、リング部の内側に流入する主流空気の回転軸方向速度が大きく異なる。この主流空気は、導風部の広い部分では回転軸に対して大きな角度をもった向きに流入し、狭い部分では回転軸に対してあまり傾かない向きに流入する。このため、主流空気の回転軸方向速度、すなわち回転軸に沿う方向の速度ベクトルは、狭い部分の方が大きくなる。
また、ファンのブレードに対して上流側と下流側とで圧力差が生じることから、ブレードの下流側には、回転軸に沿って上流側に流れる逆流空気が発生する。この逆流空気と主流空気との衝突によって渦が発生する。この渦は、導風部の狭い部分では主流空気の回転軸方向速度が大きいため、ブレードよりも下流側が発生しやすく、広い部分では回転軸方向速度が小さいため、ブレードよりも上流側が発生しやすい。これにより、広い部分ではファンシュラウドに対する渦の干渉の影響は小さいが、狭い部分ではファンシュラウドに対する渦の干渉の影響が大きくなる。したがって、狭い部分では、渦の干渉によってシュラウド表面における負圧場が発達するため、ブレードが通過する毎にn次成分のピーク音が増加し、回転騒音が発生するという問題がある。
また、発明者は、シュラウド表面における圧力分布を求めた数値解析の実施によっても、前述したように狭い部分の方が広い部分よりも負圧場が発達し、リング部周囲の周方向において非常に不均一な圧力分布が形成されることを確認している。
以上のように、ファンシュラウドの導風部に沿ってリング部の内側へ流れる空気は、リング部周囲に設けられる導風部の大きさとファンのブレードとの位置関係によって特有の流れを形成する。ファンシュラウドを有する送風装置においては、リング部の内側への主流空気と逆流空気との関係に起因する騒音を低減することが重要な課題となっている。
そこで本発明は、前述の課題に鑑みてなされたものであり、回転騒音に関わるピーク騒音レベルを低減可能なファンシュラウドを備えた送風装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。また、特許請求の範囲及びこの項に記載した括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
開示する送風装置に係る発明のひとつは、複数のブレード(30)を有して熱交換器(4)に空気を通風させる軸流型のファン(3)と、ファンを回転可能に支持するファンシュラウド(2)と、を備え、
ファンシュラウドは、ファンの外周との間に隙間をあけてファンの外周を取り囲みファンの回転軸方向に筒状に延びるリング部(21)と、ファンシュラウドの外周縁(22)とリング部の内周縁とを連絡する部分であってファンにより吸入される空気をリング部の内側に導く導風部(23)と、を有し、
ファンシュラウドは、ファンシュラウドの外周縁のうち、リング部の内周縁(21a)までの距離が他の部分に比べて短い特定縁部(22ab,22cd)を有し、
ファンシュラウドは、ファンの先端における上流側の端部(31a)よりも下流側に位置する通路であって導風部における特定縁部の内側部位(23ab,23cd)からファンの回転方向に延びるように設けられる逆流導入通路(24)を有し、逆流導入通路には、ファンの回転時に、空気が下流側に位置するファンシュラウドの裏側から表側に向けて逆流することを特徴とする。
前述したように、この発明に係る送風装置においては、ファンシュラウドの外周縁のうちリング部の内周縁までの距離が他の部分に比べて短い特定縁部の内側部位、つまり導風部における狭い部分では、渦の干渉によってシュラウド表面に負圧場が発達しやすい。当該部分では、この負圧場の発達によってブレードが通過する毎にピーク音が増加し、回転騒音の発生が顕著になる。これは、ブレードの上流側と下流側との圧力差に起因するファンの下流側からの逆流空気とリング部の内側に流入する主流空気とが衝突して渦が発生し、シュラウドに干渉することで引き起こされる。
この発明によれば、シュラウドの表側へ流れる逆流空気が、特定縁部の内側部位からファンの回転方向に延びる逆流導入通路を通して加わるため、逆流空気の促進により逆流空気と主流空気とをさらに上流側で衝突させることが可能になる。これにより、当該衝突により生じる渦がシュラウドに干渉することを軽減できるので、導風部の狭い部分におけるシュラウド表面の負圧場の発達を抑制することができる。この作用によれば、ピーク音を低減できるので、ファンの回転騒音を低減できる送風装置を提供することができる。
本発明の第1実施形態に係る送風装置の背面図である。 第1実施形態の送風装置に関する部分断面図である。 図1のIII−III断面を矢印方向に見たときの部分断面図である。 逆流を促進するための逆流導入通路を示す一部破断した斜視図である。 逆流導入通路が設けられていない部位の導風部における部分断面図である。 比較例として示す従来の導風部であり、ファンシュラウドの外周縁とリング部までの距離が短い従来の狭い導風部における部分断面図である。 第2実施形態における逆流導入通路を示した部分断面図である。 第2実施形態の逆流導入通路を示す一部破断した部分斜視図である。
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合わせることも可能である。
(第1実施形態)
本発明の一実施形態である第1実施形態の送風装置1について図1〜図6にしたがって説明する。第1実施形態では、送風装置の一例として、車両にエンジン等を冷却するために搭載されるラジエータに対して送風を提供する装置について説明する。
図1に示すように、送風装置1は、1個の軸流型のファン3と、ファン3を回転駆動するモータを支持してファン3が吸入する空気を導くファンシュラウド2と、を備える。ファン3は、回転の中心となるボス部と、ボス部から放射状に延びる複数のブレード30と、を備える。複数のブレード30は、その一端はボス部と一体であり、他端は円形のリング部31と一体になるように構成されている。ファン3は、回転動力を与えるモータを備えている。モータは、回転軸であるモータシャフトを有する。モータシャフトとボス部とは固定部材により連結されている。モータは、電動式であり、例えばフェライト式の直流モータで構成される。モータには、アーマチャへ電力を供給するためのハーネス部が接続され、このハーネス部はコネクタ等を介して車両のバッテリに接続されている。
ファン3は、熱交換器の一例であるラジエータ4よりも空気流れの下流側に配置されている。これにより、ファン3は、モータが回転駆動されることにより、車両前面のグリル側からエンジン側に向けて外気を吸引する。
ファンシュラウド2は、エンジン冷却水の熱を放熱させるためのラジエータ4に冷却風を提供するファン3の外周を覆うようにファン3を回転可能に支持する部材である。ファンシュラウド2は、ファン3のモータを支持固定するとともに、ラジエータ4に一体に取り付けられる。例えば、ファンシュラウド2は、その鉛直方向下部及び鉛直方向上部にねじ等が挿通可能な貫通孔を備えた下側取付部及び上側取付部を有する。ファンシュラウド2は、この下側取付部及び上側取付部のそれぞれの貫通孔に挿通したねじをラジエータ4に設けられた各雌ねじ部に螺合することにより、ラジエータ4に一体に取り付けられる。
ファンシュラウド2は、矩形状であり、ラジエータ4において熱交換が行われる熱交換部に対して冷却風を通過させるファン3を少なくとも1個配置できる構成を有している。ラジエータ4の熱交換部は、例えば、それぞれの内部を冷却水が流通する複数本のチューブと、チューブ間にチューブと一体に設けられるアウターフィンと、を備えて構成される。エンジンからの冷却水は、ウォータポンプが駆動されることによってラジエータ回路を通ってラジエータ4の入口側タンクに流入した後、熱交換部のチューブ内を流れる。そして、冷却水は、ファン3により提供される車室外空気との間で熱交換されて冷却された後、出口側タンクから流出してエンジンに戻る。
ファンシュラウド2は、全体として正面視で矩形状を呈する輪郭形状である。ファンシュラウド2は、ファン3の先端との間に間隔を開けてファン3の外周を取り囲むリング部21と、ファン3により吸入される空気を誘導する導風部23と、を備える。ファンシュラウド2は、上下方向の長さが左右方向の長さよりも短い矩形状であり、リング部21の周囲に設けられる導風部23の表面積は、リング部21の上部及び下部が左部及び右部よりも小さく設定されている。
導風部23は、ファンシュラウド2の外周縁22とリング部21の内周縁とを連絡する部分であり、ファン3により吸入される空気をリング部21の内側に誘導する機能がある。したがって、導風部23は、ファン3の前方から吸い込まれる主流空気をファンシュラウド2の外周縁22からリング部21の内側に向けてスムーズに集める風洞の機能を果たす。また、ファンシュラウド2は、ファン3のモータが取り付けられるモータ取付部25と、モータ取付部から放射状に複数本延設されるモータステーと、を備える。リング部21は、ファン3の5枚のブレード30の外周(ファンの外周)を囲む円形状の筒状体であり、モータステーの放射方向の端部と一体に形成され、モータステーを介してモータ取付部を支持する。
導風部23は、ファンシュラウド2の外周縁22とリング部21との間を接続する部分であって滑らかに傾斜、または湾曲する形状をなしている。導風部23は、ラジエータ4の熱交換部の全面に外気を効率的に吸い込む機能を果たす。外周縁22におけるラジエータ側に位置する端部からリング部21の内周縁21aに至る導風部23によって形成される部分は、風洞部を構成し、外気の効率的な吸込み気流の形成に寄与する。ファンシュラウド2は、例えば樹脂成形部材であり、所定の金型を用いた射出成形等によって成形される。この樹脂成形部材は、例えば、ポリプロピレン樹脂等にガラス繊維やタルク材を含有することによって強度が高められている。
図1に図示するように、ファンシュラウド2の外周縁22は、4個の角部22a、角部22b、角部22c、角部22dを有する矩形状である。上部で隣り合う角部22aと角部22bの間には、リング部21までの距離が当該角部間で最も短い特定縁部22abが設けられる。特定縁部22abは、角部22aと角部22bの間において、リング部21までの距離が最も短い外周縁22の一部である。下部で隣り合う角部22cと角部22dの間には、リング部21までの距離が当該角部間で最も短い特定縁部22cdが設けられる。特定縁部22cdは、角部22cと角部22dの間において、リング部21までの距離が最も短い外周縁22の一部である。また、特定縁部22abは、リング部21の内周面形状に沿う形状であり、角部22aや角部22bよりも上方向に突出する位置にある。また、特定縁部22cdは、リング部21の内周面形状に沿う形状であり、角部22cや角部22dよりも下方向に突出する位置にある。
また、角部22aや角部22bは、角部22aと角部22bを結ぶ外周縁22の一部において、リング部21までの距離が最も長く、特定縁部22abよりも長い部分である。したがって、特定縁部22abとリング部21とを連絡する導風部23の一部には、隣り合う角部22aと角部22bの間において最も表面積の小さい領域の一つである狭小部23abが設けられている。狭小部23abは、導風部23における特定縁部22abの内側部位に相当する。
角部22aとリング部21とを連絡する導風部23の部分には、狭小部23abに対して表面積が広大な領域の一つである広大部23aが設けられている。また、角部22bとリング部21とを連絡する導風部23の部分には、狭小部23abに対して表面積が広大な領域の一つである広大部23bが設けられている。広大部23aと狭小部23abとは、空気流れ上流側の面が滑らかな表面形状によって連絡されて一体に形成されている。狭小部23abと広大部23bとは、空気流れ上流側の面が滑らかな表面形状によって連絡されて一体に形成されている。
また、角部22bや角部22cは、角部22bと角部22cを結ぶ外周縁22の一部において、リング部21までの距離が最も長い部分である。角部22bと角部22cの中間に位置する中間縁部22bcとリング部21とを連絡する導風部23の一部には、隣り合う角部22bと角部22cの間において最も表面積の小さい狭小部23bcが形成されている。角部22cとリング部21とを連絡する導風部23の部分には、狭小部23bcに対して表面積が広大な領域である広大部23cが形成されている。広大部23bと狭小部23bcとは、空気流れ上流側の面が滑らかな表面形状によって連絡されて一体に形成されている。狭小部23bcと広大部23cとは、空気流れ上流側の面が滑らかな表面形状によって連絡されて一体に形成されている。
また、角部22cや角部22dは、角部22cと角部22dを結ぶ外周縁22の一部において、リング部21までの距離が最も長く、特定縁部22cdよりも長い部分である。したがって、特定縁部22cdとリング部21とを連絡する導風部23の一部には、隣り合う角部22cと角部22dの間において最も表面積の小さい領域の一つである狭小部23cdが設けられている。狭小部23cdは、導風部23における特定縁部22cdの内側部位に相当する。角部22dとリング部21とを連絡する導風部23の部分には、狭小部23cdに対して表面積が広大な領域の一つである広大部23dが形成されている。広大部23cと狭小部23cdとは、空気流れ上流側の面が滑らかな表面形状によって連絡されて一体に形成されている。狭小部23cdと広大部23dとは、空気流れ上流側の面が滑らかな表面形状によって連絡されて一体に形成されている。
また、角部22dや角部22aは、角部22dと角部22aを結ぶ外周縁22の一部において、リング部21までの距離が最も長い部分である。角部22dと角部22aの中間に位置する中間縁部22adとリング部21とを連絡する導風部23の一部には、隣り合う角部22dと角部22aの間において最も表面積の小さい狭小部23adが形成されている。広大部23dや広大部23aは狭小部23adに対して表面積が広大な領域である。広大部23dと狭小部23adとは、空気流れ上流側の面が滑らかな表面形状によって連絡されて一体に形成されている。狭小部23adと広大部23aとは、空気流れ上流側の面が滑らかな表面形状によって連絡されて一体に形成されている。
ファンシュラウド2は、下流側に位置するファンシュラウド2の裏側から表側に向けて空気が逆流する逆流導入通路24を有する。逆流導入通路24は、ファン3の回転時に生じる主流空気とは逆向きの空気をファンシュラウド2の後方から前方に向けて引き込むための通路である。逆流導入通路24は、図2及び図3に図示するように、ファンシュラウド2に設けられ、ファン3の外周における上流側の端部であるファン前縁31aよりも下流側に位置する通路である。さらに逆流導入通路24は、図1及び図4に図示するように、特定縁部22abの内側部位である狭小部23abや、特定縁部22cdの内側部位である狭小部23cdに少なくとも設けられる。
逆流導入通路24の周方向長さ、換言すれば回転方向長さは、送風装置1の風量、狭小部と広大部の大小関係、回転騒音の許容レベル等に応じて設定される。逆流導入通路24は、図1に図示するような周方向長さに設定されることが好ましい。すなわち、ブレード30における回転方向Rのブレード前縁30aが、逆流導入通路24における回転方向Rとは反対側の後縁部24bに重なるとき、回転方向Rに先行する一つ前に位置するブレード後縁30bが逆流導入通路24に重ならない。
つまり、任意のブレード30のブレード前縁30aと、回転方向Rに一つ前に先行するブレード30のブレード後縁30bとの周方向についての間隔は、逆流導入通路24の前縁部24aと後縁部24bとの周方向についての間隔と同等またはそれ以上である。逆流導入通路24の周方向長さは、このような関係を満たす長さに設定されることが好ましい。このように、回転方向Rに先行する一つ前に位置するブレード30のブレード後縁30bが逆流導入通路24の内側に重なっている間は、一つ後ろのブレード30のブレード前縁30aが逆流導入通路24の内側に重ならないようになっている。
また、図4に図示するように、外周縁22の内周面は、逆流導入通路24の後縁部24bから前縁部24aにかけて、回転軸に対する傾き角度が徐々に大きくなるように傾斜する。つまり、外周縁22の内周面は、特定縁部22abや特定縁部22cdから回転方向に移動するにつれて、主流空気の流入角度が回転軸に対して大きく傾くようになり、主流空気の回転軸方向速度は小さくなる。また、外周縁22の内周面は、特定縁部22abや特定縁部22cdから回転方向に移動するにつれて、広大部の表面になめらかにつながるようになる。
逆流導入通路24は、周方向(回転方向R)に所定の長さを有するようにファンシュラウド2を貫通するスリット状の貫通穴240によって形成される通路である。貫通穴240は、図3及び図4に図示するように、リング部21と外周縁22との間を連絡する部分を貫通するように設けることができる。さらに貫通穴240を設ける部位がファン3の回転軸に対して直交する方向に沿う面を構成する場合には、図3のように、貫通穴240を通して導入する逆流空気を主流空気の逆向きに流すことが可能になり、逆流空気と主流空気を効率的に衝突させることができる。これにより、両方の空気の衝突によって起こる渦を、より前方、すなわち空気流れの上流で発生させることができるので、ファンシュラウド2に対する渦の干渉度合いを小さくできる。したがって、狭小部23abや狭小部23cdにおいて発生しやすい負圧場の発達を抑えることが可能な空気流れを形成できる。
次に発明者らの鋭意研究によって判明した現象について、図3、図5、図6を参照しながら以下に説明する。送風装置1が運転されてファン3が回転すると、外気はラジエータ4の熱交換部に引き込まれる。熱交換部に引き込まれる空気は、チューブやアウターフィンの周囲を流れて、熱交換部を回転軸に沿う方向に通過する。
このとき、導風部23の表面に沿ってリング部21に向かって流れる空気は、狭小部23abや狭小部23cdを通るものと、広大部23a、広大部23b、広大部23c、及び広大部23dを通るものとで、大きく異なる流れを形成する。各広大部を通る空気は、図5に図示するように、回転軸に対して大きく傾く角度をなす表面の各広大部に沿って流れるため、主流空気の流入角度が回転軸に対して大きく傾くようになる。一方、各狭小部を通る空気は、図5や図6に図示するように、回転軸に対してあまり傾かない表面の狭小部に沿って流れるため、主流空気の流入角度が回転軸に沿うようになる。
各広大部を通ってくる主流空気は、流入角度が回転軸に対して大きく傾くため、図5において破線で示す主流空気の回転軸方向速度は小さくなる。また、ファン3のブレード30においては上流側と下流側とで圧力差が生じることによる逆流空気は、回転軸に沿うようにブレード30の下流側から上流側に流れる。この逆流空気は、リング部21の内周面に沿って回転軸に沿うように流れ、主流空気と衝突する。このときの衝突位置は、主流空気の回転軸方向速度が小さいので、図5において二点鎖線で示すように、ファン3のファン前縁31a寄りであると考えられる。したがって、空気の衝突に起因する渦は、ファンシュラウド2に対する干渉度合いが小さい場所で発生するものと想定できる。このため、各広大部において、渦に起因するシュラウド表面の負圧場は発達しにくいと考えられる。
比較例として図6に図示する従来の導風部における主流空気と逆流空気との衝突について説明する。前述したように、従来のファンシュラウドの場合は、主流空気が特定縁部121abや特定縁部121cdに沿って回転軸に沿うように流入する。このため、回転軸方向速度が大きく、主流空気と逆流空気との衝突が狭小部123abや狭小部123cdの表面に近い場所で発生すると考えられる。したがって、空気の衝突による渦は、ファンシュラウド2に対する干渉度合いが大きい場所で発生するものと想定でき、従来のファンシュラウドにおいては、特定縁部の内側部位でシュラウド表面の負圧場が発達しやすいと考えられる。
このように、従来のファンシュラウドにおいては、特定縁部の内側部位で負圧場が発達し、広大部で負圧場が発達しにくいため、リング部周囲の周方向において非常に不均一な圧力分布が形成されることになる。この不均一な圧力分布をもたらす負圧場の発達は、送風装置に特有の空気流れに起因する回転騒音の発生を引き起こしている。
そこで、第1実施形態の送風装置1は、逆流空気をファン3のファン前縁31a側に積極的に導入する逆流導入通路24を備えることにより、渦の発生場所をファンシュラウド2への渦の干渉度合いが小さくなる箇所に移動させることができる。すなわち、図3に図示するように、逆流空気がファンシュラウド2の裏側から貫通穴240を通過してファン前縁31a側に向かって流れるため、従来のファンシュラウドよりも逆流空気量を増加させることができる。これにより、主流空気と逆流空気との衝突が狭小部23abや狭小部23cdの表面から離れた場所で発生するようになる。したがって、空気の衝突による渦は、逆流導入通路24を有しない場合よりもファンの前方寄り、つまりファンシュラウド2に対する干渉度合いが小さい場所で発生させることができる。
次に、第1実施形態の送風装置1がもたらす作用効果について述べる。ファンシュラウド2は、ファン3の外周との間に隙間をあけてファン3の外周を取り囲み回転軸方向に延びるリング部21と、外周縁22とリング部21とを連絡して、空気をリング部21の内側に導く導風部23と、を有する。ファンシュラウド2は、外周縁22のうち、リング部21の内周縁21aまでの距離が他の部分に比べて短い特定縁部22ab、特定縁部22cdを有する。ファンシュラウド2は、ファン3の先端における上流側の端部よりも下流側に位置する通路であり、かつ特定縁部22abの内側部位や特定縁部22cdの内側部位から回転方向に延びるように設けられる逆流導入通路24を有する。
この構成によれば、ファンシュラウド2の表側へ流れる逆流空気を、特定縁部22abの内側部位や特定縁部22cdの内側部位からファン3の回転方向に延びる逆流導入通路24を通して増量することができる。このため、従来に比較して、逆流空気の勢いが増し、逆流空気と主流空気とをさらに上流側で衝突させることが可能になる。これにより、衝突により生じる渦がファンシュラウド2に干渉することを軽減できるので、狭小部23abや狭小部23cdにおける負圧場の発達を抑制することができる。したがって、ブレード30が通過する毎に発生するn次成分のピーク音を低減できるので、ファン3の回転騒音を低減可能な送風装置1が得られる。
発明者は、第1実施形態の送風装置1と逆流導入通路を備えない従来の送風装置とについて騒音レベルを測定した実験結果を確認している。発明者は、これらの各送風装置について、ラジエータを一体に取り付けた状態で、モータに同一の電圧を印加し、ファンシュラウドの外周縁の位置から1m空気流れ下流へ離れ、ファンの中心と同じ高さに設置したマイクで騒音を測定した。なお、騒音値はA特性周波数重み付けを用いて測定したものである。
この実験結果によると、第1実施形態の送風装置1の方が、従来の送風機の場合よりも、各次数に対応する周波数域においてピーク値が3dB以上低下するという効果を確認できた。このように第1実施形態の送風装置1によれば、人の聴覚に対して、不快な騒音であると感じられやすい低周波域でのピーク音のレベルを低減することができるので、人に不快感を与えうる回転騒音を低下することができる。
また、ファンシュラウド2は、外周縁22において複数箇所の特定縁部を備える。逆流導入通路24は、導風部23におけるすべての特定縁部の内側部位からファン3の回転方向に延びるように設けられる。この構成によれば、リング部21の周囲に存在する複数箇所の特定縁部のすべてにおいて逆流導入通路24が設けられる。これにより、リング部21の周囲において発生する可能性の高い複数箇所の負圧場を改善して、リング部21の周囲の圧力分布を均一な状態な近づけることができる。したがって、リング部21の周囲で想定しうる回転騒音を確実に防止できる送風装置1が得られる。
また、ブレード30における回転方向の前縁部(ブレード前縁30a)が逆流導入通路24の後縁部24bに重なる位置にあるとき、回転方向に先行する一つ前のブレード30の後縁部(ブレード後縁30b)が逆流導入通路24に重ならない。逆流導入通路24の周方向長さは、このような関係となる長さに設定される。
この構成によれば、一つの逆流導入通路24に対して一つのブレード30が半径方向に重なるように構成できる。このため、ファン3の回転に伴って一つの逆流導入通路24とブレード30とが重なっていく長さの変化を常に一定の状態に保つことができる。これにより、ファン3の全体として回転時における逆流導入通路24との重なり度合いを一定に調節することができる。したがって、ブレード30が逆流導入通路24を通過するごとに、主流空気と逆流空気との衝突状態を安定的に維持可能であり、回転騒音抑制の効果を安定的に提供することができる。
また、逆流導入通路24は、ファンシュラウド2を貫通するスリット状の貫通穴240によって形成される通路である。この構成によれば、ファンシュラウド2の強度低下を抑えた逆流導入通路24を提供できる。
(第2実施形態)
第2実施形態では、第1実施形態の他の形態である逆流導入通路24について図7及び図8を参照して説明する。第2実施形態において、第1実施形態に係る図面と同一符号を付した構成部品及び説明しない構成は、第1実施形態と同様であり、同様の作用効果を奏するものである。第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分のみ説明する。
図7及び図8に示すように、第2実施形態の逆流導入通路24は、リング部21の下流端部に形成された切り欠き状の開口部241によって形成される。
第2実施形態の逆流導入通路24によれば、リング部21の下流端部から上流に向かった広範囲において逆流空気を取り込むことができる。したがって、広範囲にわたって逆流空気が流れるので、主流空気との衝突度合いの緩和が図れ、渦の顕著な発生を抑制できる送風装置1が得られる。
(他の実施形態)
以上、開示された発明の好ましい実施形態について説明したが、開示された発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、種々変形して実施することが可能である。上記実施形態の構造は、あくまで例示であって、開示された発明の技術的範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。開示された発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
前述の実施形態において、ファンシュラウド2は、上下方向の長さが左右方向の長さよりも短い横長の矩形状であるが、このような形状に限定されない。ファンシュラウド2は、縦長の矩形状でもよいし、正方形状や多角形状であってもよい。
前述の実施形態において逆流導入通路24は、狭小部23ab、狭小部23cdのいずれかに設けるようにしてもよい。この場合、逆流導入通路24は、狭小部23ab、狭小部23cdのいずれかに少なくとも設けられ、さらに狭小部23ab、狭小部23cdのいずれかからファン3の回転方向に延びるように設けられる。
前述の実施形態の送風装置1は、車両のエンジン冷却水を冷却するためのラジエータ4に対して冷却風を提供する装置であるが、本発明はこの実施形態に限定して適用されるものではない。例えば、空調装置、給湯装置等の室外機に搭載されて冷却風を提供する装置、コンピュータ、電子部品等を冷却する冷却風を提供する装置等に適用することが可能である。
前述の実施形態の送風装置1は、ラジエータ4よりも空気流れの下流に配置されているが、この形態に限定するものではない。例えば、送風装置1が吹き出した空気を熱交換器等に供給するように配置されるものであってもよい。
前述の実施形態の送風装置1における逆流導入通路24は、実施形態で説明した形状、個数や設置位置に限定されるものではない。
1…送風装置
2…ファンシュラウド
3…ファン、 4…ラジエータ(熱交換器)
21…リング部、 21a…内周縁
22…外周縁、 22ab,22cd…特定縁部、
23ab,23cd…狭小部(内側部位)、 23…導風部
24…逆流導入通路、 24b…後縁部、
30…ブレード、 30a…ブレード前縁(前縁部)、30b…ブレード後縁(後縁部)、
31a…ファン前縁(上流側の端部)
240…貫通穴(逆流導入通路)、 241…開口部(逆流導入通路)

Claims (5)

  1. 複数のブレード(30)を有して熱交換器(4)に空気を通風させる軸流型のファン(3)と、前記ファンを回転可能に支持するファンシュラウド(2)と、を備え、
    前記ファンシュラウドは、前記ファンの外周との間に隙間をあけて前記ファンの外周を取り囲み前記ファンの回転軸方向に筒状に延びるリング部(21)と、前記ファンシュラウドの外周縁(22)と前記リング部の内周縁とを連絡する部分であって前記ファンにより吸入される空気を前記リング部の内側に導く導風部(23)と、を有し、
    前記ファンシュラウドは、前記ファンシュラウドの前記外周縁のうち、前記リング部の内周縁(21a)までの距離が他の部分に比べて短い特定縁部(22ab,22cd)を有し、
    前記ファンシュラウドは、前記ファンの先端における上流側の端部(31a)よりも下流側に位置する通路であって前記導風部における前記特定縁部の内側部位(23ab,23cd)から前記ファンの回転方向に延びるように設けられる逆流導入通路(24)を有し、前記逆流導入通路には、前記ファンの回転時に、下流側に位置する前記ファンシュラウドの裏側から表側に向けて空気が逆流することを特徴とする送風装置。
  2. 前記特定縁部は、前記ファンシュラウドの前記外周縁において複数箇所設けられ、
    前記逆流導入通路は、前記導風部におけるすべての前記特定縁部の内側部位から前記ファンの回転方向に延びるように設けられることを特徴とする請求項1に記載の送風装置。
  3. 前記逆流導入通路の周方向長さは、前記ブレードにおける前記回転方向の前縁部(30a)が前記逆流導入通路における前記回転方向の反対側に位置する後縁部(24b)に重なる位置にあるとき、前記回転方向に先行する一つ前の前記ブレードにおける前記回転方向の反対側に位置する後縁部(30b)が前記逆流導入通路に重ならない関係となる長さに設定されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の送風装置。
  4. 前記逆流導入通路は、前記ファンシュラウドを貫通するスリット状の貫通穴(240)によって形成される通路であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の送風装置。
  5. 前記逆流導入通路は、前記リング部の下流端部に形成された切り欠き状の開口部(241)によって形成される通路であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の送風装置。
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