JP2016125075A - 熱可塑性樹脂のめっき方法および金属微粒子の分散した熱可塑性樹脂ペレット - Google Patents
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Abstract
【課題】環境負荷が高いエッチング工程を経ずに無電解めっきを施せる成形体を汎用の成形機を用いて安定に製造する方法を提供する。
【解決手段】本発明のめっき方法は、無電解めっき用触媒となる金属微粒子を含む第一の熱可塑性樹脂と第二の熱可塑性樹脂とを混合して成形した成形体に無電解めっき膜を形成することを特徴とする熱可塑性樹脂のめっき方法において、前記第一の熱可塑性樹脂に添加剤を混合し、前記添加剤は熱可塑性樹脂に酸化防止剤、熱安定剤、還元剤の少なくとも1種類を含み、前記添加剤を0.01〜5重量部の範囲で混合して成形することを特徴とする熱可塑性樹脂のめっき方法であることを特徴とする。
【選択図】図1
【解決手段】本発明のめっき方法は、無電解めっき用触媒となる金属微粒子を含む第一の熱可塑性樹脂と第二の熱可塑性樹脂とを混合して成形した成形体に無電解めっき膜を形成することを特徴とする熱可塑性樹脂のめっき方法において、前記第一の熱可塑性樹脂に添加剤を混合し、前記添加剤は熱可塑性樹脂に酸化防止剤、熱安定剤、還元剤の少なくとも1種類を含み、前記添加剤を0.01〜5重量部の範囲で混合して成形することを特徴とする熱可塑性樹脂のめっき方法であることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
熱可塑性樹脂成形体の無電解めっき方法およびそれに用いることのできる金属の微分散した機能性樹脂ペレットに関する。
樹脂成形体に安価に金属膜を形成する方法として、無電解めっき法が知られている。無電解めっき法では、金属膜の樹脂成形体への密着性確保のため、六価クロム酸や過マンガン酸等の酸化剤を含むエッチング液を用いて樹脂成形体表面を粗化する前処理を行う。そのため、無電解めっき法には、エッチング液により侵食されるABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂)が主に用いられてきた。ABS樹脂は、ブタジエンゴム成分がエッチング液に選択的に侵食され、表面に凹凸が形成される。一方、ABS樹脂以外の樹脂、例えば、ポリカーボネート等では、無電解めっきを可能にするため、ABS樹脂やエラストマー等、エッチング液に選択的に酸化される成分を混合しためっきグレードが市販されている。しかし、このような無電解めっき法の前処理は、六価クロム酸や過マンガン酸等を使用することから、環境負荷が高いという問題があった。
一方、前処理であるエッチング工程を経ずに、樹脂成形体に金属膜を形成する方法として、超臨界二酸化炭素等の加圧二酸化炭素を用いた樹脂成形体の表面改質法の利用が提案されている。本発明者らは、加圧二酸化炭素を用いた表面改質処理を射出成形と同時に行い、樹脂成形体の表面に無電解めっきの触媒核となるパラジウムを分散させる方法を提案している(特許文献1)。この方法では、表面にパラジウムが偏在化した樹脂成形体に無電解めっきを施すことにより、エッチング工程を経ずに成形体表面にめっき膜を形成できる。
更に、金属微粒子を分散させた樹脂ペレットをマスターバッチ材料としてベース樹脂材料に混合し、汎用の射出成形機にて射出成形し該マスターバッチ材料を表面近傍に偏在化させることにより無電解めっき用成形体を成形するめっき法が開示されている(特許文献2)。
特許文献1の方法は、専用の成形機を必要とする。そのため、特許文献1で提案される方法では、環境負荷が高いエッチング工程を経ずに無電解めっきを施せる成形体を、汎用の成形機を用いて成形することが難しい。また、特許文献2は汎用成形機を用いることができるため、汎用性は高くなっているが、本発明者らの検討によれば、成形直後における成形品のめっき反応性が著しく悪化することが顕在化した。例えば、射出成形してからのエージング時間において、1〜2時間以内における成形品のめっき反応性と半日以上経過した後のめっき反応性が著しく異なることがあった。つまり、めっき用触媒の微分散した成形体のめっき反応性が経時変化することが明らかとなった。特に、金型のゲート近傍における成形後初期における局所部のめっき反応性低下は特に著しく、その経時変化も大きいという問題が発生した。その傾向はゲート厚みが薄く剪断発熱する金型構造であると顕著となった。
さらに無電解めっき用金属ナノ触媒を分散した成形品を長時間スクリュ内で滞留させた場合、成形品のめっき反応性が著しく悪化する問題も生じた。
これら課題の原因は明らかでないが、金属触媒が剪断発熱等により酸化等被毒されるか熱凝集することが主要因であると考えられる。ナノ粒子である金属触媒が流動樹脂中等において凝集したり、酸化することで触媒活性機能が低下し、それにより全体的にめっき反応性が低下すると考えられる。一方、樹脂と非相溶であり粒子径が数nmもしくはサブナノ程度以下の超微粒子であるナノ粒子は、金型内にて冷却固化した樹脂が取り出された後、熱可塑性樹脂の結晶化の進行で分子間距離が変化すること等により、成形体表面に経時的に移動していくと推定される。それらの結果、成形直後においては、表面近傍の触媒活性は低く、その傾向は特に剪断発熱の影響を受けやすいゲート近傍で顕著となるが、経時変化により表面の触媒活性が向上するものと考えられた。
本発明は、上記課題を解決するものであり、環境負荷が高いエッチング工程を経ずに無電解めっきを施せる成形体を汎用の成形機を用いて安定に製造する方法を提供する。
本発明の第1の態様に従えば、無電解めっき用触媒となる金属微粒子を含む第一の熱可塑性樹脂と第二の熱可塑性樹脂とを混合して成形した成形体に無電解めっき膜を形成する熱可塑性樹脂のめっき方法において、少なくとも前記第一の熱可塑性樹脂に添加剤を混合し、前記添加剤が酸化防止剤、熱安定剤、還元剤の少なくとも1種類を含み、前記添加剤を成形体全体に対して0.01〜5重量部の範囲で混合して成形することを特徴とする熱可塑性樹脂のめっき製造方法が提供される。本発明者らの検討によれば、前記添加剤を用いることで、前述しためっき反応性の局部的もしくは初期の低下を抑制できることが見出した。
本発明において添加剤の添加量は、成形体全体における重量比で0.01〜5重量部の範囲で混合することが望ましい。0.01重量部よりも少ないと効果が現れにくく、5重量%より多すぎると成形体の表面性が悪化したり、機械物性が低下する等の悪影響が懸念される。添加剤の添加量は、0.05〜0.5重量%がより好ましく、0.1〜0.3重量%が更に好ましい。
マスターバッチ材料用ペレットに本発明の添加剤を添加する場合は、マスターバッチ材料の配合比に依存するが、1〜20重量部の範囲で混合することが望ましい。添加剤の濃度が少ない場合、無電解めっき用触媒金属を用いた場合はめっき反応性、銀微粒子を用いた場合は抗菌機能等の成形体表面近傍における金属微粒子の機能性向上効果が低減する。多すぎると、成形体の表面外観や機械強度が悪化する不具合が生じる。2〜15重量部がより好ましく、3〜8重量部が更に好ましい。
マスターバッチ材料用ペレットに本発明の添加剤を添加する場合は、マスターバッチ材料の配合比に依存するが、1〜20重量部の範囲で混合することが望ましい。添加剤の濃度が少ない場合、無電解めっき用触媒金属を用いた場合はめっき反応性、銀微粒子を用いた場合は抗菌機能等の成形体表面近傍における金属微粒子の機能性向上効果が低減する。多すぎると、成形体の表面外観や機械強度が悪化する不具合が生じる。2〜15重量部がより好ましく、3〜8重量部が更に好ましい。
本発明において、添加剤として酸化防止剤、熱安定剤、還元剤の少なくとも1種類を混合することによる前記のめっき反応性を向上させるメカニズムは定かでないが、下記のようなことが考えられる。例えば、溶融した熱可塑性樹脂の熱による酸化劣化を抑制することで、それに伴う分解ガス等による有機物が、触媒であるナノ金属を被毒するのを抑制することが推定される。あるいは、剪断発熱時における触媒となる金属微粒子の熱凝集を抑制する効果があるとも考えられる。
本発明に用いることのできる添加剤としての酸化防止剤、熱安定剤、還元剤の種類は、樹脂に添加する酸化防止剤、熱安定剤、還元剤のいずれかであれば任意であるが、例えば、イオウ系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、次亜リン酸塩等の各種酸化防止剤や熱安定剤、還元剤を単独もしくは複数材料混合して添加してもよい。
本発明において、添加剤としての次亜リン酸塩は次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カルシウム等の次亜リン酸塩等を用いることが好ましい。特に次亜リン酸カルシウムは分解温度が高い高温領域における安定性に優れるので更に好ましい。
本発明において、無電解めっき用触媒となる金属微粒子を含む第一の熱可塑性樹脂と第二の熱可塑性樹脂とを混合して成形した成形体への添加剤の混合方法は任意である。
例えば、無電解めっき用触媒となる金属微粒子を含む第一の熱可塑性樹脂に予め添加剤を押し出し機等にて混合したのち、ベース樹脂となる第二の熱可塑性樹脂に成形直前にドライブレンドにて混合してもよい。
例えば、無電解めっき用触媒となる金属微粒子を含む第一の熱可塑性樹脂に予め添加剤を押し出し機等にて混合したのち、ベース樹脂となる第二の熱可塑性樹脂に成形直前にドライブレンドにて混合してもよい。
或いは、成形時に前記の金属微粒子を含む第一の熱可塑性樹脂と、第二の熱可塑性樹脂を混合する際、成形機にてその場で添加剤を添加混合してもよい。
或いは、第一の熱可塑性樹脂と第二の熱可塑性樹脂を射出成形等の成形加工前に予め押し出し機にて溶融混錬しペレット化しておき、その際に添加剤を添加してもよい。
従来のこれら添加剤がない樹脂の材料組成の場合、金属微粒子の混合した第一の熱可塑性樹脂が熱履歴を経るとめっき反応性に悪影響を及ぼすことが判明している。これは成形を重ねると金属微粒子である触媒が酸化被毒されるか熱凝集することにより、無電解めっきの触媒活性が低下するためと推定される。そのため、金属微粒子である触媒の分散した第一の熱可塑性樹脂は、成形直前に第二の熱可塑性樹脂とドライブレンドして使用していた。そして、予め押し出し機で溶融混錬すると前述の通りめっき反応性が低下した。ドライブレンドの場合、熱可塑性樹脂や添加剤の比重差等により厳密な添加量や配合量を制御しにくくなる。
或いは、第一の熱可塑性樹脂と第二の熱可塑性樹脂を射出成形等の成形加工前に予め押し出し機にて溶融混錬しペレット化しておき、その際に添加剤を添加してもよい。
従来のこれら添加剤がない樹脂の材料組成の場合、金属微粒子の混合した第一の熱可塑性樹脂が熱履歴を経るとめっき反応性に悪影響を及ぼすことが判明している。これは成形を重ねると金属微粒子である触媒が酸化被毒されるか熱凝集することにより、無電解めっきの触媒活性が低下するためと推定される。そのため、金属微粒子である触媒の分散した第一の熱可塑性樹脂は、成形直前に第二の熱可塑性樹脂とドライブレンドして使用していた。そして、予め押し出し機で溶融混錬すると前述の通りめっき反応性が低下した。ドライブレンドの場合、熱可塑性樹脂や添加剤の比重差等により厳密な添加量や配合量を制御しにくくなる。
本発明の添加剤を用いることで、熱履歴に対するめっき反応性の低下が抑制されるため、予め熱可塑性樹脂を精密計量して熔融混合しておくことができる。或いは廃材利用が可能になるため、コスト低減に有効である。
本発明に用いることのでできる無電解めっき用触媒の分散した第一の熱可塑性樹脂は第二の熱可塑性樹脂であるベース樹脂に対して表面濃縮性を有する成形加工可能な樹脂であれば任意であるが、親水性セグメントを有するブロック共重合体(以下、適宜「ブロック共重合体」と記載する)を用いることができる。ブロック共重合体は、親水性セグメントと、親水性セグメントとは異なる他のセグメント(以下、適宜「他のセグメント」と記載する)を有する。ブロック共重合体は、成形体の成形過程、もしくは成形後において表面に向って金属微粒子を伴って移動し、金属微粒子と共に成形体の表面近傍に偏析する傾向がある。
本実施形態のブロック共重合体の親水性セグメントには、アニオン性セグメント、カチオン性セグメント、ノニオン性セグメントを用いることができる。アニオン性セグメントとしては、ポリスチレンスルホン酸系、カチオン性セグメントとしては、四級アンモニウム塩基含有アクリレート重合体系、ノニオン性セグメントとしては、ポリエーテルエステルアミド系、ポリエチレンオキシド−エピクロルヒドリン系、ポリエーテルエステル系等が挙げられる。本実施形態のブロック共重合体としては、成形体の耐熱性を確保しやすいことから、親水性セグメントがポリエーテル構造を有するノニオン性セグメントであることが好ましい。ポリエーテル構造としては、例えばアルキレンの炭素数が2〜4のオキシアルキレン基であるエチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等のオキシアルキレン基、ポリエーテルジオール、ポリエーテルジアミン、及びこれらの変性物、並びにポリエーテル含有親水性ポリマーが含まれ、特にポリエチレンオキシドが好ましい。
ブロック共重合体の他のセグメントは、親水性セグメントより疎水性のセグメントであれば任意であり、目的にあった種類を選択できる。例えば、ナイロン6、ナイロン12等のポリアミド、ポリオレフィン、ポリ乳酸、ポリエチレン等を用いることができる。 ブロック共重合体は、市販品を用いてもよい。本実施形態のブロック共重合体は、成形体の表面近傍に偏析する(配向する)という性質から、樹脂練りこみ型の高分子型帯電防止剤として市販されている場合がある。例えば、三洋化成工業製のペレスタット(登録商標)、ペレクトロン(登録商標)等を本実施形態のブロック共重合体として用いることができる。三洋化成工業製、ペレスタット(登録商標)NC6321、1251は、親水性セグメントのポリエーテルと、他のセグメントのナイロンをエステル結合でコポリマー化したブロック共重合体である。
本発明において、電解めっき用金属触媒として働く金属微粒子は、無電解めっき触媒として機能することが可能な金属、例えば、Pd、Ni、Pt、Cu等の微粒子が好ましく、無電解めっきの触媒安定性の観点から、パラジウムの微粒子がより好ましい。本発明における第一の熱可塑性樹脂に含まれる無電解めっき金属微粒子は、粒子径が10nm以下のナノ粒子が好ましい。粒子径が10nm以下のナノ粒子は、表面積が大きく触媒活性が高いため、低濃度の触媒で安定にめっき膜が形成でき、低コスト化が可能となる。成形体中における金属微粒子は、1〜50重量ppm含まれることが好ましく、5〜20重量ppm含まれることが更に好ましい。
第一の熱可塑性樹脂をめっき用マスターバッチ材料として用いた場合、第一の熱可塑性樹脂中に含まれる金属微粒子の含有量は10〜1000ppmの範囲であることが望ましい。さらに望ましくは100ppm〜500ppmの範囲である。金属微粒子の含有量は、熱可塑性樹脂の一部を有機溶媒に溶解し、ICP(誘導結合プラズマ、Inductively Coupled Plasma)発光分析法を用いてPd等の金属量を測定することで求められる。金属微粒子の含有量が少ない場合には、ICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析計)を用いてPd等の金属量を測定することができる。
本発明の態様においては、金属微粒子の熱可塑性樹脂への分散方法は任意であるが、凝集を抑制し環境負荷を抑制する観点から加圧二酸化炭素等の加圧流体を溶媒に用いて金属微粒子を樹脂中に導入することができる。例えば、押し出し機中にて、加圧二酸化炭素に溶解もしくは分散させた金属錯体等の金属微粒子を溶融状態の熱可塑性樹脂に導入して混錬し、加圧二酸化炭素を溶媒および相溶化剤として用いた後に二酸化炭素を減圧ガス化して金属微粒子を分散させることができる。或いは、ペレットにバッチ容器中にて加圧二酸化炭素に溶解させた金属微粒子を浸透させることができる。
第二の熱可塑性樹脂であるベース樹脂は熱可塑性樹脂であれば任意でありポリカーボネート、ABS樹脂、ポリプロピレン等を用いることができるが、特にめっき液の浸透性を高めるポリアミドが含まれることが望ましい。ポリアミドとしては、6Tナイロン、9Tナイロン、MXD6ナイロン等の芳香族ナイロン、66ナイロン、6ナイロン、非晶ナイロン、共重合ナイロン等を用いることができるが、吸水性が高く膨潤しやすいナイロン6がより好ましい。
本発明の異なる態様においては、 金属微粒子の分散した熱可塑性樹脂ペレットであり、前記ペレットは酸化防止剤、熱安定剤、還元剤の少なくとも1種類以上の添加剤が1〜20重量部の範囲で混合されていることを特徴とする熱可塑性樹脂ペレットを提供する。添加剤の量は5〜15重量部が好ましく、7〜13重量部が更に好ましい。
本明細書において、「(樹脂)ペレット」とは、樹脂を加工し易いように小さな塊(ペレット)としたものを意味し、サイズ及び形状はペレットの用途により様々であるが、例えば、3〜5mm程度の粒子状、円柱状の樹脂の小片である。また、マスターバッチ材料とは、染料、顔料、その他の添加剤等の機能性材料を高濃度に含有した樹脂ペレットであり、機能性材料を含有しないベース樹脂に混合され、ベース樹脂と共に成形される。マスターバッチを用いると、機能性材料である金属微粒子を直接ベース樹脂に添加して成形することと比較して、材料の取り扱い性が容易で秤量精度も向上する。また、マスターバッチを用いると、汎用の成形機を用いて、金属微粒子を含有する成形体を製造できるという利点も有する。本態様においては、添加剤として酸化防止剤、熱安定剤、還元剤の少なくとも1種類を含むことにより、金属微粒子の熱履歴による凝集や触媒失活等を抑制することができ、それにより成形後の表面高機能化を維持しやすくなる。本発明において添加剤は押し出し機で熱可塑性樹脂に溶融混錬することができる。本発明のペレットは親水性付与セグメントを有するブロック共重合体を含んでもよい。成形時に、他のベース樹脂に混錬することで、金属微粒子およびブロック共重合体が表面に偏在化しやすくなる。
本明細書において、「(樹脂)ペレット」とは、樹脂を加工し易いように小さな塊(ペレット)としたものを意味し、サイズ及び形状はペレットの用途により様々であるが、例えば、3〜5mm程度の粒子状、円柱状の樹脂の小片である。また、マスターバッチ材料とは、染料、顔料、その他の添加剤等の機能性材料を高濃度に含有した樹脂ペレットであり、機能性材料を含有しないベース樹脂に混合され、ベース樹脂と共に成形される。マスターバッチを用いると、機能性材料である金属微粒子を直接ベース樹脂に添加して成形することと比較して、材料の取り扱い性が容易で秤量精度も向上する。また、マスターバッチを用いると、汎用の成形機を用いて、金属微粒子を含有する成形体を製造できるという利点も有する。本態様においては、添加剤として酸化防止剤、熱安定剤、還元剤の少なくとも1種類を含むことにより、金属微粒子の熱履歴による凝集や触媒失活等を抑制することができ、それにより成形後の表面高機能化を維持しやすくなる。本発明において添加剤は押し出し機で熱可塑性樹脂に溶融混錬することができる。本発明のペレットは親水性付与セグメントを有するブロック共重合体を含んでもよい。成形時に、他のベース樹脂に混錬することで、金属微粒子およびブロック共重合体が表面に偏在化しやすくなる。
本発明のペレットは無電解めっき用マスターバッチ材料であってもよい。マスターバッチ材料は上述の通り、機能を濃縮した樹脂ペレットである。本発明の態様によれば、めっき用の熱可塑性樹脂に0.5〜20重量部の範囲でマスターバッチ材料を混合することにより、高環境負荷のエッチングを使うことなく無電解めっき可能な成形体を成形できる。
無電解めっき用触媒となる金属微粒子を含む第一の熱可塑性樹脂と第二の熱可塑性樹脂とを混合して成形した成形体に無電解めっき膜を形成することを特徴とする熱可塑性樹脂のめっき方法において、前記の熱可塑性樹脂に添加剤として酸化防止剤、熱安定剤、還元剤の少なくとも1種類を成形体全体に対して0.01〜5重量部の範囲で混合して成形することにより、成形後の無電解めっき反応性の経時変化や局部変化を抑制することに、量産安定性を高めることができる。
[金属微粒子分散法]
本発明において、金属微粒子としては無電解めっき用触媒となるパラジウムを用い、加圧流体として加圧二酸化炭素を溶媒にして該金属微粒子を樹脂中に分散させた。本発明の金属微粒子の分散方法は任意であるが、例えば、押し出し機中にて熱可塑性樹脂を溶融混錬する際、ベース樹脂や親水性付与セグメントを有する表面濃縮性の高い樹脂、および還元剤等の熱安定剤を同時に混合しながら、加圧二酸化炭素に溶解して導入分散してもよい。予め成形時に表面濃縮性の高い樹脂に分散しておいてもよい。本実施例においてはベース樹脂に対し表面に偏在化しやすい第一のペレットに金属微粒子を分散させたのち、ベース樹脂と混合した。本実施例においては、第一のペレットとしてはブロック共重合体を用いた。永久帯電防止剤であるポリアミドとポリエチレングリコールのブロック共重合体(三洋化成工業製ペレスタット1251)を用いた。
本発明において、金属微粒子としては無電解めっき用触媒となるパラジウムを用い、加圧流体として加圧二酸化炭素を溶媒にして該金属微粒子を樹脂中に分散させた。本発明の金属微粒子の分散方法は任意であるが、例えば、押し出し機中にて熱可塑性樹脂を溶融混錬する際、ベース樹脂や親水性付与セグメントを有する表面濃縮性の高い樹脂、および還元剤等の熱安定剤を同時に混合しながら、加圧二酸化炭素に溶解して導入分散してもよい。予め成形時に表面濃縮性の高い樹脂に分散しておいてもよい。本実施例においてはベース樹脂に対し表面に偏在化しやすい第一のペレットに金属微粒子を分散させたのち、ベース樹脂と混合した。本実施例においては、第一のペレットとしてはブロック共重合体を用いた。永久帯電防止剤であるポリアミドとポリエチレングリコールのブロック共重合体(三洋化成工業製ペレスタット1251)を用いた。
金属微粒子のペレットへの分散方法は任意であり、例えば、国際特許公開公報WO2013/129659号に開示されている製造方法により製造することができるが、金属微粒子が溶解又は分散した加圧二酸化炭素(以下、必要により「加圧流体」と記載する)をペレットに接触させることにより、ブロック共重合体に前記金属微粒子を浸透させる工程を含むことが好ましい。加圧二酸化炭素を用いる方法は、有機溶媒を必要としないため環境負荷が低いプロセスである。また、加圧二酸化炭素は、金属微粒子のブロック共重合体への均一な分散を促進し、金属微粒子の粒径を著しく小さくすることができる。金属微粒子が凝集せず均一に分散することで、金属微粒子はブロック共重合体に伴って成形体表面へより移動し易くなると考えられる。この結果、加圧二酸化炭素を用いて製造された樹脂ペレットを用いて、めっき膜を有する成形体を製造すると、均一で高品質なめっき膜を得ることができる。加圧二酸化炭素を用いずに、ブロック共重合体と金属微粒子を混合することで樹脂ペレットを製造することも可能であるが、以上の理由から加圧二酸化炭素を用いることが好ましい。本実施形態に用いる金属微粒子は、加圧二酸化炭素に溶解することが好ましい。したがって、金属微粒子としては、加圧二酸化炭素への溶解性が高い、ヘキサフルオロアセチルアセトナトパラジウム(II)金属錯体、白金ジメチル(シクロオクタジエン)、ビス(シクロペンタジエニル)ニッケル、ビス(アセチルアセトネート)パラジウム等の金属錯体が好ましい。
上記の観点から、金属微粒子を溶解し、ブロック共重合体への均一な分散が可能な加圧流体であれば、窒素など二酸化炭素以外の加圧流体を用いることができる。
上記の観点から、金属微粒子を溶解し、ブロック共重合体への均一な分散が可能な加圧流体であれば、窒素など二酸化炭素以外の加圧流体を用いることができる。
本実施例においては、ヘキサフルオロアセチルアセトナトパラジウム(II)金属錯体を用いた。
本実施形態では、高圧容器を用いたバッチ処理により金属微粒子の分散した樹脂ペレットを製造する。まず、高圧容器の内部にペレット状のブロック共重合体(原料ペレット)を収容する。ブロック共重合体は予め添加剤として酸化防止剤、熱安定剤や還元剤を押し出し機にて溶融混錬しておいてもよい。そこへ金属錯体の溶解した加圧二酸化炭素を導入する。加圧二酸化炭素の導入後、高圧容器内部を一定時間、加圧状態に保持する。金属微粒子は加圧二酸化炭素に溶解し、金属微粒子が溶解した加圧二酸化炭素がブロック共重合体に接触して、金属微粒子は加圧二酸化炭素と共にブロック共重合体に浸透する。これにより、添加剤を含んだブロック共重合体に金属微粒子が分散した樹脂ペレット(マスターバッチ)が得られる。一定時間経過後、高圧容器内部の加圧二酸化炭素を容器外に排気して、樹脂ペレット(マスターバッチ)を高圧容器から取り出す。尚、バッチ処理の諸条件にも依存するが、本実施形態において、金属容器内に収容された金属微粒子のうち、ブロック共重合体(原料ペレット)へ浸透する量は、仕込み量の40〜80%であり、全ての金属微粒子がブロック共重合体へ浸透するわけではない。しかし、ブロック共重合体へ浸透しない金属微粒子は、加圧二酸化炭素と共に高圧容器外に排気され、加圧二酸化炭素と分離することで回収が可能である。不純物を含みにくいため、金属錯体を精製して回収できるのでコスト低減に繋がる。
樹脂ペレット中の金属微粒子の含有量は任意であり、金属微粒子の種類、ブロック共重合体の種類、樹脂部品の使用用途等を考慮して適宜決定することができるが、コストとめっき反応性の観点から、金属微粒子を含む樹脂ペレットを1〜10重量部混合するマスターバッチ材として利用する場合、例えば、金属微粒子の含有量は10〜1000重量ppmの範囲であることが望ましい。さらに望ましくは100〜500重量ppmの範囲である。本発明において樹脂ペレット中に含まれる金属微粒子は前駆体である金属錯体や金属アルコキシドの重量ではなく、金属元素のみの重量で定義される。本実施例においては、熱可塑性樹脂としてブロック共重合体からなるペレットを用い、内容積40Lの高圧容器内にて1バッチ12kg処理した。金属錯体は樹脂ペレットに対し、1000重量ppmを仕込んだ。
樹脂ペレットの製造に用いる加圧二酸化炭素としては、液体状態、ガス状態、又は超臨界状態の加圧二酸化炭素を用いることができる。これらの加圧二酸化炭素は、人体に無害であり、またブロック共重合体への拡散性に優れ、しかもブロック共重合体から容易に除去可能である。高圧容器へ導入する加圧二酸化炭素の圧力、温度は任意であるが、密度が高く安定であることから液体二酸化炭素もしくは超臨界二酸化炭素を用いることが好ましい。加圧二酸化炭素の温度は5度〜60度の範囲が好ましい。加圧二酸化炭素の温度は、低いほど高密度となり溶媒効果が高くなるので好ましいが、冷却制御が容易であるという観点から5度以上が好ましい。また、加圧二酸化炭素の温度が高くなると密度が低くなり液送が不安定になる虞があるので、安定に供給するという観点から、60度以下が好ましい。加圧二酸化炭素の圧力は、4〜25MPaの範囲が望ましい。圧力が低いと溶媒効果が発現しにくくなるので、適度な溶媒効果を得るという観点から、4MPa以上が好ましく、また、圧力が高いと高圧設備の維持にコストが係るので、コストを抑えるという観点から、25MPa以下が好ましい。尚、金属微粒子を溶解又は分散させた加圧二酸化炭素は、温度及び圧力が変動し易い。よって、上述の加圧二酸化炭素の状態、温度及び圧力は、高圧容器に導入する前の安定な状態の加圧二酸化炭素の状態、圧力及び温度の値である。本実施例においては、まず、常温25度圧力6MPaの液体二酸化炭素ボンベより、予め金属錯体の粉体を所定量、仕込んだ温度15度に制御した内容積12Lの小型高圧容器内にて液体二酸化炭素を差圧で約9kg充填した。充填後、容器内は圧力5MPaに昇圧されたが、その後該小型高圧容器を40度に昇温し圧力を10MPaに昇圧し、超臨界状態の金属錯体の溶解した二酸化炭素を準備した。
本実施形態において、加圧流体の導入後、高圧容器内部を加圧状態に保持する時間は、ブロック共重合体の種類、金属微粒子の種類等を考慮して任意に決定できるが、例えば、5分〜120分が好ましい。本実施例においては、高圧容器内にて12度に温調したペレットに約5kgの金属錯体の溶解した加圧二酸化炭素を差圧で高圧を使用せずに導入した。結果、該高圧容器内には5MPaの金属錯体の溶解した液体二酸化炭素を蓄圧した。その後、高圧容器を45度に昇温しながら攪拌し圧力を最高圧力10MPaまで高めつつ、金属錯体および二酸化炭素をペレット中に含浸させた。攪拌および昇圧時間は30分として、その後、高圧容器を10度まで冷却して減圧した後、液体二酸化炭素を排出してペレットを回収した。
尚、以上説明した本実施形態で用いる第一の樹脂ペレット(マスターバッチ)は、熱可塑性樹脂としてはブロック共重合体を含むが、樹脂ペレット(マスターバッチ)は、必要に応じて他の熱可塑性樹脂を含んでもよい。そのような熱可塑性樹脂としては、上述した第2の熱可塑性樹脂と同様の種類の樹脂を用いることができる。
[実施例1]
本実施例における成形、めっき品のプロセスフローを図1に示す。本実施例においては、添加剤をブロック共重合体の樹脂ペレットに汎用押し出し機にてブレンドしたのち、該ブレンドしたペレットを前述した加圧二酸化炭素を用いた方法にて金属微粒子を導入した。
本実施例における成形、めっき品のプロセスフローを図1に示す。本実施例においては、添加剤をブロック共重合体の樹脂ペレットに汎用押し出し機にてブレンドしたのち、該ブレンドしたペレットを前述した加圧二酸化炭素を用いた方法にて金属微粒子を導入した。
本実施例においては、ブロック共重合体に汎用単軸押し出し機を用い、添加剤として次亜リン酸カルシウムの粉末5重量部(大道製薬製)をブロック共重合体に混合した[図1(a)]。
次に本実施例においては、前述した加圧二酸化炭素を用いた方法にて金属錯体としてヘキサフルオロアセチルアセトナトパラジウム(II)を1000重量ppmの仕込み濃度として該ブロック共重合体に分散させた[図1(b)]。金属錯体の仕込み濃度はパラジウム金属元素換算では約200重量ppmに相当する。本発明において、コストとめっき反応性の観点から、金属微粒子を含む樹脂ペレットをマスターバッチ材として利用する場合、触媒となる金属微粒子の含有量は10〜1000重量ppmの範囲であることが望ましい。さらに望ましくは10〜500重量ppmの範囲である。該ペレットに実際に浸透したパラジウム金属元素の濃度をICPにて分析したところ120〜150重量ppmの範囲であり分散効率はおよそ60〜75%であった。なお、回収できた金属錯体は仕込み量の約20%であった。このようにして、次亜リン酸カルシウム5重量部、パラジウム微粒子として約130重量ppm分散したブロック共重合体からなるマスターバッチペレットを作製した。
その後、前記マスターバッチ材料をベース樹脂に5重量部ドライブレンドにて混合して射出成形した[図1(c)]。ベース樹脂はミネラル強化6ナイロン(東洋紡製グラマイドT777−02)を用いた。金型のキャビティは横60mm、縦80mm、厚み2mmの平板形状とし、ゲートはサイドゲートでゲート厚みは0.4mmとした。金型温度は設定120度として、樹脂温度は240〜260度にて充填時間0.8sにて射出成形した。取り出し直後(常温に冷却された15分後)の成形品に無電解めっきを行った。塩酸(濃度2.5N、温度20度)に30秒浸漬した後、80度の無電解めっき液(ニッケルリンめっき液、奥野製薬工業製トップニコロンRCH)に浸漬した。めっき液に浸漬した平板成形品は、浸漬後10秒には表面から均一に水素の泡が発生し反応開始した。その後、3分後には全面均一にニッケルリンのめっき被膜が成長した。その後、電解銅めっき膜を形成した[図1(d)]。汎用の硫酸銅めっき浴にて電流密度3A/dm2にて膜厚40μmの銅めっき膜を積層した[図1(e)]。
本実施例のめっき成形体を80度1時間の条件で乾燥させた後、めっき膜の一部端部を剥がし、垂直引っ張り試験を行った。その結果、密着強度は12N/cmであり、目標の10N/cmを超える信頼性の高いめっき膜が形成できたことがわかった。本実施例の還元剤を混合したマスターバッチペレットを用いた成形品を20ショット連続で成形後30分以内にめっきを行ったが、膜抜け不良は確認されず安定にめっき成長することがわかった。
[実施例2]
本実施例におけるプロセスフローを図2に示す。本実施例においては金属微粒子を分散したブロック共重合体に、添加剤およびベース樹脂材料を押し出し成形機にて溶融混合したペレットを用いて射出成形した以外は実施例1と同様な方法で成形、めっきを行った。
本実施例におけるプロセスフローを図2に示す。本実施例においては金属微粒子を分散したブロック共重合体に、添加剤およびベース樹脂材料を押し出し成形機にて溶融混合したペレットを用いて射出成形した以外は実施例1と同様な方法で成形、めっきを行った。
まず、実施例1と同様なブロック共重合体単体を用いて該樹脂ペレット内部に実施例1と同様な方法にて金属微粒子を分散させた。約100重量ppmのパラジウム金属触媒がペレット中に分散した[図2(a)]。その後、該金属微粒子分散ペレット5重量部と、添加剤である次亜リン酸カルシウム0.5重量部をベース樹脂材料であるミネラル強化6ナイロンに定量混合しながら、汎用の単軸押し出し機にて混合樹脂のブレンドペレットを作製した[図2(b)]。該ペレットを実施例1と同様な方法にて射出成形[図2(c)]した後無電解めっき[図2(d)]、電解めっきを行った[図2(e)]。本実施例の成形体の成形直におけるめっき反応性や密着強度に大きな問題は発生しなかった。
本実施例の方法によれば、ベース樹脂と成形前に予め溶融混錬し熱履歴を増やしても金属微粒子の射出成形後の成形体表面における機能が維持できていた。金属微粒子の熱凝集もしくは触媒活性の低下が抑制できたものと推察される。
本実施例の方法によれば、ベース樹脂と成形前に予め溶融混錬し熱履歴を増やしても金属微粒子の射出成形後の成形体表面における機能が維持できていた。金属微粒子の熱凝集もしくは触媒活性の低下が抑制できたものと推察される。
[実施例3]
本実施例におけるプロセスフローを図3に示す。ブロック共重合体に金属微粒子を分散させたマスターバッチ材料[図3(a)]、添加剤、ベース樹脂をドライブブレンドにて成形用樹脂材料とした以外は実施例2と同様な方法で成形、めっきを行った。
添加剤としては実施例1と同様に次亜リン酸カルシウムを用いた。0.5重量部の添加剤を5重量部のマスターバッチ材料とあわせ、実施例1と同様なベース樹脂材料とドライブブレンドにて成形用樹脂材料とした。実施例1と同様な金型、成形方法にて成形体を得た[図3(b)]。続いて本実施例に成形体を実施例1と同様な方法にて無電解めっき[図3(c)]、電解めっきを行った[図3(d)]。その結果、成形直後のめっき反応性およびめっき密着強度に問題は発生しなかった。本実施例により、添加剤は予め溶融混錬しても成形直前に添加しても機能を維持することがわかった。
本実施例におけるプロセスフローを図3に示す。ブロック共重合体に金属微粒子を分散させたマスターバッチ材料[図3(a)]、添加剤、ベース樹脂をドライブブレンドにて成形用樹脂材料とした以外は実施例2と同様な方法で成形、めっきを行った。
添加剤としては実施例1と同様に次亜リン酸カルシウムを用いた。0.5重量部の添加剤を5重量部のマスターバッチ材料とあわせ、実施例1と同様なベース樹脂材料とドライブブレンドにて成形用樹脂材料とした。実施例1と同様な金型、成形方法にて成形体を得た[図3(b)]。続いて本実施例に成形体を実施例1と同様な方法にて無電解めっき[図3(c)]、電解めっきを行った[図3(d)]。その結果、成形直後のめっき反応性およびめっき密着強度に問題は発生しなかった。本実施例により、添加剤は予め溶融混錬しても成形直前に添加しても機能を維持することがわかった。
[比較例1]
本比較例においては、予め還元剤をブロック共重合体に混合しなかった以外は実施例1と同様な方法で金属微粒子の分散および成形、めっきを行った。
本比較例の成形直後における成形体のめっき反応性は低く、特にゲート近傍においては全くめっき反応しなかった。20ショット連続でめっきを施したが、めっき被膜が全面に形成されたサンプルは1枚もなかった。24時間経過後、再度めっきを行ったところ、ゲート近傍のめっき反応性はやや低いものの全面めっき反応した。めっき密着強度も10N/cmと目標に達していた。調査の結果、およそ12時間経過以降にめっき反応性が向上することがわかった。また常温放置でなく80度以上の温度で例えば1時間アニールすると上述のような時間経過を待たずして同様にめっき反応性が向上することがわかった。これら現象より、結晶化度の変化やアニールによる分子間の弛緩によりナノもしくはサブナノ粒子である金属微粒子が表面に移動し、実効的な触媒活性が向上したと推定された。成形直後のめっき反応性が低いのは剪断発熱等の影響で金属微粒子が熱凝集する等により実効的な表面活性が低下していると推定される。
本比較例においては、予め還元剤をブロック共重合体に混合しなかった以外は実施例1と同様な方法で金属微粒子の分散および成形、めっきを行った。
本比較例の成形直後における成形体のめっき反応性は低く、特にゲート近傍においては全くめっき反応しなかった。20ショット連続でめっきを施したが、めっき被膜が全面に形成されたサンプルは1枚もなかった。24時間経過後、再度めっきを行ったところ、ゲート近傍のめっき反応性はやや低いものの全面めっき反応した。めっき密着強度も10N/cmと目標に達していた。調査の結果、およそ12時間経過以降にめっき反応性が向上することがわかった。また常温放置でなく80度以上の温度で例えば1時間アニールすると上述のような時間経過を待たずして同様にめっき反応性が向上することがわかった。これら現象より、結晶化度の変化やアニールによる分子間の弛緩によりナノもしくはサブナノ粒子である金属微粒子が表面に移動し、実効的な触媒活性が向上したと推定された。成形直後のめっき反応性が低いのは剪断発熱等の影響で金属微粒子が熱凝集する等により実効的な表面活性が低下していると推定される。
[比較例2]
本比較例においては、還元剤を添加しなかった以外は、実施例2と同様な方法で金属微粒子の分散したブロック共重合体の分散したペレットとベース樹脂を押し出し成形にて溶融混錬したペレットを作製し、それにより実施例1と同様な成形めっき方法でめっき性能を評価した。
本比較例の成形直後のめっき反応性は著しく低く、表面の5〜10%程度しかめっき反応しなかった。24時間経過後も80%程度めっき膜が被覆する程度であり、全面均一にめっき膜は成長しなかった。120度1時間アニールすることにより、ほぼ全面めっき膜が被覆した。本比較例の成形体は押し出し成形における剪断発熱を伴う熱履歴を経ることにより、金属微粒子の熱凝集もしくは触媒活性低下が著しく進行したものと推定される。
本比較例においては、還元剤を添加しなかった以外は、実施例2と同様な方法で金属微粒子の分散したブロック共重合体の分散したペレットとベース樹脂を押し出し成形にて溶融混錬したペレットを作製し、それにより実施例1と同様な成形めっき方法でめっき性能を評価した。
本比較例の成形直後のめっき反応性は著しく低く、表面の5〜10%程度しかめっき反応しなかった。24時間経過後も80%程度めっき膜が被覆する程度であり、全面均一にめっき膜は成長しなかった。120度1時間アニールすることにより、ほぼ全面めっき膜が被覆した。本比較例の成形体は押し出し成形における剪断発熱を伴う熱履歴を経ることにより、金属微粒子の熱凝集もしくは触媒活性低下が著しく進行したものと推定される。
Claims (6)
- 無電解めっき用触媒となる金属微粒子を含む第一の熱可塑性樹脂と第二の熱可塑性樹脂とを混合して成形した成形体に無電解めっき膜を形成する熱可塑性樹脂のめっき方法において、
少なくとも前記第一の熱可塑性樹脂に添加剤を混合し、
前記添加剤が酸化防止剤、熱安定剤、還元剤の少なくとも1種類を含み、
前記添加剤を成形体全体に対して0.01〜5重量部の範囲で混合して成形することを特徴とする熱可塑性樹脂のめっき方法。 - 前記添加剤は次亜リン酸ナトリウムもしくは次亜リン酸カルシウムの少なくとも1種類を含むことを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂のめっき方法。
- 前記第一の熱可塑性樹脂は親水性付与セグメントを有するブロック共重合体からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱可塑性樹脂のめっき方法。
- 金属微粒子の分散した熱可塑性樹脂ペレットであり、前記ペレットは酸化防止剤、熱安定剤、還元剤の少なくとも1種類の添加剤が1〜20重量部の範囲で混合されていることを特徴とする熱可塑性樹脂ペレット。
- 前記ペレットは親水性付与セグメントを有するブロック共重合体を含むことを特徴とする請求項4記載の熱可塑性樹脂ペレット。
- 前記ペレットは無電解めっき用マスターバッチ材料であることを特徴とする請求項4または請求項5の熱可塑性樹脂ペレット。
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JP2014264994A JP2016125075A (ja) | 2014-12-26 | 2014-12-26 | 熱可塑性樹脂のめっき方法および金属微粒子の分散した熱可塑性樹脂ペレット |
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JP2018053334A (ja) * | 2016-09-30 | 2018-04-05 | マクセルホールディングス株式会社 | メッキ部品の製造方法 |
TWI633203B (zh) * | 2016-07-29 | 2018-08-21 | 羅門哈斯電子材料有限公司 | 用於在不導電基板之表面上鍍敷的方法 |
CN115747778A (zh) * | 2022-11-16 | 2023-03-07 | 浙江鑫柔科技有限公司 | 一种负极集流体的制备方法 |
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2014
- 2014-12-26 JP JP2014264994A patent/JP2016125075A/ja active Pending
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