特許文献1は、部品(ドアインナパネル)の共通化には寄与しているとみられる。しかし、特許文献1に記載の車両用ドアガラス取付構造では、ドアガラスを支持するホルダをドアインナパネルに取付ける際、ブラケットなどの別部品が必要となり、その分、部品点数が増え、製造コストや重量が増加する、という問題があった。
本発明は、このような課題に鑑み、ブラケットなどの別部品を介することなくドアガラス固定仕様を実現でき、さらにドアガラス固定仕様と昇降仕様とで部品を共通化できる車両用ドアガラス取付構造を提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両用ドアガラス取付構造の代表的な構成は、車両用ドアの窓枠に固定して取付られるドアガラスを備えた車両用ドアガラス取付構造において、車両用ドアガラス取付構造はさらに、窓枠を構成し窓枠下端に沿って上方に張り出したフランジが形成されているドアインナパネルと、ドアガラスの下辺部を支持しフランジに直接固定される複数のホルダとを備えることを特徴とする。
車両用ドアのうち、とりわけリアサイドドアには、ドアガラスが昇降する昇降仕様だけでなく、ドアガラスが固定されていて動かない固定仕様(いわゆる嵌め殺し)も存在する。従来、ドアガラス固定仕様では、ドアガラスの下辺部を支持するホルダが設けられ、これをブラケットなどの別部品を介してドアインナパネルに取付ける必要があった。
しかし本発明の上記構成によれば、ドアガラスの下辺部を支持するホルダは、ドアインナパネルの窓枠下端に新たに形成された上方に張り出したフランジ、すなわちドアインナパネル自体に直接固定される。よって本発明によれば、ブラケットなどの別部品を介することなくドアガラス固定仕様を実現でき、従来のドアガラス固定仕様と比較して、部品点数の削減・軽量化を図ることができる。
また上記構成では、窓枠下端に沿って延びているフランジに、複数のホルダを所定の間隔で固定できるため、ドアガラスを保持するピッチを調整して、ドアガラスを安定して保持できる。
さらに、ホルダをフランジ(ドアインナパネル)に直接固定しているため、ドアガラスとフランジとの間の隙間が一定となる。そのため、フランジにウェザーストリップを取付けた場合に水漏れが生じ難くなる。なお上記構成では、ブラケットを用いず、ホルダをフランジに直接固定しているため、ドアインナパネルとドアアウタパネルとで区画されるパネル空間内に所定の機能部品や補強部材などが設置されている場合であっても、これらに干渉されず、ホルダとフランジとの固定が可能となる。
加えて、ドアインナパネルの窓枠下端に新たに形成されたフランジは、上方に張り出しているものであり、昇降するドアガラスと干渉するものではない。よって、ホルダをフランジから着脱することで、本発明によるドアインナパネルは、ドアガラス固定仕様・昇降仕様の両方に共通に用いることが可能である。なおドアガラス自体もホルダによって下辺部が支持される形状であればよく、2つの仕様で共通化できる。
上記のホルダは、ドアガラスの下辺部を挟持するガラス支持部と、ガラス支持部の車内側における上端から車幅方向に延びフランジに当接する当接部とを有するとよい。このように、ドアガラスの下辺部がガラス支持部により保持され、ドアガラスおよびフランジに当接する当接部がガラス支持部の上端に位置するため、ドアガラスに車外側から負荷がかかった場合であっても、ドアガラスを安定して保持できる。
上記の車両用ドアガラス取付構造は、フランジに沿って取り付けられたウェザーストリップをさらに備え、ドアインナパネルには、少なくとも複数のホルダ間に、車内側に隆起した凸部が形成されているとよい。このように凸部を形成することで、ドアインナパネルの剛性が高くなり、ウェザーストリップおよびホルダをフランジに安定させて支持または固定できる。
上記のホルダはさらに、当接部の車内側の端部からフランジに沿って上方に延びる固定部と、固定部に形成され固定部をフランジに固定する締結部材が通される取付孔と、固定部から車内側に突出した爪部と、爪部の下側に形成され爪部の先端に向けて先細りとなるように傾斜したリブとを有し、フランジは、取付孔と重なっていて締結部材が通される第1穴と、爪部およびリブが通される第2穴とを有するとよい。
ここでホルダをフランジに取付ける際には、まず、爪部を第2穴に通して、ホルダをフランジに仮保持させる。このとき、第2穴の寸法が爪部よりも多少大きい場合には、爪部をさらに押し込むことでリブが第2穴に接する。一方、第2穴の寸法が小さくても爪部を押し込むとリブが押し潰される。よって、第2穴の寸法にばらつきがあっても、仮保持の際、ガラスの位置が下がることを防止し、ホルダをフランジに確実に仮保持できる。すなわちリブを設けることで、第2穴の部品公差を吸収できる。
本発明によれば、ブラケットなどの別部品を介することなくドアガラス固定仕様を実現でき、さらにドアガラス固定仕様と昇降仕様とで部品を共通化できる車両用ドアガラス取付構造を提供することができる。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
図1は、本実施形態における車両用ドアガラス取付構造100が適用される車両用ドア102の外観を示す図である。図中では、車両右側のリヤサイドドア(車両用ドア102)を車外側から見た状態を示している。ただし、ここではドアインナパネル104とともに窓枠106を構成するドアアウタパネル108(図5参照)を省略して示している。図2は、図1の車両用ドアガラス取付構造100の一部を示す図である。図中ではドアガラス110の一部を車内側から見た状態を示している。図3は、図1の車両用ドアガラス取付構造100の車内側を示す図である。
車両用ドアガラス取付構造100は、図1に示すように、車両用ドア102の窓枠106を構成するドアインナパネル104と、ドアガラス110とを備えている。図中に示す車両用ドア102は、ドアガラス110が窓枠106に固定して取付られていて、窓枠106に対して動かないドアガラス固定仕様となっている。
車両用ドアガラス取付構造100はさらに、図示のように複数(ここでは2つ)の樹脂製のホルダ112、114を備える。以下では、ホルダ112について主に説明するが、ホルダ114も図2に示すように、ホルダ112と同様の形状を有している。
ホルダ112、114は、ドアガラス110の下辺部116を所定の間隔(ピッチ)で支持していて、このピッチを適宜調整することでドアガラス110を安定して保持する。ホルダ112は、ドアガラス110の下辺部116を挟持するガラス支持部118を有する。ホルダ112はさらに、当接部120および固定部122を有する。
当接部120は、ガラス支持部118の車内側における上端118aから車幅方向に延びていて、図3に示すドアインナパネル104のフランジ124に当接する。フランジ124は、ドアインナパネル104の一部であって窓枠下端126に沿って延びていてさらに上方に張り出している。固定部122は、図2に示すように、当接部120の車内側の端部120aから上方に延びている。
さらにホルダ112は、取付孔128と爪部130とを有する。取付孔128は、固定部122に形成されていて、固定部122をフランジ124に固定する締結部材(スクリュー132)が通される(図5参照)。爪部130は、固定部122から車内側に突出している。
フランジ124には、図3に示すように、取付孔128と重なっている第1穴134と、爪部130が通される第2穴136とが形成されている。またドアインナパネル104には、図3に示すように少なくともホルダ112、114間に、車内側に隆起した凸部138が形成されている。
図4は、図3の車両用ドアガラス取付構造100のA−A断面を車両斜め前側から見た状態を示す図である。図中ではホルダ112、114のうち、ドアインナパネル104に重なっている部分を点線で示している。また図示のようにウェザーストリップ140は、ドアガラス110の車内側(インナー側)に位置しフランジ124に取付けられている。ただし、ウェザーストリップ140は、車両側面から見てホルダ112と重なる位置では切欠部142を有し、この切欠部142にてホルダ112がフランジ124に直接固定される(図5参照)。なお図4では、締結部材であるスクリュー132が未だ締結されていない状態、すなわち仮保持状態を示している。
図5は、図3の車両用ドアガラス取付構造100のB−B断面図である。図中では、ホルダ112がスクリュー132によってフランジ124に固定されている状態を示している。なお図中では、図4に示すドアガラス110の車外側に位置するアウター側のウェザーストリップ144を省略している。以下、ホルダ112を用いてドアガラス110の下辺部116を支持し、さらにホルダ112をフランジ124に直接固定する手順を説明する。
まず、ドアガラス110の下辺部116をホルダ112のガラス支持部118によって挟持する。つぎに、図4に示すようにホルダ112の爪部130をフランジ124の第2穴136に通して、ホルダ112をフランジ124に仮保持させる。またこのとき、ホルダ112の当接部120を、図5に示すように、車内側の端部120aがフランジ124に当接するように位置合わせする。なお当接部120の車外側の端部120bは、ドアガラス110に当接している。さらに、ホルダ112の固定部122が図示のようにフランジ124に接し、取付孔128がフランジ124の第1穴134と重なるように位置合わせする。
続いて、ホルダ112の取付孔128に重ねられたフランジ124の第1穴134に対して、車内側からスクリュー132を通して、取付孔128に捻じ込むことで、図5に示すようにホルダ112がフランジ124に直接固定される。このようにして、ホルダ112は、ドアガラス110の下辺部116を支持するとともに、フランジ124に直接固定される。
本実施形態における車両用ドアガラス取付構造100では、ドアガラス110の下辺部116を支持する複数のホルダ112、114が、ドアインナパネル104の窓枠下端126に新たに形成された上方に張り出したフランジ124、すなわちドアインナパネル104自体に直接固定される。よって車両用ドアガラス取付構造100によれば、ブラケットなどの別部品を介することなくドアガラス固定仕様を実現でき、ブラケットを用いた従来のドアガラス固定仕様と比較して、部品点数の削減・軽量化を図ることができる。
また、ドアインナパネル104のフランジ124にホルダ112、114を直接固定しているため、ドアガラス110とフランジ124との間の隙間が一定となる。そのため、フランジ124にウェザーストリップ140を取付けた場合に水漏れが生じ難くなる。さらに車両用ドアガラス取付構造100では、ブラケットを用いずホルダ112、114をフランジ124に直接固定している。このため、車両用ドア102においてドアインナパネル104とドアアウタパネル108とで区画されるパネル空間146内に所定の機能部品や補強部材などが設置されている場合であっても、これらに干渉されず、ホルダ112、114とフランジ124との固定が可能となる。
さらにドアインナパネル104のフランジ124は、上方に張り出しているものであり、昇降するドアガラスと干渉するものではない。よって、ホルダ112、114をフランジ124から着脱することで、本実施形態によるドアインナパネル104は、ドアガラス固定仕様・昇降仕様の両方に共通に用いることが可能である。なおドアガラス110自体もホルダ112、114によって下辺部116が支持される形状であればよく、2つの仕様で共通化できる。
またドアガラス110の下辺部116がガラス支持部118により保持され、ドアガラス110およびフランジ124に当接する当接部120がガラス支持部118の上端118aに位置している。よって、本実施形態では、ドアガラス110に車外側から負荷がかかった場合であっても、ドアガラス110を安定して保持できる。
さらに図3に示すように、ドアインナパネル104に凸部138を形成することで、ドアインナパネル104の剛性が高くなる。このため、ウェザーストリップ140およびホルダ112、114をフランジ124に安定させて支持または固定できる。
図6は、他の実施形態におけるホルダ112Aを示す図である。図6(a)は、ホルダ112Aの斜視図である。図6(b)は、図6(a)のC矢視図、およびC矢視図に示すD−D線に沿ったD−D断面図を示している。
ホルダ112Aは、ガラス支持部118に補強用の縦壁148が形成されている点、爪部130の下側にリブ150が形成されている点で、上記実施形態のホルダ112と異なる。縦壁148は、図6(a)に示すように、ガラス支持部118の車内側に立設していて、その上端148aが当接部120に接している。よってホルダ112Aは、縦壁148によってガラス支持部118と当接部120とが繋げられていて、より剛性を高めることができる。
リブ150は、図6(b)に示すように、爪部130の下側に形成され爪部130の先端152に向けて傾斜し先細りとなる形状を有している。このようにすれば、爪部130をフランジ124の第2穴136に通してホルダ112をフランジ124に仮保持させる際、仮に第2穴136の寸法が爪部130よりも多少大きい場合には、爪部130をさらに押し込むことでリブ150が第2穴136に接する。一方、第2穴136の寸法が多少小さい場合であっても、爪部130を押し込むとリブ150が押し潰され、爪部130が第2穴136に接することになる。
よって、ホルダ112Aによれば、第2穴136の寸法にばらつきがあっても、仮保持の際、ドアガラス110の位置が下がることを防止し、フランジ124に確実に仮保持できる。すなわちホルダ112では、リブ150を設けることで、第2穴136の部品公差を吸収できる。
上記実施形態では、ホルダ112の取付孔128にスクリュー132を締め付けて、ドアインナパネル104のフランジ124にホルダ112を固定するようにしたが、これに限定されない。一例として、ホルダ112にインサートボルトを嵌め込み、このインサートボルトの先端を固定部122から車内側に突出させるようにしてもよい。このようにすれば、インサートボルトの先端をフランジ124の第1穴134を通し、スクリュー132に代えてナットなどを用いてインサートボルトの先端と螺合させることで、フランジ124にホルダ112を固定できる。
また上記実施形態では、窓枠下端126に沿って延びているフランジ124に、2つのホルダ112、114を所定の間隔で固定するようにしたが、これに限られず、3つ以上のホルダを用いてドアガラス110を保持するピッチを調整し、ドアガラス110をより安定して保持するようにしてもよい。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。