JP2016104551A - 多孔質積層体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】メソポーラスな多孔質層と、隣接する接着層とからなる積層体であって、該接着層の、180°剥離試験における、剥離速度30mm/minの際に測定される剥離強度が0.05N/25mm以上14N/25mm以下の範囲であり、80℃、50%RHで10日間の耐久試験前後での反射スペクトルのシフトの値が、−30nm以上200nm以下であることを特徴とする積層体。
【選択図】図1
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Description
例えば、シリカを用いたメソポーラスな多孔質体は、シリカ自身が可視光に対し透明であることから、屈折率の低い透明な物質として用いることができる。このような可視光に対し透明な多孔質体は、透明粒子の分散液を塗布、乾燥させるもの(例えば特許文献1な
ど)から、アルコキシシラン類の加水分解物と有機高分子の混合液を塗布し、これを加熱
してシリカ膜を作成すると同時に、有機高分子を焼き跳ばすことにより多孔質体としたりすること(例えば特許文献2)などにより得ることができる。
特にガラスの表面にこのメソポーラスな多孔質体を設けた場合、多孔質体側から来た光を反射せず、ガラス内に取り込みやすい。また一方、ガラス側からの光に対しては、白色や鏡面にして反射させるより、メソポーラス多孔質体のような低屈折率の膜を設けて、全反射する光の割合を増やすように用いることもできる。
れる、硬化することなく接着する接着剤の方が、普通に考えればいつまでも変形可能であるため、メソ孔中に入りやすいと思われたが、意外なことにメソ孔中に入らず、メソポーラス多孔質層の光学的特性を維持しやすいことも判った。
そしてまた本発明者らは、多孔質層の膜の孔の径の分布に着目した。すなわち多孔質層を形成するマトリクスに囲まれている内部と、外側に解放されている表面では、わずかであるが孔の径が異なり、表面の方が大きいこと、そしてこの孔の径の差については、多孔質層の形成方法により多少の差が有るにしても、表面と内部の構造的な差により、必ず発生するものであることを見出した。
(1)メソポーラスな多孔質層と、隣接する接着層とからなる積層体であって、該接着層の、180°剥離試験における、剥離速度30mm/minの際に測定される剥離強度が0.05N/25mm以上14N/25mm以下の範囲であり、80℃、50%RHで10日間の耐久試験前後での反射スペクトルのシフトの値が、−30nm以上、200nm以下であることを特徴とする積層体。
(3)該高分子化合物がアクリル系樹脂であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の積層体。
(4)該多孔質層が多孔質シリカである(1)乃至(3)のいずれかに記載の積層体。
(5)該多孔質層の屈折率が1.30以下である(1)乃至(4)のいずれかに記載の積層体。
本発明の積層体は、メソポーラスな多孔質層と隣接する接着層とからなる積層体である。もちろんこの積層体に隣接して他の層が存在していても良い。好ましくはメソポーラスな多孔質層が、屈折率1.40以上の層に隣接していることであり、より好ましくはかかる層が、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、アクリル系樹脂、ガラス等の実質的に無着色透明な層であることである。透明であることで、ディスプレイや照明用の導光板などの光学デバイス等への応用が期待できる。そしてもっとも好ましいメソポーラスな多孔質層に隣接し、接着層の反対側にある層は、ガラスから成る層である。
本発明に用いられる接着層は、接着能力を有する層であり、通常接着剤である高分子化合物を含み、その180°剥離試験における、剥離速度30mm/minの際に測定される剥離強度が0.05N/25mm以上、14N/25mm以下の範囲であることを特徴としている。
たは細孔入り口近傍に止まる。また、高温環境下に曝された際の、膨張による膜の破壊(、それに伴う浸み込みや屈折率上昇)が起こらなくなる。
またこの接着層は、本発明の積層体が光学的な作用を期待して用いられることを考えると、アクリル系樹脂であることが好ましい。また、アクリル系樹脂は本発明の多孔質層の好ましい材料であるシリカ材料との親和性が高く、層間の密着性の観点からも好ましい。アクリル系樹脂とはアクリル酸エステルおよび/又はメタクリル酸エステルの重合体またはそれらの共重合体を示す。
アクリル系樹脂に用いられるアクリル酸エステルの種類に制限は無い。好適なものの例を挙げると、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n‐プロピル、アクリル酸i‐プロピル、アクリル酸n‐ブチル、アクリル酸sec‐ブチル、アクリル酸i‐ブチル、アクリル酸t‐ブチル、アクリル酸n‐ペンチル、アクリル酸1‐メチルブチル、アクリル酸1‐エチルプロピル、アクリル酸1,1‐ジメチルプロピル、アクリル酸2−メチルブチル、アクリル酸2‐エチルプロピル、アクリル酸2,2‐ジメチルプロピル、アクリル酸‐3メチルブチル、アクリル酸n‐ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸n‐ヘプチル、アクリル酸n‐オクチル、アクリル酸2‐エチルヘキシル、アクリル酸n‐ノニル、アクリル酸n‐デシル、アクリル酸n‐ウンデシル、アクリル酸n‐ドデシル、アクリル酸n‐トリデシル、アクリル酸n‐テトラデシル、アクリル酸n‐ペンタデシル、アクリル酸n‐ヘキサデシル、アクリル酸n‐ヘプタデシル、アクリル酸n‐オクタデシル、アクリル酸β‐シアノエチル、アクリル酸β‐クロロエチル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジルなどが挙げられる。
(メタクリル酸エステル)
アクリル系樹脂に用いられるメタクリル酸エステルの種類に制限は無い。好適なものの例を挙げると、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n‐プロピル、メタクリル酸i‐プロピル、メタクリル酸n‐ブチル、メタクリル酸sec‐ブチル、メタクリル酸i‐ブチル、メタクリル酸t‐ブチル、メタクリル酸n‐ペンチル、メタクリル酸1‐メチルブチル、メタクリル酸1‐エチルプロピル、メタクリル酸1,1‐ジメチルプロピル、メタクリル酸2−メチルブチル、メタクリル酸2‐エチルプロピル、メタクリル酸2,2‐ジメチルプロピル、メタクリル酸‐3メチルブチル、メタクリル酸n‐ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸n‐ヘプチル、メタクリル酸n‐オクチル、メタクリル酸2‐エチルヘキシル、メタクリル酸n‐ノニル、メタクリル酸n‐デシル、メタクリル酸n‐ウンデシル、メタクリル酸n‐ドデシル、メタクリル酸n‐トリデシル、メタクリル酸n‐テトラデシル、メタクリル酸n‐ペンタデシル、メタクリル酸n‐ヘキサデシル、メタクリル酸n‐ヘプタデシル、メタクリル酸n‐オクタデシル、
メタクリル酸β‐シアノエチル、メタクリル酸β‐クロロエチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジルなどが挙げられる。
(アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルの好ましい組み合わせ)
アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルを2種以上併用する場合、流動性と凝集力のバランスという観点では、その組み合わせとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のエステルのアルキル基が短いものとアクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2‐エチルヘキシルなどのエステルのアルキル基が比較的長いものとの組み合わせが好ましい。アルキル基の炭素鎖の長さが、1〜3のエステルは比較的流動性が低く、そのため濡れ性が低い。また、結晶化傾向が小さい。一方アルキル基の炭素鎖の長さが4〜8程度のエステルは比較的流動性が高く、そのため濡れ性が高い。すなわち、両者の配合比率の制御によって、流動性すなわち濡れ性のより精密な制御が可能となる。
接着層の膜厚は、0.1μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、1000μm以下が好ましく500μm以下がより好ましく、300μm以下がさらに好ましく、最も好ましくは5μm以上、100μm以下である。上記範囲の膜厚であれば、貼付時に容易に破れることはなく、また、十分な透明性を確保できる。接着層の膜厚は厚さ計などで測定できる。
接着層の膜厚をこのように高めにすることにより、接着層に含まれる接着剤の流動性が十分に得られ、その分柔軟性に富み、より優れた粘着力を得ることができる。
同様に、多孔質膜の生産性向上の観点から、接着層の膜厚は通常600μm以下、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下であり、特に好ましくは80μm以下であり、最も好ましくは60μm以下である。一般に接着剤、あるいは粘着剤とよばれるものは、膜厚を厚くするほど、内部に溶剤が残留しやすくなる。これを防ぐためには長時間の乾燥が必要になる。したがって、上述の膜厚の上限値以下にすることにより、乾燥時間を短く、乾燥温度を下げられるという生産上の利点が得られる。
本発明においては、80℃、50%RHで10日間の耐久試験(環境試験)前後での反射スペクトルのシフトが、−30nm以上、200nm以下であることを要件としている。以下この反射スペクトルのピークの波長シフトについて説明する。
多孔質層の上に接着層を形成した直後と耐久試験(環境試験)後の反射スペクトルの400−1000nmの間での、接着層形成直後の反射スペクトルの最小反射率ピークのピーク波長が変化していた場合、その試験後のシフト幅を「ピークシフト」と呼び、試験後にピークが低波長シフトした場合を正にとり、高波長シフトした場合を負にとる(例:耐久試験(環境試験)前に最小反射率波長が650nmで、そのピークが環境試験後に615nmに変化した場合、ピークシフト=650nm − 615nm = +35nm)。
くなったことを意味している。
ピークシフトは、−10nm以上、+10nm以下の範囲であれば、耐久試験(環境試験)の前後で多孔質層がほぼ変化していないことを意味しているため、最も好ましい。
本発明のより好ましい形態としては、多孔質層が可視光に対し、実質的に透明であることであり、具体的には透過率が90%以上であることが好ましい。本発明は多孔質層の低屈折率を維持したまま、他の物質を接着層を介して多孔質層と接着できる。
多孔質層を構成する元素として、陽イオンにケイ素以外を含んでいても良いが、好ましくは陽イオン中、ケイ素が90mol%以上となることが好ましく、より好ましくは95
mol%以上、最も好ましくは不可避不純物や微量添加物を除く残りがケイ素単独であることである。
ましく、1.23以下がさらに好ましい。屈折率が1.15以上であると、本発明で規定する特性を満たす接着層を、比較的容易に、その多孔質層上に設け、かつ十分な接着力が得られるため、好ましい。また屈折率が1.30以下であると、ガラスに対し、屈折率が低くなるため、光学的な効果(全反射のしやすさや、ガラス−多孔質層界面の屈折率差)を得ることができる。一方下限の屈折率1.10以上であると、層として接着層貼り付け時にかかる力や接着層の上に別の層を設けた際に、その荷重に耐える、あるいは温度変化による接着層−多孔質層界面での熱膨張率差による多孔質層破壊が容易に起こらない程度に十分な強度が得られやすいので好ましく、また、接着層の成分が容易に浸入できるほど多孔質層の穴が大きく、あるいは多くなりすぎたりすることも無いため好ましい。
さらに、接着層を設けた後の積層体の光学的性能・剥離強度の観点からは、250nm以上が好ましく、より好ましくは300nm以上、そして最も好ましくは500nm以上である。また上限値としては3μm以下が好ましく、2μm以下がより好ましく、最も好ましくは1.2μmである。250nm以上とすることにより接着層に極めて微量の低分子量成分や残留溶剤が入った場合の影響、特に屈折率の上昇を防ぐことができ、工業的に好ましい。また、多孔質層は、光学的特性を出すための層であるので、いたずらに厚くするのは無駄である点から上述の上限値以下であることが好ましい。
尚、メソポーラスとは、多孔質であって、その内部の孔が、2−50nm程度の細孔であるものを意味する。
本発明に用いられるシリカ多孔質層(以下、単に「シリカ多孔質層」ということがある)を製造するには、まず、原料となる組成物を調合し、これを膜化した後、加熱してシリカ多孔質層を得る。
また、本発明に用いられるシリカ多孔質層の製造においては、必要に応じて、その他の操作を行なってもよい。即ち、本発明の効果を著しく損なわない限り、以下に説明する各工程の前、工程中及び工程後の任意の段階で、任意の工程を行なってもよい。例えば、本発明のシリカ多孔質膜の製造に用いる組成物の調合中又は調合後に熟成を行なってもよく、硬化後の本発明のシリカ多孔質膜の冷却及び後処理などを行なってもよい。
まず、本発明に好適なシリカ多孔質層の製造に用いる組成物について、その配合成分、調合方法を説明する。
アルコキシシランとしては、テトラアルコキシシラン、モノアルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、トリアルキルアルコキシシラン、これらの加水分解物及び部分縮合物(オリゴマー等)などが挙げられる。
テトラアルコキシシランの種類に制限は無い。好適なものの例を挙げると、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ(n−プロポキシ)シラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ(n−ブトキシ)シラン、テトラ(t−ブトキシ)シラン、テトラ(n−ペントキシ)シラン、テトラ(イソペントキシ)シランなどが挙げられる。
モノアルキルトリアルコキシシランの種類に制限は無い。好適なものの例を挙げると、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリ−n−プロポキシシラン、トリイソプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−プロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリ−n−プロポキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリ−n−プロポキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリ−n−プロポキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシランなどが挙げられる。また、ケイ素原子に置換するアルキル基が反応性官能基を有する3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、3−カルボキシプロピルトリメトキシシラン、3−トリハイドロキシシリル−1−プロパン−スルフォン酸などを用いることもできる。
ジアルキルジアルコキシシランの種類に制限は無い。好適なものの例を挙げると、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルジ−n−プロポキシシラン、メチルジイソプロポキシシラン、エチルジメトキシシラン、エチルジエトキシシラン、エチルジ−n−プロポキシシラン、エチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ−n−プロポキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジ−n−プロポキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルエトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−n−プロポキシシラン、ジ−n−プロピルジイソプロポキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルエトキシシラン、ジイソプロピルジ−n−プロポキシシラン、ジイソプロピルジイソプロポキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルエトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−n−ブチルジイソプロポキシシラン、ジ−sec−ブチルジメトキシシラン、ジ−sec−ブチルエトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−sec−プロポキシシラン、ジ−sec−ブチルジイソプロポキシシラン、ジ−tert−ブチルジメトキシシラン、ジ−tert−ブチルエトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−tert−ブチルジイソプロポキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジ−n−プロポキシシラン、ジフェニルジイソプロポキシシランなどが挙げられる。また、ケイ素原子に置換するアルキル基が反応性官能基を有するN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランなどを用いることもできる。
トリアルキルアルコキシシランの種類に制限は無い。好適なものの例を挙げると、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリ−n−プロピルメトキシシラン、トリ−n−プロピルエトキシシランなどが挙げられる。
アルコキシシランとしては、上記のもの以外に、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,4−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,3,5−トリス(トリメトキシシリル)ベンゼン等の有機残基が2つ以上のトリアルコキシシリル基を結合したものなどを用いることもできる。
アルコキシシランを2種以上併用する場合、ゾル−ゲル反応の制御という観点では、その組み合わせとしては、テトラアルコキシシランとモノアルキルトリアルコキシシラン、モノアルキルトリアルコキシシラン同士が好ましく、中でも、テトラアルコキシシランとモノアルキルトリアルコキシシランの組み合わせがより好ましい。テトラアルコシシランによってシリカ骨格が強固になり、モノアルキルトリアルコキシシランによって屈折率を低下させることができる。即ち、両者の配合比率の制御によってシリカ骨格強度と屈折率
の制御が可能となる。また、基材への濡れ性の観点では、テトラアルコキシシランとジアルキルジアルコキシシラン、モノアルキルトリアルコキシシランとジアルキルジアルコキシシランが好ましい。
2種以上のアルコキシシランを併用する場合、その配合比率は、本発明の効果を著しく損なわない限り特に制限はない。2種のアルコキシシランを併用する場合、例えば、形成されるシリカ体の耐水性の観点から、アルコキシシランのケイ素原子換算で、0.5:9.5〜5:5が好ましく、2:8〜5:5がより好ましく、2.5:7.5〜5:5が最も好ましい。
本発明のシリカ多孔質層の製造に用いる組成物は水を含有する。水はゾル−ゲル反応においては必須であるが、本製造法では組成物の表面張力を制御し、製膜工程において良質なシリカ系前駆体膜を形成する上で重要な役割をする。用いる水の純度には特に制限はないが、通常は、イオン交換及び蒸留のうち、いずれか一方又は両方の処理を施した水を用いればよい。ただし、例えば光学用途積層体のような微小不純物を特に嫌う用途分野に、本発明の積層体を用いる場合には、より純度の高いシリカ多孔質層が望ましいため、蒸留水をさらにイオン交換した超純水を用いることが好ましい。また、不純物の中でも100nm以上のコンタミはゾル−ゲル反応の進行に影響を与える恐れがある。従って、例えば0.01μm〜2.5μmの孔径を有するフィルターを通した水を用いることが好ましい
。
本発明に好適なシリカ多孔質膜の製造に用いる組成物は有機溶媒を含有する。有機溶媒としてはアルコール類が最も適している。アルコール類は、前記アルコキシシラン、その加水分解物、さらには部分縮合物に対して親和性を有するため、シリカ多孔質膜形成中のゾル−ゲル反応を均質に進行させるために好ましい。さらに製膜工程に生じる気−液(組成物)界面、固(基材)−液(組成物)界面において安定した状態を保つことで、良質なシリカ系前駆体膜を形成するために有効である。
が好ましく、10℃以上がより好ましく、20℃以上がさらに好ましい。また、全アルコール類に対する高沸点側のアルコール類の割合は、通常5重量%以上であり、好ましくは10重量%以上、より好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上、特に好ましくは80重量%以上とする。なお、当該割合の上限は通常98重量%である。この範囲にすることにより、得られるシリカ多孔質層の表面の平滑性が向上する。
好適な有機溶媒の例を挙げると、酢酸メチル、エチルアセテート、イソブチルアセテート、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のエーテル類又はエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−ホルミルモルホリン、N−アセチルモルホリン、N−ホルミルピペリジン、N−アセチルピペリジン、N−ホルミルピロリジン、N−アセチルピロリジン、N,N’−ジホルミルピペラジン、N,N’−ジホルミルピペラジン、N,N’−ジアセチルピペラジン等のアミド類;Y−ブチロラクトン等のラクトン類;テトラメチルウレア、N,N’−ジメチルイミダゾリジン等のウレア類;ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
本発明のシリカ多孔質層の製造に用いる組成物には触媒を含有していてもよく、触媒としては、例えば上述したアルコキシシランの加水分解及び脱水縮合反応を促進させる物質を任意に用いることができる。
その例を挙げると、フッ酸、燐酸、ホウ酸、塩酸、硝酸、硫酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、メチルマロン酸、ステアリン酸、リノレン酸、安息香酸、フタル酸、クエン酸、コハク酸、乳酸、リンゴ酸、マンデル酸、ピルビン酸、マロン酸、アジピン酸、グルタル酸、サリチル酸、アコニット酸などの酸類;アンモニア、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類;水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等の塩基性アンモニウム塩類;ピリジンなどの塩基類;アルミニウムのアセチルアセトン錯体などのルイス酸類;その他、酸性及び塩基性のアミノ酸類などが挙げられる。
アルミニウム錯体としては、例えば、ジ−エトキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−n−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−イソプロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−n−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−sec−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−tert−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノ−n−プロポキ
シ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノ−sec−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノ−tert−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジ−n−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジイソプロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジ−n−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジ−sec−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジ−tert−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノ−n−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノ−sec−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノ−tert−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム等のアルミニウムキレート化合物等を挙げることができる。
易に制御するためには、酸類若しくは金属キレート化合物が好ましく、酸類がさらに好ましい。なお、触媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
触媒の使用量は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、本発明のシリカ多孔質膜の製造に用いる組成物中のアルコキシシランに対して、通常0.001mol倍以上、中でも0.003mol倍以上、特には0.005mol倍以上が好ましく、また、通常0.8mol倍以下、中でも0.5mol倍以下、特には0.1mol倍以下が好ましい。触媒の使用量をこの範囲にすることで、加水分解反応が適度に進み、製造後にシリカ多孔質層中にシラノール基などの活性基が少なくなり、シリカ多孔質層の耐水性が向上し、反応制御が容易になり、製造中に触媒濃度が更に高くなることで、シリカ多孔質層の表面性が向上する。
本発明のシリカ多孔質層の製造に用いる組成物は、造膜性の観点で、pHが6以下であることが好ましい。組成物のpHはより好ましくは5.5以下、さらに好ましくは5.0以下、特に好ましくは4.5以下である。この範囲にすることで、本発明のシリカ多孔質膜の製造時に後述の基材の表面改質を同時に行うことができ、より造膜性が向上する傾向になる。
本発明のシリカ多孔質膜の製造に用いる組成物には、上述したアルコキシシラン、水、有機溶媒、触媒以外の成分を含有していても良い。また、当該成分は1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(有機ポリマー)
本発明のシリカ多孔質膜の製造に用いる組成物は、鋳型材として有機ポリマーを含有していてもよく、有機ポリマーを含有する組成物を基材に塗布してシリカ系前駆体膜を形成した後、抽出工程で有機ポリマーの全部又は一部を除去することで、より高い空隙率を有するシリカ多孔質膜が得られる。
(メタ)アクリレート系高分子は、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、それらの誘導体より構成される。具体例として、ジエチレングリコールアクリレート、ジプロピレングリコールアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、アクリルアミド、ビニルピリジン、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジエチレングリコールメタクリレート、ジプロピレングリコールメタクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、アミルアクリレート、2−メトキシプロピルアクリレート、2−エトキシプロピルアクリレート
、2−エチルヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、アミルメタクリレート、2−メトキシプロピルメタクリレート、2−エトキシプロピルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリエステル系高分子は炭素数2以上の脂肪族鎖及びエステル結合からなる化合物で構成されている。具体例として、ポリエチレンオキサレート、ポリエチレンマロネート、ポリエチレンスクシネート、ポリエチレングリタレート、ポリプロピレンオキサレート、ポリプロピレンマロネート、ポリプロピレンスクシネート、ポリプロピレングリタレート、これらのメチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
範囲に収めることで、加水分解基含有シランのゾル−ゲル反応中において形成される加水分解基含有シランの加水分解物や縮合物に対して、鋳型材としての有機ポリマーがさらに安定に存在することができる。
本発明のシリカ多孔質層の製造に用いる組成物には、本発明の効果を著しく損なわない限り、界面活性剤を含有してもよく、特に基材の大面積化においては、界面活性剤を添加することで造膜性が著しく向上する場合がある。界面活性剤としては公知の何れを用いることもでき、その種類、組み合わせ、比率には特に制限はなく、以下の2種以上の界面活性剤を用いてもよい。
また、シリコーン系界面活性剤として、例えばSH21シリーズ、SH28シリーズ(東レ・ダウコーニング株式会社)などが挙げられる。
上述した組成物を構成する各成分を混合して、本発明のシリカ多孔質層の製造に用いる組成物を調合する。この際、各成分の混合の順番に制限は無い。また、各成分は、全量を一回で混合しても良く、2回以上に分けて連続又は断続的に混合しても良い。
ただし、従来、制御困難とされているゾル−ゲル反応を制御して、組成物をより工業的
に有利に調合するためには、以下の要領で混合することが好ましい。即ち、アルコキシシラン、水、溶媒、触媒を混合し、その混合物(以下、「アルコキシシラン混合物」と称す場合がある。)を一定のゾル−ゲル反応(熟成)させることでアルコキシシランをある程度加水分解及び脱水重縮合させる。そして、鋳型材として有機ポリマーを用いる場合は、アルコキシシラン混合物に有機ポリマーを混合して組成物を調合する。これにより、ゾル−ゲル反応条件下で、シランと鋳型材としての有機ポリマーとの親和性を維持することができる。なお、熟成は前記の混合物と有機ポリマーとを混合した後で行なってもよい。
(アルコキシシラン混合物の熟成)
前記熟成の際、アルコキシシランの加水分解・脱水重縮合反応を進めるためには、加熱することが好ましい。加熱条件として、用いる溶媒の沸点を超えなければ、特に制限は無いが、通常5℃以上、中でも10℃以上が好ましく、20℃以上とすることがさらに好ましく、30℃以上とすることが最も好ましい。加熱温度を適当にすることにより、十分なゾル−ゲル反応が進行し、アルコキシシランの縮合体の成長が十分行われ、形成される膜の強度が高くなる。また、十分なゾル−ゲル反応が進行すれば、多孔質の孔を作る鋳型材として有機ポリマーを用いる場合、有機ポリマーとの親和性が得られやすい。一方、加熱温度の上限は、90℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましい。加熱温度をこの上限以下にすることで、アルコキシシランの縮合反応が進行しすぎて、縮合体が沈殿を形成して、アルコキシシラン混合物が不均一になることを防げる。また、シラン混合物中の鋳型材である有機ポリマーの分子運動が激しくなり、シランと有機ポリマーとの親和性が制御できなくなる可能性も抑えられる。
また、上記熟成後、製膜工程前に用いる組成物は有機溶媒を更に混合して希釈することが好ましい。これにより、組成物内でのゾル−ゲル反応速度を低下させることができ、組成物のポットライフを長く維持することが可能となる。また、シリカ多孔質膜の製造における歩留まりの観点では、加熱を伴わない熟成を行うことが好ましい。加熱を伴わない熟成は、組成物の調製後に行ってもよい。組成物のポットライフの観点では、中和工程を行ったり、触媒除去工程を行ってもよい。
製膜工程では、上述の本発明のシリカ多孔質層の製造に用いる組成物を基材上に塗布、展開することで、シリカ系前駆体膜を製造する。
なお、製膜工程は一回で行なってもよいが、二回以上に分けて行なってもよい。例えば、後述する粗乾燥工程を介して、製膜工程を二回以上行なうようにすれば、積層構造を有するシリカ多孔質膜を形成することが可能である。これは、例えば屈折率が異なるシリカ多孔質膜を積層して形成したい場合などに有用である。
ましくは光学用途に使用できる可視光を透過する材質であり、樹脂でもガラスでもよいが、好ましくはガラスであり、特に好ましくは光学ガラスである。この基材は、多孔質層に隣接することとなる。この時の基材の屈折率は、1.40以上であることが、多孔質層との屈折率の差による光学的効果が得られやすいため好ましい。
<製膜方法>
本発明において、基材への本発明のシリカ多孔質層の製造に用いる組成物の製膜方法に特に制限はなく、例えば、スピンコーター、スプレーコーター、ダイコーター、バーコーター、テーブルコーター、アプリケーター、ドクターブレードコーターなどを用いて塗布する方法や、ディップコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法などが挙げられる。
ましく、0.5μm以上がさらに好ましく、0.8μm以上が最も好ましい。0.1μm以上とすることで組成物への流延時のシェアが大きくなることなく、ゾル−ゲル反応が安定に進む。
ダイコート法は、溶液供給点より本発明のシリカ多孔質膜の製造に用いる組成物を一定流量で供給し、それをスリットを経てダイリップより吐出することにより基材表面上にシリカ系前駆体膜を形成させるものであり、この際、基材を一定速度で搬送させることにより、目的とするシリカ多孔質層を形成することができる。
また、ダイリップ(スリット)と基板との間隔(距離)であるGapには特に制限はないが、通常、5μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは30μm以上、また、通常、100μm以下、好ましくは80μm以下、より好ましくは50μm以下の範囲にすることにより、良質なシリカ系前駆体膜を得ることができる。
使用し得るダイの形状としては、溶液等を横方向に均一に分配し得るものであれば特に制限はない。例としては、一般のフィルムキャスティング時に使用されるTダイ形状のもの、あるいはフィッシュテイルダイ形状のもの、あるいはコートハンガーダイ形状のもの等が挙げられる。さらには、ダイ横方向への分配をより均一にしやすくするために、ダイリップ間隔の調整機構を有するものであることが望ましい。
製膜工程を行う際の相対湿度には特に制限はないが、相対湿度を制御することによりさらに安定した連続コーティングが可能となる。
製膜工程を行なう際の温度に制限は無いが、通常0℃以上、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上、さらに好ましくは20℃以上、最も好ましくは25℃以上、また、通常100℃以下、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、さら好ましくは60℃以下、最も好ましくは50℃以下である。シリカ系前駆体膜を製造する際の温度をこの範囲とすることで適切な速度でゾル−ゲル反応が進み、均質なシリカ系前駆体膜を得られやすく、未加水分解のアルコキシシランが少なくなり、得られるシリカ多孔質膜の耐久性が向上する。
また、製膜工程における雰囲気に制限は無い。例えば、空気雰囲気中でシリカ系前駆体膜の製膜を行なっても良く、例えばアルゴン等の不活性雰囲気中でシリカ系前駆体膜の製膜を行なってもよい。
本発明に使用されるシリカ多孔質層の製造方法では、本発明のシリカ多孔質層の製造に用いる組成物を基材上に製膜するに先立って、組成物の濡れ性、製造されるシリカ系前駆体膜の密着性の観点から、基材に表面処理を施してもよい。そのような基材の表面処理の例を挙げると、シランカップリング処理、コロナ処理、UVオゾン処理、プラズマ処理などが挙げられる。このような表面処理は、1種のみを行なってもよく、2種以上を任意に
組み合わせて行なってもよい。
(粗乾燥)
本発明のシリカ多孔質膜の製造方法では、上述の製膜工程の後に、シリカ系前駆体膜中のアルコール類又は触媒を除去することを目的として、シリカ系前駆体膜を粗乾燥させる粗乾燥工程を行なってもよい。粗乾燥工程を行なうことで、シリカ系前駆体膜中のアルコール類や水や触媒が除去されることで、前駆体膜中に存在する有機ポリマー(鋳型材)とシリカ成分が安定した状態で構造を形成し、シリカ系前駆体膜の構造を安定化することができる。
粗乾燥の手段も任意である。例えば粗乾燥を加熱乾燥により行なう場合、加熱乾燥の手段の例として、ホットプレート、オーブン、赤外線照射、電磁波照射等が挙げられる。また通風加熱乾燥の手段としては、例えば送風乾燥オーブン等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
粗乾燥時の湿度も制限されないが、シリカ系前駆体膜の吸湿を防ぐため、通常は60%RH程度以下とすることが望ましく、好ましくは常圧で30%RH以下、或いは真空状態(湿度0%RH)とすることが望ましい。
粗乾燥時間も制限されず、シリカ系前駆体膜中のアルコール類や水や触媒が除去できれば任意であるが、粗乾燥時の温度・圧力・湿度等の条件や、本発明のシリカ多孔質膜の製造に用いる組成物中に含まれるアルコール類や溶媒の沸点、プロセス速度、シリカ系前駆体膜の特性等を考慮して決定することが好ましい。粗乾燥時間は、通常1秒以上、好ましくは1分以上、より好ましくは1時間以上、また、通常100時間以下、好ましくは24時間以下、より好ましくは3時間以下の範囲が望ましい。
上述した製膜工程の後に、シリカ系前駆体膜を酸又は塩基と接触させることもできる。この工程により、シリカ系前駆体膜のアルコキシシラン類の加水分解縮合反応を促進させ、シリカ系前駆体膜の構造体を維持して安定したシリカ多孔質膜を形成することができ、好ましい。
,トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン等が挙げられる。これらの塩基についても1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、酸・塩基処理の際に加熱を行なってもよい。加熱温度は、通常室温以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは100℃以上で、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下、特に好ましくは120℃以下である。
酸・塩基処理を行なう際の圧力は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、減圧環境としてもよく、加熱を行う場合は、圧力を、通常0.2MPa以下、好ましくは0.15MPa以下、より好ましくは0.1MPa以下とする。一方、圧力の下限に制限は無いが、通常10−4MPa以上、好ましくは10−3MPa以上、より好ましくは10−2MPa以上である。この範囲にすることでアルコキシシランのゾル−ゲル反応よりもアルコール類の揮発が進行し、吸湿性の高いシリカ多孔質膜となることを容易に防ぐことができ、光学特性の環境依存性を減らすことができる。
上述した製膜工程の後に、必要に応じて、シリカ系前駆体膜を溶媒と接触させることで、鋳型材である有機ポリマーの抽出工程を行なう。溶媒との接触により、鋳型材の有機ポリマーをアルコキシシランからなるシリカ成分により形成された構造から除去することで、より空隙率の高い多孔質構造を得ることができる。さらに得られたシリカ多孔質膜は低い屈折率を有するため、高い光学特性が実現される。
以上のように、抽出処理を行なうことにより、基材上に空隙率の高いシリカ多孔質膜が形成された積層体を得ることができる。
乾燥工程とは、抽出工程で抽出に使用した溶媒をシリカ系前駆体膜より除去する工程である。
この際、乾燥温度は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常200℃以下、好ましくは180℃以下、より好ましくは120℃以下、更に好ましくは100℃以下で、また通常室温以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは60℃以上である。また、乾燥工程における雰囲気は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であり、例えば、真空環境、不活性ガス環境であってもよい。
前述の製膜工程の後、本発明の積層体の製造に用いる組成物で形成されたシリカ系前駆体膜を加熱する加熱工程を行なう。加熱工程により、シリカ系前駆体膜中の本発明の積層体の製造に用いる組成物中の有機溶媒及び水が乾燥、除去されて、膜が硬化することにより、本発明の積層体に用いられる多孔質層の一例であるシリカ多孔質膜が形成される。
さらに、接着層を設けた後の積層体の光学的性能・剥離強度の観点から、加熱温度は70℃〜570℃が好ましく、150℃〜480℃がより好ましく、180℃〜300℃が最も好ましい。シリカは一般的にその表面にシラノール基を有し、シラノール基量は、加熱温度が高くなるほどシラノール基間の縮合反応が進行するために少なくなる。したがって、加熱温度を下限値以上とすることにより、シラノール基量が適切になり、表面が必要以上に親水性が高くなることを防ぎ、結果として多孔質膜の吸湿が抑えられ、多孔質膜の屈折率が低く保たれ、本発明の積層体の光学性能を高く保つ。一方で、加熱温度を上限値以下にすることで、シラノールの縮合反応が適度に進行するため、シリカ骨格に歪が生じにくく、マイクロクラックなどの欠陥が生じにくく、接着層を設けた際に、そのクラック内に接着剤が浸入し、多孔質膜の屈折率が上昇することを防ぎ、結果として積層体の光学的性能を高く保つことができる。
加熱を行なう際、昇温速度は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1℃/分以上、好ましくは10℃/分以上、また、通常500℃/分以下、好ましくは300℃/分以下で昇温する。昇温速度を下限値以上にすることで膜が緻密になりすぎ、膜
歪みが大きくなって耐水性が低くなる可能性を防ぐことができる。また昇温速度を上限値以下とすることで膜歪みが大きくなって耐水性が低くなったり、シリカ多孔質層及び基材のひび割れ、破損等を引き起こす可能性を低くすることができる。
以上のように、加熱処理を行なうことにより、本発明の積層体に用いられるシリカ多孔質層の製造に用いる組成物よりなるシリカ前駆体膜を硬化させて、本発明に使用できるメソポーラス多孔質層の一例である、シリカ多孔質層を得ることができる。
本発明においては、この多孔質層の上の全体あるいは特定の領域に、接着層を設ける。この接着層としては、離型紙など上に、本発明の高分子化合物を含む接着層の成分を乗せ、これを既に形成された多孔質層の上に貼り付けて、接着層から離型紙などを剥がすことにより、本発明の積層体を得ることができる。この時接着層は自身の接着性で多孔質層と接着され、本発明の積層体が得られる。この積層体は、接着層の高分子が本発明の規定の範囲になる場合、温度を上げて加速試験を行っても、多孔質層のごく表面のみに分布し、内部への侵入はごくわずかにとどまる。このため、多孔質層が低屈折膜としての特性を十分に発揮することができる。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
〔実施例1〕
〔多孔質膜形成用組成物の調合〕
テトラエトキシシラン 6.8g、メチルトリエトキシシラン 6.9g、エタノール
2.3g、H2O 5.6g、及び0.3重量%の塩酸水溶液 13gを混合し、60℃、さらに室温で30分間攪拌することで、混合物(A)を調整した。
トリブロックコポリマー(BASF社製 PLURONIC P123(数平均分子量:Mn〜5800)) 6.2g、エタノール 3.1gとを混合した混合物(B)に、前記混合物(A)を添加し、室温で30分間攪拌し混合物(C)を調整した。
この混合物(C)50mlと、希釈溶媒として1−ブタノール50mlとを混合し、室温で30分間攪拌することで多孔質膜形成用組成物を得た。
得られた組成物を、孔径0.45μmのPTFE製メンブレンフィルターでろ過し、760×520mmのガラス基材(松浪硝子工業社製、MICRO SLIDE GLASS:S9112)に対して、1.5ml滴下した。そして、ミカサ社製スピンコーターにて1200rpmで60秒回転させることで薄膜を作成した。
STPH−201)を用いて240℃で20分間加熱することで、シリカ多孔質コート基材を得た。
〔多孔質層の屈折率・膜厚算出〕
分光膜厚計(大塚電子社製FE−3000)により、ガラス基材(屈折率1.52)上に形成されたシリカ多孔質コート面の反射スペクトルを測定し、Cauthyモデルでフィッティングすることで、屈折率および膜厚を算出したところ、屈折率1.19、膜厚530nmであった。
上記で得られた屈折率および非多孔体(シリカ)の屈折率:1.46を用いて上記多孔質層の空隙率を算出したところ、63%であった。
〔多孔質コート基材の反射率差〕
上記で得られた反射スペクトルの400〜1000nmの範囲内にある、半値幅が10nm以上の極大、極小ピークの反射率の極大値、極小値についてそれぞれ平均を算出し、極大値の平均から極小値の平均の差をとることで得られた値を反射率差:ΔRとした。測定結果を表1に示す。なお、400〜1000nmの範囲内に半値幅が10nm以上の極大、極小ピークがそれぞれ一つ以上存在しない場合は、「×」と表記する。上記で得られたシリカ多孔質膜のΔRは3.9%であった。
本発明に使用する接着剤のタイプの確認をするため、使用する接着剤が塗布された感圧接着シートの離形フィルムを剥がし、接着剤をGe製ATRプリズムの片面に貼り合わせたサンプルを用い、接着剤のIRスペクトルを下記条件で測定した。
測定条件
装置:FT−IR6100(日本分光社製)
測定手法:ATR法
入射角度:45°
検出器:TGS
積算回数:64回
〔接着シート〕
上記で得られたIRスペクトルは、日本接着学会誌、2000、vol.36、No.1、P19のFig.4のポリアクリル酸ブチルのスペクトルとほぼ一致している。このような手法により、この接着剤が、アクリル系で、ポリアクリル酸ブチルを主成分としていることを判別できる。
上記のアクリル系感圧接着シート(接着層膜厚:25μm、20mm角)の片方の離形フィルムを剥がし、接着面を20mm角にカットした前記シリカ多孔質コート基材に、感圧接着シートの接着剤面の片面全体が多孔質コート面に接するように貼り合わせることで、積層体(反射率測定用)を得た。また、幅25mm×長さ55mmにカットした感圧接着シートの離型フィルムの一方の面を剥がし、それを幅25mm×長さ76mmにカットした前記シリカ多孔質コート基材に、感圧接着シートの短辺の一方と多孔質コート基材の短辺の一方が重なり、かつ感圧接着シートの接着剤面の片面全体が多孔質コート面に接するように貼り合わせることで、積層体Aを得た。その後、感圧接着シートの他方の面の剥離フィルムを剥がし、その接着剤面に、25mm幅×長さ200mmにカットした厚さ50μmのPETフィルム(両面易接着層)を、PETフィルムの短辺の一方が、積層体Aの感圧接着シートと接している側の短辺と重なり、かつ接着剤面全面がPETフィルム面と接するように貼り合わせることで、積層体(接着強度測定用)を得た。
上記積層体(接着強度測定用)を引張試験機(ORIENTEC社製STA−1225)に取り付け、180°剥離試験を行った。180°剥離試験は、試験片のサイズを上記の通りにしたことおよび剥離速度を30mm/minとしたこと以外はJISK6854‐2に従って行い、伸びが、25〜50mmの間の引張強度の平均値を感圧接着シートの接着強度とした。粘着強度は、4.53N/25mmであった。
上記積層体をESPEC社製、小型環境試験器:SH−241に入れ、80℃、50%RHで10日間保管した。
分光膜厚計(大塚電子社製、FE−3000)を用いて、上記環境試験前後の積層体の基材の非多孔質コート面側から、基材−多孔質膜界面に焦点を合わせて、反射スペクトルを測定した。反射スペクトルからピークシフトを算出した。図2に環境試験前後の反射スペクトルを示し、また表1に結果を示す。図2中には、反射率が下がったピークが、400nmから500nmの間に1つ、600nmから700nmの間に1つのピークがあるが、このうち600nmから700nmの間のピークの方が反射率が低いので、600nmから700nmのピークが最小反射率ピークとなる。尚、環境試験前後で最小反射率ピークが異なる場合には、環境試験前の最小反射率ピークのシフト量を反射スペクトルのシフトの大きさと考える。このようにして得られた実施例1の反射スペクトルのシフトの値は+6nmであった。
分光膜厚計(大塚電子社製、FE−3000)を用いて、上記環境試験後の積層体の基材の非多孔質コート面側から、基材−多孔質膜界面に焦点を合わせて、反射スペクトルを測定した。測定結果を図1に示す。 図1の反射スペクトルには、極大ピークが2ヵ所、極小ピークが2ヵ所存在する。極大ピークの反射率値すなわち極大反射率を波長値が小さい順にRmax,1、Rmax,2、とし、それらの平均値を平均極大反射率:Rmax,avとした(図1の場合、Rmax,av = (Rmax,1 + Rmax,2)/2)。同様に極小ピーク反射率値すなわち極小反射率を波長値が小さい順にRmin,1、Rmin,2とし、それらの平均値を平均極大反射率:Rmin,avとした(図1の場合、Rmin,av = (Rmin,1 + Rmin,2)/2)。Rmax,avとRmin,avの差を反射率差:ΔRとした。
上記で得られた、環境試験後の積層体のΔRを多孔質コート基材のΔRで割ることで得られた値を積層体の反射率差比とする。結果を表1に示す。多孔質コート基材の最小・最大反射率差が、「×」であった場合は「×」と表記することとした。上記環境試験後の積層体の反射率差比を算出したところ、0.88であった。
上記で得られた環境試験後の積層体の反射率比の値から、下記基準で浸み込み判定を行った。結果を表1に示す。上記環境試験後の積層体の浸み込み判定は「◎」であった。
◎:反射率比0.75以上
○:反射率比0.40以上0.75未満
△:反射率比0.20以上0.40未満
×:反射率比0.20未満または×
〔実施例2〕
剥離強度:4.77N/25mm、接着層膜厚:20μmの接着剤を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行って積層体を製造し、各評価を行った。結果を表1に示す。
剥離強度:11.46N/25mm、接着層膜厚:25μmを用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行って積層体を製造し、各評価を行った。結果を表1に示す。
〔実施例4〕
剥離強度が11.84N/25mm、接着層膜厚:20μmの接着剤を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行って積層体を製造し、各評価を行った。結果を表1に示す。
スピンコーターの回転速度を500rpmにしたこと、剥離強度が6.84N/25mm、接着層膜厚:52μmの接着剤を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行って積層体を製造し、各評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1−5に使用された接着剤は、いずれも粘着剤と呼ばれるものである
スピンコーターの回転速度を1500rpmとしたこと、剥離強度が15.31N/25mm、接着層膜厚:20μmの接着シートを用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行って積層体を製造し、各評価を行った。結果を表1に示す。
Claims (6)
- メソポーラスな多孔質層と、隣接する接着層とからなる積層体であって、該接着層の、180°剥離試験における、剥離速度30mm/minの際に測定される剥離強度が0.05N/25mm以上14N/25mm以下の範囲であり、80℃、50%RHで10日間の耐久試験前後での反射スペクトルのシフトの値が、−30nm以上、200nm以下であることを特徴とする積層体。
- 該接着層の厚さが5μm以上、100μm以下である請求項1に記載の積層体。
- 該多孔質層が多孔質シリカである請求項1乃至2のいずれかに記載の積層体。
- 該高分子化合物がアクリル系樹脂であることを特徴とする請求項1又乃至3のいずれかに記載の積層体。
- 該多孔質層の屈折率が1.30以下である請求項1乃至4のいずれかに記載の積層体。
- 該多孔質層が屈折率1.40以上の他の層と隣接していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の積層体。
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