JP2016103967A - 素子、及び発電装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】可撓性に優れ、耐久性があり、かつ帯電処理の必要がない素子の提供。【解決手段】第1の電極と、中間層と、第2の電極とをこの順で積層してなる素子であって、前記中間層が、可撓性を有し、前記中間層の面に対して直交する方向から前記中間層が加圧された際に、前記中間層における前記第1の電極側の変形量と、前記中間層における前記第2の電極側の変形量とが、異なる素子である。【選択図】図3

Description

本発明は、素子、及び発電装置に関する。
従来から、道路、橋、建築物などの構造体の振動や、自動車、鉄道車両などの移動体の振動や、人の運動による振動によるエネルギーを有効利用する試みがなされている。振動によるエネルギーを有効利用する方法としては、振動エネルギーを電気エネルギーに変換する方法が挙げられる。そのような方法としては、例えば、圧電素子を利用する方式、静電誘導を利用する方式などが挙げられる。
圧電素子を利用する方式は、主としてセラミックス系の圧電素子を用い、振動によって圧電素子に歪が加わる際に、圧電素子の表面に電荷が誘起される現象を利用するものである。
静電誘導を利用する方式では、一般的に、半永久的に電荷を保持するエレクトレット誘電体が用いられる(例えば、特許文献1〜3参照)。これらの技術において用いられる前記エレクトレット誘電体とは、誘電体を帯電させて半永久的に静電場を発生させることを可能にした材料である。前記エレクトレット誘電体と、これと距離を置いて配置された電極との相対位置を、振動等によって変化させることで、電荷が電極に静電誘導され、発電が行われる。
圧電素子を利用する方式は、主としてセラミックス系の圧電素子を用いるため、可撓性がなく壊れやすいという問題がある。
また、静電誘導を利用する方式においては、用いられる前記エレクトレット誘導体を作製する際に、誘電体に帯電処理を行う必要がある。前記帯電処理の方法としては、コロナ放電、プラズマ処理などが挙げられる。このような処理では、多くの電力を必要とするという問題がある。また、可撓性が十分ではなく、かつ通常、機械的な容量変化機構を備えるため、フレキシブルな素子を実現するのが困難であるという問題がある。
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、可撓性に優れ、耐久性があり、かつ帯電処理の必要がない素子を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
本発明の素子は、
第1の電極と、中間層と、第2の電極とをこの順で積層してなる素子であって、
前記中間層が、可撓性を有し、
前記中間層の面に対して直交する方向から前記中間層が加圧された際に、前記中間層における前記第1の電極側の変形量と、前記中間層における前記第2の電極側の変形量とが、異なる。
本発明によると、従来における前記諸問題を解決することができ、可撓性に優れ、耐久性があり、かつ帯電処理の必要がない素子を提供することができる。
図1Aは、表面改質処理、及び不活性化処理を行った中間層(シリコーンゴム)のXPS測定結果である。 図1Bは、図1Aで測定した中間層のSi2p結合エネルギーの厚み方向の変化を示すグラフである。 図2Aは、未処理の中間層(シリコーンゴム)のXPS測定結果である。 図2Bは、図2Aで測定した中間層のSi2p結合エネルギーの厚み方向の変化を示すグラフである。 図3は、本発明の素子の一例の概略断面図である。
(素子)
本発明の素子は、第1の電極と、中間層と、第2の電極とをこの順で積層してなり、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
<第1の電極、及び第2の電極>
前記第1の電極、及び前記第2の電極の材質、形状、大きさ、構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記第1の電極、及び前記第2の電極において、その材質、形状、大きさ、構造は、同じであってもよいし、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
前記第1の電極、及び前記第2の電極の材質としては、例えば、金属、炭素系導電材料、導電性ゴム組成物などが挙げられる。
前記金属としては、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、ステンレス、タンタル、ニッケルなどが挙げられる。
前記炭素系導電材料としては、例えば、カーボンナノチューブなどが挙げられる。
前記導電性ゴム組成物としては、例えば、導電性フィラーと、ゴムとを含有する組成物などが挙げられる。
前記導電性フィラーとしては、例えば、炭素材料(例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、黒鉛、炭素繊維、カーボンファイバー(CF)、カーボンナノファイバー(CNF)、カーボンナノチューブ(CNT)など)、金属フィラー(金、銀、白金、銅、アルミニウムなど)、導電性高分子材料(ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリパラフェニレン、及びポリパラフェニレンビニレンのいずれかの誘導体、又は、これら誘導体にアニオン若しくはカチオンに代表されるドーパントを添加したものなど)、イオン性液体などが挙げられる。
前記ゴムとしては、例えば、シリコーンゴム、変性シリコーンゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ポリサルファイドゴム、ウレタンゴム、イソブチルゴム、フロロシリコーンゴム、エチレンゴム、天然ゴム(ラテックス)などが挙げられる。
前記第1の電極の形状、及び前記第2の電極の形状としては、例えば、薄膜などが挙げられる。
前記第1の電極の構造、及び前記第2の電極の構造としては、例えば、繊維状の前記炭素材料が重なって形成された不織布であってもよい。
<中間層>
前記中間層は、可撓性を有する。
前記中間層においては、以下の条件(1)及び条件(2)の少なくともいずれかを満たす。
条件(1):前記中間層の面に対して直交する方向から前記中間層が加圧された際に、前記中間層における前記第1の電極側の変形量と、前記中間層における前記第2の電極側の変形量とが、異なる。
条件(2):前記中間層の前記第1の電極側における10μm押し込み時のユニバーサル硬度(H1)と、前記中間層の前記第2の電極側における10μm押し込み時のユニバーサル硬度(H2)とが、異なる。
前記中間層においては、以上のように、両面での変形量、又は硬度が異なることにより、大きな発電量を得ることができる。
本発明において、前記変形量とは、以下の条件で前記中間層を押し付けた際の、圧子の最大押し込み深さである。
[測定条件]
測定機:フィッシャー社製、超微小硬度計WIN−HUD
圧子:対面角度136°の四角錐ダイヤモンド圧子
初期荷重:0.02mN
最大荷重:1mN
初期荷重から最大荷重までの荷重増加時間:10秒間
ユニバーサル硬度は、以下の方法により求められる。
[測定条件]
測定機:フィッシャー社製、超微小硬度計WIN−HUD
圧子:対面角度136°の四角錐ダイヤモンド圧子
押し込み深さ:10μm
初期荷重:0.02mN
最大荷重:100mN
初期荷重から最大荷重までの荷重増加時間:50秒間
前記ユニバーサル硬度(H1)と、前記ユニバーサル硬度(H2)との比(H1/H2)としては、1.01以上が好ましく、1.07以上がより好ましく、1.13以上が特に好ましい。前記比(H1/H2)の上限値としては、特に制限はなく、例えば、使用状態において要求される可撓性の程度、使用状態における負荷等により適宜選択されるが、1.70以下が好ましい。ここで、前記H1は、相対的に硬い面のユニバーサル硬度であり、前記H2は、相対的に柔らかい面のユニバーサル硬度である。
前記中間層の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ゴムなどが挙げられる。前記ゴムとしては、例えば、シリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、天然ゴム(ラテックス)、ウレタンゴム、フッ素ゴム、エチレンプロピレンゴムなどが挙げられる。これらの中でも、シリコーンゴムが好ましい。
前記中間層は、各種機能性を付与するために、フィラーを含有してもよい。前記フィラーとしては、例えば、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、酸化亜鉛、シリカ、炭酸カルシウム、炭素材料〔例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、フラーレン構造含有化合物、グラフェン〕、酸化鉄、PTFE、マイカ、粘土鉱物、合成ハイドロタルサイト、金属などが挙げられる。圧電性をもつフィラーや分極している高分子(ベース材料もしくはフィラー)を使用する場合、分極処理を施すことが好ましい。
前記フラーレン構造含有化合物としては、フラーレン、フラーレン誘導体などが挙げられる。
前記フラーレンとしては、例えば、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC80、フラーレンC82、フラーレンC84、フラーレンC90、フラーレンC96、フラーレンC240、フラーレンC540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブなどが挙げられる。
前記フラーレン誘導体とは、前記フラーレンに置換基が付与された化合物を意味する。前記置換基としては、例えば、アルキル基、アリール基、複素環基などが挙げられる。
前記中間層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、変形追従性の点から、1μm〜10mmが好ましく、50μm〜200μmがより好ましい。また、前記平均厚みが、好ましい範囲内であると、成膜性が確保でき、かつ変形を阻害することもないため、良好な発電を行うことができる。
前記中間層は、絶縁性であることが好ましい。前記絶縁性としては、10Ωcm以上の体積抵抗率を持つことが好ましく、1010Ωcm以上の体積抵抗率を持つことがより好ましい。
前記中間層は、複層構造であってもよい。
<<表面改質処理、及び不活性化処理>>
前記中間層において、両面での変形量、又は硬度を異ならせる方法としては、例えば、表面改質処理、不活性化処理などが挙げられる。これらの処理は、両方を行ってもよいし、片方のみを行ってもよい。
−表面改質処理−
前記表面改質処理としては、例えば、プラズマ処理、コロナ放電処理、電子線照射処理、紫外線照射処理、オゾン処理、放射線(X線、α線、β線、γ線、中性子線)照射処理などが挙げられる。これらの処理の中でも、処理スピードの点から、プラズマ処理、コロナ放電処理、電子線照射処理が好ましいが、ある程度の照射エネルギーを有し、材料を改質しうるものであれば、これらに限定されない。
−−プラズマ処理−−
前記プラズマ処理の場合、プラズマ発生装置としては、例えば、平行平板型、容量結合型、誘導結合型のほか、大気圧プラズマ装置でも可能である。耐久性の観点から、減圧プラズマ処理が好ましい。
前記プラズマ処理における反応圧力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.05Pa〜100Paが好ましく、1Pa〜20Paがより好ましい。
前記プラズマ処理における反応雰囲気としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、不活性ガス、希ガス、酸素などのガスが有効であるが、効果の持続性においてアルゴンが好ましい。また、その際、酸素分圧を5,000ppm以下とすることが好ましい。前記反応雰囲気における酸素分圧が、5,000ppm以下であると、オゾンの発生を抑制でき、オゾン処理装置の使用を控えることができる。
前記プラズマ処理における照射電力量は、(出力×照射時間)により規定される。前記照射電力量としては、5Wh〜200Whが好ましく、10Wh〜50Whがより好ましい。前記照射電力量が、好ましい範囲内であると、前記中間層に発電機能を付与でき、かつ照射過剰により耐久性を低下させることもない。
−−コロナ放電処理−−
前記コロナ放電処理における印加エネルギー(積算エネルギー)としては、6J/cm〜300J/cmが好ましく、12J/cm〜60J/cmがより好ましい。前記印加エネルギーが、好ましい範囲内であると、前記中間層に発電機能を付与でき、かつ照射過剰により耐久性を低下させることもない。
−−電子線照射処理−−
前記電子線照射処理における照射量としては、1kGy以上が好ましく、300kGy〜10MGyがより好ましい。前記照射量が、好ましい範囲内であると、前記中間層に発電機能を付与でき、かつ照射過剰により耐久性を低下させることもない。
前記電子線照射処理における反応雰囲気としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、アルゴン、ネオン、ヘリウム、窒素等の不活性ガスが充填し酸素分圧を5,000ppm以下とすることが好ましい。前記反応雰囲気における酸素分圧が、5,000ppm以下であると、オゾンの発生を抑制でき、オゾン処理装置の使用を控えることができる。
−−紫外線照射処理−−
前記紫外線照射処理における紫外線としては、波長365nm以下で200nm以上が好ましく、波長320nm以下で240nm以上がより好ましい。
前記紫外線照射処理における積算光量としては、5J/cm〜500J/cmが好ましく、50J/cm〜400J/cmがより好ましい。前記積算光量が、好ましい範囲内であると、前記中間層に発電機能を付与でき、かつ照射過剰により耐久性を低下させることもない。
前記紫外線照射処理における反応雰囲気としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、アルゴン、ネオン、ヘリウム、窒素等の不活性ガスが充填し酸素分圧を5,000ppm以下とすることが好ましい。前記反応雰囲気における酸素分圧が、5,000ppm以下であると、オゾンの発生を抑制でき、オゾン処理装置の使用を控えることができる。
従来技術として、プラズマ処理、コロナ放電処理、紫外線照射処理、電子線照射処理などにより励起又は酸化させることで活性基を形成し、層間接着力を高めることが提案されている。しかし、その技術は、層間への適用に限定され、最表面への適用はむしろ離型性を低下させるため好ましくないことがわかっている。また、反応を酸素リッチな状態下で行い、効果的に反応活性基(水酸基)を導入している。そのため、そのような従来技術は、本発明の前記表面改質処理とは本質が異なる。
本発明の前記表面改質処理は、酸素が少なく減圧された反応環境による処理(例えば、プラズマ処理)のため、表面の再架橋及び結合を促し、例えば、「結合エネルギーの高いSi−O結合の増加」に起因して耐久性が向上し、さらに加えて「架橋密度向上による緻密化」に起因して離型性が向上すると考えられる(なお、本発明においても一部活性基は形成されてしまうが、後述するカップリング剤や風乾処理にて、活性基を不活性化させている。)。
−不活性化処理−
前記中間層の表面は、各種材料を用いて、適宜不活性化処理が施されてもよい。
前記不活性化処理としては、前記中間層の表面を不活性化させる処理であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、不活性化剤を前記中間層の表面に付与する処理が挙げられる。前記不活性化とは、プラズマ処理、コロナ放電処理、紫外線照射処理、電子線照射処理などによる励起又は酸化によって発生した活性基(例えば、−OHなど)を不活性化剤と反応させて、前記中間層の表面の活性度を下げることで、前記中間層の表面を、化学反応を起こしにくい性質に変化させることを意味する。
前記不活性化剤としては、例えば、非晶質樹脂、カップリング剤などが挙げられる。
前記非晶質樹脂としては、例えば、主鎖にパーフルオロポリエーテル構造を有する樹脂などが挙げられる。
前記カップリング剤としては、例えば、金属アルコキシド、金属アルコキシドを含む溶液などが挙げられる。前記金属アルコキシドとしては、例えば、下記一般式(1)で表される化合物や、重合度2〜10程度のそれらの部分加水分解重縮合物又はそれらの混合物などが挙げられる。
(4−n)Si(OR・・・一般式(1)
ただし、前記一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状のアルキル基、アルキルポリエーテル鎖、及びアリール基のいずれかを表す。nは、2〜4の整数を表す。
前記一般式(1)で表される化合物の具体例としては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシランなどが挙げられる。耐久性の面から特に好ましいのは、テトラエトキシシランである。
前記一般式(1)において、Rは、フルオロアルキル基であってもよく、更に酸素を介して結合したフルオロアルキルアクリレート、エーテルパーフルオロポリエーテルでもよい。柔軟性、耐久性の点で特に好ましいのは、パーフルオロポリエーテル基である。
さらに、前記金属アルコキシドとしては、例えば、ビニルシラン類〔例えば、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等〕、アクリルシラン類〔例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等〕、エポキシシラン類〔例えば、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等〕、アミノシラン類〔N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等〕などが挙げられる。
また、前記金属アルコキシドとしては、金属原子として、Si以外に、Ti、Sn、Al、Zrであるものを単独又は2種以上を混合して用いることも可能である。
前記不活性化処理は、例えば、前記ゴムなどの中間層前駆体に、前記表面改質処理を行った後に、前記中間層前駆体の表面に前記不活性化剤を塗布又はディッピング等により含浸させることによって行うことができる。
また、前記中間層前駆体としてシリコーンゴムを用いた場合は、前記表面改質処理を行った後に、空気中に静置して風乾することにより、失活させてもよい。
前記中間層の厚み方向における酸素濃度のプロファイルは、極大値を有することが好ましい。
前記中間層の厚み方向における炭素濃度のプロファイルは、極小値を有することが好ましい。
そして、前記中間層において、前記酸素濃度のプロファイルが極大値を示す位置と、前記炭素濃度のプロファイルが極小値を示す位置とは、一致することがより好ましい。
前記酸素濃度のプロファイル、及び前記炭素濃度のプロファイルは、X線光電子分光分析法(XPS)によって求めることができる。測定方法は、例えば、以下の方法が挙げられる。
[測定方法]
測定装置:Ulvac−PHI QuanteraSXM、アルバック・ファイ株式会社製
測定光源:Al(mono)
測定出力:100μmφ、25.1W
測定領域:500μm×300μm
パスエネルギー:55eV(narrow scan)
エネルギーstep:0.1eV(narrow scan)
相対感度係数:PHIの相対感度係数を使用
スパッタ源:C60クラスターイオン
Ion Gun 出力:10 kV、10 nA
Raster Control:(X=0.5,Y=2.0)mm
スパッタレート:0.9nm/min(SiO換算)
XPSでは、光電子効果により飛び出す電子を捕捉することにより、測定対象物中の原子の存在濃度比や結合状態を知ることができる。
前記シリコーンゴムは、シロキサン結合を有し、主成分がSi、O、及びCである。そのため、前記中間層において、その材質としてシリコーンゴムを用いた場合、前記XPSのワイドスキャンスペクトルを測定し、各元素の相対ピーク強度比から、表層から内部に存在する各原子(Si、O、及びC)の深さ方向の存在濃度比(atomic%)を求めることができる。その一例を図1Aに示す。図1Aは、前記シリコーンゴムを用い、更に前記表面改質処理(プラズマ処理)及び前記不活性処理を行って得られた中間層のサンプルである。図1Aにおいて、横軸は表面から内部方向への分析深さであり、縦軸は存在濃度比である。
更に、前記シリコーンゴムの場合、Siの2p軌道の電子が飛び出すエネルギーを測定することにより、珪素に結合している元素及び結合状態を知ることができる。そこで、Siの結合状態を示すSi2p軌道におけるナロースキャンスペクトルからピーク分離を行い、化学結合状態を求めた。その結果を図1Bに示す。図1Bの測定対象は、図1Aの測定に用いたサンプルである。図1Bにおいて、横軸は結合エネルギーであり、縦軸は強度比である。また、下から上に向かっては深さ方向での測定スペクトルを示している。
一般に、ピークシフトの量は結合状態に依存することが知られており、本件に関するシリコーンゴムの場合、Si2p軌道において高エネルギー側にピークがシフトするということは、Siに結合している酸素の数が増えていることを示す。
これによれば、前記シリコーンゴムにおいて、表面改質処理及び不活性化処理を行うと、表層から内部に向かって酸素が多くなり極大値を持ち、また炭素が減少し極小値を持つ。さらに深さ方向に分析をすすめると酸素が減少して炭素が増加し、ほぼ未処理のシリコーンゴムと同等の原子存在濃度となる。
さらに図1Aのαで検出された酸素の極大値は、Si2p結合エネルギーシフトが高エネルギー側にシフトすることと一致(図1Bのα)しており、酸素増加がSiに結合した酸素の数に起因することが示されている。
なお、未処理のシリコーンゴムについて同様の分析をした結果を、図2A及び図2Bに示す。
図2Aには、図1Aにみられたような酸素濃度の極大値、及び炭素濃度の極小値は見られない。更に、図2Bより、Si2p結合エネルギーシフトが高エネルギー側にシフトする様子もみられないことから、Siに結合した酸素の数も変化していないことが確認された。
以上のように、カップリング剤等の不活性化剤を中間層の表面に塗布又はディッピングして浸透させることにより、前記不活性化剤が前記中間層に染み込んでいく。前記カップリング剤が、前記一般式(1)で表される化合物などの場合、前記中間層においては、ポリオルガノシロキサンが濃度分布をもって存在するようになり、この分布はポリオルガノシロキサンに含まれる酸素原子が深さ方向に極大値を有するような分布となる。結果として、前記中間層は、3つ〜4つの酸素原子と結合したケイ素原子を有するポリオルガノシロキサンを含有することとなる。
なお、前記不活性化処理の方法としては、ディッピング工法に限らない。例えば、ポリオルガノシロキサンに含まれる酸素原子が、前記中間層の深さ方向(厚み方向)に極大値を有するような分布を実現できればよく、プラズマCVD、PVD、スパッタリング、真空蒸着、燃焼化学気相蒸着などの方法でもよい。
前記中間層は、静置状態において初期表面電位を持つ必要はない。
なお、静置状態における初期表面電位は、以下の測定条件で測定できる。ここで、初期表面電位を持たないとは、下記測定条件で測定した際に、±10V以下を意味する。
[測定条件]
前処理:温度30℃相対湿度40%雰囲気に24h静置後、除電を60sec(Keyence製のSJ−F300を使用)
装置:Treck Model344
測定プローブ:6000B−7C
測定距離:2mm
測定スポット径:直径(Φ)10mm
その点で、本発明の前記素子は、特開2009−253050号公報、特開2014−027756号公報、特開昭54−14696号公報等に記載の技術とは、発電の原理が異なると考えられる。
なお、本発明の前記素子においては、摩擦帯電に似たメカニズムでの帯電と、内部電荷留保による表面電位差の発生とが、前記中間層の両面の硬度差に基づく変形量の差に起因して静電容量の偏りを生み出すことにより、電荷が移動して発電すると推測される。しかし、正確には不明である。
前記素子は、前記中間層と、前記第1の電極及び前記第2の電極の少なくともいずれかとの間に空間を有することが好ましい。そうすることにより、発電量を増やすことができる。前記空間を設ける方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記中間層と、前記第1の電極及び前記第2の電極の少なくともいずれかとの間にスペーサーを配置する方法などが挙げられる。
ここで、本発明の素子の一例の概略図を示す。図3は、本発明の素子の概略断面図である。図3の素子は、第1の電極1と、第2の電極2と、第1の電極1及び第2の電極2間に中間層3とを有する。
(発電装置)
本発明の発電装置は、本発明の前記素子を少なくとも有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
<その他の部材>
前記その他の部材としては、例えば、電気回路などが挙げられる。
<<電気回路>>
前記電気回路としては、例えば、前記素子で発電した電力を取り出す回路であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記素子を用いた発電装置は、超音波センサ、圧力センサ、触覚センサ、歪みセンサ、加速度センサ、衝撃センサ、振動センサ、感圧センサ、電界センサ、音圧センサ等の各種センサ、特に高電圧を必要としないことからウェラブルセンサ用途に適している。更に、加工性に優れた圧電性フィルムとして、ヘッドホン、スピーカー、マイクロホン、水中マイクロホン、ディスプレイ、ファン、ポンプ、可変焦点ミラー、超音波トランスデューサ、圧電トランス、遮音材料、防音材料、アクチュエータ、キーボードなども適している。更に、前記発電装置は、音響機器、情報処理機、計測機器、医用機器、さらには乗り物や建物,又スキーやラケット等のスポーツ用具に用いる制振材(ダンパー)その他の分野で利用することもできる。
更に、前記発電装置は、以下の用途にも適している。
・波力、水力、風力等の自然エネルギーによる発電
・靴、服、床、アクセサリーに埋め込まれ、人の歩行による発電
・自動車のタイヤ等に埋め込まれ、走行による振動発電
また、フレキシブル基板上に形成して、板状発電体や逆に電圧をかけて充電する二次電池や、新しいアクチュエータ(人工筋肉)としての活用も期待できる。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。「部」は、特に明示しない限り「質量部」を表す。「%」は、特に明示しない限り「質量%」を表す。
(実施例1)
<素子の作製>
<<第1の電極、及び第2の電極>>
第1の電極、及び第2の電極として、平均厚み12μmのアルミニウムシート(三菱アルミニウム株式会社製)を用いた。
<<中間層の作製>>
−中間層前駆体−
ベース材料としてのシリコーンゴム(TSE3033:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)100部に、添加剤としてのチタン酸バリウム(和光純薬株式会社製、93−5640)40部を混合した。得られた混合物を、平均厚み150±20μm、縦50mm×横70mmを狙いとして、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に、ブレード塗装を実施し、中間層前駆体を得た。
−表面改質処理−
それを、約120℃で30分間焼成した後、表面改質処理として、以下の条件でプラズマ処理を行った。
[プラズマ処理条件]
装置:ヤマト科学製:PR−500
出力:100W
処理時間:4分間
反応雰囲気:アルゴン99.999%
反応圧力:10Pa
−不活性化処理−
更に、表面改質処理後、中間層前駆体の処理面に、フッ素系炭素化合物であるオプツールDSX(ダイキン工業株式会社製)をパーフルオロヘキサンで希釈した0.1%溶液を、引き上げ速度10mm/minのディッピング(Dip)工法にて塗布した。その後、相対湿度90%温度60℃の環境で30分間以上保持後、50℃で10分間の乾燥を実施し、不活性化処理を施した。
その後、PETフィルムを剥離した。
以上により、中間層を得た。
その中間層を、前記第1の電極、及び前記第2の電極で挟み、素子を得た。なお、その際、前記第1の電極の前記中間層に面した端面に導電布テープ(星和電機社製:E05R1020)を5mm幅に切断したものを貼ることにより、前記第1の電極に凹凸を設け、前記第1の電極と前記中間層との間に隙間(空気)が生じるような構成した。この隙間は、前記導電布テープの厚み分(約0.12mm)で構成されるものであるが、垂直負荷により可変である。
<評価>
<<硬度>>
中間層の両面のユニバーサル硬度を、以下の測定条件で測定した。結果を、表1−1に示した。
[測定条件]
測定機:フィッシャー社製、超微小硬度計WIN−HUD
圧子:対面角度136°の四角錐ダイヤモンド圧子
押し込み深さ:10μm
初期荷重:0.02mN
最大荷重:100mN
初期荷重から最大荷重までの荷重増加時間:50秒間
<<変形量>>
中間層の両面の変形量を、以下の測定条件で測定した。結果を、表1−1に示した。
[測定条件]
測定機:フィッシャー社製、超微小硬度計WIN−HUD
圧子:対面角度136°の四角錐ダイヤモンド圧子
初期荷重:0.02mN
最大荷重:1mN
初期荷重から最大荷重までの荷重増加時間:10秒間
<<静置状態の初期表面電位測定>>
以下の条件で、静置状態の初期表面電位を測定した。結果を表1−1に示した。
[測定条件]
前処理:温度30℃相対湿度40%雰囲気に24h静置後、除電を60sec(Keyence製のSJ−F300を使用)
装置:Treck Model344
測定プローブ:6000B−7C
測定距離:2mm
測定スポット径:直径(Φ)10mm
<<XPS測定>>
中間層について、X線光電子分光分析法(XPS)による測定を行った。そして、中間層の厚み方向における酸素濃度のプロファイル、及び炭素濃度のプロファイルを求めた。測定は、以下の方法で行った。結果を表1−1に示した。
[測定方法]
測定装置:Ulvac−PHI QuanteraSXM、アルバック・ファイ株式会社製
測定光源:Al(mono)
測定出力:100μmφ、25.1W
測定領域:500μm×300μm
パスエネルギー:55eV(narrow scan)
エネルギーstep:0.1eV(narrow scan)
相対感度係数:PHIの相対感度係数を使用
スパッタ源:C60クラスターイオン
Ion Gun 出力:10 kV、10 nA
Raster Control:(X=0.5,Y=2.0)mm
スパッタレート:0.9nm/min(SiO換算)
<<発電量>>
得られた素子における前記第1の電極、及び前記第2の電極に電線を接続した。更にセロハンテープ(ニチバン株式会社製、No.405 50mm幅)で全体を封止し、評価サンプルを得た。
この評価サンプルに対して、鉄球(重量200g)を10cmの高さから落下させた。この時に、両電極間に発生するピーク電圧量をオシロスコープを用いて計測した。計測を5回行い、得られた平均値を測定値とした。そして、後述する比較例1の測定値に対する倍率を求めた。また、以下の評価基準で評価した。結果を表1−1に示した。
[評価基準]
◎:比較例1の測定値の10倍以上
○:比較例1の測定値の5倍以上10倍未満
×:比較例1の測定値の5倍未満
(実施例2)
<素子の作製>
実施例1において、表面改質処理に用いる反応雰囲気を窒素に代えた以外は、実施例1と同様にして、素子を作製した。
<評価>
得られた素子について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1−1に示した。
(実施例3)
<素子の作製>
実施例1において、表面改質処理に用いる反応雰囲気を酸素に代えた以外は、実施例1と同様にして、素子を作製した。
<評価>
得られた素子について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1−1に示した。
(実施例4)
<素子の作製>
実施例1において、表面改質処理を以下の条件のコロナ放電処理に代えた以外は、実施例1と同様にして、素子を作製した。
[コロナ放電処理条件]
印加電圧:100V
積算エネルギー:30J/cm
反応雰囲気:空気
<評価>
得られた素子について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1−1に示した。
(実施例5)
<素子の作製>
実施例1において、表面改質処理を以下の条件のUV照射処理に代えた以外は、実施例1と同様にして、素子を作製した。
[UV照射処理条件]
UV照射ランプ:ヴィルバー・ルーマット社製、VL−215.C
波長:254nm
積算光量:300J/cm
反応雰囲気:窒素(酸素分圧5,000ppm以下)
<評価>
得られた素子について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1−1に示した。
(実施例6)
<素子の作製>
実施例1において、表面改質処理を以下の条件の電子線照射処理に代えた以外は、実施例1と同様にして、素子を作製した。
[電子線照射処理条件]
装置:浜松ホトニクス株式会社製、ライン照射型低エネルギー電子線照射源
照射量:1MGy
反応雰囲気:窒素(酸素分圧5,000ppm以下)
<評価>
得られた素子について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1−1に示した。
(実施例7)
<素子の作製>
実施例1の不活性化処理において、オプツールDSXの溶液を、テトラエトキシシラン(TEOS、オルトケイ酸テトラエチル、和光純薬工業株式会社製)に代えた以外は、実施例1と同様にして、素子を作製した。
<評価>
得られた素子について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1−1に示した。
(実施例8)
<素子の作製>
実施例1の不活性化処理において、オプツールDSXの溶液を、イソプロポキシドチタン(TTIP、高純度化学社製)の50%エタノール溶液に代えた以外は、実施例1と同様にして、素子を作製した。
<評価>
得られた素子について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1−1に示した。
(実施例9)
<素子の作製>
実施例1の不活性化処理において、オプツールDSXの溶液を、ジメチルジメトキシシランKBM−22(信越工業株式会社製)の50%エタノール溶液に代えた以外は、実施例1と同様にして、素子を作製した。
<評価>
得られた素子について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1−1に示した。
(実施例10)
<素子の作製>
実施例1において、不活性化処理を行わず、代わりに温度30℃相対湿度70%の環境下で5時間の風乾を実施した以外は、実施例1と同様にして、素子を作製した。
<評価>
得られた素子について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1−1に示した。
(実施例11)
<素子の作製>
実施例6において、不活性化処理を行わず、代わりに温度30℃相対湿度70%の環境下で5時間の風乾を実施した以外は、実施例6と同様にして、素子を作製した。
<評価>
得られた素子について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1−1に示した。
(実施例12)
<素子の作製>
実施例1において、空間を設けなかった以外は、実施例1と同様にして、素子を作製した。
<評価>
得られた素子について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1−1に示した。
(実施例13)
<素子の作製>
実施例1の中間層の作製において、ベース材料100部に対する添加剤の混合量を20部に変更した以外は、実施例1と同様にして、素子を作製した。
<評価>
得られた素子について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1−1に示した。
(実施例14)
<素子の作製>
実施例1の中間層の作製において、ベース材料100部に対する添加剤の混合量を80部に変更した以外は、実施例1と同様にして、素子を作製した。
<評価>
得られた素子について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1−1に示した。
(実施例15)
<素子の作製>
実施例1の中間層の作製において、ベース材料に添加剤を混合しなかった以外は、実施例1と同様にして、素子を作製した。
<評価>
得られた素子について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1−1に示した。
(実施例16)
<素子の作製>
実施例15において、不活性化処理を行わず、代わりに温度30℃相対湿度70%の環境下で5時間の風乾を実施した以外は、実施例15と同様にして、素子を作製した。
<評価>
得られた素子について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1−1に示した。
(実施例17)
<素子の作製>
実施例16において、表面改質処理を以下の条件の電子線照射処理に代えた以外は、実施例16と同様にして、素子を作製した。
[電子線照射処理条件]
装置:浜松ホトニクス株式会社製、ライン照射型低エネルギー電子線照射源
照射量:1MGy
反応雰囲気:窒素(酸素分圧5,000ppm以下)
<評価>
得られた素子について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1−1に示した。
(実施例18)
<素子の作製>
ベース材料としてのシリコーンゴム(TSE3033:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)100部に、添加剤としてのチタン酸バリウム40部を混合した。得られた混合物を、平均厚み150±20μm、縦50mm×横70mmを狙いとして、カーボンファイバー(日本グラファイト株式会社製、XN−100−05M)を平均厚みが20μm以下になるように形成したPETフィルム上に、ブレード塗装を実施し、中間層前駆体を得た。次に、前記中間層前駆体の表面に、カーボンファイバー(日本グラファイト株式会社製、XN−100−05M)を平均厚みが20μm以下になるように形成した。次に、120℃で30分間加熱した。次に、前記中間層前駆体の片面に、以下の条件で電子線照射処理を行った。以上により、素子を得た。
[電子線照射処理条件]
装置:浜松ホトニクス株式会社製、ライン照射型低エネルギー電子線照射源
照射量:1MGy
反応雰囲気:窒素(酸素分圧5,000ppm以下)
<評価>
得られた素子について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1−1に示した。
(実施例19)
<素子の作製>
実施例1において、不活性化処理を行わず、かつ以下の第1の電極、及び第2の電極を用いた以外は、実施例1と同様にして、素子を作製した。
<<第1の電極、及び第2の電極>>
第1の電極、及び第2の電極として、シリコーンゴム(DY35−2083、東レ株式会社製)に対して、CNT(カーボンナノチューブ、昭和電工株式会社製、VGCF−H)を5%配合した、平均厚み50μmのシートを用いた。
<評価>
得られた素子について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1−1に示した。
(実施例20)
<素子の作製>
実施例1において、不活性化処理を行わず、かつ以下の第1の電極、及び第2の電極を用いた以外は、実施例1と同様にして、素子を作製した。
<<第1の電極、及び第2の電極>>
第1の電極、及び第2の電極として、シリコーンゴム(DY35−2083、東レ株式会社製)に対して、CNT(カーボンナノチューブ、昭和電工株式会社製、VGCF−H)を10%配合した、平均厚み50μmのシートを用いた。
<評価>
得られた素子について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1−1に示した。
(実施例21〜27)
<素子の作製>
実施例1の中間層の作製において、添加剤を、以下の添加剤に変更した以外は、実施例1と同様にして、素子を作製した。
[添加剤]
実施例21:酸化チタン(CR−90、石原産業株式会社製)
実施例22:シリカ(R972、日本アエロジル株式会社製)
実施例23:メラミン(エポスタS12、株式会社日本触媒製)
実施例24:合成ハイドロタルサイト(DHT−4A、協和化学工業株式会社製)
実施例25:ベンガラ(100ED、戸田工業株式会社製)
実施例26:PTFE(KTL−8N、株式会社喜多村製)
実施例27:フラーレン(nanom purple ST、フロンティアカーボン社製
<評価>
得られた素子について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1−1に示した。
(実施例28〜30)
<素子の作製>
実施例1の中間層の作製において、ベース材料を、以下のベース材料に変更した以外は、実施例1と同様にして、素子を作製した。
[ベース材料]
実施例28:フロロシリコーンゴム(X36−420U、信越化学工業株式会社製)
実施例29:ウレタンゴム(アダプト60L、日新レジン株式会社製)
実施例30:アクリルゴム(Nipol AR51、日本ゼオン株式会社製)
<評価>
得られた素子について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1−1に示した。
(実施例31)
<素子>
実施例1で作製した素子を用いた。
<評価>
実施例1で作製した素子の対向する2つの電極に、極性が異なるようにファンクションジェネレータ(TEXIO社製:FG−274)の電極を接続し、以下の条件で電圧を印加し、1mはなれた位置から音の可聴を判断した。全ての周波数で可聴できた場合を合格レベルであるとした。結果を表1−3に示す。
<印加条件>
・CMOS出力±5V
・方形波(Duty比50%)
・周波数:400Hz、2kHz、12kHz
(比較例1)
<素子の作製>
実施例1において、表面改質処理、及び不活性化処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、素子を作製した。
<評価>
得られた素子について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1−2に示した。
(比較例2)
<素子の作製>
実施例9において、表面改質処理を行わなかった以外は、実施例9と同様にして、素子を作製した。
<評価>
得られた素子について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1−2に示した。
(比較例3〜15)
<素子の作製>
比較例1の中間層の作製において、ベース材料、及び添加剤を、表1−2に示すベース材料、及び添加剤に変更した以外は、比較例1と同様にして、素子を作製した。
<評価>
得られた素子について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1−2に示した。
(比較例16)
<素子の作製>
中間層として、株式会社東京センサ製のピエゾフィルムシート(3−1004346−0:100μm)を用いた以外は、比較例1と同様にして、素子を作製した。
<評価>
得られた素子について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1−2に示した。
(比較例17)
<素子の作製>
サイトップ(旭硝子株式会社製:CTL−809A)を下部金属電極上にスピンコート塗布し、室温30分静置後、オーブンにて50℃で1時間プレキュア及び300℃で1時間ポストキュアを実施し、約10μmの厚みになるように形成した。
その後、得られたサンプルにコロナ放電を実施し、下記条件で帯電化させた。
コロナ帯電器はコロナ針と電極とが対向配置され、直流高圧電源装置(HAR−20R5;松定プレシジョン製)により、放電が可能となっており、更にコロナ針と電極間にグリッドが配置されている。グリッドにはグリッド用電源から電圧を印加できる。
本装置を用いて、ホットプレートで加熱しながら下記条件で帯電(エレクトレット化)した薄膜を中間層として用いた以外は、比較例1と同様にして、素子を作製した。
[帯電条件]
コロナ針電圧:−10kV
グリッド電圧:−1kV
プレート温度:100℃
<評価>
得られた素子について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1−2に示した。
(比較例18)
<素子の作製>
実施例1において、表面改質処理、及び不活性化処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、素子を作製した。
<評価>
得られた素子について、実施例31と同様の評価を行った。結果を表1−3に示した。
比較例5:酸化チタン(CR−90、石原産業株式会社製)
比較例6:シリカ(R972、日本アエロジル株式会社製)
比較例7:メラミン(エポスタS12、株式会社日本触媒製)
比較例8:合成ハイドロタルサイト(DHT−4A、協和化学工業株式会社製)
比較例9:ベンガラ(100ED、戸田工業株式会社製)
比較例10:PTFE(KTL−8N、株式会社喜多村製)
比較例11:フラーレン(nanom purple ST、フロンティアカーボン社製)
比較例13:フロロシリコーンゴム(X36−420U、信越化学工業株式会社製)
比較例14:ウレタンゴム(アダプト60L、日新レジン株式会社製)
比較例15:アクリルゴム(Nipol AR51、日本ゼオン株式会社製)
以上より、以下のことが分かった。
実施例1〜9、及び比較例1〜2によると、表面改質処理及び不活性化処理を経ることにより、即ち、3つ〜4つの酸素原子と結合したケイ素原子を有するポリオルガノシロキサンを含有する中間層を設けたことにより、硬度が変わり、それに起因して中間層の変形量が変化し、発電効果が向上していることがわかる。
また、実施例10〜11、及び16〜20から、不活性化処理を行わない場合においても、3つ〜4つの酸素原子と結合したケイ素原子を有するポリオルガノシロキサンを含有する中間層が形成されれば、実施例1に対して効果は劣るが、同様の効果で発電効果が向上していることがわかる。
また、実施例15〜17から、中間層において、ベース材料に対する添加剤がない場合でも、3つ〜4つの酸素原子と結合したケイ素原子を有するポリオルガノシロキサンを含有する中間層が形成されれば、実施例1に対して効果は劣るが、同様の効果で発電効果が向上していることがわかる。
また、実施例13〜14、実施例21〜30、及び比較例3〜15から、ベース材料、ベース材料の添加剤とその添加量が変化した場合においても、表面改質処理及び不活性化処理を経ることにより、3つ〜4つの酸素原子と結合したケイ素原子を有するポリオルガノシロキサンを含有する中間層が形成されれば、実施例1に対して効果は劣るが、同様の効果で発電効果が向上していることがわかる。
また、実施例1及び実施例12から、前記ポリオルガノシロキサンを含有する層と対面する電極との間に空間を設けることにより、発電効果が向上していることがわかる。
また、実施例31及び比較例18から、電圧を印加することにより周波数に依存しない動作が確認された。これにより表面改質処理及び不活性化処理を経ることにより、3つ〜4つの酸素原子と結合したケイ素原子を有するポリオルガノシロキサンを含有する中間層が形成されれば、「逆圧電効果」が発生することがわかる。
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 第1の電極と、中間層と、第2の電極とをこの順で積層してなる素子であって、
前記中間層が、可撓性を有し、
前記中間層の面に対して直交する方向から前記中間層が加圧された際に、前記中間層における前記第1の電極側の変形量と、前記中間層における前記第2の電極側の変形量とが、異なる、
ことを特徴とする素子である。
<2> 第1の電極と、中間層と、第2の電極とをこの順で積層してなる素子であって、
前記中間層が、可撓性を有し、
前記中間層の前記第1の電極側における10μm押し込み時のユニバーサル硬度(H1)と、前記中間層の前記第2の電極側における10μm押し込み時のユニバーサル硬度(H2)とが、異なる、
ことを特徴とする素子である。
<3> 前記ユニバーサル硬度(H1)と、前記ユニバーサル硬度(H2)との比(H1/H2)が、1.01以上である前記<2>に記載の素子である。
<4> 前記中間層が、3つ〜4つの酸素原子と結合したケイ素原子を有するポリオルガノシロキサンを含有する前記<1>から<3>のいずれかに記載の素子である。
<5> 前記中間層の厚み方向における酸素濃度のプロファイルが、極大値を有する前記<4>に記載の素子である。
<6> 前記中間層の厚み方向における炭素濃度のプロファイルが、極小値を有する前記<4>から<5>のいずれかに記載の素子である。
<7> 前記中間層において、前記酸素濃度のプロファイルが極大値を示す位置と、前記炭素濃度のプロファイルが極小値を示す位置とが、一致する前記<6>に記載の素子である。
<8> 前記中間層が、静置状態においては表面電位を有さない前記<1>から<7>のいずれかに記載の素子である。
<9> 前記中間層と、前記第1の電極及び前記第2の電極の少なくともいずれかとの間に空間を有する前記<1>から<8>のいずれかに記載の素子である。
<10> 前記<1>から<9>のいずれかに記載の素子を有することを特徴とする発電装置である。
1 第1の電極
2 第2の電極
3 中間層
特開2009−253050号公報 特開2012−164727号公報 特開2012−164917号公報

Claims (10)

  1. 第1の電極と、中間層と、第2の電極とをこの順で積層してなる素子であって、
    前記中間層が、可撓性を有し、
    前記中間層の面に対して直交する方向から前記中間層が加圧された際に、前記中間層における前記第1の電極側の変形量と、前記中間層における前記第2の電極側の変形量とが、異なる、
    ことを特徴とする素子。
  2. 第1の電極と、中間層と、第2の電極とをこの順で積層してなる素子であって、
    前記中間層が、可撓性を有し、
    前記中間層の前記第1の電極側における10μm押し込み時のユニバーサル硬度(H1)と、前記中間層の前記第2の電極側における10μm押し込み時のユニバーサル硬度(H2)とが、異なる、
    ことを特徴とする素子。
  3. 前記ユニバーサル硬度(H1)と、前記ユニバーサル硬度(H2)との比(H1/H2)が、1.01以上である請求項2に記載の素子。
  4. 前記中間層が、3つ〜4つの酸素原子と結合したケイ素原子を有するポリオルガノシロキサンを含有する請求項1から3のいずれかに記載の素子。
  5. 前記中間層の厚み方向における酸素濃度のプロファイルが、極大値を有する請求項4に記載の素子。
  6. 前記中間層の厚み方向における炭素濃度のプロファイルが、極小値を有する請求項4から5のいずれかに記載の素子。
  7. 前記中間層において、前記酸素濃度のプロファイルが極大値を示す位置と、前記炭素濃度のプロファイルが極小値を示す位置とが、一致する請求項6に記載の素子。
  8. 前記中間層が、静置状態においては表面電位を有さない請求項1から7のいずれかに記載の素子。
  9. 前記中間層と、前記第1の電極及び前記第2の電極の少なくともいずれかとの間に空間を有する請求項1から8のいずれかに記載の素子。
  10. 請求項1から9のいずれかに記載の素子を有することを特徴とする発電装置。
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