JP2016120078A - 殺菌方法 - Google Patents
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容器の中で、PETボトルは、プリフォームと呼ばれる試験管状の前駆体に空気を吹き込んで成形される。この成形には、主に二軸延伸ブロー成形法が用いられている。二軸延伸ブロー成形法とは、加熱したプリフォームを金型に挿入後、延伸ロッドと呼ばれる棒で垂直方向に引き伸ばしながら、加圧空気を吹き込んで円周方向に膨らませる成形法である。
PETボトルを対象とする飲料充填システムは、PETボトルの成形装置を上流側に備え、成形されたPETボトルを充填装置に供給する形態もあれば、すでに成形されたPETボトルを用意して充填装置に供給する形態もある。
無菌充填方式における殺菌としては、薬剤、例えば、過酢酸(PAA)、過酸化水素(H2O2)を含む水溶液からなる過酢酸系殺菌剤を用いるのが主流である(例えば、特許文献1,2)。
ところが、過酢酸を殺菌剤として用いる場合は、過酢酸に対する耐性菌が作り出されることが問題となっている。また、過酸化水素については、耐性菌の問題は少ないものの、PETボトルを対象とする場合には、PETに吸収されて、容器に残留してしまうという問題がある。
そこで本発明は、オゾンを用いて殺菌する際に、短い時間で所望する殺菌性能を得ることができる殺菌方法を提供することを目的とする。
この場合、殺菌の対象物が連続的に搬送されるチャンバの内部において、オゾンガスと水分を供給することができる。
また、本発明の殺菌方法において、オゾンガスは、乾燥状態のオゾンガス又は湿潤状態のオゾンガスのいずれかを用いることができる。
また、本発明の殺菌方法において、オゾンガスと水分として水蒸気又は加熱された噴霧水とを殺菌対象領域に向けて供給することができる。この水蒸気としては、低温の湿り水蒸気を用いることもできる。
[殺菌性能向上の機構]
本実施形態は、殺菌対象領域に対して、オゾンガスと水分を供給することを前提とする。例えば、殺菌対象領域が飲料用の容器の場合には、オゾンガスと水分を容器の内部に供給する。この殺菌は、図1(a)に示すように、オゾンガスに含まれるオゾン(O3)が水(H2O)と反応することで生成されるヒドロキシルラジカル(hydroxyl radical,以下、OHラジカル)が、細菌Bにアタックし、その酸化作用によりなされるとされている。OHラジカルは、いわゆる活性酸素と称される分子種のなかで最も酸化力が強い。ただし、OHラジカルは、半減期が短く、生成後速やかに消滅する。
ここで、細菌細胞は、中央のコア部に遺伝情報の機能を司る染色体があり、その外側にたんぱく質と脂質からなる柔らかい細胞膜があり、さらにその外側にたんぱく質、多糖、脂質からなる細胞壁が取り囲んでいる。細菌に対するOHラジカルによる殺菌機構は、強力な酸化力でこの細胞壁を酸化破壊することを起点としている。このように、オゾンを用いた殺菌は、例えば塩素が細胞壁、細胞膜を通過して酵素を破壊する機構とは異なるものと解されている。
本発明において、殺菌対象領域とは、直接的に殺菌が必要な領域だけでなく、その周囲をも含む意である。例えば、PETボトルを例にすると、PETボトルの外周面及び内周面が直接的に殺菌が必要な領域であるが、外周面の場合にはPETボトルが処理される外部空間が、また、内周面の場合には内周面に取り囲まれるPETボトルの内部空間が殺菌対象領域に含まれる。
そこで、本発明においては、供給する水分量を任意に調整できるように、オゾンガスと水分を個別に殺菌対象領域に対して供給することにする。
そこで、本発明においては、オゾンガスと水分とを個別に殺菌対象領域に供給することで、殺菌対象領域の手前まで近づくか、または、殺菌対象領域に達してからその内部で、OHラジカルの生成を開始できるようにすることが好ましい。
本実施形態に用いられるオゾンガスは、乾燥状態(ドライ)のオゾンガス又は湿潤状態(ウェット)のオゾンガスを用いることができる。ここで、乾燥状態とは、湿潤状態に対する相対的な表現であって、一切の湿度を持たないことを意味するものではなく、意図的に湿度を持たせていないという程度の意味である。また、菌対象領域に到達するまでに、OHラジカルの生成に必要なオゾン及び水分の消費を抑えるために、湿潤状態のオゾンガスを用いるとしても、湿度を低く抑えることが好ましい。この観点から、本発明においては、乾燥状態のオゾンガスを用いることが好ましい。
粒状の水分としては、気相の水である水蒸気を用いることができるし、液相の水を噴霧して生成される噴霧水を用いることができる。水蒸気だけを用いる場合には、飽和水蒸気及び不飽和水蒸気のいずれをも用いることができる。また、この水分は、常温で使用してもよいし、加熱された温水として使用してもよい。温水については、殺菌対象領域の例えば耐熱性を考慮して温度を設定する必要があり、例えば、PETボトルを殺菌対象領域とする場合には、現行のPETボトルの耐熱性が70℃程度であるから、温水を用いる場合には、PETボトルに付着する噴霧水の温度が70℃を超えないようにすることが好ましい。
次に、本発明に用いるオゾンガスについて説明する。
ドライオゾンガスは、典型的には、酸素(O2)ガスを原料としてオゾン(O3)と酸素(O2)の混合ガスとして生成される。したがって、本発明におけるオゾンガスは、オゾンと酸素の混合ガスを意味する。本発明において、オゾンガスにおけるオゾン濃度は、5〜20体積%の範囲から選択され、好ましくは8〜15体積%とされる。なお、オゾンガスを生成する原料としては、純粋な酸素に限らず、原料として酸素を含むガス、例えば空気を用いることもできる。この場合も、オゾンガスはオゾン(O3)と酸素(O2)の混合ガスであることに変わりはない。
第1ステップ:O2+e→2O+e
第2ステップ:O+O2+M→O3+M
湿度を付与する方法は任意であり、気泡式溶解法、それぞれ生成された湿潤酸素等の湿潤ガスとオゾンガスとを混合する混合法、シャワー状に散布される水にオゾンガスを供給するシャワー法等を採用することができる。また、任意の方法でオゾン水を生成した後に、これを気化して湿潤オゾンガスを生成することもできるし、任意の方法で水蒸気を生成し、これにオゾンガスを接触させることもできる。
次に、本発明に用いる水分について説明する。
本発明の水分の一形態である水蒸気は、大気圧における飽和又は不飽和の水蒸気を用いることができる。また、この水蒸気として、液相の水と水蒸気との混合物である湿り水蒸気を用いることができる。飽和水蒸気は、温度が100℃近傍であるから、短時間で殺菌対象領域を昇温して耐熱性の劣る菌を殺菌するのに有効である。
一方で、本発明の水分の他の形態である噴霧水は、アトマイジングノズルを用いて生成することができる。この場合、図3(a)に示すように、液相の水を微粒化できる二流体式のノズル6を用いることが好ましい。二流体ノズルは、気体と液体とを混合させることによって、液体を微細な霧状にして噴射することができる。二流体ノズルによる噴霧水の粒径は、数十μmのオーダーであり、10μm以下をも容易に実現できる。
本発明の場合には、気体をオゾンガスとし、液体を水分とすることによって、オゾンガスと微細な水の混合流体として殺菌対象領域に供給することができる。また、水分の種類を途中から切り替える場合には、図3(b)に示すように、一つのノズルに三つの流体の導入口を備える三流体式のノズル7を用いることもできる。
ただし、本発明は、図3(c)に示すように、オゾンガスと水分を、それぞれ個別のノズル8,9を用いて供給することを許容する。この場合、一流体ノズルを用いて水分を霧状にして吐出する一方、吐出された水に向けてオゾンガスを供給すれば、二流体ノズルを用いたのと同様に、オゾンガスと微細な粒状の水分との混合流体を生成できる。図3(d)に示すように、流体が吐出されるノズル8,9の先端をPETボトル1の内部に挿入することもできるし、ノズル8,9の先端を昇降しながら混合流体をPETボトル1の内部に供給することもできる。
水蒸気及び噴霧水は本発明にとって好ましい水分の形態であるが、本発明はこれに限定されず、シャワー状の散水を用いることもできる。
この撹拌による効果は、殺菌対象領域が、一部を除いて閉じた空間である場合に顕著となり、個別に送られてきたオゾンガスと水分が当該空間内において互いに撹拌し合って混合を促進する。このような閉じた空間からなる殺菌対象領域の一例として、殺菌の対象物が飲料用の容器の場合に、飲料が充填される容器の内部空間が該当し、容器の内周面を殺菌する際に、この内部空間において、オゾンガスと水分の混合が促進される。また、他の例として、殺菌対象物、例えば飲料用の容器を殺菌処理する際にチャンバに容器を収容すれば、容器よりも外側であってチャンバの内部空間が該当する。この場合には、容器の外周面を殺菌する際に、当該内部空間において、オゾンガスと水分の混合が促進される。
以下、本発明を飲料容器、例えばPETボトル1に対する具体的な適用例を図4及び図5を参照して説明する。
この例は、上流工程から連続的に搬送されるPETボトル1の内周面及び外周面を殺菌して、下流工程にPETボトル1を受け渡すことを前提としている。ここで説明する工程は、殺菌自体を行う殺菌工程と、殺菌されたPETボトル1をすすぐリンス工程と、からなる。殺菌工程は、第1殺菌と第2殺菌に区分される。なお、殺菌工程及びリンス工程を通じて、PETボトル1をチャンバ10の中に収容することが好ましい。このチャンバ10は、搬送されるPETボトル1を連続的に処理する場合には、搬送経路に連なるトンネル形状にして、PETボトル1の入口及び出口を除いて閉じた空間からなる殺菌領域を形成するのが好ましい。
本実施形態は、PETボトル1を、図4に示すように、口部2を下向きにした倒立状態で殺菌する。これは、殺菌に当たり相当の水分を供給した場合には、供給された水分が重力によりPETボトル1から排出するのを期待しているためである。
オゾンガスと水蒸気を供給することにより、PETボトル1の内部において生成されたOHラジカルが、PETボトル1の内周面を殺菌する。また、PETボトル1の内部に水蒸気が供給されるために、図4に示すように、PETボトル1が昇温するが、本実施形態はこの昇温を殺菌に利用する。つまり、死滅させたい菌の中には熱に弱い菌も存在しており、加熱することでこれらの菌を死滅させることを想定している。
リンス工程は、PETボトル1の内部に残留するオゾンガスを排出するために、PETボトル1の内部にエア(air)を供給する。
供給するエアは、常温の冷風でもよいし、温風であってもよい。また、PETボトル1の内周面を洗い流すために、エアとともに噴霧水を吹き込んでもよい。
Bacillus atrophaeus及びChaetomium globosumの二つの菌種を用い、500mLのペットボトル(供試体)について殺菌性能を評価する実験を以下にしたがって行った。それぞれの菌種についての評価結果を図6及び図7に示す。
殺菌工程としては、下記の処理A,B,Cを単独で又は組み合せて行った。なお、処理B,Cは、本発明に該当する。
殺菌性能の評価は、殺菌工程の後に内部をすすぐリンス工程を経た供試体について行った。オゾンガスと水蒸気、オゾンガスと水(液相)を同時に供給する際には、二流体ノズルを用いて混合流体を供試体に吹き込んだ。
処理A:オゾンガスを単独で供給する
処理B:オゾンガスと水蒸気を供給する
処理C:オゾンガスと噴霧水を供給する
オゾンガス:ドライ(酸素を原料),室温,オゾン濃度;10vol.%,流量;20mL/min.
水蒸気(蒸気圧);0.3MPa
噴霧水:蒸留水,室温
エア(リンス):ドライ,室温,流量;20mL/min.
比較例:湿潤オゾンガス,30mL/min.
図6及び図7に示すように、本発明例は比較例に比べて、殺菌性能が向上している。
また、図6において、本発明例に該当するNo.1〜6の中で、No.3とNo.4を比較すると、噴霧水を供給する量を多くすることにより、殺菌性能が格段に向上することがわかる。
以上説明したように、オゾンガスと水分を個別に殺菌対象領域に供給する本発明によれば、短時間における殺菌性能を格段に向上できる。特に、実験例で示したように、オゾンガスと水蒸気を供給する処理Bとオゾンガスと噴霧水を供給する処理Cというように、オゾンガスとともに供給する水分を選択することにより、数秒程度の短時間で飲料用のPETボトル1に要求される殺菌性能を得ることができる。これは、以下の理由による。
はじめに、オゾンガスと水分を個別に供給することにより、供給できる水分量を任意に設定できるので、殺菌に必要なOHラジカルの生成量を十分に確保できるからである。
また、水分を二流体ノズル通じて霧状として供給するので、過剰な量の水分を供給するのを避けつつ、撹拌作用により効率的にオゾンガスと接触させることによりOHラジカルの生成を促進する。
例えば、実施形態では殺菌対象領域としてPETボトル1を示したが、本発明における殺菌対象は任意であり、飲料を含む食品分野の容器及び製造機器、医療分野における器具、機器などに広く適用することができる。
2 口部
3 胴部
6,7,8,9 ノズル
10 チャンバ
Claims (9)
- オゾンガスを殺菌対象領域に供給して、前記殺菌対象領域に存在する菌を殺菌するに際し、
個別に搬送されてきた前記オゾンガスと水分とを、前記殺菌対象領域に供給する、
ことを特徴とする殺菌方法。 - 前記オゾンガスと前記水分とを前記殺菌対象領域の手前又は前記殺菌対象領域の内部で混合される、
請求項1に記載の殺菌方法。 - 殺菌の対象物が連続的に搬送されるチャンバの内部において、前記オゾンガスと前記水分が供給される、
請求項2に記載の殺菌方法。 - 殺菌の対象物が飲料用の容器であり、
前記オゾンガスと前記水分が前記容器の口部を介して供給され、
前記口部を除いて閉じた空間をなす前記容器の内部において、前記オゾンガスと前記水分が混合される、
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の殺菌方法。 - 前記オゾンガスと前記水分が同時に前記殺菌対象領域への供給が開始されるか、または、
前記オゾンガスが前記水分より先行して前記殺菌対象領域に供給される、
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の殺菌方法。 - 前記水分は、
粒状の水が用いられる、
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の殺菌方法。 - 前記オゾンガスは、
乾燥状態のオゾンガス又は湿潤状態のオゾンガスである、
請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の殺菌方法。 - 前記オゾンガスと前記水分とを前記殺菌対象領域に向けて供給する第1殺菌と、
前記第1殺菌に引き続いて、前記オゾンガスと前記第1殺菌とは異なる種類の前記水分とを前記殺菌対象領域に向けて供給する第2殺菌と、を行う、
請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の殺菌方法。 - 前記オゾンガスと前記水分として水蒸気又は加熱された前記噴霧水とを前記殺菌対象領域に向けて供給する、
請求項6〜請求項8のいずれか一項に記載の殺菌方法。
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