JP2016121275A - ポリカーボネート樹脂組成物 - Google Patents
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Description
さらに、従来の芳香族ポリカーボネートに代わる材料として、再生可能なバイオマス資源を原料としたバイオマスプラスチックの一つである、糖質から製造可能なエーテルジオール残基から得られる非晶性の脂肪族ポリカーボネート樹脂の開発が進められている(特許文献1〜3)。
例えば、特開2007−70438号公報(特許文献4)や国際公開第2008/146719号(特許文献5)にはイソソルビドポリカーボネート樹脂にアクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフト共重合体(ABS樹脂)などの付加重合型ポリマーを添加した樹脂組成物が開示されている。
[1]ポリカーボネート樹脂(A)を主成分とし、水素添加されたポリウレタン系エラストマー(B)1.0〜20質量%を含有することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
[2]前記ポリカーボネート樹脂(A)が下記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位(a)を含む脂肪族ポリカーボネート樹脂であることを特徴とする[1]に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[4]前記脂肪族ポリカーボネート樹脂がシクロヘキサンジメタノールに由来する構造単位(b)を更に含むことを特徴とする[2]又は[3]に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[5]前記脂肪族ポリカーボネート樹脂に含まれる、上記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位(a)と脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位との比率(モル%)が95:5〜30:70の範囲であることを特徴とする[2]〜[4]のいずれか1つに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[6]前記ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる厚み0.10mmのシートにおいて、JIS K7136−1に基づき測定される全光線透過率が85%以上であり、かつ全ヘーズの値が10%以下であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれか1つに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[7][1]〜[6]のいずれか1つに記載のポリカーボネート樹脂組成物を加工してなるフィルム、シート又は成形品。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物(以下、「本組成物」ともいう)は、ポリカーボネート樹脂(A)を主成分とする。ここで主成分とは、通常50質量%を超え、好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であることをいう。
ポリカーボネート樹脂(A)を主成分とすることにより、本組成物が耐熱性、表面硬度、耐衝撃性のバランスに優れる。
これらのジヒドロキシ化合物は、フェノール性水酸基を有しないため、通常界面法で重合させることは困難であり、本発明に係るポリカーボネート樹脂(A)は、通常炭酸ジエステルを用いたエステル交換反応により製造される。
脂肪族ジヒドロキシ化合物として、例えば、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、水素化ジリノレイルグリコール、水素化ジオレイルグリコール等が挙げられる。
脂環式ジヒドロキシ化合物としては、特に限定されないが、通常、5員環構造又は6員環構造を含む化合物が挙げられる。脂環式ジヒドロキシ化合物が5員環構造又は6員環構造であることにより、得られるポリカーボネート樹脂(A)の耐熱性が高くなる傾向がある。6員環構造は共有結合によって椅子形もしくは舟形に固定されていてもよい。脂環式ジヒドロキシ化合物に含まれる炭素数は通常70以下であり、好ましくは50以下、さらに好ましくは30以下である。炭素数が70以下の脂環式ジヒドロキシ化合物であれば、合成・精製しやすく、また安価で入手しやすいため好ましい。
HOCH2−R9−CH2OH (I)
HO−R10−OH (II)
(但し、式(I),式(II)中、R9及びR10は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の炭素数4〜炭素数20のシクロアルキル構造を含む二価の基を表す。)
また前記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物は一般に不活性雰囲気下でも熱分解しやすいため、ガラス転移温度を係る範囲にすることにより溶融樹脂温度を過度に高く設定する必要をなくすことができれば、著しい熱分解を引き起こすおそれも小さいため好ましい。
このため、重合反応の終末段階で前記芳香族系ジヒドロキシ化合物を少量添加すれば、重合末端を前記芳香族系ジヒドロキシ化合物で塞ぐことで、加熱したりフェノール脱気したりしても重合反応が急激にならずにすむ効果が期待できる。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)は、エステル交換反応により重縮合させて得ることができる。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)は、上述のようにエステル交換反応させて得られる。より詳細には、エステル交換させ、副生するモノヒドロキシ化合物等を系外に除去することによって得られる。この場合、通常エステル交換反応触媒の存在下でエステル交換反応により重縮合を行う。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)は、前記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と、前記一般式(5)で表される炭酸ジエステルとを触媒の存在下、エステル交換反応により重縮合させることによって得ることができる。
この時、原料であるジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルは、エステル交換反応前に均一に混合してもよいし、混合せずに重合槽へ同時に投入されてもよいが、均一に混合することが好ましい。
また、前記モル比率が1.200以下であれば、エステル交換反応の速度の低下などの可能性が小さく、所望する高分子量のポリカーボネート樹脂が得られるため好ましい。エステル交換反応速度の低下は、重合反応時の熱履歴を増大させ、結果的に得られたポリカーボネート樹脂(A)の色相または耐光性を悪化させるおそれがある。
変動幅が0.07以下であれば、均一な重合が進行するために得られる分子量の幅が広くなり過ぎず、均一で成形性の良好なポリカーボネート樹脂が得られ、その結果として均一な成形体が得られるため好ましい。
ベント圧が上記範囲であれば、残存するモノマーや発生するガスを十分に脱気することが可能であり、ストランド状に押し出す際に、ストランドが切れたり、押出機においてポリカーボネート樹脂の重合反応や分解が進行したりするおそれが小さいため好ましい。
押出機へ投入される樹脂量、押出機の回転数、バレル温度、ベント圧力を可能な限り一定にすることにより、均一な樹脂を得られるようになる。
また、ベントやベント以降の配管を40℃以上に保温することにより、留出するモノマーがベントやベント以降の配管で固化せずに、均一なベント圧力を保持することができる。
水冷を使用する際は、イオン交換樹脂等で水中の金属分を取り除き、さらにフィルターにて、水中の異物を取り除いた水を使用することが好ましい。用いるフィルターの目開きは、99%除去の濾過精度として10〜0.45μmであることが好ましい。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)の分子量は、還元粘度で表すことができ、本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)の還元粘度は、通常0.30dL/g以上が好ましく、0.35dL/g以上がより好ましく、また、1.20dL/g以下が好ましく、1.00dL/g以下がより好ましく、0.80dL/g以下が更に好ましい。
ここで、ポリカーボネート樹脂(A)の還元粘度の範囲幅とは、連続的に製造されるポリカーボネート樹脂(A)について、例えば4〜24時間にわたって、連続的に又は1〜8時間に1回の頻度で、還元粘度を測定することにより、還元粘度の経時変化を調べた場合、その最大値と最小値との差に該当するものである。
還元粘度の範囲幅の小さいポリカーボネート樹脂(A)を製造する方法としては、圧力や温度を制御して最終重合槽の攪拌を一定にし、攪拌電流値や攪拌トルクを一定にしたり、重合槽以降のギアポンプの電流値を一定にしたりすることが望ましい。
本発明において使用されるポリウレタン系エラストマーはジイソシアネートとジオールの共重合体であり、構造中のイソシアネートは水素添加されている。芳香族系のイソシアネートを構造中に有している場合、水素添加されることで構造中の芳香族環が脂環族へと転換されるため、耐UV変色性に更に優れる。また、ポリウレタン系エラストマーの高分子量ジオールは耐加水分解性の観点から、PTMG(ポリテトラメチレンエーテルグルコール)に代表されるようなポリエーテルがより好ましい。高分子量ジオールがポリエーテルの場合、耐加水分解性に特に優れることから、本組成物の耐久性の面でも好ましい。
本発明のもう一つの要旨は、本組成物を用いてなるシート(以下、「本シート」と称する)にある。本シートの製造方法は、特に限定されるものではない。例えばポリカーボネート樹脂(A)、ポリウレタン系エラストマー(B)、および必要に応じてその他の樹脂、添加剤を単軸、あるいは、二軸押出機等で溶融混練し、Tダイ(口金)によりシート状に押出し、キャスティングロールで急冷、固化することにより、無延伸シートを作製することができる。
本シートの厚みは、特に限定するものではないが、例えば加工性、実用性を考慮した場合、0.05mm以上、1.0mm以下であることが好ましく、0.10mm以上、0.50mm以下であることがより好ましい。本シートの厚みが0.05mm以上であれば、好適なシートの耐衝撃性や柔軟性に優れる。
(1)透明性(全光線透過率)
本組成物は透明性に優れるものであり、意匠性、内容物の視認性等の観点から、JIS K7136−1(1997年)に基づき測定される、単層の本シートの厚み0.10mmでの全光線透過率が85%以上であることが好ましく、88%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることが特に好ましい。
本組成物は透明性に優れるものであり、JIS K7136−1(1997年)に基づき測定される、単層の本シートの厚み0.10mmでの全ヘーズが10%以下であることが好ましく、5%以下であることがさらに好ましく、3%以下であることが特に好ましい。
本組成物は無色透明な外観に優れるものであり、JIS K7105に基づき測定される、厚み0.10mmの本単層シートのYIが5.0以下であることが好ましく、2.0以下であることがさらに好ましく、1.0以下であることが特に好ましい。
本組成物は耐侯性に優れるものであり、超促進耐候性試験機アイスーパーにより耐候性試験を行った後、上記記載と同様の方法で測定される透明性、色差・測色が掛かる範囲であれば、本組成物およびに本シートが特に耐候性に優れているものとなる。
本組成物は機械特性、特に耐衝撃性に優れるものであり、ASTM D3763に基づき測定される雰囲気温度が−20℃、23℃におけるハイドロショット高速衝撃試験の破壊エネルギーの値が共に80kgf・mm以上であることが好ましく、100kgf・mm以上であることがさらに好ましく、120kgf・mm以上であることが特に好ましい。−20℃、23℃におけるハイドロショット高速衝撃試験の破壊エネルギーの値が80kgf・mm以上であれば、本組成物および本シートが低温から常温での幅広い温度条件において耐衝撃性に優れるものとなる。
本組成物は柔軟性に優れるものであり、JIS K7127−2に基づき、試験速度200mm/minで測定される厚み0.100mmの本シートの引張破断伸びが150%以上であることが好ましく、180%以上であることがさらに好ましい。引張破断伸びが掛かる範囲であれば、本組成物およびに本シートが特に柔軟性に優れているものとなる。
なお、一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいい(JIS K6900)、「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、その厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいう。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
一方、本発明にかかるポリカーボネート樹脂組成物を用いた成形体は、芳香族ポリカーボネート樹脂よりも柔軟性を兼ね備えたシートを得ることができる。また脂肪族系であるため耐候性に優れており、長期間屋外で使用されたりする熱成形用途に好適に使用することができる。
(1)透明性(全光線透過率、全ヘーズ値)
全光線透過率はJIS K7136−1(1997年)に基づいて測定を行った。本組成物を成形してなる0.10mmの単層シートの全光線透過率が85%以上のものを「○」、85%未満のものを「×」とした。
また、全ヘーズについてもJIS K7136−1(1997年)に基づいて測定を行った。本組成物を成形してなる0.10mmの単層シートの全ヘーズが10%以下のものを「○」、10%を超えるものを「×」とした。
(2)色差・測色(YI)
YI値測定はJIS K7105に基づき測定を行った。本組成物を成形してなる0.10mmの単層シートのYIが5.0以下であるものを「○」、5.0を超えるものを「×」とした。
(3)耐候性
耐候性試験は岩崎電気株式会社製SUV−W151を用い、紫外線照度70mW、ブラックパネル温度63℃、湿度50%RHの条件下で50時間照射試験を行った。試験後の透明性、およびYIを上記(1)、(2)の方法で測定した。
(4)耐衝撃性
耐衝撃性はASTM D3763に基づき測定される、雰囲気温度が−20℃、23℃におけるハイドロショット高速衝撃試験の破壊エネルギーの値が共に100kg・mm以上のものを「○」、100kg・mm未満のものを「×」とした。
(5)柔軟性(引張伸び)
本組成物は柔軟性に優れるものであり、JIS K7127−2に基づき、試験速度200mm/minで測定される厚み0.10mmの本シートの引張破断伸びが150%以上のものを「○」、150%未満のものを「×」とした。
[ポリカーボネート樹脂(PC)]
PC−1:脂肪族ポリカーボネート樹脂:イソソルビドに由来する構造単位/1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する構造単位=50/50モル%
PC−2:脂肪族ポリカーボネート樹脂:イソソルビドに由来する構造単位/1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する構造単位=70/30モル%
EX−1:脂環族ポリウレタン系エラストマー
イソシアネート成分:ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート31.7wt%、グリコール成分:1,4−ブタジオール11.5wt%、PTMG56.8wt%(なお、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネートの構造式は下記式(7)のとおりである。)
イソシアネート成分:ジフェニルメタンジイソシアネート31.7wt%、グリコール成分:1,4−ブタジオール11.5wt%、PTMG56.8wt%(なお、ジフェニルメタンジイソシアネートの構造式は下記式(8)のとおりである。)
PC−1、及び、EX−1を混合質量比95:5の割合でドライブレンドした後、25mmφ同方向二軸押出機を用いて230℃で混練し、Tダイ(口金)よりシート状に押出し、次いで約90℃のキャスティングロールにて急冷し、厚み0.10mmのシートを作製した。得られたシートについて、各種評価を行った。結果を表1に示す。
PC−1、及び、EX−1を混合質量比90:10の割合でドライブレンドした以外は実施例1と同様の方法でシートの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
PC−1、及び、EX−1を混合質量比85:15の割合でドライブレンドした以外は実施例1と同様の方法でシートの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
PC−2、及び、EX−1を混合質量比95:5の割合でドライブレンドした以外は実施例1と同様の方法でシートの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
PC−1を単独で用い、実施例1と同様の方法でシートの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
PC−1、及び、EX−2を混合質量比95:5の割合でドライブレンドした以外は実施例1と同様の方法でシートの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
PC−1、及び、EX−3を混合質量比95:5の割合でドライブレンドした以外は実施例1と同様の方法でシートの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
PC−2を単独で用い、実施例1と同様の方法でシートの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
Claims (7)
- ポリカーボネート樹脂(A)を主成分とし、水素添加されたポリウレタン系エラストマー(B)1.0〜20質量%を含有することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
- 前記ポリウレタン系エラストマー(B)の高分子量ジオール成分がポリエーテルであることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 前記脂肪族ポリカーボネート樹脂がシクロヘキサンジメタノールに由来する構造単位(b)を更に含むことを特徴とする請求項2又は3に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 前記脂肪族ポリカーボネート樹脂に含まれる、上記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位(a)と脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位との比率(モル%)が95:5〜30:70の範囲であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 前記ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる厚み0.10mmのシートにおいて、JIS K7136−1に基づき測定される全光線透過率が85%以上であり、かつ全ヘーズの値が10%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物を加工してなるフィルム、シート又は成形品。
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