以下、本発明を詳細に説明する。
≪1.フタロシアニン化合物≫
本発明のフタロシアニン化合物は、下記一般式(1)で表される化合物である。
一般式(1)
〔式中、Ra1〜Ra8及びRb1〜Rb8は、それぞれ、同一又は異なって、
(A)水素原子、
(B)ハロゲン原子、
(C)置換基を有していてもよいアルキル基、
(D)置換基を有していてもよいアルコキシ基、
(E)置換基を有していてもよいアルキルチオ基、
(F)置換基を有していてもよいアリール基、
(G)置換基を有していてもよいアリールオキシ基、
(H)置換基を有していてもよいヘテロアリールオキシ基、
(I)置換基を有していてもよいアリールチオ基、
(J)置換基を有していてもよいヘテロアリールチオ基、若しくは
(K)NR9R10基、
を示すか、又は、
(L)Rap及びRbp(pは、1〜8の整数)が以下の一般式(2):
で示される基で環状構造を形成してもよい。前記一般式(2)で示される基については、以下の条件(i)〜(iii):
(i) A1及びA2は、それぞれ、同一又は異なって、置換基を有していてもよい芳香族環を示し、
(ii) X1及びX2は、それぞれ、同一又は異なって、酸素原子又は硫黄原子を示し、
(iii) 前記一般式(2)で示される基は、フタロシアニン骨格を構成する同一のベンゼン環にそれぞれ0個又は1個存在する、
を全て満たす。
R9及びR10は、それぞれ、同一又は異なって、
(A’)水素原子、
(B’)置換基を有していてもよいアルキル基、
(C’)置換基を有していてもよいアリール基、
(D’)置換基を有していてもよいヘテロアリール基、又は
(E’)置換基を有していてもよいアリールアルキル基
を示す。
Mは、2個の水素原子、2価の金属又は3価若しくは4価の金属化合物を示す。〕
で表されるフタロシアニン化合物であって、前記一般式(2)で示される基は、前記一般式(1)で表されるフタロシアニン化合物中にx個(xは、0より大きく4よりも小さい数値)存在する、フタロシアニン化合物。
上記一般式(1)で表されるフタロシアニン化合物は、文献未記載の新規化合物であって、700〜1200nmの近赤外線波長領域に吸収能を有するとともに、耐光性に優れる。しかも、前記フタロシアニン化合物は、二種類以上のフタロニトリル系化合物を原料として得られるため、前記二種類以上の各フタロニトリル系化合物の使用量に応じて、前記近赤外線吸収領域を適宜設定することができ、結果として更に近赤外線吸収領域が広い材料を得ることができる。そのため、前記フタロシアニン化合物は、近赤外線吸収剤として有用な化合物である。
Ra1〜Ra8及びRb1〜Rb8が、それぞれ、同一又は異なって、ハロゲン原子である場合、前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素及び沃素が挙げられる。
Ra1〜Ra8及びRb1〜Rb8が、それぞれ、同一又は異なって、置換基を有していてもよいアルキル基である場合、前記アルキル基としては、炭素数1〜12の直鎖アルキル基、炭素数3〜12の分岐鎖状アルキル基、又は、炭素数3〜12の環状アルキル基、が挙げられる。
具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基(以下、t−Buと称することもある)、n−ペンチル基、2−メチルブチル基、1−メチルブチル基、neo−ペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、4−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、1−エチルブチル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1−エチル−2−メチルプロピル基、シクロヘキシル基、n−へプチル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、2,4−ジメチルペンチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、2,5−ジメチルヘキシル基、2,4,4−トリメチルペンチル基、2,4−ジメチルヘキシル基、2,2,4−トリメチルペンチル基、t−オクチル基、n−ノニル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、4−エチルオクチル基、4−エチル−4,5−ジメチルヘキシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、1,3,5,7−テトラメチルオクチル基、4−ブチルオクチル基等を挙げることができる。
好ましい前記アルキル基は、炭素数1〜8の直鎖アルキル基、炭素数3〜8の分岐鎖状アルキル基、又は、炭素数3〜8の環状アルキル基であり、特に好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、t−オクチル基である。なお、本明細書において、「n−」はnormal、「s−」はsecondary(sec−)、「t−」はtertiary(tert−)を意味する。
Ra1〜Ra8及びRb1〜Rb8が、それぞれ、同一又は異なって、置換基を有していてもよいアルコキシ基である場合、前記アルコキシ基としては、例えば、炭素数1〜12の直鎖アルキル基が酸素原子に結合した基、炭素数3〜12の分岐鎖状アルキル基が酸素原子に結合した基、又は、炭素数3〜12の環状アルキル基が酸素原子に結合した基、
が挙げられる。前記アルコキシ基は、一部の水素原子がハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、沃素等)で置換されていてもよい。即ち、前記アルコキシ基は、ハロゲノアルコキシ基も包含する。
具体的なアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、t−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、
フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、クロロメトキシ基、トリクロロメトキシ基、ジクロロメトキシ基、ブロモメトキシ基、ジブロモメトキシ基、ヨードメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、2,2,2−トリフルオロエトキシ基、2,2,2−トリクロロエトキシ基、2−フルオロエトキシ基、2−ヨードエトキシ基、2,3−ジクロロプロポキシ基、2,2,3,3−テトラフルオロプロポキシ基、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチルオキシ基等が挙げられる。
特に、前記アルコキシ基としては、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜8の直鎖アルキル基が酸素原子に結合した基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数3〜8の分岐鎖状アルキル基が酸素原子に結合した基、又は、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数3〜8の環状のアルキル基が酸素原子に結合した基、が好ましい。なお、ハロゲン原子は、前記各アルキル基に1〜17個有していてもよい。
Ra1〜Ra8及びRb1〜Rb8が、それぞれ、同一又は異なって、置換基を有していてもよいアルキルチオ基である場合、前記アルキルチオ基としては、例えば、炭素数1〜12の直鎖アルキル基が硫黄原子に結合した基、炭素数3〜12の分岐鎖状アルキル基が硫黄原子に結合した基、又は、炭素数3〜12の環状アルキル基が硫黄原子に結合した基、が挙げられる。
具体的には、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n−ブチルチオ基、イソブチルチオ基、s−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、n−ペンチルチオ基、n−ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、n−ヘプチルチオ基、イソペンチルチオ基、ネオペンチルチオ基、n−オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、t−オクチルチオ基、n−ノニルチオ基、n−デシルチオ基、n−ウンデシルチオ基、n−ドデシルチオ基等が挙げられる。
特に、前記アルキルチオ基としては、炭素数1〜8の直鎖アルキル基が硫黄原子に結合した基、炭素数3〜8の分岐鎖状アルキル基が硫黄原子に結合した基、又は、炭素数3〜8の環状のアルキル基が硫黄原子に結合した基、が好ましい。
Ra1〜Ra8及びRb1〜Rb8が、それぞれ、同一又は異なって、置換基を有していてもよいアリール基である場合、前記アリール基としては、例えば、単環のアリール基、又は、多環(例えば、2環又は3環)のアリール基、が挙げられる。
具体的には、フェニル基、ナフチル基、アントリル基(アントラセニル基又はアンスリル基ともいう)、フェナントリル基(フェナントレニル基又はフェナンスリル基ともいう)、フルオレニル基、ピレニル基等が挙げられる。
好ましい前記アリール基は、フェニル基、ナフチル基である。
Ra1〜Ra8及びRb1〜Rb8が、それぞれ、同一又は異なって、置換基を有していてもよいアリールオキシ基である場合、前記アリールオキシ基としては、例えば、単環のアリール基が酸素原子に結合した基、又は、多環(例えば、2環又は3環)のアリール基が酸素原子に結合した基、が挙げられる。
具体的には、フェノキシ基、ナフトキシ基、アントリルオキシ基、フェナントレニルオキシ基、フルオレニルオキシ基、ピレニルオキシ基等が挙げられる。
特に、前記アリールオキシ基としては、単環のアリール基が酸素原子に結合した基、又は、2環のアリール基が酸素原子に結合した基、が好ましい。特に好ましくは、フェノキシ基、1−ナフトキシ基(1−ナフチルオキシ基)、2−ナフトキシ基(2−ナフチルオキシ基)である。
Ra1〜Ra8及びRb1〜Rb8が、それぞれ、同一又は異なって、置換基を有していてもよいヘテロアリールオキシ基である場合、前記ヘテロアリールオキシ基としては、例えば、単環のヘテロアリール基が酸素原子に結合した基、又は、多環(例えば、2環又は3環)のヘテロアリール基が酸素原子に結合した基、が挙げられる。
具体的には、ピリジル基、ピリミジン基、インドリル基、キノリン基、ベンズイミダゾール基、フラニル基、チエニル基、ベンゾフラン基、1,3,4−チアジアゾール基等が酸素原子に結合した基を挙げることができる。
特に、前記ヘテロアリールオキシ基としては、単環のヘテロアリール基が酸素原子に結合した基、又は、2環のヘテロアリール基が酸素原子に結合した基、が好ましい。
Ra1〜Ra8及びRb1〜Rb8が、それぞれ、同一又は異なって、置換基を有していてもよいアリールチオ基である場合、前記アリールチオ基としては、例えば、単環のアリール基が硫黄原子に結合した基、又は、多環(例えば、2環又は3環)のアリール基が硫黄原子に結合した基、が挙げられる。
具体的には、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、アントリルチオ基、ピレニルチオ基等が挙げられる。
特に、前記アリールチオ基としては、単環のアリール基が硫黄原子に結合した基、又は、2環のアリール基が硫黄原子に結合した基、が好ましい。特に好ましくは、フェニルチオ基、ナフチルチオ基である。
Ra1〜Ra8及びRb1〜Rb8が、それぞれ、同一又は異なって、置換基を有していてもよいヘテロアリールチオ基である場合、前記ヘテロアリールチオ基としては、例えば、単環のヘテロアリール基が硫黄原子に結合した基、又は、多環(例えば、2環又は3環)のヘテロアリール基が硫黄原子に結合した基、が挙げられる。
具体的には、ピリジル基、ピリミジン基、インドリル基、キノリン基、ベンズイミダゾール基、フラニル基、チエニル基、ベンゾフラン基、1,3,4−チアジアゾール基等が硫黄原子に結合した基を挙げることができる。
特に、前記ヘテロアリールチオ基としては、単環のヘテロアリール基が硫黄原子に結合した基、又は、2環のヘテロアリール基が硫黄原子に結合した基、が好ましい。
上述のRa1〜Ra8及びRb1〜Rb8が、それぞれ、同一又は異なって、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アリールチオ基、又はヘテロアリールチオ基である場合、これらの基は、それぞれ置換基を有していてもよい。前記アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アリールチオ基、又はヘテロアリールチオ基が有する置換基(ここで、前記置換基は、[1]アルキル鎖、アリール環若しくはヘテロアリール環上の置換基ともいい、又は、[2]アルキル鎖、アリール環若しくはヘテロアリール環上に置換しうる基ともいう)としては、例えば、アルキル基、ハロアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシアルキル基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、環状アミノ基、ハロゲン原子、アシル基、アルコキシカルボニル基、ウレイド基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。該置換基は、Ra1〜Ra8及びRb1〜Rb8におけるアルキル鎖、アリール環又はヘテロアリール環上に、1〜5個有していてもよい。以下、上記各置換基の詳細を説明する。
前記置換基がアルキル基である場合、前記アルキル基としては、例えば、前記Ra1〜Ra8及びRb1〜Rb8が、それぞれ、同一又は異なって、置換基を有していてもよいアルキル基である場合において挙げられた各種アルキル基と同様のアルキル基を挙げることができる。具体的には、炭素数1〜12の直鎖アルキル基、炭素数3〜12の分岐鎖状アルキル基、又は、炭素数3〜12の環状アルキル基、が挙げられる。より具体的なアルキル基、好ましいアルキル基及び特に好ましいアルキル基についても、それぞれ、前記挙げられたアルキル基と同様のアルキル基と同様である。つまり、好ましいアルキル基は、炭素数1〜8の直鎖アルキル基、炭素数3〜8の分岐鎖状アルキル基、又は、炭素数3〜8の環状アルキル基、であり、特に好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、t−オクチル基である。
前記ハロアルキル基としては、例えば、炭素数1〜6のハロアルキル基が挙げられる。具体的には、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロブチル基、ノナフルオロブチル基、ウンデカフルオロペンチル基、トリデカフルオロヘキシル基等を挙げることができる。
前記アルコキシ基としては、例えば、炭素数1〜8のアルコキシ基が挙げられる。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペントキシ基、イソペントキシ基、ネオペントキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、t−オクチルオキシ基等を挙げることができる。
前記ヒドロキシアルキル基としては、例えば、炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基が挙げられる。具体的には、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル基、5−ヒドロキシペンチル基、6−ヒドロキシヘキシル基、7−ヒドロキシヘプチル基、8−ヒドロキシオクチル基等を挙げることができる。
前記アルキルチオ基としては、例えば、炭素数1〜8のチオアルコキシ基が挙げられる。具体的には、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n−ブチルチオ基、イソブチルチオ基、s−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、n−ペンチルチオ基、イソペンチルチオ基、ネオペンチルチオ基、n−ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、n−ヘプチルチオ基、n−オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、t−オクチルチオ基等を挙げることができる。
上記アルキルアミノ基としては、例えば、炭素数1〜12の直鎖アルキル基が置換したアミノ基、炭素数3〜12の分岐鎖状アルキル基が置換したアミノ基、又は、炭素数3〜12の環状アルキル基が置換したアミノ基、が挙げられる。
アルキルアミノ基の前記各アルキル基として、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、2−メチルブチル基、1−メチルブチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、4−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、1−エチルブチル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1−エチル−2−メチルプロピル基、シクロヘキシル基、n−へプチル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、2,4−ジメチルペンチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、2,5−ジメチルヘキシル基、2,4,4−トリメチルペンチル基、2,4−ジメチルヘキシル基、2,2,4−トリメチルペンチル基、t−オクチル基、n−ノニル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、4−エチルオクチル基、4−エチル−4,5−ジメチルヘキシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、1,3,5,7−テトラメチルオクチル基、4−ブチルオクチル基等を挙げることができる。
前記ジアルキルアミノ基としては、例えば、同一又は異なって、炭素数1〜12の直鎖アルキル基が2つ置換したアミノ基、炭素数3〜12の分岐鎖状アルキル基が2つ置換したアミノ基、又は、炭素数3〜12の環状アルキル基が2つ置換したアミノ基、が挙げられる。ジアルキルアミノ基の前記各アルキル基として、具体的には、上記アルキルアミノ基のアルキル基として挙げたものと同じアルキル基を挙げることができる。
前記環状アミノ基としては、例えば、窒素原子上の2個の置換基が窒素原子と共に環構造を形成し、N、O、Sのヘテロ原子を環構成原子として含んでいてもよい環状アミンが挙げられる。具体的には、ピロリジル基、ピペリジノ基、ピペラジノ基、モルホリノ基、チオモルホリノ基等を挙げることができる。環状アミノ基としては、5〜8員の環状アミノ基が望ましい。
前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素及び沃素が挙げられる。
前記アシル基としては、例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、ピバロイル基、ベンゾイル基等を挙げることができる。
前記アルコキシカルボニル基としては、例えば、炭素数1〜6のアルコキシ基が置換したカルボニル基が挙げられる。具体的には、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、s−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基等を挙げることができる。
前記アルキルカルバモイル基としては、−CON(R5)2で示されるものである。ここで、R5は、それぞれ、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜12の直鎖アルキル基、炭素数3〜12の分岐鎖状アルキル基、又は、炭素数3〜12の環状アルキル基、を示す。当該各アルキル基としては、上記アルキルアミノ基のアルキル基として挙げたものと同じアルキル基を挙げることができる。具体的には、メチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、プロピルカルバモイル基、ジメチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、ジプロピルカルバモイル基等を挙げることができる。
前記アルキルスルホニル基としては、例えば、炭素数1〜8のアルキル基が置換したスルホニル基が挙げられる。具体的には、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基等を挙げることができる。
前記アリールスルホニル基としては、例えば、炭素数6〜12のアリール基が置換したスルホニル基が挙げられる。具体的には、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基等を挙げることができる。
前記アルコキシスルホニル基としては、例えば、炭素数1〜8のアルコキシ基が置換したスルホニル基が挙げられる。具体的には、メトキシスルホニル基、エトキシスルホニル基、ブトキシスルホニル基等を挙げることができる。
前記アリールオキシスルホニル基としては、例えば、炭素数6〜12のアリールオキシ基が置換したスルホニル基が挙げられる。具体的には、フェノキシスルホニル基、ナフトキシスルホニル基等を挙げることができる。
Ra1〜Ra8及びRb1〜Rb8が、それぞれ、同一又は異なって、NR9R10基である場合、前記NR9R10基におけるR9及びR10は、それぞれ、同一又は異なって、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基、又は置換基を有していてもよいアリールアルキル基を示す。さらに、R9とR10とは、これらが結合する窒素原子と共に、他の窒素原子、酸素原子、若しくは硫黄原子を介し又は介することなく互いに結合して5〜10員の飽和又は不飽和複素環を形成してもよい。該飽和又は不飽和複素環は1個以上の置換基を有してもよい。該置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基等が挙げられる。該ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルコキシ基、及びアルコキシカルボニル基としては、上述した基と同じものを挙げることができる。該置換基は、飽和又は不飽和複素環上に1〜5個有していてもよい。
具体的に、飽和又は不飽和複素環としては、前記Ra1〜Ra8及びRb1〜Rb8におけるアルキル鎖、アリール環又はヘテロアリール環上に置換しうる基として挙げた環状アミノ基と、同じものを挙げることができる。好ましくは、5〜8員の飽和又は不飽和複素環である。
前記NR9R10基におけるR9及びR10が、同一又は異なってアルキル基である場合、前記アルキル基としては、例えば、前記Ra1〜Ra8及びRb1〜Rb8が、それぞれ、同一又は異なって、置換基を有していてもよいアルキル基である場合において挙げられた各種アルキル基と同様のアルキル基を挙げることができる。具体的には、炭素数1〜12の直鎖アルキル基、炭素数3〜12の分岐鎖状アルキル基、又は、炭素数3〜12の環状アルキル基、が挙げられる。より具体的なアルキル基についても、前記挙げられたアルキル基と同様のアルキル基が挙げられる。好ましくは、炭素数1〜8の直鎖アルキル基、炭素数3〜8の分岐鎖状アルキル基、又は炭素数3〜8の環状アルキル基である。
前記NR9R10基におけるR9及びR10が、それぞれ同一又は異なってアリール基である場合、前記アリール基としては、例えば、単環のアリール基、又は、多環(例えば、2環又は3環)のアリール基、が挙げられる。具体的には、フェニル基、ナフチル基、アントリル基等を挙げることができる。好ましい前記アリール基としては、単環のアリール基、又は2環のアリール基であり、特に好ましくはフェニル基、ナフチル基である。
前記NR9R10基におけるR9及びR10が、それぞれ同一又は異なってヘテロアリール基である場合、前記ヘテロアリール基としては、例えば、前記Ra1〜Ra8及びRb1〜Rb8が、それぞれ、同一又は異なって、置換基を有していてもよいヘテロアリールオキシ基である場合において挙げられたヘテロアリール基と同様、単環のヘテロアリール基、又は、多環(例えば、2環又は3環)のヘテロアリール基、が挙げられる。具体的には、ピリジル基、ピリミジン基、インドリル基、キノリン基、ベンズイミダゾール基、フラニル基、チエニル基、ベンゾフラン基、1,3,4−チアジアゾール基等を挙げることができる。
前記NR9R10基におけるR9及びR10が、同一又は異なってアリールアルキル基である場合、前記アリールアルキル基としては、例えば、炭素数1〜8のアルキル基の水素原子の1つが単環のアリール基で置換されているアルキル基、炭素数1〜8のアルキル基の水素原子の1つが多環(例えば、2環又は3環)のアリール基で置換されているアルキル基、が挙げられる。具体的には、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、1−(p−トリル)エチル基、α,α−ジメチルベンジル基、3−フェニル−1−プロピル基、2−フェニル−1−プロピル基、ジフェニルメチル基、1,2−ジフェニルエチル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、1−(1−ナフチル)エチル基、2−(1−ナフチル)エチル基、1−(2−ナフチル)エチル基、2−(2−ナフチル)エチル基、フルオレニルエチル基等を挙げることができる。好ましい前記アリールアルキル基としては、炭素数1〜3のアルキル基の水素原子の1つが単環のアリール基で置換されているアルキル基、又は、炭素数1〜3のアルキル基の水素原子の1つが2環のアリール基で置換されているアルキル基、であり、特に好ましくは、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、1−(1−ナフチル)エチル基、2−(1−ナフチル)エチル基である。
上述のR9及びR10が、それぞれ、同一又は異なって、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はアリールアルキル基である場合、これらの基はそれぞれ置換基を有していてもよい。該アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はアリールアルキル基の、アルキル鎖、アリール環又はヘテロアリール環上の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基等が挙げられる。該置換基は、アルキル鎖、アリール環又はヘテロアリール環上に1〜5個有していてもよい。
置換基を有するアルキル基として、具体的には、2−クロロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、ベンジル基、2−フェニルエチル基、1−フェニルエチル基、4−ヒドロキシブチル基、2−メトキシエチル基、3−メトキシプロピル基、2−イソプロポキシエチル基、ブタン酸エチル基等を挙げることができる。
置換基を有するアリール基として、具体的には、2−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2,3−ジクロロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、2,5−ジクロロフェニル基、2,6−ジクロロフェニル基、2,4,6−トリクロロフェニル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2,3−ジフルオロフェニル基、2,4−ジフルオロフェニル基、2,5−ジフルオロフェニル基、2,6−ジフルオロフェニル基、2,4,6−トリフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、N,N−ジメチルアミノフェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、4−ビフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基、2−メトキシフェニル基、4−メチルチオフェニル基、4−(トリフルオロメチル)フェニル基、4−フェノキシフェニル基、4−アセチルフェニル基、4−メトキシカルボニルフェニル基等を挙げることができる。
置換基を有するヘテロアリール基として、具体的には、2−メチルピリジル基、2−クロロピリジル基、6−フルオロベンゾチアゾール基、6−クロロベンゾチアゾール基、6−メチルベンゾチアゾール基、6−メトキシベンゾチアゾール基、5−メチル−1,3,4−チアジアゾール基、5−メチルチオ−1,3,4−チアジアゾール基、5−トリフルオロメチル−1,3,4−チアジアゾール基等を挙げることができる。
置換基を有するアリールアルキル基として、具体的には、2−メチルベンジル基、3−メチルベンジル基、4−メチルベンジル基、4−t−ブチルベンジル基、2−シアノベンジル基、3−シアノベンジル基、4−シアノベンジル基、2−クロロベンジル基、3−クロロベンジル基、4−クロロベンジル基、2,3−ジクロロベンジル基、2,4−ジクロロベンジル基、2,5−ジクロロベンジル基、2,6−ジクロロベンジル基、4−フルオロベンジル基、2,4−ジフルオロベンジル基、4−トリフルオロメチルベンジル基、4−ヒドロキシベンジル基、4−メトキシベンジル基、4−(トリフルオロメトキシ)ベンジル基、4−フェニルベンジル基、2−(3−フルオロフェニル基)エチル基、2−(4−メチルフェニル)エチル基、2−(4−クロロフェニル)エチル基、2−(4−メトキシフェニル)エチル基、2−(3,4−ジメトキシフェニル)エチル基等を挙げることができる。
また、Ra1〜Ra8及びRb1〜Rb8で示されるNR9R10基としては、上述したR9及びR10を有するアミノ基であれば特に限定はなく、例えば、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、5〜10員の飽和又は不飽和複素環等が挙げられる。
中でも、NR9R10基としては、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアリールアミノ基、及びジアリールアミノ基、5〜8員の飽和又は不飽和複素環が好ましい。
上記モノアルキルアミノ基を構成するアルキル基としては、例えば、下記(a-1)〜(a-5)に示すアルキル基又はアリールアルキル基が挙げられる。
(a-1) 置換基を有していてもよい炭素数1〜8の直鎖アルキル基、
(a-2) 置換基を有していてもよい炭素数3〜8の分岐鎖状アルキル基、
(a-3) 置換基を有していてもよい炭素数3〜8の環状アルキル基
(a-4) 置換基を有していてもよい単環のアリール基で置換されているアルキル基、又は
(a-5) 置換基を有していてもよい2環のアリール基で置換されているアルキル基
上記ジアルキルアミノ基を構成する2つのアルキル基としては、上記(a-1)〜(a-5)に示すアルキル基又はアリールアルキル基が挙げられる。
上記モノアリールアミノ基を構成するアリール基としては、例えば、下記(b-1)〜(b-2)に示すアリール基が挙げられる
(b-1) 置換基を有していてもよい単環のアリール基、又は
(b-2) 置換基を有していてもよい2環のアリール基。
上記ジアリールアミノ基を構成する2つのアリール基としては、上記(b-1)〜(b-2)に示すアリール基が挙げられる。
具体的に、好ましい上記モノアルキルアミノ基としては、例えば、n−プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、n−ペンチルアミノ基、n−ヘキシルアミノ基、n−ヘプチルアミノ基、n−オクチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、t−オクチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ベンジルアミノ基、1−フェニルエチルアミノ基、2−フェニルエチルアミノ基、1−(p−トリル)エチルアミノ基、α,α−ジメチルベンジルアミノ基、1−(1−ナフチル)エチルアミノ基、2−(1−ナフチル)エチルアミノ基、1−(2−ナフチル)エチルアミノ基、1,1−ジフェニルメチルアミノ基等が挙げられる。
好ましい上記ジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基(ジ−n−ブチルアミノ基)、N−メチルブチルアミノ基、N−エチルブチルアミノ基、N−エチルシクロヘキシルアミノ基、ジ(2−エチルヘキシル)アミノ基、ジベンジルアミノ基等が挙げられる。
好ましい上記モノアリールアミノ基としては、フェニルアミノ基、1−ナフチルアミノ基、2−ナフチルアミノ基等が挙げられる。
好ましい上記ジアリールアミノ基としては、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、N−フェニル−1−ナフチルアミノ基等が挙げられる。
好ましい上記5〜8員の飽和又は不飽和複素環としては、例えば、ピロリジノ基、ピペリジノ基、4−メチルピペラジノ基、モルホリノ基等が挙げられる。
これらの中でも特に好ましいNR9R10基としては、n−ブチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ベンジルアミノ基、及び1−フェニルエチルアミノ基である。
Ra1〜Ra8及びRb1〜Rb8は、それぞれ、同一又は異なって、Rap及びRbp(pは、1〜8の整数)が以下の一般式(2):
で示される基で環状構造を形成してもよい。但し、前記一般式(2)で示される基については、以下の条件(i)〜(iii):
(i) A1及びA2は、それぞれ、同一又は異なって、置換基を有していてもよい芳香族環を示し、
(ii) X1及びX2は、それぞれ、同一又は異なって、酸素原子又は硫黄原子を示し、
(iii) 前記一般式(2)で示される基は、フタロシアニン骨格を構成する同一のベンゼン環にそれぞれ0個又は1個存在する、
を全て満たす。
一般式(2)で示される基で環状構造は、Ra1〜Ra8及びRb1〜Rb8のうち、RapとRbpとが連結するように形成する。例えば、前記環状構造は、Ra1とRb1とが形成するか、または、Ra2とRb2とが形成する。これに対して、前記環状構造は、Rb1とRb2との間では形成しない。
A1及びA2で示される芳香族環としては、例えば、単環の芳香族環、又は多環(例えば、2環又は3環)の芳香族環が挙げられる。具体的には、ベンゼン(環)、ナフタレン(環)、アントラセン(環)、フェナントレン(環)等を挙げることができる。好ましくは、単環又は2環の芳香族環であり、より好ましくはベンゼン環又はナフタレン環であり、特に好ましくは、ベンゼン環である。なお、後述の通り、これらの芳香族環は、それぞれ置換基を有していてもよい。
上述のA1及びA2で示される芳香族環は、それぞれ置換基を有していてもよい。上記置換基としては、例えば、アルキル基、ハロアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシアルキル基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、環状アミノ基、ハロゲン原子、アシル基、アルコキシカルボニル基、ウレイド基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。上記各置換基の詳細については、上記Ra1〜Ra8及びRb1〜Rb8が、それぞれ、同一又は異なって、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アリールチオ基、又はヘテロアリールチオ基である場合に有していてもよい上記各置換基の詳細と同様のものが挙げられる。
前記一般式(2)で示される基は、フタロシアニン骨格を構成する同一のベンゼン環にそれぞれ0個又は1個存在する。言い換えれば、前記一般式(2)で示される基は、フタロシアニン骨格における4つのベンゼン環にそれぞれ0個又は1個存在する。つまり、前記一般式(2)で示される基は、フタロシアニン骨格を構成する同一のベンゼン環に2個は存在しない。例えば、一般式(1)において、Ra1、Rb1、Rb2、及びRa2は同一の環(六員環)に存在するが、前記Ra1とRb1とが前記一般式(2)で示される基で環状構造を形成する場合、前記Rb2とRa2とが前記一般式(2)で示される基で環状構造を形成することはない。
前記一般式(2)で示される基は、前記一般式(1)で表される化合物中にx個(xは、0より大きく4よりも小さい数値)存在する。即ち、xは0<x<4である。前記一般式(2)で示される基が前記一般式(1)中に4個未満という条件で有するため、700〜1200nmの近赤外線波長領域に吸収能を有するとともに、前記一般式(2)で示される基の個数に応じて、前記近赤外線吸収領域を適宜設定することができる。その結果、近赤外線吸収領域が広い材料を得ることができる。
一般式(1)で表される化合物を、2種類のフタロニトリル系化合物を原料として得る場合、一般式(2)で示される基はx’個含まれる。このとき、一般式(1)で表される化合物は、x’=0、x’=1、x’=2、x’=3、及びx’=4の各フタロシアニン化合物の混合物として存在し、2種類のフタロニトリル系化合物の仕込み比率によって各フタロシアニン化合物の存在比が増減する。本明細書では、便宜上、各フタロニトリル化合物の仕込み比率を本発明のフタロシアニン化合物のx値として表す。そのため、本発明の化合物としてのxには整数値をとらない場合も含まれる。
Mで示される2価の金属としては、例えば、周期律表第3族〜第15族に属する金属原子が挙げられる。具体的には、Cu、Zn、Fe、Co、Ni、Ru、Pb、Rh、Pd、Pt、Mn、Sn、Pb等を挙げることができる。
また、Mで示される3価若しくは4価の金属化合物としては、例えば、周期律表第3族〜第15族に属する金属の、ハロゲン化物、水酸化物及び酸化物等が挙げられる。具体的には、AlCl、AlOH、InCl、FeCl、MnOH、SiCl2、SnCl2、GeCl2、Si(OH)2、Si(OCH3)2、Si(OPh)2、Si(OSiCH3)2、Sn(OH)2、Ge(OH)2、VO、TiO等を挙げることができる。なお、上記Phは、フェニル基を示す。
ここで、本発明のフタロシアニン化合物をより詳細に説明するために、
[1] 前記xが1であって、且つ、2種類のフタロニトリル系化合物を合成して本発明のフタロシアニン化合物が得られる場合、
[2] 前記xが2であって、且つ、2種類のフタロニトリル系化合物を合成して本発明のフタロシアニン化合物が得られる場合、
[3] 前記xが3であって、且つ、2種類のフタロニトリル系化合物を合成して本発明のフタロシアニン化合物が得られる場合、
における、各具体的な一般式(1)を記載する。xは、前記一般式(1)で表される化合物中に存在する、前記一般式(2)で示される基の個数である。
[1]前記xが1であって、且つ、2種類のフタロニトリル系化合物を合成して本発明のフタロシアニン化合物が得られる場合について説明する。前記2種類のフタロニトリル系化合物が、それぞれ、以下の一般式(3)及び一般式(4):
〔式中、X1、X2、A1、及びA2は、前記に同じ。式中、Ra21及びRb21は、それぞれ、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいヘテロアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアリールチオ基、置換基を有していてもよいヘテロアリールチオ基、又はNR9R10基を示す。前記R9及びR10は、それぞれ、前記に同じ。〕
〔式中、Ra22、Rb22、Ra23及びRb23は、それぞれ、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいヘテロアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアリールチオ基、置換基を有していてもよいヘテロアリールチオ基、又はNR9R10基を示す。前記R9及びR10は、それぞれ、前記に同じ。〕
である場合、得られる本発明のフタロシアニン化合物(前記x=1)は、以下の一般式(5):
〔式中、X1、X2、A1、A2、Ra21、Rb21、Ra22、Rb22、Ra23及びRb23は、前記に同じ。Mは、2個の水素原子、2価の金属又は3価若しくは4価の金属化合物を示す。〕
と示すこともできる。この一般式(5)で示される本発明のフタロシアニン化合物は、8種類の異性体が存在し、それぞれ一般式(1)に従って記載すると、以下の(1−1a)〜(1−1h):
〔式中、X1、X2、A1、A2、Ra21、Rb21、Ra22、Rb22、Ra23、Rb23及びMは、前記に同じ。〕
である。なお、前記Ra21、Rb21、Ra22、Rb22、Ra23及びRb23(Ra21〜Ra23及びRb21〜Rb23)は、前記一般式(2)で示される基で環状構造を形成しない場合における前記Ra1〜Ra8及び前記Rb1〜Rb8と同様である。つまり、前記Ra21、Rb21、Ra22、Rb22、Ra23及びRb23が示す前記各原子(水素原子、ハロゲン原子)又は各基(置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいヘテロアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアリールチオ基、置換基を有していてもよいヘテロアリールチオ基、若しくはNR9R10基)の詳細については、それぞれ、前記Ra1〜Ra8及び前記Rb1〜Rb8が示す前記各原子又は前記各基の詳細と同じである。そのため、前記Ra21、Rb21、Ra22、Rb22、Ra23及びRb23の詳細については、ここでは省略する。
[2]前記xが2であって、且つ、2種類のフタロニトリル系化合物を合成して本発明のフタロシアニン化合物が得られる場合について説明する。前記2種類のフタロニトリル系化合物が、それぞれ、前記一般式(3)及び一般式(4)で示されるフタロニトリル系化合物である場合、得られる本発明のフタロシアニン化合物(x=2)は、以下の一般式(6):
〔式中、X1、X2、A1、A2、Ra21、Rb21、Ra22、Rb22、Ra23、Rb23及びMは、前記に同じ。〕
と示すこともできる。この一般式(6)で示される本発明のフタロシアニン化合物は、15種類の異性体が存在し、それぞれ一般式(1)に従って記載すると、以下の(1−2a)〜(1−2o):
〔式中、X1、X2、A1、A2、Ra21、Rb21、Ra22、Rb22、Ra23、Rb23及びMは、前記に同じ。〕
である。なお、前記Ra21、Rb21、Ra22、Rb22、Ra23及びRb23は、前記一般式(2)で示される基で環状構造を形成しない場合における前記Ra1〜Ra8及び前記Rb1〜Rb8と同様である。そのため、前記Ra21、Rb21、Ra22、Rb22、Ra23及びRb23の詳細については、前記[1]の説明のときと同様、ここでは省略する。
[3]前記xが3であって、且つ、2種類のフタロニトリル系化合物を合成して本発明のフタロシアニン化合物が得られる場合について説明する。前記2種類のフタロニトリル系化合物が、それぞれ、前記一般式(3)及び一般式(4)で示されるフタロニトリル系化合物である場合、得られる本発明のフタロシアニン化合物(x=3)は、以下の一般式(7):
〔式中、X1、X2、A1、A2、Ra21、Rb21、Ra22、Rb22、Ra23、Rb23及びMは、前記に同じ。〕
と示すこともできる。この一般式(7)で示される本発明のフタロシアニン化合物は、8種類の異性体が存在し、それぞれ一般式(1)に従って記載すると、以下の(1−3a)〜(1−3h):
〔式中、X1、X2、A1、A2、Ra21、Rb21、Ra22、Rb22、Ra23、Rb23及びMは、前記に同じ。〕
である。なお、前記Ra21、Rb21、Ra22、Rb22、Ra23及びRb23は、前記一般式(2)で示される基で環状構造を形成しない場合における前記Ra1〜Ra8及び前記Rb1〜Rb8と同様である。そのため、前記Ra21、Rb21、Ra22、Rb22、Ra23及びRb23の詳細については、前記[1]及び[2]の説明のときと同様、ここでは省略する。
上記一般式(1)又は(1−1a)〜(1−1h)、(1−2a)〜(1−2o)、若しくは(1−3a)〜(1−3h)で表されるフタロシアニン化合物において、X1及びX2としては、少なくとも一方が酸素原子であることが好ましく、X1及びX2が共に酸素原子であることがより好ましい。また、A1及びA2としては、共に置換基を有していてもよいベンゼン環又は置換基を有していてもよいナフタレン環であることが好ましい。
また、Ra21、Rb21、Ra22、Rb22、Ra23及びRb23、又は前記一般式(2)で示される基で環状構造を形成しない場合における前記Ra1〜Ra8及び前記Rb1〜Rb8は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアリールチオ基、NR9R10基が好ましい。また、Ra21及びRb21、又はRap’及びRbp’(前記Rap’及びRbp’は、前記Ra1〜Ra8及び前記Rb1〜Rb8のうち、前記一般式(2)で示される基と結合するフタロシアニン骨格を構成するベンゼン環に対して結合する基)としては、少なくとも一方がNR9R10基であることが好ましい。前記R9及び前記R10としては、それぞれ、同一又は異なって、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいアリールアルキル基であることが好ましい。
また、Mとしては、Cu、Zn、Co、Ni、Pd、Pb、MnOH、AlCl、FeCl、InCl、SnCl2、VO又はTiOが好ましく、Co、Ni、VO又はCuがより好ましい。
≪2.フタロシアニン化合物の製造方法≫
本発明のフタロシアニン化合物は、下記反応式−1に示す通り、一般式(8)〜(11)で示されるフタロニトリル系化合物(化合物(8)〜(11)とも称する)と、金属又は無機若しくは有機金属化合物とを、塩基の存在下に反応させることにより、製造することができる。
<反応式−1>
〔式中、Ra1〜Ra8及びRb1〜Rb8は、それぞれ、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいヘテロアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアリールチオ基、置換基を有していてもよいヘテロアリールチオ基、若しくはNR9R10基を示すか、又は、Rap及びRbp(pは、1〜8の整数)が以下の一般式(2):
で示される基で環状構造を形成してもよい。
前記一般式(2)で示される基については、以下の条件(i)〜(iii):
(i) A1及びA2は、それぞれ、同一又は異なって、置換基を有していてもよい芳香族環を示し、
(ii) X1及びX2は、それぞれ、同一又は異なって、酸素原子又は硫黄原子を示し、
(iii) 前記一般式(2)で示される基は、フタロシアニン骨格を構成する同一のベンゼン環にそれぞれ0個又は1個存在する、
を全て満たす。
R9及びR10は、それぞれ、同一又は異なって、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基、又は置換基を有していてもよいアリールアルキル基を示す。
Mは、2個の水素原子、2価の金属又は3価若しくは4価の金属化合物を示す。前記一般式(2)で示される基は、前記一般式(1)で表される化合物中にx個(xは、0より大きく4よりも小さい数値)存在する。〕
前記Ra1〜Ra8及びRb1〜Rb8並びに前記M等の詳細については、上述の≪1.フタロシアニン化合物≫の項目で詳細に説明しているため、ここでは省略する。
上記反応式−1の好ましい態様としては、化合物(8)〜(11)のうち、2種類のフタロニトリル系化合物を合成して本発明のフタロシアニン化合物を得る場合が挙げられる。前記2種類のフタロニトリル系化合物とは、前記一般式(3)及び前記一般式(4)で示されるフタロニトリル系化合物(化合物(3)、化合物(4)とも称する)である。上述の好ましい反応式−1の好ましい態様(反応式−2)を以下に記載する。
<反応式−2>
〔式中、X1、X2、A1、A2、Ra21、Rb21、Ra22、Rb22、Ra23、Rb23及びMは、前記に同じ。x及びyは、0より大きく4よりも小さい数値であり、x+y=4を満たす。〕
上記化合物(3)及び(4)の製造方法については、それぞれ、下記≪3.フタロシアニン化合物製造用中間体及びその製造方法≫の項目で説明する。
本発明のフタロシアニン化合物(一般式(1)の化合物)中に存在する前記一般式(2)で示される基の個数(並びに、化合物(3)の使用量、及び、前記本発明のフタロシアニン化合物中に存在する以下の基:
〔式中、X1、X2、A1、A2、Ra21、及びRb21は、前記に同じ。〕
の個数)は、前述のようにxで表すことができる。また、本発明のフタロシアニン化合物中に存在する以下の基:
〔式中、Ra22、Rb22、Ra23、及びRb23は、前記に同じ。〕
の個数、及び、化合物(4)の使用量は、前述のようにyで表すことができる。x及びyは、それぞれモル数であり、0<x<4、0<y<4、x+y=4を満たす。
上記化合物(8)〜(11)(又は、上記化合物(3)及び(4))と反応させる金属としては、例えば、周期律表第3族〜第15族に属する金属が挙げられる。具体的には、Al、Si、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、Ru、Rh、Pd、In、Sn、Pt、Pb等が挙げられる。
無機金属化合物としては、例えば、上記金属の、ハロゲン化物、カルボン酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酸化物、錯体等が挙げられる。具体的には、塩化銅(I)、塩化銅(II)、臭化銅(I)、臭化銅(II)、沃化銅、塩化ニッケル(II)、臭化ニッケル(II)、酢酸ニッケル(II)、塩化コバルト(II)、臭化コバルト(II)、酢酸コバルト(II)、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、塩化亜鉛、臭化亜鉛、沃化亜鉛、酢酸亜鉛、塩化バナジウム(III)、オキシ三塩化バナジウム、塩化パラジウム(II)、酢酸パラジウム、塩化アルミニウム、塩化マンガン(II)、酢酸マンガン(II)、酢酸マンガン(III)、塩化マンガン、塩化鉛、酢酸鉛、塩化インジウム(III)、塩化チタン(III)、塩化チタン(IV)、塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、塩化ルテニウム(III)、塩化白金(II)、四塩化ケイ素、塩化ゲルマニウム等が挙げられる。
有機金属化合物としては、例えば、上記金属のカルボニル化合物が挙げられる。具体的には、アセチルアセトンマンガン等が挙げられる。
金属又は無機若しくは有機金属化合物の使用量は、化合物(8)〜(11)(又は、上記化合物(3)及び(4))の合計量(総量)1モルに対して、通常、0.2モル以上であればよく、好ましくは0.25〜0.5モルである。
塩基としては、例えば、金属アルコキシド、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン等が挙げられる。
金属アルコキシドとしては、例えば、ナトリウム又はカリウムの、メトキシド、エトキシド、プロポキシド、ブトキシド、ペントキシド等が挙げられる。具体的には、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウムイソプロポキシド、カリウムイソプロポキシド、ナトリウム−t−ブトキシド、カリウム−t−ブトキシド(以下、tBuOK又はt−BuOKと称することもある)等が挙げられる。好ましくは、カリウム−t−ブトキシド又はジアザビシクロウンデセンである。
塩基は、化合物(8)〜(11)(又は、上記化合物(3)及び(4))の合計量1モルに対して、通常、0.5〜3モル程度、好ましくは0.5〜2モル程度使用される。
また、上記化合物(8)〜(11)(又は、上記化合物(3)及び(4))と、金属又は無機若しくは有機金属化合物との反応においては、必要に応じて、窒素源として、例えば、ホルムアミド、アンモニア、尿素等を配合してもよい。好ましくは、ホルムアミドである。
窒素源は、化合物(8)〜(11)(又は、上記化合物(3)及び(4))の合計量1モルに対して、例えば、1モル以上、好ましくは1〜3モル程度使用することができる。
上記化合物(8)〜(11)(又は、上記化合物(3)及び(4))と、金属又は無機若しくは有機金属化合物との反応は、通常、溶媒中で行われる。溶媒としては、該反応に対して不活性な溶媒である限り公知の溶媒を広く使用することができる。例えば、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、エーテル類、アルコール類、アミン類、アミド類、スルホキシド類、ニトリル類の他、ニトロベンゼン等が挙げられる。
芳香族炭化水素類としては、具体的には、キシレン、メチルナフタレン等を挙げることができる。
ハロゲン化炭化水素類としては、具体的には、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、クロロナフタレン、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン等を挙げることができる。
エーテル類としては、具体的には、ジエチレングリコールジメチルエーテル等を挙げることができる。
アルコール類としては、具体的には、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、n−ヘキサノール(1−ヘキサノールと称することもある)、n−アミルアルコール、シクロヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、1−オクタノール(n−オクタノールと称することもある)、2−エチルヘキサノール、ベンジルアルコール、エタンジオール、プロピレングリコール、メトキシエタノール、エトキシエタノール、プロポキシエタノール、ブトキシエタノール、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール等を挙げることができる。
アミン類としては、具体的には、トリ−n−ブチルアミン等を挙げることができる。
アミド類としては、具体的には、N,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと称することもある)、N,N−ジメチルアセトアミド(以下、DMAと称することもある)、N−メチルピロリドン(以下、NMPと称することもある)、1,3−ジメチルイミダゾリジノン等を挙げることができる。
スルホキシド類としては、具体的には、スルホラン、ジメチルスルホキシド(以下、DMSOと称することもある)等を挙げることができる。
ニトリル類としては、ベンゾニトリル等を挙げることができる。
これらの溶媒は、1種を単独で又は2種以上混合して使用される。好ましくは、n−アミルアルコール、n−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノールである。
これらの溶媒の使用量は、使用する化合物の種類等によって適宜設定すればよいが、化合物(8)〜(11)(又は、上記化合物(3)及び(4))の合計量1重量部に対して、通常、1〜100重量部程度、好ましくは2〜30重量部程度使用される。
該反応は、通常、90〜240℃、好ましくは、110〜200℃、更に好ましくは、110〜170℃で行われる。
反応時間は、原料化合物の種類及び反応温度等により異なり、一概には言えないが、通常、1〜24時間程度である。
上記反応により得られた化合物は、通常の分離手段により反応系内より分離され、さらに、精製することができる。当該分離及び精製手段としては、公知の分離及び精製手段を広く使用でき、例えば、再結晶法、溶媒抽出法、カラムクロマトグラフィー、ゲルクロマトグラフィー、プレパラティブクロマトグラフィー等が挙げられるが、晶析、ろ過、洗浄、乾燥等の従来公知の方法によっても、効率よくかつ高純度で、フタロシアニン化合物を得ることができる。
≪3.フタロシアニン化合物製造用中間体及びその製造方法≫
<3−1.化合物(3)の製造方法>
本発明の、上記一般式(3)で表される、フタロシアニン化合物を製造するための中間体(化合物(3))は、例えば、次の反応式−3に示す方法により製造することができる。
<反応式−3>
〔式中、X1、X2、A1、A2、Ra21、Rb21は、前記に同じ。〕
上記反応式−3に示したとおり、まず、化合物(15)(テトラフルオロフタロニトリル)に、化合物(s)を反応させて、化合物(14)を製造する(工程1)。次いで、工程1で得られた化合物(14)に、化合物(t)を反応させることにより、化合物(13)に変換する(工程2)。さらに、得られた化合物(13)に、化合物(u)を反応させて、化合物(3)を製造することができる(工程3)。
(工程1)
化合物(14)は、通常、溶媒中で、塩基の存在下に、化合物(15)と化合物(s)を反応させることにより製造される。例えば、特開平01−045474号公報、特開平08−120186号公報に開示される公知の方法を用いることができるが、より詳細には、下記のとおりである。
化合物(s)としては、アルコール類、フェノール類、ナフトール類、チオール類、チオフェノール類、アミン(1級アミン又は2級アミン)等が挙げられる。具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、n−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、t−オクタノール、フェノール、2−メチルフェノール(o−クレゾール)、3−メチルフェノール、4−メチルフェノール、2,3−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、2,4,5−トリメチルフェノール、2,4,6−トリメチルフェノール、2−エチルフェノール、3−エチルフェノール、4−エチルフェノール、2,3−ジエチルフェノール、2,4−ジエチルフェノール、2,5−ジエチルフェノール、2,6−ジエチルフェノール、2,3,5−トリエチルフェノール、2,3,6−トリエチルフェノール、2,4,5−トリエチルフェノール、2,4,6−トリエチルフェノール、2−n−プロピルフェノール、3−n−プロピルフェノール、4−n−プロピルフェノール、2,3−ジ−n−プロピルフェノール、2,4−ジ−n−プロピルフェノール、2,5−ジ−n−プロピルフェノール、2,6−ジ−n−プロピルフェノール、2,3,5−トリ−n−プロピルフェノール、2,3,6−トリ−n−プロピルフェノール、2,4,5−トリ−n−プロピルフェノール、2,4,6−トリ−n−プロピルフェノール、2−イソプロピルフェノール、3−イソプロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、2,3−ジイソプロピルフェノール、2,4−ジイソプロピルフェノール、2,5−ジイソプロピルフェノール、2,6−ジイソプロピルフェノール、2,3,5−トリイソプロピルフェノール、2,3,6−トリイソプロピルフェノール、2,4,5−トリイソプロピルフェノール、2,4,6−トリイソプロピルフェノール、2−n−ブチルフェノール、3−n−ブチルフェノール、4−n−ブチルフェノール、2,3−ジ−n−ブチルフェノール、2,4−ジ−n−ブチルフェノール、2,5−ジ−n−ブチルフェノール、2,6−ジ−n−ブチルフェノール、2,3,5−トリ−n−ブチルフェノール、2,3,6−トリ−n−ブチルフェノール、2,4,5−トリ−n−ブチルフェノール、2,4,6−トリ−n−ブチルフェノール、2−s−ブチルフェノール、3−s−ブチルフェノール、4−s−ブチルフェノール、2−イソブチルフェノール、3−イソブチルフェノール、4−イソブチルフェノール、2−t−ブチルフェノール、3−t−ブチルフェノール、4−t−ブチルフェノール、2,3−ジ−t−ブチルフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、2,5−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,3,5−トリ−t−ブチルフェノール、2,3,6−トリ−t−ブチルフェノール、2,4,5−トリ−t−ブチルフェノール、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール、2−n−ペンチルフェノール、3−n−ペンチルフェノール、4−n−ペンチルフェノール、2−t−アミルフェノール、3−t−アミルフェノール、4−t−アミルフェノール、2,4−ジ−t−アミルフェノール、2−n−ヘキシルフェノール、3−n−ヘキシルフェノール、4−n−ヘキシルフェノール、4−シクロヘキシルフェノール、2−n−ヘプチルフェノール、3−n−ヘプチルフェノール、4−n−ヘプチルフェノール、2−n−オクチルフェノール、3−n−オクチルフェノール、4−n−オクチルフェノール、2−(2−エチルヘキシル)フェノール、3−(2−エチルヘキシル)フェノール、4−(2−エチルヘキシル)フェノール、2−t−オクチルフェノール、3−t−オクチルフェノール、4−t−オクチルフェノール、2−n−ノニルフェノール、3−n−ノニルフェノール、4−n−ノニルフェノール、2−n−デシルフェノール、3−n−デシルフェノール、4−n−デシルフェノール、2−n−ウンデシルフェノール、3−n−ウンデシルフェノール、4−n−ウンデシルフェノール、2−n−ドデシルフェノール、3−n−ドデシルフェノール、4−n−ドデシルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、4−t−ブチル−2,6−ジイソプロピルフェノール、4−s−ブチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール、4−ドデシルクレゾール、2−(ジメチルアミノ)フェノール、3−(ジメチルアミノ)フェノール、4−(ジメチルアミノ)フェノール、2−(ジエチルアミノ)フェノール、3−(ジエチルアミノ)フェノール、4−(ジエチルアミノ)フェノール、2−(ジ−n−ブチルアミノ)フェノール、3−(ジ−n−ブチルアミノ)フェノール、4−(ジ−n−ブチルアミノ)フェノール、1−(4−ヒドロキシフェニル)ピペラジン、8−ヒドロキシジュロリジン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−N,N−ジメチルエチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2−フルオロフェノール、3−フルオロフェノール、4−フルオロフェノール、2,3−ジフルオロフェノール、2,4−ジフルオロフェノール、2,5−ジフルオロフェノール、2,6−ジフルオロフェノール、2,3,5−トリフルオロフェノール、2,3,6−トリフルオロフェノール、2,4,5−トリフルオロフェノール、2,4,6−トリフルオロフェノール、2−トリフルオロメチルフェノール、3−トリフルオロメチルフェノール、4−トリフルオロメチルフェノール、2−クロロフェノール、3−クロロフェノール、4−クロロフェノール、2,3−ジクロロフェノール、2,4−ジクロロフェノール、2,5−ジクロロフェノール、2,6−ジクロロフェノール、2,3,5−クロロフェノール、2,3,6−トリクロロフェノール、2,4,5−トリクロロフェノール、2,4,6−トリクロロフェノール、2−ニトロフェノール、3−ニトロフェノール、4−ニトロフェノール、2,3−ジニトロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、2,5−ジニトロフェノール、2,6−ジニトロフェノール、2−シアノフェノール、3−シアノフェノール、4−シアノフェノール、1−ナフトール(α−ナフトール)、2−ナフトール(β−ナフトール)、4−メトキシ−1−ナフトール、5−メトキシ−1−ナフトール、5−ジメチルアミノ−1−ナフトール、6−ジメチルアミノ−1−ナフトール、6−シアノ−2−ナフトール、4−ニトロ−1−ナフトール、メタンチオール、エタンチオール、プロパンチオール、2−プロパンチオール、n−ブタンチオール、イソブチルメルカプタン、s−ブチルメルカプタン、t−ブタンチオール、n−ペンタンチオール、n−ヘキサンチオール、シクロヘキサンチオール、n−ヘプタンチオール、n−オクタンチオール、t−オクタンチオール、ベンゼンチオール、2−トルエンチオール、3−トルエンチオール、4−トルエンチオール、2,3−ジメチルベンゼンチオール、2,4−ジメチルベンゼンチオール、2,5−ジメチルベンゼンチオール、3,4−ジメチルベンゼンチオール、3,5−ジメチルベンゼンチオール、2,3,4−トリメチルベンゼンチオール、2,3,5−トリメチルベンゼンチオール、2,3,6−トリメチルベンゼンチオール、2,4,5−トリメチルベンゼンチオール、2,4,6−トリメチルベンゼンチオール(2,4,6−トリメチルチオフェノール)、2−エチルベンゼンチオール、3−エチルベンゼンチオール、4−エチルベンゼンチオール、2,4,6−トリエチルベンゼンチオール、2−n−プロピルベンゼンチオール、3−n−プロピルベンゼンチオール、4−n−プロピルベンゼンチオール、2−イソプロピルベンゼンチオール、3−イソプロピルベンゼンチオール、4−イソプロピルベンゼンチオール、2−n−ブチルベンゼンチオール、3−n−ブチルベンゼンチオール、4−n−ブチルベンゼンチオール、2−t−ブチルベンゼンチオール、3−t−ブチルベンゼンチオール、4−t−ブチルベンゼンチオール、2,4,6−トリ−t−ブチルベンゼンチオール、2−n−ペンチルベンゼンチオール、3−n−ペンチルベンゼンチオール、4−n−ペンチルベンゼンチオール、2−t−アミルベンゼンチオール、3−t−アミルベンゼンチオール、4−t−アミルベンゼンチオール、4−n−ヘキシルベンゼンチオール、5−t−ブチル−2−メチルベンゼンチオール2−フルオロベンゼンチオール、3−フルオロベンゼンチオール、4−フルオロベンゼンチオール、2,3−ジフルオロベンゼンチオール、2,4−ジフルオロベンゼンチオール、2,5−ジフルオロベンゼンチオール、3,4−ジフルオロベンゼンチオール、3,5−ジフルオロベンゼンチオール、2,3,4−トリフルオロベンゼンチオール、2,3,5−トリフルオロベンゼンチオール、2,3,6−トリフルオロベンゼンチオール、2,4,5−トリフルオロベンゼンチオール、2,4,6−トリフルオロベンゼンチオール、2−クロロベンゼンチオール、3−クロロベンゼンチオール、4−クロロベンゼンチオール、2,3−ジクロロベンゼンチオール、2,4−ジクロロベンゼンチオール、2,5−ジクロロベンゼンチオール、3,4−ジクロロベンゼンチオール、3,5−ジクロロベンゼンチオール、2,3,4−トリクロロベンゼンチオール、2,3,5−トリクロロベンゼンチオール、2,3,6−トリクロロベンゼンチオール、2,4,5−トリクロロベンゼンチオール、2,4,6−トリクロロベンゼンチオール、2−ブロモベンゼンチオール、3−ブロモベンゼンチオール、4−ブロモベンゼンチオール、2−メトキシベンゼンチオール、3−メトキシベンゼンチオール、4−メトキシベンゼンチオール、3,4−ジメトキシベンゼンチオール、2−(メチルチオ)ベンゼンチオール、3−(メチルチオ)ベンゼンチオール、4−(メチルチオ)ベンゼンチオール、1−ナフタレンチオール、2−ナフタレンチオールが挙げられる。また、2−メルカプト−5−メトキシベンゾチアゾール、5−ヒドロキシインドール、5−ヒドロキシ−2−メチルベンゾフラン、8−メルカプトキノリン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン(n−Bu−NH2と称することもある)、イソブチルアミン、s−ブチルアミン、t−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、t−オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、N−エチルメチルアミン、N−メチルプロピルアミン、N−メチルイソブチルアミン、N−エチルプロピルアミン、N−エチルイソプロピルアミン、N−エチルブチルアミン、N−t−ブチルエチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−s−ブチルアミン、ジ−t−ブチルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、ジ−n−ヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジ−n−ヘプチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジ−t−オクチルアミン、ジ−n−ノニルアミン、ジ−n−デシルアミン、ジ−n−ウンデシルアミン、ジ−n−ドデシルアミン、ジ(2−エチルヘキシル)アミン、アニリン、2−フルオロアニリン、3−フルオロアニリン、4−フルオロアニリン、2−クロロアニリン、3−クロロアニリン、4−クロロアニリン、2,4−ジクロロアニリン、3,5−ジクロロアニリン、N,N−ジメチル−1,4−フェニレンジアミン、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、2,6−ジメチルアニリン、3,5−ジメチルアニリン、4−エチルアニリン、4−t−ブチルアニリン、p−アニシジン、4−メチルチオアニリン、4−(トリフルオロメチル)アニリン、4−フェノキシアニリン、
4’−アミノアセトフェノン、1−ナフチルアミン、2−ナフチルアミン、1−アミノアントラセン、2−アミノアントラセン、N−メチルアニリン、ジフェニルアミン、2−メチル−4−アミノピリジン、2−クロロ−4−アミノピリジン、6−フルオロ−2−アミノベンゾチアゾール、2−アミノ−6−クロロベンゾチアゾール、2−アミノ−6−メチルベンゾチアゾール、2−アミノ−6−メトキシベンゾチアゾール、2−アミノ−1,3,4−チアジアゾール、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、1−メチルピペラジン、チオモルホリン、ベンジルアミン、2−フルオロベンジルアミン、3−フルオロベンジルアミン、4−フルオロベンジルアミン、2−クロロベンジルアミン、3−クロロベンジルアミン、4−クロロベンジルアミン、2,4−ジクロロベンジルアミン、4−(トリフルオロメチル)ベンジルアミン、4−ジメチルアミノベンジルアミン、1−フェニルエチルアミン、2−フェニルエチルアミン、1−(2,4−ジクロロフェニル)エチルアミン、1−(p−トリル)エチルアミン、4−(アミノメチル)安息香酸メチル、α,α−ジメチルベンジルアミン、1,1−ジフェニルメチルアミン、N−メチルベンジルアミン、N−エチルベンジルアミン、ジベンジルアミン、N−メチル−1−ナフチルメチルアミン、N−メチル−2−フェニルエチルアミン等を使用することもできる。好ましくは、2,4,6−トリメチルフェノール、フェノール、2−メチルフェノール、1−ナフトール、2−ナフトール、2,4,6−トリメチルベンゼンチオール、4−t−オクチルフェノールである。
化合物(s)の使用量は、通常、化合物(15)に対して、0.9〜2当量、好ましくは0.9〜1.5当量、より好ましくは0.95〜1.1当量程度である。
本反応で使用する塩基としては、例えば、アルカリ性物質等が挙げられる。具体的には、フッ化カリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等を挙げることができる。これらの塩基は、1種単独で又は2種以上を混合して使用される。好ましくは、フッ化カリウム、炭酸カリウムである。
このような塩基の使用量は、使用する塩基の種類及びその使用量に応じて適宜設定されるものであるが、通常、化合物(15)に対して、0.9〜3当量、好ましくは1〜2当量、より好ましくは1〜1.3当量程度とすればよい。
本反応に使用される溶媒としては、該反応に対して不活性な溶媒である限り、公知の溶媒を広く使用することができるが、アセトン、アセトニトリル、DMA、DMF、メチルエチルケトン(以下、MEKと称することもある)等を用いるのが望ましい。
これらの溶媒の使用量は、使用する塩基の種類等によって適宜設定すればよいが、通常、化合物(15)1重量部に対して、1〜50重量部程度、好ましくは1〜20重量部程度、より好ましくは1.5〜15重量部程度使用すればよい。
本反応は、通常、−10〜40℃、好ましくは、−5〜15℃で行われる。
反応時間は、使用する塩基の種類、反応温度等により異なり、一概には言えないが、通常1〜12時間程度で該反応は完結する。
上記反応により得られた化合物は、通常の分離手段により反応系内より分離され、さらに、精製することができる。当該分離及び精製手段としては、例えば、上記≪2.フタロシアニン化合物の製造方法≫で挙げた手段と同様の手段を適用することができる。
(工程2)
化合物(13)は、通常、溶媒中、塩基の存在下に、化合物(14)と化合物(t)とを反応させることにより製造される。
化合物(t)としては、ビフェノール類、ビナフトール類、ビアントラセノール類等が挙げられる。具体的には、2,2’−ビフェノール、1,1’−ビ−2−ナフトール(2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフチル)、3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−2,2’−ビフェノール、5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビ−2−ナフトール、3,3’,5,5’−テトラメチル−2,2’−ジヒドロキシビフェニル、等を挙げることができる。好ましくは、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−2,2’−ジヒドロキシビフェニル、及び2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフチルからなる群から選ばれた少なくとも1種である。
化合物(t)の使用量は、通常、化合物(14)に対して、0.8〜2当量、好ましくは0.9〜1.8当量、より好ましくは0.95〜1.5当量程度である。
本反応で使用する塩基としては、例えば、アルカリ性物質等が挙げられる。具体的には、フッ化カリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等を挙げることができる。好ましくは、フッ化カリウム、炭酸カリウムである。
このような塩基の使用量は、使用する化合物の種類及びその使用量に応じて適宜設定されるものであるが、通常、化合物(14)に対して、1〜10当量、好ましくは1〜8当量、より好ましくは1.2〜3.5当量程度とすればよい。
本反応に使用される溶媒としては、該反応に対して不活性な溶媒である限り、公知の溶媒を広く使用することができるが、アセトン、アセトニトリル、DMSO、DMA、DMF、MEK等を用いるのが望ましい。
上記溶媒の使用量は、使用する化合物の種類等によって適宜設定すればよいが、通常、化合物(14)1重量部に対して、0.5〜50重量部程度、好ましくは1〜30重量部程度、より好ましくは1〜20重量部程度使用すればよい。
本反応は、通常、20〜100℃程度、好ましくは、20〜85℃で行われる。
反応時間は、使用する化合物の種類、反応温度等により異なり、一概には言えないが、通常、0.5〜12時間程度で該反応は完結する。
上記反応により得られた化合物は、通常の分離手段により反応系内より分離され、さらに、精製することができる。当該分離及び精製手段としては、例えば、上記≪2.フタロシアニン化合物の製造方法≫で挙げた手段と同様の手段を適用することができる。
(工程3)
化合物(3)は、通常、塩基の存在下に、溶媒中、化合物(13)と化合物(u)とを反応させることにより製造される。
化合物(u)としては、アルコール類、フェノール類、ナフトール類、チオール類、チオフェノール類、アミン(1級アミン又は2級アミン)等が挙げられる。具体的には、上記化合物(s)として挙げた化合物と同じ化合物を挙げることができる。
化合物(u)の使用量は、通常、化合物(13)に対して、1〜5当量、好ましくは1〜3.5当量、より好ましくは1.05〜3当量程度である。
本反応で使用する塩基としては、公知の無機塩基及び有機塩基を使用できる。
無機塩基としては、例えば、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属水素化物等が挙げられる。また、有機塩基としては、例えば、アミン等が挙げられる。
アルカリ金属炭酸塩としては、具体的には、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム等を挙げることができる。
アルカリ金属水酸化物としては、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を挙げることができる。
アルカリ金属水素化物としては、具体的には、水素化ナトリウム、水素化カリウム等を挙げることができる。
アミンとしては、具体的には、トリエチルアミン(以下、Et3Nと称することもある)、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン等を挙げることができる。
これらの塩基は、1種単独で又は2種以上を混合して使用される。好ましくは、トリエチルアミン、炭酸カリウムである。
上記塩基の使用量は、使用する化合物の種類及びその使用量に応じて適宜設定されるものであるが、通常、化合物(13)に対して、1〜10当量、好ましくは1〜8当量、より好ましくは1.1〜3.5当量程度とすればよい。
本反応に使用される溶媒としては、該反応に対して不活性な公知の非プロトン性極性溶媒を広く使用することができる。例えば、上記(工程1)で挙げた溶媒と同じものを使用することができるが、アセトニトリル、DMA又はDMFを用いるのが望ましい。
上記溶媒の使用量は、使用する化合物の種類等によって適宜設定すればよいが、通常、化合物(13)1重量部に対して、0.5〜50重量部程度、好ましくは0.5〜30重量部程度、より好ましくは0.8〜20重量部程度使用すればよい。
本反応は、通常、20〜120℃程度、好ましくは、40〜90℃で行われる。
反応時間は、使用する化合物の種類、反応温度等により異なり、一概には言えないが、通常、0.5〜20時間程度で該反応は完結する。
上記反応により得られた化合物は、通常の分離手段により反応系内より分離され、さらに、精製することができる。当該分離及び精製手段としては、例えば、上記≪2.フタロシアニン化合物の製造方法≫で挙げた手段と同様の手段を適用することができる。
さらに、上記反応により得られた、フタロシアニン化合物を製造するための中間体化合物(3’)(上記化合物(3)において、Ra21がNR9R10であって、且つ、前記R9が水素原子である化合物)は、例えば、次の反応式−4に示す方法により、中間体化合物(3”)に変換することもできる。
<反応式−4>
〔式中、X1、X2、A1、A2、Rb21及びR10は、前記に同じ。式中、R11は、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基、又は置換基を有していてもよいアリールアルキル基を示し、Y1は脱離基を示す。〕
化合物(3”)は、通常、塩基の存在下に、溶媒中、化合物(3’)と化合物(w)とを反応させることにより製造される。
化合物(w)におけるR11の、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基、又は置換基を有していてもよいアリールアルキル基としては、それぞれ、上記R9及びR10における置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基、又は置換基を有していてもよいアリールアルキル基と同じものを挙げることができる。
化合物(w)におけるY1の脱離基としては、例えば、ハロゲン原子、p−トルエンスルホニル基、メタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、塩素、臭素、沃素が挙げられる。
化合物(w)としては、具体的には、ベンジルクロリド、ブロモメタン、ブロモエタン、1−ブロモプロパン、2−ブロモプロパン、1−ブロモブタン(以下、n−BuBrと称することもある)、2−ブロモブタン、1−ブロモ−2−メチルプロパン、t−ブチルブロミド、1−ブロモペンタン、1−ブロモ−2−メチルブタン、1−ブロモ−3−メチルブタン、2−ブロモ−2−メチルブタン、ブロモシクロペンタン、1−ブロモヘキサン、2−ブロモヘキサン、3−ブロモヘキサン、1−ブロモ−4−メチルペンタン、1−ブロモ−2−エチルブタン、ブロモシクロヘキサン、1−ブロモヘプタン、2−ブロモヘプタン、3−ブロモヘプタン、1−ブロモオクタン、2−ブロモオクタン、3−ブロモオクタン、4−ブロモオクタン、1−ブロモ−2−エチルヘキサン、1−ブロモノナン、1−ブロモデカン、1−ブロモウンデカン、1−ブロモドデカン、2−フェニルエチルブロミド、3−フェニルプロピルブロミド、4−フェニルブチルブロミド、5−フェニルペンチルブロミド、1−ブロモ−2−メトキシエタン、1−ブロモ−3−メトキシプロパン、3−(2−メトキシエトキシ)プロピルブロミド、2−(2−ブロモエチル)−1,3−ジオキソラン、4−ブロモ−1−ブタノール、5−ブロモ−1−ペンタノール、6−ブロモ−1−ヘキサノール、7−ブロモ−1−ヘプタノール、8−ブロモ−1−オクタノール、9−ブロモ−1−ノナノール、10−ブロモ−1−デカノール、11−ブロモ−1−ウンデカノール、12−ブロモ−1−ドデカノール、ヨードメタン、ヨードエタン、1−ヨードプロパン、2−ヨードプロパン、1−ヨードブタン、2−ヨードブタン、1−ヨード−2−メチルプロパン、t−ブチルヨージド、1−ヨードペンタン、2−ヨードペンタン、3−ヨードペンタン、1−ヨード−3−メチルブタン、1−ヨード−2−メチルブタン、1−ヨードヘキサン、2−ヨードヘキサン、3−ヨードヘキサン、ヨードシクロヘキサン、1−ヨードヘプタン、1−ヨードオクタン、1−ヨードノナン、1−ヨードデカン、1−ヨードウンデカン、1−ヨードドデカン、メチルトリフラート、エチルトリフラート、プロピルトリフラート、ブチルトリフラート、ペンチルトリフラート、ヘキシルトリフラート、ヘプチルトリフラート、オクチルトリフラート、2−エチルヘキシルトリフラート、ノニルトリフラート、デシルトリフラート、ウンデシルトリフラート、ドデシルトリフラート、2,2,2−トリフルオロエチルトリフラート、p−トルエンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸エチル、p−トルエンスルホン酸プロピル、p−トルエンスルホン酸ブチル、p−トルエンスルホン酸ペンチル、p−トルエンスルホン酸−2−メチルブチル、p−トルエンスルホン酸ヘキシル、p−トルエンスルホン酸シクロヘキシル、p−トルエンスルホン酸ヘプチル、p−トルエンスルホン酸オクチル、p−トルエンスルホン酸−2−エチルヘキシル、p−トルエンスルホン酸ヘプチル、p−トルエンスルホン酸デシル、p−トルエンスルホン酸ウンデシル、p−トルエンスルホン酸ドデシル、p−トルエンスルホン酸−2−クロロエチル、p−トルエンスルホン酸−2,2,2−トリフルオロエチル、p−トルエンスルホン酸−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル、p−トルエンスルホン酸−2−メトキシエチル、p−トルエンスルホン酸−2−メチルブチル、p−トルエンスルホン酸フェネチル、メタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、メタンスルホン酸プロピル、メタンスルホン酸ブチル、メタンスルホン酸ペンチル、メタンスルホン酸ヘキシル、メタンスルホン酸シクロヘキシル、メタンスルホン酸ヘプチル、メタンスルホン酸オクチル、メタンスルホン酸−2−エチルヘキシル、メタンスルホン酸ノニル、メタンスルホン酸デシル、メタンスルホン酸ウンデシル、メタンスルホン酸ドデシル、メタンスルホン酸−2,2,2−トリフルオロエチル、メタンスルホン酸−2−メトキシエチル、メタンスルホン酸−2−クロロエチル、メタンスルホン酸−2−イソプロポキシエチル等を挙げることができる。
化合物(w)の使用量は、通常、化合物(3’)に対して、0.9〜3当量、好ましくは1〜2.5当量、より好ましくは1.2〜2当量程度である。
本反応で使用する塩基としては、公知の無機塩基及び有機塩基を使用できる。例えば、上記(工程2)で挙げた塩基と同じものを使用することができる。
上記塩基の使用量は、使用する化合物の種類及びその使用量に応じて適宜設定されるものであるが、通常、化合物(3’)に対して、1〜10当量、好ましくは1〜5当量、より好ましくは1.2〜2.5当量程度とすればよい。
本反応に使用される溶媒としては、該反応に対して不活性な公知の非プロトン性極性溶媒を広く使用することができる。例えば、DMF、DMA、DMSO等を挙げることができる。
上記溶媒の使用量は、使用する化合物の種類等によって適宜設定すればよいが、通常、化合物(3’)1重量部に対して、0.5〜50重量部程度、好ましくは1〜30重量部程度、より好ましくは1〜20重量部程度使用すればよい。
本反応は、通常、50〜140℃程度、好ましくは、60〜120℃で行われる。反応時間は、使用する化合物の種類、反応温度等により異なり、一概には言えないが、通常1〜12時間程度で該反応は完結する。
上記反応により得られた化合物は、通常の分離手段により反応系内より分離され、さらに、精製することができる。当該分離及び精製手段としては、例えば、上記≪2.フタロシアニン化合物の製造方法≫で挙げた手段を適用することができる。
<3−2.化合物(4)の製造方法>
本発明の、上記一般式(4)で表される、フタロシアニン化合物を製造するための中間体(化合物(4))は、例えば、次の反応式−5に示す方法により製造することができる。
<反応式−5>
〔式中、Ra22、Rb22、Ra23、及びRb23は、前記に同じ。式中、X3は、ハロゲン原子を示す。〕
化合物(16)、(4−1)、(4−2)及び(4−3)におけるX3のハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、沃素等が挙げられる。
上記反応式−5に示した通り、まず、化合物(16)に化合物(z−1)を反応させて、化合物(4−1)を製造する(工程1)。次いで、工程1で得られた化合物(4−1)に化合物(z−2)を反応させて、化合物(4−2)を製造する(工程2)。次いで、工程2で得られた化合物(4−2)に化合物(z−3)を反応させて、化合物(4−3)を製造する(工程3)。次いで、工程3で得られた化合物(4−3)に化合物(z−4)を反応させて、化合物(4)を製造する(工程4)。
反応式−5における工程1の反応は、反応式−3における工程1と同様の反応である。つまり、反応式−5における工程1は、上記化合物(15)に代えて化合物(16)を使用し、且つ、上記化合物(s)に代えて化合物(z−1)を使用する以外は、反応式−3における工程1と同様である。具体的には、化合物(z−1)は、上述の化合物(s)で例示された化合物と同様のものを使用することができ、化合物(z−1)の使用量は、化合物(15)に代えて化合物(16)とする以外は化合物(s)の使用量と同様である。また、反応式−5における工程1に関して、(a)使用する塩基の種類、(b)前記塩基の使用量、(c)使用する溶媒の種類、(d)前記溶媒の使用量、(e)反応温度、(f)反応時間、並びに(g)分離及び精製手段、は、それぞれ、反応式−3における工程1に記載された上記(a)〜(g)と同様である。そのため、反応式−5における工程1に関して、上記(a)〜(g)の説明並びに化合物(z−1)の種類及び使用量の説明については、ここでは省略する。
反応式−5における工程2〜工程4の反応もまた、反応式−3における工程1(及び反応式−5における工程1)と同様である。つまり、反応式−5における工程2〜工程4は、上記化合物(15)に代えて化合物(4−1)、(4−2)又は(4−3)を使用し、且つ、上記化合物(s)に代えて化合物(z−2)、(z−3)又は(z−4)を使用する以外は、反応式−3における工程1と同様である。具体的には、化合物(z−2)、(z−3)及び(z−4)は、それぞれ、上述の化合物(s)で例示された化合物と同様のものを使用することができ、化合物(z−2)、(z−3)及び(z−4)の使用量は、それぞれ、化合物(15)に代えて化合物(4−1)、(4−2)又は(4−3)とする以外は化合物(s)の使用量と同様である。また、反応式−5における工程2〜工程4に関して、(a)使用する塩基の種類、(b)前記塩基の使用量、(c)使用する溶媒の種類、(d)前記溶媒の使用量、(e)反応温度、(f)反応時間、並びに(g)分離及び精製手段は、それぞれ、反応式−3における工程1に記載された上記(a)〜(g)と同様である。そのため、反応式−5における工程2〜工程4に関して、上記(a)〜(g)の説明、並びに化合物(z−2)、(z−3)及び(z−4)の種類並びに使用量の説明についても、ここでは省略する。
尚、Rb22=Rb23(Rb22とRb23が同じ基)である場合、化合物(z−1)の使用量、塩基の使用量、反応温度、反応時間等を適宜設定することで、化合物(16)から直接化合物(4−2)を合成することができ、Ra22=Ra23(Ra22とRa23が同じ基)である場合、化合物(4−2)から直接化合物(4)を合成することもでき、Ra22=Rb22=Ra23=Rb23(Ra22とRb22とRa23とRb23が同じ基)である場合、化合物(16)から直接化合物(4)を合成することもできる。
また、上記化合物(4−1)〜(4−3)で示される化合物を、本発明のフタロシアニン化合物を合成するための原料として(つまり、反応式−2における化合物(4)として)使用することができる。
また、本発明のフタロシアニン化合物を合成するための原料として(つまり、反応式−2における化合物(4)として)、以下の一般式(4−4)〜(4−6)で示される化合物を使用することもできる。
<反応式−6>
〔式中、Rb22及びRb23は、前記に同じ。式中、R12は、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基、又は置換基を有していてもよいアリールアルキル基を示し、X4はハロゲン原子を示し、Y2は脱離基を示す。〕
前記R12の、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基、又は置換基を有していてもよいアリールアルキル基としては、それぞれ、上記R9及びR10における置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基、又は置換基を有していてもよいアリールアルキル基と同じものを挙げることができる。
前記Y2の脱離基としては、例えば、ハロゲン原子、p−トルエンスルホニル基、メタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、塩素、臭素、沃素が挙げられる。
前記化合物(17)、(18)、(4−4)及び(4−5)における前記X4のハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、沃素等が挙げられる。
上記反応式−6に示した通り、まず、化合物(17)を還元して化合物(18)とする(工程1)。次いで、工程1で得られた化合物(18)に化合物(z’)を反応させて、化合物(4−4)を製造する(工程2)。次いで、工程2で得られた化合物(4−4)に化合物(z−1)を反応させて、化合物(4−5)を製造する(工程3)。次いで、工程3で得られた化合物(4−5)に化合物(z−2)を反応させて、化合物(4−6)を製造する(工程4)。工程1における還元方法については、例えば特開2003-516421号公報に記載の方法と同様の方法が挙げられる。工程2における反応の方法については、例えば、特開平02-279665号公報に記載の方法と同様の方法が挙げられる。
反応式−6における工程3及び4の反応は、それぞれ、反応式−3における工程1と同様の反応である。つまり、反応式−6における工程3及び4は、上記化合物(15)に代えて化合物(4−4)又は(4−5)を使用し、且つ、上記化合物(s)に代えて化合物(z−1)又は(z−2)を使用する以外は、それぞれ、反応式−3における工程1と同様である。具体的には、化合物(z−1)及び(z−2)は、それぞれ、上述の化合物(s)で例示された化合物と同様のものを使用することができ、化合物(z−1)及び(z−2)の使用量は、それぞれ、化合物(15)に代えて化合物(4−4)又は(4−5)とする以外は化合物(s)の使用量と同様である。また、反応式−6における工程3及び4に関して、(a)使用する塩基の種類、(b)前記塩基の使用量、(c)使用する溶媒の種類、(d)前記溶媒の使用量、(e)反応温度、(f)反応時間、並びに(g)分離及び精製手段、は、それぞれ、反応式−3における工程1に記載された上記(a)〜(g)と同様である。そのため、反応式−6における工程3及び4に関して、上記(a)〜(g)の説明、並びに化合物(z−1)及び(z−2)の種類並びに使用量の説明については、ここでは省略する。
また、本発明のフタロシアニン化合物を合成するための原料として(つまり、反応式−2における化合物(4)として)、以下の一般式(4−7)で示される化合物を使用することもできる。
<反応式−7>
〔式中、R13は、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基、又は置換基を有していてもよいアリールアルキル基を示す。式中、X5は、同一又は異なって、ハロゲン原子、ニトロ基又はヒドロキシ基を示し、X6は酸素原子又は硫黄原子を示し、Y3は脱離基を示し、nは1〜4の整数を示す。〕
前記R13の、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基、又は置換基を有していてもよいアリールアルキル基としては、それぞれ、上記R9及びR10における置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基、又は置換基を有していてもよいアリールアルキル基と同じものを挙げることができる。
前記Y3の脱離基としては、例えば、ハロゲン原子、p−トルエンスルホニル基、メタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、塩素、臭素、沃素が挙げられる。
前記化合物(19)におけるX5のハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、沃素等が挙げられる。
前記X5がハロゲン原子又はニトロ基である場合、化合物(19)と化合物(z−3)とを反応させることが望ましい。化合物(19)と化合物(z−3)との反応における反応条件は、上記反応式−5の工程1(又は上記反応式−3の工程1)と同様である。即ち、上記反応における(a)使用する塩基の種類、(b)前記塩基の使用量、(c)使用する溶媒の種類、(d)前記溶媒の使用量、(e)反応温度、(f)反応時間、並びに(g)分離及び精製手段、は、それぞれ、反応式−5における工程1(又は反応式−3における工程1)に記載された上記(a)〜(g)と同様である。化合物(z−3)の使用量は、化合物(16)に代えて化合物(19)とする以外は化合物(z−1)の使用量と同様である。
前記X5がヒドロキシ基である場合は、化合物(19)と化合物(z’’)とを反応させるのが望ましい。化合物(19)と化合物(z’’)との反応については、例えば、特開平08−259553に記載の方法により合成することができる。
≪4.近赤外線吸収色素≫
本発明のフタロシアニン化合物は、700〜1200nmの近赤外線波長領域に吸収能を有することから、近赤外線吸収色素として使用することができる。即ち、本発明の近赤外線吸収色素は、本発明のフタロシアニン化合物からなる。
≪5.近赤外線吸収材料≫
本発明のフタロシアニン化合物は、700〜1200nmの近赤外線波長領域に吸収能を有することから、近赤外線吸収材料、より詳細には、近赤外線吸収フィルター、保護眼鏡、農業用フィルム、熱線遮断フィルター、受光素子、長波長レーザー対応光記録媒体、偽造防止用の印刷インク、カモフラージュ用塗装、レーザー溶着等に使用することができる。即ち、本発明の近赤外線吸収材料は、本発明のフタロシアニン化合物を含有する。
本発明のフタロシアニン化合物は、そのまま、あるいはバインダー樹脂や添加物と共に、紙、プラスチックシート、プラスチックフィルム、ガラス、樹脂等に塗布又は混練したり、ハードコートしたり、モノマーと混合して重合させたりすることにより、近赤外線吸収材料として種々の用途に使用できる。
バインダー樹脂としては、特に制限はないが、例えば、アクリル酸系モノマーの単独重合体または共重合体、セルロース系ポリマー、ビニル系ポリマー、縮合系ポリマー、ゴム系熱可塑性ポリマー、光重合性化合物の重合体等が挙げられる。
アクリル酸系モノマーとしては、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等を挙げることができる。
セルロース系ポリマーとしては、具体的には、メチルセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテート等を挙げることができる。
ビニル系ポリマーとしては、具体的には、ポリスチレン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。
縮合系ポリマーとしては、具体的には、ポリエステル、ポリアミド等を挙げることができる。
ゴム系熱可塑性ポリマーとしては、具体的には、ブタジエン−スチレン共重合体等を挙げることができる。
光重合性化合物としては、具体的には、エポキシ化合物等を挙げることができる。
本発明のフタロシアニン化合物を塗布又は混合する樹脂としては、例えば、透明樹脂等が挙げられる。具体的には、ポリアクリロニトリル樹脂、メタクリルニトリル樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィンポリマー樹脂等の透明樹脂を挙げることができる。
また、本発明のフタロシアニン化合物を混合するモノマーとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、メシチレントリイソシアネート、1,4−ビス(α,α’−ジメチルイソシアネートメチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(3−チオプロピル)イソシアヌレート、2,2’−ジメチルプロパンジオールビス(2−チオアセテート)等が挙げられる。本発明のフタロシアニン化合物を、これらのモノマーと混合した後に重合することによって、成形品を得ることができる。
≪6.光熱変換材料≫
本発明のフタロシアニン化合物は、700〜1200nmの近赤外線波長領域に吸収能を有することから、この領域のレーザー光を吸収して熱に変換する光熱変換材料、より詳細には、レーザーダイレクト製版(CTP)用原版、記録材料(レーザー感熱記録材料、レーザー熱転写記録材料等)、レーザー溶着等に使用することができる。即ち、本発明の光熱変換材料は、本発明のフタロシアニン化合物を含有する。
当該光熱変換材料は、光熱変換剤としての本発明のフタロシアニン化合物以外に、バインダー樹脂等を含有してもよく、当該バインダー樹脂としては、上記近赤外線吸収材料と同様のものを挙げることができる。
また、当該光熱変換材料は、光熱変換剤として、本発明のフタロシアニン化合物以外に、本発明の目的を逸脱しない範囲で、公知の種々の近赤外線吸収剤を併用することができる。例えば、公知のカーボンブラック、アニリンブラック等の顔料、ポリメチン系色素(シアニン色素)、フタロシアニン系色素、ジチオール金属錯塩系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素、トリフェニルメタン(類似)系色素、アミニウム系色素、ジイモニウム系色素、アゾ系色素、インドアニリン金属錯体色素、分子間型CT色素、染料系の色素等が挙げられる。
6−1.記録材料(レーザー感熱記録材料、レーザー熱転写記録材料)
光熱変換材料を、レーザー感熱記録材料又はレーザー熱転写記録材料等の記録材料とする場合、当該材料には、発色成分又は着色成分等を配合して使用してもよいし、発色成分又は着色成分等を含有する層を別途設けてもよい。
発色成分又は着色成分としては、特に限定されず、公知の成分を用いることができる。例えば、昇華性染顔料、電子供与性染料前駆体及び電子受容性化合物の組み合わせ、熱によって物理的、化学的な変化で画像を形成するもの(重合性ポリマー等)等を挙げることができる。
レーザー感熱記録材料に用いられる電子供与性染料前駆体としては、具体的には、トリフェニルメタン系化合物、フルオラン系化合物、フェノチアジン系化合物、インドリルフタリド系化合物、ロイコオーラミン系化合物、ローダミンラクタム系化合物、トリフェニルメタンフタリド系化合物、トリアゼン系化合物、スピロピラン系化合物、フルオレン系化合物等が挙げられる。電子受容性化合物としては、フェノール性化合物、有機酸若くはその金属塩、オキシ安息香酸エステル等が挙げられる。
また、レーザー熱転写記録材料に用いられる着色成分としては、具体的には、二酸化チタン、カーボンブラック、酸化亜鉛、プルシアンブルー、硫化カドミウム、酸化鉄、鉛、亜鉛、バリウム及びカルシウムのクロム酸塩等の無機顔料、アゾ系、チオインジゴ系、アントラキノン系、アントアンスロン系、トリフェンジオキサジン系、フタロシアニン系、キナクリドン系等の有機顔料が挙げられる。染料としては、酸性染料、直接染料、分散染料、油溶性染料、含金属油溶性染料等が挙げられる。
6−2.ダイレクト製版用平版印刷原版
光変換材料を、ダイレクト製版用平版印刷原版とする場合、支持体上に光熱変換層を設ける。光熱変換層上には、シリコンゴム層を積層してもよいし、更に、保護層等を積層してもよい。
支持体としては、例えば、紙、プラスチック(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、アルミニウム(アルミニウム合金も含む)、亜鉛、銅等のような金属の板、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、酪酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等のようなプラスチックフィルム等が挙げられる。
光熱変換層は、画像形成成分、バインダー樹脂等を含み、当該バインダー樹脂としては、上記近赤外線吸材料と同様のものを挙げることができる。また、画像形成成分を含む層を、光熱変換層の上に積層して設けてもよい。
画像形成成分としては、特に限定されず、熱によって物理的、化学的な変化で画像を形成する、公知の成分を用いることができる。場合によっては、光熱変換層(感光層または感熱記録層)上にシリコンゴム層を積層し、露光後、シリコンゴム層を密着または剥離することにより画像部を形成してもよい。
通常、光熱変換材料、画像形成成分、バインダー樹脂等を有機溶剤等に分散または溶解させ、支持体に塗布することにより、印刷用平版印刷原版を作製する。
支持体と光熱変換層との間には、接着性向上や印刷特性向上のためのプライマー層を設けてもよいし、支持体自身を表面処理してもよい。用いるプライマー層としては、特に限定されず、公知の成分を用いることができる。
光熱変換層又はシリコンゴム層には、表面保護のために保護膜を形成してもよい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、セロファン等をラミネートしたり、これらのフィルムを延伸したりして、保護膜とすることができる。
6−3.レーザー溶着
光熱変換材料をレーザー溶着に用いる場合、熱可塑性樹脂と、本発明の光熱変換材料とを含んでなるレーザー溶着用組成物としてもよい。
熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、熱可塑性を持つ公知のものを用いることができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルスルホン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリアセタール、シクロオレフィンポリマー、ポリフェニルスルフィド等を挙げることができる。
また、本発明の光熱変換材料を含んでなるレーザー溶着用組成物は、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、熱安定剤などの各種添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で含有することができる。着色剤としては、公知の無機又は有機の顔料又は染料を用いることができ、本発明のレーザー溶着用組成物からなる成形体を所望の色調に着色することが可能となる。
≪7.遮熱材料≫
本発明のフタロシアニン化合物は、700〜1200nmの近赤外線波長領域に吸収能を有することから、遮熱材料に使用することができる。即ち、本発明の遮熱材料は、本発明のフタロシアニン化合物を含有する。
本発明の遮熱材料の具体例としては、例えば、(本発明の)熱線吸収材料が挙げられる。なお、本明細書において、熱線吸収材料とは、700〜2500nmの波長領域に吸収能を有する材料を意味するものである。本発明の熱線吸収材料は、本発明のフタロシアニン化合物を含有するため、700〜1200nmの近赤外線波長領域での吸収能に特に優れる。
具体的な熱線吸収材料としては、より詳細には、熱線遮断フィルタ(遮熱フィルム);合わせガラス(特に窓ガラス)用の中間膜等が挙げられる。また、当該合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスも、本発明の熱線吸収材料に含まれる。当該遮熱フィルムや合わせガラスの用途は、それぞれ特に限定されない。合わせガラスの具体的な用途としては、例えば、車両用(電車、自動車等)、建築物用(ビル、住宅等)等が挙げられる。
当該熱線吸収材料は、本発明のフタロシアニン化合物以外に、熱線吸収剤を使用する。当該熱線吸収剤としては、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、酸化タングステン等の無機微粒子が挙げられる。当該熱線吸収剤は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
当該熱線吸収材料は、本発明のフタロシアニン化合物以外に、バインダー樹脂等を含有してもよい。当該バインダー樹脂としては、上記近赤外線吸収材料におけるバインダー樹脂と同様のものを挙げることができる。
本発明の熱線吸収材料を製造する方法としては、特に限定されない。
ここで、本発明の代表的な熱線吸収材料として、本発明のフタロシアニン化合物を含有する合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスの製造方法について、具体的に説明する。最初に、本発明のフタロシアニン化合物を、バインダー樹脂、熱線吸収剤、及びその他各種添加剤等とともに押出機、カレンダーロール等を用いて混練する。次いで、当該混練物を押出法、カレンダー法等の製膜法によって製膜することにより、シート状のガラス用中間膜(本発明の熱線吸収材料)を得ることができる。次に、当該ガラス用中間膜を2枚以上のガラスの間に挟んで、所定の条件下(温度・圧力等)で圧着することにより、合わせガラス(本発明の熱線吸収材料)を得ることができる。また、本発明のフタロシアニン化合物を含んでなる第1の層と、熱線吸収剤を含んでなる第2の層とを積層して多層構造の中間膜としてもよい。
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例の態様に限定されない。
測定の詳細
本発明において、吸収スペクトル、最大吸収波長及び半値幅の各値は、日本分光(株)製分光光度計V−570を用いて測定した。
実施例1
以下の(a)〜(d):
(a) 以下のA-1で示されるフタロニトリル系化合物0.51g、
(b) 以下のB-1で示されるフタロニトリル系化合物0.25g、
(c) ホルムアミド 0.08g、
(d) 1-ペンタノール 7ml、
を混合した後(A-1:B-1=1:1のモル比)、さらにt-BuOK(カリウム-t-ブトキシド)0.2gを加えて混合液を得た。前記混合液を70℃にまで昇温させ、同温度で塩化バナジウム0.1gを加えたのち、125℃まで昇温させて3時間撹拌し、生成液を得た。前記生成液を放冷した後、メタノールに排出し、析出した結晶をろ取した。前記結晶を乾燥した後、前記結晶をトルエン25mlに溶解させ、さらに活性白土を加えて撹拌した。次いで、前記撹拌後の混合物中の不溶物をろ別し、ろ液を濃縮して固形物を得た。前記得られた固形物をメタノールで洗い、120℃で乾燥した。これにより、図1の分光スペクトルを持つフタロシアニン化合物1-1(x=2)0.33gを得た。
実施例2
前記A-1で示されるフタロニトリル系化合物の使用量を0.51gに代えて0.25gとし、
前記B-1で示されるフタロニトリル系化合物の使用量を0.25gに代えて0.37gとした(A-1:B-1=1:3のモル比とした)以外は、実施例1と同様にして、目的とするフタロシアニン化合物1-2(x=1)を得た。
実施例3
前記A-1で示されるフタロニトリル系化合物の使用量を0.51gに代えて0.33gとし、
前記B-1で示されるフタロニトリル系化合物の使用量を0.25gに代えて0.33gとした(A-1:B-1=1:2のモル比とした)以外は、実施例1と同様にして、目的とするフタロシアニン化合物1-3(x=4/3)を得た。
参考例1
前記A-1で示されるフタロニトリル系化合物0.51g及び前記B-1で示されるフタロニトリル系化合物0.25gに代えて、前記B-1で示されるフタロニトリル系化合物0.5gを使用した以外は、実施例1と同様にして、フタロシアニン化合物1-4(x=0)を得た。
参考例2
前記A-1で示されるフタロニトリル系化合物0.51g及び前記B-1で示されるフタロニトリル系化合物0.25gに代えて、前記A-1で示されるフタロニトリル系化合物1.0gを使用した以外は、実施例1と同様にして、フタロシアニン化合物1-5(x=4)を得た。
実施例4
前記A-1で示されるフタロニトリル系化合物に代えて、以下のA-2で示されるフタロニトリル系化合物0.52gを使用した以外は、実施例1と同様にして(A-1:B-1=1:1のモル比)、目的とするフタロシアニン化合物1-6(x=2)を得た。
実施例5
前記A-1で示されるフタロニトリル系化合物に代えて、前記A-2で示されるフタロニトリル系化合物0.33gを使用した以外は、実施例3と同様にして(A-2:B-1=1:2のモル比)、目的とするフタロシアニン化合物1-7(x=4/3)を得た。
実施例6
前記A-1で示されるフタロニトリル系化合物に代えて、前記A-2で示されるフタロニトリル系化合物0.25gを使用した以外は、実施例2と同様にして(A-2:B-1=1:3のモル比)、目的とするフタロシアニン化合物1-8(x=1)を得た。
実施例7
前記A-1で示されるフタロニトリル系化合物に代えて、以下のA-3で示されるフタロニトリル系化合物0.51gを使用し、前記B-1で示されるフタロニトリル系化合物に代えて以下のB-2で示されるフタロニトリル系化合物0.45gを使用した以外は、実施例1と同様にして(A-3:B-2=1:1のモル比)、目的とするフタロシアニン化合物1-9(x=2)を得た。
実施例8
前記A-1で示されるフタロニトリル系化合物に代えて、前記A-3で示されるフタロニトリル系化合物0.51gを使用し、前記B-1で示されるフタロニトリル系化合物に代えて、以下のB-3で示されるフタロニトリル系化合物0.33gを使用した以外は、実施例1と同様にして(A-3:B-3=1:1のモル比)、目的とするフタロシアニン化合物1-10(x=2)を得た。
実施例9
前記A-1で示されるフタロニトリル系化合物に代えて、前記A-2で示されるフタロニトリル系化合物0.52gを使用し、前記B-1で示されるフタロニトリル系化合物に代えて、前記B-3で示されるフタロニトリル系化合物0.33gを使用した以外は、実施例1と同様にして(A-2:B-3=1:1のモル比)、目的とするフタロシアニン化合物1-11(x=2)を得た。
実施例10
前記A-1で示されるフタロニトリル系化合物に代えて、前記A-2で示されるフタロニトリル系化合物0.52gを使用し、前記B-1で示されるフタロニトリル系化合物に代えて、前記B-2で示されるフタロニトリル系化合物0.45gを使用した以外は、実施例1と同様にして(A-2:B-2=1:1のモル比)、目的とするフタロシアニン化合物1-12(x=2)を得た。
実施例11
前記A-1で示されるフタロニトリル系化合物に代えて、以下のA-4で示されるフタロニトリル系化合物0.52gを使用し、塩化バナジウムに代えて、塩化銅(I)0.06gを使用した以外は、実施例1と同様にして(A-4:B-1=1:1のモル比)、目的とするフタロシアニン化合物1-13(x=2)を得た。
実施例12
前記A-1で示されるフタロニトリル系化合物に代えて、前記A-3で示されるフタロニトリル系化合物0.51gを使用し、塩化バナジウムに代えて、塩化銅(I)0.06gを使用した以外は、実施例1と同様にして(A-3:B-1=1:1のモル比)、目的とするフタロシアニン化合物1-14(x=2)を得た。
実施例13
前記A-1で示されるフタロニトリル系化合物に代えて、前記A-4で示されるフタロニトリル系化合物0.52gを使用し、塩化バナジウムに代えて、塩化ニッケル0.08gを使用した以外は、実施例1と同様にして(A-4:B-1=1:1のモル比)、目的とするフタロシアニン化合物1-15(x=2)を得た。
実施例14
前記A-1で示されるフタロニトリル系化合物に代えて、前記A-3で示されるフタロニトリル系化合物0.51gを使用し、塩化バナジウムに代えて、塩化ニッケル0.08gを使用した以外は、実施例1と同様にして(A-3:B-1=1:1のモル比)、目的とするフタロシアニン化合物1-16(x=2)を得た。
試験例1(耐光性評価)
<薄膜作製>
実施例1〜14並びに参考例1及び2で得られたフタロシアニン化合物10mgを、それぞれポリメタクリレート18wt%トルエン溶液5mlに溶解し、ガラス基板上にスピンコート法により塗布して乾燥させて、膜厚1.4μmの薄膜を作製した。
また、比較例1及び2として、下記式A及びBで表される化合物についても、同様にして膜厚1.4μmの薄膜を作製した。
<耐光試験>
上記<薄膜作成>で得られた薄膜に、キセノン光(142klux)を96時間照射し、照射後の色素残存率をそれぞれ測定した。残存率は次式に従い計算した。透過率とは、作製した薄膜の、吸収極大波長で測定した値である。算出した色素残存率は、下記基準によって評価し、結果を表1に示した。
色素残存率(%)=100×(1−照射後の透過率)/(1−照射前の透過率)
○:色素残存率65%以上
△:色素残存率50%以上、65%未満
×:色素残存率50%未満
試験例2(分光スペクトル及び半値幅測定)
実施例1〜14並びに参考例1及び2で得られたフタロシアニン化合物の波長400nmから1200nmにおける吸光度の最大値が1となるように濃度を調整したトルエン溶液を調製し、光路長1cmの石英セルにより波長400nmから1200nmの範囲の吸収スペクトルを測定した。前記測定された吸収スペクトルより、最大吸収波長及び最大吸収ピークの半値幅を求めた。本明細書において半値幅とは、前記フタロシアニン化合物の最大吸収ピークにおいて、最大の吸光度の半分の値をとる2点の波長の差である。前記半値幅は、例えば、前記フタロシアニン化合物のトルエン溶液の吸収スペクトルを紫外可視分光光度計で測定することで得られる最大吸収ピークから求めることができる。
その結果を表2に示した。また、フタロシアニン化合物1−1(実施例1)、1−4(参考例1)及び1−5(参考例2)の吸収スペクトルを図1に示した。
分光スペクトルに関する考察
図1の分光スペクトルから明らかなように、実施例1のフタロシアニン化合物1−1の各分光スペクトルのピークは、それぞれ、近赤外線領域内に存在し、且つ、参考例1のフタロシアニン化合物1−4(x=0)における分光スペクトルのピークと参考例2のフタロシアニン化合物1−5(x=4)における分光スペクトルのピークとの間に位置する。また、実施例1のフタロシアニン化合物は、図1の分光スペクトルから明らかなように、参考例1及び2のフタロシアニン化合物と比較して半値幅が広く、近赤外線領域に幅広い吸収を有する。
即ち、実施例1のフタロシアニン化合物は、近赤外線領域を幅広く吸収する化合物であり、近赤外線吸収剤として有用であり、近赤外線吸収材料等の種々の用途において、好適に用いることができることが明らかとなった。