JP2016102228A - 電解二酸化マンガン及びその製造方法並びにその用途 - Google Patents

電解二酸化マンガン及びその製造方法並びにその用途 Download PDF

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Abstract

【課題】 アルカリ電池の正極材料として用いた場合に電気化学的な反応性に優れ、ハイレート放電特性に優れる電解二酸化マンガンを提供する。
【解決手段】 細孔直径5nmを超え100nm以下の細孔の容積が0.003cm/g以上であることを特徴とする電解二酸化マンガン及びその製造方法並びにその用途。
【選択図】 なし

Description

本発明は、電解二酸化マンガン及びその製造方法並びにその用途に関するものであり、より詳しくは、例えばマンガン乾電池、特にアルカリマンガン乾電池において、正極活物質として使用される電解二酸化マンガン及びその製造方法に関する。
二酸化マンガンは、たとえばマンガン乾電池またはアルカリマンガン乾電池の正極活物質として知られており、保存性に優れ、かつ安価であるという利点を有する。特に、二酸化マンガンを正極活物質として用いるアルカリマンガン乾電池は、重負荷での放電特性に優れていることから電子カメラ、携帯用テープレコーダー、携帯情報機器、さらにはゲーム機や玩具にまで幅広く使用され、近年急速にその需要が伸びてきている。
しかし、アルカリマンガン乾電池は、放電電流が大きくなるに従い正極活物質である二酸化マンガンの利用率が低下し、また放電電圧が低下した状態では使用できないため、実質的な放電容量が大きく損なわれるという課題があった。すなわち、大電流を使用(ハイレート放電)する機器にアルカリマンガン乾電池を用いると、充填されている正極活物質である二酸化マンガンが十分に活用されず、使用可能な時間が短いという欠点を有していた。
そこで短時間に大電流を取り出すハイレート放電条件においても、高容量、長寿命を発現できる優れた二酸化マンガン、所謂ハイレート放電特性に優れた二酸化マンガンが望まれていた。
これまで、ハイレート放電特性改善のため、40重量%KOH水溶液中で水銀/酸化水銀参照電極を基準として測定したときの電位(以下、アルカリ電位)が高い電解二酸化マンガンを製造することが検討されてきた(特許文献1〜3、非特許文献1)。
また、同じくハイレート放電特性改善のために、3〜5nmの微細孔域の容積が0.005cm/gから0.011cm/gの電解二酸化マンガンを用いることが開示されている(特許文献4)。更に、このような微細孔容積を増やす方法として、100℃を超える高温、加圧下で電解二酸化マンガンを合成する方法も開示されている(特許文献5)。
また、ハイレートよりも小さいミドルレートを改良した電解二酸化マンガンとして懸濁電解により比較的高い電解温度で製造した電解二酸化マンガンが提案されている(特許文献6)。
しかしながら、これらのアルカリ電位が高い電解二酸化マンガンや大きな微細孔容積を有する電解二酸化マンガンであっても、ハイレート放電特性は十分なものではなかった。
特開2007−141643号公報 米国特許6,527,941号公報 特開2009−135067号公報 特開2009−289728号公報 特開2005−520290号公報 特開2013−199422号公報
古河電工時報,第43号,P.91〜102(1967年5月)
本発明の目的は、特にハイレート放電特性に優れるアルカリマンガン乾電池の正極活物質として使用される電解二酸化マンガンであって、特にアルカリ電解液中で、従来にない大きな細孔容積を有する電解二酸化マンガン及びその製造方法並びにその用途を提供するものである。
本発明者らは、特にアルカリマンガン乾電池の正極活物質として使用される電解二酸化マンガンについて鋭意検討を重ねた結果、細孔直径5nmを超え100nm以下の細孔の容積が0.003cm/g以上の電解二酸化マンガンが、優れたハイレート放電特性を有する正極材料となることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、細孔直径5nmを超え100nm以下の細孔容積が0.003cm/g以上であることを特徴とする電解二酸化マンガンである。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明の電解二酸化マンガンは、細孔直径5nmを超え100nm以下の細孔(以下、「メソポア」と称する場合がある)の容積が0.003cm/g以上であり、極めて大きなメソポアを有することを特徴とする。細孔直径5nmを超え100nm以下の細孔(メソポア)では、電解液が浸透し易く、良好な電池反応が進行すると考えられる。メソポアの容積が0.003cm/g未満では、ハイレート放電特性が不十分である。特に良好なハイレート放電特性を得るためには、メソポアの容積が0.007cm/g以上が好ましく、0.01cm/g以上がさらに好ましい。このメソポアの容積の総量の上限としては、充填密度を維持し、高い電池反応性と充填性が得られ、良好なハイレート特性が発現するため、0.2cm/g以下が例示される。
本発明の電解二酸化マンガンは、電池反応をより効率的に行うため、細孔直径2nm以上5nm以下の細孔(以下、「ミクロポア」と称する場合がある)の容積が0.004cm/g未満であることが好ましく、0.003cm/g以下がさらに好ましく、0.001cm/g未満が特に好ましい。
本発明のミクロポア範囲がハイレート特性向上にどのように寄与しているかは明確ではないが、次のように解釈している。
まず、アルカリ乾電池内での電解二酸化マンガンは、下記式1のように、水と電気化学的に反応し、二酸化マンガン表面とアルカリ電解液界面では、Hと電子(e)の授受が行われている。
MnO+HO +e → MnOOH + OH … 式1
二酸化マンガン表面と電解液(水)の界面が多いほど、反応はスムーズに進行するが、ミクロポア領域かそれ以下の細孔領域では、表面張力の影響などで細孔内部に電解液が浸透し難く、結果的にほとんど反応に寄与しない細孔となっているのではないかと推測される。
また、電解液が浸透していない空洞のミクロポアが多いほど、電子移動も阻害されることが推測される。
以上のような理由から、ミクロポアの容積が0.004cm/g未満であれば、より良好なハイレート特性が発揮されるため好ましいものとなると思われる。
本発明の電解二酸化マンガンは、メソポアの面積が0.1m/g以上であることが好ましく、0.5m/g以上であることがより好ましく、2.0m/g以上であることがさらに好ましく、5.5m/g以上であることが特に好ましい。
上述したように、メソポアには電解液が浸透し易く、広い細孔表面積を有することにより、式1に示す電池反応が良好に進行すると考えられる。メソポアの細孔面積の上限としては、充填密度を維持し、高い電池反応性と充填性が得られ、良好なハイレート放電特性が発現するため、30m/g以下が例示される。
本発明の電解二酸化マンガンは、アルカリ電位が270mV以上350mV未満であることが好ましい。アルカリ電位が270mV以上350mV未満では、アルカリマンガン乾電池の正極材料に用いた場合、電池の開回路電圧が上昇し、使用可能な放電電圧下限までの放電時間を長くすることができる。アルカリ電位は270mV以上330mV以下がより好ましく、280mV以上320mV以下であることがさらに好ましく、290mV以上310mV以下であることが特に好ましい。アルカリ電位は、40重量%KOH水溶液中で水銀/酸化水銀参照電極を基準として測定する。
本発明の電解二酸化マンガンは、充填性を高く維持するため、嵩密度(bulk density)が1.6g/cm以上であることが好ましく、1.8g/cm以上であることがより好ましく、2.0g/cm以上であることがさらに好ましい。一方で嵩密度は極端に高い必要はなく、例えば、3.0g/cm以下、さらには2.5g/cm以下を挙げることができる。
本発明の電解二酸化マンガンは、CuKα線を光源とする通常のXRD測定パターンにおいて、2θが22±1°付近の(110)面の回折線の半価全幅(FWHM)については特に限定するものではないが、充填密度をより高くして放電容量をより高めるため、1.6°以上4.0°以下が好ましく、1.7°以上3.8°以下がより好ましく、2.1°以上3.7°以下がさらに好ましい。この様なFWHMであることにより、充填性が高くなり放電容量が高まる。
本発明の電解二酸化マンガンの平均結晶子径は、FWHM及び(110)ピーク位置からシェラーの式で換算によって得られ、平均結晶子径が20〜50Åに相当する。
本発明の電解二酸化マンガンは、BET比表面積については特に限定するものではないが、放電容量をより高めるため、30m/g以上80m/g以下であることが好ましく、40m/g以上70m/g以下であることがより好ましく、45m/g以上65m/g以下であることがさらに好ましい。
本発明の電解二酸化マンガンは、X線回折の(110)/(021)ピーク強度比が0.3以上1.0以下であることが好ましく、より好ましくは0.35以上0.55以下、さらに好ましくは0.4以上0.5以下である。
電解二酸化マンガンのX線回折における(110)面は22±1°付近に、また(021)面は37±1°付近に現れるが、これらは二酸化マンガン結晶の主要なX線回折ピークである。
次に、本発明の電解二酸化マンガンの製造方法について説明する。
本発明の電解二酸化マンガンは、硫酸−硫酸マンガン混合溶液中にマンガン酸化物粒子を懸濁させる電解二酸化マンガンの製造方法であって、マンガン酸化物粒子を連続的に硫酸−硫酸マンガン混合溶液に混合し、硫酸−硫酸マンガン混合溶液中のマンガン酸化物粒子の濃度が5mg/L以上100mg/L以下、電解温度が80℃以上96℃未満、電解電流密度が0.5A/dm以上1.7A/dm以下で電解することで、製造することができる。上記条件で電解を行うことにより、懸濁させたマンガン酸化物粒子の一部が一次粒子核となり、さらに低温で電解を行うことにより一次粒子の成長を抑制し、析出する電解二酸化マンガンの一次粒子間にメソポアが形成され、細孔直径5nmを超え100nm以下の細孔の容積が0.003cm/g以上の本発明の電解二酸化マンガンを得ることができる。
本発明の電解二酸化マンガンの製造方法は、硫酸−硫酸マンガン混合溶液中にマンガン酸化物粒子を連続的に混合する。これにより、電解期間中の硫酸−硫酸マンガン混合溶液中のマンガン酸化物粒子の濃度を安定にすることができ、電解期間を通じて一定の濃度のマンガン酸化物粒子を含有する電解液を電解する電解二酸化マンガンの製造方法となる。これにより、電解全期間中を通して得られる電解二酸化マンガンの物性、特に細孔の状態が均一になる。また、マンガン酸化物粒子は、直接硫酸−硫酸マンガン混合溶液に混合してもよく、硫酸−硫酸マンガン混合溶液に供給する補給硫酸マンガン液に添加した上で硫酸−硫酸マンガン混合溶液に混合してもよく、スラリーとしてから硫酸−硫酸マンガン混合溶液に混合してもよい。
マンガン酸化物粒子を硫酸−硫酸マンガン混合溶液に混合する場合、混合するマンガン酸化物粒子としては、例えば、二酸化マンガン(MnO)、三二酸化マンガン(Mn)及び四三酸化マンガン(Mn)からなる群から選ばれる少なくとも1種以上を使用することが例示でき、好ましくは二酸化マンガン(MnO)を使用することが例示できる。
マンガン酸化物粒子は、平均粒径が5μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることがさらに好ましく、0.9μm以下であることが特に好ましい。平均粒径が5μm以下であることで、マンガン酸化物粒子が沈降しにくくなり、硫酸−硫酸マンガン混合溶液中に均一に分散しやすくなる。このように、マンガン酸化物粒子は分散性が低下しない程度の平均粒径を有していることが好ましいが、その現実的な値として0.5μm以上を挙げることができる。
硫酸−硫酸マンガン混合溶液中のマンガン酸化物粒子の濃度は5mg/L以上100mg/L以下である。マンガン酸化物粒子の濃度が5mg/L未満であると、一次粒子核の数が少なくマンガン酸化物粒子の効果が不十分であり、100mg/Lを超えると、マンガン酸化物粒子が凝集沈降し、その効果が低下する。マンガン酸化物粒子が一次粒子核としてより適切な量を確保するため、好ましくは5mg/L以上50mg/L以下、さらに好ましくは5mg/L以上20mg/Lである。
本発明の電解二酸化マンガンの製造方法では電解温度は80℃以上96℃未満で行う。電解温度が80℃未満であると電流効率が低下するため製造効率が低下し、96℃以上であると電解液の蒸発が増大し加熱コストが増加する。電解温度は一次粒子の成長をより抑制するため、80℃以上94℃以下が好ましく、80℃以上90℃未満がより好ましく、80℃以上88℃以下がさらに好ましい。
本発明の電解二酸化マンガンの製造方法では、終了電圧が2.7V以上が好ましく、3.0V以上がより好ましく、5.0V以上がさらに好ましい。電解電圧は高くなりすぎると電解が不安定になり連続した運転が困難になるため、終了電圧の上限として10V以下を例示できる。
本発明の電解二酸化マンガンの製造方法は、電解液として硫酸−硫酸マンガン混合溶液を使用するものであり、硫酸マンガン水溶液を電解液とする電解方法とは異なり、電解期間中の硫酸濃度を制御することが可能となる。これにより、長期間電解を行なった場合であっても硫酸濃度を任意に設定できるため、安定的に電解二酸化マンガンを製造できるだけでなく、得られる電解二酸化マンガンの細孔の状態が均一になり易い。
電解液中の硫酸は、硫酸濃度として25g/Lを超え55g/L以下の範囲に制御されることが好ましく、32g/L以上45g/L以下であることがより好ましい。また、電解期間中に硫酸濃度を任意に変えること、特に、電解終了時の硫酸濃度を電解開始時の硫酸濃度よりも高く制御することも有効である。この場合の電解開始時の硫酸濃度としては、30g/Lを超え40g/L以下が好ましく、30g/Lを超え35g/L以下がより好ましい。また、電解終了時の硫酸濃度としては、32g/L以上55g/L以下が好ましく、35g/Lを超え50g/L以下がより好ましく、40g/Lを超え45g/L以下がさらに好ましい。このように硫酸濃度を任意に変える効果は明確ではないが、前半に比較的低濃度の硫酸濃度である条件下で電解することにより、電極基材への腐食ダメージが直接軽減されるだけでなく、前半で結晶子径が大きくBET比表面積が低く充填性が高い二酸化マンガンを得、引き続き後半に比較的高濃度の硫酸濃度である条件下で電解することにより、既に電解二酸化マンガン析出層に覆われているため電極基材がより腐食ダメージを受け難く、さらに電位が高まり、ハイレート特性に優れた電解二酸化マンガンが得られ易くなる。
本発明の電解二酸化マンガンの製造方法では、電解開始から電解終了まで電解中の硫酸濃度を徐々に変化させるのではなく、前半の電解、後半の電解とで硫酸濃度を切替えることが好ましい。前半の電解と、後半の電解の比率に制限はないが、例えば低硫酸濃度と高硫酸濃度での電解時間の比が1:9〜9:1、特に3:7〜7:3の範囲が好ましい。なお、ここでいう硫酸濃度とは、硫酸マンガンの二価の陰イオンは除いた値である。
本発明の電解二酸化マンガンの製造方法では、電解電流密度は0.5A/dm以上1.7A/dm以下である。0.5A/dm未満であると、電解液が浸透し易いメソポアを適切な量確保できず、1.7A/dmを超えると電解電圧が不安定になり製造上好ましくない。適切なBET比表面積を維持するため、0.5A/dm以上1.65A/dm以下であることが好ましい。これにより、効率的、かつ安定的に本発明の電解二酸化マンガンを製造しやすくなる。より安定的に本発明の電解二酸化マンガンを得るために、電解電流密度は0.6A/dm以上1.6A/dm以下であることがより好ましく、1.0A/dm以上1.55A/dm未満であることがさらに好ましい。
本発明における補給硫酸マンガン液中のマンガンイオン濃度に限定はないが、例えば、25〜60g/Lが例示できる。
本発明のメソポアの大きい(メソボアの容積が0.003cm/g以上)電解二酸化マンガンは単独で使用することもできるが、メソポアの容積が0.003cm/g未満の電解二酸化マンガンと混合した電解二酸化マンガン混合物として使用することもできる。
上記した電解二酸化マンガン混合物の製造方法としては、上記した方法で得られたメソポアの容積が0.003cm/g以上の電解二酸化マンガンを0.003cm/g未満の電解二酸化マンガンと0.5重量%以上10重量%以下の割合で混合する方法が挙げられる。電解二酸化マンガンの混合方法としては、例えば、物理混合、湿式混合等の方法が例示され、混合の割合は、本発明の電解二酸化マンガンが0.5重量%以上10重量%以下である。0.5重量%未満であると、ハイレート放電特性が十分ではなく、10重量%を超えると、密度が低くなるため、充填性が低くなる。
アルカリマンガン電池の正極活物質として使用する方法には特に制限はなく、周知の方法で添加物と混合して用いることができる。
例えば、電解二酸化マンガン又は電解二酸化マンガン混合物に導電性を付与するためにカーボン等を加えた混合粉末を調製し、これを円盤状またはリング状に加圧成型した粉末成型体として電池正極とすることができる。
本発明の電解二酸化マンガンは、アルカリ電池の正極材料として用いた場合に電気化学的な反応性やハイレート放電特性に優れ、さらに、本発明の合成方法により本発明の電解二酸化マンガンを得ることができる。
ハイレート放電特性用の評価セルである。 実施例1〜3、比較例1〜4の二酸化マンガンのXRDパターンである。 実施例2のFE−SEM像(30万倍)である。 比較例1のFE−SEM像(30万倍)である。
以下、本発明を実施例及び比較例により詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<電解二酸化マンガンのアルカリ電位の測定>
電解二酸化マンガンのアルカリ電位は、40重量%KOH水溶液中で次のように測定した。
電解二酸化マンガン3gに導電剤としてカーボンを0.9g加えて混合粉体とし、この合粉体に40%KOH水溶液4mlを加え、電解二酸化マンガンとカーボンとKOH水溶液の混合物スラリーとした。この混合物スラリーの電位を水銀/酸化水銀参照電極を基準として、電解二酸化マンガンのアルカリ電位を測定した。
<電解二酸化マンガンの細孔の容積、面積及び嵩密度の測定>
二次細孔、ミクロポア及びメソポアの容積、面積及び嵩密度は水銀圧入法(ポアサイザー9510,マイクロメリティクス社製)により求めた。
測定の前処理として試料を80℃で静置乾燥した。その後、水銀の圧力範囲を大気圧から414MPaまで段階的に変化させて測定を行なった。この測定により細孔分布(容積分布及び面積分布)を求め、細孔直径2nm以上200nm以下の細孔を「二次細孔」とし、この内、細孔直径2nm以上5nm以下の細孔を「ミクロポア」とし、細孔直径5nmを超え100nm以下の細孔を「メソポア」とした。
また、嵩密度は大気圧で水銀を導入した際の水銀量から求めた。
<XRD測定における半価全幅(FWHM)の測定>
電解二酸化マンガンの2θが22±1°付近の回折線の半価全幅(FWHM)を、一般的なX線回折装置(マックサイエンス社製MXP−3)を使用して測定した。線源にはCuKα線(λ=1.5405Å)を用い、測定モードはステップスキャン、スキャン条件は毎秒0.04°、計測時間は3秒、および測定範囲は2θとして5°から80°の範囲で測定した。
<(110)/(021)の算出>
FWHMと同様にして得られたXRDパターンにおいて、2θが22±1°付近の回折線を(110)面に対応するピークとし、37±1°付近の回折線を(021)面に対応するピークとした。(110)面のピーク強度を(021)面のピーク強度で除することにより(110)/(021)を求めた。
<BET比表面積の測定>
電解二酸化マンガンのBET比表面積はBET1点法の窒素吸着により測定した。測定装置にはガス吸着式比表面積測定装置(フローソーブIII,島津社製)を用いた。測定に先立ち、150℃で40分間加熱することで測定試料を脱気処理した。
<ハイレート放電特性の評価>
電解二酸化マンガンが80重量%、導電材が5重量%及び40重量%KOH水溶液が15重量%となるよう秤量し、混合して正極合剤を作製した。当該正極合剤を電解二酸化マンガン換算で0.09gとなるように秤量し、成形し、負極に亜鉛ワイヤーを使用して、図1に示したハイレート放電特性用の評価用セルにより放電特性を評価した。評価用セルは室温で1時間静置後、放電試験を行った。放電条件は、100mA/gの電流で、終止電圧0.9Vとしたときの放電容量を評価した。放電容量は比較例2の測定結果を100%とし、それに対する相対値で求めた。
実施例1
硫酸−硫酸マンガン混合溶液の入った電解槽内に、マンガン酸化物粒子として二酸化マンガン粒子を含み、マンガンイオン濃度45g/Lの補給硫酸マンガン液を連続的に添加しながら23時間電解し、電解二酸化マンガンを製造した。電解中は、電解電流密度を1.5A/dm、電解温度を88℃とし、電解終了時の電解電圧は5.5Vであり、電解槽内の硫酸−硫酸マンガン混合溶液中の二酸化マンガン粒子は50mg/L、硫酸濃度は32.0g/Lであった。
得られた電着物を電極から剥離後、平均粒子径40μmとなるように粉砕した後、水洗中和、乾燥して、電解二酸化マンガンを得た。得られた電解二酸化マンガンは、γ相であった。この電解二酸化マンガンの物性の評価結果を表1に、XRDパターンを図2に示した。
Figure 2016102228
実施例2
実施例1において、電解温度が84℃、電解槽内の硫酸−硫酸マンガン混合溶液中の硫酸濃度が40g/Lで5時間電解したことを除き、実施例1と同様な電解を行った。この時の電解終了時の電解電圧は7.6Vであった。
得られた電着物を電極から剥離後、平均粒子径40μmとなるように粉砕した後、水洗中和、乾燥して、電解二酸化マンガンを得た。得られた電解二酸化マンガンは、γ相であった。この電解二酸化マンガンの物性及びハイレート放電特性の評価結果を表1に、XRDパターンを図2に、FE−SEM像(30万倍)を図3に示した。
実施例3
実施例1において、電解温度が84℃で3時間電解したことを除き、実施例1と同様な電解を行った。この時の電解終了時の電解電圧は9.3Vであった。
得られた電着物を電極から剥離後、平均粒子径40μmとなるように粉砕した後、水洗中和、乾燥して、電解二酸化マンガンを得た。得られた電解二酸化マンガンは、γ相であった。この電解二酸化マンガンの物性を表1に、XRDパターンを図2に示した。
比較例1
硫酸−硫酸マンガン混合溶液の入った電解槽内に、マンガン酸化物粒子を含まない、マンガンイオン濃度45g/Lの補給硫酸マンガン液を連続的に添加しながら14日間電解し、電解二酸化マンガンを製造した。電解中は、電解電流密度を0.59A/dm、電解温度を96℃とし、電解終了時の電解電圧は2.6Vであり、電解槽内の硫酸−硫酸マンガン混合溶液中の硫酸濃度は35.0g/Lであった。
得られた電着物を電極から剥離後、平均粒子径40μmとなるように粉砕した後、水洗中和、乾燥して、電解二酸化マンガンを得た。得られた電解二酸化マンガンは、γ相であった。この電解二酸化マンガンの物性を表1に、XRDパターンを図2に、FE−SEM像(30万倍)を図4に示した。
比較例2
電解電流密度を0.5A/dm、電解温度を92℃とし、電解槽内の硫酸−硫酸マンガン混合溶液中の硫酸濃度が40g/Lで、24時間電解したことを除き、比較例1と同様な電解を行った。この時の電解終了時の電解電圧は1.8Vであった。
得られた電着物を電極から剥離後、平均粒子径40μmとなるように粉砕した後、水洗中和、乾燥して、電解二酸化マンガンを得た。得られた電解二酸化マンガンは、γ相であった。この電解二酸化マンガンの物性及びハイレート放電特性の評価結果を表1に、XRDパターンを図2に示した。
比較例3
電解温度が96℃で24時間電解したことを除き、実施例1と同様な電解を行った。この時の電解終了時の電解電圧は2.0Vであった。
得られた電着物を電極から剥離後、平均粒子径40μmとなるように粉砕した後、水洗中和、乾燥して、電解二酸化マンガンを得た。得られた電解二酸化マンガンは、γ相であった。この電解二酸化マンガンの物性を表1に、XRDパターンを図2に示した。
比較例4
市販の電解二酸化マンガン(商品名:HH−S、東ソー社製)をジェットミルで粉砕し、平均粒子径(体積平均粒子径)が0.63μmの電解二酸化マンガン粒子を製造した。得られた電解二酸化マンガン粒子をマンガン酸化物粒子とした。このマンガン酸化物粒子を30g/Lの濃度となるように水に分散させてスラリー液とした。
電解液として硫酸−硫酸マンガン混合溶液を使用した。当該電解液中のマンガン酸化物粒子の濃度が30mg/Lとなるように、当該スラリー液を電解液中に連続的に添加したことに加え、当該電解液中の硫酸濃度が25g/Lとなるように、マンガンイオン濃度40g/Lの補給硫酸マンガン液を電解液中に添加しながら電解を行った。電解条件は、電解電流密度を1.5A/dm、電解温度を96℃ 、及び、電解期間を4日間とした。本比較例の電解終了時の電解電圧は、3.48V であった。この電解二酸化マンガンの物性を表1に、XRDパターンを図2に示した。
本発明の電解二酸化マンガンは大きな反応表面積を有するため、放電特性、特にハイレート放電特性に優れたアルカリマンガン乾電池の正極活物質として使用することができる。
1:亜鉛負極
2:正極合剤
3:上部固定具
4:KOH水溶液
5:多孔板
6:セパレーター
7:Ni板
8:Niリード

Claims (6)

  1. 細孔直径5nmを超え100nm以下の細孔の容積が0.003cm/g以上であることを特徴とする電解二酸化マンガン。
  2. 細孔直径2nm以上5nm以下の細孔の容積が0.004cm/g未満であることを特徴とする請求項1に記載の電解二酸化マンガン。
  3. 細孔直径5nmを超え100nm以下の細孔の面積が0.1m/g以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電解二酸化マンガン。
  4. 硫酸−硫酸マンガン混合溶液中にマンガン酸化物を懸濁させる電解二酸化マンガンの製造方法であって、マンガン酸化物粒子を連続的に硫酸−硫酸マンガン混合溶液に混合し、硫酸−硫酸マンガン混合溶液中のマンガン酸化物粒子の濃度が5mg/L以上100mg/L以下、電解温度が80℃以上96℃未満、電解電流密度が0.5A/dm以上1.7A/dm以下で電析させることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかの項に記載の電解二酸化マンガンの製造方法。
  5. 終了電圧が2.7V以上の高い電解電圧で電析させることを特徴とする請求項4に記載の電解二酸化マンガンの製造方法。
  6. 請求項1〜請求項3のいずれかの項に記載の電解二酸化マンガンを含んでなることを特徴とする電池用正極活物質。
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