JP2016114829A - 電子写真用トナー - Google Patents

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【課題】低温定着性及び耐久性に優れ、定着時の用紙巻き付きが抑制される電子写真用トナーに関すること。【解決手段】結晶性樹脂、非晶質樹脂、及び離型剤を含有する電子写真用トナーであって、前記結晶性樹脂が、炭素数9以上14以下の脂肪族ジオールを含有するアルコール成分と、炭素数9以上14以下の脂肪族ジカルボン酸化合物を含有するカルボン酸成分とを重縮合させて得られる重縮合系樹脂成分と、スチレン系樹脂成分とを含む結晶性複合樹脂Cを含有し、前記非晶質樹脂が、アルコール成分と、芳香族ジカルボン酸化合物を含有するカルボン酸成分とを重縮合させて得られる重縮合系樹脂成分と、スチレン系樹脂成分とを含む非晶質複合樹脂Aを含有し、前記トナーの平均円形度が0.940以上であり、前記トナー中の粒径が3μm以下の粒子の含有量が5.0個数%以下である、電子写真用トナー、及びその製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられる電子写真用トナー及びその製造方法に関する。
印刷装置の高速化、省エネルギー化の観点から、低温定着性に優れたトナーが要求されている。しかしながら、低温定着性を改良するために、トナーの軟化点やガラス転移点を低く設計すると、保存安定性が低下するという弊害が生じる。これら低温定着性及び保存安定性を両立させるため、結晶性複合樹脂と非晶質複合樹脂を併用したトナーの開発が行われている。
特許文献1には、炭素数8〜12のジオールと炭素数10〜12のジカルボン酸化合物を含み、両者の総含有量が80モル%以上である結晶性ポリエステルの原料モノマー、付加重合系樹脂の原料モノマー及び該付加重合系樹脂の原料モノマー100重量部に対して、3〜15重量部の結晶性ポリエステルの原料モノマーと付加重合系樹脂の原料モノマーのいずれとも反応し得る化合物を重合させることにより得られる、結晶性ポリエステル成分と付加重合系樹脂成分とを含む結晶性ハイブリッド樹脂(1-2)と、
アルコール成分と、芳香族ジカルボン酸化合物を含有したカルボン酸成分を含む非晶質縮重合系樹脂の原料モノマー、付加重合系樹脂の原料モノマー及び該付加重合系樹脂の原料モノマー100重量部に対して、2〜15重量部の非晶質縮重合系樹脂の原料モノマーと付加重合系樹脂の原料モノマーのいずれとも反応し得る化合物を重合させることにより得られる、非晶質縮重合系樹脂成分と付加重合系樹脂成分とを含む非晶質ハイブリッド樹脂(2-2)
を含有してなる結着樹脂を含有してなる静電荷像現像用トナーであって、前記の結晶性ハイブリッド樹脂(1-2)と非晶質ハイブリッド樹脂(2-2)の重量比(結晶性ハイブリッド樹脂(1-2)/非晶質ハイブリッド樹脂(2-2))が1/99〜40/60である、静電荷像現像用トナーが開示されている。
特開2013−109237号公報
本発明者らは、長鎖脂肪族モノマーを用いて得られた結晶性複合樹脂と、芳香族ジカルボン酸化合物を用いて得られた非晶質複合樹脂とを組み合わせることにより、低温定着性と耐久性が向上することを見出したが、これらの樹脂を組み合わせると、トナー定着時の用紙巻き付きが発生しやすいことが判明した。
本発明は、低温定着性及び耐久性に優れ、定着時の用紙巻き付きが抑制される電子写真用トナーに関する。
本発明は、
〔1〕 結晶性樹脂、非晶質樹脂、及び離型剤を含有する電子写真用トナーであって、
前記結晶性樹脂が、炭素数9以上14以下の脂肪族ジオールを含有するアルコール成分と、炭素数9以上14以下の脂肪族ジカルボン酸化合物を含有するカルボン酸成分とを重縮合させて得られる重縮合系樹脂成分と、スチレン系樹脂成分とを含む結晶性複合樹脂Cを含有し、
前記非晶質樹脂が、アルコール成分と、芳香族ジカルボン酸化合物を含有するカルボン酸成分とを重縮合させて得られる重縮合系樹脂成分と、スチレン系樹脂成分とを含む非晶質複合樹脂Aを含有し、
前記トナーの平均円形度が0.940以上であり、前記トナー中の粒径が3μm以下の粒子の含有量が5.0個数%以下である、電子写真用トナー、並びに
〔2〕 工程1:結晶性複合樹脂C、非晶質複合樹脂A及び離型剤を含むトナー成分を、オープンロール型混練機を用いて溶融混練する工程、及び
工程2:得られた混練物を粉砕し、分級する工程
を含む、前記〔1〕記載の電子写真用トナーの製造方法
に関する。
本発明の電子写真用トナーは、低温定着性及び耐久性に優れ、印刷初期だけでなく、連続印刷時も定着時の用紙巻き付きが抑制されるという優れた効果を奏するものである。
本発明の電子写真用トナー(以下、単にトナーともいう。)は、結晶性樹脂、非晶質樹脂及び離型剤を含有するものであり、結晶性樹脂は、長鎖脂肪族モノマーを用いた重縮合系樹脂成分を含む結晶性複合樹脂Cを、非晶質樹脂は、芳香族ジカルボン酸化合物を用いた重縮合系樹脂成分を含む非晶質複合樹脂Aを含み、トナーの平均円形度と微粉の含有量が所定の範囲に調整されているものである。
本発明の電子写真用トナーが、低温定着性及び耐久性に優れ、定着時の用紙巻き付きが抑制される理由は定かではないが、次のように考えられる。
通常、トナーは、定着時に用紙の巻き付きの課題は発生し難いが、これは、通常のトナーでは、離型剤の分散性が低く、トナーが離型剤の界面で粉砕されることで、粉砕時に発生したトナー微粉に多量の離型剤が含まれているためと考えられる。また、二軸押出機を用いて製造している特許文献1においても定着時の用紙の巻き付きについては考慮されていない。
これに対し、結晶性複合樹脂Cと非晶質複合樹脂Aとを併用した場合、離型剤の分散性が良すぎるため、低温定着性や耐久性に優れるが、一方、トナー微粉中の離型剤量が減少し、定着時に用紙の巻き付きの課題が発生するのではないかと考えられる。とりわけ、混練力の高いオープンロール型混練機を用いた場合、結晶性複合樹脂Cと非晶質複合樹脂Aが有しているスチレン系樹脂成分により、離型剤が微細に分散されてしまうためと考えられる。
そこで、本発明では、トナーの平均円形度とトナー中の微粉量を特定の範囲とすることにより、定着時の巻き付きを抑制することができる。即ち、トナー中の微粉量を制御することで、初期定着時の用紙巻き付きを抑制することができ、さらにトナーの平均円形度を高めることで、連続印刷時に発生するトナー微粉の発生を制御し、用紙巻き付き抑制の効果を連続印刷時も維持することができるものと考えられる。
本発明において、樹脂の結晶性は、軟化点と示差走査熱量計による吸熱の最高ピーク温度との比、即ち[軟化点/吸熱の最高ピーク温度]の値で定義される結晶性指数によって表わされる。結晶性樹脂は、結晶性指数が0.6〜1.4、好ましくは0.7〜1.2、より好ましくは0.9〜1.2の樹脂であり、非晶質樹脂は、結晶性指数が、1.4を超えるか、0.6未満、好ましくは1.5を超えるか、0.5以下、より好ましくは1.6以上か、0.5以下の樹脂である。樹脂の結晶性は、原料モノマーの種類とその比率、及び製造条件(例えば、反応温度、反応時間、冷却速度)等により調整することができる。なお、吸熱の最高ピーク温度とは、観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を指す。結晶性樹脂においては、吸熱の最高ピーク温度を融点とする。なお、本発明において、単に「樹脂」という場合は、結晶性樹脂及び非晶質樹脂の両方を意味する。
結晶性樹脂に含まれる結晶性複合樹脂Cは、炭素数9以上14以下の脂肪族ジオールを含有するアルコール成分と、炭素数9以上14以下の脂肪族ジカルボン酸化合物を含有するカルボン酸成分とを重縮合させて得られる重縮合系樹脂成分と、スチレン系樹脂成分とを含む樹脂である。
重縮合系樹脂成分としては、ポリエステル、ポリエステル・ポリアミド等が挙げられるが、トナーの耐久性及び低温定着性を向上させる観点から、ポリエステルが好ましい。
ポリエステルは、2価以上のアルコールを含有するアルコール成分と2価以上のカルボン酸化合物を含有するカルボン酸成分とを重縮合させて得られるものが好ましい。
重縮合系樹脂成分のアルコール成分に含まれる脂肪族ジオールの炭素数は、低温定着性の観点から、9以上であり、10以上が好ましく、12以上がより好ましく、耐久性の観点から、14以下であり、12が好ましい。
炭素数9以上14以下の脂肪族ジオールとしては、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール等が挙げられ、特に複合樹脂の結晶性を高め、トナーの低温定着性及び耐久性を向上させる観点から、α,ω−直鎖アルカンジオールが好ましく、1,10-デカンジオール及び1,12-ドデカンジオールから選ばれた1種又は2種がより好ましく、1,12-ドデカンジオールがさらに好ましい。
炭素数9以上14以下の脂肪族ジオールの含有量は、トナーの低温定着性及び耐久性を向上させる観点から、アルコール成分の2価以上のアルコールの総量中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、好ましくは100モル%以下、さらに好ましくは実質的に100モル%、さらに好ましくは100モル%である。さらに、アルコール成分の2価以上のアルコールに占める炭素数9以上14以下の脂肪族ジオールのなかの1種の割合が、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、好ましくは100モル%以下、さらに好ましくは実質的に100モル%、さらに好ましくは100モル%を占めることが好ましい。
アルコール成分には、炭素数9以上14以下の脂肪族ジオール以外の多価アルコールが含有されていてもよく、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族ジオール;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、1,4−ソルビタン等の3価以上のアルコールが挙げられる。
重縮合系樹脂のカルボン酸成分に含まれる脂肪族ジカルボン酸化合物の炭素数は、低温定着性の観点から、9以上であり、10以上が好ましく、耐久性の観点から、14以下であり、12以下が好ましく、10がより好ましい。
炭素数9以上14以下の脂肪族ジカルボン酸化合物としては、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン2酸、テトラデカン2酸等が挙げられ、トナーの耐久性を向上させる観点から、セバシン酸及びドデカン2酸から選ばれた1種又は2種が好ましく、セバシン酸がより好ましい。なお、ジカルボン酸化合物とは、ジカルボン酸、その無水物及びその炭素数1以上3以下のアルキルエステルを指すが、これらの中では、ジカルボン酸が好ましい。また、脂肪族ジカルボン酸化合物の炭素数とは、ジカルボン酸部分を含む炭素数であり、アルキルエステル部は含めない。
カルボン酸成分には、炭素数9以上14以下の脂肪族ジカルボン酸化合物以外の多価カルボン酸化合物が含有されていてもよく、該多価カルボン酸化合物としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、炭素数が1以上30以下のアルキル基又は炭素数2以上30以下のアルケニル基で置換されたコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、トリメリット酸、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸等の3価以上の芳香族カルボン酸、及びこれらの酸無水物、炭素数1以上3以下のアルキルエステル等が挙げられる。
炭素数9以上14以下の脂肪族ジカルボン酸化合物の含有量は、トナーの低温定着性及び耐久性を向上させる観点から、カルボン酸成分中の2価以上のカルボン酸化合物の総量中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上であり、好ましくは100モル%以下、より好ましくは実質的に100モル%、さらに好ましくは100モル%である。
また、結晶性複合樹脂Cの重縮合系樹脂成分の原料モノマーは、低温定着性の観点から、炭素数8以上22以下の1価の脂肪族カルボン酸化合物及び炭素数8以上22以下の1価の脂肪族アルコールの少なくともいずれかを含有することが好ましい。
1価の脂肪族アルコールと1価の脂肪族カルボン酸化合物の炭素数は、低温定着性の観点から、8以上が好ましく、12以上がより好ましく、14以上がさらに好ましく、16以上がさらに好ましい。また、生産性の観点から、22以下が好ましく、20以下がより好ましく、18以下がさらに好ましい。
炭素数8以上22以下の1価の脂肪族アルコールとしては、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の脂肪族アルコール等が挙げられ、これらのなかでは、ステアリルアルコールが好ましい。
炭素数8以上22以下の1価の脂肪族カルボン酸化合物としては、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等の脂肪族カルボン酸化合物等が挙げられ、これらのなかでは、ステアリン酸が好ましい。
炭素数8以上22以下の1価の脂肪族アルコールと炭素数8以上22以下の1価の脂肪族カルボン酸化合物の総含有量は、結晶性複合樹脂Cの重縮合系樹脂成分の原料モノマー中、即ち、アルコール成分とカルボン酸成分の総量中、低温定着性の観点から、1モル%以上が好ましく、2モル%以上がより好ましく、3モル%以上がさらに好ましい。また、耐久性の観点から、12モル%以下が好ましく、10モル%以下がより好ましく、8モル%以下がさらに好ましく、6モル%以下がさらに好ましい。
重縮合系樹脂成分の原料成分であるカルボン酸成分とアルコール成分との合計モル数中、炭素数9以上14以下の脂肪族ジカルボン酸化合物と炭素数9以上14以下の脂肪族ジオールとの合計モル数は、複合樹脂の結晶性を高め、トナーの低温定着性及び耐久性を向上させる観点から、好ましくは88モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは92モル%以上、さらに好ましくは94モル%以上である。また、好ましくは99モル%以下、より好ましくは98モル%以下、さらに好ましは97モル%以下である。
炭素数9以上14以下の脂肪族ジカルボン酸化合物と炭素数9以上14以下の脂肪族ジオールとの合計モル数は、トナーの低温定着性及び耐久性を向上させる観点から、重縮合系樹脂成分の原料成分であるカルボン酸成分中の2価以上のカルボン酸化合物とアルコール成分中の2価以上のアルコールとの合計モル数中、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上であり、好ましくは100モル%以下、より好ましくは実質的に100モル%、さらに好ましくは100モル%である。
重縮合系樹脂成分におけるカルボン酸成分とアルコール成分との当量比(COOH基/OH基)は、複合樹脂の軟化点を調整する観点から、好ましくは0.70以上、より好ましくは0.75以上であり、また、好ましくは1.10以下、より好ましくは1.05以下である。
重縮合系樹脂成分の原料モノマーの重縮合反応は、不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じて、エステル化触媒、重合禁止剤等の存在下、120℃以上200℃以下程度の温度で行うことができる。エステル化触媒としては、酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)等の錫化合物、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられ、エステル化触媒とともに用い得るエステル化助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。エステル化触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、また、好ましくは1.5質量部以下、より好ましくは1.0質量部以下である。エステル化助触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、また、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。
スチレン系樹脂成分の原料モノマーとしては、少なくとも、スチレン、又はα−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体(以下、スチレンとスチレン誘導体をまとめて「スチレン化合物」という)が用いられる。
スチレン化合物の含有量は、トナーの低温定着性及び耐久性を向上させる観点から、スチレン系樹脂成分の原料モノマー中、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であり、好ましくは100モル%以下、より好ましくは実質的に100質量%、さらに好ましくは100質量%である。
スチレン化合物以外に用いられるスチレン系樹脂成分の原料モノマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル;エチレン、プロピレン等のエチレン性不飽和モノオレフィン類;ブタジエン等のジオレフィン類;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等のエチレン性モノカルボン酸エステル;ビニルメチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のビニリデンハロゲン化物;N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物類等が挙げられる。
スチレン化合物以外に用いられるスチレン系樹脂成分の原料モノマーは2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味する。
スチレン化合物以外に用いられるスチレン系樹脂成分の原料モノマーの中では、トナーの低温定着性を向上させる観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基の炭素数は、上記の観点から、好ましくは1以上、より好ましくは8以上であり、また、好ましくは22以下、より好ましくは18以下である。なお、該アルキルエステルの炭素数は、エステルを構成するアルコール成分由来の炭素数をいう。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ここで、「(イソ又はターシャリー)」、「(イソ)」は、これらの基が存在している場合とそうでない場合の双方を含むことを意味し、これらの基が存在していない場合には、ノルマルであることを示す。また、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの双方の場合を含むことを示す。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、トナーの低温定着性を向上させる観点から、スチレン系樹脂成分の原料モノマー中、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下であり、好ましくは0質量%以上である。
スチレン系樹脂成分の原料モノマーの付加重合反応は、例えば、ジクミルパーオキサイド等の重合開始剤、架橋剤等の存在下、有機溶媒存在下又は無溶媒下で、常法により行うことができるが、温度条件としては、好ましくは110℃以上、より好ましくは140℃以上であり、また、好ましくは200℃以下、より好ましくは170℃以下である。
付加重合反応の際に有機溶媒を使用する場合、キシレン、トルエン、メチルエチルケトン、アセトン等を用いることができる。有機溶媒の使用量は、スチレン系樹脂成分の原料モノマー100質量部に対して、10質量部以上50質量部以下が好ましい。
結晶性複合樹脂Cは、トナーの低温定着性及び耐久性を向上させる観点から、重縮合系樹脂成分の原料モノマーとスチレン系樹脂成分の原料モノマーに加えて、さらに重縮合系樹脂成分の原料モノマー及びスチレン系樹脂成分の原料モノマーのいずれとも反応し得る、両反応性モノマーを用いて得られる樹脂(ハイブリッド樹脂)であることが好ましい。従って、重縮合系樹脂成分の原料モノマー及びスチレン系樹脂成分の原料モノマーを重合させて結晶性複合樹脂Cを得る際に、重縮合反応及び/又は付加重合反応は、両反応性モノマーの存在下で行うことが好ましい。これにより、結晶性複合樹脂Cは、両反応性モノマー由来の構成単位を介して重縮合系樹脂成分とスチレン系樹脂成分とが結合した樹脂(ハイブリッド樹脂)となり、重縮合系樹脂成分とスチレン系樹脂成分とがより微細に、かつ均一に分散したものとなる。
即ち、結晶性複合樹脂Cは、トナーの低温定着性及び耐久性を向上させる観点から、(イ)炭素数9以上14以下の脂肪族ジオールを含有するアルコール成分と炭素数9以上14以下の脂肪族ジカルボン酸化合物を含有するカルボン酸成分とを含む、重縮合系樹脂成分の原料モノマー、(ロ)スチレン系樹脂成分の原料モノマー、及び(ハ)重縮合系樹脂成分の原料モノマー及びスチレン系樹脂成分の原料モノマーのいずれとも反応し得る両反応性モノマーを重合させることにより得られる樹脂であることが好ましい。
両反応性モノマーとしては、分子内に、水酸基、カルボキシ基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基、好ましくは水酸基及び/又はカルボキシ基、より好ましくはカルボキシ基と、エチレン性不飽和結合とを有する化合物が好ましく、このような両反応性モノマーを用いることにより、分散相となる樹脂の分散性をより向上させることができる。両反応性モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸及び無水マレイン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種であることが好ましいが、重縮合反応及び付加重合反応の反応性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸又はフマル酸がより好ましい。但し、重合禁止剤と共に用いた場合は、フマル酸等のエチレン性不飽和結合を有する多価カルボン酸化合物は、重縮合系樹脂成分の原料モノマーとして機能する。この場合、フマル酸等は両反応性モノマーではなく、重縮合系樹脂成分の原料モノマーである。
両反応性モノマーの使用量は、低温定着性の観点から、重縮合系樹脂成分のアルコール成分の合計100モルに対して、好ましくは1モル以上、より好ましくは2モル以上であり、スチレン系樹脂成分と重縮合系樹脂成分との分散性を高め、トナーの耐久性を向上させる観点から、好ましくは30モル以下、より好ましくは20モル以下、さらに好ましくは10モル以下である。
また、両反応性モノマーの使用量は、低温定着性の観点から、スチレン系樹脂成分の原料モノマーの合計100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、スチレン系樹脂成分と重縮合系樹脂成分との分散性を高め、トナーの耐久性を向上させる観点から、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。ここで、スチレン系樹脂成分の原料モノマーの合計に重合開始剤は含める。
両反応性モノマーを用いて得られるハイブリッド樹脂は、具体的には、以下の方法により製造することが好ましい。両反応性モノマーは、トナーの耐久性を向上させる観点、トナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、スチレン系樹脂成分の原料モノマーとともに付加重合反応に用いることが好ましい。
(i) 重縮合系樹脂成分の原料モノマーによる重縮合反応の工程(A)の後に、スチレン系樹脂成分の原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合反応の工程(B)を行う方法
この方法では、重縮合反応に適した反応温度条件下で工程(A)を行い、反応温度を低下させ、付加重合反応に適した温度条件下で工程(B)を行う。スチレン系樹脂成分の原料モノマー及び両反応性モノマーは、付加重合反応に適した温度で反応系内に添加にすることが好ましい。両反応性モノマーは付加重合反応をすると共に重縮合系樹脂成分とも反応する。
工程(B)の後に、再度反応温度を上昇させ、必要に応じて架橋剤となる3価以上の重縮合系樹脂成分の原料モノマー等を重合系に添加し、工程(A)の重縮合反応や両反応性モノマーとの反応をさらに進めることができる。
(ii) スチレン系樹脂成分の原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合反応の工程(B)の後に、重縮合系樹脂成分の原料モノマーによる重縮合反応の工程(A)を行う方法
この方法では、付加重合反応に適した反応温度条件下で工程(B)を行い、反応温度を上昇させ、重縮合反応に適した温度条件下で、工程(A)の重縮合反応を行う。両反応性モノマーは付加重合反応と共に重縮合反応にも関与する。
重縮合系樹脂成分の原料モノマーは、付加重合反応時に反応系内に存在してもよく、重縮合反応に適した温度条件下で反応系内に添加してもよい。前者の場合は、重縮合反応に適した温度でエステル化触媒を添加することで重縮合反応の進行を調節できる。
(iii) 重縮合系樹脂成分の原料モノマーによる重縮合反応の工程(A)とスチレン系樹脂成分の原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合反応の工程(B)とを、並行して進行する条件で反応を行う方法
この方法では、付加重合反応に適した反応温度条件下で工程(A)と工程(B)とを並行して行い、反応温度を上昇させ、重縮合反応に適した温度条件下で、必要に応じて架橋剤となる3価以上の重縮合系樹脂成分の原料モノマーを重合系に添加し、工程(A)の重縮合反応をさらに行うことが好ましい。その際、重縮合反応に適した温度条件下では、ラジカル重合禁止剤を添加して重縮合反応だけを進めることもできる。両反応性モノマーは付加重合反応と共に重縮合反応にも関与する。
上記(i)の方法においては、重縮合反応を行う工程(A)の代わりに、予め重合した重縮合系樹脂を用いてもよい。上記(iii)の方法において、工程(A)と工程(B)を並行して進行する条件で反応を行う際には、重縮合系樹脂成分の原料モノマーを含有した混合物中に、スチレン系樹脂成分の原料モノマーを含有した混合物を滴下して反応させることもできる。
上記(i)〜(iii)の方法は、同一容器内で行うことが好ましい。
結晶性複合樹脂Cにおける重縮合系樹脂成分とスチレン系樹脂成分との質量比(重縮合系樹脂成分/スチレン系樹脂成分)は、低温定着性の観点から、55/45以上が好ましく、70/30以上がより好ましく、80/20以上がさらに好ましい。また、耐久性の観点から、95/5以下が好ましく、92/8以下がより好ましく、90/10以下がさらに好ましい。なお、上記の計算において、重縮合系樹脂成分の質量は、用いられる重縮合系樹脂の原料モノマーの質量から、重縮合反応により脱水される反応水の量(計算値)を除いた量であり、両反応性モノマーの量は、重縮合系樹脂成分の原料モノマー量に含める。また、スチレン系樹脂成分の量は、スチレン系樹脂成分の原料モノマー量であり、重合開始剤の量も含める。
結晶性複合樹脂Cの軟化点は、トナーの耐久性を向上させる観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、さらに好ましくは75℃以上、さらに好ましくは78℃以上である。また、トナーの低温定着性を向上させる観点から、好ましくは140℃以下、より好ましくは120℃以下、さらに好ましくは110℃以下、さらに好ましくは100℃以下である。
また、結晶性複合樹脂Cの融点(吸熱の最高ピーク温度)は、トナーの耐久性を向上させる観点から、好ましくは55℃以上、より好ましくは65℃以上、さらに好ましくは70℃以上である。また、トナーの低温定着性を向上させる観点から、好ましくは140℃以下、より好ましくは120℃以下、さらに好ましくは110℃以下、さらに好ましくは100℃以下である。
結晶性複合樹脂Cの酸価は、トナーの生産性向上の観点から、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは2mgKOH/g以上、さらに好ましくは3mgKOH/g以上である。また、耐久性の観点から、好ましくは20mgKOH/g以下、より好ましくは15mgKOH/g以下、さらに好ましくは10mgKOH/g以下である。
本発明のトナーは、結晶性複合樹脂C以外の結晶性樹脂を含有していてもよいが、結晶性複合樹脂Cの含有量は、結晶性樹脂中、耐久性の観点から、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。また、100質量%以下が好ましく、100質量%がより好ましい。
結着樹脂中の結晶性複合樹脂Cの含有量は、トナーの低温定着性を向上させる観点から、5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましく、8質量%以上がさらに好ましい。また、トナーの耐久性を向上させる観点から、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。
非晶質樹脂に含まれる非晶質複合樹脂Aは、アルコール成分と、芳香族ジカルボン酸化合物を含有するカルボン酸成分とを重縮合させて得られる重縮合系樹脂成分と、スチレン系樹脂成分とを含む樹脂である。
重縮合系樹脂成分としては、ポリエステル、ポリエステル・ポリアミド等が挙げられるが、トナーの低温定着性及び耐久性を向上させる観点から、ポリエステルが好ましい。
ポリエステルは、2価以上のアルコールを含有するアルコール成分と2価以上のカルボン酸化合物を含有するカルボン酸成分とを重縮合させて得られるものが好ましい。
アルコール成分は、トナーの低温定着性及び耐久性の観点から、式(I):
Figure 2016114829
(式中、RO及びORはオキシアルキレン基であり、Rはエチレン及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の値は、好ましくは1以上、より好ましくは1.5以上であり、また、好ましくは16以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは4以下である)
で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含有することが好ましい。
式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物としては、ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等の式(I)においてROがプロピレンオキサイドであるビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等の式(I)においてROがエチレンオキサイドであるビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、トナーの低温定着性及び耐久性を向上させる観点から、非晶質複合樹脂Aのアルコール成分中、70モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましい。また、100モル%以下が好ましく、実質的に100モル%がより好ましく、100モル%がさらに好ましい。
他のアルコール成分としては、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物以外の芳香族ジオール、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ブテンジオール、1,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオール、グリセリン等の3価以上のアルコール等が挙げられる。
カルボン酸成分は、トナーの耐久性及び帯電安定性の観点から、芳香族ジカルボン酸化合物を含有する。
芳香族ジカルボン酸化合物としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸;それらの酸の無水物及びそれらの酸のアルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられ、これらのなかではテレフタル酸が好ましい。なお、本発明において、カルボン酸化合物には、遊離酸だけでなく、反応中に分解して酸を生成する無水物、及び炭素数1〜3のアルキルエステルも含まれる。
芳香族ジカルボン酸化合物の含有量は、非晶質複合樹脂Aのカルボン酸成分中、耐久性の観点から、10モル%以上が好ましく、15モル%以上がより好ましく、20モル%以上がさらに好ましく、低温定着性の観点から、70モル%以下が好ましく、60モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましい。
また、カルボン酸成分は、低温定着性の観点から、さらに脂肪族ジカルボン酸化合物を含有することが好ましい。
脂肪族ジカルボン酸化合物における鎖状炭化水素基は直鎖であっても分岐鎖であってもよく、脂肪族ジカルボン酸化合物の炭素数は、4以上が好ましい。また、入手性の観点から、14以下が好ましく、12以下がより好ましい。なお、本発明において、カルボン酸化合物には、遊離酸だけでなく、反応中に分解して酸を生成する無水物、及び炭素数1〜3のアルキルエステルも含まれる。ただし、アルキルエステル部のアルキル基の炭素数は、脂肪族ジカルボン酸化合物の炭素数には含めない。
脂肪族ジカルボン酸化合物としては、コハク酸(炭素数:4)、フマル酸(炭素数:4)、グルタル酸(炭素数:5)、アジピン酸(炭素数:6)、スベリン酸(炭素数:8)、アゼライン酸(炭素数:9)、セバシン酸(炭素数:10)、ドデカン2酸(炭素数:12)、テトラデカン2酸(炭素数:14)、側鎖にアルキル基又はアルケニル基を有するコハク酸、これらの酸の無水物、それらの炭素数1〜3のアルキルエステル等が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸化合物の含有量は、非晶質複合樹脂Aのカルボン酸成分中、低温定着性の観点から、脂肪族ジカルボン酸化合物を、10モル%以上が好ましく、15モル%以上がより好ましく、20モル%以上がさらに好ましく、耐久性の観点から、70モル%以下が好ましく、60モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましい。
他のカルボン酸成分としては、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上のカルボン酸;及びこれらの酸の無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステル;ロジン;フマル酸、マレイン酸、アクリル酸等で変性されたロジン等が挙げられる。
また、アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸化合物が、分子量調整等の観点から、適宜含有されていてもよい。
重縮合系樹脂成分におけるカルボン酸成分とアルコール成分との当量比(COOH基/OH基)は、複合樹脂の軟化点を調整する観点から、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上であり、また、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.1以下である。
重縮合系樹脂成分の原料モノマーの重縮合反応は、不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じて、エステル化触媒、重合禁止剤等の存在下、180℃以上250℃以下程度の温度で行うことできる。エステル化触媒としては、酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)等の錫化合物、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられ、エステル化触媒とともに用い得るエステル化助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。エステル化触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、また、好ましくは1.5質量部以下、より好ましくは1.0質量部以下である。エステル化助触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、また、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。
スチレン系樹脂成分の原料モノマーとしては、少なくとも、スチレン、又はα−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体(以下、スチレンとスチレン誘導体をまとめて「スチレン化合物」という)が用いられる。
スチレン化合物の含有量は、スチレン系樹脂成分の原料モノマー中、トナーの耐久性を向上させる観点から、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましく、75質量%以上がさらに好ましい。また、低温定着性の観点から、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、88質量%以下がさらに好ましい。
スチレン化合物以外に用いられるスチレン系樹脂成分の原料モノマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル;エチレン、プロピレン等のエチレン性不飽和モノオレフィン類;ブタジエン等のジオレフィン類;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等のエチレン性モノカルボン酸エステル;ビニルメチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のビニリデンハロゲン化物;N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物類等が挙げられる。
スチレン化合物以外に用いられるスチレン系樹脂成分の原料モノマーは2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味する。
スチレン化合物以外に用いられるスチレン系樹脂成分の原料モノマーの中では、トナーの低温定着性を向上させる観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基の炭素数は、上記の観点から好ましくは1以上、より好ましくは8以上であり、また、好ましくは22以下、より好ましくは18以下である。なお、該アルキルエステルの炭素数は、エステルを構成するアルコール成分由来の炭素数をいう。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ここで、「(イソ又はターシャリー)」、「(イソ)」は、これらの基が存在している場合とそうでない場合の双方を含むことを意味し、これらの基が存在していない場合には、ノルマルであることを示す。また、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの双方の場合を含むことを示す。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、スチレン系樹脂成分の原料モノマー中、低温定着性の観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、12質量%以上がさらに好ましく、耐久性の観点から、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましく、25質量%以下がさらに好ましい。
なお、スチレン化合物と(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを含む原料モノマーを付加重合させて得られる樹脂をスチレン−(メタ)アクリル樹脂ともいう。
スチレン系樹脂成分の原料モノマーの付加重合反応は、例えば、ジクミルパーオキサイド等の重合開始剤、架橋剤等の存在下、有機溶媒存在下又は無溶媒下で、常法により行うことができるが、温度条件としては、好ましくは110℃以上、より好ましくは140℃以上であり、また、好ましくは200℃以下、より好ましくは170℃以下である。
付加重合反応の際に有機溶媒を使用する場合、キシレン、トルエン、メチルエチルケトン、アセトン等を用いることができる。有機溶媒の使用量は、スチレン系樹脂成分の原料モノマー100質量部に対して、10質量部以上50質量部以下程度が好ましい。
非晶質複合樹脂Aは、トナーの低温定着性及び耐久性を向上させる観点から、重縮合系樹脂成分の原料モノマーとスチレン系樹脂成分の原料モノマーに加えて、さらに重縮合系樹脂成分の原料モノマー及びスチレン系樹脂成分の原料モノマーのいずれとも反応し得る、両反応性モノマーを用いて得られる樹脂(ハイブリッド樹脂)であることが好ましい。従って、重縮合系樹脂成分の原料モノマー及びスチレン系樹脂成分の原料モノマーを重合させて非晶質複合樹脂Aを得る際に、重縮合反応及び/又は付加重合反応は、両反応性モノマーの存在下で行うことが好ましい。これにより、非晶質複合樹脂Aは、両反応性モノマー由来の構成単位を介して重縮合系樹脂成分とスチレン系樹脂成分とが結合した樹脂(ハイブリッド樹脂)となり、重縮合系樹脂成分とスチレン系樹脂成分とがより微細に、かつ均一に分散したものとなる。
即ち、非晶質複合樹脂Aは、(イ)アルコール成分と、芳香族ジカルボン酸化合物を含有するカルボン酸成分とを含む、重縮合系樹脂成分の原料モノマー、(ロ)スチレン系樹脂成分の原料モノマー、及び(ハ)重縮合系樹脂成分の原料モノマー及びスチレン系樹脂成分の原料モノマーのいずれとも反応し得る両反応性モノマーを重合させることにより得られる樹脂であることが好ましい。
両反応性モノマーとしては、分子内に、水酸基、カルボキシ基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基、好ましくは水酸基及び/又はカルボキシ基、より好ましくはカルボキシ基と、エチレン性不飽和結合とを有する化合物が好ましく、このような両反応性モノマーを用いることにより、分散相となる樹脂の分散性をより向上させることができる。両反応性モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸及び無水マレイン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種であることが好ましいが、重縮合反応及び付加重合反応の反応性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸又はフマル酸がより好ましい。但し、重合禁止剤と共に用いた場合は、フマル酸等のエチレン性不飽和結合を有する多価カルボン酸化合物は、重縮合系樹脂成分の原料モノマーとして機能する。この場合、フマル酸等は両反応性モノマーではなく、重縮合系樹脂成分の原料モノマーである。
両反応性モノマーの使用量は、低温定着性の観点から、重縮合系樹脂成分のアルコール成分の合計100モルに対して、好ましくは0.5モル以上、より好ましくは1モル以上であり、スチレン系樹脂成分と重縮合系樹脂成分との分散性を高め、トナーの耐久性を向上させる観点から、好ましくは30モル以下、より好ましくは20モル以下、さらに好ましくは10モル以下である。
また、両反応性モノマーの使用量は、低温定着性の観点から、スチレン系樹脂成分の原料モノマーの合計100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、スチレン系樹脂成分と重縮合系樹脂成分との分散性を高め、トナーの耐久性を向上させる観点から、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。ここで、スチレン系樹脂成分の原料モノマーの合計に重合開始剤は含める。
両反応性モノマーを用いたハイブリッド樹脂の製造方法は、結晶性複合樹脂Cと同様である。
非晶質複合樹脂Aにおける重縮合系樹脂成分とスチレン系樹脂成分との質量比(重縮合系樹脂成分/スチレン系樹脂成分)は、低温定着性の観点から、55/45以上が好ましく、70/30以上がより好ましく、80/20以上がさらに好ましい。また、耐久性の観点から、95/5以下が好ましく、90/10以下がより好ましい。なお、上記の計算において、重縮合系樹脂成分の質量は、用いられる重縮合系樹脂の原料モノマーの質量から、重縮合反応により脱水される反応水の量(計算値)を除いた量であり、両反応性モノマーの量は、重縮合系樹脂成分の原料モノマー量に含める。また、スチレン系樹脂成分の量は、スチレン系樹脂成分の原料モノマー量であり、重合開始剤の量も含める。
非晶質複合樹脂Aの軟化点は、トナーの耐久性を向上させる観点から、好ましくは90℃以上、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは105℃以上である。また、トナーの低温定着性を向上させる観点から、好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下である。2種以上の非晶質複合樹脂Aを含有する場合は、軟化点の加重平均値が上記範囲にあることが好ましい。
非晶質複合樹脂Aの吸熱の最高ピーク温度は、トナーの耐久性を向上させる観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは55℃以上、さらに好ましくは60℃以上である。また、トナーの低温定着性を向上させる観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、さらに好ましくは80℃以下である。
非晶質複合樹脂Aのガラス転移温度は、トナーの耐久性を向上させる観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは55℃以上、さらに好ましくは60℃以上である。また、トナーの低温定着性を向上させる観点から、好ましくは80℃以下、より好ましくは75℃以下、さらに好ましくは70℃以下である。なお、ガラス転移温度は非晶質相に特有の物性であり、吸熱の最高ピーク温度とは区別される。
非晶質複合樹脂Aの酸価は、トナーの帯電量の環境安定性を向上させる観点から、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下、さらに好ましくは25mgKOH/g以下であり、また、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは2mgKOH/g以上である。
本発明のトナーは、非晶質複合樹脂A以外の非晶質樹脂、例えば、複合樹脂、ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂等を含有してもよい。非晶質複合樹脂Aの含有量は、非晶質樹脂中、トナーの低温定着性及び耐久性を向上させる観点から、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。また、100質量%以下が好ましく、100質量%がより好ましい。
結晶性樹脂と非晶質樹脂の質量比(結晶性樹脂/非晶質樹脂)は、低温定着性の観点から、5/95以上が好ましく、7/93以上がより好ましく、耐久性の観点から、30/70以下が好ましく、20/80以下がより好ましく、15/85以下がさらに好ましい。
本発明では、定着時の用紙巻き付きの発生を抑制する観点から、離型剤は、炭化水素ワックスを含有することが好ましい。
炭化水素ワックスとしては、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレンポリエチレン共重合体;マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、サゾールワックス等の炭化水素ワックス及びそれらの酸化物が挙げられる。これらのなかでは、定着時の用紙巻き付きの発生を抑制する観点から、パラフィンワックスが好ましい。
離型剤の融点は、トナーの定着時の用紙巻き付きの抑制の抑制及び耐久性の観点から、60℃以上が好ましく、65℃以上がより好ましく、70℃以上がさらに好ましく、トナーの低温定着性を向上させる観点から、140℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、90℃以下がさらに好ましい。
炭化水素ワックス以外の離型剤としては、カルナウバワックス、モンタンワックス及びそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステルワックス、脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩等が挙げられるが、炭化水素ワックスの含有量は、定着時及び連続印刷時の用紙巻き付きの発生を抑制する観点から、離型剤中、60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、100質量%以下が好ましく、実質的に100質量%がより好ましく、100質量%がさらに好ましい。
離型剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、定着時及び連続印刷時の用紙巻き付きの抑制の観点から、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、2.5質量部以上がさらに好ましく、3質量部以上がさらに好ましく、耐久性の観点から、8質量部以下が好ましく、6質量部以下がより好ましい。
本発明の電子写真用トナーは、結着樹脂及び離型剤以外に、着色剤、荷電制御剤等を含有していてもよい。
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができ、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、ジスアゾエロー等が用いることができ、本発明のトナーは、黒トナー、カラートナーのいずれであってもよい。着色剤としては、トナーの耐久性を向上させる観点、トナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、フタロシアニンブルー15:3(P.B.15:3)、フタロシアニンブルー15:4(P.B.15:4)、及びカーボンブラックが好ましく、フタロシアニンブルー15:3がより好ましい。
着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、トナーの画像濃度を向上させる観点から、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上である。また、トナーの耐久性を向上させる観点、トナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは7質量部以下である。
荷電制御剤は、特に限定されず、正帯電性荷電制御剤及び負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよい。
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、例えば「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロンN-01」、「ボントロンN-04」、「ボントロンN-07」、「ボントロンN-09」、「ボントロンN-11」(以上、オリエント化学工業株式会社製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロンP-51」(オリエント化学工業株式会社製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPY CHARGE PX VP435」(クラリアント社製)等;ポリアミン樹脂、例えば「AFP-B」(オリエント化学工業株式会社製)等;イミダゾール誘導体、例えば「PLZ-2001」、「PLZ-8001」(以上、四国化成工業株式会社製)等;スチレン−アクリル系樹脂、例えば「FCA-701PT」(藤倉化成株式会社製)等が挙げられる。
また、負帯電性荷電制御剤としては、含金属アゾ染料、例えば「バリファーストブラック3804」、「ボントロンS-31」、「ボントロンS-32」、「ボントロンS-34」、「ボントロンS-36」(以上、オリエント化学工業株式会社製)、「アイゼンスピロンブラックTRH」、「T-77」(保土谷化学工業株式会社製)等;ベンジル酸化合物の金属化合物、例えば、「LR-147」、「LR-297」(以上、日本カーリット株式会社製)等;サリチル酸化合物の金属化合物、例えば、「ボントロンE-81」、「ボントロンE-84」、「ボントロンE-88」、「ボントロンE-304」(以上、オリエント化学工業株式会社製)、「TN-105」(保土谷化学工業株式会社製)等;銅フタロシアニン染料;4級アンモニウム塩、例えば「COPY CHARGE NX VP434」(クラリアント社製)、ニトロイミダゾール誘導体等;有機金属化合物等が挙げられる。
荷電制御剤の含有量は、トナーの帯電安定性の観点から、結着樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.2質量部以上がより好ましい。また、同様の観点から、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、3質量部以下がさらに好ましく、2質量部以下がさらに好ましい。
本発明トナーには、さらに、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が適宜用いられていてもよい。
本発明の電子写真用トナーは、溶融混練法、乳化転相法、重合法等の従来公知のいずれの方法により得られたトナーであってもよいが、トナーの耐久性を向上させる観点、トナーの低温定着性を向上させる観点から、溶融混練法による粉砕トナーが好ましい。具体的には、
工程1:結晶性複合樹脂C、非晶質複合樹脂A及び離型剤を含むトナー成分を、オープンロール型混練機を用いて溶融混練する工程、及び
工程2:得られた混練物を粉砕し、分級する工程
を含む方法により得られる粉砕トナーが低温定着性及び耐久性に優れる観点から好ましく、また、本発明の効果である定着時及び連続印刷時の用紙巻き付きの発生の抑制がより顕著に発揮される。
工程1において、結晶性複合樹脂C、非晶質複合樹脂A及び離型剤、必要に応じて着色剤、荷電制御剤等を含むトナー成分の溶融混練は、混練の繰り返しや分散助剤の使用をしなくても、結着樹脂に、離型剤、着色剤、荷電制御剤等のトナー成分を効率よく高分散させることができる観点から、オープンロール型混練機を用いることが好ましい。
結晶性複合樹脂C、非晶質複合樹脂A、離型剤、着色剤、荷電制御剤等のトナー成分は、あらかじめヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合機で混合した後、混練機に供給することが好ましい。
オープンロール型混練機とは、混練部が密閉されておらず開放されているものをいい、混練の際に発生する混練熱を容易に放熱することができる。また、連続式オープンロール型混練機は、少なくとも2本のロールを備えた混練機であることが好ましく、本発明に用いられる連続式オープンロール型混練機は、周速度の異なる2本のロール、即ち、周速度の高い高回転側ロールと周速度の低い低回転側ロールとの2本のロールを備えた混練機である。本発明においては、離型剤、着色剤、荷電制御剤等の添加剤のトナー中での分散性を向上させる観点、溶融混練時の機械力を低減し、発熱を抑制する観点、及び溶融混練時の温度を低減し、トナーの耐久性及び低温定着性を向上させる観点から、高回転側ロールは加熱ロール、低回転側ロールは冷却ロールであることが好ましい。
ロールの温度は、例えば、ロール内部に通す熱媒体の温度により調整することができ、各ロールには、ロール内部を2箇所以上に分割して温度の異なる熱媒体を通じてもよい。
高回転側ロールの原料投入側端部温度は、溶融混練時の機械力を低減し、発熱を抑制する観点、トナーの耐久性及び低温定着性を向上させる観点から、好ましくは100℃以上160℃以下であり、同様の観点から、低回転側ロールの原料投入側端部温度は好ましくは30℃以上100℃以下である。
高回転側ロールは、原料投入側端部と混練物排出側端部の設定温度の差が、混練物のロールからの脱離防止の観点、溶融混練時の機械力を低減し、発熱を抑制する観点、トナーの耐久性及び低温定着性を向上させる観点から、好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上であり、また、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下である。
低回転側ロールは、原料投入側端部と混練物排出側端部の設定温度の差が、離型剤、着色剤、荷電制御剤等の添加剤のトナー中での分散性を向上させる観点、溶融混練時の機械力を低減し、発熱を抑制する観点、トナーの耐久性及び低温定着性を向上させる観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上、さらに好ましくは20℃以上であり、また、50℃以下であることが好ましい。
高回転側ロールの周速度は、離型剤、着色剤、荷電制御剤等の添加剤のトナー中での分散性を向上させる観点、溶融混練時の機械力を低減し、発熱を抑制する観点、及びトナーの耐久性及び低温定着性を向上させる観点から、好ましくは2m/min以上、より好ましくは10m/min以上、さらに好ましくは25m/min以上であり、また、好ましくは100m/min以下、より好ましくは75m/min以下であり、さらに好ましくは50m/min以下である。
低回転側ロールの周速度は、同様の観点から、好ましくは1m/min以上、より好ましくは5m/min以上、さらに好ましくは15m/min以上であり、また、好ましくは90m/min以下、より好ましくは60m/min以下、さらに好ましくは30m/min以下である。また、2本のロールの周速度の比(低回転側ロール/高回転側ロール)は、低温定着性及び耐久性の観点から、好ましくは0.10以上、より好ましくは0.30以上、さらに好ましくは0.50以上であり、低温定着性及び耐久性の観点から、好ましくは0.80以下、より好ましくは0.75以下、さらに好ましくは0.7以下である。
ロールの構造、大きさ、材料等は特に限定されず、ロール表面も、平滑、波型、凸凹型等のいずれであってもよいが、混練シェアを高め、離型剤、着色剤、荷電制御剤等の添加剤のトナー中での分散性を向上させる観点、溶融混練時の機械力を低減し、発熱を抑制する観点、及びトナーの耐久性及び低温定着性を向上させる観点から、各ロールの表面には複数の螺旋状の溝が刻んであることが好ましい。
工程1で得られた混練物を粉砕可能な硬度に達するまで適宜冷却し、工程2において、粉砕する。
混練物の粉砕は、多段階に分けて行ってもよい。例えば、混練物を、1〜5mm程度に粗粉砕した後、さらに所望の粒径に微粉砕してもよい。
粉砕に用いられる粉砕機は特に限定されないが、例えば、粗粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、ハンマーミル、アトマイザー、ロートプレックス等が挙げられる。また、微粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、流動層式カウンタージェットミル、衝突板式ジェットミル、回転型機械式ミル等が挙げられる。
分級に用いられる分級機としては、気流式分級機、慣性式分級機、篩式分級機等が挙げられる。分級の際、粉砕が不十分で除去された粉砕物は再度粉砕工程に供してもよく、必要に応じて粉砕と分級を繰り返してもよい。
本発明のトナーの体積中位粒径(D50)は、生産性の観点から、3μm以上が好ましく、4μm以上がより好ましく、5μm以上がさらに好ましく、粒径が3μm以下の微粉量を低減する観点から、15μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、8μm以下がさらに好ましい。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。また、トナーを外添剤で処理している場合には、外添剤で処理する前のトナー粒子の体積中位粒径をトナーの体積中位粒径とする。
本発明のトナーにおいて、粒径が3μm以下の粒子の含有量は、トナー中、初期の定着時の用紙巻き付きを抑制する観点から、5.0個数%以下であり、連続印刷時の定着時の用紙巻き付きを抑制する観点から、4.0個数%以下が好ましく、3.0個数%以下がより好ましく、生産性及び低温定着性の観点から、1.0個数%以上が好ましく、2.0個数%以上がより好ましい。粒径が3μm以下の粒子の含有量は、分級により調整することができる。
また、トナーの平均円形度は、トナーの円形度は、連続印刷時の定着時の用紙巻き付きの発生を抑制する観点及び耐久性の観点から、0.940以上であり、0.950以上が好ましく、0.960以上がより好ましく、生産性及びクリーニング性の観点から、0.980以下が好ましく、0.970以下がより好ましい。トナーの円形度は、粉砕機内でのトナーの滞留時間、粉砕機での粉砕処理回数等の方法により調整することができ、滞留時間を長く、粉砕処理回数を多くするほど、平均円形度は高くなる。
本発明のトナーには、転写性を向上させるために、外添剤を用いることが好ましい。外添剤としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化亜鉛等の無機微粒子や、メラミン系樹脂微粒子、ポリテトラフルオロエチレン樹脂微粒子等の樹脂粒子等の有機微粒子が挙げられ、2種以上が併用されていてもよい。これらの中では、シリカが好ましく、トナーの転写性の観点から、疎水化処理された疎水性シリカであることがより好ましい。
シリカ粒子の表面を疎水化するための疎水化処理剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチルジクロロシラン(DMDS)、シリコーンオイル、オクチルトリエトキシシラン(OTES)、メチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
外添剤の平均粒子径は、トナーの帯電性や流動性、転写性の観点から、10nm以上が好ましく、15nm以上がより好ましい。また、同様の観点から、250nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、90nm以下がさらに好ましい。
外添剤の含有量は、トナーの帯電性や流動性、転写性の観点から、外添剤で処理する前のトナー100質量部に対して、0.05質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましく、0.3質量部以上がさらに好ましい。また、同様の観点から、5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましい。
本発明のトナーは、一成分現像用トナーとして、又はキャリアと混合して二成分現像剤として用いることができる。
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。樹脂等の物性は、以下の方法により測定した。
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター「CFT-500D」(株式会社島津製作所社製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
〔樹脂の吸熱の最高ピーク温度〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、室温から降温速度10℃/minで0℃まで冷却し、0℃にて1分間保持する。その後、昇温速度50℃/minで測定する。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を吸熱の最高ピーク温度とする。
〔樹脂のガラス転移温度〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで-10℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで昇温し測定する。吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070の方法に基づき測定する。ただし、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更する。
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、昇温速度10℃/minで200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで180℃まで昇温し測定する。そこで得られた融解吸熱カーブから観察される吸熱の最高ピーク温度を離型剤の融点とする。
〔外添剤の平均粒子径〕
平均粒子径は、個数平均粒子径を指し、走査型電子顕微鏡(SEM)写真から500個の粒子の粒径(長径と短径の平均値)を測定し、それらの数平均値とする。
〔トナーの体積中位粒径(D50)及び粒径が3μm以下の粒子の含有量〕
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター株式会社製)
アパチャー径:100μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター株式会社製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター株式会社製)
分散液:電解液にエマルゲン109P(花王株式会社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB(グリフィン):13.6)を溶解して5質量%に調整したもの
分散条件:前記分散液5mlに測定試料10mgを添加し、超音波分散機(機械名:(株)エスエヌディー社製US-1、出力:80W)にて1分間分散させ、その後、前記電解液25mlを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
測定条件:前記電解液100mlに、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度となるように、前記試料分散液を加え、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)及び粒径が3μm以下の粒子の含有量(個数%)を求める。
〔トナーの平均円形度〕
測定機:FPIA-3000(シスメックス社製)
標準ユニット(対物レンズ10倍)
測定モード HPFモード
バージョン 00-10
分散液:エマルゲン109P(花王社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB13.6)5質量%電解液
分散条件:分散液10mlに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、蒸留水10mlを添加し、さらに、超音波分散機にて2分間分散させる。
測定条件:分散液に分散したトナーの円形度を、粒子濃度1800〜2200個になる濃度で20℃で測定し、数平均値を求める。
樹脂製造例1〔樹脂C1、C2〕
表1に示すセバシン酸以外の重縮合系樹脂成分の原料モノマーを窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、120℃に加熱した。120℃にて、表1に示すセバシン酸のうち1.5kgを添加し、さらに160℃まで加熱し、6時間反応させた。その後、表1に示すスチレン系樹脂成分の原料モノマー及び両反応性モノマーを滴下ロートにより1時間かけて滴下した。160℃に保持したまま1時間付加重合反応を熟成させた後、8.3kPaにて1時間スチレン系樹脂成分の原料モノマーの除去を行った。さらに、残りのセバシン酸を添加し、200℃まで8時間かけて昇温、8.3kPaにて30分反応させた。さらに、2-エチルヘキサン酸錫(II)20g及び没食子酸2gを添加し、200℃にて1時間反応させた後、8.3kPaにて1時間反応させて、結晶性ハイブリッド樹脂を得た。
樹脂製造例2〔樹脂C3〕
表1に示す原料モノマーを窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、140℃に加熱した。さらに200℃まで加熱し、10時間反応させた後、8.3kPaにて30分反応させた。
さらに、2-エチルヘキサン酸錫(II)20g及び没食子酸2gを添加し、200℃にて1時間反応させた後、8.3kPaにて1時間反応させて、結晶性ポリエステルを得た。
Figure 2016114829
樹脂製造例3〔樹脂A1〕
表2に示すフマル酸及び無水トリメリット酸以外の重縮合系樹脂成分の原料モノマー、2-エチルヘキサン酸錫(II)40g及び没食子酸1gを窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、230℃にて8時間反応を行った後、8.3kPaにて1時間反応させた。
170℃に降温し、スチレン系樹脂成分の原料モノマー、両反応性モノマー及びジクミルパーオキサイドを滴下ロートにより1時間かけて滴下した。170℃に保持したまま1時間付加重合反応を熟成させた後、210℃に昇温し、8.3kPaにて1時間スチレン系樹脂成分の原料モノマーの除去及び、両反応性モノマーと重縮合系樹脂(ポリエステル)部位の反応を行った。さらに、210℃にて、無水トリメリット酸、フマル酸及びターシャリブチルカテコール5gを添加し、所望の軟化点に達するまで反応を行い、非晶質ハイブリッド樹脂を得た。
樹脂製造例4〔樹脂A2〕
表2に示すフマル酸及び無水トリメリット酸以外の原料モノマー、2-エチルヘキサン酸錫(II)40g及び没食子酸1gを窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、230℃にて8時間反応を行った。反応後、8.3kPaにて1時間反応させた。
さらに、210℃に降温して、無水トリメリット酸、フマル酸及びターシャリブチルカテコール5gを添加し、軟化点が138.1℃に達するまで反応を行い、非晶質ポリエステルを得た。
Figure 2016114829
実施例1〜6、9、10及び比較例1〜9
表3に示す所定量の結着樹脂と、着色剤「ECB-301」(大日精化社製、フタロシアニンブルー(P.B.15:3))4質量部、荷電制御剤「ボントロンE-304」(オリヱント化学工業社製)0.5質量部、及び離型剤「HNP-9」(日本精蝋社製、パラフィンワックス、融点:75℃)5質量部をヘンシェルミキサーにて混合後、以下に示す条件で溶融混練した。
得られた原料混合物をテーブルフィーダーにて、連続式オープンロール型混練機「ニーデックス」(三井鉱山社製)に供給して混練を行い、混練物を得た。この際に使用した連続式オープンロール型混練機は、ロール外径が0.14m、有効ロール長が0.8mのものであり、運転条件は、高回転側ロール(前ロール)の回転数が75r/min(周速度33m/min)、低回転側ロール(後ロール)の回転数が50r/min(周速度22m/min)、2本のロールの周速度の比(低回転側ロール/高回転側ロール)が0.67、ロール間隙が0.1mmであった。ロール内の加熱及び冷却媒体温度は、高回転ロールの原料投入側の温度を150℃、混練物排出側の温度を100℃、低回転ロールの原料投入側の温度を75℃及び混練物排出側の温度を30℃に設定した。また、原料混合物の供給速度は10kg/h、平均滞留時間は約5分間であった。
得られた混練物を冷却し、粉砕機「ロートプレックス」(東亜機械社製)により粗粉砕し、目開きが2mmのふるいを用いて粒径が2mm以下の粗粉砕物を得た。ターボミル「RS400」(フロイント・ターボ社製)にて微粉砕・上限分級(粗粉除去)を行った。さらに、分級機「TTSP」(ホソカワアルピネ社製)にて下限分級(微粉除去)を行い、体積中位粒径が7.0μmのトナー粒子を得た。トナー円形度の調整は、ターボミルによる微粉砕時の原料供給量およびターボミルによる微粉砕回数を変更することにより調整した。
得られたトナー粒子100質量部と、外添剤として、疎水性シリカ「R972」(日本アエロジル社製、疎水化処理剤:DMDS、平均粒径:16nm)1.0質量部、及び疎水性シリカ「RY-50」(日本アエロジル社製、疎水化処理剤:シリコーンオイル、平均粒径:40nm)1.0質量部をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)にて3000r/min(周速度32m/sec)で3分間混合して、トナーを得た。
実施例7、8
離型剤として、「HNP-9」の代わりに、実施例7では「SP-105」(サゾール社製、フィッシャートロプシュワックス、融点:105℃)5質量部を、実施例8では「カルナバワックス C2」(加藤洋行社製、カルナウバワックス、融点:85℃)5質量部を、それぞれ使用した以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。
実施例11
連続式オープンロール型混練機の運転条件を、低回転側ロール(後ロール)の回転数を60r/min(26m/min)を変更し、2本のロールの周速度の比(低回転側ロール/高回転側ロール)を0.78にした以外は、実施例1と同様にしてトナーを得た。
試験例1〔低温定着性〕
非磁性一成分現像装置「Microline5400」(沖データ(株)製)にトナーを実装し、2cm×3cmのベタ画像(トナー付着量:1.1mg/cm2)を有する未定着の画像を90g紙(mondi社製 Color Copy 90)上に得た。「Microline3050」(沖データ(株)製)の外部定着機(定着速度:300mm/sec)を用い、定着温度を130℃に設定し、未定着画像を定着させた。
定着画像に「Scotch(登録商標)メンディングテープ 810」(住友スリーエム社製、幅:18mm)を貼り付け、1.25kgの重りで上からこすった後、テープを剥がした。テープを貼る前と剥がした後の画像濃度を画像濃度測定器「GRETAG SPM50」(GRETAG社製)を用いて測定し、両者の比率(剥離後/貼付前×100)を定着強度とし、130℃の定着強度により低温定着性を評価した。結果を表3に示す。定着強度が高いほど低温定着性に優れることを示し、定着強度は、95%以上が好ましく、97%以上がより好ましく、98%以上がさらに好ましい。
試験例2〔耐久性〕
非磁性一成分現像装置「Microline5400」(沖データ(株)製)のトナーカートリッジを外部モーターにより駆動できる空転機に装填し、A4用紙縦換算で30枚/分相当の印字速度に調整し、トナーを実装した。空転機を連続運転し1000枚印刷に相当する時間毎に、現像ローラー表面のスジの発生状況を目視で観察し、耐久性を評価した。スジが発生した時点の枚数を表3に示す。スジが発生した時点の枚数が多いほど耐久性に優れることを示し、その枚数は、7000枚(7K)以上が好ましく、8000枚(8K)以上がより好ましく、9000枚(9K)以上がさらに好ましい。なお、表中の「>10K」とは、10000枚(10K)までスジ発生しなかったことを示す。
試験例3〔初期の用紙巻き付き〕
非磁性一成分現像装置「Microline5400」(沖データ(株)製)にトナーを実装し、2cm×3cmのベタ画像(トナー付着量:1.1mg/cm2)を有する未定着の画像を60g紙(Fuji Xerox社製SP紙)上に得た。非磁性一成分現像装置「Microline3050」(沖データ(株)製)の外部定着機(定着速度:300mm/sec)を用い、定着温度を140℃から180℃へと5℃ずつ順次上昇させながら、未定着画像を定着させ、用紙巻き付きの有無を確認した。用紙巻き付きが発生した温度を表3に示す。用紙巻き付きの温度が高いほど、用紙の巻き付きが抑制されていることを示し、その温度は、165℃以上が好ましく、170℃以上がより好ましく、175℃以上がさらに好ましい。なお、表中の「>180℃」とは、180℃においても用紙の巻き付きが発生しなかったことを示す。
試験例4〔連続印刷時の用紙巻き付き〕
非磁性一成分現像装置「Microline5400」(沖データ(株)製)のトナーカートリッジを外部モーターにより駆動できる空転機に装填し、A4用紙縦換算で30枚/分相当の印字速度に調整し、トナーを実装した。空転機を連続運転し3000枚印刷に相当する時間運転した。
3000枚印刷相当運転後のトナーカートリッジを非磁性一成分現像装置「Microline5400」(沖データ(株)製)に実装し、2cm×3cmのベタ画像部(トナー付着量:1.1mg/cm2)を有する未定着の画像を60g紙(Fuji Xerox社製SP紙)上に得た。非磁性一成分現像装置「Microline3050」(沖データ(株)製)の外部定着機(定着速度:300mm/sec)を用い、定着温度を140℃から180℃へと5℃ずつ順次上昇させながら、未定着画像を定着させ、用紙巻き付きの有無を確認した。用紙巻き付きが発生した温度を表3に示す。用紙巻き付きの温度は、165℃以上が好ましく、170℃以上がより好ましく、175℃以上がさらに好ましい。なお、表中の「>180℃」とは、180℃においても用紙の巻き付きが発生しなかったことを示す。
Figure 2016114829
実施例1、2、比較例1の対比より、粒径が3μm以下のトナー微粉の含有量が5質量%以下の時に、初期の定着時の用紙巻き付きが抑制されることが分かる。また、トナー微粉が少ないほど、連続印刷時の定着時の用紙巻き付きが抑制されることが分かる。
実施例1、3、4、比較例2の対比、また、実施例2、5、6、比較例3の対比により、円形度が高いほど、連続印刷時の定着時の用紙巻き付きの発生が抑制され、耐久性にも優れることが分かる。
実施例1、7、8の対比より、離型剤としてパラフィンワックスを用いることで初期及び連続印刷時の定着時の用紙巻き付きの発生がより効果的に抑制されることが分かる。
実施例1、9の対比より、非晶質樹脂中、非晶質複合樹脂の含有率が高い方が、耐久性に優れることが分かる。
実施例1、10の対比より、結晶性複合樹脂の原料である脂肪族ジオールは、低温定着性の観点から、炭素数が12のドデカンジオールが好ましいことが分かる。
実施例1、11の対比より、高回転側と低回転側との周速度の比が0.67である実施例1が、初期及び連続印刷時の定着時の用紙巻き付きの発生を抑制しながら、低温定着性と耐久性により優れることがわかる。
実施例1と比較例6の対比より、非晶質ポリエステルと比較して、非晶質複合樹脂を用いることで、耐久性及び低温定着性に優れることが分かる。
実施例1と比較例7、実施例9と比較例8の対比より、結晶性ポリエステルと比較して、結晶性複合樹脂を用いることで、耐久性及び低温定着性に優れることが分かる。
本発明の電子写真用トナーは、静電荷像現像法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像等に好適に用いられるものである。

Claims (8)

  1. 結晶性樹脂、非晶質樹脂、及び離型剤を含有する電子写真用トナーであって、
    前記結晶性樹脂が、炭素数9以上14以下の脂肪族ジオールを含有するアルコール成分と、炭素数9以上14以下の脂肪族ジカルボン酸化合物を含有するカルボン酸成分とを重縮合させて得られる重縮合系樹脂成分と、スチレン系樹脂成分とを含む結晶性複合樹脂Cを含有し、
    前記非晶質樹脂が、アルコール成分と、芳香族ジカルボン酸化合物を含有するカルボン酸成分とを重縮合させて得られる重縮合系樹脂成分と、スチレン系樹脂成分とを含む非晶質複合樹脂Aを含有し、
    前記トナーの平均円形度が0.940以上であり、前記トナー中の粒径が3μm以下の粒子の含有量が5.0個数%以下である、電子写真用トナー。
  2. 離型剤が、パラフィンワックスを含有する、請求項1記載の電子写真用トナー。
  3. 非晶質複合樹脂Aの重縮合系樹脂成分のアルコール成分が、式(I):
    Figure 2016114829
    (式中、RO及びORはオキシアルキレン基であり、Rはエチレン及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の値は1以上16以下である)
    で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を70モル%以上含有する、請求項1又は2記載の電子写真用トナー。
  4. 非晶質樹脂中、非晶質複合樹脂Aの含有量が50質量%以上である、請求項1〜3いずれか記載の電子写真用トナー。
  5. 結晶性複合樹脂Cが、(イ)炭素数9以上14以下の脂肪族ジオールを含有するアルコール成分と炭素数9以上14以下の脂肪族ジカルボン酸化合物を含有するカルボン酸成分とを含む、重縮合系樹脂成分の原料モノマー、(ロ)スチレン系樹脂成分の原料モノマー、及び(ハ)重縮合系樹脂成分の原料モノマー及びスチレン系樹脂成分の原料モノマーのいずれとも反応し得る両反応性モノマーを重合させることにより得られる樹脂である、請求項1〜4いずれか記載の電子写真用トナー。
  6. 結晶性樹脂と非晶質樹脂の質量比(結晶性樹脂/非晶質樹脂)が、5/95以上30/70以下である、請求項1〜5いずれか記載の電子写真用トナー。
  7. 工程1:結晶性複合樹脂C、非晶質複合樹脂A及び離型剤を含むトナー成分を、オープンロール型混練機を用いて溶融混練する工程、及び
    工程2:得られた混練物を粉砕し、分級する工程
    を含む、請求項1〜6いずれか記載の電子写真用トナーの製造方法。
  8. オープンロール型混練機が、周速度の異なる2本のロールを備え、周速度の低い低回転側ロールと周速度の高い高回転側ロールの周速度の比(低回転側ロール/高回転側ロール)が、0.10〜0.80である、請求項7記載の製造方法。
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