JP2016102486A - スクロール型圧縮機 - Google Patents
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Abstract
【課題】ゲート対応部によって可動スクロールの公転運動が妨げられることを抑制することができるスクロール型圧縮機を提供すること。【解決手段】スクロール型圧縮機は、各渦巻壁16bの先端に設けられたシール溝16c内に収納されたチップシール41を有する。チップシール41は、固定スクロールと可動スクロールの間に所定の厚みを有して配置されており、射出成形により終端部43にゲート対応部を有し、この終端部43に、該終端部43以外の部位より厚みの薄い薄肉部46を有する。【選択図】図4
Description
本発明は、渦巻壁の先端にチップシールを備えるスクロール型圧縮機に関する。
例えば特許文献1に開示されているように、一般的に、スクロール型圧縮機は、固定スクロールと、固定スクロールに対して公転運動する可動スクロールとを有する。固定スクロールは、固定側基板と、固定側基板から立設された固定側渦巻壁と、固定側渦巻壁の先端のシール溝に収納されたチップシールを有する。また、可動スクロールは、可動側基板と、可動側基板から立設された可動側渦巻壁と、可動側渦巻壁の先端のシール溝に収納されたチップシールを有する。チップシールは、一般的に、渦巻壁と相似な渦巻状であり、かつ渦巻きの延びる方向に直交した断面が四角形状である。
そして、固定側渦巻壁と可動側渦巻壁とが互いに噛み合わされることで、可動スクロールの公転運動に基づいて容積減少して冷媒を圧縮する圧縮室が区画されている。冷媒圧縮時には、圧縮室内の高圧側のガスをシール溝内に流入させ、その力でチップシールを浮上させる。浮上したチップシールをシール溝の内側面と、対向した相手側の基板に密着させ、圧縮室をシールする。
ところで、チップシールは、一般に成形型装置を使用した射出成形によって製造される。しかし、射出成形においては、成形型装置のキャビティに成形材料を充填するためのゲートにバリ等が生じやすい。よって、得られるチップシールにおいて、ゲートと対向した部位(以下、ゲート対応部とする)の厚みがバリ等により厚くなることがある。
ゲート対応部の厚みがその他の部位より厚くなると、厚い部分と、対向した相手側の基板との間のクリアランスが不足し、厚い部分が相手側の基板に押し付けられることとなる。その結果、可動スクロールの公転運動時の摺動抵抗が大きくなり、可動スクロールのスムーズな公転運動が妨げられる。
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、ゲート対応部によって可動スクロールの公転運動が妨げられることを抑制することができるスクロール型圧縮機を提供することにある。
上記問題点を解決するためのスクロール型圧縮機は、固定側の基板、該固定側の基板から立設された固定側の渦巻壁、及び前記固定側の渦巻壁の先端に設けられたシール溝内に収納されたチップシールを有する固定スクロールと、可動側の基板、該可動側の基板から立設された可動側の渦巻壁、及び前記可動側の渦巻壁の先端に設けられたシール溝内に収納されたチップシールを有する可動スクロールと、を備えたスクロール型圧縮機において、前記チップシールは、前記固定スクロールと前記可動スクロールの間に所定の厚みを有して配置されており、射出成形により端部にゲート対応部を有し、前記ゲート対応部に、該ゲート対応部以外の部位より厚みの薄い薄肉部を有することを要旨とする。
これによれば、ゲート対応部を薄肉部とし、その他の部位より厚みを薄くした。このため、ゲート対応部が、その他の部位より厚くなることが無くなる。よって、チップシールのゲート対応部と相手側の基板とのクリアランスが適切に保たれ、摺動抵抗が異常に高くなることを抑制でき、可動スクロールの公転運動が妨げられることを抑制することができる。
また、スクロール型圧縮機について、前記端部は、前記チップシールの渦巻きの延びる方向に沿った一端側に前記ゲート対応部として射出成形の最後に成形される終端部である。
これによれば、一般的に、チップシールの射出成形では、チップシールの渦巻きの延びる方向に沿った一端側にゲート対応部が位置する場合が多い。よって、一般的な方法で製造されるチップシールにおいて、その一端側に薄肉部を設けることができる。
本発明によれば、ゲート対応部によって可動スクロールの公転運動が妨げられることを抑制することができる。
以下、スクロール型圧縮機を具体化した一実施形態を図1〜図4にしたがって説明する。なお、スクロール型圧縮機は車両空調装置に用いられる。
図1に示すように、スクロール型圧縮機10のハウジング11は、有底筒状であるセンターハウジング12(シェル)の一端に有蓋筒状のフロントハウジング13が連結されるとともに、センターハウジング12の他端に有蓋筒状のリヤハウジング14が連結されて構成されている。センターハウジング12は、フロントハウジング13側に開口しており、その内部に固定スクロール15が一体形成されている。固定スクロール15は、センターハウジング12の底壁を形成する円板状の固定側の基板15aと、固定側の基板15aからフロントハウジング13に向けて立設された固定側の渦巻壁15bとを有する。また、固定スクロール15は、固定側の渦巻壁15bの先端面に凹設されたシール溝15cに渦巻き形のチップシール40を備える。
図1に示すように、スクロール型圧縮機10のハウジング11は、有底筒状であるセンターハウジング12(シェル)の一端に有蓋筒状のフロントハウジング13が連結されるとともに、センターハウジング12の他端に有蓋筒状のリヤハウジング14が連結されて構成されている。センターハウジング12は、フロントハウジング13側に開口しており、その内部に固定スクロール15が一体形成されている。固定スクロール15は、センターハウジング12の底壁を形成する円板状の固定側の基板15aと、固定側の基板15aからフロントハウジング13に向けて立設された固定側の渦巻壁15bとを有する。また、固定スクロール15は、固定側の渦巻壁15bの先端面に凹設されたシール溝15cに渦巻き形のチップシール40を備える。
ハウジング11内には、可動スクロール16が収容されている。可動スクロール16は、円板状をなす可動側の基板16aと、可動側の基板16aから固定側の基板15aへ向かって立設される可動側の渦巻壁16bとを有する。固定スクロール15と可動スクロール16とは対向配置されている。固定側の渦巻壁15bと可動側の渦巻壁16bとは互いに噛み合わされている。また、可動スクロール16は、可動側の渦巻壁16bの先端面に凹設されたシール溝16cに渦巻き形のチップシール41を備える。
固定側の基板15a及び渦巻壁15bと、可動側の基板16a及び渦巻壁16bとによって圧縮室17が区画されている。チップシール40,41は、固定スクロール15の渦巻壁15bと可動スクロール16の渦巻壁16bとの間に所定の厚みを有して配置されている。固定側の渦巻壁15bのチップシール40、及び可動側の渦巻壁16bのチップシール41によって、圧縮室17の気密性が保持されている。
フロントハウジング13には、回転軸18の大径部18aがラジアルベアリング19を介して回転可能に支持されている。回転軸18の小径部18bの先端には、動力伝達機構PTを介して外部駆動源としての車両のエンジンEが作動連結されている。回転軸18の大径部18aの軸方向の両端面のうち、可動スクロール16に近い端面18cには、回転軸18の回転軸線L1に対して偏心した位置から可動スクロール16に向けて突出する偏心軸20が一体形成されている。
偏心軸20には、バランスウェイト21が一体化されたブッシュ22が嵌合されている。可動側の基板16aには円筒状のボス部16fがブッシュ22に向けて突出形成されている。このボス部16fには、ブッシュ22が軸受23を介して嵌挿されている。そして、可動スクロール16は、軸受23を介してブッシュ22に支持されている。
上記構成のスクロール型圧縮機10では、エンジンEの駆動力が動力伝達機構PTを介して回転軸18に伝達されて、回転軸18が回転駆動すると、偏心軸20、ブッシュ22及び軸受23を介して可動スクロール16が自転しようとする。このとき、自転阻止機構26によって可動スクロール16の自転が阻止されて、可動スクロール16の正方向への公転運動のみが許容される。この可動スクロール16の公転運動により、圧縮室17の容積が減少し、冷媒が圧縮される。
センターハウジング12の外周壁と可動側の渦巻壁16bの最外周部との間には、吸入室30が区画されている。センターハウジング12の外周壁には、吸入室30に連通する吸入口31が形成されている。固定側の基板15aには、吐出ポート32が形成されるとともに、吐出ポート32は圧縮室17に連通している。吐出ポート32は、固定側の基板15aに固定された吐出弁33によって開閉される。吐出弁33は固定側の基板15aに固定されたリテーナ34によって開度が規制される。吐出ポート32は、センターハウジング12とリヤハウジング14によって区画された吐出室35に連通している。リヤハウジング14には、吐出室35に連通する吐出口36が形成されている。吐出口36と吸入口31とは図示しない外部冷媒回路によって連通している。
次に、チップシール40,41について詳細に説明する。
図2に示すように、チップシール40,41は、渦巻きの延びる方向に直交した断面が四角形状である。また、チップシール40,41の平面形状は、各渦巻壁15b,16bと相似の渦巻形状である。チップシール40,41に使用される材料はシール性と耐摩耗性を要求される樹脂材料である。チップシール40,41は、射出成形によって製造される。
図2に示すように、チップシール40,41は、渦巻きの延びる方向に直交した断面が四角形状である。また、チップシール40,41の平面形状は、各渦巻壁15b,16bと相似の渦巻形状である。チップシール40,41に使用される材料はシール性と耐摩耗性を要求される樹脂材料である。チップシール40,41は、射出成形によって製造される。
チップシール40,41は、渦巻きの延びる方向の一端側に射出成形時の巻き終わり部となる終端部43を有し、他端側に射出成形時の巻き始め部となる始端部42を有する。始端部42は、射出成形の最初に形成される部位であり、終端部43は、射出成形の最後に形成される部位である。終端部43は、射出成形の際にゲートが対向した部位、及びその周囲を含む部位であり、ゲート対応部に相当する。また、チップシール40,41は、一面に各シール溝15c,16cの内底面に対向配置される裏面44を有し、他面に相手側の基板15a,16aに対向配置される表面45を有する。
図3(a)、図3(b)及び図4(a)に示すように、チップシール40,41において、裏面44と表面45を結ぶ直線の延びる方向を厚み方向とし、その厚み方向に沿う寸法を厚みとする。なお、図4(a)及び図4(b)では、可動スクロール16のチップシール41について図示しているが、可動スクロール16を固定スクロール15に読みかえれば、図4(a)及び図4(b)は固定スクロール15でのチップシール40についての図示となる。
チップシール40,41は、終端部43に薄肉部46を有する。薄肉部46は、チップシール40,41における薄肉部46以外の部位よりも厚みが薄い。薄肉部46は、終端部43から始端部42に向けて渦巻きが延びる方向に沿って一定の厚みである。また、薄肉部46は、渦巻きの延びる方向における先端が、円弧状である。薄肉部46は、チップシール40,41の表面45側で、終端部43が凹んで形成されている。チップシール40,41の厚みDは、薄肉部46及びそれ以外の部位の両方ともシール溝15c,16cの深さFより厚い。
薄肉部46の厚みは、チップシール40,41のゲート対応部にバリ等が発生しても、その厚み増大を許容し、しかも、厚み増大部で、対向した相手側の基板15a,16aとの間に適切なクリアランスが確保できるように、余裕を持って設定されている。一方、薄肉部46の厚みが薄くなりすぎると、チップシール40,41が、対向した相手側の基板15a,16aに押し付けられた際の気密性が薄肉部46で低下してしまう。よって、薄肉部46の厚みは、予め決められた所定の範囲に設定される。
また、図4(a)に示すように、シール溝15c,16cにおける対向する内側面同士を最短距離で結ぶ直線の長さを、開口幅Nとする。チップシール40,41において、裏面44及び表面45を繋ぐ一対の面を側面47とすると、側面47同士を最短距離で結ぶ直線の長さを、チップシール40,41の幅Mとする。この場合、チップシール40,41の幅Mは、シール溝15c,16cの開口幅Nより短い。
次に、スクロール型圧縮機10の作用を記載する。
図4(b)に示すように、圧縮時は、圧縮室17内の高圧側のガスがシール溝15c,16c内に流入し、その力でチップシール40,41は浮上する。チップシール40,41の浮上時、チップシール40,41の表面45が、対向した相手側の基板15a,16aに押し付けられる。このとき、チップシール40,41の終端部43にバリ等が生じていても、薄肉部46によって終端部43の厚みがその他の部位より厚くなることがない。
図4(b)に示すように、圧縮時は、圧縮室17内の高圧側のガスがシール溝15c,16c内に流入し、その力でチップシール40,41は浮上する。チップシール40,41の浮上時、チップシール40,41の表面45が、対向した相手側の基板15a,16aに押し付けられる。このとき、チップシール40,41の終端部43にバリ等が生じていても、薄肉部46によって終端部43の厚みがその他の部位より厚くなることがない。
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)チップシール40,41において、終端部43に薄肉部46を形成した。このため、終端部43にバリ等が形成されても、終端部43と相手側の基板15a,16aとのクリアランスが適切に保たれ、摺動抵抗が異常に高くなることを抑制でき、可動スクロール16の公転運動が妨げられることを抑制することができる。
(1)チップシール40,41において、終端部43に薄肉部46を形成した。このため、終端部43にバリ等が形成されても、終端部43と相手側の基板15a,16aとのクリアランスが適切に保たれ、摺動抵抗が異常に高くなることを抑制でき、可動スクロール16の公転運動が妨げられることを抑制することができる。
(2)終端部43に薄肉部46を設けたため、終端部43の厚みがその他の部位より厚くなることが防止される。このため、チップシール40,41がシール溝15c,16c内で浮上したとき、終端部43以外では、押し付け力のばらつきを抑えて相手側の基板15a,16aに密着する。このため、チップシール40,41によって圧縮室17のシールを保持することができる。
(3)薄肉部46は、渦巻きの延びる方向に沿って一定の厚みである。このため、例えば、薄肉部46が、渦巻きの延びる方向に沿って徐々に厚みが増大するような傾斜状と比べると、万一の薄肉部46の厚み増大を許容できる範囲が広くなる。
(4)薄肉部46は、チップシール40,41の終端部43に形成されている。このため、チップシール40,41の渦巻きの延びる方向の途中にシール性の低下する部位が存在せず、チップシール40,41のほぼ全体で圧縮室17をシールすることができる。
(5)チップシール40,41の製造時、ゲート対応部である終端部43には、固化プラスチックが一体に成形される。この固化プラスチックはチップシール40,41から分断される。終端部43に薄肉部46があることから、固化プラスチックが分断されやすい。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 実施形態では、ゲート対応部として、ゲートが対向した部位及びその周囲を含む終端部43に具体化したが、ゲート対応部は、ゲートと対向した部分のみとしてもよいし、実施形態よりも広くてもよい。
○ 実施形態では、ゲート対応部として、ゲートが対向した部位及びその周囲を含む終端部43に具体化したが、ゲート対応部は、ゲートと対向した部分のみとしてもよいし、実施形態よりも広くてもよい。
○ 実施形態では、薄肉部46を、渦巻きの延びる方向に沿って一定の厚みとしたが、これに限らない。渦巻きの延びる方向に沿って、終端部43の先端から基端に向かうに従い、薄肉部46の厚みが徐々に厚くなったり、薄くなったりする傾斜状でもよいし、段階的に厚みが変化してもよい。要は、薄肉部46の存在によりゲート対応部の厚みが、その他の部位より薄くなっていれば、薄肉部46の厚み形状は適宜変更してもよい。
○ 薄肉部46は、チップシール40,41の表面45側が凹んで薄くなる形態としたが、チップシール40,41の裏面44側が凹んで薄くなる形態としてもよい。
○ 実施形態では、チップシール40,41は、薄肉部46を含めた表面45が相手側の基板15a,16aに対向するようにシール溝15c,16cに収納されていたが、この逆でもよく、チップシール40,41は、裏面44が相手側の基板15a,16aに対向するようにシール溝15c,16cに収納されていてもよい。
○ 実施形態では、チップシール40,41は、薄肉部46を含めた表面45が相手側の基板15a,16aに対向するようにシール溝15c,16cに収納されていたが、この逆でもよく、チップシール40,41は、裏面44が相手側の基板15a,16aに対向するようにシール溝15c,16cに収納されていてもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)前記薄肉部は、前記チップシールにおける渦巻きの延びる方向に沿って一定の厚みを有するスクロール型圧縮機。
(イ)前記薄肉部は、前記チップシールにおける渦巻きの延びる方向に沿って一定の厚みを有するスクロール型圧縮機。
(ロ)前記薄肉部の所定の厚みは、薄肉部に厚み増大が発生したとしても、その厚み増大部での厚みが、ゲート対応部以外の部位の厚みより厚くならず、かつ対向した相手側の基板との間に適切なクリアランスが確保できる厚みに設定されているスクロール型圧縮機。
(ハ)前記チップシールは、溶融した成形材料を、成形型装置のゲートから該成形型装置のキャビティ内に充填する、射出成形によって製造されているスクロール型圧縮機。
10…スクロール型圧縮機、15…固定スクロール、15a,16a…基板、15b,16b…渦巻壁、15c,16c…シール溝、16…可動スクロール、40,41…チップシール、42…始端部、43…ゲート対応部としての終端部、46…薄肉部。
Claims (2)
- 固定側の基板、該固定側の基板から立設された固定側の渦巻壁、及び前記固定側の渦巻壁の先端に設けられたシール溝内に収納されたチップシールを有する固定スクロールと、
可動側の基板、該可動側の基板から立設された可動側の渦巻壁、及び前記可動側の渦巻壁の先端に設けられたシール溝内に収納されたチップシールを有する可動スクロールと、を備えたスクロール型圧縮機において、
前記チップシールは、前記固定スクロールと前記可動スクロールの間に所定の厚みを有して配置されており、射出成形により端部にゲート対応部を有し、前記ゲート対応部に、該ゲート対応部以外の部位より厚みの薄い薄肉部を有することを特徴とするスクロール型圧縮機。 - 前記端部は、前記チップシールの渦巻きの延びる方向に沿った一端側に前記ゲート対応部として射出成形の最後に成形される終端部である請求項1に記載のスクロール型圧縮機。
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