JP5563746B2 - エレクトレットおよび静電誘導型変換素子 - Google Patents
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Description
そのようなエレクトレットの材料としては、主に、ポリテトラフルオロエチレン等の鎖状の含フッ素樹脂が使用されていた。また、最近、該エレクトレットの材料として、主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する重合体を用いることが提案されている(たとえば特許文献1)。
本発明は、上記従来の課題に鑑みなされたものであり、電荷の熱安定性に優れたエレクトレットおよび該エレクトレットを備える静電誘導型変換素子の提供を課題とする。
前記有機無機複合材料の固形分(100体積%)中、前記無機微粒子の体積分率が0.02体積%以上10体積%未満であり、
前記無機微粒子が金属酸化物の微粒子であり、
前記金属酸化物が、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化セリウムおよび酸化スズからなる群より選ばれる1種以上であり、
前記極性の官能基が、カルボキシ基およびアルコキシシリル基からなる群より選ばれる1種以上であることを特徴とするエレクトレットである。
本発明の第二の態様は、前記第一の態様のエレクトレットを備える静電誘導型変換素子である。
以下の明細書中においては、重合体を構成する「繰り返し単位」を「単位」と略記することがある。
また、式(a1)で表される単位を「単位(a1)」とも記す。他の式で表される単位、化合物等についても同様に記し、たとえば式(1)で表される単量体を「単量体(1)」とも記す。
本発明のエレクトレットは、有機高分子と無機微粒子とを含む有機無機複合材料からなる層を有している。有機無機複合材料は、必要に応じて分散助剤を含むことができる。
有機高分子は、以下の観点で選択することが好ましい。
(i)高い絶縁性を有すること
有機高分子は、体積固有抵抗が高く、絶縁破壊電圧が大きいものが好ましく用いられる。高分子化合物(a)の体積固有抵抗は、1010〜1020Ωcmが好ましく、1016〜1019Ωcmがより好ましい。該体積固有抵抗は、ASTM D257により測定される。
また、高分子化合物(a)の絶縁破壊電圧は、10〜25kV/mmが好ましく、15〜22kV/mmがより好ましい。該絶縁破壊電圧は、ASTM D149により測定される。
高い絶縁性を維持するためには、絶縁性に悪影響を与える水を排除するため、疎水性であることが好ましい。
中でも、フッ素原子を含有するもの、主鎖に脂肪族環構造を有するもの、またその両方を有するものが好ましく用いられる。
ここで、「脂肪族環構造」とは、芳香族性を有さない環構造を示す。脂肪族環構造としては、たとえば、置換基を有していてもよい飽和または不飽和の炭化水素環構造、該炭化水素環構造における炭素原子の一部が酸素原子、窒素原子等のヘテロ原子で置換された複素環構造、前記炭化水素環構造または複素環構造における水素原子がフッ素原子で置換された含フッ素脂肪族環構造等が挙げられる。
また、「主鎖に」脂肪族環構造有するとは、脂肪族環構造を構成する炭素原子のうち少なくとも1つが該重合体の主鎖を構成する炭素原子であるものをいう。
有機高分子は、安定な有機無機複合材料が得られるよう、無機微粒子の分散性に優れたものが好ましい。
無機微粒子分散性を高めるため、有機高分子は、主鎖および/または側鎖の末端に極性の官能基を有するものが好ましい。主鎖および/または側鎖の末端に極性の官能基を有する有機高分子を用いることにより、具体的には、下記の効果が得られる。
(a)該極性の官能基が無機微粒子の表面に直接結合または吸着することにより、マトリックスである有機高分子が同時に分散剤として機能して、有機高分子中にナノサイズの無機微粒子が均一に分散した有機無機複合材料が形成される。
(b)有機高分子が分散剤として機能するため、分散助剤の使用量を低減できる。
すなわち、疎水性の高い有機高分子は、高い絶縁性を得る観点でも、安定な有機無機複合材料とする観点でも好ましい。
中でも含フッ素樹脂を用いると、含フッ素樹脂の溶媒として含フッ素有機溶媒を使用できる。その場合、無機微粒子の分散媒として含フッ素有機溶媒以外の有機溶媒を用いて有機無機複合材料を製造できる。特に、無機微粒子の分散媒として水の使用を避けることができれば、有機無機複合材料の絶縁性を保持しやすいので好ましい。
(α)主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する重合体(以下「含フッ素環状重合体」という。)。
(β)主鎖に脂肪族炭化水素環構造を有する重合体(以下「シクロオレフィンポリマー」という。)。
(γ)主鎖に脂肪族環構造を有しない含フッ素樹脂(以下「非環状含フッ素樹脂」という。)
また、(α)〜(γ)の何れの場合にも、主鎖および/または側鎖の末端に極性の官能基を有するものが好ましい。
したがって、含フッ素環状重合体であって、主鎖および/または側鎖の末端に極性の官能基を有する有機高分子が、特に好ましい。
以下に、「含フッ素環状重合体」、「シクロオレフィンポリマー」、「非環状含フッ素樹脂」、および主鎖および/または側鎖の末端における「極性の官能基」の各々について詳述する。
「含フッ素環状重合体」とは、上記のように、主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体であり、含フッ素脂肪族環構造を構成する炭素原子のうち少なくとも1つが該含フッ素重合体の主鎖を構成する炭素原子であるものをいう。
含フッ素脂肪族環構造を構成する炭素原子のうち、主鎖を構成する炭素原子は、該含フッ素重合体を構成する単量体が有する重合性二重結合に由来する。
たとえば含フッ素重合体が、後述するような環状単量体を重合させて得た含フッ素重合体の場合は、該二重結合を構成する2個の炭素原子が主鎖を構成する炭素原子となる。
また、2個の重合性二重結合を有する単量体を環化重合させて得た含フッ素重合体の場合は、2個の重合性二重結合を構成する4個の炭素原子のうちの少なくとも2個が主鎖を構成する炭素原子となる。
含フッ素脂肪族環構造としては、環骨格が炭素原子のみから構成されるものであってもよく、炭素原子以外に、酸素原子、窒素原子等のヘテロ原子を含む複素環構造であってもよい。含フッ素脂肪族環としては、環骨格に1〜2個の酸素原子を有する含フッ素脂肪族環が好ましい。
含フッ素脂肪族環構造の環骨格を構成する原子の数は、4〜7個が好ましい。すなわち、含フッ素脂肪族環構造は4〜7員環であることが好ましい。
含フッ素環状重合体(I’):環状含フッ素単量体に基づく単位を有する重合体。
含フッ素環状重合体(II’):ジエン系含フッ素単量体の環化重合により形成される単位を有する重合体。
環状含フッ素単量体としては、下記の化合物(1)または化合物(2)が好ましい。
X11、X12、X13、X14、Y11およびY12におけるパーフルオロアルキル基としては、炭素数が1〜7であることが好ましく、炭素数1〜4であることがより好ましい。該パーフルオロアルキル基は、直鎖状または分岐鎖状が好ましく、直鎖状がより好ましい。具体的には、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基等が挙げられ、特にトリフルオロメチル基が好ましい。
X11、X12、X13、X14、Y11およびY12におけるパーフルオロアルコキシ基としては、前記パーフルオロアルキル基に酸素原子(−O−)が結合したものが挙げられる。
X11としては、フッ素原子が好ましい。
X12としては、フッ素原子、トリフルオロメチル基、または炭素数1〜4のパーフルオロアルコキシ基が好ましく、フッ素原子またはトリフルオロメトキシ基がより好ましい。
X13およびX14としては、それぞれ独立に、フッ素原子または炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基が好ましく、フッ素原子またはトリフルオロメチル基がより好ましい。
Y11およびY12としては、それぞれ独立に、フッ素原子、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基または炭素数1〜4のパーフルオロアルコキシ基が好ましく、フッ素原子またはトリフルオロメチル基がより好ましい。
該含フッ素脂肪族環としては、4〜6員環が好ましい。
該含フッ素脂肪族環は、飽和脂肪族環であることが好ましい。
該含フッ素脂肪族環は、その環骨格中に、エーテル性酸素原子(−O−)を有していてもよい。この場合、含フッ素脂肪族環中のエーテル性酸素原子の数は、1または2が好ましい。
化合物(2)においては、Y11およびY12が相互に結合して、Y11およびY12が結合した炭素原子とともに、含フッ素脂肪族環を形成していてもよい。
該含フッ素脂肪族環としては、4〜6員環が好ましい。
該含フッ素脂肪族環は、飽和脂肪族環であることが好ましい。
該含フッ素脂肪族環は、その環骨格中に、エーテル性酸素原子(−O−)を有していてもよい。この場合、含フッ素脂肪族環中のエーテル性酸素原子の数は、1または2が好ましい。
化合物(1)の好ましい具体例としては、化合物(1−1)〜(1−5)が挙げられる。
化合物(2)の好ましい具体例としては、化合物(2−1)〜(2−2)が挙げられる。
ただし、該含フッ素環状重合体(I’)中、環状含フッ素単量体に基づく単位の割合は、該含フッ素環状重合体(I’)を構成する全繰り返し単位の合計に対し、20モル%以上が好ましく、40モル%以上がより好ましく、100モル%であってもよい。
該他の単量体としては、上記環状含フッ素単量体と共重合可能なものであればよく、特に限定されない。具体的には、後述するジエン系含フッ素単量体、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)等が挙げられる。
ジエン系含フッ素単量体としては、化合物(3)が好ましい。
CF2=CF−Q−CF=CF2 ・・・(3)。
式中、Qは、エーテル性酸素原子を有していてもよく、フッ素原子の一部がフッ素原子以外のハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜3のパーフルオロアルキレン基である。該フッ素以外のハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
Qがエーテル性酸素原子を有するパーフルオロアルキレン基である場合、該パーフルオロアルキレン基におけるエーテル性酸素原子は、該基の一方の末端に存在していてもよく、該基の両末端に存在していてもよく、該基の炭素原子間に存在していてもよい。環化重合性の点から、該基の一方の末端に存在していることが好ましい。
化合物(3)の環化重合により形成される単位としては、下式(3−1)〜(3−4)の繰り返し単位が挙げられる。
CF2=CFOCF2CF=CF2、
CF2=CFOCF(CF3)CF=CF2、
CF2=CFOCF2CF2CF=CF2、
CF2=CFOCF2CF(CF3)CF=CF2、
CF2=CFOCF(CF3)CF2CF=CF2、
CF2=CFOCFClCF2CF=CF2、
CF2=CFOCCl2CF2CF=CF2、
CF2=CFOCF2OCF=CF2、
CF2=CFOC(CF3)2OCF=CF2、
CF2=CFOCF2CF(OCF3)CF=CF2、
CF2=CFCF2CF=CF2、
CF2=CFCF2CF2CF=CF2、
CF2=CFCF2OCF2CF=CF2。
ただし、該含フッ素環状重合体(II’)中、ジエン系含フッ素単量体の環化重合により形成される単位の割合は、該含フッ素環状重合体(II’)を構成する全繰り返し単位の合計に対し、50モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、100モル%が最も好ましい。
該他の単量体としては、上記ジエン系含フッ素単量体と共重合可能なものであればよく、特に限定されない。具体的には、上述した化合物(1)、化合物(2)等の環状含フッ素単量体、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)等が挙げられる。
「シクロオレフィンポリマー」とは、上記のように、主鎖に脂肪族炭化水素環構造を有するポリマーであり、当該脂肪族炭化水素環構造を構成する炭素原子のうち少なくとも2つが当該ポリマーの主鎖に組み込まれているものをいう。
シクロオレフィンポリマーは、脂肪族炭化水素環構造を有する単位(以下、単位(a1)ということがある。)を有しており、該単位(a1)においては、当該脂肪族炭化水素環構造を構成する炭素原子のうち少なくとも2つが当該ポリマーの主鎖に組み込まれている。
シクロオレフィンポリマーとして、好ましいものとしては、単位(a1−1)を含むものが挙げられる。
該置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、フェニル基等のアリール基、アダマンチル基等の多環式の脂肪族炭化水素基などが挙げられる。
置換基としてのアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよく、炭素数が1〜10であることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。該アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が好ましく、メチル基、エチル基が特に好ましい。
置換基としてのシクロアルキル基は、炭素数が3〜10であることが好ましく、5〜8であることがより好ましい。該シクロアルキル基としては、シクロペンチル基またはシクロヘキシ基が特に好ましい。
置換基としてのアルコキシ基は、前記アルキル基に酸素原子(−O−)が結合したものが挙げられる。
鎖状の炭化水素基としては、置換基を有していてもよい直鎖状のアルキレン基が好ましく、その炭素数は1〜4が好ましく、2〜3がより好ましく、2が最も好ましい。具体的には、ジメチレン基が挙げられる。
環状の炭化水素基としては、置換基を有していてもよい単環式または多環式のシクロアルカンから水素原子を2つ除いた基が好ましい。単環式のシクロアルカンとしては、シクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。多環式のシクロアルカンとしては、ノルボルナン、アダマンタン等が挙げられる。これらの中でも、シクロペンタンまたはノルボルナンが好ましい。
mが1以上の整数の場合、後述する単位(a1−11)のように、ポリマー主鎖が、脂肪族炭化水素環構造のオルト位ではなく、メチレン鎖1つ以上の間隔をあけて結合することにより当該脂肪族炭化水素環構造がポリマー主鎖に組み込まれている。この場合、mとしては、1〜3が好ましく、1が最も好ましい。
mが0の場合、後述する単位(a1−21)のように、ポリマー主鎖が、脂肪族炭化水素環構造のオルト位に結合することにより当該脂肪族炭化水素環構造がポリマー主鎖に組み込まれている。
rおよびsは、それぞれ、0であってもよく、1であってもよい。
特に、mが0の場合はrおよびsが0であることが好ましい。また、mが1の場合は、rおよびsが1であることが好ましい。
R1およびR2は相互に結合して、R1およびR2がそれぞれ結合した炭素原子とともに、環を形成していてもよい。この場合に形成される環としては、単環式または多環式のシクロアルカンが好ましい。単環式のシクロアルカンとしては、シクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。多環式のシクロアルカンとしては、ノルボルナン、アダマンタン等が挙げられる。これらの中でも、シクロペンタンまたはノルボルナンが好ましい。
該環は置換基を有していてもよい。該置換基としては、前記Rの炭化水素基が有していてもよい置換基として挙げたものと同様のものが挙げられる。
R1およびR2が環を形成している場合の単位(a1−11)の具体例としては、下記単位(a1−11−1)、単位(a1−12−1)等が挙げられる。
本発明において、単位(a1−11)としては、R1およびR2が環を形成しているもの、またはR1およびR2の少なくとも一方がシクロアルキル基であるものが好ましい。
R3およびR4が環を形成している場合の単位(a1−21)の具体例としては、下記単位(a1−21−1)、単位(a1−21−2)等が挙げられる。
シクロオレフィンポリマー中、単位(a1)の割合は、当該シクロオレフィンポリマーを構成する全繰り返し単位の合計に対し、30モル%以上が好ましく、40モル%以上がより好ましく、100モル%であってもよい。
単位(a2)としては、従来、シクロオレフィンポリマーに用いられている任意の単位が利用でき、特に限定されない。
該単位(a2)としては、置換基を有していてもよいオレフィンに基づく単位が好ましく、該単位としては、たとえば下記単位(a2−1)が挙げられる。
アリール基としては、ベンジル基、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、p−フルオロフェニル基、m-フルオロフェニル基、o−フルオロフェニル基、p-トリフルオロフェニル基、m-トリフルオロフェニル基、o−トリフルオロフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が挙げられる。
シクロオレフィンポリマー(I):前記単位(a1−11)を含むシクロオレフィンポリマー。
シクロオレフィンポリマー(II):前記単位(a1−21)および単位(a2)を含むシクロオレフィンポリマー。
また、シクロオレフィンポリマー(I)は、本発明の効果を損なわない範囲で、単位(a1−11)以外の単位を含んでいてもよい。
シクロオレフィンポリマー(I)中、単位(a1−11)の割合は、当該シクロオレフィンポリマー(I)を構成する全繰り返し単位の合計に対し、80モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましく、100モル%が特に好ましい。すなわち、シクロオレフィンポリマー(I)としては、単位(a1−11)のみから構成される重合体が特に好ましい。
また、シクロオレフィンポリマー(II)は、本発明の効果を損なわない範囲で、単位(a1−21)および単位(a2)以外の単位を含んでいてもよい。
シクロオレフィンポリマー(II)中、単位(a1−21)の割合は、当該シクロオレフィンポリマー(II)を構成する全繰り返し単位の合計に対し、20〜70モル%が好ましく、30〜50モル%がより好ましい。また、単位(a2)の割合は、当該シクロオレフィンポリマー(II)を構成する全繰り返し単位の合計に対し、30〜80モル%が好ましく、50〜70モル%がより好ましい。
また、シクロオレフィンポリマー(II)中の単位(a1−21)および単位(a2)の含有量の比(モル比)は、単位(a1−21):単位(a2)= 20:80〜70:30の範囲内が好ましく、30:70〜50:50の範囲内がより好ましい。
シクロオレフィンポリマー(II)の好ましい具体例としては、下記式(II−1)、(II−2)にそれぞれ示す2種の単位を含む共重合体が挙げられる。
シクロオレフィンポリマーの合成方法としては、下記(1)〜(7)等が知られている。
(1)ノルボルネン類とオレフィンとを付加共重合させる方法(たとえば下記反応式(1’)に示す方法)。
(2)ノルボルネン類の開環メタセシス重合体に対して水素添加する方法(たとえば下記反応式(2’)に示す方法)。
(3)アルキリデンノルボルネンをトランスアニュラー重合する方法(たとえば下記反応式(3’)に示す方法)。
(4)ノルボルネン類を付加重合させる方法(たとえば下記反応式(4’)に示す方法)。
(5)シクロペンタジエンの1,2−および1,4−付加重合体に対して水素添加する方法(たとえば下記反応式(5’)に示す方法)。
(6)シクロヘキサジエンの1,2−および1,4−付加重合体に対して水素添加する方法(たとえば下記反応式(6’)に示す方法)。
(7)共役ジエンを環化重合させる方法(たとえば下記反応式(7’)に示す方法)。
R6〜R7はそれぞれ独立にアルキル基であり、該アルキル基としては、前記Rの炭化水素基が有していてもよい置換基として挙げたアルキル基と同様のものが挙げられる。
ノルボルネン類の付加共重合体としては、例えばアペル(登録商標)(三井化学(株)製)、TOPAS(登録商標)(Ticona社製)の商品名で販売されているものが挙げられる。
また、ノルボルネン類の開環メタセシス重合体の水素添加ポリマーとしては、種々のものがあるが、透明性、低吸湿性、耐熱性を有することから、ゼオネックス(登録商標)(日本ゼオン(株)製)、ゼオノア(登録商標)(日本ゼオン(株)製)、アートン(登録商標)(JSR(株)製)の商品名で販売されているポリマーが好ましい。
「非環状含フッ素樹脂」とは、上記のように、主鎖に脂肪族炭化水素環構造を有しない含フッ素樹脂をいう。
非環状含フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)、フルオロオレフィン−アルキルビニルエーテル共重合体等が挙げられ、樹脂単体の非晶質性が高く、有機無機複合材料にしたときの分散性にも優れる点から、フルオロオレフィン−ビニルエーテル共重合体が好ましい。
ビニルエステル類としては、酢酸ビニル、ピバル酸ビニル等の炭素数10以下のビニルエステル類が好ましい。
アリルエーテル類としては、炭素数10以下のアルキルアリルエーテル、ヒドロキシアルキルアリルエーテルが好ましい。
イソプロペニルエーテル類としては、炭素数10以下のアルキルイソプロペニルエーテル、ヒドロキシアルキルイソプロペニルエーテルが好ましい。
アリルエステル類としては、酢酸アリル等が好ましい。
イソプロペニルエステル類としては、酢酸イソプロペニルエステル等が好ましい。
有機高分子は、主鎖および/または側鎖の末端に極性の官能基を有するものが好ましい。極性の官能基は、下記の何れかの官能基である。
(A)電気陰性度の異なる2種類以上の原子を含み、当該官能基中に分極による極性を有する官能基。
(B)当該官能基と結合した炭素との電気陰性度の差により分極を生じさせる官能基。
極性の強さ、有機高分子の末端への導入のしやすさの点から、カルボキシ基、スルホ基、フォスフォノ基、酸ハライド基、ヒドロキシ基、チオール基、シラノール基、アルコキシシリル基がより好ましく、無機微粒子が金属酸化物の微粒子の場合、親和性の高さの点から、カルボキシ基及びアルコキシシリル基が特に好ましい。
また、極性の官能基としては、後述の分散助剤の官能基と同じ極性の官能基が好ましく、後述の分散助剤の官能基と同一の官能基がより好ましい。
極性の官能基の数は、有機高分子の1分子あたり、1つ以上、有機高分子の重合度の半分以下が好ましい。極性の官能基の数が重合度の半分以下であれば、有機高分子が界面活性剤として機能することがないため、有機無機複合材料の製造において、無機微粒子分散液の分散媒と分離する工程における相分離を阻害することがない。また、有機高分子の絶縁性を保ちやすい。
主鎖および/または側鎖の末端に極性の官能基を有する含フッ素環状重合体の市販品としては、サイトップ(登録商標、旭硝子社製)が挙げられる。主鎖および/または側鎖の末端に極性の官能基を有する非環状含フッ素樹脂の市販品としては、フレミオン(登録商標、旭硝子社製)、ルミフロン(登録商標、旭硝子社製)等が挙げられる。ルミフロンは、側鎖の末端にカルボキシ基を有するフルオロオレフィン−ビニルエーテル共重合体である。
また、上記以外で主鎖および/または側鎖の末端に極性の官能基を有する化合物としては、ポリエーテル(ポリエチレングリコール等。)、ポリアミド、ポリエステル、ポリスチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリウレタン、アラミド樹脂等が挙げられる。
有機高分子の比誘電率は、1.8〜8.0であることが好ましく、1.8〜5.0がより好ましく、1.8〜3.0が特に好ましい。
通常、有機高分子を単独で用いる場合、比誘電率が低いほど電気絶縁性に優れるが、低すぎると蓄えうる電荷量が充分に得られない。本発明の場合、絶縁性の有機高分子に電荷保持特性に優れる無機微粒子を分散させることにより、絶縁性の高い(比誘電率の低い)有機高分子を使用しても、蓄えうる電荷量を充分大きくすることができる。したがって、エレクトレットとして、より安定に電荷を保持することができ、電荷保持の熱安定性が向上するものと考えられる。
本発明に用いる無機微粒子は、比誘電率が2.0〜4.0×103であり、2.5〜2.0×103であることが好ましく、2.5〜1.5×103であることがより好ましい。比誘電率が2.0以上であれば、エレクトレットは電荷保持特性及び熱安定性に優れる。一方、比誘電率が4.0×103以下であれば、有機無機複合材料全体の誘電率が上がりすぎることによる、絶縁性の低下を防ぐことができる。
無機微粒子の比誘電率は、有機高分子の比誘電率より5以上高いことが好ましく、10以上高いことがより好ましい。差が5以上であれば、エレクトレットは電荷保持特性及び熱安定性により優れる。
金属酸化物としては、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化スズ、二酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化亜鉛、酸化鉄、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、ニオブ酸カリウム等が挙げられ、有機高分子と複合化した場合のエレクトレットとしての電荷保持の安定性及び熱安定性の観点から、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化スズ、二酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化鉄またはチタン酸バリウムが好ましい。
無機微粒子の表面の一部は、炭化水素基によって修飾されていてもよい。炭化水素基による修飾は、たとえば、炭化水素基を有するシランカップリング剤によって無機微粒子の表面を処理することによって行われる。炭化水素基によって修飾することにより、より少ない分散助剤によって、無機微粒子を、有機高分子の存在する溶媒の相に移相させることができる。その結果、無機微粒子の特性を損なうことなく、無機微粒子を有機高分子に分散できるので、エレクトレットとしての電荷保持の安定性及び熱安定性に優れる有機無機複合材料が得られやすい。
無機微粒子の平均一次粒子径は、分散液の状態にて動的散乱法で測定される。
無機微粒子の形状は、分散助剤の使用量を抑制するために比表面積を抑制する点から、球形に近い形状が好ましい。板状の無機微粒子の場合は、長径が15nm以上の微粒子が好ましい。
分散助剤は、下記の役割を担っている。
(i)有機高分子が無機微粒子に結合または吸着するのを補助する。
(ii)分散液中の無機微粒子を、分散液から追い出す、すなわち無機微粒子を有機高分子の存在する相へと速やかに移相させる。
(iii)無機微粒子の凝集を抑制する、すなわち機械的ストレスを緩和する。
よって、有機無機複合材料が形成されれば、分散助剤はもはや不要であり、抽出、分留等の方法によって除去しても構わない。
極性の官能基としては、上述の有機高分子と同様の官能基が挙げられ、カルボキシ基が特に好ましい。
また、極性の官能基としては、有機高分子の無機微粒子への結合または吸着を促進する点から、上述の有機高分子の官能基と同じ極性の官能基が好ましく、上述の有機高分子の官能基と同一の官能基がより好ましい。
極性の官能基の極性は、強いほど好ましく、具体的には、カルボキシ基の酸性度を指標とした場合、pKa=4.8以下が好ましく、4.6以下がさらに好ましく、4以下が特に好ましい。
脂肪族化合物としては、有機高分子との親和性の点から、炭素数が3以上のアルキル基が好ましく、炭素数が5以上のアルキル基がより好ましい。アルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。
官能基の極性と、有機高分子との親和性とが両立された分散助剤としては、カルボキシ基に結合するアルキル基の、α位の炭素原子に結合する水素原子の1つ以上がハロゲンで置換された有機酸が挙げられる。該有機酸としては、パーフルオロ吉草酸、パーフルオロヘキサン酸、トリデカフルオロヘプタン酸、パーフルオロオクタン酸、パーフルオロノナン酸、2,2−トリフルオロメチルプロピオン酸等が挙げられ、トリデカフルオロヘプタン酸が好ましい。
また、上記以外に、官能基の極性と、有機高分子との親和性とが両立された分散助剤としては、カルボキシ基に結合するアルキル基の、α位の炭素原子の1つ以上が水素原子よりも大きい官能基で置換された有機酸が挙げられる。該有機酸としては、2−エチルヘキサン酸(オクチル酸)、アミノ基を保護基で保護されたアミノ酸が好ましい。該アミノ酸としては、F−mocアミノ酸、N−アセチルアミノ酸などが挙げられる。また、該アミノ酸を合成して用いてもよい。該アミノ酸側鎖の官能基などに疎水性化合物を結合させるなどして、該アミノ酸の疎水性(有機高分子との親和性)を高めるとさらに好ましい。
有機無機複合材料は、上記有機高分子、無機微粒子、分散助剤の他に、無機微粒子の表面処理剤、無機微粒子への吸着水としての水分、無機微粒子の分散媒等を含んでもよい。ただし、エレクトレット特性を向上させる観点から、水の含有量は少ないほど好ましい。
有機無機複合材料は、下記の(a)〜(c)工程を有する製造方法により製造することが好ましい。また、必要に応じて下記の(d)〜(f)工程の1以上を追加して製造することができる。
(a)溶媒に有機高分子を溶解した溶液(以下、有機高分子の溶液と記す。)と、溶媒と相分離し得る分散媒に無機微粒子を分散させた分散液(以下、無機微粒子の分散液と記す。)とを混合し、エマルジョンを得る工程。
(b)エマルジョンを、溶媒の相と分散媒の相とに相分離させる工程。
(c)溶媒の相を、有機無機複合材料の分散液として回収する工程。
(d)必要に応じて、有機無機複合材料の分散液から、酸根または塩基根を除去する工程。
(e)必要に応じて、有機無機複合材料の分散液から水分を除去する工程。
(f)必要に応じて、有機無機複合材料の分散液から溶媒を除去し、固形の有機無機複合材料を得る工程。
溶媒としては、有機溶媒が挙げられる。
有機溶媒としては、分散媒が水の場合は、水に溶解しない、またはほとんど溶解しない有機溶媒、たとえば、パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロヘキサン、1、1、1、2、3、4、4、5、5、5−デカフルオロ−3−メトキシ−2−(トリフルオロメチル)ペンタン、トルエン、ベンゼン、スチレン、キシレン、ヘキサン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等が挙げられる。分散媒が有機溶媒の場合は、含フッ素有機溶媒が挙げられる。
Rbの炭素数が6以上であると含フッ素環構造含有重合体の溶解性を著しく阻害する。Rbの好ましい例は、メチル基、エチル基、トリフルオロエチル基、テトラフルオロエチル基、テトラフルオロプロピル基等である。
また、含フッ素環構造含有重合体の溶解性を高めるために含フッ素溶媒のフッ素含有量は60〜80重量%が好ましい。好ましい含フッ素溶媒として、下記のものが例示できる。
溶媒の沸点は、68〜216℃が好ましい。含フッ素有機溶媒の沸点が100℃以上であれば、(d)工程における水分の除去を容易に行うことができる。
含フッ素有機溶媒と相分離し得る有機溶媒としては、トルエン、ヘキサン、テトラヒドロフラン、イソプロパノール、エタノール、メタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、キシレン、n−ブタノール、N,N−ジメチルアセトアミド、エチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
より好ましくは、0.02〜15体積%である。得られる有機無機複合材料の扱いやすさと、分散助剤の使用量の低減のために、無機微粒子の体積分率は、10%未満がより好ましく、8%未満がさらに好ましい。無機微粒子の体積分率が0.02体積%以上であれば、有機無機複合材料から得られるエレクトレットは熱安定性に優れる。
分散助剤の量は、有機高分子の有する官能基の数と無機微粒子の表面積との関係で決まり、有機高分子の分子量が小さく1分子あたりの極性の官能基が多いほど、無機微粒子の直径が大きく体積あたりの表面積が小さいほど、分散助剤の使用量を低減できる。また、無機微粒子の表面の一部が、すでに炭化水素基によって修飾されている場合は、さらに分散助剤の使用量を低減できる。
エマルジョンを、溶媒の相と分散媒の相とに相分離させる方法としては、下記の方法が挙げられる。
(i)遠心分離によってエマルジョンを溶媒の相と分散媒の相とに相分離させる方法。
(ii)エマルジョンを静置し、溶媒と分散媒との比重差によって溶媒の相と分散媒の相とに相分離させる方法。
(a)、(b)工程において、分散液中の無機微粒子は、界面を経由して有機高分子の溶液に移相され、溶媒の相中にて、有機高分子の極性の官能基が無機微粒子の表面に直接結合または吸着することにより、マトリックスの有機高分子中にナノサイズの無機微粒子が均一に分散した有機無機複合材料が形成される。
よって、(c)工程において、溶媒の相を、有機無機複合材料の分散液として回収する。溶媒の相の回収は、公知の分液操作によって行われる。
無機微粒子の分散媒が水である場合、有機無機複合材料の分散液には酸根または塩基根が混入している。これらが多量に混入した有機無機複合材料の分散液をそのまま成形または塗膜として用いると、乾燥時またはその後の熱により腐食するため、機械的特性が低下しやすく、また、着色しやすい。よって、必要に応じて、有機無機複合材料の分散液から酸根または塩基根を除去する。
酸根または塩基根の除去方法としては、水による洗浄方法が好ましい。中和による酸性または塩基性の緩和は、有機無機複合材料中に塩を生じるため用いるべきではない。
無機微粒子の分散媒が有機溶媒である場合、酸根または塩基根の影響は無視できる。よって、有機無機複合材料を、電気絶縁性等が要求される用途や、水分の揮発が困難な1μmを超える厚さに成形する用途に用いる場合、無機微粒子の分散媒としては、有機溶媒が好ましい。
有機無機複合材料が形成されれば、分散助剤はもはや不要であるため、(d)工程にて、同時に抽出するなどして除去しても構わない。
無機微粒子の分散媒が水である場合、有機無機複合材料の分散液には水が混入している。水が混入した有機無機複合材料の分散液をそのままコーティング液として用いると、塗膜の乾燥時に水の蒸発により孔があくため、機械的特性が低下しやすく、また、エレクトレット化する際に電荷注入を阻害する恐れがある。また、塗膜の乾燥が不充分であれば、絶縁性の低下を招く虞がある。よって、必要に応じて、有機無機複合材料の分散液から水分を除去する。
(i)有機無機複合材料の分散液を100℃以上、有機高分子の溶媒の沸点以下で加熱し、水を蒸発させる方法。
(ii)有機無機複合材料の分散液に脱水剤を加える方法。
有機無機複合材料が形成されれば、分散助剤はもはや不要であるため、(e)工程にて、抽出、分留等の方法によって除去しても構わない。
有機無機複合材料の分散液は、必要に応じて、有機無機複合材料の分散液から溶媒を除去し、固形の有機無機複合材料としてもよい。
また、本発明の有機無機複合材料にあっては、有機高分子自体が分散剤として機能しているため、分散助剤の使用量を低減できる。
本発明のエレクトレットは、上記有機無機複合材料からなる層(以下「複合材料層」という。)に電荷を注入したものである。
本発明のエレクトレットは、必要に応じて複合材料層以外の層を有していてもよい。複合材料層と積層可能な他の層としては、例えば、保護層、前記有機高分子のみからなる層、前記無機微粒子の成分と同様の無機物からなる層等が挙げられる。
複合材料層の製膜方法は特に限定されず、使用する材料に応じて従来公知の製膜方法を利用すればよい。たとえば、湿式コーティング法により製膜してもよく、フィルムをプレス成形することにより製膜しても良い。また蒸着、CVD、スパッタリング等のドライプロセスにて製膜しても良い。中でも、製膜プロセスの観点から湿式コーティング法により製膜することが好ましい。
複合材料層を得るためには、上記(f)工程を行わずに得た分散液を、そのままコーティング液として用いてもよい。また、上記(f)工程を行って得た固形の有機無機複合材料を、再度溶媒に溶解してコーティング液として用いてもよい。
再度溶媒に溶解する場合の溶媒としては、前記(a)工程で用いた溶媒を用いることができる。必要に応じて前記分散助剤を添加しても良い。
コーティング液中の有機高分子の固形分濃度は、形成しようとする膜厚に応じて適宜設定すればよい。通常、0.1〜30質量%であり、0.5〜20質量%が好ましい。
なお、基板は、電荷注入後に剥離してもよい。
乾燥条件としては、分散媒としての溶媒、または再溶解した溶媒の沸点以上で行うのが好ましい。
また、電荷を注入する際の温度条件としては、有機高分子のガラス転移温度以上で行うことが、注入後に保持される電荷の安定性の面から好ましく、特にガラス転移温度+10〜20℃程度の温度条件で行うことが好ましい。さらに、電荷を注入する際の印加電圧としては、複合材料層の絶縁破壊電圧以下であれば、高圧を印加することが好ましい。本発明における複合材料層では、±6〜±30kVの高電圧が適用可能であり、特に±8〜±15kVの電圧印加が好ましい。特に複合材料に用いる有機高分子が含フッ素樹脂である場合には、当該複合材料層では、正電荷より負電荷をより安定に保持可能であることから、−8〜−15kVの電圧印加をすることがさらに好ましい。
静電誘導型変換素子としては、振動型発電機、アクチュエータ、センサ等が挙げられる。これらの静電誘導型変換素子の構造は、エレクトレットとして本発明のエレクトレットが用いられる以外は従来公知のものと同様であってよい。
以下の各例で使用した材料の比誘電率はすべてASTM D150に準拠し、周波数1MHzにおいて測定された値である。体積固有抵抗は、ASTM D257により測定された値である。また、該絶縁破壊電圧は、ASTM D149により測定された値である。
また、以下の各例で、膜厚の測定は浜松ホトニクス社製光干渉式膜厚測定装置C10178を用いて行った。
[分散液Aの製造]
有機高分子として、主成分として下式(A)の繰り返し単位を有し、主鎖の末端にカルボキシ基を有する含フッ素環状重合体(旭硝子社製サイトップ、比誘電率2.1、示差走査熱分析(DSC)により測定したガラス転移温度:108℃、体積固有抵抗値>1017Ωcm、絶縁破壊電圧19kV/mm)を、含フッ素有機溶媒(旭硝子社製、サイトップCT−solv180で、以下、solv180と記す。)に濃度23質量%で溶解した溶液(旭硝子社製サイトップ溶液 CTL−823A、以下CT−Aと記載する。)の1.2g(重合体質量換算)を採取し、solv180で希釈し、含フッ素環状重合体の濃度が8.8質量%の溶液の13.7gを得た。この溶液に分散相助剤としてトリデカフルオロヘプタン酸(以下、C6RfAと記す。)を、10mg加えてさらに撹拌し、含フッ素環状重合体の溶液とした。
このエマルジョンを400Gで5分間遠心分離し、solv180の相とトルエンの相とに相分離させた。上相がトルエンの相、下相がsolv180の相であった。
3cm角、厚さ350μmの銅基板に、上記分散液Aをスピンコートした後、200℃でベークして乾燥することにより、膜厚15μmの複合材料層Aを得た。
得られた複合材料層Aに、コロナ放電にて電荷を注入することによりエレクトレットAとした。電荷の注入は、図1に概略構成図を示すコロナ荷電装置を用い、120℃にて、荷電電圧−8kV、荷電時間3分の条件で、以下の手順により行った。
すなわち、ヒーター19で加熱しながら、銅基板10を電極として、直流高圧電源装置12(HAR−20R5;松定プレシジョン製)により、コロナ針14と銅基板10との間に−8kVの高電圧をかけることにより、銅基板10上に形成された複合材料層11(本実施例では複合材料層A)に電荷を注入した。このコロナ荷電装置においては、コロナ針14から放電した負イオンはグリッド16で均一化された後、複合材料層11上に降り注ぎ、電荷が注入される。なお、グリッド16には、グリッド用電源18から−600Vの電圧が印加されている。17は電流計である。
[分散液Bの製造]
CT−Aの1.2g(重合体質量換算)を採取し、solv180で希釈し、重合体の濃度が8.8質量%の溶液の13.7gを得た。この溶液にC6RfAを、12mg加えてさらに撹拌し、含フッ素環状重合体の溶液とした。
酸化チタン微粒子(比誘電率100)の水分散液(石原産業社製、STS−01、平均一次粒子径:5nm、比重:1.3、濃度:30質量%。以下、STS−01と記す。)を、0.06mlとり、上記含フッ素環状重合体の溶液の入っている容器に入れ、5分間撹拌し、エマルジョンを得た。
このエマルジョンを400Gで5分間遠心分離し、solv180の相と水の相とに相分離させた。上相が水の相、下相が含フッ素有機溶媒の相であった。
分散液Aを分散液Bに代えた他は、実施例1と同様にして。複合材料層Bを得た。
得られた複合材料層Bに、コロナ放電にて電荷を注入することによりエレクトレットBとした。電荷の注入は、複合材料層Aを複合材料層Bに代えた他は、実施例1と同様にして行った。
[分散液Cの製造]
CT−Aの1.2g(重合体質量換算)を採取し、solv180で希釈し、重合体の濃度が8.8質量%の溶液の13.7gを得た。この溶液に分散相助剤としてトリデカフルオロヘプタン酸(以下、C6RfAと記す。)を、45mg加えてさらに撹拌し、含フッ素環状重合体の溶液とした。
酸化ジルコニウム微粒子(比誘電率12.5)のトルエン分散液(住友大阪セメント社製、平均一次粒子径:7nm、比重:0.96、濃度:9.9質量%。以下、Zrトルエンゾルと記す。)を、2mlとり、上記含フッ素環状重合体の溶液の入っている容器に入れ、5分間撹拌し、エマルジョンを得た。
このエマルジョンを400Gで5分間遠心分離し、solv180の相とトルエンの相とに相分離させた。上相がトルエンの相、下相がsolv180の相であった。
分散液Aを分散液Cに代えた他は、実施例1と同様にして。複合材料層Cを得た。
得られた複合材料層Cに、コロナ放電にて電荷を注入することによりエレクトレットCとした。電荷の注入は、複合材料層Aを複合材料層Cに代えた他は、実施例1と同様にして行った。
分散液Aを、上記式(A)の繰り返し単位を有する旭硝子製サイトップ溶液(CTL−809A、前記分散液Aに用いたのと同じ旭硝子製サイトップをsolv180に濃度9%で溶かした溶液)に代えた他は、実施例1と同様にして含フッ素樹脂層Dを得た。
得られた含フッ素樹脂層Dに、コロナ放電にて電荷を注入することによりエレクトレットDとした。電荷の注入は、複合材料層Aを含フッ素樹脂層Dに代えた他は、実施例1と同様にして行った。
上記で得たエレクトレットA,B,C,Dについて、以下の手順により荷電試験を行った。
荷電電圧−8kV、荷電時間3分の条件でのコロナ荷電により電荷を注入した直後のエレクトレットA,B,C,Dを、それぞれ、常温(25℃)に戻してその表面電位(初期表面電位)を測定した。また、各エレクトレットを、20℃,60%RHの条件で400時間保管した後、常温に戻してその表面電位(400時間後表面電位)を測定した。
表面電位(V)は、表面電位計(model279;モンローエレクトロニクス製)を用い、各エレクトレットの9点の測定点(膜の中心から3mm毎に格子状に設定。図2参照。)の表面電位を測定し、それらの平均値として求めた。その結果を表1に示す。
上記エレクトレットA,B,Dについて、図3に概略構成図を示す装置を用い、以下の手順により熱安定性試験を行った。
まず、図3に示すように、銅基板10上のエレクトレット21(エレクトレットA,B,CまたはD)に対向して対向電極20を配置した。
次に、図3の破線で示される部分の温度を、ヒーターで加熱することにより一定の速さ(1℃/分)で昇温し、各エレクトレットA,B,Dから放出される電荷量を、対向電極20から流れる電流値iとして電流計22(微小電流計(Keithley製、Model6517A))により測定し、放電開始温度および放電ピーク温度を求めた。その結果を表1に示す。
ここで、放電ピーク温度とは、放電の際に検出される電流値が最大になる温度を示し、放電開始温度とは、電流計22にて、以下の式で求められる電流値(放電開始時電流値)が検出された時点の温度を示す。
放電開始時電流値={(放電ピーク温度における電流値)−(放電前の電流値)}×0.1+(放電前の電流値)
また、エレクトレットCの熱安定性評価に関しては、エレクトレットDと共に大気下、125℃で一定に保った恒温オーブン(ヤマト科学社製 イナートオーブンDN410I)中に保管し、表面電位減衰の経時変化を計測した。表1に示す電位残存率は以下の式により定義される。
(電位残存率)={(70時間後の表面電位)/(オーブン投入前表面電位)}*100
また、表面電位についても、エレクトレットA,B,Cは、それぞれ、エレクトレットDに比べて、初期、400時間後ともに表面電位が高く、優れた電荷保持特性を有していることが確認できた。
Claims (6)
- 主鎖および/または側鎖の末端に極性の官能基を有する有機高分子と、比誘電率が2.0〜4.0×103の無機微粒子とを含む有機無機複合材料からなる層を有するエレクトレットであって、
前記有機無機複合材料の固形分(100体積%)中、前記無機微粒子の体積分率が0.02体積%以上10体積%未満であり、
前記無機微粒子が金属酸化物の微粒子であり、
前記金属酸化物が、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化セリウムおよび酸化スズからなる群より選ばれる1種以上であり、
前記極性の官能基が、カルボキシ基およびアルコキシシリル基からなる群より選ばれる1種以上であることを特徴とするエレクトレット。 - 前記無機微粒子の表面の一部が炭化水素基によって修飾されている請求項1に記載のエレクトレット。
- 前記有機高分子が脂肪族環構造を有する請求項1または2に記載のエレクトレット。
- 前記有機高分子が含フッ素樹脂である請求項1〜3のいずれか一項に記載のエレクトレット。
- 前記有機無機複合材料が、下記(a)〜(c)の工程を有する製造方法によって製造されたものである請求項1〜4のいずれか一項に記載のエレクトレット。
(a)溶媒に前記有機高分子を溶解した溶液と、前記溶媒と相分離し得る分散媒に前記無機微粒子を分散させた分散液とを混合し、エマルジョンを得る工程。
(b)前記エマルジョンを、前記溶媒の相と前記分散媒の相とに相分離させる工程。
(c)前記溶媒の相を、前記有機無機複合材料の分散液として回収する工程。 - 請求項1〜5のいずれか一項に記載のエレクトレットを備えることを特徴とする静電誘導型変換素子。
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