JP2016112493A - 空気清浄用フィルタ - Google Patents

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Abstract

【課題】コピー機、プリンター、コンピュータ、プロジェクター等の電子機器の内部に設置され、ガスと微粒子の両成分を除去する目的で使用されるフィルタに関して、十分に高い粉塵捕集量を有し、難燃性に優れた空気清浄用フィルタを提供する。【解決手段】両外層が長繊維不織布であり、その層間にエレクトレット層と補強ネットが挟持され、各層間が絡合により一体化されている少なくとも4層以上からなるエレクトレットシートと、活性炭を含有するガス吸着層を難燃化布帛で挟持した脱臭シートとを、前記脱臭シートが前記エレクトレットシートの補強ネット側の長繊維不織布面に積層した構造からなるフィルタ材とし、前記フィルタ材をプリーツ加工して得られる空気清浄用フィルタであって、前記エレクトレットシートの補強ネット側の長繊維不織布と前記脱臭シートとの間が接着されていない空気清浄用フィルタ。【選択図】なし

Description

本発明は、コピー機、プリンター、コンピュータ、プロジェクター等の電子機器用フィルタ、車載用フィルタ、空気清浄機等の家庭電化製品用フィルタ等に好適に使用される空気清浄用フィルタに関する。
コピー機、プリンター、コンピュータ、プロジェクター等の電子機器は、近年集積化、小型化が進み、機器内部に熱がこもりやすくなってきている。それを避けるために、ファン等により、機器内部の高温の空気を排出することによる排熱が欠かせなくなってきている。そして、インク、トナー等といった印字の際に用いられる成分、電子機器の本体を構成するプラスティック成分、各種接合部に使用されているゴム等に含まれている成分等の電子機器内に含まれる各種成分が揮発し、有害成分としてガスや微粒子となり、機器内部の高温の空気の機外への排出の際に、一緒に室内へと排出されている。近年、環境問題への意識の高まりから、上記有害成分に関して、排出規制が行われるようになっており、その規制をクリアするために、ガスと微粒子の両成分を除去できるフィルタが望まれている。また、電子機器内部に設置するため、難燃性に優れていることも望まれている。
ガスと微粒子の両成分の除去を目的としたフィルタとして、シート状のエレクトレットフィルタと、悪臭を吸着する吸着剤を含有するシートを積層し、プリーツ状に一体成形した空気浄化フィルタエレメントが開示されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、エレクトレットフィルタと、悪臭を吸着する吸着剤を含有するシートの層間がホットメルト接着剤で接着されているため、層間の間隙が十分でなく、十分に高い粉塵捕集量が得られないという問題がある。また、難燃性に関しても、十分とは言えなかった。
補強材シート、吸着性シートに難燃性の材料を使用し、難燃性を高めたものとし、シート状のエレクトレットフィルタと上記補強材シートを積層したシートのエレクトレットフィルタ側に、上記吸着性シートを積層した空気清浄フィルタシートが開示されている(例えば、特許文献2)。しかしながら、エレクトレットフィルタと補強材シートを積層したシートのエレクトレットフィルタ側に、吸着性シートを積層しており、また、積層の際にホットメルト接着剤で接着されているため層間の間隙が十分ではなく、粉塵捕集量が十分ではないという問題があった。
エレクトレット帯電熱可塑性マイクロファイバーの不織布ウェブを含むフィルタ層と吸着粒子充填層を含むガス吸着層が、共プリーツ加工されていて、実質的に結合されていない車室用エアフィルタ装置が開示されている(例えば、特許文献3)。しかしながら、フィルタ層は補強材を含んでいないため、フィルタ層とガス吸着層の層間の間隙が十分でなく、結果として、十分に高い粉塵捕集量が得られないという問題があった。
布帛の少なくとも片面に補強ネットを熱接着したシートがエレクトレット化されたシートと、前記エレクトレット化されたシートの補強ネット面側に、活性炭を含有するガス吸着層を難燃化布帛で挟持した脱臭シートが、共プリーツ加工されていて、実質的に結合されていない空気清浄用フィルタが開示されている(例えば、特許文献4)。しかしながら、エレクトレット層は補強ネットを熱接着しているため、有効濾過面積の減少および粉塵負荷時の粉塵保持空間が減少し、結果として、十分に高い粉塵捕集量が得られないという問題があった。
上述のとおり、コピー機、プリンター、コンピュータ、プロジェクター等の電子機器の内部に設置され、ガスと微粒子の両成分を除去する目的で使用されるフィルタに関して、十分に高い粉塵捕集量を有し、難燃性に優れたフィルタは見当たらないのが現状である。
特開平4−74505号公報 特開平8−281030号公報 特表2008−531280号公報 特開2011−72911号公報
本発明は、かかる従来技術の問題を解決するために創案されたものであり、コピー機、プリンター、コンピュータ、プロジェクター等の電子機器の内部に設置され、ガスと微粒子の両成分を除去する目的で使用されるフィルタに関して、十分に高い粉塵捕集量を有し、難燃性に優れた空気清浄用フィルタを提供することを目的とする。
本発明者は上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、遂に本発明を完成するに到った。すなわち本発明は、以下の通りである。
1.両外層が長繊維不織布であり、その層間にエレクトレット層と補強ネットが挟持され、各層間が絡合により一体化されている少なくとも4層以上からなるエレクトレットシートと、活性炭を含有するガス吸着層を難燃化布帛で挟持した脱臭シートとを、前記脱臭シートが前記エレクトレットシートの補強ネット側の長繊維不織布面に積層した構造からなるフィルタ材とし、前記フィルタ材をプリーツ加工して得られる空気清浄用フィルタであって、前記エレクトレットシートの補強ネット側の長繊維不織布と前記脱臭シートとの間が接着されていない空気清浄用フィルタ。
2.前記補強ネットの空気流入部の開口面積が50〜99%である上記1に記載の空気清浄用フィルタ。
3.前記補強ネットの厚みが0.1〜2mmである上記1または2に記載の空気清浄用フィルタ。
本発明による空気清浄用フィルタは、ガスと微粒子の両成分の除去が可能であり、難燃性に優れる。さらには、エレクトレットシートの外層と脱臭シートとの間を接着させずに十分な距離を持たせるようにしていること、およびエレクトレットシートを熱処理せず交絡により一体化することにより、エレクトレット層と補強ネットを接着していないことから、粉塵捕集量が極めて高い。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の空気清浄用フィルタは、両外層が長繊維不織布であり、その層間にエレクトレット層と補強ネットが挟持され、各層間が絡合により一体化されている少なくとも4層以上からなるエレクトレットシートと、活性炭を含有するガス吸着層を難燃化布帛で挟持した脱臭シートとを、脱臭シートがエレクトレットシートの補強ネット側の長繊維不織布面に積層された構造からなるフィルタ材をプリーツ加工して得られる空気清浄用フィルタであって、エレクトレットシートの補強ネット側の長繊維不織布と脱臭シートとの間が接着することなく積層した後に、プリーツ状に一体成形したフィルタである。
本発明のエレクトレットシートは、両外層の長繊維不織布の間に、エレクトレット層と補強ネットが挟持された一体化された少なくとも4層以上からなる。各層は絡合により一体化されている。ここで言う絡合による一体化とは、ニードルパンチ法やウォーターパンチ法等の機械交絡による一体化を意味しており、接着剤や熱接着繊維等を使用した接着による一体化を含まないものである。
本発明のエレクトレットシートに使用される長繊維不織布としては、濾過性能を阻害しない程度に低圧損であることが好ましい。長繊維不織布を構成する繊維の繊維径は10〜50μmが好ましく、20〜35μmがより好ましい。目付量は5〜50g/mが好ましく、10〜30g/mがより好ましい。繊維径が10μmより小さい場合や目付量が50g/mより大きい場合、通気抵抗が高くなり好ましくない。また、繊維径が50μmより大きい場合、繊維本数が少なくなり交絡が弱くなり、プリーツ加工時の加工性が悪くなるため、好ましくない。目付量が5g/mより小さい場合、絡合時のシート強度が不足し、シート切れ、シワの発生やプリーツ加工時の加工性が悪くなるため、好ましくない。
長繊維不織布の製造方法は特に限定されず、スパンボンド法やメルトブロー法を用いることができる。
長繊維不織布を構成する繊維素材は特に限定されず、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系合成繊維を単一あるいは芯鞘状に複合して用いることができる。
本発明のエレクトレットシートに使用される補強ネットは、エレクトレットシートに剛性を付与し、形状保持性、プリーツ加工性を向上させるとともに、エレクトレットシート間に間隙を作って粉塵捕集量を増大させるためのものである。
補強ネットの空気流入部の開口面積率が50〜99%であることが好ましく、70〜97%がより好ましい。開口面積率が50%未満では、有効濾過面積が減少し、圧力損失が高くなる問題が生じうる。また、99%を越えると、フィルタに十分な剛性を付与できず、形状保持性に問題が生じうる。
補強ネットの厚みは0.01〜2.0mmであることが好ましく、0.03〜1.0mmであることがより好ましい。厚みが0.01mm未満では、布帛間の間隔が小さくなり、十分に高い粉塵捕集量が得られない。また、2.0mmを越えると、プリーツ加工時の加工性が悪くなる。ここで厚みとは、補強ネットに7g/cmの荷重をかけた時の厚みのことである。
補強ネットの目付は、10〜100g/mであることが好ましく、20〜50g/mであることがより好ましい。目付が10g/m未満では、布帛間の間隙が小さくなり、十分に高い粉塵捕集量が得られなくなる。また、100g/mを越えると、プリーツ加工時の加工性が悪くなる。
本発明のエレクトレットシートに使用されるエレクトレット層は、繊維断面形状が丸断面短繊維で構成されていることが好ましく、例えばフィルムスプリット繊維のような矩形断面であると繊維同士の接触により、有効濾過面積の減少および粉塵負荷時の粉塵保持空間の減少が生じる。繊維断面形状は断面の外周部に直線部を有さない形状であれば、繊維同士の接触による有効面積が小さくならないので好ましい。本願発明でいう丸断面とは、真円に限定されず楕円形を含むものである。
エレクトレット層を構成する繊維素材は特に限定されず、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂を用いることができる。
エレクトレット層の製造方法としては、機械交絡法により得られる短繊維不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布等を用いることができる。
エレクトレット層の目付は5〜100g/mであることが好ましく、25〜70g/mであることがより好ましい。目付が5g/m未満では、エレクトレットシートの強度が弱くなり、プリーツ加工時に破れ等が生じうる。また、100g/mを越えると、プリーツ加工時の加工性が悪くなる。
エレクトレット層の厚みは0.01〜2.5mmであることが好ましく、0.03〜2.0mmであることがより好ましい。厚さが0.01mm未満では、同様に、エレクトレットシートの強度が弱くなりプリーツ加工時に破れ等が生じうる。また、2.5mmを越えると、プリーツ加工時の加工性が悪くなる。ここで厚みとは、布帛に7g/cmの荷重をかけた時の厚みのことである。
エレクトレット層のエレクトレット化方法は特に限定されず、コロナ荷電法、摩擦帯電法、流体摩擦荷電法等のエレクトレット化法を広く用いることができる。なかでも、摩擦帯電法は空隙率が高い濾材を高帯電量でエレクトレット化できるので好ましい。摩擦帯電法を用いる場合は、エレクトレット層中にポリエステル系繊維を少なくとも20質量%とポリオレフィン系繊維を少なくとも30質量%含んでなり、該エレクトレット層中にリン原子および/またはイオウ原子が300ppm以上含有されていることが好ましい。これらリン原子および/またはイオウ原子は、ホスフィン酸化合物および/またはスルホン酸化合物としてポリエステル分子鎖と共重合して存在していることが好ましい。このようなエレクトレット層は、例えば特開2005−296825号公報に開示されているような公知の方法にて作成することができ、難燃性と濾過性能に優れる。
なお、エレクトレット層のエレクトレット化は、後述するエレクトレットシートを構成する各層を一体化する際の絡合方法であるニードルパンチ法による摩擦帯電方法でエレクトレット化するものが好ましい。
本発明のエレクトレットシートは、その構成に補強ネットを含むことにより、プリーツ加工時の加工性が向上する。また、エレクトレット層を含むことにより、高い粉塵捕集効率を実現することができる。さらに、一体化が接着ではなく、絡合によりなされていることにより、補強ネットとエレクトレット層が接着されていないため、有効濾過面積の減少および粉塵負荷時の粉塵保持空間が減少することがなく、粉塵捕集効率が低下してしまうことがない。加えて、各層不織布の繊維間の接着や層間の接合に接着剤が用いられていないため、絡合時の接着剤の脱落物質の発生や接着剤からの揮発性有機化合物の発生がないという特徴がある。
エレクトレットシートを構成するエレクトレット層、補強ネットおよび長繊維不織布を一体化する絡合方法としては、ニードルパンチ法やウォーターパンチ法を単独または組み合わせて利用できる。水流交絡法を実施する場合は、液体によるエレクトレットの消失を防止するために、エレクトレット化工程の前に水流交絡を実施するのが好ましい。
本発明における脱臭シートは、活性炭を含有するガス吸着層を難燃化布帛で挟持した構造である。かかる積層構造により、通常使用時に活性炭粒子の脱落を低減させることができる。
脱臭シートを構成する難燃化布帛は、特に限定されないが、例えば、不織布、編物、または織物を難燃化したものを使用することができる。活性炭の脱落防止の観点から、活性炭の粒径よりも小さい目合いのものが好ましい。
不織布としては、例えば、レーヨン繊維、ポリプロピレン繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維から作られることができ、製造コストや入手容易性の面から、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維から作られることが好ましい。また、不織布の製造法としては、乾式法、スパンボンド法、メルトブロー法、サーマルボンド法、ケミカルボンド法、ニードルパンチ法、スパンレース法(水流絡合法)等が使用できる。
布帛を難燃化する手法としては、一般的な手法を用いることができる。例えば、難燃剤を布帛に添着する方法や、布帛の構成繊維に難燃剤を練りこむ方法等を使用することができる。使用する難燃剤は、特に限定されないが、リン酸アルミニウム、縮合リン酸アミド、ポリリン酸メラミン等のリン系難燃剤、メラミンシアヌレート等の窒素系難燃剤、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物等を使用することができる。これらの中では難燃効果の面からリン系難燃剤が好ましい。
難燃化布帛の目付と厚みは、特に限定されないが、目付は10〜100g/m、厚みは0.05〜3mmであることが好ましい。目付が10g/m未満では、脱臭シート製造時に活性炭が布帛から脱落してしまい、100g/mを越えると、加工性が悪くなる。また、厚みが3mmを越えると、活性炭層形成時の取り扱い性が悪くなる可能性がある。ここで布帛の厚みは、7g/cm荷重で測定した厚みを指す。
難燃化布帛中に含有される難燃剤量は5〜50g/mであることが好ましい。5g/m未満では、十分な難燃性が得られない。50g/mを越えると、難燃剤量が多すぎるため、難燃剤が脱落し、加工性が悪くなる。
本発明の脱臭シートを構成するガス吸着層に使用する活性炭は、有害ガス成分を除去できれば特に限定されない。例えば、石炭系活性炭、ヤシ殻系活性炭、木質系活性炭等を使用することができる。活性炭粒子の比表面積は、500g/m以上が好ましく、800〜2500g/mがより好ましい。比表面積が500g/m未満ではガスの除去性能が低くなる。
活性炭の平均粒子直径は、特に限定されないが、50〜800μmであることが好ましい。平均粒子直径が50μm未満では、粉塵等が生じるため取り扱い性が悪くなり、800μmを越えると、活性炭層の形成が困難になる可能性がある。
活性炭の含有量は、30〜500g/mであることが好ましく、50〜400g/mがより好ましいある。活性炭の含有量が30g/m未満では、トルエン等の有害ガスの除去性能が低く、500g/mを越えると、ガス吸着層形成時の取り扱い性が悪くなる可能性がある。
本発明のガス吸着層中に含まれる活性炭以外の成分に関しては、特に限定されないが、熱可塑性樹脂バインダー粒子が含まれることが好ましい。熱可塑性樹脂バインダー粒子は、ガス吸着層中に含有される各成分を互いに接着し、通常使用時の活性炭の脱落を防止やガス吸着層形成時の取り扱い性を向上させる役割を有するものである。例えば、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン樹脂、ポロプロピレン樹脂など)、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル、尿素系樹脂、アクリル樹脂等の公知の熱可塑性樹脂を使用することができる。これらの樹脂の中では、コスト及び入手容易性の面からポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。
熱可塑性樹脂バインダー粒子の平均粒子直径は、特に限定されないが、1.0〜100μmであることが好ましく、5.0〜50μmであることがより好ましい。平均粒子直径が1.0μm未満であると、粉塵等が生じるため取り扱い性が悪くなり、100μmを越えると、活性炭と均一に混合しない可能性がある。
ガス吸着層中の熱可塑性樹脂バインダー粒子の含有量は、活性炭粒子100重量部に対して1〜50重量部であることが好ましく、5〜30重量部であることがより好ましい。熱可塑性樹脂バインダー粒子の含有量が1重量部未満では、活性炭の固着が弱く取り扱い性が悪くなり、50重量部を越えると、燃焼時に熱可塑性樹脂バインダーが燃焼物として作用するため、十分な難燃性を得ることができない。
ガス吸着層中に含まれる、活性炭、熱可塑性樹脂バインダー以外の成分に関しては、特に限定されない。空気清浄用フィルタの難燃性を高めるために、ガス吸着層中に難燃剤を含有することが好ましい。使用される難燃剤は、特に限定されないが、リン酸アルミニウム、縮合リン酸アミド、ポリリン酸メラミン等のリン系難燃剤、メラミンシアヌレート等の窒素系難燃剤、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物等を使用することができる。これらの中では難燃効果の面からリン系難燃剤が好ましい。難燃剤の平均粒子直径は、特に限定されないが、1.0〜100μmであることが好ましく、1.0〜50μmであることがより好ましい。平均粒子直径が1.0μm未満では、粉塵等が生じるため取り扱い性が悪くなり、100μmを越えると、活性炭と均一に混合しない可能性がある。ガス吸着層中の難燃剤の含有量は、活性炭粒子100重量部に対して1〜50重量部であることが好ましい。より好ましくは、3〜20重量部である。難燃剤の含有量が少ないと、難燃剤の効果を十分に発揮できず、多すぎると活性炭層形成時の取り扱い性が悪くなる可能性がある。
本発明の空気清浄用フィルタは、エレクトレットシートの補強ネット側の長繊維不織布面側に、活性炭を含有するガス吸着層を難燃化布帛で挟持した脱臭シートを、接着することなく積層することにより、シート間に大きな間隙が生まれ、その結果、粉塵捕集量が高くなることを本発明者は見出したことにより初めて得られたものである。
脱臭シートがエレクトレットシートの補強ネット側の長繊維不織布面側に積層されていない場合、補強ネットがシート間のスペーサーの役割を果たさないため、粉塵捕集量が低くなってしまう。また、エレクトレットシートの補強ネット側の長繊維不織布と脱臭シートが接着により積層されている場合は、シート間の間隙が小さくなり、十分に高い粉塵捕集量が得られないという問題が生じる。ここでいう接着していないとは、フィルタの周囲部分を除く部分、すなわち空気流入部において接着していないことを意味する。
エレクトレットシートの補強ネット側の長繊維不織布面側に、活性炭を含有するガス吸着層を難燃化布帛で挟持した脱臭シートを接着することなく積層することは、フィルタ材の空気流入部の布帛間で十分な間隙を生じさせる上、フィルタ材をプリーツ加工したときにプリーツの頂部または谷部付近の布帛間に間隙を生じさせ、その結果得られるこれらの間隙により粉塵捕集量を従来より格段に増大させることができる。
他の特徴としては、エレクトレットシートの補強ネットの積層方法に絡合を用いた点である。熱接着による積層では、エレクトレットシートの有効濾過面積の減少および粉塵負荷時の粉塵保持空間が減少し、結果として、十分に高い粉塵捕集量が得られないが、絡合により補強ネットを積層した場合は、熱接着した場合と比較して、エレクトレットシート部の粉塵捕集量をより一層増大させることができる。
本発明におけるフィルタ材のプリーツ加工には、一般的なひだ折り機を使用することができる。例えば、レシプロ方式やロータリー方式の折機を使用することができる。
以下、実施例によって本発明の作用効果をより具体的に示す。下記実施例は本発明方法を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に沿って設計変更することはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
[粉塵捕集量の測定方法]
150×150mmサイズのフィルタサンプルに、風速0.5m/sで、粉塵濃度0.5g/mのJIS15種粉塵を負荷し、粉塵負荷前の圧力損失[mmAq]を測定し、そこから圧力損失が50mmAq増加した所で、粉塵の負荷を停止する。粉塵負荷停止時の粉塵捕集量[g]を測定した。
[平均繊維直径の測定方法]
走査型電子顕微鏡(日立製作所製、S−3500)を使用して、布帛を構成する繊維の直径を100点測定し、それを相加平均して、布帛の平均繊維直径を求めた。
[難燃性の試験方法]
ULで定めるUL94試験法に基づいて評価した(UL94:Standard for Safety Tests for Flammability of Plastic Materials for Parts in Devices and Appliances. Horizontal Burning Foamed Material Test;94HF−1,or 94HF−2)。そして、UL94試験法に定められた有炎燃焼時間、無炎燃焼時間、燃焼距離、脱脂綿の燃焼の有無から燃焼性のグレードを求め、定められた基準に基づいて判定し、94HF−1以上を合格と判定した。
[エレクトレットシートAの作製方法]
リンを含有する難燃性の丸断面ポリエステル短繊維(繊度1.7dtex、繊維長44mm)と丸断面ポリプロピレン繊維(繊度2.2dtex、繊維長51mm)を1:1の重量比で混綿、カーディングして目付25g/mの混繊ウェブ(a)を作製し、これにポリプロピレンスパンボンド不織布(b)(目付15g/m、繊度5.5dtex)を積層後、3MPaの高圧水を連続的に噴霧して交絡させると同時に油剤を除去、乾燥し積層体(c)を作成した。前記積層体(c)のスパンボンド不織布(b)の反対側に、ポリプロピレン製ネット(目付55g/m、繊度1444dtex、目開き3×5mm)とポリプロピレンスパンボンド不織布(b)をポリプロピレンスパンボンド不織布(b)が最外層に来るように積層し、針密度50本/cmにてニードルパンチ処理を行い、摩擦帯電と交絡を同時に行って、総目付110g/mのエレクトレットシートAを作製した。ニードルパンチ処理時の温湿度は、27℃、55RH%とした。
[エレクトレットシートBの作製方法]
リンを含有する難燃性の丸断面ポリエステル短繊維(繊度1.7dtex、繊維長44mm)と丸断面ポリプロピレン繊維(繊度2.2dtex、繊維長51mm)を1:1の重量比で混綿、カーディングして目付45g/mの混繊ウェブ(a)を作製し、これにポリプロピレンスパンボンド不織布(b)(目付15g/m、繊度5.5dtex)を積層後、3MPaの高圧水を連続的に噴霧して交絡させると同時に油剤を除去、乾燥し積層体(c)を作成した。前記積層体(c)のスパンボンド不織布(b)の反対側に、ポリプロピレン製ネット(目付55g/m、繊度1444dtex、目開き3×5mm)とポリプロピレンスパンボンド不織布(b)をポリプロピレンスパンボンド不織布(b)が最外層に来るように積層し、針密度50本/cmにてニードルパンチ処理を行い、摩擦帯電と交絡を同時に行って、総目付130g/mのエレクトレットシートBを作製した。ニードルパンチ処理時の温湿度は、27℃、55RH%とした。
[エレクトレットシートCの作製方法]
リンを含有する難燃性の丸断面ポリエステル短繊維(繊度1.7dtex、繊維長44mm)と丸断面ポリプロピレン繊維(繊度2.2dtex、繊維長51mm)を1:1の重量比で混綿、カーディングして目付65g/mの混繊ウェブ(a)を作製し、これにポリプロピレンスパンボンド不織布(b)(目付15g/m、繊度5.5dtex)を積層後、3MPaの高圧水を連続的に噴霧して交絡させると同時に油剤を除去、乾燥し積層体(c)を作成した。前記積層体(c)のスパンボンド不織布(b)の反対側に、ポリプロピレン製ネット(目付55g/m、繊度1444dtex、目開き3×5mm)とポリプロピレンスパンボンド不織布(b)をポリプロピレンスパンボンド不織布(b)が最外層に来るように積層し、針密度50本/cmにてニードルパンチ処理を行い、摩擦帯電と交絡を同時に行って、総目付150g/mのエレクトレットシートCを作製した。ニードルパンチ処理時の温湿度は、27℃、55RH%とした。
[難燃化布帛Dの作製方法]
ポリエステル製スパンレース不織布(目付30g/m、厚み0.45mm、平均繊維直径20μm)にリン系難燃剤であるホスコンFR903N(明成化学工業社製)を塗布・乾燥し、難燃剤が15g/m付着した難燃化布帛Dを作製した。
[脱臭シートEの作製方法]
難燃化布帛D上に、活性炭(比表面積1460g/m、平均粒子直径520μm)100重量部、熱可塑性樹脂バインダー粒子(平均粒子直径20μm、ポリエチレン樹脂)10重量部を混合したものを散布してガス吸着層を形成し、このガス吸着層の上に難燃化布帛Dを重ねた後、これを140℃に熱した鉄板の間に挟み込んで1分間ヒートプレスを行い、熱可塑性樹脂バインダー粒子によってガス吸着層を固着させ、脱臭シートEを作製した。この時、脱臭シートに含有される活性炭量は112g/mであった。
[脱臭シートFの作製方法]
難燃化布帛D上に、活性炭(比表面積1460g/m、平均粒子直径520μm)100重量部、熱可塑性樹脂バインダー粒子(平均粒子直径20μm、ポリエチレン樹脂)10重量部、リン系難燃剤(平均粒子直径10μm、ポリリン酸アルミ)5重量部を混合したものを散布してガス吸着層を形成し、このガス吸着層の上に難燃化布帛Dを重ねた後、これを140℃に熱した鉄板の間に挟み込んで1分間ヒートプレスを行い、熱可塑性樹脂バインダー粒子によってガス吸着層を固着させ、脱臭シートFを作製した。この時、脱臭シートに含有される活性炭量は117g/mであった。
[脱臭シートGの作製方法]
ポリエステル製スパンレース不織布(目付30g/m、厚み0.45mm、平均繊維直径20μm)上に、活性炭(比表面積1460g/m、平均粒子直径520μm)100重量部、熱可塑性樹脂バインダー粒子(平均粒子直径20μm、ポリエチレン樹脂)10重量部を混合したものを散布してガス吸着層を形成し、このガス吸着層の上に難燃化布帛Dを重ねた後、これを140℃に熱した鉄板の間に挟み込んで1分間ヒートプレスを行い、熱可塑性樹脂バインダー粒子によってガス吸着層を固着させ、脱臭シートGを作製した。この時、脱臭シートに含有される活性炭量は115g/mであった。
<実施例1>
エレクトレットシートAの補強ネット側の長繊維不織布面に脱臭シートEを実質的に接着することなく積層し、一般的なひだ折り機を使用し、山高さ20mm、ピッチ10mmで共プリーツ加工を行い、150×150mmサイズのフィルタサンプルを作成した。
<実施例2>
エレクトレットシートBの補強ネット側の長繊維不織布面に脱臭シートFを実質的に接着することなく積層し、一般的なひだ折り機を使用し、山高さ20mm、ピッチ10mmで共プリーツ加工を行い、150×150mmサイズのフィルタサンプルを作成した。
<実施例3>
エレクトレットシートCの補強ネット側の長繊維不織布面に脱臭シートFを実質的に接着することなく積層し、一般的なひだ折り機を使用し、山高さ20mm、ピッチ10mmで共プリーツ加工を行い、150×150mmサイズのフィルタサンプルを作成した。
<比較例1>
エレクトレットシートBの補強ネット側の長繊維不織布面に脱臭シートGを実質的に接着することなく積層し、一般的なひだ折り機を使用し、山高さ20mm、ピッチ10mmで共プリーツ加工を行い、150×150mmサイズのフィルタサンプルを作成した。
<比較例2>
エレクトレットシートBの補強ネット側の長繊維不織布面に脱臭シートEを積層した後、熱処理を施し、エレクトレット化シートと脱臭シートEを熱接着させた。さらに、一般的なひだ折り機を使用し、山高さ20mm、ピッチ10mmで共プリーツ加工を行い、150×150mmサイズのフィルタサンプルを作成した。
<比較例3>
エレクトレットシートBに熱処理を施し、補強ネット、エレクトレット層、長繊維不織布を熱接着させたエレクトレットシートHを作製した。そして、エレクトレットシートHの補強ネット側の長繊維不織布面に脱臭シートEを実質的に接着することなく積層し、一般的なひだ折り機を使用し、山高さ20mm、ピッチ10mmで共プリーツ加工を行い、150×150mmサイズのフィルタサンプルを作成した。
<比較例4>
前記エレクトレットシートBの作製方法の補強ネットを使用しない他は同条件にて、エレクトレットシートJを作製した。そして、エレクトレットシートJと脱臭シートEを実質的に接着することなく積層し、一般的なひだ折り機を使用し、山高さ20mm、ピッチ10mmで共プリーツ加工を行い、150×150mmサイズのフィルタサンプルを作成した。
実施例1〜3、比較例1〜4で得られたサンプルについて、エレクトレットシートのエレクトレット層側の長繊維不織布面を上流とし、粉塵捕集量を測定し、難燃性の試験を実施した。結果を表1に示す。表1より明らかなように、本発明の実施例1〜3は、脱臭シートにおけるガス吸着層が難燃化布帛によって挟持されていない場合(比較例1)と比べて、難燃性が優れていることが分かる。また、本発明の実施例1〜3と布帛の層間が熱接着されている場合(比較例2)、エレクトレットシートが熱処理されている場合(比較例3)、およびエレクトレットシートが補強材を含有しない場合(比較例4)と比べて、粉塵捕集量が大きくなっていることが分かる。
本発明による空気清浄用フィルタは、ガスと微粒子の両成分の除去が可能であり、難燃性に優れる。さらには、エレクトレットシートの外層と脱臭シートとの間を接着させずに十分な距離を持たせるようにしていること、およびエレクトレットシートを熱処理せず交絡により一体化することにより、エレクトレット層と補強ネットを接着していないことから、粉塵捕集量が極めて高い。そのため、コピー機、プリンター、コンピュータ、プロジェクター等の電子機器、および、車載用フィルタや空気清浄機等の家庭電化製品に用いられる粉塵用フィルタ等に好適に使用でき、産業界への寄与大である。

Claims (3)

  1. 両外層が長繊維不織布であり、その層間にエレクトレット層と補強ネットが挟持され、各層間が絡合により一体化されている少なくとも4層以上からなるエレクトレットシートと、活性炭を含有するガス吸着層を難燃化布帛で挟持した脱臭シートとを、前記脱臭シートが前記エレクトレットシートの補強ネット側の長繊維不織布面に積層した構造からなるフィルタ材とし、前記フィルタ材をプリーツ加工して得られる空気清浄用フィルタであって、前記エレクトレットシートの補強ネット側の長繊維不織布と前記脱臭シートとの間が接着されていない空気清浄用フィルタ。
  2. 前記補強ネットの空気流入部の開口面積が50〜99%である請求項1に記載の空気清浄用フィルタ。
  3. 前記補強ネットの厚みが0.1〜2mmである請求項1または2に記載の空気清浄用フィルタ。
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