JP2016111049A - 光電変換素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】色素の光吸収を抑え、色彩性を損なわずに意匠性に優れるとともに、高効率の光電変換素子を提供する。【解決手段】半導体電極と、対向電極と、前記電極間に保持された電解質層とを備えた光電変換素子であって前記電解質層が、酸化還元対として、1つ以上のフッ素原子で置換されたアルキル基を分子構造中に1つ以上有するベンゾキノン誘導体、及び1つ以上のフッ素原子で置換されたアルキル基を分子構造中に1つ以上有するヒドロキノン誘導体をそれぞれ2mM〜1800mM含有し、添加剤としてアンモニウム塩を4mM〜3600mM含有する光電変換素子。【選択図】図1
Description
本発明は、色素増感太陽電池用の光電変換素子に関する。
次世代の太陽電池として、低温でより低コストで製造が可能な有機太陽電池の開発が期待されている。有機太陽電池の中でも色素増感太陽電池は、製造コストを大幅に削減できる可能性があること、アモルファスシリコン太陽電池と同等な性能を持つこと、着色透明な太陽電池が作れることなど、従来の太陽電池にはない魅力を持つことから、特に注目を浴びている。
色素増感太陽電池は、一般に導電性基材上に色素を吸着した半導体からなる光電変換層を持つ半導体電極と、対向して設けられた導電性基材上に触媒層を設けた対向電極と、これら半導体電極と対向電極との間に保持された電解質層から構成されている。電解質層には、ヨウ素系酸化還元対を有機溶媒に溶かしたものが一般的に使用されている。ヨウ素系酸化還元対はイオン伝導度が高く、また酸化状態の色素を還元する速度が速く、更には、作用極の導電性ガラス表面や酸化チタン表面での反応性が低いなど、優れた性能を有している。
しかしながら、ヨウ素系電解質は、下記のような問題点がある。
(1)高い揮発性を有するため、封止が非常に難しい。
(2)高い腐食性を有するため、電極材料が限られている。
(3)可視光領域に非常に大きな吸収度係数を示し、色素の光吸収が阻害されて性能低下が起こる。
(4)太陽電池の意匠性を強調する場合、ヨウ素の色が妨げとなり色素の鮮やかさを十分に生かすことができない。
(1)高い揮発性を有するため、封止が非常に難しい。
(2)高い腐食性を有するため、電極材料が限られている。
(3)可視光領域に非常に大きな吸収度係数を示し、色素の光吸収が阻害されて性能低下が起こる。
(4)太陽電池の意匠性を強調する場合、ヨウ素の色が妨げとなり色素の鮮やかさを十分に生かすことができない。
そこで、ヨウ素系電解質に代わる酸化還元対として、臭素系、硫黄系、セレン系、鉄錯体系、コバルト錯体系、ベンゾキノン/ヒドロキノン系、(SCN)−/(SCN)2系、(SeCN)−/(SeCN)2系等も開発されており、本出願人も特許文献1、2において、ベンゾキノン誘導体、ヒドロキノン誘導体及びアンモニウム塩を含有した電解質層を備える光電変換素子を提案している。このような電解質により、色素の光吸収を抑え、色彩性を損なうことなく意匠性を向上させることができる。
しかしながら、従来の光電変換素子では変換効率が低かったり、安定性や安全性が懸念されるなど、必ずしも実用性が高いとは言えない。そこで、本発明は、色素の光吸収を抑え、色彩性を損なわずに意匠性に優れるとともに、高効率で耐久性にも優れる光電変換素子を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明は下記の光電変換素子を提供する。
(1)半導体電極と、対向電極と、前記電極間に保持された電解質層とを備えた光電変換素子であって、
前記電解質層が、酸化還元対として、1つ以上のフッ素原子で置換されたアルキル基を分子構造中に1つ以上有するベンゾキノン誘導体(以下「フッ素含有ベンゾキノン誘導体」)、及び1つ以上のフッ素原子で置換されたアルキル基を分子構造中に1つ以上有するヒドロキノン誘導体(以下「フッ素含有ヒドロキノン誘導体」)をそれぞれ2mM〜1800mM含有し、添加剤としてアンモニウム塩を4mM〜3600mM含有することを特徴とする光電変換素子。
(2)アンモニウム塩が、下記一般式(B)で表される基本骨格を有することを特徴とする請求項1記載の光電変換素子。
NH4 +X− ・・・(B)
(式中、X−は無機アニオンまたは有機アニオンである。)
(1)半導体電極と、対向電極と、前記電極間に保持された電解質層とを備えた光電変換素子であって、
前記電解質層が、酸化還元対として、1つ以上のフッ素原子で置換されたアルキル基を分子構造中に1つ以上有するベンゾキノン誘導体(以下「フッ素含有ベンゾキノン誘導体」)、及び1つ以上のフッ素原子で置換されたアルキル基を分子構造中に1つ以上有するヒドロキノン誘導体(以下「フッ素含有ヒドロキノン誘導体」)をそれぞれ2mM〜1800mM含有し、添加剤としてアンモニウム塩を4mM〜3600mM含有することを特徴とする光電変換素子。
(2)アンモニウム塩が、下記一般式(B)で表される基本骨格を有することを特徴とする請求項1記載の光電変換素子。
NH4 +X− ・・・(B)
(式中、X−は無機アニオンまたは有機アニオンである。)
本発明の光電変換素子では、電解質層に含まれるフッ素含有ヒドロキノン誘導体/フッ素含有ベンゾキノン誘導体と、アンモニウム塩との混合電解質が、高い性能・安定性を有するだけでなく、ヨウ素系電解質層と比べて薄色で、色彩性を損なわないため意匠性に優れ、更には変換効率が大きく向上する。
以下に、本発明の光電変換素子に関して、図面を参照して詳細に説明する。
図1は光電変換素子Aを示す断面図であるが、透明基体1の一方の面に透明導電膜2を形成し、更にその表面に半導体層3を一体化してなる半導体電極8と、電極基材7の一方の面に触媒層6を形成した対向電極9とを、透明電極膜2と触媒層6とが対向するように離間して配置し、半導体電極8と対向電極9との間に電解質層5を介在させた構成となっている。また、半導体層3には増感色素4が吸着される。下記に、各構成要素について詳説する。
〔透明基体1〕
透明基体1は、可視光を透過するものが使用でき、透明なガラスが好適に利用できる。また、透明導電膜2が形成される側の表面を加工して入射光を散乱させることで、高効率で入射光を利用することができる。また、ガラスに限らず、光を透過するものであればプラスチック板やプラスチックフィルム等も使用できる。
透明基体1は、可視光を透過するものが使用でき、透明なガラスが好適に利用できる。また、透明導電膜2が形成される側の表面を加工して入射光を散乱させることで、高効率で入射光を利用することができる。また、ガラスに限らず、光を透過するものであればプラスチック板やプラスチックフィルム等も使用できる。
透明基体1の厚さは、光電変換素子Aの形状や使用条件により異なるため特に限定はされないが、例えばガラスやプラスチックなどを用いた場合では、実使用時の耐久性を考慮して1mm〜1cm程度が好ましく、フレキシブル性が必要とされ、プラスチックフィルムなどを使用した場合は、1μm〜1mm程度が好ましい。
〔透明導電膜2〕
透明導電膜2には、可視光を透過して、かつ導電性を有する材料が使用できる。このような材料としては、例えば金属酸化物が挙げられる。特に限定はされないが、例えばフッ素をドープした酸化スズ(以下、「FTO」と略記する。)や、酸化スズと酸化インジウムの混合体(以下、「ITO」と略記する。)、アンチモンをドープした酸化スズ、酸化亜鉛などが好適に用いることができる。
透明導電膜2には、可視光を透過して、かつ導電性を有する材料が使用できる。このような材料としては、例えば金属酸化物が挙げられる。特に限定はされないが、例えばフッ素をドープした酸化スズ(以下、「FTO」と略記する。)や、酸化スズと酸化インジウムの混合体(以下、「ITO」と略記する。)、アンチモンをドープした酸化スズ、酸化亜鉛などが好適に用いることができる。
また、分散させるなどの処理により可視光が透過すれば、不透明な導電性材料を用いることもできる。このような材料としては炭素材料や金属が挙げられる。炭素材料としては、特に限定はされないが、例えば黒鉛(グラファイト)、カーボンブラック、グラッシーカーボン、カーボンナノチューブやフラーレンなどが挙げられる。また、金属としては、特に限定はされないが、例えば白金、金、銀、ルテニウム、銅、アルミニウム、ニッケル、コバルト、クロム、鉄、モリブデン、チタン、タンタル、およびそれらの合金などが挙げられる。
透明導電膜2の厚さは、用いる材料により導電性が異なるため特には限定されないが、一般的に使用されるFTO被膜付ガラスでは、0.01μm〜5μmであり、好ましくは0.1μm〜1μmである。また、必要とされる導電性は、使用する電極の面積により異なり、広い電極ほど低抵抗であることが求められるが、一般的にシート抵抗(面抵抗率)で100Ω/□以下、好ましくは10Ω/□以下、より好ましくは5Ω/□以下である。このシート抵抗は、薄膜やフィルム状物質の電気抵抗値であり、単位はΩであるが、シートであることを示すため慣用的に「Ω/□(ohm/square)」と記述している。透明基体1及び透明導電膜2との積層体の厚さ、または透明基体1と透明導電膜2とを一体化した厚さは、上述のように光電変換素子Aの形状や使用条件により異なるため特に限定はされないが、一般的に1μm〜1cm程度である。
〔半導体層3〕
半導体層3は、増感色素4を吸着しやすいように多孔質の金属酸化物半導体からなる。金属酸化物半導体は特に限定はされないが、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズなどが挙げられ、特に二酸化チタン、さらにはアナターゼ型二酸化チタンが好適である。また、電気抵抗値を下げるため、金属酸化物の粒界は少ないことが望ましい。また、増感色素4をより多く吸着させるために、金属酸化物は比表面積の大きなものが望ましく、具体的には10〜200m2/gが望ましい。
半導体層3は、増感色素4を吸着しやすいように多孔質の金属酸化物半導体からなる。金属酸化物半導体は特に限定はされないが、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズなどが挙げられ、特に二酸化チタン、さらにはアナターゼ型二酸化チタンが好適である。また、電気抵抗値を下げるため、金属酸化物の粒界は少ないことが望ましい。また、増感色素4をより多く吸着させるために、金属酸化物は比表面積の大きなものが望ましく、具体的には10〜200m2/gが望ましい。
このような半導体層3は、既知の方法で透明導電膜2上に設けることができ、例として、ゾルゲル法や、分散体ペーストの塗布、また、電析や電着させる方法がある。また、半導体層3の厚さは、用いる酸化物により最適値が異なるため特には限定されないが、0.1μm〜50μm、好ましくは3〜30μmであり、より好ましくは5〜15μmである。
また、半導体層3は、図2に示すように、半導体層3の上に、より大径の金属酸化物からなる層(図中の符号3´)を積層し、入射光をこの層3´で散乱させて光路長を長くする「光封じ込め効果」を利用することもできる。この場合、半導体層3を形成する金属酸化物の平均粒径は100nm以下であることが好ましく、その上の層3´の金属酸化物の平均粒径を200nm〜700μmとすることが好ましい。尚、図の例ではこのような2層構造としているが、金属酸化物を、透明電極膜2の側から順次大径になるように積層し、より多層構造にすることもできる。この場合の半導体層の厚さは、用いる酸化物やその平均粒径により最適値が異なるが、透明電極膜2に最も小径の金属酸化物からなる層が5〜15μm、透明電極膜2から最も遠い金属酸化物からなる層が3〜10μmであることが好ましい。
〔増感色素4〕
増感色素4は半導体層3の金属酸化物に吸着、担持される。増感色素4としては、太陽光により励起されて半導体層3に電子注入できるものであればよく、一般的に光電変換素子に用いられている色素を用いることができるが、変換効率を向上させるためには、その吸収スペクトルが太陽光スペクトルと広波長域で重なっていて、耐光性が高いことが望ましい。増感色素4としては、金属錯体色素、例えば、ルテニウム錯体、鉄錯体、銅錯体などが挙げられる。さらに、シアン系色素、ポルフィリン系色素、ポリエン系色素、クマリン系色素、シアニン系色素、スクアリン酸系色素、メチン系色素、キサンテン系色素、インドリン系色素などが挙げられる。
増感色素4は半導体層3の金属酸化物に吸着、担持される。増感色素4としては、太陽光により励起されて半導体層3に電子注入できるものであればよく、一般的に光電変換素子に用いられている色素を用いることができるが、変換効率を向上させるためには、その吸収スペクトルが太陽光スペクトルと広波長域で重なっていて、耐光性が高いことが望ましい。増感色素4としては、金属錯体色素、例えば、ルテニウム錯体、鉄錯体、銅錯体などが挙げられる。さらに、シアン系色素、ポルフィリン系色素、ポリエン系色素、クマリン系色素、シアニン系色素、スクアリン酸系色素、メチン系色素、キサンテン系色素、インドリン系色素などが挙げられる。
〔電解質層5〕
電解質層5は、本発明では酸化還元対としてフッ素含有ベンゾキノン誘導体と、フッ素含有ヒドロキノン誘導体とを混合し、更にアンモニウム塩を添加して形成されている。
電解質層5は、本発明では酸化還元対としてフッ素含有ベンゾキノン誘導体と、フッ素含有ヒドロキノン誘導体とを混合し、更にアンモニウム塩を添加して形成されている。
<フッ素含有ベンゾキノン誘導体>
フッ素含有ベンゾキノン誘導体としては、下記一般式(A1)で表される基本骨格を有するものが好適である。
フッ素含有ベンゾキノン誘導体としては、下記一般式(A1)で表される基本骨格を有するものが好適である。
式中、Rf 1〜Rf 4は、水素原子、1つ以上のフッ素原子で置換されたアルキル基(フッ化アルキル基)または1つ以上のフッ素原子で置換されたアリール基(フッ化アリール基)であるが、少なくとも1つはフッ化アルキル基である。また、アルキル基、アリール基の種類に関しては特別限定されないが、有機溶媒への溶解性、共役長が伸びることで可視光の吸収が起こることを考慮すると、アルキル基の方が好ましい。
また、一般式(A1)の構造として単環式の芳香環のみならず、多環式芳香族のヒドロキノン誘導体も適用できる。多環式芳香族の種類に関しては特別限定されないが、有機溶媒への溶解性や、共役長が伸びることで可視光の吸収が起こることを考慮すると、縮合環数として3以下のものが好ましいと考えられる。縮合環数が3以下の化合物には、例えば、2つの環が縮合したナフトキノン誘導体や、3つの環が縮合したアントラキノン誘導体が挙げられ6。
電解質中のフッ素含有ベンゾキノン誘導体の濃度は、溶剤に対して2〜1800mMである。濃度が2mMより小さい場合、添加効果がほとんど得られなくなり、変換効率の向上はほとんど見られない。一方、濃度を1800mMより大きくしても、変換効率の向上はほとんど見られないだけではなく、フッ素含有ベンゾキノン誘導体の溶解度の問題から、ベンゾキノン誘導体が溶液中で析出してしまう虞がある。好ましい濃度は、10〜1000mMである。
<フッ素含有ヒドロキノン誘導体>
フッ素含有ヒドロキノン誘導体としては、下記一般式(A2)で表される基本骨格を有するものが好適である。
フッ素含有ヒドロキノン誘導体としては、下記一般式(A2)で表される基本骨格を有するものが好適である。
尚、式中のRf 1〜Rf 4は、上記したフッ素含有ベンゾキノン誘導体におけるRf 1〜Rf 4と同じである。
また、一般式(A2)の構造として単環式の芳香環のみならず、多環式芳香族のヒドロキノン誘導体も適用できる。多環式芳香族の種類に関しては特別限定されないが、有機溶媒への溶解性や、共役長が伸びることで可視光の吸収が起こることを考慮すると、縮合環数として3以下のものが好ましいと考えられる。縮合環数が3以下の化合物には、例えば、2つの環が縮合したナフトヒドロキノン誘導体や、3つの環が縮合したアントラヒドロキノン誘導体が挙げられる。
電解質層中のフッ素含有ヒドロキノン誘導体の濃度は、溶剤に対して2〜1800mMである。濃度が2mMより小さい場合、添加効果がほとんど得られなくなり、変換効率の向上はほとんど見られない。一方、濃度を1800mMより大きくしても、変換効率の向上はほとんど見られないだけではなく、フッ素含有ヒドロキノン誘導体の溶解度の問題から、ヒドロキノン誘導体が溶液中で析出してしまう虞がある。好ましい濃度は、フッ素含有ベンゾキノン誘導体と同じく10〜1000mMである。
また、フッ素含有ベンゾキノン誘導体と、フッ素含有ヒドロキノン誘導体とは、上記濃度であれば異なっていてもよいが、変換効率の高めるには同濃度であることが好ましい。
更に、電解質層5には、アンモニウム塩、好ましくは下記一般式(B)で表されるアンモニウム塩が添加される。
NH4 +X− ・・・(B)
NH4 +X− ・・・(B)
式中、X−は無機アニオンまたは有機アニオンであるが、有機溶媒への溶解性を考慮すると有機アニオンが好ましい。有機アニオンの種類に関しては、特別限定はされないが、酸解離定数が小さく、NH4 +が安定に存在できることから酢酸イオン、プロピオン酸イオン、安息香酸イオンなどに代表されるカルボン酸イオンが好ましい。また、無機アニオンとしては塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン等が挙げられる。
電解質層中のアンモニウム塩の濃度としては、溶媒に対して4mM〜3600mMの範囲である。濃度が4mMより小さい場合、アンモニウム塩の添加効果がほとんど得られなくなり、変換効率の向上はほとんど見られない。一方、濃度が3600mMより大きくしても、変換効率の向上はほとんど見られないだけではなく、溶解度の問題から、アンモニウム塩が溶液中で析出してしまう虞がある。好ましい濃度は、20〜2000mMである。
電解質層5に使用される溶媒としては、フッ素含有ヒドロキノン誘導体及びフッ素含有ベンゾキノン誘導体を溶解できる化合物であれば特に制限はなく、非水性有機溶媒、常温溶融塩、プロトン性有機溶媒等から任意に選択できるが、更にアンモニウム塩を溶解させるためにカルボン酸を溶解させた有機溶剤が好ましい。
例えば、有機溶媒として、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、パレロニトリル、3−メトキシプロピオニトリル等のニトリル化合物、γ−ブチルラクトンやパレロラクトン等のラクトン化合物、エチレンカーボネートやプロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、ジオキサンやジエチルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、低重合度ポリエチレングリコール等のエーテル類、メタノール、エタノール等のアルコール類、更にはジメチルホルムアミドやイミダゾール類等が挙げられ、中でもアセトニトリル、パレロニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、プロピレンカーボネート、低重合度ポリエチレングリコールなどを好適に用いることができる。
カルボン酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸を代表とする飽和カルボン酸、アクリル酸、メタクリル酸、2−エチルプロペン酸を代表とする不飽和カルボン酸、安息香酸、フタル酸等を代表とする、芳香族カルボン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸等のヒドロキシ酸等が例として挙げられる。
溶媒の組成は、アンモニウム塩を溶解することができればよいが、カルボン酸成分の添加量が多くなるほど変換効率が低下する傾向があるため、カルボン酸成分の添加量は可能な限り少ないことが好ましい。
更に、電解質層5には、支持電解質としてのリチウム塩やイミダゾリウム塩、4級アンモニウム塩、常温溶融塩等、逆電子移動防止剤としてのTBP(4−t−ブチルピリジン)、N−メチルイミダゾール、N−n−ブチルベンゾイミダゾール)等を添加することができる。これらの添加剤は、電解質層の特性を損ねない程度に添加することができる。また、適当なゲル化剤を添加することにより、化学的にゲル化させることもできる。
〔触媒層6〕
触媒層6としては、電解質層5のフッ素含有ベンゾキノン誘導体(酸化体)をフッ素含有ヒドロキノン誘導体(還元体)に還元する還元反応を速やかに進行させることが可能な電極特性を有するものであれば特に制限されないが、塩化白金酸を塗布、熱処理したものや、白金を蒸着した白金触媒電極、活性炭やグラッシーカーボン、カーボンナノチューブのような炭素材料、塩化コバルト等の無機硫黄化合物、ポリチオフェンやポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子等を使用できるが、中でも白金触媒電極、導電性高分子が好ましい。
触媒層6としては、電解質層5のフッ素含有ベンゾキノン誘導体(酸化体)をフッ素含有ヒドロキノン誘導体(還元体)に還元する還元反応を速やかに進行させることが可能な電極特性を有するものであれば特に制限されないが、塩化白金酸を塗布、熱処理したものや、白金を蒸着した白金触媒電極、活性炭やグラッシーカーボン、カーボンナノチューブのような炭素材料、塩化コバルト等の無機硫黄化合物、ポリチオフェンやポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子等を使用できるが、中でも白金触媒電極、導電性高分子が好ましい。
また、触媒層6の厚さは、5nm〜5μmが適当であり、特に好ましくは50nm〜2μmである。
〔電極基材7〕
電極基材7は、触媒層6の支持体兼集電体として用いられるため、表面部分に導電性を有していることが好ましく、例えば、金属として白金、金、銀、ルテニウム、銅、アルミニウム、ニッケル、コバルト、クロム、鉄、モリブデン、チタン、タンタル、およびそれらの合金や、炭素材料として、例えば黒鉛(グラファイト)、カーボンブラック、グラッシーカーボン、カーボンナノチューブ、フラーレン等、金属酸化物として、FTO、ITO、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化アンチモン等を用いることができる。また、表面が導電性を有するように処理すれば、ガラスやプラスチック等の絶縁体も用いることができる。
電極基材7は、触媒層6の支持体兼集電体として用いられるため、表面部分に導電性を有していることが好ましく、例えば、金属として白金、金、銀、ルテニウム、銅、アルミニウム、ニッケル、コバルト、クロム、鉄、モリブデン、チタン、タンタル、およびそれらの合金や、炭素材料として、例えば黒鉛(グラファイト)、カーボンブラック、グラッシーカーボン、カーボンナノチューブ、フラーレン等、金属酸化物として、FTO、ITO、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化アンチモン等を用いることができる。また、表面が導電性を有するように処理すれば、ガラスやプラスチック等の絶縁体も用いることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
(光電変換素子の作製)
以下のようにして、図1に示す構造の光電変換素子を作製した。
以下のようにして、図1に示す構造の光電変換素子を作製した。
〔半導体電極の作製〕
ジオマテック(株)製のITO膜付きガラス(スパッタ品)を必要なサイズに切り出し、ガラス洗浄剤で洗い、洗浄剤を純水で洗い流した後、アセトン、ヘキサン、アセトン、純水、純水の順番で各5分ずつ超音波洗浄を行った。乾燥後、UVオゾン洗浄機を用いて10分間仕上洗浄を行った後、70℃のTiCl4水溶液中に30分間浸漬した。浸漬後、純水で洗浄し、よく乾燥させた。そして、ITO膜表面に、TiO2ペースト(Ti−NanoxideD)をKコントロールコーター(松尾製作所製)で50μm程度の厚さに塗布し、30分程静置、乾燥させた。そして、80℃で30分、450℃で30分の順で大気中で焼成し、厚さ10μmの多孔質酸化チタンを有する半導体電極を得た。
ジオマテック(株)製のITO膜付きガラス(スパッタ品)を必要なサイズに切り出し、ガラス洗浄剤で洗い、洗浄剤を純水で洗い流した後、アセトン、ヘキサン、アセトン、純水、純水の順番で各5分ずつ超音波洗浄を行った。乾燥後、UVオゾン洗浄機を用いて10分間仕上洗浄を行った後、70℃のTiCl4水溶液中に30分間浸漬した。浸漬後、純水で洗浄し、よく乾燥させた。そして、ITO膜表面に、TiO2ペースト(Ti−NanoxideD)をKコントロールコーター(松尾製作所製)で50μm程度の厚さに塗布し、30分程静置、乾燥させた。そして、80℃で30分、450℃で30分の順で大気中で焼成し、厚さ10μmの多孔質酸化チタンを有する半導体電極を得た。
〔増感色素の吸着〕
増感色素として和光純薬工業(株)製「N719」(ジテトラブチルアンモニウム)−シス−ビス(イソチオシアナト)ビス(2,2´−ビピリジル−4,4′−ジカルボキシラート)−ルテニウム(II)〕)を用い、0.5mMのアセトニトリル/t−ブチルアルコール(体積比1:1)の混合溶媒に溶解して色素溶液とした。そして、色素溶液に上記の半導体電極を浸漬し、遮光下40℃程度で3時間静置した。その後、それぞれエタノールで余分な増感色素を洗浄し、風乾した。
増感色素として和光純薬工業(株)製「N719」(ジテトラブチルアンモニウム)−シス−ビス(イソチオシアナト)ビス(2,2´−ビピリジル−4,4′−ジカルボキシラート)−ルテニウム(II)〕)を用い、0.5mMのアセトニトリル/t−ブチルアルコール(体積比1:1)の混合溶媒に溶解して色素溶液とした。そして、色素溶液に上記の半導体電極を浸漬し、遮光下40℃程度で3時間静置した。その後、それぞれエタノールで余分な増感色素を洗浄し、風乾した。
〔対向電極の作製〕
実施例12では白金膜を形成し、それ以外では、ガラス基板上に導電性高分子膜(PEDOT)を形成した。
実施例12では白金膜を形成し、それ以外では、ガラス基板上に導電性高分子膜(PEDOT)を形成した。
・モノマー溶液の調製
導電性高分子膜の形成に当り、モノマー溶液を調製した。先ず、乾燥させた100mLメスフラスコに3,4−ジオキシチオフェンを284mL(2mmol)入れ、凍結脱気したアセトニトリルを50mL程度加えて溶解させた。そこへ、過塩素酸リチウムをエタノールで再結晶したものを1.06g(10mmol)加え、固体が溶けるまで振り混ぜた後、最後に全量が100mLになるようにアセトニトリルを加えてモノマー溶液を調整した。
導電性高分子膜の形成に当り、モノマー溶液を調製した。先ず、乾燥させた100mLメスフラスコに3,4−ジオキシチオフェンを284mL(2mmol)入れ、凍結脱気したアセトニトリルを50mL程度加えて溶解させた。そこへ、過塩素酸リチウムをエタノールで再結晶したものを1.06g(10mmol)加え、固体が溶けるまで振り混ぜた後、最後に全量が100mLになるようにアセトニトリルを加えてモノマー溶液を調整した。
・基体の洗浄
透明電極基板を必要なサイズに切り出し、ガラス洗浄剤でよく手洗いした後、洗浄剤を純水で洗い流し、アセトン、ヘキサン、アセトン、純水、純水の順で各5分ずつ超音波洗浄を行った。
透明電極基板を必要なサイズに切り出し、ガラス洗浄剤でよく手洗いした後、洗浄剤を純水で洗い流し、アセトン、ヘキサン、アセトン、純水、純水の順で各5分ずつ超音波洗浄を行った。
・電解重合
前記モノマー溶液に、作用極として4cm2の面積を有するFTO電極、対極として10cm2の面積を有する白金薄膜電極、参照電極として銀−銀イオン電極を導入し、Bio Logic社製ポテンシオスタット「SP−150」を用いて40μAで定電流電解重合を行った。重合後の作用極をアセトニトリルで洗浄した後、70℃で30分間乾燥し、FTO電極上に導電性高分子膜(PEDOT膜)を形成した。
前記モノマー溶液に、作用極として4cm2の面積を有するFTO電極、対極として10cm2の面積を有する白金薄膜電極、参照電極として銀−銀イオン電極を導入し、Bio Logic社製ポテンシオスタット「SP−150」を用いて40μAで定電流電解重合を行った。重合後の作用極をアセトニトリルで洗浄した後、70℃で30分間乾燥し、FTO電極上に導電性高分子膜(PEDOT膜)を形成した。
また、実施例12では、真空蒸着法により作製し、得られた白金膜の厚さは約200nmであった。
〔電解質層〕
フッ素含有ベンゾキノン誘導体及びフッ素含有ヒドロキノン誘導体は、共に置換基のフッ化アルキル基Rf 1〜Rf 4を表1に示す組み合わせにて合成したものを用いた。また、溶媒には、冷凍脱気したアセトニトリルを用いた。その他の試薬は、アルゴン置換された乾燥容器内で保管したものを用いた。
フッ素含有ベンゾキノン誘導体及びフッ素含有ヒドロキノン誘導体は、共に置換基のフッ化アルキル基Rf 1〜Rf 4を表1に示す組み合わせにて合成したものを用いた。また、溶媒には、冷凍脱気したアセトニトリルを用いた。その他の試薬は、アルゴン置換された乾燥容器内で保管したものを用いた。
そして、アルゴン置換した乾燥容器に酢酸アンモニウム、または安息香酸アンモニウムを入れ、酢酸を少量加えた。次いで、少量のアセトニトリルを加え、固体が溶けきるまで降り混ぜた後、フッ素含有ベンゾキノン誘導体、フッ素含有ヒドロキノン誘導体及びアセトニトリルを加えて溶解させ、電解質を調製した。各化合物の濃度は、表1に示すとおりである。
〔光電変換素子の組立〕
半導体電極と、対向電極との間に電解質層を介在させ、側面をエポキシ系接着剤でシールした。尚、この作業はアルゴン置換されたグローブボックス内にて行った。
半導体電極と、対向電極との間に電解質層を介在させ、側面をエポキシ系接着剤でシールした。尚、この作業はアルゴン置換されたグローブボックス内にて行った。
また、比較例4として、ヨウ素系電解質層を備える光電変換素子を用いた。
〔光電変換素子の評価〕
得られた各光電変換素子の光電変換特性を、三永電気製作所(株)製のソーラーシミュレーター「XES−40S1」を用いて評価した。擬似太陽光は、AM1.5条件下で100mW/cm2の光を用い、開放電圧、短絡電流、フィルファクターから変換効率を算出することで行った。また、図3に、フッ素含有ベンゾキノン誘導体濃度及びフッ素含羞ヒドロキノン誘導体濃度と、変換効率との関係をグラフ化して示す。尚、図3の矢印左端は2mMである。
得られた各光電変換素子の光電変換特性を、三永電気製作所(株)製のソーラーシミュレーター「XES−40S1」を用いて評価した。擬似太陽光は、AM1.5条件下で100mW/cm2の光を用い、開放電圧、短絡電流、フィルファクターから変換効率を算出することで行った。また、図3に、フッ素含有ベンゾキノン誘導体濃度及びフッ素含羞ヒドロキノン誘導体濃度と、変換効率との関係をグラフ化して示す。尚、図3の矢印左端は2mMである。
また、電解質層及び素子の外観(色相)を目視にて観測した。それぞれの結果を表1に併記する。
実施例1〜4及び比較例1.2は、2位と6位にt−ブチル基を有するフッ素含有ベンゾキノン誘導体及ぶフッ素含有ヒドロキノン誘導体とを含有する電解層であり、それらの濃度による変換効率の変化を比較している。比較例1のように濃度が低いと、変換効率は非常に低く、光電変換素子として殆ど動作していないことがわかる。濃度を上げていくと変換効率は徐々に高くなっていくが、100mMを超えても変換効率は大きく変わらなかった。
実施例5〜7では、フッ素含有ベンゾキノン誘導体及ぶフッ素含有ヒドロキノン誘導体の置換基の数を変えているが、何れも変換効率が6%以上と高く、置換基の数に影響されないことがわかる。
実施例8〜10では、フッ素含有ベンゾキノン誘導体及ぶフッ素含有ヒドロキノン誘導体の2位と6位とで置換基の種類を変えているが、何れも変換効率が6.5%程度と高く、置換基の種類に影響されないことがわかる。
実施例11は、アンモニウ塩の対カチオンに酢酸イオンを用いているが、他との変換効率に差は無く、他の光電変換素子と同様に良好に作動することがわかる。
実施例12では対向電極に白金を用いているが、実施例1〜11の対向電極であるPEDOTと比べて変換効率が若干下がるものの、光電変換素子として十分に作動することがわかる。
また、比較例3では、フッ化アルキル基で置換していないベンゾキノン誘導体及びヒドロキノン誘導体を用いて電解質層を形成しているが、フッ化アルキル基で置換したベンゾキノン誘導体及びヒドロキノン誘導体を用いて電解質層を形成した実施例に比べると変換効率が低くなっている。即ち、本発明に従い、電解質としてフッ化アルキル基で置換したベンゾキノン誘導体及びヒドロキノン誘導体を用いることにより、フッ化アルキル基で置換していない場合に比べて高い変換効率が得られることがわかる。
更に、比較例4は従来のヨウ素系電解質を用いており、色素の鮮やかな色にヨウ素系電解質の濃褐色が混ざり、光電変換素子の外観が濃褐色に変化して意匠性が大きく損なわれている。これに対し、実施例の光電変化素子は、電荷質層が透明で、意匠性も優れている。
尚、図3にフッ素含有ベンゾキノン誘導体及びフッ素含有ヒドロキノン誘導体の濃度と、変換効率との関係をグラフ化して示すが、両濃度を2〜1800mMにすることにより、高い変換効率が得られることがわかる。
以上のように、本発明の光電変換素子は、フッ素含有ベンゾキノン誘導体及びフッ素含有ヒドロキノン誘導体を電解質とし、アンモニウム塩を添加した電解質層を備えることにより、変換効率、透明性の観点で従来のヨウ素系電解質、フッ化アルキル基で置換していないキノン系電解質よりも優れており、性能、コスト、意匠性にバランス良く優れており、実用性が高い。
A 光電変換素子
1 透明基体
2 透明導電膜
3,3´ 半導体層
4 増感色素
6 触媒層
7 電極基材
8 半導体電極
9 対向電極
1 透明基体
2 透明導電膜
3,3´ 半導体層
4 増感色素
6 触媒層
7 電極基材
8 半導体電極
9 対向電極
Claims (2)
- 半導体電極と、対向電極と、前記電極間に保持された電解質層とを備えた光電変換素子であって、
前記電解質層が、酸化還元対として、1つ以上のフッ素原子で置換されたアルキル基を分子構造中に1つ以上有するベンゾキノン誘導体、及び1つ以上のフッ素原子で置換されたアルキル基を分子構造中に1つ以上有するヒドロキノン誘導体をそれぞれ2mM〜1800mM含有し、添加剤としてアンモニウム塩を4mM〜3600mM含有することを特徴とする光電変換素子。 - アンモニウム塩が、下記一般式(B)で表される基本骨格を有することを特徴とする請求項1記載の光電変換素子。
NH4 +X− ・・・(B)
(式中、X−は無機アニオンまたは有機アニオンである。)
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2014244129A JP2016111049A (ja) | 2014-12-02 | 2014-12-02 | 光電変換素子 |
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JP2014244129A Pending JP2016111049A (ja) | 2014-12-02 | 2014-12-02 | 光電変換素子 |
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-
2014
- 2014-12-02 JP JP2014244129A patent/JP2016111049A/ja active Pending
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