以下、本発明を実施するための好適な実施形態について図を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
まず、図1〜3を参照して本実施形態に係るサンダの基本構造について説明する。
ここで、図1は本実施形態に係るサンダの斜視図であり、図2は本実施形態に係るサンダの右側面図である。図3は本実施形態に係るサンダのクランプ装置を説明するためのベース部の平面図である。また、本明細書では、図中に示すように「前、後、左、右、上、下」を規定して説明する。
本実施形態に係るサンダ1は、駆動源であるモータ(不図示)等の駆動部を収納するハウジング21を備える本体部10と、本体部10の下方に配置され、モータの駆動により揺動運動を行うベース部40とを有して構成されている。ハウジング21は左右二つ割り構造の樹脂成形品であり、ハウジング21の上部は、作業者が把持するための把持部22として前後方向に延びて形成されている。
ベース部40は、ベース50と、ベース50の上面側の前後両端部に設けられるクランプ装置60,60とを備えている。ベース50は、パッドベース51と、パッドベース51の下面に固定されるパッド52とを有している。パッドベース51は、図3によく示されるように、上面視で略矩形状として形成されており、本実施形態においては、軽金属であるアルミ合金により製造されている。パッド52は、パッドベース51よりわずかに大きい略矩形状の板状部材であり、パッドベース51の下面に複数のネジ(不図示)によって固定されている。パッド52は、ゴム等の弾性部材からなるシートの上面に金属板を接着剤で固定して構成されており、その下面は平面として形成されている。
次に、図4〜図8を参照図に加えて、クランプ装置60について説明する。
ここで、図4は本実施形態に係るサンダのクランプ装置を説明するためのベース部の右側面図であって、一端側が固定された研磨シートの他端側を取り付ける工程を示している。図5は本実施形態に係るサンダのクランプ装置を説明するためのベース部の右側面図であって、図4に示される工程の次の工程を示している。図6は図5の要部拡大図である。図7は本実施形態に係るサンダのクランプ装置を説明するためのベース部の右側面図であって、図5に示される工程の次の工程を示している。図8は図7の要部拡大図である。
本実施形態に係るサンダ1は、ベース50の上面側の前後両端部に研磨シート80をベース50に固定するためのクランプ装置60,60が装備されている。クランプ装置60,60は、パッドベース51の上面側の前後両端部に一体的に形成されるクランプ面61,61と、クランプ面61,61上に位置する研磨シート80を押圧して固定するためのクランプ70,70とを備えている。クランプ面61は、パッドベース51の前後方向中央側から前後方向の端面53に向かって上方へ傾斜した平面であり、前後方向で所定の幅をもってパットベース51の左右方向全幅に形成されている。また、クランプ面61と端面53との接続部は、クランプ面61を含む平面に対して上方へ突出した突条部62が形成されている(図6参照)。なお、本実施形態においては、クランプ面61の傾斜角θは(図8参照)、15度に設定されている。
パッドベース51のクランプ面61から前後方向中央側に所定量離間した位置の左右両側面寄りには、後述するクランプ70を回動自在に支持する左右一対の回動支持部54,54がそれぞれ設けられている。回動支持部54は、左右方向に延びる上方へ開口した溝55と、溝55を上方から覆うようにパッドベース51に螺着される座付きネジ56を有しており、溝55にクランプ70を挿入した後、座付きネジ56を螺着することで、クランプ70を回動自在に支持するように構成されている。なお、溝55の底は、クランプ面61より上方に位置している。
クランプ70は、ピアノ線等の弾性を有する線材を所定の形状に曲げて製作された部材であり、パッドベース51の上面に設けられた一対の回動支持部54,54に支持されることで、図4に示すアンクランプ位置と、図7に示すクランプ位置とに回動操作可能に設置されている。クランプ70は、図3によく示されるように、左右一対の回動支持部54,54に支持される支持部71,71と、支持部71,71同士の間で端面53側へ向かってコ字状に折り曲げられた押圧部72と、一方の支持部71の左右方向外側において押圧部72とは反対方向へ折り曲げられたアーム部73と、アーム部73の端部から上方へ向かってZ状に折り曲げられた操作部74とを有している。また、操作部74は、操作時の把持を容易にするため軟質材により被覆されている。
次に、上述の構成において、ベース50に研磨シート80を取り付ける工程について説明する。
ベース50に研磨シート80を取り付ける場合は、まず、一方のクランプ装置60(図4においては、前側のクランプ装置60)を操作して、研磨シート80の一端側81をベース50に固定する。なお、クランプ装置60の操作方法については、後述する研磨シート80の他端側82を固定する操作方法と同様であるので、ここでの詳細な説明は省略する。
そして、図4に示すように、研磨シート80を、ベース50の一方(前側)の端面53、ベース50の下面、他方(後側)の端面53に沿わせながら巻きつけ、さらに、研磨シート80の他端側82を、他方(後側)のクランプ装置60において、アンクランプ位置にあるクランプ70の押圧部72とクランプ面61との間の隙間に挿入する。
次に、クランプ70の操作部74を上方へ移動操作することで、クランプ70を回動支持部54で支持されている支持部71を中心に回動させて、押圧部72をクランプ面61に接近させていく。図5及び図6は、この接近により、押圧部72が研磨シート80の他端側82を押し下げてクランプ面61に当接した瞬間の状態を示している。図5及び図6の状態からさらに操作部74を上方へ移動操作してクランプ70を弾性変形させていく。そして、図7に示されるように、パッドベース51の上面に形成された係止部57にアーム部73を係止させる。図7のクランプ70の位置がクランプ位置となる。
上述のクランプ位置では、図8中に符号αで示すクランプ70の弾性変形による弾性復元力が、符号βで示す押圧部72によるクランプ面61上の研磨シート80の押圧力となって作用することで、押圧部72と研磨シート80との接触部、及び研磨シート80とクランプ面61との接触部で摩擦力が発生し、研磨シート80のベース50への固定が実現される。このとき、クランプ面61をパッドベース51の前後方向中央側から端面53に向かって上方へ傾斜した平面として形成したことで、符号γで示す弾性復元力αの支持部71方向を向く分力が大きくなる。これにより、押圧部72が支持部71の方向へ弾性変形によって移動(変位)することと、溝55と支持部71との間の嵌合隙間に相当する量だけ押圧部72が支持部71側へ移動することをより促進させることができる。したがって、押圧部72による研磨シート80のたるみを取り除く作用が高まり、たるみの発生を効果的に低減できるので、たるみに起因する研磨品質の低下や研磨シートの損傷の可能性を低減することができる。
また、上述のようにクランプ面61が傾斜していることで、クランプ面61に垂直な方向に働く押圧力βは、弾性復元力αより大きくなるので、操作部74の移動操作に要する力に対して、摩擦力を得るための荷重である押圧力をより大きくすることができる。したがって、研磨シート80の固定力を効率的に高めることができる。
また、クランプ面61は、前後方向において所定の幅を持って比較的広く形成されているので、クランプ70の形状誤差等によって押圧部72の押圧位置がばらついても、上述の効果を安定的に発揮することができる。
また、クランプ面61および突条部62により、ワーク周辺の障害物の押圧部72への接触を防止することができるので、研磨作業中に意図せず研磨シートが外れる可能性を低減できる。
また、パッドベース51の前後両端部に傾斜したクランプ面61を設けたことで、パッドベース51の前後両端部の剛性を高めることができるので、負荷によるベース50の変形量を減少させることが可能となる。したがって、研磨加工中の負荷によるベース50の下面の平面度の低下を抑制できるので、平面度の低下に起因する研磨品質の低下を効果的に防止することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲に限定さない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
たとえば、本実施形態においては、クランプ面61は、パッドベース51と一体に形成したが、別部材として製作してパッドベースに固定してもよい。
また、たとえば、上記実施形態に係るサンダ1おいては、前後両方のクランプ装置を上述の構成としたが、研磨シート80の他端側82を固定するクランプ装置のみに上述の構成を採用してもよい。