JP2011253013A - トナー - Google Patents

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Abstract

【課題】低温定着性及び耐高温オフセット性に優れ、定着可能幅が広く、グロスに優れたトナーを提供すること。
【解決手段】結着樹脂を含有してなるトナーであって、前記結着樹脂が結晶性樹脂と非晶質樹脂からなり、該結晶性樹脂が炭素数2〜10の脂肪族ジオールを含有したアルコール成分と芳香族ジカルボン酸化合物を含有したカルボン酸成分とを縮重合させて得られる縮重合系樹脂成分と、スチレン系樹脂成分とを含む複合樹脂を含有してなり、該複合樹脂の140℃における貯蔵弾性率が100〜8000Paであり、該非晶質樹脂の140℃における貯蔵弾性率が360〜1300Paであるトナー。
【選択図】なし

Description

本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられるトナーに関する。
近年の高速化、小型化等の要求に対し、より低温定着可能なトナーが求められている。この要求に応えるために、結着樹脂に結晶性樹脂と非晶質樹脂を用いるトナーが提案されている。このような結晶性樹脂と非晶質樹脂を用いたトナーは、低温定着性は向上するが、耐高温オフセット性(最高定着温度)が低下し、定着可能幅が縮小する傾向がある。
これらの課題に対し、170℃における貯蔵弾性率が10〜10000Pa、融解熱の最大ピーク温度が55〜150℃、軟化点と融解熱の最大ピーク温度の比(軟化点/ピーク温度)が0.6〜1.3である結晶性ポリエステルを含有し、低温定着性に優れ、かつ画像濃度が高く、帯電立ち上がり性の良好なトナーが提案されている(特許文献1参照)。また、クロロホルム可溶分中のヘキサン不溶分がクロロホルム可溶分の50重量%以上である結晶性ポリエステルを含有し、低温定着性に優れ、かつ一成分現像法においても優れた耐久性を有するトナーが提案されている(特許文献2参照)。また、結晶性ポリエステル3〜50重量部と、イオン架橋した無定形ビニル重合体97〜50重量部とが化学的に結合されてなり、クロロホルム不溶分が3〜10重量%であるブロック共重合体又はグラフト共重合体をバインダー樹脂として含有するトナーが耐オフセット性と低温定着性に優れていることが示されている(特許文献3参照)。
特開2004−197051号公報 特開2003−302788号公報 特開平4−81770号公報
しかしながら、例えば、フルカラープリンタでトナーを3層重ねて印字する用途ではトナー層が厚くなり、これらのトナーでは、低温定着性と耐高温オフセット性を向上させて定着可能幅を拡げるとともに、グロスを高めることが困難である。
本発明の課題は、低温定着性及び耐高温オフセット性に優れ、定着可能幅が広く、グロスに優れたトナーを提供することにある。
本発明は、結着樹脂を含有してなるトナーであって、前記結着樹脂が結晶性樹脂と非晶質樹脂からなり、該結晶性樹脂が炭素数2〜10の脂肪族ジオールを含有したアルコール成分と芳香族ジカルボン酸化合物を含有したカルボン酸成分とを縮重合させて得られる縮重合系樹脂成分と、スチレン系樹脂成分とを含む複合樹脂を含有してなり、該複合樹脂の140℃における貯蔵弾性率が100〜8000Paであり、該非晶質樹脂の140℃における貯蔵弾性率が360〜1300Paであるトナーに関する。
本発明のトナーは、トナー層が厚い場合においても、低温定着性及び耐高温オフセット性に優れ、定着可能幅が広く、グロスに優れた効果を奏するものである。本発明のトナーは、非磁性一成分現像装置用フルカラートナー、特にトナーに離型剤を多く含有させる必要があるオイルレス非磁性一成分現像装置に用いても、優れた効果を奏する。
本発明のトナーは、結着樹脂を含有してなるトナーであって、結着樹脂が結晶性樹脂と非晶質樹脂からなり、該結晶性樹脂が炭素数2〜10の脂肪族ジオールを含有したアルコール成分と芳香族ジカルボン酸化合物を含有したカルボン酸成分とを縮重合させて得られる縮重合系樹脂成分と、スチレン系樹脂成分とを含む複合樹脂を含有してなり、該複合樹脂の140℃における貯蔵弾性率が100〜8000Paであり、該非晶質樹脂の140℃における貯蔵弾性率が360〜1300Paである点に大きな特徴を有しており、トナー層が厚い場合においても、低温定着性及び耐高温オフセット性に優れ、定着可能幅が広く、グロスに優れた効果を奏するものである。
一般的に、結晶性樹脂と非晶質樹脂を使用した場合、結晶性樹脂と非晶質樹脂が相溶化することで融点降下やガラス転移点降下により低粘度成分が増加し低温定着性が向上すると考えられる。一方で、結晶性樹脂と非晶質樹脂が相溶化することで増加した低粘度成分は高温オフセット等を発生させる要因となり高温での定着性を悪化させる。
本発明のトナーに含まれる複合樹脂は、スチレン系樹脂成分と炭素数2〜10の脂肪族ジオールを含有したアルコール成分と芳香族ジカルボン酸化合物を含有したカルボン酸成分とを縮重合させて得られる結晶性の縮重合系樹脂成分とを含むため、該複合樹脂と非晶質樹脂が相溶化した場合においても相溶部分の粘度低下を適度に抑えることが可能となる。従って、従来の結晶性樹脂と非晶質樹脂を用いた場合に比べ、高分子量の樹脂、すなわち貯蔵弾性率の高い樹脂を用いなくても、良好な低温定着性を発現しつつ耐高温オフセット性も良好に保つことが可能になるものと考えられる。
さらに、従来の結晶性樹脂と非晶質樹脂を用いた場合に比べ、貯蔵弾性率の高い樹脂を用いず、複合樹脂の140℃における貯蔵弾性率を100〜8000Pa、非晶質樹脂の140℃における貯蔵弾性率を360〜1300Paとすることで、低温定着性及び耐高温オフセット性を向上しつつ高グロスな定着画像を得ることが可能となる。
本発明において、結着樹脂は、トナーの低温定着性及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、結晶性樹脂と非晶質樹脂を含有するものであり、結晶性樹脂として、炭素数2〜10の脂肪族ジオールを含有したアルコール成分と芳香族ジカルボン酸化合物を含有したカルボン酸成分とを縮重合させて得られる縮重合系樹脂成分と、スチレン系樹脂成分とを含む複合樹脂を主成分とすることが好ましい。
ここで、樹脂の結晶性は、軟化点と示差走査熱量計による吸熱の最高ピーク温度との比、即ち[軟化点/吸熱の最高ピーク温度]の値で定義される結晶性指数によって表わされる。結晶性樹脂は、結晶性指数が0.6〜1.4、好ましくは0.7〜1.2、より好ましくは0.9〜1.2であり、非晶質樹脂は1.4を超えるか、0.6未満の樹脂である。樹脂の結晶性は、原料モノマーの種類とその比率、及び製造条件(例えば、反応温度、反応時間、冷却速度)等により調整することができる。なお、吸熱の最高ピーク温度とは、観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を指す。最高ピーク温度は、軟化点との差が20℃以内であれば融点とし、軟化点との差が20℃を超える場合はガラス転移に起因するピーク温度とする。
本発明において、複合樹脂を構成する縮重合系樹脂成分は、トナーの低温定着性及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、炭素数2〜10の脂肪族ジオールを含有したアルコール成分と芳香族ジカルボン酸化合物を含有したカルボン酸成分とを縮重合させて得られる樹脂である。
縮重合系樹脂成分としては、ポリエステル、ポリエステル・ポリアミド等が挙げられるが、トナーの低温定着性を向上させる観点から、ポリエステルが好ましい。
本発明において、縮重合系樹脂のアルコール成分は、複合樹脂の結晶性を高める観点から、炭素数2〜10、好ましくは炭素数4〜8、より好ましくは炭素数4〜6の脂肪族ジオールを含有する。
炭素数2〜10の脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、及び1,4-ブテンジオール等が挙げられ、特に複合樹脂の結晶性を高める観点から、α,ω−直鎖アルカンジオールが好ましく、1,4-ブタンジオール及び1,6-ヘキサンジオールがより好ましく、1,6-ヘキサンジオールがさらに好ましい。
炭素数2〜10の脂肪族ジオールの含有量は、複合樹脂の結晶性を高める観点から、アルコール成分中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80〜100モル%、さらに好ましくは90〜100モル%である。特に、その炭素数2〜10の脂肪族ジオールのなかの1種のアルコール成分中に占める割合が、好ましくは50モル%以上、より好ましくは60〜100モル%である。
アルコール成分には、炭素数2〜10の脂肪族ジオール以外の多価アルコール成分が含有されていてもよく、式(I):
Figure 2011253013
(式中、RO及びORはオキシアルキレン基であり、Rはエチレン及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の平均値は1〜16が好ましく、1〜8がより好ましく、1.5〜4がさらに好ましい)
で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族ジオール;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、1,4−ソルビタン等の3価以上のアルコールが挙げられる。
本発明において、縮重合系樹脂のカルボン酸成分は、トナーの低温定着性及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、芳香族ジカルボン酸化合物を含有する。
芳香族ジカルボン酸化合物としては、炭素数8〜12のものが好ましく、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸及びこれらの酸の無水物、並びにそれらのアルキル(炭素数1〜8)エステルが挙げられる。なお、ジカルボン酸化合物とは、ジカルボン酸、その無水物及びそのアルキル(炭素数1〜8)エステルを指すが、これらの中では、ジカルボン酸が好ましい。また、好ましい炭素数とは、ジカルボン酸化合物のジカルボン酸部分の炭素数を意味する。
芳香族ジカルボン酸化合物の含有量は、トナーの低温定着性及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、カルボン酸成分中、好ましくは70〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%である。
カルボン酸成分には、芳香族ジカルボン酸化合物以外の多価カルボン酸化合物が含有されていてもよく、該多価カルボン酸化合物としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、炭素数が1〜30のアルキル基又は炭素数2〜30のアルケニル基で置換されたコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、トリメリット酸、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸等の3価以上の芳香族多価カルボン酸、及びこれらの酸無水物、アルキル(炭素数1〜8)エステル等が挙げられる。
また、アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸化合物が、分子量調整等の観点から、適宜含有されていてもよい。
なお、本明細書においては、後述する両反応性モノマーは、アルコール成分やカルボン酸成分の含有量の計算には含まれないものとする。
縮重合系樹脂成分の原料モノマーであるカルボン酸成分とアルコール成分との合計モル数中、芳香族ジカルボン酸化合物と炭素数2〜10の脂肪族ジオールとの合計モル数の割合は、複合樹脂の結晶性を高める観点から、好ましくは75〜100モル%、より好ましくは85〜100モル%、さらに好ましくは95〜100モル%である。
縮重合系樹脂成分におけるカルボン酸成分とアルコール成分とのモル比(カルボン酸成分/アルコール成分)において、複合樹脂の高分子量化を図る際には、カルボン酸成分よりもアルコール成分が多い方が好ましく、前記モル比は0.50〜0.89が好ましく、0.70〜0.85がさらに好ましい。
縮重合系樹脂成分の原料モノマーの縮重合反応は、不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じて、エステル化触媒、重合禁止剤等の存在下、180〜250℃程度の温度で縮重合させて行うことができる。エステル化触媒としては、酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)等の錫化合物、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられ、エステル化触媒とともに用いられ得るエステル化助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。エステル化触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分と両反応性モノマーの総量100重量部に対して、0.01〜1.5重量部が好ましく、0.1〜1.0重量部がより好ましい。エステル化助触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分と両反応性モノマーの総量100重量部に対して、0.001〜0.5重量部が好ましく、0.01〜0.1重量部がより好ましい。
スチレン系樹脂成分の原料モノマーとしては、スチレン、又はα−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体(以下、スチレンとスチレン誘導体をまとめて「スチレン誘導体」という)が用いられる。
スチレン誘導体の含有量は、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点から、スチレン系樹脂成分の原料モノマー中、70重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましく、90重量%以上がさらに好ましい。
スチレン誘導体以外に用いられるスチレン系樹脂成分の原料モノマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル;エチレン、プロピレン等のエチレン性不飽和モノオレフィン類;ブタジエン等のジオレフィン類;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等のエチレン性モノカルボン酸エステル;ビニルメチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のビニリデンハロゲン化物;N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物類等が挙げられる。
スチレン誘導体以外に用いられるスチレン系樹脂成分の原料モノマーは2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及び/またはメタクリル酸を意味する。
スチレン誘導体以外に用いられるスチレン系樹脂成分の原料モノマーの中では、トナーの低温定着性を向上させる観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基の炭素数は、上記の観点から1〜22が好ましく、8〜18がより好ましい。なお、該アルキルエステルの炭素数は、エステルを構成するアルコール成分由来の炭素数をいう。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ここで、「(イソ又はターシャリー)」、「(イソ)」は、これらの基が存在している場合とそうでない場合の双方を含むことを意味し、これらの基が存在していない場合には、ノルマルであることを示す。また、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの双方の場合を含むことを示す。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、トナーの低温定着性及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、スチレン系樹脂成分の原料モノマー中、30重量%以下が好ましく、20重量%以下がより好ましく、10重量%以下がさらに好ましい。
なお、スチレン誘導体と(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを含む原料モノマーを付加重合させて得られる樹脂をスチレン−(メタ)アクリル樹脂ともいう。
スチレン系樹脂成分の原料モノマーの付加重合反応は、例えば、ジクミルパーオキサイド等の重合開始剤、架橋剤等の存在下、有機溶媒存在下又は無溶媒下で、常法により行うことができるが、温度条件としては、110〜200℃が好ましく、140〜170℃がより好ましい。
付加重合反応の際に有機溶媒を使用する場合、キシレン、トルエン、メチルエチルケトン、アセトン等を用いることができる。有機溶媒の使用量は、スチレン系樹脂成分の原料モノマー100重量部に対して、10〜50重量部程度が好ましい。
スチレン系樹脂成分のガラス転移点(Tg)は、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点から、好ましくは60〜130℃、より好ましくは80〜120℃、さらに好ましくは90〜110℃である。
スチレン系樹脂成分のTgは、高分子の場合は熱加成性式というTgを予測する経験式、Fox式(T.G.Fox、Bull.Am.Physics Soc.、第1巻、第3号、123ページ(1956))に従って、ポリマーを構成する各々の単量体の単独重合体のTgnより、下記式(1)から計算により求められる値を使用する。
1/Tg=Σ(Wn/Tgn) (1)
(式中、Tgnは、各単量体成分の単独重合体の絶対温度で表したTgであり、Wnは各単量体成分の重量分率である。)
なお、本明細書において、後述する両反応性モノマーは、スチレン系樹脂成分の含有量の計算に含まれないものとし、スチレン系樹脂成分のTgの計算に用いない。
本発明の実施例で用いられるFoxの式のガラス転移点(Tg)の計算には、スチレンのTgn:373K(100℃)、アクリル酸2-エチルヘキシルのTgn:223K(-50℃)を用いる。
複合樹脂において、縮重合樹脂成分とスチレン系樹脂成分とは、直接に又は連結基を介して結合していることが好ましい。連結基としては、後述する両反応性モノマーや連鎖移動剤等由来の化合物、他の樹脂等が挙げられる。
複合樹脂は、前記縮重合系樹脂成分とスチレン系樹脂成分とが相互に分散している状態が好ましく、前記分散状態は、以下のような、実施例で述べる方法で測定した複合樹脂のTgと前記Fox式の計算値との差で評価することができる。
すなわち、本発明における複合樹脂は結晶性樹脂であるが、スチレン系樹脂成分と縮重合系樹脂成分とに由来する非晶質部分とを有しており、スチレン系樹脂成分に由来するTgと縮重合系樹脂成分に由来するTgを持つ。複合樹脂中のスチレン系樹脂成分のTgと縮重合系樹脂成分のTgとは、別個に測定される値であるが、縮重合系樹脂成分とスチレン系樹脂成分との分散度が高まるにつれて、両Tgが相互に近づき、縮重合系樹脂成分とスチレン系樹脂成分とがほぼ均一な状態にまで分散すると、両Tgは重複し、測定値はほぼ一つになる。
従って、スチレン系樹脂成分と縮重合系樹脂成分とが相互に分散している状態では、後述する測定条件で測定した複合樹脂のTgは、前記スチレン系樹脂成分のFox式で計算したTgと異なった値となる。具体的には、複合樹脂のガラス転移点と、複合樹脂中のスチレン系樹脂成分のFox式で計算されたガラス転移点との差の絶対値は、10℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましく、50℃以上がさらに好ましく、70℃以上がよりさらに好ましい。一般に、縮重合系樹脂成分のTgは、スチレン系樹脂成分のTgより低いことから、複合樹脂のTgの測定値は、スチレン系樹脂成分の計算値のTgより低くなることが多い。
このような複合樹脂は、例えば、(1)カルボキシ基や水酸基を有するスチレン系樹脂の存在下で、縮重合系樹脂成分の原料モノマーを縮重合させる方法、カルボキシ基や水酸基は後述する両反応性モノマーや連鎖移動剤など由来のものを用いることができる。(2)反応性不飽和結合を有する縮重合系樹脂の存在下で、スチレン系樹脂成分の原料モノマーを付加重合させる方法などで得ることができる。
複合樹脂は、トナーの低温定着性及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、縮重合系樹脂成分の原料モノマーとスチレン系樹脂成分の原料モノマーに加えて、さらに縮重合系樹脂成分の原料モノマー及びスチレン系樹脂成分の原料モノマーのいずれとも反応し得る、両反応性モノマーを用いて得られる樹脂(ハイブリッド樹脂)であることが好ましい。従って、縮重合系樹脂成分の原料モノマー及びスチレン系樹脂成分の原料モノマーを重合させて複合樹脂を得る際に、縮重合反応及び/又は付加重合反応は、両反応性モノマーの存在下で行うことが好ましい。これにより、複合樹脂は、両反応性モノマー由来の構成単位を介して縮重合系樹脂成分とスチレン系樹脂成分とが結合した樹脂(ハイブリッド樹脂)となり、縮重合系樹脂成分とスチレン系樹脂成分とがより微細に、かつ均一に分散したものとなる。
これらから、複合樹脂は、(イ)炭素数2〜10の脂肪族ジオールを含有したアルコール成分と芳香族ジカルボン酸化合物を含有したカルボン酸成分とを含む、縮重合系樹脂成分の原料モノマー、(ロ)スチレン系樹脂成分の原料モノマー、及び(ハ)縮重合系樹脂成分の原料モノマー及びスチレン系樹脂成分の原料モノマーのいずれとも反応し得る両反応性モノマーを重合させることにより得られる樹脂であることが好ましい。
両反応性モノマーとしては、分子内に、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基、好ましくは水酸基及び/又はカルボキシル基、より好ましくはカルボキシル基と、エチレン性不飽和結合とを有する化合物が好ましく、このような両反応性モノマーを用いることにより、分散相となる樹脂の分散性をより向上させることができる。両反応性モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸及び無水マレイン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種であることが好ましいが、縮重合反応及び付加重合反応の反応性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸又はフマル酸がより好ましい。但し、重合禁止剤と共に用いた場合は、フマル酸等の多価カルボン酸は、縮重合系樹脂成分の原料モノマーとして機能する場合がある。
両反応性モノマーの使用量は、スチレン系樹脂成分と縮重合系樹脂成分との分散性を高め、トナーの低温定着性及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、縮重合系樹脂成分のアルコール成分の合計100モルに対して、1〜30モルが好ましく、2〜25モルがより好ましく、2〜20モルがよりさらに好ましく、スチレン系樹脂成分の原料モノマーの合計(重合開始剤を含めない)100モルに対して、2〜30モルが好ましく、5〜25モルがより好ましく、10〜20モルがさらに好ましい。
両反応性モノマーを用いて得られるハイブリッド樹脂は、具体的には、以下の方法により製造することが好ましい。両反応性モノマーは、トナーの低温定着性及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、スチレン系樹脂成分の原料モノマーとともに付加重合反応に用いることが好ましい。
(i) 縮重合系樹脂成分の原料モノマーによる縮重合反応の工程(A)の後に、スチレン系樹脂成分の原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合反応の工程(B)を行う方法
この方法では、縮重合反応に適した反応温度条件下で工程(A)を行い、反応温度を低下させ、付加重合反応に適した温度条件下で工程(B)を行う。スチレン系樹脂成分の原料モノマー及び両反応性モノマーは、付加重合反応に適した温度で反応系内に添加にすることが好ましい。両反応性モノマーは付加重合反応と共に縮重合系樹脂成分とも反応する。
工程(B)の後に、再度反応温度を上昇させ、必要に応じて架橋剤となる3価以上等の縮重合系樹脂成分の原料モノマー等を重合系に添加し、工程(A)の縮重合反応や両反応性モノマーとの反応をさらに進めることができる。
(ii) スチレン系樹脂成分の原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合反応の工程(B)の後に、縮重合系樹脂成分の原料モノマーによる縮重合反応の工程(A)を行う方法
この方法では、付加重合反応に適した反応温度条件下で工程(B)を行い、反応温度を上昇させ、縮重合反応に適した温度条件下で、工程(A)の縮重合反応を行う。両反応性モノマーは付加重合反応と共に縮重合反応にも関与する。
縮重合系樹脂成分の原料モノマーは、付加重合反応時に反応系内に存在してもよく、縮重合反応に適した温度条件下で反応系内に添加してもよい。前者の場合は、縮重合反応に適した温度でエステル化触媒を添加することで縮重合反応の進行を調節できる。
(iii) 縮重合系樹脂成分の原料モノマーによる縮重合反応の工程(A)とスチレン系樹脂成分の原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合反応の工程(B)とを並行して行う方法
この方法では、付加重合反応に適した反応温度条件下で工程(A)と工程(B)とを行い、反応温度を上昇させ、縮重合反応に適した温度条件下で、必要に応じて架橋剤となる3価以上の縮重合系樹脂成分の原料モノマーを重合系に添加し、工程(A)の縮重合反応をさらに行うことが好ましい。その際、縮重合反応に適した温度条件下では、ラジカル重合禁止剤を添加して縮重合反応だけを進めることもできる。両反応性モノマーは付加重合反応と共に縮重合反応にも関与する。
上記(i)の方法においては、縮重合反応を行う工程(A)の代わりに、予め重合した縮重合系樹脂を用いてもよい。上記(iii)の方法において、工程(A)と工程(B)を並行して行う際には、縮重合系樹脂成分の原料モノマーを含有した混合物中に、スチレン系樹脂成分の原料モノマーを含有した混合物を滴下して反応させることもできる。
上記(i)〜(iii)の方法は、同一容器内で行うことが好ましい。
複合樹脂において、縮重合系樹脂成分のスチレン系樹脂成分に対する重量比[縮重合系樹脂成分/スチレン系樹脂成分](本発明においては、縮重合系樹脂成分の原料モノマーのスチレン系樹脂成分の原料モノマーに対する重量比とする)、すなわち[縮重合系樹脂成分の原料モノマーの合計量/スチレン系樹脂成分の原料モノマーの合計量]は、連続相が縮重合系樹脂であり、分散相がスチレン系樹脂であることにより、トナーの低温定着性及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、50/50〜95/5が好ましく、55/45〜90/10がより好ましく、60/40〜85/15がさらに好ましい。なお、上記の計算において、両反応性モノマーの量は、縮重合系樹脂成分の原料モノマーの合計量に含める。また、重合開始剤の量はスチレン系樹脂成分の原料モノマーの合計量を含めない。
高分子量化した複合樹脂を得るためには、前記のようにカルボン酸成分とアルコール成分のモル比を調整したり、反応温度を上げる、触媒量を増やす、減圧下、長時間脱水反応を行う等の反応条件を選択すればよい。なお、高出力のモーターを用いて、反応原料混合物を攪拌し、高分子量化した結晶性樹脂を製造することもできるが、製造設備を特に選択せずに製造する際には、原料モノマーを非反応性低粘度樹脂や溶媒とともに反応させる方法も有効な手段である。
複合樹脂の140℃における貯蔵弾性率は、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点から、100Pa以上であり、140Pa以上が好ましく、200Pa以上がより好ましく、250Pa以上がさらに好ましい。また、トナーの低温定着性及びグロスを向上させる観点から、8000Pa以下であり、5000Pa以下が好ましく、2000Pa以下がより好ましく、1000Pa以下がさらに好ましい。これらの観点を総合すると、複合樹脂の140℃における貯蔵弾性率は、100〜8000Paであり、140〜5000Paが好ましく、200〜2000Paがより好ましく、250〜1000Paがさらに好ましい。
本発明において、複合樹脂が2種以上の樹脂からなる場合、複合樹脂の140℃における貯蔵弾性率は、それぞれの複合樹脂の140℃における貯蔵弾性率の加重平均値とする。
複合樹脂の140℃における貯蔵弾性率の制御は、アルコール成分の鎖長を長くすることやスチレン量を多くすること、カルボン酸成分の価数を多くすること、カルボン酸成分中の芳香族系のモノマー量を多くすること、反応時間を長くすることにより、貯蔵弾性率を高く出来る。
複合樹脂の軟化点は、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点から、80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましく、100℃以上がさらに好ましい。また、トナーの低温定着性及びグロスを向上させる観点から、160℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましく、115℃以下がさらに好ましい。これらの観点を総合すると、複合樹脂の軟化点は、80〜160℃が好ましく、90〜130℃がより好ましく、100〜115℃がさらに好ましい。
また、複合樹脂の融点(=吸熱の最高ピーク温度)は、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点から、80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましく、100℃以上がさらに好ましい。また、トナーの低温定着性及びグロスを向上させる観点から、150℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましく、115℃以下がさらに好ましい。これらの観点を総合すると、複合樹脂の融点は、好ましくは80〜150℃、より好ましくは90〜130℃、さらに好ましくは100〜115℃である。
軟化点及び融点は、原料モノマー組成、重合開始剤、分子量、触媒量等の調整又は反応条件の選択により調整することができる。
また、複合樹脂のTgは、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点から、-10℃以上が好ましく、-5℃以上がより好ましく、0℃以上がさらに好ましい。また、トナーの低温定着性及びグロスを向上させる観点から、50℃以下が好ましく、40℃以下がより好ましく、30℃以下がさらに好ましい。これらの観点を総合すると、複合樹脂のTgは、好ましくは-10〜50℃、より好ましくは-5〜40℃、さらに好ましくは0〜30℃である。
本発明において、結晶性樹脂は、結晶性ポリエステル等を含有していてもよいが、トナーの低温定着性及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、結晶性樹脂中の前記複合樹脂の含有量は、結晶性樹脂中、80重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましく、95重量%以上がさらに好ましい。
結着樹脂中の複合樹脂の含有量は、トナーの低温定着性及びグロスを向上させる観点から、7重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましく、15重量%以上がさらに好ましい。また、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点から、50重量%以下が好ましく、30重量%以下がより好ましく、25重量%以下がさらに好ましい。これらの観点を総合すると、結着樹脂中の複合樹脂の含有量は、好ましくは7〜50重量%、より好ましくは10〜30重量%、さらに好ましくは15〜25重量%である。
本発明における非晶質樹脂は、ポリエステル、ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン等が用いられる。トナーの低温定着性を向上させる観点から、アルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合させて得られるポリエステルが好ましい。
非晶質ポリエステルも、複合樹脂の縮重合系樹脂成分と同様に、アルコール成分とカルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じて、エステル化触媒、重合禁止剤等の存在下、180〜250℃程度の温度で縮重合させて製造することができる。
ただし、非晶質ポリエステルとするためには、炭素数2〜6の脂肪族ジオール、炭素数2〜8の脂肪族カルボン酸化合物等の樹脂の結晶化を促進するモノマーを用いる場合は、これらのモノマーをそれぞれ2種以上併用して結晶化を抑制すること、即ちアルコール成分及びカルボン酸成分のいずれにおいても、これらのモノマーの1種が各成分中10〜70モル%、好ましくは20〜60モル%を占め、かつこれらのモノマーが2種以上、好ましくは2〜4種用いられていることが好ましい。
また、非晶質ポリエステルとするためには、樹脂の非晶質化を促進するモノマー、すなわち、アルコール成分ではビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、カルボン酸成分ではアルキル基もしくはアルケニル基で置換されたコハク酸やテレフタル酸を用いることが好ましい。
また、それぞれアルコール成分中又はカルボン酸成分中、少なくとも一方の成分において、好ましくは両成分のそれぞれにおいて、より好ましくは30〜100モル%、さらに好ましくは50〜100モル%用いられていることが好ましい。
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物は、アルコール成分中、好ましくは50〜100モル%、より好ましくは70〜100モル%、さらに好ましくは95〜100モル%用いられる。
アルキル基もしくはアルケニル基で置換されたコハク酸は、カルボン酸成分中、好ましくは50モル%以下、より好ましくは40モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下用いられる。
テレフタル酸は、カルボン酸成分中、好ましくは30〜100モル%、より好ましくは40〜95モル%、さらに好ましくは50〜95モル%である。
非晶質ポリエステルの酸価は、トナーの転写性を向上させる観点から、30mgKOH/g以下が好ましく、25mgKOH/g以下がより好ましく、20mgKOH/g以下がさらに好ましい。
本発明において、アルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合させて得られるポリエステル成分を有する非晶質ポリエステルには、ポリエステルのみならず、その変性樹脂も含まれる。
ポリエステルの変性樹脂としては、例えば、ポリエステルがウレタン結合で変性されたウレタン変性ポリエステル、ポリエステルがエポキシ結合で変性されたエポキシ変性ポリエステル、ポリエステル成分とそれ以外の樹脂成分が複合したハイブリッド樹脂等が挙げられる。
非晶質樹脂の軟化点は、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点から、70℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましく、105℃以上がさらに好ましい。また、トナーの低温定着性及びグロスを向上させる観点から、160℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましく、130℃以下がさらに好ましい。これらの観点を総合すると、非晶質樹脂の軟化点は、70〜160℃が好ましく、90〜140℃がより好ましく、105〜130℃がさらに好ましい。
また、非晶質樹脂の吸熱の最高ピーク温度は、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点から、50℃以上が好ましく、55℃以上が好ましく、60℃以上がさらに好ましい。また、トナーの低温定着性及びグロスを向上させる観点から、90℃以下が好ましく、80℃以下が好ましく、75℃以下がさらに好ましい。これらの観点を総合すると、非晶質樹脂の吸熱の最高ピーク温度は、好ましくは50〜90℃、より好ましくは55〜80℃、さらに好ましくは60〜75℃である。
非晶質樹脂のTgは、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点から、45℃以上が好ましく、55℃以上がより好ましい。また、トナーの低温定着性及びグロスを向上させる観点から、80℃以下が好ましく、75℃以下がさらに好ましい。これらの観点を総合すると、非晶質樹脂のTgは、好ましくは45〜80℃、より好ましくは55〜75℃である。なお、Tgは非晶質相に特有の物性であり、吸熱の最高ピーク温度とは区別される。
また、本発明において、非晶質樹脂は、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点から、軟化点が好ましくは3℃以上、より好ましくは5℃以上、さらに好ましくは10℃以上異なる2種類以上の非晶質樹脂を含有してもよい。2種類以上の非晶質樹脂のうち、最も低い軟化点を持つ樹脂の軟化点は、トナーの低温定着性の観点から、好ましくは80〜135℃、より好ましくは95〜120℃、さらに好ましくは105〜110℃であり、最も高い軟化点を持つ樹脂の軟化点は、耐高温オフセット性を向上させる観点から、好ましくは100〜150℃、より好ましくは110〜135℃、さらに好ましくは120〜130℃である。2種類以上の非晶質樹脂を含有する場合は、トナーの生産性を向上させる観点から、2種類が好ましい。
2種類の非晶質樹脂を用いる場合は、高軟化点樹脂と低軟化点樹脂との重量比(高軟化点樹脂/低軟化点樹脂)は、1/9〜9/1が好ましく、2/8〜8/2がより好ましい。
非晶質樹脂の140℃における貯蔵弾性率は、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点から、360Pa以上であり、500Pa以上が好ましく、700Pa以上がより好ましく、800Pa以上がさらに好ましい。また、トナーの低温定着性及びグロスを向上させる観点から、1300Pa以下であり、1200Pa以下が好ましく、1100Pa以下がより好ましく、1000Pa以下がさらに好ましい。これらの観点を総合すると、非晶質樹脂の140℃における貯蔵弾性率は、360〜1300Paであり、500〜1200Paが好ましく、700〜1100Paがより好ましく、800〜1000Paがさらに好ましい。
非晶質樹脂が2種以上の樹脂からなる場合、非晶質樹脂の140℃における貯蔵弾性率は、それぞれの非晶質樹脂の140℃における貯蔵弾性率の加重平均値が上記範囲内とする。
また、非晶質樹脂が2種以上の樹脂からなる場合、各非晶質樹脂の140℃における貯蔵弾性率は、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点から、50Pa以上が好ましく、60Pa以上がより好ましく、70Pa以上がさらに好ましく、80Pa以上がよりさらに好ましい。また、トナーの低温定着性及びグロスを向上させる観点から、1300Pa以下が好ましく、1200Pa以下がより好ましく、1100Pa以下がさらに好ましく、1000Pa以下がよりさらに好ましい。これらの観点を総合すると、非晶質樹脂が2種以上の樹脂からなる場合の各非晶質樹脂の140℃における貯蔵弾性率は、50〜1300Paが好ましく、60〜1200Paがより好ましく、70〜1100Paがさらに好ましく、80〜1000Paがよりさらに好ましい。
非晶質樹脂の140℃における貯蔵弾性率の制御は、アルコール成分の鎖長を長くすることやカルボン酸成分の価数を多くすること、カルボン酸成分中の芳香族系のモノマー量を多くすること、反応時間を長くすることで、貯蔵弾性率を高く出来る。
複合樹脂の140℃における貯蔵弾性率の非晶質樹脂の140℃における貯蔵弾性率に対する比[複合樹脂の140℃における貯蔵弾性率/非晶質樹脂の140℃における貯蔵弾性率]は、トナーの低温定着性及びグロスを向上させる観点から、4.5以下が好ましく、2.0以下がより好ましく、1.5以下がさらに好ましく、1.0以下がよりさらに好ましい。また、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点から、0.16以上が好ましく、0.25以上がより好ましく、0.30以上がさらに好ましく、0.40以上がよりさらに好ましい。これらの観点を総合すると、前記比[複合樹脂の140℃における貯蔵弾性率/非晶質樹脂の140℃における貯蔵弾性率]は、0.16〜4.5が好ましく、0.25〜2.0がより好ましく、0.30〜1.5がさらに好ましく、0.40〜1.0がよりさらに好ましい。ただし、非晶質樹脂が2種以上の樹脂からなる場合は、上記計算に用いる非晶質樹脂の140℃における貯蔵弾性率は、それぞれの非晶質樹脂の140℃における貯蔵弾性率の加重平均値とし、複合樹脂についても同様である。
結晶性樹脂と非晶質樹脂の含有量比(結晶性樹脂/非晶質樹脂)は、トナーの低温定着性及び耐高温オフセット性を向上させて定着可能幅を拡げるとともに、グロスを向上させる観点から、重量比で、7/93〜50/50が好ましく、10/90〜30/70がより好ましく、15/85〜25/75がさらに好ましい。
トナーは、結着樹脂以外に、着色剤、離型剤、荷電制御剤等を含有していてもよい。
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができ、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、イソインドリン、ジスアゾエロー等が用いることができる。着色剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、1〜40重量部が好ましく、2〜10重量部がより好ましい。本発明のトナーは、黒トナー、カラートナーのいずれであってもよい。
離型剤としては、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレンポリエチレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス及びそれらの酸化物、カルナウバワックス、モンタンワックス、サゾールワックス及びそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステル系ワックス、脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を混合して用いられていてもよい。
離型剤の融点は、トナーの低温定着性と耐高温オフセット性を向上させる観点から、60〜160℃が好ましく、60〜150℃がより好ましい。
離型剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、トナーの感光体へのフィルミングを防止する観点から、10重量部以下が好ましく、8重量部以下がより好ましく、7重量部以下がさらに好ましい。また、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点から、0.5重量部以上が好ましく、1.0重量部以上がより好ましく、1.5重量部以上がさらに好ましい。したがって、これらの観点を総合すると、0.5〜10重量部が好ましく、1.0〜8重量部より好ましく、1.5〜7重量部がさらに好ましい。また、トナーをオイルレス定着させる観点から、3重量部以上が好ましく、3.5重量部以上がより好ましく、4重量部以上がさらに好ましい。したがって、これらの観点を総合すると、3〜10重量部が好ましく、3.5〜8重量部より好ましく、4〜7重量部がさらに好ましい。
荷電制御剤としては、特に限定されないが、負帯電性荷電制御剤としては、含金属アゾ染料、例えば「ボントロンS-28」(オリエント化学工業社製)、「T-77」(保土谷化学工業社製)、「ボントロンS-34」(オリエント化学工業社製)、「アイゼンスピロンブラックTRH」(保土谷化学工業社製)等;銅フタロシアニン染料、サリチル酸のアルキル誘導体の金属錯体、例えば「ボントロンE-81」、「ボントロンE-84」、「ボントロンE-304」(以上、オリエント化学工業社製)等;ニトロイミダゾール誘導体;ベンジル酸ホウ素錯体、例えば、「LR-147」(日本カーリット社製)等;無金属系荷電調整剤、例えば「ボントロンF-21」、「ボントロンE-89」(以上、オリエント化学工業社製)、「T-8」(保土ヶ谷化学工業社製)、「FCA-2521NJ」、「FCA-2508N」(以上、藤倉化成社製)等が挙げられる。
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、例えば「ボントロンN-01」、「ボントロンN-04」、「ボントロンN-07」(以上、オリエント化学工業社製)、「CHUO CCA-3」(中央合成社製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料;4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロンP-51」(オリエント化学工業社製)、「TP-415」(保土谷化学工業社製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPYCHARGEPXVP435」(クラリアント社製)等が挙げられる。
荷電制御剤の含有量は、トナーのカブリを抑制する観点から、結着樹脂100重量部に対して、0.1重量部以上が好ましく、より好ましくは0.2重量部以上である。また、トナーの帯電量を適性にして現像性を向上させる観点から、結着樹脂100重量部に対して、5重量部以下が好ましく、より好ましくは3重量部以下である。すなわち、これらの観点を総合すると、荷電制御剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、0.1〜5重量部が好ましく、0.2〜3重量部がより好ましい。
本発明のトナーには、さらに、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、体質顔料、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が適宜含有されていてもよい。
本発明において、トナー粒子は、混練粉砕法、スプレイドライ法、重合法等の公知の方法により製造することができるが、結着樹脂は粉砕性に優れるため、混練粉砕法により得られる粉砕トナーが好ましい。混練粉砕法の一般的な方法によれば、例えば、結着樹脂、必要に応じて着色剤等の各種添加剤等を含む原料を、ヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合機で混合した後、溶融混練し、冷却後、ハンマーミル等を用いて粗粉砕し、さらにジェット気流を用いた微粉砕機や機械式粉砕機により微粉砕し、旋回気流を用いた分級機やコアンダ効果を用いた分級機により所望の粒度に分級して、トナー粒子が得られる。
原料の溶融混練は、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、連続式オープンロール型混練機等の公知の混練機を用いて行うことができるが、混練の繰り返しや分散助剤の使用をしなくても、結着樹脂に添加剤を効率よく高分散させることができることから、ロールの軸方向に沿って設けられた供給口と混練物排出口を備えた連続式オープンロール型混練機を用いることが好ましい。
トナー原料は、予めヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等を用いて均一に混合した後、オープンロール型混練機に供することが好ましく、1箇所の供給口から混練機に供給してもよく、複数の供給口から分割して混練機に供給してもよいが、操作の簡便性及び装置の簡略化の観点からは、1箇所の供給口から混練機に供給することが好ましい。
連続式オープンロール型混練機とは、混練部が密閉されておらず開放されているものをいい、混練の際に発生する混練熱を容易に放熱することができる。また、連続式オープンロール型混練機は、少なくとも2本のロールを備えた混練機であることが望ましく、本発明に用いられる連続式オープンロール型混練機は、周速度の異なる2本のロール、即ち、周速度の高い高回転側ロールと周速度の低い低回転側ロールとの2本のロールを備えた混練機である。本発明においては、分散性の観点から、高回転側ロールは加熱ロール、低回転側ロールは冷却ロールであることが望ましい。
ロールの温度は、例えば、ロール内部に通す熱媒体の温度により調整することができ、各ロールには、ロール内部を2以上に分割して温度の異なる熱媒体を通じてもよい。
高回転側ロールの原料投入側端部温度は100〜160℃が好ましく、低回転側ロールの原料投入側端部温度は35〜100℃が好ましい。
高回転側ロールは、原料投入側端部と混練物排出側端部の設定温度の差が、混練物のロールからの脱離防止の観点から、20〜60℃であることが好ましく、20〜50℃であることがより好ましく、30〜50℃であることがさらに好ましい。低回転側ロールは、原料投入側端部と混練物排出側端部の設定温度の差が、離型剤分散性の観点から、0〜50℃であることが好ましく、0〜40℃であることがより好ましく、0〜20℃であることがさらに好ましい。
高回転側ロールの周速度は、2〜100m/minであることが好ましく、5〜75m/minがより好ましい。低回転側ロールの周速度は1〜90m/minが好ましく、2〜60m/minがより好ましく、4〜50m/minがさらに好ましい。また、2本のロールの周速度の比(低回転側ロール/高回転側ロール)は、1/10〜9/10が好ましく、3/10〜8/10がより好ましい。
ロールの構造、大きさ、材料等は特に限定されず、ロール表面も、平滑、波型、凸凹型等のいずれであってもよいが、混練シェアを高めるために、各ロールの表面には複数の螺旋状の溝が刻んであることが好ましい。
トナーの体積中位粒径(D50)は、画像品質を向上させる観点から、3〜15μmが好ましく、4〜12μmがより好ましい。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。
トナー粒子に外添剤を付着させる外添処理を行い、トナー粒子に外添剤を外添してもよい。
外添剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化亜鉛等の無機微粒子や、メラミン系樹脂微粒子、ポリテトラフルオロエチレン樹脂微粒子等の樹脂微粒子等の有機微粒子が挙げられる。なかでも、シリカを併用することが好ましく、平均粒子径が20nm未満のシリカと20nm以上のシリカを併用することがさらに好ましい。
本発明のトナーは、装置の高速化、小型化に適しており、フルカラープリンタやフルカラー複写機においてトナー層を重ねて印字する画像形成装置に用いても、低温定着が可能であり、良好な耐高温オフセット性とグロスを維持することができる。従って、本発明のトナーは、カラー現像装置を用いた画像形成方法に好適に用いることができる。さらに、本発明のトナーは、オイルレス非磁性一成分現像装置にも好適に用いることができる。なお、オイルレス定着とは、オイル供給装置を備えていないヒートロール定着装置を有する定着器を用いる方法である。オイル供給装置とは、オイルタンクを有し、定量的にオイルをヒートロール表面に塗布する機構を有する装置の他、オイルを予め含浸させたロールをヒートロールに接触させるような機構を有する装置等を含む。
〔樹脂の貯蔵弾性率G’(140)〕
粘弾性測定装置(レオメーター)ARES(TAインスツルメント社製)を用いて測定を行う(Strain:0.05%、周波数:6.28rad/sec)。測定装置の条件については下記の通り設定する。直径8mmのパラレルプレートを140℃に加熱/放置し、試料を140℃で溶融させながらギャップが1.5〜2.5mmになるようパラレルプレートにのせ上下のプレートで挟んだ後、30℃まで20℃/minで冷却した後、180℃まで5℃/minで昇温し、140℃での貯蔵弾性率G’を求める。具体的には測定装置を下記の通り設定する。
AutoTension Adjustment = On
Mode = Apply Constant Static Force
AutoTension Direction = Compression
Initial Static Force = 10.0 [g]
AutoTension Sensitivity = 10.0 [g]
When Sample Modulus < = 100.0 [Pa]
AutoTension Limits = Default
Max Autotension Displacement = 3.0 [mm]
Max Autotension Rate = 0.01 [mm/s]
AutoStrain = On
Max Applied Strain = 20.0 [%]
Max Allowed Torque = 300.0 [g-cm]
Min Allowed Torque = 1.0 [g-cm]
Strain Adjustment = 20.0 [% of Current Strain]
Strain Amplitude Control = Default Behavior
Limit Minimum Dynamic Force Used = No
Minimum Applied Dynamic Force = 1.0 [gmf]
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター(島津製作所、CFT-500D)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
〔樹脂の吸熱の最高ピーク温度及び融点〕
示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、Q-100)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、室温から降温速度10℃/分で0℃まで冷却しそのまま1分間静止させた。その後、昇温速度50℃/分で測定した。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を吸熱の最高ピーク温度とした。最高ピーク温度が軟化点と20℃以内の差であれば、そのピーク温度を融点とする。
〔非晶質樹脂のガラス転移点〕
示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、Q-100)を用いて、試料を0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却した。次に試料を昇温速度10℃/分で測定した。吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移点とする。
〔結晶性樹脂(複合樹脂)のガラス転移点〕
示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、Q-100)を用いて、試料を0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度100℃/分で-80℃まで冷却した。次に試料を昇温速度1℃/分でモジュレーティッドモードにて測定した。吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移点とする。
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070の方法により測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更する。
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製、DSC210)を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/分で昇温し、融解熱の最大ピーク温度を融点とする。
〔外添剤の平均粒子径〕
平均粒子径とは平均一次粒子径を指し、走査型電子顕微鏡(SEM)写真から500個の粒子の粒径(長径と短径の平均値)を測定し、それらの平均値を平均粒子径とする。
〔トナーの体積中位粒径(D50)〕
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター社製)
アパチャー径:100μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター社製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター社製)
分散液:エマルゲン109P(花王社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB:13.6)を5重量%の濃度となるよう前記電解液に溶解させる。
分散条件:前記分散液5mlに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、前記電解液25mlを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
測定条件:前記電解液100mlに、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度となるように、前記試料分散液を加え、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
〔結晶性樹脂(複合樹脂)の製造例1(樹脂A〜F)〕
表1に示す両性反応モノマーであるアクリル酸以外の縮重合系樹脂成分の原料モノマーを所定量、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ160℃に加熱し、溶解させた。予め混合したスチレン、ジクミルパーオキサイド及びアクリル酸の溶液を滴下ロートにより1時間かけて滴下した。170℃に保持したまま1時間攪拌を続け、スチレン及びアクリル酸を重合させた後、2-エチルヘキサン酸錫(II)40g、没食子酸3gを加えて210℃に昇温し8時間反応を行った。さらに8.3kPaにて所定の時間、反応を行い、結晶性樹脂(樹脂A〜F)を得た。得られた結晶性樹脂の樹脂物性を表1に示す。
Figure 2011253013
〔結晶性樹脂の製造例2(樹脂G〜J)〕
1,6-ヘキサンジオール2407g(20.4モル)、フマル酸2320g(20モル)、ハイドロキノン2.5g、及びジブチル錫オキシド10gを窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、130℃から160℃まで4時間かけて反応させた後、ポリプロピレンワックス(ハイワックスNP-105、三井化学社製)400gを添加し、200℃まで3時間かけて昇温し、200℃にて30分反応させた後、さらに8.3kPaにて所定の軟化点に達するまで反応させ、結晶性ポリエステル(樹脂G〜J)を得た。得られた結晶性樹脂の樹脂物性を表2に示す。
〔結晶性樹脂の製造例3(樹脂K)〕
1,6-ヘキサンジオール2407g(20.4モル)、フマル酸2320g(20モル)、ハイドロキノン2.5g、及びジブチル錫オキシド10gを窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、130℃から160℃まで4時間かけて反応させた後、200℃まで3時間かけて昇温し、200℃にて30分反応させた後、さらに8.3kPaにて軟化点が114℃に達するまで反応させ、結晶性ポリエステル(樹脂K)を得た。得られた結晶性樹脂の樹脂物性を表2に示す。
Figure 2011253013
[非晶質樹脂の製造例1(樹脂a及びb)]
ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン1225g、ポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン2113g、テレフタル酸1528g及び2-エチルヘキサン酸錫(II)10g及び没食子酸2gを、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、230℃で反応率が90%に達するまで反応させた後、8.3kPaにて所定の軟化点に達するまで反応させ、非晶質ポリエステル(樹脂a及びb)を得た。得られた非晶質樹脂の物性を表3に示す。
[非晶質樹脂の製造例2(樹脂c〜f)]
ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、テレフタル酸、ドデセニル無水コハク酸、無水トリメリット酸及び2-エチルヘキサン酸錫(II)10g及び没食子酸2gを、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、230℃で反応率が90%に達するまで反応させた後、8.3kPaにて所定の軟化点に達するまで反応させ、非晶質ポリエステル(樹脂c〜f)を得た。得られた非晶質樹脂の物性を表3に示す。
Figure 2011253013
[実施例1〜17及び比較例1〜24]
表4、5に示す所定量の非晶質樹脂、結晶性樹脂、及び負帯電性荷電制御剤「ボントロンE-304」(オリエント化学社製)0.2重量部、カルナウバワックスC1(加藤洋行社製、融点:88℃)3重量部、パラフィンワックス「HNP-9」(日本精鑞社製、融点:75℃)3重量部、及び着色剤「ECB-301」(大日精化社製、フタロシアニンブルー(P.B.15:3))5.0重量部を、ヘンシェルミキサーを用いて1分間混合後、以下に示す条件で溶融混練した。
連続式二本オープンロール型混練機「ニーデックス」(三井鉱山社製、ロール外径:14cm、有効ロール長:80cm)を使用した。連続式二本オープンロール型混練機の運転条件は、高回転側ロール(フロントロール)周速度75r/min(32.97m/min)、低回転側ロール(バックロール)周速度50r/min(21.98m/min)、混練物供給口側端部のロール間隙0.1mmであった。ロール内の加熱媒体温度及び冷却媒体温度は、高回転側ロールの原料投入側が135℃及び混練物排出側が90℃であり、低回転側ロールの原料投入側が35℃及び混練物排出側が35℃であった。また、原料混合物の供給速度は10kg/時間、平均滞留時間は約6分間であった。
得られた混練物を冷却ロールで圧延しながら20℃以下に冷却し、冷却された溶融混練物をロートプレックス(東亜機械社製)で3mmに粗粉砕し、その後、流動槽式ジェットミル「AFG-400」(アルピネ社製)で粉砕し、ローター式分級機「TTSP」(アルピネ社製)で分級して、体積中位粒径(D50)が8.0μmのトナー粒子を得た。そのトナー粒子100重量部に疎水性シリカ「RY50」(日本アエロジル社製、平均粒子径:40nm)1.5重量部、疎水性シリカ「R972」(日本アエロジル社製、平均粒子径:16nm)1.5重量部をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)にて1500r/minで1分間混合し、トナーを得た。
試験例1[低温定着性]
非磁性一成分現像装置「OKI MICROLINE 5400」(沖データ社製)にトナーを実装し、トナー付着量を0.40±0.03mg/cm2に調整して、4.1cm×4.1cmのベタ画像を富士ゼロックスオフィスサプライ社製のJ紙に印字した。定着機を通過する前にベタ画像を取りだして未定着画像を得た。得られた未定着画像を有する用紙を非磁性一成分現像装置「OKI MICROLINE 5400」(沖データ社製)に装填し、再度4.1cm×4.1cmのベタ画像を印字し、定着機を通過する前にベタ画像を取りだして0.80±0.06mg/cm2未定着画像(2層)を得た。同様の操作を繰り返し、1.20±0.09mg/cm2未定着画像(3層)を得た。
得られた3層未定着画像を「OKI MICROLINE 3010」(沖データ社製)の定着機を外部に取り出した外部定着機にて、定着ロールの温度を100℃に設定し、120mm/secの定着速度で定着させた。その後、定着ロール温度を105℃に設定し、同様の操作を行った。これを190℃まで5℃ずつ上昇させながら行った。
各温度で定着させた画像にメンディングテープ(住友スリーエム社製)を付着させた後、500gの円筒上の重石を載せることにより、十分にテープを定着画像に付着させた。その後、ゆっくりとメンディングテープを定着画像より剥がし、テープ剥離後の画像の光学反射密度を反射濃度計「RD-915」(マクベス社製)を用いて測定した。予めテープを貼る前の画像についても光学反射密度を測定しておき、その値との比(テープ剥離後/テープ貼付前)が最初に90%を超える定着ロールの温度を最低定着温度とし、低温定着性を評価した。結果を表4、5に示す。
試験例2[耐高温オフセット性]
試験例1で得られた105℃〜190℃の定着画像を目視で確認し、ホットオフセットの発生が見られない定着ロール最高温度を最高定着温度とした。結果を表4、5に示す。
試験例3[定着可能温度幅]
試験例1で得られた105℃〜190℃の定着画像を目視で確認し最高定着温度と最低定着温度の差(最高定着温度−最低定着温度)+5℃を定着可能温度幅とした。結果を表4、5に示す。
試験例4[画像のグロス]
試験例1で得られた3層の定着画像の各定着温度での光沢度を測定し最大値をそのサンプルのグロスとした。光沢度は、光沢度計「PG-1」(日本電色工業株式会社)を用い、光源を60°に設定して測定した。光沢度が高いほど、グロスが良好であることを示す。結果を表4、5に示す。
Figure 2011253013
Figure 2011253013
以上の結果より、実施例1〜17のトナーは、結晶性樹脂が複合樹脂ではない比較例1〜9のトナーや、複合樹脂の140℃における貯蔵弾性率G’(140)が100Pa未満や8000Paを超える比較例10〜18、22、23のトナー、非晶質樹脂の140℃における貯蔵弾性率G’(140)が360Pa未満や1300Paを超える比較例19〜21、24のトナーに比べ、低温定着性及び耐高温オフセット性に優れ、定着可能幅が広く、グロスに優れていることが分かる。
本発明のトナーは、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像等に好適に用いられる。

Claims (5)

  1. 結着樹脂を含有してなるトナーであって、前記結着樹脂が結晶性樹脂と非晶質樹脂からなり、該結晶性樹脂が炭素数2〜10の脂肪族ジオールを含有したアルコール成分と芳香族ジカルボン酸化合物を含有したカルボン酸成分とを縮重合させて得られる縮重合系樹脂成分と、スチレン系樹脂成分とを含む複合樹脂を含有してなり、該複合樹脂の140℃における貯蔵弾性率が100〜8000Paであり、該非晶質樹脂の140℃における貯蔵弾性率が360〜1300Paであるトナー。
  2. 複合樹脂が、(イ)炭素数2〜10の脂肪族ジオールを含有したアルコール成分と芳香族ジカルボン酸化合物を含有したカルボン酸成分とを含む、縮重合系樹脂成分の原料モノマー、(ロ)スチレン系樹脂成分の原料モノマー、及び(ハ)縮重合系樹脂成分の原料モノマー及びスチレン系樹脂成分の原料モノマーのいずれとも反応し得る両反応性モノマーを重合させることにより得られる樹脂である、請求項1記載のトナー。
  3. 複合樹脂のガラス転移点と、複合樹脂中のスチレン系樹脂成分のFox式で計算されたガラス転移点との差の絶対値が10℃以上である、請求項1又は2記載のトナー。
  4. 複合樹脂の含有量が結着樹脂中7〜50重量%である、請求項1〜3いずれか記載のトナー。
  5. 複合樹脂の140℃における貯蔵弾性率の非晶質樹脂の140℃における貯蔵弾性率に対する比[複合樹脂の140℃における貯蔵弾性率/非晶質樹脂の140℃における貯蔵弾性率]が0.16〜4.5である請求項1〜4いずれか記載のトナー。
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