JP2016121275A - ポリカーボネート樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】透明性を損なうことなく、耐候性や、幅広い温度領域における耐衝撃性、柔軟性などのバランスに優れたポリカーボネート樹脂組成物を提供する。【解決手段】ポリカーボネート樹脂(A)を主成分とし、水素添加されたポリウレタン系エラストマー(B)1.0〜20質量%を含有することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明はカーボネート重合体からなるポリカーボネート樹脂組成物であって、透明性、柔軟性、耐衝撃性のバランスに優れたポリカーボネート樹脂組成物に関する。
ポリカーボネートは透明性、耐衝撃性、耐熱性に優れた材料であることから、透明プラスチック材料はガラス窓の代替や、ディスプレイ前面板、位相差フィルム、偏光板保護フィルムなどの光学フィルムから、自動車用途においてはヘッドランプやテールランプカバーなど、様々な用途として検討又は使用されている。
さらに、従来の芳香族ポリカーボネートに代わる材料として、再生可能なバイオマス資源を原料としたバイオマスプラスチックの一つである、糖質から製造可能なエーテルジオール残基から得られる非晶性の脂肪族ポリカーボネート樹脂の開発が進められている(特許文献1〜3)。
特許文献1〜3に開示されているような脂肪族ポリカーボネートは芳香族ポリカーボネートと同等の透明性や機械特性を有し、さらには耐候性に優れていることから、ディスプレイなどの屋外でも長期使用される用途や自動車内外装材など広範囲な分野において期待されている材料である。しかし、低温(−20℃)における耐衝撃性や柔軟性が弱く、脆性破壊してしまうという欠点を有する。そこで、耐衝撃性を向上することを目的としてポリカーボネート樹脂にエラストマーやゴムなどの弾性体をブレンドすることで、耐衝撃性を向上させる検討が開示されている。
例えば、特開2007−70438号公報(特許文献4)や国際公開第2008/146719号(特許文献5)にはイソソルビドポリカーボネート樹脂にアクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフト共重合体(ABS樹脂)などの付加重合型ポリマーを添加した樹脂組成物が開示されている。
特開昭56−55425号公報 特公昭63−14731号公報 特開2008−24919号公報 特開2007−70438号公報 国際公開第2008/146719号
しかし、ABS樹脂をポリカーボネート樹脂に添加することによりポリカーボネート樹脂の耐熱性や透明性が低下することが懸念される。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、透明性を損なうことなく、耐候性や、幅広い温度領域における耐衝撃性、柔軟性などのバランスに優れたポリカーボネート樹脂組成物を提供することにある。
すなわち本発明は以下の通りである。
[1]ポリカーボネート樹脂(A)を主成分とし、水素添加されたポリウレタン系エラストマー(B)1.0〜20質量%を含有することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
[2]前記ポリカーボネート樹脂(A)が下記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位(a)を含む脂肪族ポリカーボネート樹脂であることを特徴とする[1]に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
Figure 2016121275
[3]前記ポリウレタン系エラストマー(B)の高分子量ジオール成分がポリエーテルであることを特徴とする[1]又は[2]に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[4]前記脂肪族ポリカーボネート樹脂がシクロヘキサンジメタノールに由来する構造単位(b)を更に含むことを特徴とする[2]又は[3]に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[5]前記脂肪族ポリカーボネート樹脂に含まれる、上記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位(a)と脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位との比率(モル%)が95:5〜30:70の範囲であることを特徴とする[2]〜[4]のいずれか1つに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[6]前記ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる厚み0.10mmのシートにおいて、JIS K7136−1に基づき測定される全光線透過率が85%以上であり、かつ全ヘーズの値が10%以下であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれか1つに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[7][1]〜[6]のいずれか1つに記載のポリカーボネート樹脂組成物を加工してなるフィルム、シート又は成形品。
ポリカーボネート樹脂に水素添加されたポリウレタン系エラストマーを添加することで、透明性、耐候性を維持したまま、耐衝撃性、柔軟性を付与することが可能である。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の内容に限定されない。
[ポリカーボネート樹脂(A)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物(以下、「本組成物」ともいう)は、ポリカーボネート樹脂(A)を主成分とする。ここで主成分とは、通常50質量%を超え、好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であることをいう。
ポリカーボネート樹脂(A)を主成分とすることにより、本組成物が耐熱性、表面硬度、耐衝撃性のバランスに優れる。
ポリカーボネートは、炭酸とジヒドロキシ化合物とのポリエステルであり、炭酸と2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン(通称ビスフェノールA)とを構造単位とする芳香族ポリカーボネートはもちろんのこと、本発明ではこれに限定されるわけではなく、例えば1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルキルシクロアルカン、1,1−ビス(3−置換−4−ヒドロキシフェニル)アルキルシクロアルカン、1,1−ビス(3,5−置換−4−ヒドロキシフェニル)アルキルシクロアルカン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン類からなる群から選択される少なくとも1種の2価フェノールをモノマー成分とするホモまたは共重合ポリカーボネート、上記2価フェノールとビスフェノールAをモノマー成分とするポリカーボネートとの混合物、上記2価フェノールとビスフェノールAとをモノマー成分とする共重合ポリカーボネートが挙げられる。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)としては、高耐候性の点より、構造の一部に下記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)を含む脂肪族ポリカーボネート樹脂が好ましい。
Figure 2016121275
前記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物としては、例えば、立体異性体の関係にある、イソソルビド、イソマンニドおよびイソイデッドが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのジヒドロキシ化合物は、フェノール性水酸基を有しないため、通常界面法で重合させることは困難であり、本発明に係るポリカーボネート樹脂(A)は、通常炭酸ジエステルを用いたエステル交換反応により製造される。
これらのジヒドロキシ化合物のうち、中でも植物由来の資源として豊富に存在し、容易に入手可能な種々のデンプンから製造されるソルビトールを脱水縮合して得られるイソソルビドが、入手および製造のし易さ、耐光性、光学特性、成形性、耐熱性並びにカーボンニュートラルの面から最も好ましい。
尚、イソソルビドに代表されるような前記一般式(1)で表される環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物は、酸素によって徐々に酸化されやすい。このため、保管や、製造時の取り扱いの際には、酸素による分解を防ぐため、水分が混入しないようにし、また、脱酸素剤を用いたり、窒素雰囲気下にしたりすることが肝要である。イソソルビドが酸化されると、蟻酸をはじめとする分解物が発生する。例えば、これら分解物を含むイソソルビドを用いてポリカーボネート樹脂を製造すると、得られるポリカーボネート樹脂に着色が発生したり、物性を著しく劣化させたりする原因となる。あるいは重合反応に影響を与え、高分子量の重合体が得られないこともあり好ましくない。ただし、蟻酸の発生を防止するための安定剤を添加した場合、安定剤の種類によっては、得られるポリカーボネート樹脂に着色が発生したり、物性を著しく劣化させたりすることがある。
そこで、本発明では、下記のような特定の安定剤を用いることが好ましい。安定剤としては、還元剤、制酸剤、抗酸化剤、脱酸素剤、光安定剤、pH安定剤、熱安定剤等の安定剤を用いることが好ましく、特に酸性下ではジヒドロキシ化合物が変質しやすいことから、塩基性安定剤を含むことが好ましい。このうち還元剤としては、ナトリウムボロハイドライド、リチウムボロハイドライド等が挙げられ、制酸剤としては水酸化ナトリウム等のアルカリが挙げられる。ただし、アルカリ金属塩の添加は、アルカリ金属が重合触媒となる場合があるので、過剰に添加し過ぎると重合反応を制御できなくなり、好ましくない。
ジヒドロキシ化合物中の塩基性安定剤の含有量は特に制限はないが、ジヒドロキシ化合物の変質を防止する効果の発現と、ジヒドロキシ化合物の変性の抑制についてのバランスを取る観点から、通常、ジヒドロキシ化合物に対して0.0001質量%〜1質量%、好ましくは0.001質量%〜0.1質量%である。
また、これら塩基性安定剤を含有したジヒドロキシ化合物をポリカーボネート樹脂の製造原料として用いると、塩基性安定剤自体が重合触媒となり、重合速度や品質の制御が困難になるだけでなく、初期色相の悪化を招き、結果的に得られる本組成物の耐光性を悪化させるおそれがある。従って、ジヒドロキシ化合物をポリカーボネート樹脂の製造原料として使用する前に、塩基性安定剤をイオン交換樹脂や蒸留等で除去することが好ましい。
また、保管、製造時の取り扱いの際に生成した酸化分解物を含まないジヒドロキシ化合物を得るために、或いは、前述の塩基性安定剤を除去するためには、ジヒドロキシ化合物の蒸留精製を行うことが好ましい。この場合の蒸留とは単蒸留であっても、連続蒸留であってもよく、特に限定されない。蒸留の条件としてはアルゴンや窒素等の不活性ガス雰囲気において、減圧下で蒸留を実施することが好ましく、熱による変性を抑制するためには、250℃以下、好ましくは200℃以下、特に好ましくは180℃以下の条件で行うことが好ましい。
このような蒸留精製により、前記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物中の蟻酸含有量を20質量ppm以下、好ましくは10質量ppm以下、特に好ましくは5質量ppm以下にすることにより、ポリカーボネート樹脂製造時の重合反応性を損なうことなく、色相や熱安定性に優れたポリカーボネート樹脂の製造が可能となる。
前記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)は剛直であるため、ポリカーボネート樹脂中の前記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)が多すぎると、硬く、脆くなる傾向があり、成形性または機械物性が低下する可能性がある。逆に少なすぎると、ポリカーボネート樹脂の耐熱性が低下する可能性がある。そのため、ポリカーボネート樹脂の製造には、前記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物と共に、その他のジヒドロキシ化合物を適宜用いることにより、ポリカーボネート樹脂の耐熱性や柔軟性や成形性のバランスを取ることが好ましい。
ポリカーボネート樹脂(A)の柔軟性の付与等のためにポリカーボネート樹脂(A)に前記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)以外のその他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を導入する場合、本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)は、ジヒドロキシ化合物に由来する全構造単位に対して、前記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)を、通常30mol%以上含むことが好ましく、より好ましくは35mol%以上、特に好ましくは40mol%以上である。また、前記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)は、ジヒドロキシ化合物に由来する全構造単位に対して、通常95mol%以下含むことが好ましく、より好ましくは85mol%以下、特に好ましくは75mol%以下である。
ジヒドロキシ化合物に由来する全構造単位に対する前記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)の割合が30mol%以上であれば、本組成物が耐熱性や表面硬度に優れるものとなるため好ましい。一方、95mol%以下であれば、本組成物の吸水率が低くなり、また熱による劣化が少なくなるため好ましい。
ポリカーボネート樹脂(A)に導入される前記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)以外のその他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位としては、脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位や脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位が挙げられる。その脂肪族ジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物としては、具体的には、次のようなものが挙げられる。
<脂肪族ジヒドロキシ化合物>
脂肪族ジヒドロキシ化合物として、例えば、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、水素化ジリノレイルグリコール、水素化ジオレイルグリコール等が挙げられる。
尚、前記例示化合物は、本発明に使用し得る脂肪族ジヒドロキシ化合物の一例であって、何らこれらに限定されるものではない。これらの脂肪族ジヒドロキシ化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明で用いるポリカーボネート樹脂(A)において、前記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)と脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位とのモル比率は、任意の割合で選択できるが、前記モル比率を調整することで、剛性と耐衝撃性のバランスを取ったり、適当な成形加工性を設計したりすることができる。
<脂環式ジヒドロキシ化合物>
脂環式ジヒドロキシ化合物としては、特に限定されないが、通常、5員環構造又は6員環構造を含む化合物が挙げられる。脂環式ジヒドロキシ化合物が5員環構造又は6員環構造であることにより、得られるポリカーボネート樹脂(A)の耐熱性が高くなる傾向がある。6員環構造は共有結合によって椅子形もしくは舟形に固定されていてもよい。脂環式ジヒドロキシ化合物に含まれる炭素数は通常70以下であり、好ましくは50以下、さらに好ましくは30以下である。炭素数が70以下の脂環式ジヒドロキシ化合物であれば、合成・精製しやすく、また安価で入手しやすいため好ましい。
5員環構造又は6員環構造を含む脂環式ジヒドロキシ化合物としては、具体的には、下記一般式(I)又は一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物が挙げられる。
HOCH−R−CHOH (I)
HO−R10−OH (II)
(但し、式(I),式(II)中、R及びR10は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の炭素数4〜炭素数20のシクロアルキル構造を含む二価の基を表す。)
前記一般式(I)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるシクロヘキサンジメタノールとしては、一般式(I)において、Rが下記一般式(Ia)(式中、R11は水素原子、又は、置換若しくは無置換の炭素数1〜炭素数12のアルキル基を表す。)で示される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
Figure 2016121275
前記一般式(I)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるトリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノールとしては、一般式(I)において、Rが下記一般式(Ib)(式中、nは0又は1を表す。)で表される種々の異性体を包含する。
Figure 2016121275
前記一般式(I)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるデカリンジメタノール又は、トリシクロテトラデカンジメタノールとしては、一般式(I)において、Rが下記一般式(Ic)(式中、mは0又は1を表す。)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、2,6−デカリンジメタノール、1,5−デカリンジメタノール、2,3−デカリンジメタノール等が挙げられる。
Figure 2016121275
また、前記一般式(I)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるノルボルナンジメタノールとしては、一般式(I)において、Rが下記一般式(Id)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、2,3−ノルボルナンジメタノール、2,5−ノルボルナンジメタノール等が挙げられる。
Figure 2016121275
一般式(I)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるアダマンタンジメタノールとしては、一般式(I)において、Rが下記一般式(Ie)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、1,3−アダマンタンジメタノール等が挙げられる。
Figure 2016121275
また、前記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるシクロヘキサンジオールは、一般式(II)において、R10が下記一般式(IIa)(式中、R11は水素原子、又は、置換もしくは無置換の炭素数1〜炭素数12のアルキル基を表す。)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、2−メチル−1,4−シクロヘキサンジオール等が挙げられる。
Figure 2016121275
前記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるトリシクロデカンジオール、ペンタシクロペンタデカンジオールとしては、一般式(II)において、R10が下記一般式(IIb)(式中、nは0又は1を表す。)で表される種々の異性体を包含する。
Figure 2016121275
前記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるデカリンジオール又は、トリシクロテトラデカンジオールとしては、一般式(II)において、R10が下記一般式(IIc)(式中、mは0又は1を表す。)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、2,6−デカリンジオール、1,5−デカリンジオール、2,3−デカリンジオール等が挙げられる。
Figure 2016121275
前記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるノルボルナンジオールとしては、一般式(II)において、R10が下記一般式(IId)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、2,3−ノルボルナンジオール、2,5−ノルボルナンジオール等が挙げられる。
Figure 2016121275
前記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるアダマンタンジオールとしては、一般式(II)において、R10が下記一般式(IIe)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては具体的には、1,3−アダマンタンジオール等が挙げられる。
Figure 2016121275
上述した脂環式ジヒドロキシ化合物の具体例のうち、シクロヘキサンジメタノール類、トリシクロデカンジメタノール類、アダマンタンジオール類、ペンタシクロペンタデカンジメタノール類が好ましく、入手のしやすさ、取り扱いのしやすさという観点から、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールがさらに好ましく、1,4−シクロヘキサンジメタノールが特に好ましい。
尚、前記例示化合物は、本発明に使用し得る脂環式ジヒドロキシ化合物の一例であって、何らこれらに限定されるものではない。これらの脂環式ジヒドロキシ化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明で用いるポリカーボネート樹脂(A)において、前記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)と脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位とのモル比率は、任意の割合で選択できるが、前記モル比率を調整することで、衝撃強度(例えば、ノッチ付きシャルピー衝撃強度)が向上する可能性があり、更にポリカーボネート樹脂の所望のガラス転移温度を得ることが可能である。
本発明で用いるポリカーボネート樹脂(A)のガラス転移温度は、90℃〜160℃であることが好ましく、100℃〜150℃がより好ましく、110℃〜145℃が更に好ましく、115℃〜143℃が特に好ましい。ポリカーボネート樹脂(A)のガラス転移温度が90℃以上であれば、本組成物が耐熱性に優れる。一方、ポリカーボネート樹脂(A)のガラス転移温度が160℃以下であれば、本組成物が成形性や透明性に優れる。
また前記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物は一般に不活性雰囲気下でも熱分解しやすいため、ガラス転移温度を係る範囲にすることにより溶融樹脂温度を過度に高く設定する必要をなくすことができれば、著しい熱分解を引き起こすおそれも小さいため好ましい。
なお、前記ガラス転移温度は、JIS−K7121(2012年)に準拠して、示差走査熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、DSC220)を用いて、10℃/分の昇温速度で加熱して測定する補外ガラス転移開始温度を指す。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)において、前記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)と脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位とのモル比率は95:5〜30:70であることが好ましく、75:25〜40:60であるのが更に好ましい。モル比率が前記範囲であれば、ポリカーボネート樹脂(A)について熱滞留に起因する着色が生じにくくなり、かつ、高分子量化や衝撃強度の向上、ガラス転移温度の維持による耐熱性の向上が可能となるため好ましい。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)においては、本発明の効果を阻害しない範囲において、前記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)、脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位、脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に加えて、更にその他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。その他のジヒドロキシ化合物としては、前記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物以外の、構造の一部に下記一般式(3)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物や、芳香族系ジヒドロキシ化合物等が挙げられる。
Figure 2016121275
(但し、上記一般式(3)で表される部位が−CH−O−Hの一部である場合を除く。)
前記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物以外の、構造の一部に前記一般式(3)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物としては、具体的には、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのオキシアルキレングリコール類、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチル−6−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレン等、側鎖に芳香族基を有し、主鎖に芳香族基に結合したエーテル基が前記一般式(3)で表される部位であるジヒドロキシ化合物が挙げられる。また、下記一般式(4a)で表される化合物や下記一般式(4b)で表される化合物に代表されるスピログリコール等の、環状エーテル構造を有する化合物等の複素環基の一部が前記一般式(3)で表される部位であるジヒドロキシ化合物が挙げられる。
なお、上記の「環状エーテル構造を有する化合物」の「環状エーテル構造」とは、環状構造中にエーテル基を有し、環状鎖を構成する炭素が脂肪族炭素である構造からなるものを意味する。これらの中でも、エーテル基を複数有するものが好ましく、環状エーテル構造を複数有するものがより好ましく、環状エーテル構造を2つ有するものが特に好ましい。
Figure 2016121275
(上記一般式(4a)中、R〜Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜炭素数3のアルキル基である。)
Figure 2016121275
上記一般式(4a)で表されるジヒドロキシ化合物としては、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(慣用名:スピログリコール)、3,9−ビス(1,1−ジエチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(1,1−ジプロピル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、ジオキサングリコールなどが挙げられる。
芳香族系ジヒドロキシ化合物としては、ビスフェノール化合物(置換、非置換を含む)が挙げられ、具体的には、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等の芳香族環上に置換基を有しないビスフェノール化合物;ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン等の芳香族環上に置換基としてアリール基を有するビスフェノール化合物;ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−(sec−ブチル)フェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシ−3,6−ジメチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,6−ジメチルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,6−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)シクロヘキサン等の芳香族環上に置換基としてアルキル基を有するビスフェノール化合物;ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジベンジルメタン等の芳香族環を連結する2価基が置換基としてアリール基を有するビスフェノール化合物;4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル等の芳香族環をエーテル結合で連結したビスフェノール化合物;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン等の芳香族環をスルホン結合で連結したビスフェノール化合物;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド等の芳香族環をスルフィド結合で連結したビスフェノール化合物等が挙げられるが、好ましくは2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(別称:ビスフェノールA)が挙げられる。
一般に、前記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物は、ビスフェノールAなどの芳香族系ジヒドロキシ化合物に比べて、重合反応の平衡定数が重合進行する方向へ傾いており、加熱したりフェノール脱気したりすると重合反応が急激になり反応制御が難しくなる傾向がある。
このため、重合反応の終末段階で前記芳香族系ジヒドロキシ化合物を少量添加すれば、重合末端を前記芳香族系ジヒドロキシ化合物で塞ぐことで、加熱したりフェノール脱気したりしても重合反応が急激にならずにすむ効果が期待できる。
ただし、前記芳香族系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位をポリカーボネート樹脂(A)中に多く含むと、本組成物の表面硬度が低下したりするおそれがあるほか、本組成物を屋外で使用した場合等において紫外線吸収により黄変が生じることがある。従って、前記芳香族系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位は、必要最小限の範囲で含んでもよいが、可能であれば含まないことが好ましい。
上述のその他のジヒドロキシ化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<炭酸ジエステル>
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)は、エステル交換反応により重縮合させて得ることができる。
用いられる炭酸ジエステルとしては、通常、下記一般式(5)で表されるものが挙げられる。これらの炭酸ジエステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
Figure 2016121275
但し、上記一般式(5)において、AおよびAは、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の炭素数1〜炭素数18の脂肪族基、または、置換若しくは無置換の芳香族基である。
前記式(5)で表される炭酸ジエステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネートなどのジアリールカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−t−ブチルカーボネートなどのジアルキルカーボネートが例示されるが、好ましくは、ジフェニルカーボネート、置換基を有するジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネートであり、ジアリールカーボネートの中でもジフェニルカーボネートが好ましい。
なお、炭酸ジエステルは、塩化物イオンなどの不純物を含む場合があり、これらの不純物は重合反応を阻害したり、得られるポリカーボネート樹脂(A)の色相を悪化させたりする場合があるため、必要に応じて、蒸留などにより精製したものを使用することが好ましい。
<エステル交換反応触媒>
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)は、上述のようにエステル交換反応させて得られる。より詳細には、エステル交換させ、副生するモノヒドロキシ化合物等を系外に除去することによって得られる。この場合、通常エステル交換反応触媒の存在下でエステル交換反応により重縮合を行う。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)の製造時に使用し得るエステル交換反応触媒(以下、単に「触媒」、「重合触媒」と言うことがある)は、特に波長350nmにおける光線透過率またはイエローインデックス(YI)値に影響を与えることがある。
用いる触媒としては、得られるポリカーボネート樹脂(A)の耐光性を満足させ得る、即ち後述のYI値を所定の値以下にし得るものが好ましく、例えば、長周期型周期表における第1族または第2族(以下、単に「1族」、「2族」と表記する。)の金属化合物、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物が挙げられる。これらの中でも、好ましくは1族金属化合物および2族金属化合物のうち少なくとも一方が使用される。
1族金属化合物および2族金属化合物のうち少なくとも一方と共に、補助的に、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物を併用することも可能であるが、1族金属化合物および2族金属化合物のうち少なくとも一方のみを使用することが特に好ましい。
また、1族金属化合物および2族金属化合物のうち少なくとも一方の形態としては通常、水酸化物、又は炭酸塩、カルボン酸塩、フェノール塩といった塩の形態で用いられるが、入手のし易さ、取扱いの容易さから、水酸化物、炭酸塩、酢酸塩が好ましく、色相と重合活性の観点からは酢酸塩が好ましい。
前記重合触媒の使用量は、好ましくは用いる全ジヒドロキシ化合物1mol当たり0.1〜300μmol、より好ましくは0.5〜100μmolである。中でもリチウムおよび長周期型周期表第2族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物を用いる場合、特にはマグネシウム化合物およびカルシウム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物を用いる場合、好ましくは用いる全ジヒドロキシ化合物1mol当たり金属量として0.1〜20μmol、より好ましくは0.5〜10μmol、特に好ましくは0.7〜3μmolである。
重合触媒の使用量が0.1μmol以上であれば、重合速度が一定以上となるため、所望の分子量のポリカーボネート樹脂を得ようとする際に、重合温度を高くする必要がなく、得られたポリカーボネート樹脂の色相または耐光性が悪化したり、未反応の原料が重合途中で揮発して前記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルのモル比率が変化し、所望の分子量に到達しなかったりするおそれが小さいため好ましい。一方、重合触媒の使用量が300μmol以下であれば、得られるポリカーボネート樹脂の色相や、ポリカーボネート樹脂の耐光性が悪化する可能性が小さいため好ましい。また、重合反応器内で十分に減圧せずに目標分子量に到達する可能性や、残存するモノマーが十分に脱気されない可能性が小さいため好ましい。
なお、1族金属、特にはリチウム、ナトリウム、カリウムおよびセシウムは、ポリカーボネート樹脂中に多く含まれると色相に悪影響を及ぼす可能性があり、該金属は使用する触媒からのみではなく、原料または反応装置から混入する場合がある。このため、ポリカーボネート樹脂中のこれらの化合物の合計量は、金属量として、通常1質量ppm以下であることが好ましく、より好ましくは0.8質量ppm以下、更に好ましくは0.7質量ppm以下である。
ポリカーボネート樹脂中の金属量は、湿式灰化などの方法でポリカーボネート樹脂中の金属を回収した後、原子発光、原子吸光またはInductively Coupled Plasma(ICP)等の方法を使用して測定することが出来る。
<ポリカーボネート樹脂(A)の製造方法>
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)は、前記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と、前記一般式(5)で表される炭酸ジエステルとを触媒の存在下、エステル交換反応により重縮合させることによって得ることができる。
この時、原料であるジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルは、エステル交換反応前に均一に混合してもよいし、混合せずに重合槽へ同時に投入されてもよいが、均一に混合することが好ましい。
混合の温度は通常80℃以上であることが好ましく、より好ましくは90℃以上であり、その上限は通常250℃以下であることが好ましく、より好ましくは200℃以下、更に好ましくは150℃以下である。中でも100℃以上120℃以下が好適である。混合の温度が80℃以上であれば、溶解速度が速くなり、溶解度不足に起因する固化等の運転不具合が生じるおそれが小さいため好ましい。また、混合の温度が250℃以下であれば、ジヒドロキシ化合物の熱劣化が生じるおそれが小さく、得られるポリカーボネート樹脂の色相や耐光性が良好となるため好ましい。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)の原料である前記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と前記一般式(5)で表される炭酸ジエステルとを混合する操作は、酸素濃度が、好ましくは10体積%以下、より好ましくは0.0001体積%〜10体積%、更に好ましくは0.0001体積%〜5体積%、特に好ましくは0.0001体積%〜1体積%である雰囲気下で行うことが、色相悪化防止の観点から好ましい。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)を得るためには、前記一般式(5)で表される炭酸ジエステルは、反応に用いる全ジヒドロキシ化合物に対して、0.900〜1.200のモル比率で用いることが好ましく、さらに好ましくは、0.995〜0.999、又は、1.001〜1.115のモル比率である。
前記モル比率が0.900以上であれば、製造されたポリカーボネート樹脂(A)の末端水酸基の増加を抑制でき、ポリマーの熱安定性の悪化や、成形時の着色、エステル交換反応の速度の低下などの可能性が小さく、所望する高分子量のポリカーボネート樹脂が得られるため好ましい。
また、前記モル比率が1.200以下であれば、エステル交換反応の速度の低下などの可能性が小さく、所望する高分子量のポリカーボネート樹脂が得られるため好ましい。エステル交換反応速度の低下は、重合反応時の熱履歴を増大させ、結果的に得られたポリカーボネート樹脂(A)の色相または耐光性を悪化させるおそれがある。
更には、用いる全ジヒドロキシ化合物に対する炭酸ジエステルのモル比率が1.200以下であれば、得られるポリカーボネート樹脂(A)中の残存炭酸ジエステル量が増加することなく、これらが紫外線を吸収してポリカーボネート樹脂(A)の耐光性を悪化させたり、成形加工時の臭気の原因となったり、金型の付着物が多くなったりするおそれが小さいため、好ましい。
また、用いる全ジヒドロキシ化合物に対する炭酸ジエステルのモル比率が0.999以下、又は1.001以上であれば、重合速度が速くなり過ぎず、重合が完結するまでの間に、最終重合槽で残存するモノマーを十分に脱気することが可能となり、樹脂中の残存モノマーの増大に起因する成形時の異臭やガス発生による気泡の発生、成形機での脈動などが発生するおそれが小さいため特に好ましい。
さらに連続重合で連続的に重合槽に原料混合物をフィードする場合は、ジヒドロキシ化合物に対する炭酸ジエステルのモル比の変動幅は通常0.07以下が好ましく、より好ましくは0.05以下、更に好ましくは0.03以下である。
変動幅が0.07以下であれば、均一な重合が進行するために得られる分子量の幅が広くなり過ぎず、均一で成形性の良好なポリカーボネート樹脂が得られ、その結果として均一な成形体が得られるため好ましい。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)は、上述の通り重縮合後、通常、冷却固化させ、回転式カッター等でペレット化される。
ペレット化の方法としては、限定されるものではないが、例えば、最終重合反応器から溶融状態で抜き出し、ストランドの形態で冷却固化させてペレット化させる方法、最終重合反応器から溶融状態で一軸または二軸の押出機に樹脂を供給し、溶融押出しした後、冷却固化させてペレット化させる方法、又は、最終重合反応器から溶融状態で抜き出し、ストランドの形態で冷却固化させて一旦ペレット化させた後に、再度一軸または二軸の押出機に樹脂を供給し、溶融押出しをした後、冷却固化させてペレット化させる方法等が挙げられる。
その際、押出機中で、残存モノマーの減圧脱気、または、通常知られている、熱安定剤、中和剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤、潤滑剤、可塑剤、相溶化剤若しくは難燃剤等を添加、混練することも出来る。
押出機中の、溶融混練温度は、ポリカーボネート樹脂(A)のガラス転移温度または分子量に依存するが、通常150〜300℃であることが好ましく、より好ましくは200〜270℃、更に好ましくは230〜260℃である。溶融混練温度を150℃以上とすることにより、ポリカーボネート樹脂の溶融粘度を低下し、押出機への負荷が小さくなり、生産性が向上する。また、溶融混練温度を300℃以下とすることにより、ポリカーボネート樹脂の熱劣化を抑え、分子量の低下による機械的強度の低下、着色またはガスの発生を防ぐことができる。
押出機において、減圧脱気する場合のベント圧は、通常5kPa〜0.001kPaであることが好ましく、より好ましくは3kPa〜0.005kPa、更に好ましくは2kPa〜0.007kPaである。
ベント圧が上記範囲であれば、残存するモノマーや発生するガスを十分に脱気することが可能であり、ストランド状に押し出す際に、ストランドが切れたり、押出機においてポリカーボネート樹脂の重合反応や分解が進行したりするおそれが小さいため好ましい。
押出機へ投入される樹脂量、押出機の回転数、バレル温度、ベント圧力を可能な限り一定にすることにより、均一な樹脂を得られるようになる。
また、ベントやベント以降の配管を40℃以上に保温することにより、留出するモノマーがベントやベント以降の配管で固化せずに、均一なベント圧力を保持することができる。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)を製造する際には、異物の混入を防止するため、フィルターを設置することが好ましい。フィルターの設置位置は押出機の下流側が好ましく、フィルターの異物除去の大きさ(目開き)は、99%除去の濾過精度として100μm以下が好ましい。特に、フィルム用途等で微少な異物の混入を嫌う場合は、40μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)の押出は、押出後の異物混入を防止するために、好ましくはJIS B9920(2002年)に定義されるクラス7、更に好ましくはクラス6より清浄度の高いクリーンルーム中で実施することが好ましい。
また、押出されたポリカーボネート樹脂(A)を冷却しチップ化する際は、空冷または水冷等の冷却方法を使用するのが好ましい。空冷の際に使用する空気は、ヘパフィルター等で空気中の異物を事前に取り除いた空気を使用し、空気中の異物の再付着を防ぐのが好ましい。
水冷を使用する際は、イオン交換樹脂等で水中の金属分を取り除き、さらにフィルターにて、水中の異物を取り除いた水を使用することが好ましい。用いるフィルターの目開きは、99%除去の濾過精度として10〜0.45μmであることが好ましい。
さらに得られるペレットの形状を一定にすることにより、成形性のよいポリカーボネート樹脂ペレットとなる。
<ポリカーボネート樹脂(A)の物性>
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)の分子量は、還元粘度で表すことができ、本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)の還元粘度は、通常0.30dL/g以上が好ましく、0.35dL/g以上がより好ましく、また、1.20dL/g以下が好ましく、1.00dL/g以下がより好ましく、0.80dL/g以下が更に好ましい。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)の還元粘度が0.30dL/g以上であれば、得られる本組成物の耐衝撃性や表面硬度などが良好となる。一方還元粘度が1.20dL/g以下であれば、ポリカーボネート樹脂(A)の流動性が低下することなく、生産性または成形性を維持できる。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)の還元粘度の範囲幅は、通常0.05dL/g以下が好ましく、0.04dL/g以下がより好ましい。還元粘度の範囲幅が0.05dL/g以下であれば、押出成形中の脈動や、成形品の厚み変動や幅変動を発生するおそれが小さいため好ましい。
ここで、ポリカーボネート樹脂(A)の還元粘度の範囲幅とは、連続的に製造されるポリカーボネート樹脂(A)について、例えば4〜24時間にわたって、連続的に又は1〜8時間に1回の頻度で、還元粘度を測定することにより、還元粘度の経時変化を調べた場合、その最大値と最小値との差に該当するものである。
還元粘度の範囲幅の小さいポリカーボネート樹脂(A)を製造する方法としては、圧力や温度を制御して最終重合槽の攪拌を一定にし、攪拌電流値や攪拌トルクを一定にしたり、重合槽以降のギアポンプの電流値を一定にしたりすることが望ましい。
更に本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)の下記一般式(6)で表される末端基の濃度(「末端フェニル基濃度」という)の下限は、通常20μeq/gであることが好ましく、より好ましくは40μeq/g、特に好ましくは50μeq/gであり、上限は通常160μeq/gであることが好ましく、より好ましくは140μeq/g、特に好ましくは100μeq/gである。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)の下記一般式(6)で表される末端基の濃度が160μeq/g以下であれば、重合直後または成形時の色相と紫外線曝露後の色相がともに良好となるため好ましい。また、20μeq/g以上であれば、十分な熱安定性を有するため好ましい。
Figure 2016121275
一般式(6)で表される末端基の濃度を制御するには、原料である前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルのモル比率を制御する他、エステル交換反応時の触媒の種類若しくは量、重合圧力または重合温度を制御する方法等が挙げられる。
[ポリウレタン系エラストマー(B)]
本発明において使用されるポリウレタン系エラストマーはジイソシアネートとジオールの共重合体であり、構造中のイソシアネートは水素添加されている。芳香族系のイソシアネートを構造中に有している場合、水素添加されることで構造中の芳香族環が脂環族へと転換されるため、耐UV変色性に更に優れる。また、ポリウレタン系エラストマーの高分子量ジオールは耐加水分解性の観点から、PTMG(ポリテトラメチレンエーテルグルコール)に代表されるようなポリエーテルがより好ましい。高分子量ジオールがポリエーテルの場合、耐加水分解性に特に優れることから、本組成物の耐久性の面でも好ましい。
本組成物中に占めるポリウレタン系エラストマー(B)の割合は、前記のポリカーボネート樹脂(A)の割合を踏まえて適宜調整可能であるが、1.0質量%以上、20質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以上、15質量%以下であることがより好ましい。本組成物中に占めるポリウレタン系エラストマー(B)の割合が20質量%以下であれば、過剰な添加による透明性、耐熱性、機械特性の低下を生じることがないため好ましい。
さらに本組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、抗菌・防錆剤、帯電防止剤、滑剤、顔料、染料等の添加剤を含有することができる。
<シートの製造方法>
本発明のもう一つの要旨は、本組成物を用いてなるシート(以下、「本シート」と称する)にある。本シートの製造方法は、特に限定されるものではない。例えばポリカーボネート樹脂(A)、ポリウレタン系エラストマー(B)、および必要に応じてその他の樹脂、添加剤を単軸、あるいは、二軸押出機等で溶融混練し、Tダイ(口金)によりシート状に押出し、キャスティングロールで急冷、固化することにより、無延伸シートを作製することができる。
<シートの厚み>
本シートの厚みは、特に限定するものではないが、例えば加工性、実用性を考慮した場合、0.05mm以上、1.0mm以下であることが好ましく、0.10mm以上、0.50mm以下であることがより好ましい。本シートの厚みが0.05mm以上であれば、好適なシートの耐衝撃性や柔軟性に優れる。
<本組成物の物性値>
(1)透明性(全光線透過率)
本組成物は透明性に優れるものであり、意匠性、内容物の視認性等の観点から、JIS K7136−1(1997年)に基づき測定される、単層の本シートの厚み0.10mmでの全光線透過率が85%以上であることが好ましく、88%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることが特に好ましい。
(2)ヘーズ
本組成物は透明性に優れるものであり、JIS K7136−1(1997年)に基づき測定される、単層の本シートの厚み0.10mmでの全ヘーズが10%以下であることが好ましく、5%以下であることがさらに好ましく、3%以下であることが特に好ましい。
(3)色差・測色(YI)
本組成物は無色透明な外観に優れるものであり、JIS K7105に基づき測定される、厚み0.10mmの本単層シートのYIが5.0以下であることが好ましく、2.0以下であることがさらに好ましく、1.0以下であることが特に好ましい。
(4)耐候性
本組成物は耐侯性に優れるものであり、超促進耐候性試験機アイスーパーにより耐候性試験を行った後、上記記載と同様の方法で測定される透明性、色差・測色が掛かる範囲であれば、本組成物およびに本シートが特に耐候性に優れているものとなる。
(5)耐衝撃性
本組成物は機械特性、特に耐衝撃性に優れるものであり、ASTM D3763に基づき測定される雰囲気温度が−20℃、23℃におけるハイドロショット高速衝撃試験の破壊エネルギーの値が共に80kgf・mm以上であることが好ましく、100kgf・mm以上であることがさらに好ましく、120kgf・mm以上であることが特に好ましい。−20℃、23℃におけるハイドロショット高速衝撃試験の破壊エネルギーの値が80kgf・mm以上であれば、本組成物および本シートが低温から常温での幅広い温度条件において耐衝撃性に優れるものとなる。
(6)柔軟性(引張伸び)
本組成物は柔軟性に優れるものであり、JIS K7127−2に基づき、試験速度200mm/minで測定される厚み0.100mmの本シートの引張破断伸びが150%以上であることが好ましく、180%以上であることがさらに好ましい。引張破断伸びが掛かる範囲であれば、本組成物およびに本シートが特に柔軟性に優れているものとなる。
<本シートの用途>
なお、一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいい(JIS K6900)、「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、その厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいう。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
フィルム、シート、または、プレートとして成形された本発明の樹脂組成物は、透明性、耐衝撃性、柔軟性、耐候性に優れる。そのため、本発明の特に制限されるものではないが、例えば、建材、内装部品、ディスプレイ前面板、自動車用ヘッドランプカバー、テールランプカバー、街灯用ランプカバー、透明保護シート、樹脂被覆金属板用シート、成形(真空・圧空成形、熱プレス成形など)用シート、着色プレート、透明プレート、シュリンクフィルム、シュリンクラベル、シュリンクチューブや、自動車内装材、樹脂窓、家電製品部材、OA機器部材等に使用できる。
本発明のシートは、成形用シートとして用いて種々の二次加工を施すことができ、加熱成形することによって熱成形体とすることもできる。熱成形の方法としては特に限定されず、ブリスター成形、真空成形、圧空成形など公知の成形方法を利用することができる。
一般に熱成形用材料として使用されている汎用の芳香族ポリカーボネート樹脂の場合には、UVにより変色してしまう点が問題となっている。また印刷を設ける熱成形用途の場合には、耐溶剤性の悪さに起因する印刷インキによるクラックの発生が生じる等の問題点がある。
一方、本発明にかかるポリカーボネート樹脂組成物を用いた成形体は、芳香族ポリカーボネート樹脂よりも柔軟性を兼ね備えたシートを得ることができる。また脂肪族系であるため耐候性に優れており、長期間屋外で使用されたりする熱成形用途に好適に使用することができる。
前記の熱成形体の用途も特に限定されないが、例えば印刷適性、耐候性および柔軟性を必要とする用途としては、自動車のヘッドランプ、およびテールランプカバー、街灯カバー、ディスプレイカバー、透明プレートにより成形される全面板、動販売機内で使用される模擬缶(いわゆるダミー缶)やバックライト付き公告表示板等に好適に使用することができる。また、深絞り適性を必要とする用途としては、卵パック等の食品用包装材や、医薬品用のプレススルーパック(PTP)等に好適に使用することができる。
以下に実施例を示すが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。なお、本明細書中に表示される原料及び試験片についての種々の測定値及び評価は次のようにして行った。
<各種評価方法>
(1)透明性(全光線透過率、全ヘーズ値)
全光線透過率はJIS K7136−1(1997年)に基づいて測定を行った。本組成物を成形してなる0.10mmの単層シートの全光線透過率が85%以上のものを「○」、85%未満のものを「×」とした。
また、全ヘーズについてもJIS K7136−1(1997年)に基づいて測定を行った。本組成物を成形してなる0.10mmの単層シートの全ヘーズが10%以下のものを「○」、10%を超えるものを「×」とした。
(2)色差・測色(YI)
YI値測定はJIS K7105に基づき測定を行った。本組成物を成形してなる0.10mmの単層シートのYIが5.0以下であるものを「○」、5.0を超えるものを「×」とした。
(3)耐候性
耐候性試験は岩崎電気株式会社製SUV−W151を用い、紫外線照度70mW、ブラックパネル温度63℃、湿度50%RHの条件下で50時間照射試験を行った。試験後の透明性、およびYIを上記(1)、(2)の方法で測定した。
(4)耐衝撃性
耐衝撃性はASTM D3763に基づき測定される、雰囲気温度が−20℃、23℃におけるハイドロショット高速衝撃試験の破壊エネルギーの値が共に100kg・mm以上のものを「○」、100kg・mm未満のものを「×」とした。
(5)柔軟性(引張伸び)
本組成物は柔軟性に優れるものであり、JIS K7127−2に基づき、試験速度200mm/minで測定される厚み0.10mmの本シートの引張破断伸びが150%以上のものを「○」、150%未満のものを「×」とした。
<使用した材料>
[ポリカーボネート樹脂(PC)]
PC−1:脂肪族ポリカーボネート樹脂:イソソルビドに由来する構造単位/1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する構造単位=50/50モル%
PC−2:脂肪族ポリカーボネート樹脂:イソソルビドに由来する構造単位/1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する構造単位=70/30モル%
[熱可塑性エラストマー(EX)]
EX−1:脂環族ポリウレタン系エラストマー
イソシアネート成分:ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート31.7wt%、グリコール成分:1,4−ブタジオール11.5wt%、PTMG56.8wt%(なお、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネートの構造式は下記式(7)のとおりである。)
Figure 2016121275
EX−2:ポリウレタン系エラストマー
イソシアネート成分:ジフェニルメタンジイソシアネート31.7wt%、グリコール成分:1,4−ブタジオール11.5wt%、PTMG56.8wt%(なお、ジフェニルメタンジイソシアネートの構造式は下記式(8)のとおりである。)
Figure 2016121275
EX−3:スチレン系エラストマー(旭化成ケミカルズ株式化会社製、タフテックH1051)
(実施例1)
PC−1、及び、EX−1を混合質量比95:5の割合でドライブレンドした後、25mmφ同方向二軸押出機を用いて230℃で混練し、Tダイ(口金)よりシート状に押出し、次いで約90℃のキャスティングロールにて急冷し、厚み0.10mmのシートを作製した。得られたシートについて、各種評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例2)
PC−1、及び、EX−1を混合質量比90:10の割合でドライブレンドした以外は実施例1と同様の方法でシートの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例3)
PC−1、及び、EX−1を混合質量比85:15の割合でドライブレンドした以外は実施例1と同様の方法でシートの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例4)
PC−2、及び、EX−1を混合質量比95:5の割合でドライブレンドした以外は実施例1と同様の方法でシートの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
PC−1を単独で用い、実施例1と同様の方法でシートの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例2)
PC−1、及び、EX−2を混合質量比95:5の割合でドライブレンドした以外は実施例1と同様の方法でシートの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例3)
PC−1、及び、EX−3を混合質量比95:5の割合でドライブレンドした以外は実施例1と同様の方法でシートの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例4)
PC−2を単独で用い、実施例1と同様の方法でシートの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 2016121275
実施例1〜4に記載のポリカーボネート樹脂シートは、透明であり、耐候性試験後においてもその外観を維持していた。また機械特性、特に低温(−20℃)における耐衝撃性や柔軟性などに優れていた。一方、比較例1〜3のシートは、透明性は良好であるものの、低温の耐衝撃性において実施例1〜3よりも明らかに劣っていた。特に比較例2においては、YI値が他のものに対して大きかった。一方、比較例4は23℃での耐衝撃性、及び、引張伸びにおいて実施例4よりも明らかに劣っていた。
本発明の特に制限されるものではないが、例えば、ディスプレイ前面板、保護透明シート、偏光板保護フィルム、建築部材、ヘッドランプやテールランプカバーなどの自動車内装材、家電製品部材、OA機器部材、自動販売機用模擬缶、成形(真空・圧空成形、熱プレス成形など)用シート、等に使用できる。

Claims (7)

  1. ポリカーボネート樹脂(A)を主成分とし、水素添加されたポリウレタン系エラストマー(B)1.0〜20質量%を含有することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
  2. 前記ポリカーボネート樹脂(A)が下記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位(a)を含む脂肪族ポリカーボネート樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
    Figure 2016121275
  3. 前記ポリウレタン系エラストマー(B)の高分子量ジオール成分がポリエーテルであることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  4. 前記脂肪族ポリカーボネート樹脂がシクロヘキサンジメタノールに由来する構造単位(b)を更に含むことを特徴とする請求項2又は3に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  5. 前記脂肪族ポリカーボネート樹脂に含まれる、上記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位(a)と脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位との比率(モル%)が95:5〜30:70の範囲であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  6. 前記ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる厚み0.10mmのシートにおいて、JIS K7136−1に基づき測定される全光線透過率が85%以上であり、かつ全ヘーズの値が10%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物を加工してなるフィルム、シート又は成形品。
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