本発明は、後述の、結着樹脂、ワックス、及び無機粒子を含有するトナー粒子を得る工程(工程1)と得られたトナー粒子の円形度を制御する工程(工程2)を含む方法により、電子写真用トナーを製造する方法であり、所定の表面親水性を有する無機粒子を特定量用い、得られるトナー粒子の形状を、機械的な作用により、所定の円形度となるように調整する点に大きな特徴を有する。
粉砕トナーの製造において、機械的作用によりトナー粒子の球形化を行うことで、流動性が上がり、耐久性を向上させることができるが、トナー粒子の角が落とされ、円形度が上がることで、摩擦帯電されにくくなるため、カブリが生じやすくなる。
しかしながら、本発明では、一定の表面親水性を示す無機粒子をトナー粒子に内添しておくことによって、結着樹脂の強度が上がる一方で、親水性の無機粒子と馴染まない疎水性のワックスは強度等に変化がなく、トナー粒子表面に存在することとなる。このトナー粒子を機械的作用によって球形化することにより、トナー粒子を均一に球形化するのではなく、強度が上がった樹脂よりも柔らかいワックスが削られることで、トナー粒子の付着力の低減により流動性が向上するとともに、ワックスがトナー粒子表面から抜けることで表面の帯電状態も均一になり、カブリも抑制される。
工程1は、少なくとも、結着樹脂、ワックス、及び無機粒子を溶融混練し、得られた混練物を粉砕し、トナー粒子を得る工程である。
結着樹脂としては、特に限定されず、ポリエステル樹脂、スチレン-アクリル樹脂等のビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、これらの樹脂を2種以上含む複合樹脂等が挙げられるが、本発明では、ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。ポリエステル樹脂の低分子量成分は親水性が高いため、表面親水性の高い無機粒子が、低分子量成分を補足し、低分子量成分のトナー粒子表面へのブリードアウトを抑制することができる。
本発明におけるポリエステル樹脂は、非晶質であっても結晶性であってもよく、また、結着樹脂は、複合樹脂の一部として、ポリエステル樹脂を含有していてもよい。
従って、本発明において好適な、ポリエステル樹脂を含む結着樹脂としては、非晶質ポリエステル樹脂、非晶質ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂、非晶質ポリエステル樹脂と結晶性複合樹脂、非晶質複合樹脂と結晶性ポリエステル樹脂、非晶質複合樹脂と結晶性複合樹脂等が挙げられるが、これらの中では、非晶質ポリエステル樹脂、非晶質ポリエステル樹脂と結晶性複合樹脂の組み合わせ、及び非晶質複合樹脂と結晶性複合樹脂の組み合わせが好ましく、非晶質ポリエステル樹脂と結晶性複合樹脂の組み合わせ、及び非晶質複合樹脂と結晶性複合樹脂の組み合わせがより好ましい。
なお、樹脂の結晶性は、軟化点と示差走査熱量計による吸熱の最高ピーク温度との比、即ち[軟化点/吸熱の最高ピーク温度]の値で定義される結晶性指数によって表わされる。結晶性樹脂は、結晶性指数が0.6以上、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.9以上であり、そして、1.4以下、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.1以下の樹脂である一方、非晶質樹脂は、結晶性指数が1.4を超える、好ましくは1.5を超える、より好ましくは1.6以上の樹脂であるか、または、0.6未満、好ましくは0.5以下の樹脂である。樹脂の結晶性は、原料モノマーの種類とその比率、及び製造条件(例えば、反応温度、反応時間、冷却速度)等により調整することができる。なお、吸熱の最高ピーク温度とは、観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を指す。結晶性樹脂においては、吸熱の最高ピーク温度を融点とする。
非晶質ポリエステル樹脂は、アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物が好ましい。
アルコール成分としては、例えば、脂肪族ジオール、好ましくは炭素数2以上20以下、より好ましくは炭素数2以上15以下の脂肪族ジオールや、式(I):
(式中、OR及びROはオキシアルキレン基であり、Rはエチレン基及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の値は、1以上、好ましくは1.5以上であり、そして、16以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下、さらに好ましくは4以下である)
で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、グリセリン等が挙げられる。脂肪族ジオールとして、具体的には、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等が挙げられる。
アルコール成分としては、カブリの抑制及び耐久性の観点から、式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が好ましい。式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、アルコール成分中、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは100モル%である。
カルボン酸成分において、2価のカルボン酸系化合物としては、例えば、炭素数3以上30以下、好ましくは炭素数3以上20以下、より好ましくは炭素数3以上10以下のジカルボン酸、それらの無水物、又はアルキル基の炭素数が1以上3以下のアルキルエステル等の誘導体等が挙げられる。ジカルボン酸の具体例としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸や、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基で置換されたコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。
カルボン酸成分は、カブリの抑制及び耐久性の観点から、芳香族ジカルボン酸系化合物を含むことが好ましい。芳香族ジカルボン酸系化合物の含有量は、カルボン酸成分中、好ましくは10モル%以上、より好ましくは25モル%以上、さらに好ましくは40モル%以上であり、そして、100モル%以下、好ましくは90モル%以下、よりに好ましくは80モル%以下である。
3価以上のカルボン酸系化合物としては、例えば、炭素数4以上20以下、好ましくは炭素数6以上20以下、より好ましくは炭素数7以上15以下、さらに好ましくは炭素数8以上12以下、さらに好ましくは炭素数9以上10以下の3価以上のカルボン酸、それらの無水物、又はアルキル基の炭素数が1以上3以下のアルキルエステル等の誘導体等が挙げられる。具体的には、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸(ピロメリット酸)、又はそれらの酸無水物等が挙げられる。
3価以上のカルボン酸系化合物の含有量は、カルボン酸成分中、カブリの抑制及び耐久性の観点から、好ましくは3モル%以上、より好ましくは5モル%以上、さらに好ましくは8モル%以上であり、そして、30モル%以下、より好ましくは25モル%以下、さらに好ましくは20モル%以下である。
なお、アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸系化合物が、ポリエステル樹脂の分子量及び軟化点を調整する観点から、適宜含有されていてもよい。
ポリエステル樹脂におけるカルボン酸成分とアルコール成分との当量比(COOH基/OH基)は、ポリエステル樹脂の軟化点を調整する観点から、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上、さらに好ましくは0.75以上であり、そして、好ましくは1.1以下、より好ましくは1.05以下である。
非晶質ポリエステル樹脂は、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気中、好ましくはエステル化触媒の存在下、さらに必要に応じて、エステル化助触媒、重合禁止剤等の存在下、好ましくは130℃以上、より好ましくは170℃以上、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下の温度で重縮合させて製造することができる。
なお、本発明において、ポリエステル樹脂は、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステル樹脂であってもよい。変性されたポリエステル樹脂としては、例えば、特開平11-133668号公報、特開平10-239903号公報、特開平8-20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステル樹脂が挙げられるが、変性されたポリエステル樹脂のなかでは、ポリエステル樹脂をポリイソシアネート化合物でウレタン伸長したウレタン変性ポリエステル樹脂が好ましい。
非晶質複合樹脂としては、前記非晶質ポリエステル樹脂とスチレン系樹脂とを有する複合樹脂が好ましい。
スチレン系樹脂は、少なくとも、スチレン、又はα-メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体(以下、スチレンとスチレン誘導体をまとめて「スチレン化合物」という)を含む原料モノマーの付加重合体である。
スチレン化合物、好ましくはスチレンの含有量は、スチレン系樹脂の原料モノマー中、保存安定性を向上させる観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上であり、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは93質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下である。
また、スチレン系樹脂は、原料モノマーとしてアルキル基の炭素数が7以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含んでも良い。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸(イソ)オクチル、(メタ)アクリル酸(イソ)デシル、(メタ)アクリル酸(イソ)ステアリル等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることが好ましい。なお、本明細書において、「(イソ)」は、この基が存在している場合とそうでない場合の双方を含むことを意味し、これらの基が存在していない場合には、ノルマルであることを示す。また、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸、メタクリル酸、又はその両者を示す。
炭素数が7以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、スチレン系樹脂の原料モノマー中、トナーの低温定着性を向上させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
スチレン系樹脂の原料モノマーとしての(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基の炭素数は、トナーの低温定着性を向上させる観点から、好ましくは7以上、より好ましくは8以上であり、そして、保存安定性の観点から、好ましくは12以下、より好ましくは10以下である。なお、該アルキルエステルの炭素数は、エステルを構成するアルコール成分由来の炭素数をいう。
スチレン系樹脂の原料モノマーには、スチレン化合物及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の原料モノマー、例えば、エチレン、プロピレン等のエチレン性不飽和モノオレフィン類;ブタジエン等のジオレフィン類;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等のエチレン性モノカルボン酸エステル;メチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のビニリデンハロゲン化物;N-ビニルピロリドン等のN-ビニル化合物類等が含まれていてもよい。
スチレン系樹脂の原料モノマーの付加重合反応は、例えば、ジクミルパーオキサイド等の重合開始剤、重合禁止剤、架橋剤等の存在下、有機溶媒存在下又は無溶媒下で行うことができるが、温度条件としては、好ましくは110℃以上、より好ましくは140℃以上であり、そして、好ましくは200℃以下、より好ましくは170℃以下である。
付加重合反応の際に有機溶媒を使用する場合、キシレン、トルエン、メチルエチルケトン、アセトン等を用いることができる。有機溶媒の使用量は、スチレン系樹脂の原料モノマー100質量部に対して、10質量部以上50質量部以下が好ましい。
本発明において、複合樹脂は、粉砕性の観点から、非晶質ポリエステル樹脂の原料モノマー及びスチレン系樹脂の原料モノマーのいずれとも反応し得る、両反応性モノマーを介して非晶質ポリエステル樹脂とスチレン系樹脂が化学結合した樹脂が好ましい。
両反応性モノマーは、分子内に、水酸基、カルボキシ基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基、好ましくは水酸基及び/又はカルボキシ基、より好ましくはカルボキシ基と、エチレン性不飽和結合とを有する化合物が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸及び無水マレイン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種がより好ましく、重縮合反応及び付加重合反応の反応性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸及びフマル酸からなる群より選ばれた少なくとも1種がさらに好ましい。但し、重合禁止剤と共に用いた場合は、フマル酸等のエチレン性不飽和結合を有する多価カルボン酸系化合物は、非晶質ポリエステル樹脂の原料モノマーとして機能する。この場合、フマル酸等は両反応性モノマーではなく、非晶質ポリエステル樹脂の原料モノマーである。
また、両反応性モノマーは、アルキル基の炭素数が6以下であるアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルから選ばれた1種又は2種以上の(メタ)アクリル酸エステルであってもよい。
(メタ)アクリル酸エステルは、エステル交換に対する反応性の観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、アルキル基の炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上であり、そして、好ましくは6以下、より好ましくは4以下である。アルキル基は、水酸基等の置換基を有していてもよい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、具体的には、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸(イソ)プロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸(イソ又はターシャリー)ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル等が挙げられる。なお、「(イソ又はターシャリー)」は、これらの基が存在している場合とそうでない場合の双方を含むことを意味し、これらの基が存在していない場合には、ノルマルであることを示す。
本発明において、アクリル酸エステルは、好ましくはアルキル基の炭素数が2以上6以下であるアクリル酸アルキルエステル、より好ましくはアクリル酸ブチルであり、メタクリル酸エステルは、好ましくはアルキル基の炭素数が2以上6以下であるメタクリル酸アルキルエステル、より好ましくはメタクリル酸ブチルである。
両反応性モノマーの使用量は、非晶質ポリエステル樹脂のアルコール成分の合計100モルに対して、スチレン系樹脂と非晶質ポリエステル樹脂との分散性を高め、トナーの耐久性を向上させる観点から、好ましくは1モル以上、より好ましくは2モル以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは30モル以下、より好ましくは20モル以下、さらに好ましくは10モル以下である。
また、両反応性モノマーの使用量は、スチレン系樹脂の原料モノマーの合計100質量部に対して、スチレン系樹脂と非晶質ポリエステル樹脂との分散性を高め、トナーの耐久性を向上させる観点から、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。ここで、スチレン系樹脂の原料モノマーの合計に重合開始剤は含める。
両反応性モノマーを用いて得られる複合樹脂は、具体的には、以下の方法により製造することが好ましい。両反応性モノマーは、トナーの耐久性を向上させる観点、トナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、スチレン系樹脂の原料モノマーとともに付加重合反応に用いることが好ましい。
(i) 非晶質ポリエステル樹脂の原料モノマーによる重縮合反応の工程(A)の後に、スチレン系樹脂の原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合反応の工程(B)を行う方法
この方法では、重縮合反応に適した反応温度条件下で工程(A)を行い、反応温度を低下させ、付加重合反応に適した温度条件下で工程(B)を行う。スチレン系樹脂の原料モノマー及び両反応性モノマーは、付加重合反応に適した温度で反応系内に添加することが好ましい。両反応性モノマーは付加重合反応すると共に非晶質ポリエステル樹脂とも反応する。
工程(B)の後に、再度反応温度を上昇させ、必要に応じて架橋剤となる3価以上の非晶質ポリエステル樹脂の原料モノマー等を反応系に添加し、工程(A)の重縮合反応や両反応性モノマーとの反応をさらに進めることができる。
(ii) スチレン系樹脂の原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合反応の工程(B)の後に、非晶質ポリエステル樹脂の原料モノマーによる重縮合反応の工程(A)を行う方法
この方法では、付加重合反応に適した反応温度条件下で工程(B)を行い、反応温度を上昇させ、重縮合反応に適した温度条件下で、工程(A)の重縮合反応を行う。両反応性モノマーは付加重合反応と共に重縮合反応にも関与する。
非晶質ポリエステル樹脂の原料モノマーは、付加重合反応時に反応系内に存在してもよく、重縮合反応に適した温度条件下で反応系内に添加してもよい。前者の場合は、重縮合反応に適した温度でエステル化触媒を添加することで重縮合反応の進行を調節できる。
(iii) 非晶質ポリエステル樹脂の原料モノマーによる重縮合反応の工程(A)とスチレン系樹脂の原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合反応の工程(B)とを、並行して進行する条件で反応を行う方法
この方法では、付加重合反応に適した反応温度条件下で工程(A)と工程(B)とを並行して行い、反応温度を上昇させ、重縮合反応に適した温度条件下で、必要に応じて架橋剤となる3価以上の非晶質ポリエステル樹脂の原料モノマーを重合系に添加し、工程(A)の重縮合反応をさらに行うことが好ましい。その際、重縮合反応に適した温度条件下では、ラジカル重合禁止剤を添加して重縮合反応だけを進めることもできる。両反応性モノマーは付加重合反応と共に重縮合反応にも関与する。
上記(i)の方法においては、重縮合反応を行う工程(A)の代わりに、予め重合した非晶質ポリエステル樹脂を用いてもよい。上記(iii)の方法において、工程(A)と工程(B)を並行して進行する際には、非晶質ポリエステル樹脂の原料モノマーを含有した混合物中に、スチレン系樹脂の原料モノマーを含有した混合物を滴下して反応させることもできる。
上記(i)~(iii)の方法は、同一容器内で行うことが好ましい。
複合樹脂におけるスチレン系樹脂と非晶質ポリエステル樹脂の質量比(スチレン系樹脂/非晶質ポリエステル樹脂)は、カブリの抑制及び耐久性の観点から、好ましくは3/97以上、より好ましくは7/93以上、さらに好ましくは10/90以上であり、そして、好ましくは45/55以下、より好ましくは40/60以下、さらに好ましくは35/65以下、さらに好ましくは30/70以下、さらに好ましくは25/75以下である。なお、上記の計算において、非晶質ポリエステル樹脂の質量は、用いられる非晶質ポリエステル樹脂の原料モノマーの質量から、重縮合反応により脱水される反応水の量(計算値)を除いた量であり、両反応性モノマーの量は、非晶質ポリエステル樹脂の原料モノマー量に含める。また、スチレン系樹脂の量は、スチレン系樹脂の原料モノマーの合計量である。
非晶質ポリエステル樹脂又は非晶質複合樹脂の軟化点は、耐久性の観点から、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、さらに好ましくは100℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは160℃以下、より好ましくは155℃以下、さらに好ましくは150℃以下である。
非晶質ポリエステル樹脂又は非晶質複合樹脂のガラス転移温度は、カブリの抑制及び耐久性の観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは45℃以上、さらに好ましくは50℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは75℃以下、より好ましくは70℃以下、さらに好ましくは65℃以下である。
非晶質ポリエステル樹脂又は非晶質複合樹脂の酸価は、カブリの抑制及び耐久性の観点から、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは2mgKOH/g以上、さらに好ましくは3mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下、さらに好ましくは20mgKOH/g以下、さらに好ましくは10mgKOH/g以下である。
結晶性ポリエステル樹脂としては、炭素数9以上14以下の脂肪族ジオールを含有するアルコール成分と、炭素数9以上14以下の脂肪族ジカルボン酸系化合物を含有するカルボン酸成分との重縮合物が好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂のアルコール成分に含まれる脂肪族ジオールの炭素数は、転写性の観点から、好ましくは9以上、より好ましくは10以上であり、そして、耐熱保存性の観点から、好ましくは14以下、より好ましくは12以下である。
炭素数9以上14以下の脂肪族ジオールとしては、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール等が挙げられ、特に複合樹脂の結晶性を高め、低温定着性を向上させる観点から、α,ω-直鎖アルカンジオールが好ましく、1,10-デカンジオール及び1,12-ドデカンジオールから選ばれた1種又は2種がより好ましく、1,12-ドデカンジオールがさらに好ましい。
炭素数9以上14以下の脂肪族ジオールの含有量は、樹脂の結晶性を高め、低温定着性を向上させる観点から、アルコール成分の2価以上のアルコールの総量中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは実質的に100モル%、さらに好ましくは100モル%である。さらに、アルコール成分の2価以上のアルコールに占める炭素数9以上14以下の脂肪族ジオールのなかの1種の割合が、複合樹脂の結晶性を高め、低温定着性を向上させる観点から、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは実質的に100モル%、さらに好ましくは100モル%を占める。
アルコール成分には、炭素数9以上14以下の脂肪族ジオール以外の多価アルコールが含有されていてもよく、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族ジオール;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、1,4-ソルビタン等の3価以上のアルコールが挙げられる。
カルボン酸成分に含まれる脂肪族ジカルボン酸系化合物の炭素数は、低温定着性の観点から、好ましくは9以上、より好ましくは10以上であり、そして、耐久性の観点から、好ましくは14以下、より好ましくは12以下であり、10が特に好ましい。
炭素数9以上14以下の脂肪族ジカルボン酸系化合物としては、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸等が挙げられ、トナーの低温定着性を向上させる観点から、セバシン酸及びドデカン二酸から選ばれた1種又は2種が好ましく、セバシン酸がより好ましい。なお、ジカルボン酸系化合物とは、ジカルボン酸、その無水物及びその炭素数1以上3以下のアルキルエステルを指すが、これらの中では、ジカルボン酸が好ましい。また、脂肪族ジカルボン酸系化合物の炭素数とは、ジカルボン酸部分を含む炭素数であり、アルキルエステル部は含めない。
炭素数9以上14以下の脂肪族ジカルボン酸系化合物の含有量は、樹脂の結晶性を高め、低温定着性を向上させる観点から、カルボン酸成分中の2価以上のカルボン酸系化合物の総量中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは実質的に100モル%、さらに好ましくは100モル%である。
カルボン酸成分には、炭素数9以上14以下の脂肪族ジカルボン酸系化合物以外の多価カルボン酸系化合物が含有されていてもよく、該カルボン酸系化合物としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、炭素数が1以上30以下の脂肪族炭化水素基で置換されたコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、トリメリット酸、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸等の3価以上の芳香族カルボン酸、及びこれらの酸無水物、炭素数1以上3以下のアルキルエステル等が挙げられる。
また、結晶性ポリエステル樹脂の原料モノマーは、転写性及び低温定着性の観点から、炭素数8以上22以下の1価の脂肪族カルボン酸系化合物及び炭素数8以上22以下の1価の脂肪族アルコールの少なくともいずれかを含有することが好ましい。
1価の脂肪族アルコールと1価の脂肪族カルボン酸系化合物の炭素数は、転写性及び低温定着性の観点から、8以上が好ましく、12以上がより好ましく、14以上がさらに好まい。そして、生産性の観点から、22以下が好ましく、20以下がより好ましく、18以下がさらに好ましい。
炭素数8以上22以下の1価の脂肪族アルコールとしては、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の脂肪族アルコール等が挙げられ、これらのなかでは、ステアリルアルコールが好ましい。
炭素数8以上22以下の1価の脂肪族カルボン酸系化合物としては、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等の脂肪族カルボン酸系化合物等が挙げられ、これらのなかでは、ステアリン酸が好ましい。
炭素数8以上22以下の1価の脂肪族アルコールと炭素数8以上22以下の1価の脂肪族カルボン酸系化合物の総含有量は、結晶性ポリエステル樹脂の原料モノマー中、即ち、アルコール成分とカルボン酸成分の総量中、転写性及び低温定着性の観点から、好ましくは1モル%以上、より好ましくは2モル%以上、さらに好ましくは3モル%以上であり、そして、同様の観点から、好ましくは12モル%以下、より好ましくは10モル%以下、さらに好ましくは8モル%以下、さらに好ましくは6モル%以下である。
結晶性ポリエステル樹脂のカルボン酸成分とアルコール成分との合計モル数中、炭素数9以上14以下の脂肪族ジカルボン酸系化合物と炭素数9以上14以下の脂肪族ジオールとの合計モル数は、トナーの低温定着性及び転写性を向上させる観点から、好ましくは88モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは92モル%以上、さらに好ましくは94モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、好ましくは99モル%以下、より好ましくは98モル%以下、さらに好ましは97モル%以下である。
炭素数9以上14以下の脂肪族ジカルボン酸系化合物と炭素数9以上14以下の脂肪族ジオールとの合計モル数は、樹脂の結晶性を高める観点、及びトナーの低温定着性を向上させる観点から、カルボン酸成分中の2価以上のカルボン酸系化合物とアルコール成分中の2価以上のアルコールとの合計モル数中、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは実質的に100モル%、さらに好ましくは100モル%である。
結晶性ポリエステル樹脂におけるカルボン酸成分とアルコール成分との当量比(COOH基/OH基)は、複合樹脂の軟化点を調整する観点から、好ましくは0.70以上、より好ましくは0.85以上であり、そして、好ましくは1.10以下、より好ましくは1.05以下である。
結晶性ポリエステル樹脂の原料モノマーの重縮合反応は、不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じて、エステル化触媒、重合禁止剤等の存在下、好ましくは130℃以上230℃以下の温度で行うことができる。
結晶性複合樹脂としては、前記結晶性ポリエステル樹脂とスチレン系樹脂とを有する複合樹脂が好ましい。
スチレン系樹脂の原料モノマーについては、非晶質複合樹脂と同様の原料モノマーが挙げられる。
結晶性複合樹脂におけるスチレン化合物の含有量は、スチレン系樹脂の原料モノマー中、転写性及び耐久性の観点から、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは実質100質量%、さらに好ましくは100質量%である。
両反応性モノマーや結晶性複合樹脂の製造方法についても、非晶質複合樹脂と同様である。
結晶性ポリエステル樹脂又は結晶性複合樹脂の軟化点は、耐久性の観点から、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは85℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは120℃以下、より好ましくは110℃以下、さらに好ましくは100℃以下である。
結晶性ポリエステル樹脂又は結晶性複合樹脂の融点は、低温定着性の観点から、好ましくは105℃以下、より好ましくは100℃以下、さらに好ましくは95℃以下であり、耐久性の観点から、好ましくは70℃以上、より好ましくは75℃以上、さらに好ましくは80℃以上である。
結晶性樹脂を含む場合の、非晶質樹脂と結晶性樹脂の質量比(非晶質樹脂/結晶性樹脂)は、カブリの抑制及び耐久性の観点から、好ましくは70/30以上、より好ましくは75/25以上、さらに好ましくは80/20以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは97/3以下、より好ましくは95/5以下である。
無機粒子は、所定の表面親水性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化亜鉛等が挙げられ、2種以上が併用されていてもよい。これらの中では、シリカが好ましい。
無機粒子の表面親水性を調整するために、無機粒子に表面処理が施されていてもよい。
無機粒子の表面親水性は、カブリの抑制及び耐久性の観点から、0.2以上であり、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.4以上であり、そして、耐熱保存性の観点から、2.5以下であり、好ましくは2.1以下、より好ましくは1.7以下、さらに好ましくは1.0以下である。本発明において、表面親水性は、実施例に記載の水蒸気測定値と窒素測定値の比(水蒸気測定値/窒素測定値)から算出される値であり、値が大きいほど、親水性が高いことを示す。
無機粒子の個数平均粒径は、カブリの抑制及び耐久性の観点から、好ましくは5nm以上であり、そして、好ましくは70nm以下、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは35nm以下である。
無機粒子の使用量は、結着樹脂100質量部に対して、カブリの抑制及び耐久性の観点から、0.6質量部以上であり、好ましくは0.7質量部以上、より好ましくは0.8質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは2質量部以上であり、そして、30質量部以下であり、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
ワックスとしては、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンポリエチレン共重合体ワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、サゾールワックス等の炭化水素系ワックス及びそれらの酸化物;カルナウバワックス、モンタンワックス及びそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステル系ワックス;脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を用いることができる。
ワックスの融点は、トナーの転写性の観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下である。
ワックスの使用量は、トナーの低温定着性と耐オフセット性の観点及び結着樹脂中への分散性の観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは1.5質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは7質量部以下である。
本発明のトナーには、結着樹脂、ワックス及び無機粒子以外に、着色剤、荷電制御剤、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が用いられていてもよい。
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料、磁性体等を使用することができる。例えば、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントレッド122、ピグメントグリーンB、ローダミン-Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、イソインドリン、ジスアゾエロー等が挙げられる。なお、本発明において、トナーは、黒トナー、カラートナーのいずれであってもよい。
着色剤の使用量は、トナーの画像濃度及び低温定着性を向上させる観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、そして、好ましくは40質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
荷電制御剤は、特に限定されず、正帯電性荷電制御剤及び負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよい。
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、例えば「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロンN-01」、「ボントロンN-04」、「ボントロンN-07」、「ボントロンN-09」、「ボントロンN-11」(以上、オリヱント化学工業(株)製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロンP-51」(オリヱント化学工業(株)製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPY CHARGE PX VP435」(クラリアント社製)等;ポリアミン樹脂、例えば「AFP-B」(オリヱント化学工業(株)製)等;イミダゾール誘導体、例えば「PLZ-2001」、「PLZ-8001」(以上、四国化成工業(株)製)等;スチレン-アクリル系樹脂、例えば「FCA-701PT」(藤倉化成(株)製)等が挙げられる。
また、負帯電性荷電制御剤としては、含金属アゾ染料、例えば「バリファーストブラック3804」、「ボントロンS-31」、「ボントロンS-32」、「ボントロンS-34」、「ボントロンS-36」(以上、オリヱント化学工業(株)製)、「アイゼンスピロンブラックTRH」、「T-77」(保土谷化学工業(株)製)等;ベンジル酸化合物の金属化合物、例えば、「LR-147」、「LR-297」(以上、日本カーリット(株)製)等;サリチル酸化合物の金属化合物、例えば、「ボントロンE-81」、「ボントロンE-84」、「ボントロンE-88」、「ボントロンE-304」(以上、オリエント化学工業(株)製)、「TN-105」(保土谷化学工業(株)製)等;銅フタロシアニン染料;4級アンモニウム塩、例えば「COPY CHARGE NX VP434」(クラリアント社製)、ニトロイミダゾール誘導体等;有機金属化合物等が挙げられる。
荷電制御剤の使用量は、トナーの帯電安定性の観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下である。
少なくとも結着樹脂、ワックス、及び無機粒子を含む溶融混練に供する原料は、一度に混練に供しても、分割して混練に供してもよいが、あらかじめヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合機で混合した後、混練機に供給することが好ましい。
溶融混練には、密閉式ニーダー、一軸もしくは二軸の押出機、オープンロール型混練機等の公知の混練機を用いて行うことができる。溶融混練の温度は、原料が混ざり合う温度であれば特に限定されないが、80℃以上200℃以下が好ましい。
溶融混練工程の後、混練物を粉砕可能な硬度に達するまで適宜冷却し、粉砕する。ここで、冷却とは、混練物を0℃以上50℃以下まで冷却すること、または、混練物中の結着樹脂のガラス転移温度以下まで冷却することを言う。
混練物の粉砕は、所望の粒径まで一度に粉砕しても、段階的に粉砕してもよいが、効率よく、かつより均一に粉砕する観点から、粗粉砕と微粉砕の2段階で行うことが好ましい。
粗粉砕に用いられる粉砕機としては、ハンマーミル、カッターミル、アトマイザー、ロートプレックス等が挙げられる。
粗粉砕では、最大径が3mm以下になるまで粉砕することが好ましい。最大径が3mm以下の粉砕物は、混練物を、粒径が0.05mm以上3mm以下程度になるまで適宜粗粉砕した後、目開きが3mmの篩に通し、篩を通過した粉砕物として得ることができる。
微粉砕に用いる粉砕機としては、流動層式ジェットミル、衝突板式ジェットミル等のジェットミル、機械式ミル等が挙げられる。
微粉砕の程度は、目的とするトナーの粒径に応じて、適宜調整することが好ましい。
粉砕後のトナー粒子は、分級した後、工程2に供することが好ましい。
分級工程に用いられる分級機としては、気流式分級機、慣性式分級機、篩式分級機等が挙げられる。
工程2は、機械的な作用により、得られたトナー粒子の平均円形度を制御する工程である。
本発明では、機械的な作用によりトナー粒子の円形度を制御する手段が、ハンマーとライナーを備えた機械式表面改質装置を用いたトナー粒子の球形化処理であることが好ましい。本発明で用いる機械式表面改質装置は、回分式の表面改質装置であることが好ましい。該回分式の表面改質装置としては、微粉を装置外へ連続的に排出除去する分級手段、ハンマーとライナーを備えた表面処理手段、及び被処理物を分級手段に導入する第一の空間と被処理物を表面処理手段に導入する第二の空間とに装置内を仕切る案内手段を有する装置が好ましい。
前記回分式の表面改質装置を使用した球形化(表面改質ともいう)処理について、図面を参照しながら具体的に説明する。
図1は、本発明に使用する表面改質装置の一例を示し、図2は図1において高速回転する回転体の上面図の一例を示す。
図1に示す表面改質装置は、
ケーシング13、
冷却水又は不凍液を通水できるジャケット(図示しない)、
表面処理手段である、ケーシング13内にあって中心回転軸に取り付けられた、上面にハンマー10を複数個有し、高速で回転する円盤上の回転体である分散ローター6、
分散ローター6の外周に一定間隔を保持して配置されている表面に多数の溝が設けられているライナー4(固定体)(ライナー表面上の溝はなくても構わない)、
表面改質された被処理物を所定粒径に分級するための手段である分級ローター1、
分級ローターにより選別された所定粒径以下の微粉を排出除去するための微粉排出口2、
冷風を導入するための冷風導入口5、
被処理物を第一の空間11へ導入するための原料供給口3、
表面改質時間を自在に調整可能となるように、開閉可能なように設置された排出弁8、
処理後の粉体を排出するための粉体排出口7、及び
装置内の分級ゾーンと表面改質ゾーンの間の空間を、被処理物を分級ローター1に導入するための第一の空間11と、被処理物を分散ローター6に導入するための第二の空間12とに仕切る案内手段である円筒形のガイドリング(案内板)9
とから構成されている。なお、分級ローター1及びローター周辺部分が分級ゾーンであり、分散ローター6とライナー4との間隙部分が表面改質ゾーンである。
分級ローター1の設置方向は図1に示したような縦型だけでなく、横型でもよい。また、分級ローター1の個数は図1に示したような単体だけでなく、複数でもよい。
球形化処理に供するトナー粒子は、図1のように第一の空間に導入しても図3のように第二の空間に導入してもよい。トナー粒子を第二の空間に導入する場合は、第二の空間に導入して表面改質処理を行い、次いで、第一の空間に導入し分級処理した後、再度第二の空間に導入してトナー粒子を第一の空間と第二の空間を循環させることにより、分級処理と表面改質処理を繰り返して、球形化されたトナー粒子を得る。
前記構成を有する表面改質装置における表面改質処理、分級処理の工程を具体的にさらに説明すると、図3の装置のように、トナー粒子を第二の空間に導入する場合、排出弁8を閉とした状態で原料供給口3からトナー粒子を一定量投入すると、投入されたトナー粒子は、まずブロワー(図示しない)により吸引され、第二の空間へ導入される。トナー粒子は、ガイドリング(案内板)9の内周(第二の空間12)に沿いながら分散ローター6により発生する循環流に乗り表面改質ゾーンへ導かれる。表面改質ゾーンに導かれたトナー粒子は分散ローター6のハンマー10とライナー4間で機械式衝撃力を受け、表面改質処理される。表面改質された表面改質粒子は、機内を通過する冷風に乗って、ガイドリング9の外周(第一の空間11)に沿いながら分級ゾーンに導かれる。表面改質粒子は、分級ローター1により、所定粒径以下の微粉と所定粒径以上の粗粉に分級され、微粉は機外へ排出され、粗粉は、循環流に乗り、再度第二の空間12に戻され、表面改質ゾーンで繰り返し表面改質作用を受ける。一定時間経過後、排出弁8を開とし、粉体排出口7より球形化されたトナー粒子を回収する。
微粉を排出除去しながら表面改質処理を繰り返すことが可能な表面改質装置を用いることにより、表面改質時における微粉量の増加を防止しながら、収率よく表面改質処理を行うことができる。
また、排出弁を開放する時間を任意に設定することにより、装置内におけるトナーの滞留時間を調整でき、トナー粒子の表面形状を任意にコントロールでき、円形度が高いトナー粒子を得ることができる。
トナー粒子の表面形状は、表面改質装置内でのトナー粒子の滞留時間に依存している。つまり、トナー粒子の表面形状をコントロールするためには、表面改質装置内のトナー粒子の循環時間をコントロールすることが重要である。本発明において、表面改質工程で使用する表面改質装置を、図1に示すような回分式の表面改質装置とすることで、排出弁開放までの時間、分散ローター上面の歯形状及び回転周速、分散ローターとライナーとの間隔、ガイドリングと分散ローターとの間隔等を適切な状態に制御することにより、表面改質時における微粉増加を防止し、トナー粒子の表面改質装置内での滞留時間をコントロールでき、トナーの表面形状を任意にコントロールすることができる。また、表面改質されたトナーを所定粒径に分級する分級ローターを内蔵しているため、分級ローターの回転周速を適切な状態に制御することにより、所定粒子以下の微粉は装置外へ連続的に排出され、粗粉は再度表面改質できるため、微粉が除かれた表面改質粒子を得ることができる。
表面改質装置において表面改質処理と分級処理を繰り返す循環時間は、表面改質効果を得る観点から、好ましくは5秒以上、より好ましくは10秒以上であり、そして、表面改質時間の長時間化に伴う、表面改質時に発生する熱によるトナーの表面変質や、機内融着の発生、及び処理能力の低下を避ける観点から、好ましくは720秒以下、より好ましくは600秒以下である。
なお、表面改質時に発生する熱によるトナーの表面変質や、機内融着を防止する観点から、冷風を送ったり、ジャケット内に冷媒を通したりして、装置内の温度を制御することが好ましい。
工程2により球形化されたトナー粒子の平均円形度は、カブリの抑制及び耐久性の観点から、0.94以上であり、好ましくは0.95以上であり、そして、クリーニング性の観点から、0.98以下であり、好ましくは0.97以下である。平均円形度は、トナー粒子の凹凸の度合を示す指標であり、トナー粒子が完全な球形の場合の円形度、即ち平均円形度の上限値は、1.00である。一方、粒子表面の凹凸が大きくなるほど、円形度の値は小さくなる。
本発明では、さらに、転写性を向上させるために、球形化されたトナー粒子を外添剤と混合する工程を含むことが好ましい。
外添剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化亜鉛等の無機微粒子や、メラミン系樹脂微粒子、ポリテトラフルオロエチレン樹脂微粒子等の有機微粒子が挙げられ、2種以上が併用されていてもよい。これらの中では、シリカが好ましく、トナーの転写性の観点から、疎水化処理された疎水性シリカであることがより好ましい。
シリカ粒子の表面を疎水化するための疎水化処理剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチルジクロロシラン(DMDS)、シリコーンオイル、オクチルトリエトキシシラン(OTES)、メチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
外添剤の個数平均粒径は、トナーの帯電性や流動性、転写性の観点から、好ましくは6nm以上、より好ましくは8nm以上であり、そして、好ましくは250nm以下、より好ましくは200nm以下、さらに好ましくは150nm以下である。
外添剤の使用量は、トナーの帯電性や流動性、転写性の観点から、球形化されたトナー粒子100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.3質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下である。
球形化されたトナー粒子と外添剤との混合には、ヘンシェルミキサー等の混合機を用いることができる。
本発明の方法により得られるトナーの体積中位粒径(D50)は、好ましくは3μm以上、より好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下である。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。また、トナー粒子を外添剤で処理している場合には、外添剤で処理する前のトナー粒子の体積中位粒径をトナーの体積中位粒径とする。
本発明の方法により得られるトナーは、一成分現像用トナーとして、又はキャリアと混合して二成分現像剤として用いることができる。
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。樹脂等の物性は、以下の方法により測定した。
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター「CFT-500D」((株)島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
〔樹脂の吸熱の最高ピーク温度〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、室温(25℃)から降温速度10℃/minで0℃まで冷却し、0℃にて1分間維持する。その後、昇温速度10℃/minで測定する。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を吸熱の最高ピーク温度とする。
〔樹脂のガラス転移温度〕
示差走査熱量計「DSC Q20」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで昇温し、吸熱ピークを測定する。吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
〔樹脂の酸価〕
JIS K 0070:1992の方法に基づき測定する。ただし、測定溶媒のみJIS K 0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更する。
〔無機粒子の表面親水性〕
窒素測定と水蒸気測定により得られた測定値を用い、下記式から算出する。なお、窒素測定の後は、無機粒子の粒度分布の振れによる測定振れを小さくするため、窒素測定を実施したサンプルを再度前処理した後に水蒸気測定を実施する。
窒素測定値は、比表面積測定装置でBET多点法を用いて得られた比表面積(m2/g)である。BET多点法では吸着気体(窒素)の平衡相対圧が0.05~0.30の範囲内で吸着量を3点以上測定し、比表面積を計算することができる。具体的には下記測定条件で分析を実施する。
測定器:多検体高性能比表面積/細孔分布測定装置 3Flex-3MP(micromeritics社製)
分散吸着質:窒素
前処理:40℃、4時間以上
平衡相対圧:0.05~0.30(0.05毎)
平衡インターバル:10秒
水蒸気測定値は、ガス吸着測定装置で測定した水蒸気吸着量(cm3/g)のうち、平衡相対圧0.85~0.90での水蒸気吸着量である。具体的には下記測定条件で分析を実施する。
測定器:多検体高性能比表面積/細孔分布測定装置 3Flex-3MP(micromeritics社製)
分散吸着質:イオン交換水
前処理:40℃、4時間以上
平衡相対圧:0.04~0.90[0.04~0.10(0.01毎)、0.10~0.90(0.25毎)]
平衡インターバル:20秒
測定温度:30℃
〔無機粒子の個数平均粒径〕
走査型電子顕微鏡(SEM)写真から500個の粒子の粒径(長径と短径の平均値)を測定し、それらの平均値を個数平均粒径とする。
〔ワックスの融点〕
示差走査熱量計「DSC Q20」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、昇温速度10℃/minで200℃まで昇温し、その温度から降温速度5℃/minで-10℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで180℃まで昇温し測定する。そこで得られた融解吸熱カーブから観察される吸熱の最高ピーク温度をワックスの融点とする。
〔外添剤の個数平均粒径〕
走査型電子顕微鏡(SEM)写真から500個の粒子の粒径(長径と短径の平均値)を測定し、それらの平均値を個数平均粒径とする。
〔トナーの平均円形度〕
測定機:FPIA-3000(シスメックス(株)製)
標準ユニット(対物レンズ10倍)
測定モード HPFモード
分散液:エマルゲン109P(花王(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB13.6)5質量%電解液
分散条件:分散液10mlに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、蒸留水10mlを添加し、さらに、超音波分散機にて2分間分散させる。
測定条件:分散液に分散したトナーの円形度を、粒子濃度1800~2200個になる濃度で20℃で測定し、数平均値を求める。
〔トナーの体積中位粒径〕
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター(株)製)
アパチャー径:100μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマン・コールター(株)製)
電解液:アイソトンII(ベックマン・コールター(株)製)
分散液:電解液にエマルゲン109P(花王(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB(グリフィン):13.6)を溶解して5質量%に調整したもの
分散条件:前記分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機(機械名:(株)エスエヌディー製US-1、出力:80W)にて1分間分散させ、その後、前記電解液25mLを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
測定条件:前記電解液100mLに、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度となるように、前記試料分散液を加え、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
非晶質樹脂の製造例1
表1に示す無水トリメリット酸以外の非晶質ポリエステル樹脂の原料モノマー及びエステル化触媒を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、200℃に昇温して6時間反応させた。さらに210℃に昇温した後、無水トリメリット酸を添加し、常圧(101.3kPa)にて1時間反応させ、さらに40kPaにて所望の軟化点に達するまで反応させて、非晶質ポリエステル樹脂(樹脂A-1、A-2)を得た。得られた樹脂の物性を表1に示す。
非晶質樹脂の製造例2
表1に示す無水トリメリット酸以外の非晶質ポリエステル樹脂の原料モノマー、エステル化触媒を窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、230℃にて12時間反応を行った後、8.3kPaにて1時間反応させた。
その後、160℃に降温し、スチレン系樹脂の原料モノマー、両反応性モノマー及び重合開始剤を滴下ロートにより1時間かけて滴下した。160℃に保持したまま1時間付加重合反応を熟成させた後、210℃に昇温し、8.3kPaにて1時間保持した。
さらに、210℃にて、無水トリメリット酸を添加し、所望の軟化点に達するまで反応させて、非晶質複合樹脂(樹脂A-3)を得た。得られた樹脂の物性を表1に示す。
結晶性樹脂の製造例1
表2に示す結晶性ポリエステル樹脂の原料モノマー及びエステル化触媒を窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、160℃まで加熱し、6時間反応させた。
その後、表2に示すスチレン系樹脂の原料モノマー、両反応性モノマー及び重合開始剤を滴下ロートにより1時間かけて滴下した。160℃に保持したまま1時間付加重合反応を熟成させた後、8.3kPaにて1時間保持した。さらに、200℃まで8時間かけて昇温、8.3kPaにて2時間反応させて、結晶性複合樹脂(樹脂C-1、C-2)を得た。得られた樹脂の物性を表2に示す。
結晶性樹脂の製造例2
表2に示す原料モノマー、及びエステル化触媒を窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、130℃から200℃まで10時間かけて昇温を行い、200℃で8kPaにて1時間反応させて、結晶性ポリエステル樹脂(樹脂C-3)を得た。得られた樹脂の物性を表2に示す。
実施例1~9、11~14、18、比較例1~3(実施例2、3は参考例である)
表4に示す結着樹脂及び無機粒子と、荷電制御剤「ボントロンE-304」(オリヱント化学工業(株)製)1.0質量部、着色剤「ECB-301」(大日精化工業(株)製、フタロシアニンブルー(P.B.15:3))5.0質量部、フィッシャートロプシュワックス「SP-105」((株)加藤洋行製)3.0質量部、及びエステルワックス「WEP-9」(日油(株)製)1.0質量部を、ヘンシェルミキサーを用いて2分間混合後、以下に示す条件で溶融混練した。
同方向回転二軸押出機PCM-30((株)池貝製、軸の直径 2.9cm、軸の断面積 7.06cm2)を使用した。運転条件は、バレル設定温度 100℃、軸回転数 200r/min(軸の回転の周速 0.30m/sec)、混合物供給速度 10kg/hr(軸の単位断面積あたりの混合物供給量 1.42kg/hr・cm2)であった。
得られた樹脂混練物を冷却し、粉砕機「ロートプレックス」(ホソカワミクロン(株)製)により粗粉砕し、目開きが2mmのふるいを用いて体積粒径が2mm以下の粗粉砕物を得た。得られた粗粉砕物を、DS2型気流分級機(衝突板式、日本ニューマチック工業(株)製)を用いて体積中位粒径が7.5μmになるように粉砕圧を調整して微粉砕を行なった。得られた微粉砕物を、DSX2型気流分級機(日本ニューマチック工業(株)製)を用いて体積中位粒径が8.5μmになるように静圧(内部圧力)を調整して分級を行い、トナー粒子を得た。
分級したトナー粒子を回分式のハンマーとライナーを備えた機械式表面改質装置に導入し、トナー粒子の球形化処理を行った。
機械式表面改質装置には、ファカルティ(ホソカワミクロン(株)製)の原料投入口を、被処理物を第二の空間に導入するように改造した装置を用いた。表面改質装置において、分散ローターの回転数を5100r/min、分級ローターの回転数を5200r/min、風量を20Nm3、ハンマー(角型ブロック)12本の条件を固定し、投入量と撹拌時間を変更して、表面改質処理を行った。
球形化処理を施したトナー粒子100質量部と、外添剤として疎水性シリカ「R972」(日本アエロジル(株)製、個数平均粒径:16nm)0.3質量部、疎水性シリカ「RY50」(日本アエロジル(株)製、個数平均粒径:40nm)0.8質量部をヘンシェルミキサー(日本コークス工業(株)製)にて2100r/min(周速度29m/sec)で3分間混合して、トナーを得た。
実施例10
表4に示す結着樹脂及び無機粒子と、荷電制御剤「ボントロンP-51」(オリヱント化学工業(株)製)0.5質量部、荷電制御樹脂「FCA-201-PS」(藤倉化成(株)製)8.0質量部、着色剤「ECB-301」(大日精化工業(株)製、フタロシアニンブルー(P.B.15:3))5.0質量部、及びフィッシャートロプシュワックス「SP-105」((株)加藤洋行製)3.0質量部、及びエステルワックス「WEP-9」(日油(株)製)1.0質量部を、ヘンシェルミキサーを用いて2分間混合後、実施例1と同様にして溶融混練、粉砕分級、表面改質を実施し、トナー粒子を得た。
球形化処理を施したトナー粒子100質量部と、外添剤として、疎水性シリカ「TG-820F」(キャボットジャパン(株)製、個数平均粒径:8nm)0.5質量部、疎水性シリカ「NA50H」(日本アエロジル(株)製、個数平均粒径:30nm)1.0質量部をヘンシェルミキサー(日本コークス工業(株)製)にて2100r/min(周速度29m/sec)で3分間混合して、トナーを得た。
実施例15~17
ワックスを表4に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。
比較例4
球形化処理を行わず、分級したトナー粒子をそのまま外添剤と混合した以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。
実施例及び比較例で使用した無機粒子の詳細を表3に示す。
試験例1〔カブリ評価〕
(1) 実施例1~9、11~18、比較例1~4のトナー
(株)沖データ製「MicroLine5400」にトナー50gを充填し、温度25℃、湿度50%の条件下で、1ページ20秒間欠の条件で印字率1%の画像を2000枚印字した。500枚毎に白ベタ画像を印刷し、その印刷途中で電源を切断した。その後、感光体表面のトナーを「Scotch(登録商標)メンディングテープ 810」(スリーエムジャパン(株)製、幅:18mm)にて付着させ、画像濃度測定器「GRETAG SPM50」(GRETAG社製)にて着色濃度の測定を行い、トナーを付着させる前のテープ自身の着色濃度との差を求め、500枚目から2000枚目までの4回の測定値の平均を求めた。値が小さいほど、カブリが抑制されている。結果を表4に示す。
(2) 実施例10のトナー
ブラザー工業(株)製「HL-2040」にトナーを充填した以外は、(1)と同様にして試験を行った。結果を表4に示す。
試験例2〔耐久性〕
現像ローラを目視で確認できるように改造した(株)沖データ製のIDカートリッジ「ML-5400用、イメージドラム」にトナーを30g実装し、温度25℃、湿度50%の条件下で、70r/min(36ppm相当)で空回し運転を行い、現像ローラフィルミングを目視にて観察した。フィルミング発生までの時間を耐久性の指標とした。耐久性は現像ローラフィルミング発生までの時間が長いほど、耐久性に優れることを示す。結果を表4に示す。
以上の結果より、比較例1~4と対比して、実施例1~18のトナーは、カブリ抑制及び耐久性のいずれにも優れていることが分かる。なかでも、実施例1~6の対比から、無機粒子の量が、結着樹脂100質量部に対して2~5質量部である場合に、カブリ抑制と耐久性向上の両立が極めて高いレベルで達成されることが分かる。