JP2016099389A - 転写用積層体、光学素子、および光学素子の製造方法 - Google Patents

転写用積層体、光学素子、および光学素子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】光学特性に優れる光学素子を製造することが可能な転写用積層体、ならびにそれを用いた光学素子およびその製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂基材と、上記樹脂基材上に形成され、式(1)で表される光配向性構成単位が有する光配向性基の光二量化構造または光異性化構造、および、熱架橋性構成単位が有する熱架橋性基の架橋構造を有する共重合体を含有する配向層と、上記配向層上に形成された位相差層とを有し、上記樹脂基材および上記配向層の剥離強度が上記配向層および上記位相差層の剥離強度よりも小さい転写用積層体。ここで、式(1)中、Xは光配向性基、Lは2価の連結基または単結合、Rは水素原子または1価の有機基、kは1〜5を表す。
Figure 2016099389

【選択図】なし

Description

本発明は、光学素子の製造に用いられる転写用積層体ならびにそれを用いた光学素子およびその製造方法に関するものである。
液晶はその配向性と屈折率、誘電率、磁化率等の物理的性質の異方性とを利用して、液晶表示素子以外に、位相差板、偏光板等の各種光学素子等、様々な応用が検討されている。
液晶を配向させるためには配向層が用いられる。配向層の形成方法としては、例えばラビング法や光配向法が知られており、光配向法はラビング法の問題点である静電気や塵の発生がなく、定量的な配向処理の制御ができる点で有用である(例えば特許文献1参照)。
配向層には、液晶配向能の他、耐熱性、耐溶剤性等が要求される。例えば、配向層が、各種デバイスの製造過程にて熱や溶剤にさらされたり、各種デバイスの使用時に高温にさらされたりする場合がある。配向層が高温にさらされると、液晶配向能が著しく低下するおそれがある。
そこで、例えば特許文献2には、安定した液晶配向能を得るために、光により架橋反応の可能な構造と熱によって架橋する構造とを有する重合体成分を含有する液晶配向剤、および、光により架橋反応の可能な構造を有する重合体成分と熱によって架橋する構造を有する化合物とを含有する液晶配向剤が提案されている。
また、特許文献3には、優れた液晶配向能、十分な耐熱性、高い耐溶剤性および高い透明性を得るために、(A)光二量化部位および熱架橋部位を有するアクリル共重合体と、(B)架橋剤とを含有する、光配向性を有する熱硬化膜形成組成物が提案されている。(B)架橋剤は(A)アクリル共重合体の熱架橋部位と結合するものであり、光配向性を有する熱硬化膜形成組成物を加熱により硬化させて硬化膜を形成し、硬化膜に偏光紫外線を照射して配向層を形成することができる。
特許文献4には、優れた液晶配向能、十分な耐熱性、高い耐溶剤性および高い透明性を得るために、(A)光二量化部位および熱架橋部位を有するアクリル共重合体と、(B)所定のアルキルエステル基およびヒドロキシアルキルエステル基の少なくとも一方と、カルボキシル基およびフェノール性ヒドロキシ基の少なくともいずれか一方とを有するアクリル重合体と、(C)架橋剤とを含有する、光配向性を有する熱硬化膜形成組成物が提案されている。(C)架橋剤は(A)アクリル共重合体の熱架橋部位ならびに(B)アクリル重合体のカルボキシル基およびフェノール性ヒドロキシ基と結合するものであり、光配向性を有する熱硬化膜形成組成物を加熱により硬化させて硬化膜を形成し、硬化膜に偏光紫外線を照射して配向層を形成することができる。
特許文献5には、優れた液晶配向能、十分な耐熱性、高い耐溶剤性および高い透明性を得るために、(A)光配向性基およびヒドロキシ基を有する化合物と、(B)ヒドロキシ基およびカルボキシル基の少なくとも一方を有するポリマーと、(C)架橋剤とを含有する、光配向性を有する熱硬化膜形成組成物が提案されている。(C)架橋剤は(A)化合物のヒドロキシ基ならびに(B)ポリマーのヒドロキシ基およびカルボキシル基と結合するものであり、光配向性を有する熱硬化膜形成組成物を加熱により硬化させて硬化膜を形成し、硬化膜に偏光紫外線を照射して配向層を形成することができる。
ところで、位相差板の製造方法としては、例えば基材上に配向層を形成し、配向層上に位相差層を形成する方法や、支持基材上に配向層を形成し、配向層上に位相差層を形成した後、被転写基材上に粘着層を介して位相差層を転写する方法(例えば特許文献6参照)が知られている。
一方、近年ではデバイスの薄型化が要求されている。後者の転写法は、支持基材を剥離することができることから、薄型化が可能であるという利点を有する。
特許第4094764号公報 特許第4207430号公報 特許第5459520号公報 国際公開第2011/010635号パンフレット 国際公開第2011/126022号パンフレット 特開2014−13291号公報 国際公開第2014/065324号パンフレット
転写法では、薄型化のために位相差層の転写後に支持基材および配向層を剥離することも提案されている。しかしながら、支持基材および配向層を剥離すると、位相差層が露出することになる。位相差層では、高温高湿下で液晶が水蒸気や熱に曝されると、一部の液晶に配向乱れが生じ、位相差が変化し、色ムラが発生するという問題がある。
そこで、支持基材のみを剥離し、位相差層上に配向層を残すことが考えられる。この場合、配向層および位相差層の密着性が強く、配向層および支持基材の密着性が弱いことが要求される。しかしながら、特許文献2〜5に記載されているように、配向層の耐熱性、耐溶剤性等の向上のために熱硬化を行う場合には、配向層の硬度が高くなるため、配向層および位相差層の密着性が低下する場合がある。特に、特許文献3、4のように、光二量化部位および熱架橋部位を有するアクリル共重合体を用い、架橋剤による熱硬化を行うと、膜の内部に網目構造が形成されるため、高硬度になり、配向層および位相差層の密着性が低下する。
配向層および位相差層の密着性を高める手法としては、例えば特許文献7に、(A)光配向性基と、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミノ基およびアルコキシシリル基からなる群から選ばれる一つとを有する化合物と、(B)ヒドロキシ基およびカルボキシル基のうちの少なくとも一方を有するポリマーと、(C)(A)成分以外の、ヒドロキシ基および(メタ)アクリル基を有する化合物とを含有する硬化膜形成組成物が提案されている。硬化膜形成組成物を加熱により硬化させて硬化膜を形成し、硬化膜に偏光紫外線を照射して配向層を形成することができる。
特許文献7によれば、(C)成分により、配向層および位相差層の密着性が向上するよう、重合性液晶の重合性官能基と配向層の架橋反応部位とを共有結合によりリンクさせることができ、その結果、高温高湿の条件下でも強い密着性を維持し、剥離等に対する高い耐久性を示すことができるとされている。
特許文献7には、硬化膜形成組成物から得られる硬化膜は配向層としての利用が可能であると記載されているが、配向規制力は十分であるとはいえず、改善の余地がある。また、配向層の配向規制力を高めるには、偏光紫外線の照射量を多く、照射時間を長くすればよいが、その場合にはスループットが低下する。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、光配向部位および熱架橋部位を有する共重合体を含有する光配向性を有する熱硬化性組成物から形成される配向層を用いる場合において、光学特性に優れる光学素子を製造することが可能な転写用積層体、ならびにそれを用いた光学素子およびその製造方法を提供することを主目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、樹脂基材と、上記樹脂基材上に形成され、下記式(1)で表される光配向性構成単位が有する光配向性基の光二量化構造または光異性化構造、および、熱架橋性構成単位が有する熱架橋性基の架橋構造を有する共重合体を含有する配向層と、上記配向層上に形成された位相差層とを有し、上記樹脂基材および上記配向層の剥離強度が上記配向層および上記位相差層の剥離強度よりも小さいことを特徴とする転写用積層体を提供する。
Figure 2016099389
(ここで、式(1)中、Xは光配向性基、Lは2価の連結基または単結合、Rは水素原子または1価の有機基、kは1〜5を表す。)
本発明によれば、樹脂基材および配向層の剥離強度が配向層および位相差層の剥離強度よりも小さいことにより、樹脂基材および配向層の界面で剥離して位相差層および配向層を転写することができる。また、上記式(1)で表される光配向性構成単位はスチレン骨格を有するため、配向層のガラス転移点Tgが高くなるので、配向層は湿熱に対する耐久性が良好である。さらに、配向層は、熱架橋性構成単位が有する熱架橋性基の架橋構造を有するため、耐溶剤性が良好であり、後述するような熱架橋性基の架橋構造には多くの極性基が含まれるため、湿熱に対する耐久性が良好となる。したがって、本発明の転写用積層体を用いて得られる光学素子では、配向層により位相差層を保護し、水蒸気や熱等による液晶の配向乱れを抑制することができる。さらに、配向層が所定の光二量化構造または光異性化構造および架橋構造を有する共重合体を含有することにより、液晶配向能が良好であり、光学特性の良好な位相差層を得ることができる。したがって、光学特性に優れる光学素子を得ることができる。
また本発明においては、上記架橋構造が、上記熱架橋性構成単位が有する上記熱架橋性基と架橋剤とが結合した架橋構造であることが好ましい。配向層の耐熱性、耐溶剤性および湿熱耐久性を高めることができ、本発明の転写用積層体を用いて位相差層および配向層を転写した場合には、水蒸気や熱等による液晶の配向乱れを効果的に抑制することができるからである。
また本発明においては、上記光配向性基がシンナモイル基であることが好ましい。シンナモイル基は光に対する感度が比較的高く、材料選択の幅が広いという利点を有する。
さらに本発明においては、上記熱架橋性基がヒドロキシ基であることが好ましい。反応性が高いからである。
また本発明は、光学部材と、上記光学部材上に形成された位相差層と、上記位相差層上に形成され、上記式(1)で表される光配向性構成単位が有する光配向性基の光二量化構造または光異性化構造、および、熱架橋性構成単位が有する熱架橋性基の架橋構造を有する共重合体を含有する配向層とを有することを特徴とする光学素子を提供する。
本発明の光学素子は、光学部材上に上述の転写用積層体の位相差層および配向層を転写することにより得ることができる。したがって、配向層により位相差層を保護することができ、水蒸気や熱等による液晶の配向乱れを抑制することができる。さらには、良好な光学特性を得ることができる。
上記発明においては、上記架橋構造が、上記熱架橋性構成単位が有する上記熱架橋性基と架橋剤とが結合した架橋構造であることが好ましい。配向層の耐熱性、耐溶剤性および湿熱耐久性を高めることができ、位相差層での水蒸気や熱等による液晶の配向乱れを効果的に抑制することができるからである。
さらに本発明は、樹脂基材と、上記樹脂基材上に形成され、上記式(1)で表される光配向性構成単位および熱架橋性構成単位を有する共重合体を含有する光配向性を有する熱硬化性組成物から形成される配向層と、上記配向層上に形成された位相差層とを有し、上記樹脂基材および上記配向層の剥離強度が上記配向層および上記位相差層の剥離強度よりも小さい転写用積層体を準備する転写用積層体準備工程と、被転写体および上記転写用積層体の上記位相差層を対向させ、上記被転写体上に上記転写用積層体を転写する転写工程と、上記被転写体上に転写された上記転写用積層体から上記樹脂基材を剥離する剥離工程とを有することを特徴とする光学素子の製造方法を提供する。
本発明によれば、光学部材上に上述の転写用積層体の位相差層および配向層を転写することにより光学素子を得ることができる。したがって、配向層により位相差層を保護することができ、水蒸気や熱等による液晶の配向乱れを抑制することができる。さらには、良好な光学特性を得ることができる。
また本発明においては、上記光配向性を有する熱硬化性組成物が架橋剤をさらに含有することが好ましい。配向層の耐熱性、耐溶剤性および湿熱耐久性を高めることができ、位相差層での水蒸気や熱等による液晶の配向乱れを効果的に抑制することができるからである。
また本発明においては、上記光配向性基が光二量化反応または光異性化反応を生じる官能基であることが好ましい。また、上記光配向性基がシンナモイル基であることがより好ましい。これらの光配向性基は光に対する感度が比較的高く、材料選択の幅が広いという利点を有する。
さらに本発明においては、上記熱架橋性構成単位が有する熱架橋性基がヒドロキシ基であることが好ましい。反応性が高いからである。
本発明においては、樹脂基材および配向層の間で剥離して位相差層および配向層を転写し、配向層により位相差層を保護することが可能であり、また配向層は湿熱耐久性、液晶配向能に優れており、光学特性に優れる光学素子を得ることができるという効果を奏する。
本発明の転写用積層体の一例を示す概略断面図である。 本発明の光学素子の製造方法の一例を示す工程図である。 本発明の光学素子の一例を示す概略断面図である。 本発明の転写用積層体の製造方法の一例を示す工程図である。
以下、本発明の転写用積層体、光学素子およびそれらの製造方法について詳細に説明する。
A.転写用積層体
本発明の転写用積層体は、樹脂基材と、上記樹脂基材上に形成され、下記式(1)で表される光配向性構成単位が有する光配向性基の光二量化構造または光異性化構造、および、熱架橋性構成単位が有する熱架橋性基の架橋構造を有する共重合体を含有する配向層と、上記配向層上に形成された位相差層とを有し、上記樹脂基材および上記配向層の剥離強度が上記配向層および上記位相差層の剥離強度よりも小さいことを特徴とするものである。
Figure 2016099389
(ここで、式(1)中、Xは光配向性基、Lは2価の連結基または単結合、Rは水素原子または1価の有機基、kは1〜5を表す。)
ここで、架橋構造とは、三次元的な網目構造をいう。架橋構造には、光配向性構成単位の光配向性基同士が光二量化反応により架橋した構造は含まれない。また、後述するように、配向層に第2光配向性基を有する光配向性化合物が含有される場合には、架橋構造には、光配向性化合物の第2光配向性基同士、ならびに、光配向性構成単位の光配向性基および光配向性化合物の第2光配向性基が二量化反応により架橋した構造は含まれない。また、後述するように、配向層に第1エチレン性不飽和二重結合基を有する熱架橋性化合物または第2エチレン性不飽和二重結合基を有する光配向性化合物が含有される場合には、架橋構造には、熱架橋性化合物の第1エチレン性不飽和二重結合基同士、熱架橋性化合物の第1エチレン性不飽和二重結合基および重合性液晶化合物の重合性基が重合した構造、光配向性化合物の第2エチレン性不飽和二重結合同士、ならびに、光配向性化合物の第2エチレン性不飽和二重結合基および重合性液晶化合物の重合性基が重合した構造は含まれない。
また、樹脂基材および配向層の剥離強度が配向層および位相差層の剥離強度よりも小さいことは、本発明の転写用積層体において樹脂基材側から剥離することで確認することができる。樹脂基材および配向層の界面で剥離する場合には、樹脂基材および配向層の剥離強度が配向層および位相差層の剥離強度よりも小さいといえる。
また、樹脂基材および配向層の界面で剥離することは、IRにより分析可能である。
本発明の転写用積層体について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の転写用積層体の一例を示す概略断面図である。図1に示すように、転写用積層体1は、樹脂基材2と、樹脂基材2上に形成され、上記式(1)で表される光配向性構成単位が有する光配向性基の光二量化構造または光異性化構造、および、熱架橋性構成単位が有する熱架橋性基の架橋構造を有する共重合体を含有する配向層3と、配向層3上に形成され、液晶層である位相差層4とを有している。また、樹脂基材2および配向層3の剥離強度が、配向層3および位相差層4の剥離強度よりも小さくなっている。
図2(a)〜(d)は本発明の転写用積層体を用いた光学素子の製造方法の一例を示す工程図であり、図1に示す転写用積層体を用いる例である。まず、図2(a)に示すように転写用積層体1を準備する。なお、転写用積層体1は上記図1に示すものと同様である。次に、図2(b)に示すように、被転写体11および転写用積層体1の位相差層4を対向させ、粘着層12を介して被転写体11上に転写用積層体1を転写する。次に、図2(c)に示すように、被転写体11上に転写された転写用積層体1から樹脂基材2を剥離する。これにより、図2(d)に示すように、被転写体11上に位相差層4および配向層3が転写された光学素子10が得られる。
本発明においては、樹脂基材および配向層の剥離強度が配向層および位相差層の剥離強度よりも小さいことにより、樹脂基材および配向層の界面で剥離して位相差層および配向層を転写することができる。そのため、本発明の転写用積層体を用いることにより、位相差層上に配向層が形成された光学素子を得ることができる。したがって、得られる光学素子では、位相差層を配向層により保護することができる。
また、配向層は、上記式(1)で表される光配向性構成単位が有する光配向性基の光二量化構造または光異性化構造を有しており、上記式(1)で表される光配向性構成単位はスチレン骨格を有するため、配向層のガラス転移点Tgが高い。そのため、高温下でも分子の振動が抑えられるため、配向層は湿熱に対する耐久性が良好である。
さらに、配向層は、熱架橋性構成単位が有する熱架橋性基の架橋構造、すなわち三次元的な網目構造を有しているため、耐溶剤性が良好である。また、後述するように、熱架橋性構成単位が有する熱架橋性基としてはヒドロキシ基、カルボキシ基等を例示することができ、このような熱架橋性基の架橋構造には多くの極性基が含まれるため、湿熱に対する耐久性が良好となる。
また、配向層は、上記式(1)で表される光配向性構成単位が有する光配向性基の光二量化構造または光異性化構造を有しており、光配向性基が規則的に配列した構造を有している。そのため、配向層の耐水性を高めることができると考えられる。
したがって本発明においては、配向層の湿熱に対する耐久性を高めることができる。よって、本発明の転写用積層体を用いて得られる光学素子では、配向層により位相差層を保護し、位相差層での水蒸気や熱等による液晶の配向不良を抑制することができ、色ムラ等の発生を抑制することができる。
また本発明においては、配向層が上記式(1)で表される光配向性構成単位が有する光配向性基の光二量化構造または光異性化構造を有することにより、良好な液晶配向能を有する配向層を得ることができる。この理由は明らかではないが、次のように推量される。すなわち、上記式(1)で表される光配向性構成単位はスチレン骨格を有しており、π電子系を多く含んでいる。また、一般に液晶分子にはベンゼン環等の芳香環を有するものが多く、同じくπ電子系を含む。そのため、配向層は、液晶分子との相互作用が強くなる。これにより、液晶分子を配向制御しやすくなり、良好な液晶配向能が得られると考えられる。さらに、π電子系の作用により、配向層および位相差層の密着性も高くなると考えられる。
また、上述したように、配向層は耐熱性および耐溶剤性に優れるため、液晶配向能の低下を抑制することができる。
そのため、配向層上に形成される位相差層の光学特性を良好にすることができる。
したがって、本発明の転写用積層体を用いて位相差層および配向層を転写した場合には、光学特性に優れる光学素子を得ることができる。
以下、本発明の転写用積層体における各構成について説明する。
1.配向層
本発明における配向層は、樹脂基材上に形成され、上記式(1)で表される光配向性構成単位が有する光配向性基の光二量化構造または光異性化構造、および、熱架橋性構成単位が有する熱架橋性基の架橋構造を有する共重合体を含有するものである。
本発明における配向層は、上記式(1)で表される光配向性構成単位および熱架橋性構成単位を有する共重合体を含有する光配向性を有する熱硬化性組成物から形成されるものである。
ここで、光配向性を有する熱硬化性組成物から形成される配向層とは、光配向性を有する熱硬化性組成物を含有する膜を熱硬化させ、さらに光配向させてなる配向層をいう。すなわち、配向層の形成においては、まず、樹脂基材上に光配向性を有する熱硬化性組成物を塗布し、加熱して、硬化膜を形成する。次に、硬化膜に偏光紫外線を照射して、配向層を形成する。
以下、光配向性を有する熱硬化性組成物および配向層について説明する。
(1)光配向性を有する熱硬化性組成物
本発明における光配向性を有する熱硬化性組成物は、上記式(1)で表される光配向性構成単位および熱架橋性構成単位を有する共重合体を含有するものである。
以下、光配向性を有する熱硬化性組成物における各成分について説明する。
(a)共重合体
本発明に用いられる共重合体は、上記式(1)で表される光配向性構成単位と、熱架橋性構成単位とを有するものである。
以下、共重合体における各構成単位について説明する。
(i)光配向性構成単位
本発明における光配向性構成単位は下記式(1)で表されるものである。
Figure 2016099389
(ここで、式(1)中、Xは光配向性基、Lは2価の連結基または単結合、Rは水素原子または1価の有機基、kは1〜5を表す。)
光配向性構成単位は、光照射により光反応を生じることで異方性を発現する部位である。光反応としては、光二量化反応または光異性化反応であることが好ましい。すなわち、光配向性構成単位は、光照射により光二量化反応を生じることで異方性を発現する光二量化構成単位、または、光照射により光異性化反応を生じることで異方性を発現する光異性化構成単位であることが好ましい。
上記式(1)におけるXは光配向性基である。光配向性基は、上述のように、光照射により光反応を生じることで異方性を発現する官能基であり、光二量化反応または光異性化反応を生じる官能基であることが好ましい。
光二量化反応を生じる光配向性基としては、例えばシンナモイル基、カルコン基、クマリン基、アントラセン基、キノリン基、アゾベンゼン基、スチルベン基等が挙げられる。これらの官能基におけるベンゼン環は、置換基を有していてもよい。置換基としては、光二量化反応を妨げないものであればよく、例えばアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、シアノ基等が挙げられる。
光異性化反応を生じる光配向性基としては、シストランス異性化反応を生じるものであることが好ましく、例えばシンナモイル基、カルコン基、アゾベンゼン基、スチルベン基等が挙げられる。これらの官能基におけるベンゼン環は、置換基を有していてもよい。置換基としては、光異性化反応を妨げないものであればよく、例えばアルコキシ基、アルキル基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、シアノ基等が挙げられる。
中でも、光配向性基は、シンナモイル基であることが好ましい。具体的に、シンナモイル基としては、下記式(2−1)、(2−2)で表される基であることが好ましい。
Figure 2016099389
上記式(2−1)中、R11は水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアリール基または炭素数1〜18のシクロアルキル基を表す。ただし、アルキル基、アリール基およびシクロアルキル基はエーテル結合、エステル結合、アミド結合、尿素結合を介して結合していてもよく、置換基を有してもよい。R12〜R15はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアリール基または炭素数1〜18のシクロアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基またはシアノ基を表す。ただし、アルキル基、アリール基およびシクロアルキル基はエーテル結合、エステル結合、アミド結合、尿素結合を介して結合していてもよく、置換基を有してもよい。R16およびR17はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアリール基または炭素数1〜18のアルコキシ基を表す。
また、上記式(2−2)中、R21〜R25はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアリール基または炭素数1〜18のシクロアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基またはシアノ基を表す。ただし、アルキル基、アリール基およびシクロアルキル基はエーテル結合、エステル結合、アミド結合、尿素結合を介して結合していてもよく、置換基を有してもよい。R26およびR27はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアリール基または炭素数1〜18のアルコキシ基を表す。
なお、光配向性基がシンナモイル基の場合であって、上記式(2−1)で表される基の場合、スチレン骨格のベンゼン環がシンナモイル基のベンゼン環となっていてもよい。
上記式(1)におけるLは2価の連結基または単結合である。なお、Lが単結合の場合、光配向性基Xはスチレン骨格に直接結合される。2価の連結基としては、例えばエーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、アルキレン基、アリーレン基、シクロアルキレン基、およびこれらの組み合わせ等が挙げられる。具体的には、−O−、−S−、−COO−、−COS−、−CO−、−OCO−、−OCO(CHCOO−、−OCO(CHCHO)COO−、−OCOCO−、−OCOC10O−、−COO(CHO−、−COO(CHCHO)−、−COOCO−、−COOC10O−、−O(CHO−、−O(CHCHO)−、−OCO−、−OC10O−、−(CHO−等が挙げられる。nは1〜20、mは1〜10である。
上記式(1)におけるRは水素原子または1価の有機基である。1価の有機基は、好ましくはメチル基である。中でも、Rは水素原子であることが好ましい。
上記式(1)において、kは1〜5であり、−L−Xはオルト位、メタ位、パラ位のいずれに結合していてもよい。kが2〜5の場合、LおよびXは互いに同一でもよく異なってもよい。中でも、kが1であり、−L−Xがパラ位に結合していることが好ましい。具体的には、光配向性構成単位は下記式(1−1)で表される構成単位であることが好ましい。なお、下記式中、各符号は上記式(1)と同様である。
Figure 2016099389
光配向性構成単位としては、下記式(1−2)〜(1−5)で表される構成単位を例示することができる。
Figure 2016099389
上記式(1−2)中、R31は上記式(2−1)のR11と同様であり、R32およびR33は上記式(2−1)のR16およびR17と同様である。
上記式(1−3)中、L11は単結合または2価の連結基を表す。2価の連結基としては、上記式(1)のLと同様である。R11〜R17は上記式(2−1)と同様である。
上記式(1−4)中、L12は単結合または2価の連結基を表す。2価の連結基としては、上記式(1)のLにおいてカルボニル結合およびチオカルボニル結合を除いた以外は同様である。
上記式(1−5)中、L13は単結合または2価の連結基を表す。2価の連結基としては、上記式(1)のLと同様である。R35〜R37は上記式(2−1)のR12〜R15と同様であり、R38およびR39は上記式(2−1)のR16およびR17と同様である。
共重合体が有する光配向性構成単位は、1種であってもよく2種以上であってもよい。
中でも、光配向性構成単位は上記式(1−3)、(1−4)で表される構成単位であることが好ましい。
上記式(1−3)において、L11は単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−OCO(CHCOO−、−OCO(CHCHO)COO−、−OCOC10O−、−COO(CHO−、−COO(CHCHO)−、−COOC10O−、−O(CHO−、−O(CHCHO)−、−OC10O−または−(CHO−であることが好ましい。nは1〜11であることが好ましく、mは1〜5であることが好ましい。
また、上記式(1−3)で表される光配向性構成単位は、下記式(1−6)で表される構成単位であることがより好ましい。
Figure 2016099389
上記式(1−6)中、R12〜R17およびL11は上記式(1−3)と同様である。R18は水素原子、炭素数1〜18のアルコキシ基、シアノ基、炭素数1〜18のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基またはシクロヘキシル基を表す。ただし、アルキル基、フェニル基、ビフェニル基およびシクロヘキシル基はエーテル結合、エステル結合、アミド結合、尿素結合を介して結合していてもよい。nは1〜5を表し、R18はオルト位、メタ位、パラ位のいずれに結合していてもよい。nが2〜5の場合、R18は互いに同一でもよく異なってもよい。中でも、nが1であり、R18がパラ位に結合していることが好ましい。
また、上記式(1−4)において、L12は単結合、−O−、−OCOC10O−、−COO(CHO−、−COO(CHCHO)−、−COOC10O−、−O(CHO−、−O(CHCHO)−、−OC10O−または−(CHO−であることが好ましい。
光配向性構成単位が上記式(1−6)、(1−4)で表されるような構成単位である場合、光配向性構成単位の末端付近に芳香環が配置されるようになり、液晶分子に類似した構造になる。そのため、配向層上に形成される位相差層と親和性が高くなり、液晶配向能および密着性が上がると考えられる。
また、光配向性構成単位が上記式(1−6)、(1−4)で表されるような構成単位である場合には、光二量化反応性または光異性化反応性を高め、感度を向上させることができる。この理由は明らかではないが、次のように推量される。すなわち、光配向性構成単位はスチレン骨格を有するため、光配向性構成単位のスチレン骨格同士のπ電子系の相互作用により、スタッキング構造が形成されやすい。また、上記式(1−6)、(1−4)で表される光配向性構成単位では、光配向性基とスチレン骨格とが近接している。これにより、光配向性基が光二量化反応または光異性化反応を生じやすい位置関係になるものと推量される。例えば、光異性化反応の場合には、光配向性構成単位のスチレン骨格同士がスタッキングしており、光配向性基とスチレン骨格とが近接していることにより、光配向性基の向きが揃いやすくなり、光異性化反応性が高くなると考えられる。また、光二量化反応の場合には、光配向性構成単位のスチレン骨格同士がスタッキングしており、光配向性基とスチレン骨格とが近接していることにより、光配向性基間の距離が短くなるため、光二量化反応性が高くなると考えられる。
したがって、この場合には、少ない露光量で配向層を形成することが可能な、高感度な光配向性を有する熱硬化性組成物とすることができ、省エネルギーに寄与することができる。
また、高感度であるため、共重合体における光配向性構成単位の含有割合が比較的少ない場合であっても液晶配向能を得ることができる。そのため、共重合体における熱架橋性構成単位の含有割合を相対的に増やすことができ、耐熱性や耐溶剤性をより高めることができる。さらには、高感度のため、量産に適しており、光配向性を有する熱硬化性組成物から形成された配向層を有するデバイスの生産性を向上させることもできる。
共重合体の合成には、上記光配向性構成単位を形成する光配向性基を有するスチレン系モノマーを用いることができる。光配向性基を有するスチレン系モノマーは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
共重合体における光配向性構成単位の含有割合としては、共重合体全体を100モル%としたとき、10モル%〜90モル%の範囲内で設定することができ、好ましくは20モル%〜80モル%の範囲内である。光配向性構成単位の含有割合が少ないと、感度が低下し、良好な液晶配向能を付与するのが困難になる場合がある。また、光配向性構成単位の含有割合が多いと、相対的に熱架橋性構成単位の含有割合が少なくなり、十分な熱硬化性が得られず、良好な液晶配向能を維持するのが困難になる場合がある。
なお、共重合体における各構成単位の含有割合は、H NMR測定による積分値から算出することができる。
(ii)熱架橋性構成単位
本発明における熱架橋性構成単位は、加熱により架橋剤と結合する部位である。
熱架橋性構成単位は、熱架橋性基を有するものである。熱架橋性基としては、例えばヒドロキシ基、カルボキシ基、フェノール性ヒドロキシ基、メルカプト基、グリシジル基、アミド基等が挙げられる。中でも、反応性の観点から、脂肪族ヒドロキシ基が好ましく、第1級のヒドロキシ基がより好ましい。
熱架橋性構成単位を構成する単量体単位としては、例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイミド、ビニルエーテル、ビニルエステル等が挙げられる。中でも、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレンが好ましい。
アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルのモノマーは、溶解性が高く、市販品として入手しやすく、共重合とした際の反応性が良いという利点を有する。
また、スチレンの場合、共重合体において、光配向性構成単位だけでなく熱架橋性構成単位もスチレン骨格を有することにより、π電子系を多く含む共重合体とすることができる。そのため、配向層では、π電子系の相互作用により、液晶配向能を向上させ、また位相差層との密着性を高めることができると考えられる。
熱架橋性構成単位としては、下記式(3)で表される構成単位を例示することができる。
Figure 2016099389
上記式(3)中、Z1は単量体単位を表し、例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレン、マレイミド、ビニルエーテル、ビニルエステル等が挙げられる。中でも、上述のように、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレンが好ましい。具体的には、下記式で表される単量体単位を挙げることができる。
Figure 2016099389
(上記式中、R41は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基を表し、R42は水素原子またはメチル基を表し、R43は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基、R44は水素原子または低級アルキル基を表す。)
単量体単位がスチレンの場合、−L−Yはオルト位、メタ位、パラ位のいずれに結合していてもよく、また複数結合していてもよい。複数の場合、LおよびYは互いに同一でもよく異なってもよい。中でも、−L−Yが1つでありパラ位に結合していることが好ましい。
上記式(3)中、Yは熱架橋性基を表し、例えばヒドロキシ基、カルボキシ基、フェノール性ヒドロキシ基、メルカプト基、グリシジル基、アミド基等が挙げられる。中でも、上述したように、反応性の観点から、脂肪族ヒドロキシ基が好ましく、第1級のヒドロキシ基がより好ましい。
上記式(3)中、Lは単結合または2価の連結基を表す。なお、Lが単結合の場合、熱架橋性基Yは単量体単位Zに直接結合される。2価の連結基としては、例えばエーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、アルキレン基、アリーレン基、シクロアルキレン基、およびこれらの組み合わせ等が挙げられる。中でも、2価の連結基は、−(CH−または−(CO)−を有することが好ましく、nは4〜11、mは2〜5であることが好ましい。nおよびmが小さすぎると、熱架橋性構成単位において熱架橋性基と共重合体の主骨格との距離が短くなるため、熱架橋性基に架橋剤が結合しにくくなり、熱架橋性構成単位と架橋剤との反応性が低下するおそれがある。一方、nおよびmが大きすぎると、熱架橋性構成単位において連結基の鎖長が長くなるため、末端の熱架橋性基が表面に出にくく、熱架橋性基に架橋剤が結合しにくくなり、熱架橋性構成単位と架橋剤との反応性が低下するおそれがある。
なお、例えばLが−(CO)−の場合であって、Yがヒドロキシ基の場合、−L−Yは−(CO)−Hとすることができる。
また、上記式(3)では熱架橋性基Yが単量体単位Zに2価の連結基または単結合Lを介して結合されているが、Yがカルボキシ基またはヒドロキシ基の場合、上記式(3)で表される熱架橋性構成単位は、下記式で表される構成単位であってもよい。なお、下記式中、各符号は上記式と同様である。
Figure 2016099389
また、熱架橋性構成単位は自己架橋可能な架橋基を有していてもよい。
ここで、自己架橋とは、架橋剤を介さずに、同一の官能基同士や異なる官能基同士で反応し、架橋構造を形成することをいう。
熱架橋性構成単位が自己架橋可能な架橋基を有する場合、熱架橋性構成単位が架橋剤を兼ねることができる。このような熱架橋性構成単位を有する共重合体を用いる場合は、光配向性を有する熱硬化性組成物を架橋剤を添加せずに利用することができる。しかしながら、保存安定性の点から、熱架橋性構成単位は自己架橋可能な架橋基を有さないことが好ましい。
自己架橋可能な架橋基としては、例えばオルト位がヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基で置換されたフェノール性ヒドロキシ基、グリシジル基、アミド基、N−アルコキシメチル基、N−ヒドロキシメチル基等が挙げられる。
このような熱架橋性構成単位を形成するモノマーとしては、例えばアクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、アクリルアミド化合物、メタクリルアミド化合物、スチレン化合物、マレイミド化合物、ビニル化合物等が挙げられる。
アクリル酸エステル化合物およびメタクリル酸エステル化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルアクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルメタクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、トリエチレングチコールモノアクリレート、テトラエチレングリコールモノアクリレート、ジプロピレングリコールモノアクリレート、トリプロピレングリコールモノアクリレート、テトラプロピレングリコールモノアクリレート等のヒドロキシ基とアクリル基またはメタクリル基とを有するモノマーが挙げられる。
アクリルアミド化合物およびメタクリルアミド化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、2−ヒドロキシプロピルアクリルアミド、2−ヒドロキシプロピルメタクリルアミド、4−ヒドロキシブチルアクリルアミド、4−ヒドロキシブチルメタクリルアミド等のヒドロキシ基とアクリルアミド基またはメタクリルアミド基とを有するモノマーが挙げられる。
ビニル化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピオン酸ビニル等のヒドロキシ基とビニル基とを有するモノマーが挙げられる。
スチレン化合物としては、例えば、4−ビニル安息香酸とジオールとのエステル化物、4−ビニル安息香酸とジエチレングリコールとのエステル化物、ヒドロキシスチレンとジオールとのエーテル化物、ヒドロキシスチレンとジエチレングリコールとのエーテル化物等のヒドロキシ基とスチレン基とを有するモノマーが挙げられる。
マレイミド化合物としては、例えば、N−(2−ヒドロキシエチル)マレイミド、N−ヒドロキシマレイミド等のヒドロキシ基とマレイミド基とを有するモノマーが挙げられる。
また、ヒドロキシスチレン、N−(ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−(ヒドロキシフェニル)マレイミド等のフェノール性水酸基を有するモノマーや、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、モノ−(2−(アクリロイルオキシ)エチル)フタレート、モノ−(2−(メタクリロイルオキシ)エチル)フタレート、N−(カルボキシフェニル)マレイミド、N−(カルボキシフェニル)メタクリルアミド、N−(カルボキシフェニル)アクリルアミド等のカルボキシ基を有するもモノマーや、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート等のグリシジル基を有するモノマー等も挙げられる。
共重合体が有する熱架橋性構成単位は、1種であってもよく2種以上であってもよい。例えば、共重合体は、自己架橋しない熱架橋性基を有する熱架橋性構成単位のみを有していてもよく、自己架橋可能な架橋基を有する熱架橋性構成単位のみを有していてもよく、自己架橋しない熱架橋性基を有する熱架橋構成単位および自己架橋可能な架橋基を有する熱架橋性構成単位の両方を有していてもよい。
共重合体の合成には、上記熱架橋性構成単位を形成する熱架橋性基を有するモノマーを用いることができる。熱架橋性基を有するモノマーは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
共重合体における熱架橋性構成単位の含有割合としては、共重合体全体を100モル%としたとき、10モル%〜90モル%の範囲内で設定することができ、好ましくは20モル%〜80モル%の範囲内である。熱架橋性構成単位の含有割合が少ないと、十分な熱硬化性が得られず、良好な液晶配向能を維持するのが困難になる場合がある。また、熱架橋性構成単位の含有割合が多いと、相対的に光配向性構成単位の含有割合が少なくなり、感度が低下し、良好な液晶配向能を付与するのが困難になる場合がある。
(iii)他の構成単位
本発明において、共重合体は、光配向性構成単位および熱架橋性構成単位の他に、光配向性基および熱架橋性基のいずれも有さない構成単位を有していてもよい。共重合体に他の構成単位が含まれることにより、例えば溶剤溶解性、耐熱性、反応性等を高めることができる。
光配向性基および熱架橋性基を有さない構成単位を構成する単量体単位としては、例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、マレイミド、アクリルアミド、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレン、ビニル等が挙げられる。中でも、上記熱架橋性構成単位と同様に、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレンが好ましい。
このような光配向性基および熱架橋性基を有さない構成単位を形成するモノマーとしては、例えばアクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、マレイミド化合物、アクリルアミド化合物、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレン化合物、ビニル化合物等が挙げられる。具体的には、特許第5459520号公報に記載されているものを用いることができる。
共重合体における光配向性基および熱架橋性基を有さない構成単位は、1種であってもよく2種以上であってもよい。
共重合体における上記構成単位の含有割合としては、共重合体全体を100モル%としたとき、0モル%〜50モル%の範囲内であることが好ましく、0モル%〜30モル%の範囲内であることがより好ましい。上記構成単位の含有割合が多いと、相対的に光配向性構成単位および熱架橋性構成単位の含有割合が少なくなり、感度が低下し、良好な液晶配向能を付与するのが困難になり、また十分な熱硬化性が得られず、良好な液晶配向能を維持するのが困難になる場合がある。
(iv)共重合体
共重合体の数平均分子量は、特に限定されるものではなく、例えば3,000〜200,000程度とすることができ、好ましくは4,000〜100,000の範囲内である。数平均分子量が大きすぎると、溶剤に対する溶解性が低くなったり粘度が高くなったりして取り扱い性が低下し、均一な膜を形成しにくい場合がある。また、数平均分子量が小さすぎると、熱硬化時に硬化不足になり溶剤耐性や耐熱性が低下する場合がある。
なお、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定することができる。
共重合体の合成方法としては、光配向性基を有するスチレン系モノマーと熱架橋性基を有するモノマーとを共重合する方法が挙げられる。
共重合体の合成方法としては特に限定されないが、例えば、光配向性基を有するスチレン系モノマーと熱架橋性基を有するモノマーと重合開始剤等とを共存させた溶剤中において重合反応させることにより得ることができる。その際、用いられる溶剤は、光配向性基を有するスチレン系モノマー、熱架橋性基を有するモノマーおよび重合開始剤等を溶解するものであれば特に限定されない。具体的には、後述の光配向性を有する熱硬化性組成物に用いられる溶剤と同様とすることができる。また、重合反応の際の温度は、例えば50℃〜120℃程度で設定することができる。上記方法により得られる共重合体は、通常、溶剤に溶解した溶液の状態である。
上記方法により得られた共重合体はそのまま用いることができるが、下記に示す方法により精製して用いることもできる。
すなわち、上記方法で得られた共重合体の溶液を、攪拌下のジエチルエーテルやメタノール、水等に投入して再沈殿させ、生成した沈殿物を濾過、洗浄した後に、常圧または減圧下で、常温乾燥または加熱乾燥し、共重合体の粉体とすることができる。この操作により、共重合体と共存する重合開始剤および未反応のモノマーを除去することができ、その結果、精製した共重合体の粉体が得られる。一度の操作で十分に精製できない場合は、得られた粉体を溶剤に再溶解させ、上記の操作を繰り返し行えばよい。
共重合体は、共重合体を合成した際の溶液形態で、あるいは、粉体形態で、あるいは精製した粉末を後述する溶剤に再溶解した溶液形態で用いてもよい。
また、共重合体は、1種であってもよく複数種の共重合体の混合物であってもよい。
(b)架橋剤
本発明における光配向性を有する熱硬化性組成物は、架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤は、上記共重合体の熱架橋性構成単位と結合するものであり、耐熱性、耐溶剤性および湿熱耐久性を高めることができる。そのため、本発明の転写用積層体を用いて位相差層および配向層を転写した場合には、水蒸気や熱等による液晶の配向乱れを効果的に抑制することができる。
架橋剤としては、例えばエポキシ化合物、メチロール化合物、イソシアナート化合物等が挙げられる。中でも、メチロール化合物が好ましい。
また、架橋剤は、アミノ基の水素原子がメチロール基またはアルコキシメチル基で置換されたメラミン化合物、尿素化合物、グリコールウリル化合物およびベンゾグアナミン化合物を縮合させて得られる化合物であってもよい。
さらに、架橋剤としては、ヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基で置換されたアクリルアミド化合物またはメタクリルアミド化合物を使用して製造されるポリマーも用いることができる。
具体的には、特許第5459520号公報に記載されているものを用いることができる。
また、分子内にベンゼン環を複数個含む架橋剤も利用することができる。分子内にベンゼン環を複数個含む架橋剤としては、例えばヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基を合わせて2個以上有し、分子量が1200以下のフェノール誘導体や、少なくとも2個の遊離N−アルコキシメチル基を有するメラミン−ホルムアルデヒド誘導体やアルコキシメチルグリコールウリル誘導体が挙げられる。ヒドロキシメチル基を有するフェノール誘導体は、対応するヒドロキシメチル基を有さないフェノール化合物とホルムアルデヒドを塩基触媒下で反応させることによって得ることができる。
これらの架橋剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
光配向性を有する熱硬化性組成物における架橋剤の含有量は、上記共重合体100質量部に対して1質量部〜40質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは2質量部〜30質量部の範囲内である。含有量が少なすぎる場合には、光配向性を有する熱硬化性組成物から形成される硬化膜の耐熱性および溶剤耐性が低下し、液晶配向能が低下するおそれがある。また、含有量が多すぎる場合には、液晶配向能および保存安定性が低下することがある。
(c)熱架橋性化合物
本発明における光配向性を有する熱硬化性組成物は、第2熱架橋性基および第1エチレン性不飽和二重結合基を有する熱架橋性化合物を含有してもよい。
熱架橋性化合物は低分子成分であることから、光配向性を有する熱硬化性組成物を用いて配向層を形成する際に、熱架橋性化合物が配向層の表面に浮き出てきやすい。そのため、熱架橋性化合物を配向層の表面近傍に局在化させることができる。
熱架橋性化合物は第1エチレン性不飽和二重結合基を有するものであり、第1エチレン性不飽和二重結合基は、位相差層に用いられる液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物が有する重合性基と反応し得るものである。上述したように、熱架橋性化合物を配向層の表面近傍に局在化させることができるので、配向層と位相差層との界面で、配向層に含まれる熱架橋性化合物の第1エチレン性不飽和二重結合基と位相差層に用いられる重合性液晶化合物の重合性基とを反応させることができる。
また、熱架橋性化合物は、加熱により架橋剤と結合するものである。すなわち、第2熱架橋性基は、加熱により架橋剤と結合するものであり、後述するように、加熱により架橋剤と架橋した第2架橋構造を形成し得るものである。
したがって、配向層と位相差層との密着性を向上させることができ、樹脂基材および配向層の剥離強度を配向層および位相差層の剥離強度よりも小さくすることができる。
なお、第2熱架橋性基については、上記共重合体の熱架橋性構成単位の熱架橋性基と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
熱架橋性化合物は、1つ以上の第2熱架橋性基を有する。
第1エチレン性不飽和二重結合基は、ラジカル重合性基であり、位相差層に用いられる液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物が有する重合性基と反応し得るものである。なお、ラジカル重合性基とは、紫外線等の活性エネルギー線の照射またはラジカルの作用により重合可能な官能基である。第1エチレン性不飽和二重結合基としては、例えばアクリロイル基、メタアクリロイル基、ビニル基、スチリル基等が挙げられる。スチリル基の場合、共重合体の光配向性構成単位だけでなく熱架橋性化合物もスチレン骨格を有することにより、π電子系を多く含むことができる。そのため、π電子系の相互作用により、液晶配向能を向上させ、また位相差層との密着性をさらに高めることができると考えられる。
熱架橋性化合物は、1つ以上の第1エチレン性不飽和二重結合基を有する。
熱架橋性化合物は、第1エチレン性不飽和二重結合基の二重結合を末端に有することが好ましい。
熱架橋性化合物としては、例えば国際公開第2014/065324号パンフレットに記載されているヒドロキシ基および(メタ)アクリル基を有する化合物を用いることもできる。
また、熱架橋性化合物は、1種であってもよく2種以上を用いてもよい。
熱架橋性化合物の分子量としては、100〜1000の範囲内であることが好ましく、中でも100〜500の範囲内であることが好ましい。分子量が大きすぎると、熱架橋性化合物が配向層の表面近傍に局在化しにくくなるおそれがある。
光配向性を有する熱硬化性組成物における熱架橋性化合物の含有量は、上記共重合体100質量部に対して0質量部〜100質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0質量部〜50質量部の範囲内である。熱架橋性化合物の含有量が多すぎると、相対的に共重合体の含有量が少なくなり、感度が低下し、良好な液晶配向能が得られないおそれがある。
(d)光配向性化合物
本発明における光配向性を有する熱硬化性組成物は、第2光配向性基および第2エチレン性不飽和二重結合基を有する光配向性化合物を含有してもよい。
光配向性化合物は低分子成分であることから、光配向性を有する熱硬化性組成物を用いて配向層を形成する際に、光配向性化合物が配向層の表面に浮き出てきやすい。そのため、光配向性化合物を配向層の表面近傍に局在化させることができる。
光配向性化合物は第2エチレン性不飽和二重結合基を有するものであり、第2エチレン性不飽和二重結合基は、位相差層に用いられる液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物が有する重合性基と反応し得るものである。上述したように、光配向性化合物を配向層の表面近傍に局在化させることができるので、配向層と位相差層との界面で、配向層に含まれる光配向性化合物の第2エチレン性不飽和二重結合基と位相差層に用いられる重合性液晶化合物の重合性基とを反応させることができる。したがって、配向層と位相差層との密着性を向上させることができ、樹脂基材および配向層の剥離強度を配向層および位相差層の剥離強度よりも小さくすることができる。
さらに、光配向性化合物を配向層の表面近傍に局在化させることができるので、光反応性を高め、感度を向上させることができる。したがって、少ない露光量で配向層を形成することができる。よって、配向層形成時の偏光紫外線の照射量を少なく、照射時間を短くすることができ、省エネルギーの観点から有用である。
第2光配向性基は、上記共重合体の光配向性構成単位の光配向性基と同様に、光照射により光反応を生じることで異方性を発現する官能基であり、光二量化反応または光異性化反応を生じる官能基であることが好ましい。
なお、第2光配向性基については、上記共重合体の光配向性構成単位の光配向性基と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
第2光配向性基が生じる光反応は、上記共重合体の光配向性構成単位の光配向性基が生じる光反応と同じである。光反応が同じであれば、第2光配向性基は、上記共重合体の光配向性構成単位の光配向性基と同一であってもよく異なっていてもよい。
第2エチレン性不飽和二重結合基は、ラジカル重合性基であり、位相差層に用いられる液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物が有する重合性基と反応し得るものである。第2エチレン性不飽和二重結合基としては、例えばビニル基、スチリル基、アクリロイル基、メタアクリロイル基等が挙げられる。スチリル基の場合、共重合体の光配向性構成単位だけでなく光配向性化合物もスチレン骨格を有することにより、π電子系を多く含むことができる。そのため、π電子系の相互作用により、液晶配向能を向上させ、また位相差層との密着性をさらに高めることができると考えられる。
光配向性化合物は、1つ以上の第2エチレン性不飽和二重結合基を有する。
光配向性化合物は、第2エチレン性不飽和二重結合基の二重結合を末端に有することが好ましい。
光配向性化合物としては、下記式(4)で表される化合物を例示することができる。
51−L−X (4)
上記式(4)中、R51はエチレン性不飽和二重結合基、Xは第2光配向性基、Lは単結合または2価の連結基を表す。
第2エチレン性不飽和二重結合基R51および第2光配向性基Xは、上述の通りである。
51がスチリル基の場合、−L−Xはオルト位、メタ位、パラ位のいずれに結合していてもよく、また複数結合していてもよい。複数の場合、LおよびXは互いに同一でもよく異なってもよい。中でも、−L−Xが1つでありパラ位に結合していることが好ましい。
は単結合または2価の連結基である。Lが単結合の場合、第2光配向性基Xはエチレン性不飽和二重結合基に直接結合される。2価の連結基としては、例えばエーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、アルキレン基、アリーレン基、シクロアルキレン基、およびこれらの組み合わせ等が挙げられる。
また、光配向性化合物は、1種であってもよく2種以上を用いてもよい。
光配向性化合物の分子量としては、100〜1000の範囲内であることが好ましく、
中でも200〜700の範囲内であることが好ましい。分子量が大きすぎると、光配向性化合物が配向層の表面近傍に局在化しにくくなるおそれがある。
光配向性を有する熱硬化性組成物における光配向性化合物の含有量は、上記共重合体100質量部に対して0質量部〜40質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0質量部〜30質量部の範囲内であり、さらに好ましくは0質量部〜25質量部の範囲内である。光配向性化合物の含有量が多すぎると、相対的に共重合体の含有量が少なくなり、十分な熱硬化性が得られず、膜強度が低下し、良好な液晶配向能が得られないおそれがある。
(e)酸または酸発生剤
本発明における光配向性を有する熱硬化性組成物は、酸または酸発生剤を含有してもよい。酸または酸発生剤により、光配向性を有する熱硬化性組成物の熱硬化反応を促進させることができる。
酸または酸発生剤としては、スルホン酸基含有化合物、塩酸またはその塩、および塗膜の乾燥および加熱硬化時に熱分解して酸を発生する化合物、すなわち温度50℃から250℃で熱分解して酸を発生する化合物であれば特に限定されるものではない。具体的には、特許第5459520号公報に記載されているものを用いることができる。
光配向性を有する熱硬化性組成物における酸または酸発生剤の含有量は、上記共重合体100質量部に対して、好ましくは0.01質量部〜20質量部の範囲内、より好ましくは0.05質量部〜10質量部の範囲内、さらに好ましくは0.1質量部〜5質量部の範囲内である。酸または酸発生剤の含有量を上記範囲内とすることで、十分な熱硬化性および溶剤耐性を付与することができ、さらに光照射に対する高い感度をも付与することができる。一方、含有量が多すぎると、光配向性を有する熱硬化性組成物の保存安定性が低下する場合がある。
(f)増感剤
本発明における光配向性を有する熱硬化性組成物は、増感剤を含有してもよい。増感剤により、光二量化反応や光異性化反応等の光反応を促進させることができる。
増感剤としては、具体的には、特許第5459520号公報に記載されているものを用いることができる。中でも、ベンゾフェノン誘導体およびニトロフェニル化合物が好ましい。増感剤は単独でまたは2種以上の化合物を組み合わせて併用することができる。
光配向性を有する熱硬化性組成物における増感剤の含有量は、上記共重合体100質量部に対して0.1質量部〜20質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.2質量部〜10質量部の範囲内である。含有量が少なすぎると増感剤としての効果を十分に得られない場合があり、含有量が多すぎると透過率の低下および塗膜の荒れが生じることがある。
(g)溶剤
本発明における光配向性を有する熱硬化性組成物は、主として溶剤に溶解した溶液状態で用いられる。
溶剤としては、上記の各成分を溶解できるものであれば特に限定されるものでなく、具体的には、特許第5459520号公報に記載されているものを用いることができる。溶剤は1種単独でまたは2種以上の組合せで使用することができる。
(h)添加剤
本発明における光配向性を有する熱硬化性組成物は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて、シランカップリング剤、界面活性剤、レオロジー調整剤、顔料、染料、保存安定剤、消泡剤、酸化防止剤等を含有することができる。また、液晶配向能の向上のために、液晶性モノマーを含有させることができる。
(i)光配向性を有する熱硬化性組成物
本発明における光配向性を有する熱硬化性組成物は、通常、各成分が溶剤に溶解した溶液として用いられる。配向性を有する熱硬化性組成物における固形分の割合は、各成分が均一に溶剤に溶解している限り特に限定されるものではなく、0.1質量%〜80質量%の範囲内であり、好ましくは0.5質量%〜60質量%の範囲内であり、より好ましくは0.5質量%〜40質量%の範囲内である。固形分の割合が少なすぎると、液晶配向能や熱硬化性を付与することが困難になる場合がある。また、固形分の割合が多すぎると、光配向性を有する熱硬化性組成物の粘度が高くなり、均一な膜を形成しにくくなる。
なお、固形分とは、光配向性を有する熱硬化性組成物の全成分から溶剤を除いたものをいう。
光配向性を有する熱硬化性組成物の調製方法は特に限定されるものではないが、保存安定性が長くなることから、共重合体、架橋剤、増感剤およびその他の添加剤を混合し、後から酸または酸発生剤を添加する方法が好ましい。なお、酸または酸発生剤をはじめから添加する場合には、酸または酸発生剤として、塗膜の乾燥および加熱硬化時に熱分解して酸を発生する化合物を用いることが好ましい。
光配向性を有する熱硬化性組成物の調製においては、溶剤中の重合反応によって得られる共重合体の溶液をそのまま使用することができる。この場合、共重合体の溶液に、上述のように架橋剤、増感剤およびその他の添加剤等を入れて均一な溶液とし、後から酸または酸発生剤を添加する。この際に、濃度調整を目的としてさらに溶剤を加えてもよい。このとき、共重合体の生成過程で用いられる溶剤と、光配向性を有する熱硬化性組成物の濃度調整に用いられる溶剤とは同一であってもよく異なってもよい。
また、調製された光配向性を有する熱硬化性組成物の溶液は、孔径が0.2μm程度のフィルタ等を用いて濾過した後、使用することが好ましい。
(2)配向層
(a)共重合体
本発明における配向層に含有される共重合体は、上記式(1)で表される光配向性構成単位が有する光配向性基の光二量化構造または光異性化構造、および、熱架橋性構成単位が有する熱架橋性基の架橋構造を有するものである。
共重合体は、上記式(1)で表される光配向性構成単位と熱架橋性構成単位とを有する共重合体を熱硬化し、光配向させることにより形成することができる。架橋構造は、三次元的な網目構造であり、熱架橋性構成単位が有する熱架橋性基が架橋した構造である。通常、熱架橋性構成単位が有する熱架橋性基は、架橋剤または熱架橋性構成単位が有する自己架橋可能な架橋基と結合する。したがって、架橋構造は、熱架橋性基と架橋剤または熱架橋性構成単位が有する自己架橋可能な架橋基とが加熱により架橋した構造となる。
例えば、架橋剤がヘキサメトキシメチルメラミンの場合、架橋構造は下記に示すような構造になる。なお、下記式中、各符号は上記式(1)と同様である。
Figure 2016099389
中でも、架橋構造は、熱架橋性構成単位が有する熱架橋性基と架橋剤とが結合した架橋構造であることが好ましい。配向層の耐熱性、耐溶剤性、および湿熱耐久性を高めることができるからである。そのため、本発明の転写用積層体を用いて位相差層および配向層を転写した場合には、位相差層の光学特性の低下を抑制することができる。
配向層が上記共重合体を含有することは、配向層から材料を採取し分析することで確認することができる。分析方法としては、NMR、IR、GC−MS、XPS、TOF−SIMSおよびこれらの組み合わせた方法を適用することができる。
共重合体における光二量化構造は、上記式(1)で表される光配向性構成単位の光配向性基同士、または、光配向性基および光配向性化合物の第2光配向性基が光二量化反応により架橋した構造であり、シクロプロパン骨格を有する構造である。
光二量化反応は、下記に示すような反応であり、光配向性基および第2光配向性基に含まれるオレフィン構造が光反応によりシクロプロパン骨格を形成する反応である。光配向性基および第2光配向性基の種類に応じてXa〜XdおよびXa′〜Xd′は異なる。
Figure 2016099389
光二量化構造は、シンナモイル基の光二量化構造であることが好ましい。具体的には、上述したシンナモイル基同士が光二量化反応により架橋した構造が好ましい。中でも、配向層は、下記式(5−1)、(5−2)で表されるような光二量化構造を有することが好ましい。なお、下記式中、各符号は上記式(1−6)、(1−4)と同様である。
Figure 2016099389
配向層が、上記式(5−1)、(5−2)で表されるような光二量化構造を有する場合、芳香環が多く配置され、π電子を多く含むようになる。そのため、配向層上に形成される位相差層と親和性が高くなり、液晶配向能が向上し、位相差層との密着性がさらに高くなると考えられる。
また、共重合体における光異性化構造は、上記式(1)で表される光配向性構成単位が有する光配向性基が光異性化反応により異性化した構造である。例えばシストランス異性化反応の場合、光異性化構造は、シス体がトランス体に変化した構造およびトランス体がシス体に変化した構造のいずれであってもよい。
例えば、光配向性基がシンナモイル基の場合、光異性化反応は下記に示すような反応であり、光配向性基に含まれるオレフィン構造が光反応によりシス体またはトランス体を形成する反応である。光配向性基の種類に応じてXa〜Xdは異なる。
Figure 2016099389
光異性化構造は、シンナモイル基の光異性化構造であることが好ましい。具体的には、上述したシンナモイル基が光異性化反応により異性化した構造が好ましい。この場合、光異性化構造は、シス体がトランス体に変化した構造およびトランス体がシス体に変化した構造のいずれであってもよい。中でも、配向層は、下記式で示されるような、上記式(1−3)で表されるシンナモイル基の光異性化構造を有することが好ましい。
Figure 2016099389
なお、配向層が上記光二量化構造または光異性化構造を有することは、NMRまたはIRにより分析可能である。
(b)熱架橋性化合物
本発明においては、配向層が、第2熱架橋性基の第2架橋構造と、第1エチレン性不飽和二重結合基とを有する熱架橋性化合物を含有し、熱架橋性化合物の第1エチレン性不飽和二重結合基が重合した構造を有してもよい。
第2架橋構造は、三次元的な網目構造であり、第2熱架橋性基が架橋した構造である。通常、第2熱架橋性基は、架橋剤と結合する。そのため、第2架橋構造は、第2熱架橋性基と架橋剤とが加熱により架橋した構造となる。
また、第1エチレン性不飽和二重結合基は、位相差層に用いられる液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物が有する重合性基と反応し得るものである。そのため、第1エチレン性不飽和二重結合基が重合した構造は、第1エチレン性不飽和二重結合同士、または第1エチレン性不飽和二重結合および重合性液晶化合物の重合性基が重合した構造となる。
配向層が、熱架橋性化合物の第2熱架橋性基の第2架橋構造、および、熱架橋性化合物の第1エチレン性不飽和二重結合基が重合した構造を有することにより、配向層と位相差層との密着性を向上させることができ、樹脂基材および配向層の剥離強度を配向層および位相差層の剥離強度よりも小さくすることができる。
配向層が、上記熱架橋性化合物を含有し、上記熱架橋性化合物の第1エチレン性不飽和二重結合基が重合した構造を有することは、配向層から材料を採取し分析することで確認することができる。分析方法としては、NMR、IR、GC−MS、XPS、TOF−SIMSおよびこれらの組み合わせた方法を適用することができる。
(c)光配向性化合物
本発明においては、配向層が、第2光配向性基の光二量化構造または光異性化構造と、第2エチレン性不飽和二重結合基とを有する光配向性化合物を含有し、光配向性化合物の第2エチレン性不飽和二重結合基が重合した構造を有してもよい。
第2エチレン性不飽和二重結合基は、位相差層に用いられる液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物が有する重合性基と反応し得るものである。そのため、第2エチレン性不飽和二重結合基が重合した構造は、第2エチレン性不飽和二重結合同士、または第2エチレン性不飽和二重結合および重合性液晶化合物の重合性基が重合した構造となる。
配向層が、光配向性化合物の第2エチレン性不飽和二重結合基が重合した構造を有することにより、配向層と位相差層との密着性を向上させることができ、樹脂基材および配向層の剥離強度を配向層および位相差層の剥離強度よりも小さくすることができる。
光配向性化合物における光二量化構造は、第2光配向性基同士、または、第2光配向性化合物および上記共重合体の光配向性構成単位の光配向性基が光二量化反応により架橋した構造であり、シクロプロパン骨格を有する構造である。
なお、光二量化反応については、上記共重合体における光二量化反応と同様であるので、ここでの説明は省略する。
光二量化構造は、上記共重合体における光二量化構造と同様に、シンナモイル基の光二量化構造であることが好ましい。
また、光配向性化合物における光異性化構造は、第2光配向性基が光異性化反応により異性化した構造である。
なお、光異性化構造については、上記共重合体における光異性化構造と同様であるので、ここでの説明は省略する。
光異性化構造は、上記共重合体における光異性化構造と同様に、シンナモイル基の光異性化構造であることが好ましい。
配向層が、上記光配向性化合物を含有し、上記光配向性化合物の第2エチレン性不飽和二重結合基が重合した構造を有することは、配向層から材料を採取し分析することで確認することができる。分析方法としては、NMR、IR、GC−MS、XPS、TOF−SIMSおよびこれらの組み合わせた方法を適用することができる。
(d)その他
配向層は、架橋剤、酸または酸発生剤、増感剤、その他の添加剤を含有してもよい。
配向層の膜厚は、本発明の転写用積層体の用途等に応じて適宜選択されるものであり、例えば0.05μm〜30μm程度とすることができる。なお、配向層の膜厚が薄すぎると、十分な液晶配向能が得られない場合がある。
配向層は上述の光配向性を有する熱硬化性組成物から形成されるものである。なお、配向層の形成方法については、後述の「C.転写用積層体の製造方法」に記載するので、ここでの説明は省略する。
2.位相差層
本発明における位相差層は、上記配向層上に形成されるものであり、通常、液晶組成物の硬化物を含有するものである。
液晶組成物は、少なくとも液晶化合物を含有するものであり、通常はさらに溶剤を含有する。液晶組成物は、液晶化合物の配向を阻害しない範囲で、さらに他の成分を含有してもよい。
液晶組成物としては、位相差層に一般的に用いられるものを使用することができる。液晶組成物には、例えば水平配向、コレステリック配向、垂直配向、ハイブリッド配向等の配向性を有するものがあり、配向層との組み合わせや所望の位相差等に応じて適宜選択される。
中でも、液晶化合物は、重合性基を有する重合性液晶化合物であることが好ましい。重合性液晶化合物同士を架橋することができ、位相差層の安定性が増すからである。重合性基としては、例えばアクリロイル基、メタアクリロイル基等が挙げられる。
位相差層の膜厚は、所望の位相差を得ることができればよく、用途等に応じて適宜決定されるものであり、一般的な位相差層と同様とすることができる。
なお、位相差層の形成方法については、後述の「C.転写用積層体の製造方法」に記載するので、ここでの説明は省略する。
3.樹脂基材
本発明における樹脂基材は、配向層および位相差層を支持するものである。
樹脂基材としては、特に限定されるものではなく、一般的な樹脂基材を用いることができる。また、樹脂基材は表面処理が施されたものであってもよい。
樹脂基材および配向層の剥離強度を配向層および位相差層の剥離強度よりも小さくするために、樹脂基材は非芳香族系樹脂を含有してもよい。上記配向層に含有される共重合体は上記式(1)で表される光配向性構成単位を有しており、上記式(1)で表される光配向性構成単位はスチレン骨格を有しており、π電子系を多く含んでいる。そのため、樹脂基材が非芳香族系樹脂を含有する場合には、π電子系の相互作用が働かないため、樹脂基材と配向層との密着性が低くなると考えられる。したがって、樹脂基材および配向層の剥離強度を配向層および位相差層の剥離強度よりも小さくすることができる。
ここで、非芳香族系樹脂とは、芳香族環を含まない樹脂をいう。
非芳香族系樹脂としては、例えばトリアセチルセルロース、環状ポリオレフィン、アクリル樹脂、脂肪族系ポリエステル等が挙げられる。
また、樹脂基材および配向層の剥離強度を配向層および位相差層の剥離強度よりも小さくするために、樹脂基材の表面に離型処理が施されていてもよく、あるいは離型層が形成されていてもよい。これにより、樹脂基材の剥離性を高めることができ、樹脂基材および配向層の剥離強度を配向層および位相差層の剥離強度よりも小さくすることができる。
離型処理としては、例えばフッ素処理、シリコーン処理等の表面処理が挙げられる。
離型層の材料としては、例えばフッ素系離型剤、シリコーン系離型剤、ワックス系離型剤等が挙げられる。離型層の形成方法としては、例えば離型剤をディップコート、スプレーコート、ロールコート等の塗布法により塗布する方法が挙げられる。
離型処理が施されている場合または離型層が形成されている場合には、樹脂基材の材料として、非芳香族系樹脂の他に、芳香族系樹脂も用いることができる。芳香族系樹脂としては、例えば芳香族系ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等が挙げられる。中でも、芳香族系ポリエステルが好ましい。芳香族系ポリエステルは汎用性が高く、安価であり、剥離除去される樹脂基材としての使用に好適である。
芳香族系ポリエステルとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられる。特に、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。上述したように、ポリエチレンテレフタレートは汎用性が高く、安価であり、剥離除去される樹脂基材としての使用に好適である。
また、樹脂基材の剥離性を高めるために、樹脂基材表面は平滑であることが好ましい。
樹脂基材は、可撓性を有していてもよく有さなくてもよいが、樹脂基材を剥離しやすいことから、可撓性を有することが好ましい。
4.剥離強度
本発明においては、樹脂基材および配向層の剥離強度が、配向層および位相差層の剥離強度よりも小さい。
樹脂基材および配向層の剥離強度を配向層および位相差層の剥離強度よりも小さくするためには、上述したように、配向層に用いられる光配向性を有する熱硬化性組成物が、第2熱架橋性基および第1エチレン性不飽和二重結合基を有する熱架橋性化合物、または、第2光配向性基および第2エチレン性不飽和二重結合基を有する光配向性化合物を含有することが好ましい。すなわち、配向層が、第2熱架橋性基の第2架橋構造と、第1エチレン性不飽和二重結合基とを有する熱架橋性化合物を含有し、熱架橋性化合物の第1エチレン性不飽和二重結合基が重合した構造を有する、あるいは、第2光配向性基の光二量化構造または光異性化構造と、第2エチレン性不飽和二重結合基とを有する光配向性化合物を含有し、光配向性化合物の第2エチレン性不飽和二重結合基が重合した構造を有することが好ましい。この場合、配向層および位相差層の密着性を向上させることができる。
また、樹脂基材および配向層の剥離強度を配向層および位相差層の剥離強度よりも小さくするために、配向層の硬度を比較的低くすることも好ましい。具体的には、光配向性を有する熱硬化性組成物中の架橋剤の含有量を比較的少なくし、光配向性を有する熱硬化性組成物の硬化反応を制御し、配向層に柔軟性を持たせることが好ましい。配向層が柔軟性を持つことにより、配向層および位相差層の密着性を向上させることができる。
また、樹脂基材および配向層の剥離強度を配向層および位相差層の剥離強度よりも小さくするために、配向層の耐溶剤性を比較的低くすることも好ましい。具体的には、光配向性を有する熱硬化性組成物中の架橋剤の含有量を比較的少なくする、光配向性を有する熱硬化性組成物中の共重合体の熱架橋性構成単位の含有割合を比較的少なくする、光配向性を有する熱硬化性組成物中の酸または酸発生剤の含有量を比較的少なくする、加熱硬化時の温度を比較的低くする、加熱硬化時の時間を比較的短くする、あるいは光配向性を有する熱硬化性組成物に含まれる共重合体の数平均分子量を比較的小さくして、光配向性を有する熱硬化性組成物の硬化反応を制御し、配向層の耐溶剤性を比較的低くすることが好ましい。配向層の耐溶剤性が比較的低い場合には、配向層上に液晶組成物を塗布して位相差層を形成する際に、液晶組成物中の溶剤に配向層表面が一部溶解するため、配向層および位相差層の密着性を向上させることができる。
また、光配向性を有する熱硬化性組成物の硬化反応を制御する場合において、配向層形成時に光配向性を有する熱硬化性組成物の塗膜を半硬化し、位相差層形成時に光配向性を有する熱硬化性組成物の塗膜および液晶組成物の塗膜を硬化することも好ましい。この場合にも、配向層および位相差層の密着性を向上させることができる。
このように配向層および位相差層の密着性を向上させることにより、本発明の転写用積層体を用いて位相差層および配向層を転写する場合には、樹脂基材および配向層の界面で安定して剥離することができ、配向層の破壊等の剥離不良を抑制することができる。したがって、本発明の転写用積層体を用いて得られる光学素子では、位相差層を配向層によって安定的に保護することができる。
5.その他の構成
本発明の転写用積層体を用いて位相差層および配向層を転写する際には、被転写体上に粘着層または接着層を介して転写用積層体を転写することができる。そのため、本発明の転写用積層体においては、位相差層上に粘着層または接着層が形成されていてもよい。
粘着層および接着層の材料としては、位相差層および被転写体の両方に密着性を有する粘着剤や接着剤を用いることができる。粘着剤および接着剤としては、転写法による光学素子の製造方法に使用される一般的な粘着剤および接着剤を適用することができる。
粘着層および接着層の厚みは、例えば1μm〜30μm程度で設定される。
また、粘着層または接着層上には剥離層が配置されていてもよい。剥離層は、被転写体上に粘着層または接着層を介して転写用積層体を転写する際に剥離されるものである。
剥離層としては、一般的なものを使用することができる。
B.光学素子
本発明の光学素子は、光学部材と、上記光学部材上に形成された位相差層と、上記位相差層上に形成され、上記式(1)で表される光配向性構成単位が有する光配向性基の光二量化構造または光異性化構造、および、熱架橋性構成単位が有する熱架橋性基の架橋構造を有する共重合体を含有する配向層とを有することを特徴とするものである。
図3は本発明の光学素子の一例を示す概略断面図である。図3に示すように、光学素子10は、光学部材13と、光学部材13上に形成された粘着層12と、粘着層12上に形成され、液晶層である位相差層4と、位相差層4上に形成され、上記式(1)で表される光配向性構成単位が有する光配向性基の光二量化構造または光異性化構造、および、熱架橋性構成単位が有する熱架橋性基の架橋構造を有する共重合体を含有する配向層3とを有している。
本発明の光学素子は、光学部材上に上述の転写用積層体の位相差層および配向層を転写することにより得ることができる。したがって、配向層により位相差層を保護することができ、水蒸気や熱等による液晶の配向不良を抑制することができる。さらには、良好な光学特性を得ることができる。
なお、位相差層および配向層については、上記「A.転写用積層体」に記載したので、ここでの説明は省略する。以下、本発明の光学素子における他の構成について説明する。
1.光学部材
本発明に用いられる光学部材としては、例えば偏光板、位相差板等が挙げられる。位相差板としては、例えば液晶層である位相差層を有するものや、延伸フィルムを用いることができる。
2.その他の構成
本発明においては、光学部材上に位相差層および配向層が繰り返し積層されていてもよい。光学部材上への位相差層および配向層の転写を繰り返し行うことにより、光学部材上に位相差層および配向層が繰り返し積層された光学素子を得ることができる。この場合、各位相差層の位相差は同じであってもよく異なっていてもよいが、中でも各位相差層は互いに位相差が異なることが好ましい。光学特性に優れる光学素子を得ることができるからである。位相差層および配向層の繰り返し積層数は、特に限定されないが、2または3であることが好ましい。
本発明において、通常、光学部材および位相差層の間には粘着層または接着層が形成されている。
なお、粘着層および接着層については、上記「A.転写用積層体」に記載したので、ここでの説明は省略する。
本発明の光学素子は、光学部材上に上述の転写用積層体の位相差層および配向層を転写することにより製造することができる。なお、本発明の光学素子の製造方法については、後述の「D.光学素子の製造方法」に記載するので、ここでの説明は省略する。
C.転写用積層体の製造方法
本発明の転写用積層体の製造方法は、樹脂基材上に、上記式(1)で表される光配向性構成単位および熱架橋性構成単位を有する共重合体を含有する光配向性を有する熱硬化性組成物を塗布し、加熱硬化し、偏光紫外線を照射して、配向層を形成する配向層形成工程と、上記配向層上に、液晶化合物を含有する液晶組成物を塗布し、上記液晶化合物を配向させて、位相差層を形成する位相差層形成工程とを有し、上記樹脂基材および上記配向層の剥離強度が上記配向層および上記位相差層の剥離強度よりも小さいことを特徴とする製造方法である。
図4(a)〜(e)は本発明の転写用積層体の製造方法の一例を示す工程図である。まず、図4(a)に示すように樹脂基材2上に光配向性を有する熱硬化性組成物3aを塗布し、加熱硬化して、図4(b)に示すように硬化膜3bを形成する。次に、図4(b)に示すように硬化膜3bに偏光紫外線21を照射して、図4(c)に示すように配向層3を形成する。次に、図4(d)に示すように配向層3上に液晶組成物4aを塗布し、液晶組成物4a中の液晶化合物を配向させて、図4(e)に示すように位相差層4を形成する。これにより、転写用積層体1が得られる。転写用積層体1においては、樹脂基材2および配向層3の剥離強度が、配向層3および位相差層4の剥離強度よりも小さくなっている。
本発明においては、上記「A.転写用積層体」に記載したように、本発明により製造される転写用積層体を用いて得られる光学素子では、配向層により位相差層を保護し、水蒸気や熱等による液晶の配向不良を抑制することができる。また、本発明により製造される転写用積層体を用いて位相差層および配向層を転写した場合には、光学特性に優れる光学素子を得ることができる。
以下、本発明の転写用積層体の製造方法における各工程について説明する。
1.配向層形成工程
本発明における配向層形成工程は、樹脂基材上に、上記式(1)で表される光配向性構成単位および熱架橋性構成単位を有する共重合体を含有する光配向性を有する熱硬化性組成物を塗布し、加熱硬化し、偏光紫外線を照射して、配向層を形成する工程である。
光配向性を有する熱硬化性組成物の塗布方法としては、樹脂基材上に均一な膜を形成可能な方法であれば特に限定されるものではなく、例えばスピンコート法、ロールコート法、ロッドバーコート法、スプレーコート法、エアナイフコート法、スロットダイコート法、ワイヤーバーコート法、フローコート法、インクジェット法等を挙げることができる。
光配向性を有する熱硬化性組成物の塗布後は、塗膜を乾燥させてもよい。塗膜の乾燥には、例えばホットプレートやオーブン等を用いることができる。温度は、例えば30℃〜160℃程度で設定することができ、好ましくは50℃〜140℃の範囲内である。時間は、例えば20秒間〜60分間程度で設定することができ、好ましくは30秒間〜10分間の範囲内である。
塗膜の加熱硬化にも、ホットプレートやオーブン等を用いることができる。温度は、例えば30℃〜250℃程度で設定することができる。時間は、例えば20秒間〜60分間程度で設定することができる。また、塗膜の乾燥および加熱硬化を同時に行ってもよく別々に行ってもよい。
また、配向層および位相差層の密着性を向上させ、樹脂基材および配向層の剥離強度を配向層および位相差層の剥離強度よりも小さくするために、配向層形成工程では光配向性を有する熱硬化性組成物の塗膜を半硬化させ、後述の位相差層形成工程にて液晶組成物の塗膜の乾燥時や液晶化合物を配向させるための加温時に光配向性を有する熱硬化性組成物の塗膜を硬化してもよい。この場合、例えば加熱硬化時の温度を比較的低くしたり時間を比較的短くしたりすることで、塗膜を半硬化させることができる。
光配向性を有する熱硬化性組成物を熱硬化させて得られる硬化膜の膜厚は、用途等に応じて適宜選択されるものであり、例えば0.05μm〜30μm程度とすることができる。なお、硬化膜の膜厚が薄すぎると、十分な液晶配向能が得られない場合がある。
得られた硬化膜には、偏光紫外線を照射することにより、光反応を生じさせて異方性を発現させることができる。偏光紫外線の波長は通常150nm〜450nmの範囲内である。また、偏光紫外線の照射方向は、樹脂基材面に対して垂直または斜め方向とすることができる。
なお、光配向性を有する熱硬化性組成物および配向層のその他の点については、上記「A.転写用積層体」に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。
2.位相差層形成工程
本発明における位相差層形成工程は、上記配向層上に、液晶化合物を含有する液晶組成物を塗布し、上記液晶化合物を配向させて、位相差層を形成する工程である。
液晶組成物の塗布方法としては、配向層上に均一な膜を形成可能な方法であれば特に限定されるものではなく、上述の光配向性を有する熱硬化性組成物の塗布方法と同様とすることができる。
次いで、液晶組成物中の液晶化合物を上記配向層により配向させて、位相差層を形成する。配向方法としては、一般的な配向方法を適用することができ、例えば液晶組成物の相転移温度まで加温する方法が挙げられる。
重合性液晶化合物を用いる場合には、さらに紫外線を照射して硬化してもよい。
また、配向層および位相差層の密着性を向上させ、樹脂基材および配向層の剥離強度を配向層および位相差層の剥離強度よりも小さくするために、上述したように、上記配向層形成工程にて光配向性を有する熱硬化性組成物の塗膜を半硬化させ、位相差層形成工程にて液晶組成物の塗膜の乾燥時や液晶化合物を配向させるための加温時に光配向性を有する熱硬化性組成物の塗膜を硬化してもよい。
なお、位相差層のその他の点については、上記「A.転写用積層体」に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。
3.剥離強度
本発明により製造される転写用積層体においては、樹脂基材および配向層の剥離強度が配向層および位相差層の剥離強度よりも小さい。
なお、樹脂基材および配向層の剥離強度を配向層および位相差層の剥離強度よりも小さくする方法としては、上記「A.転写用積層体」に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。
D.光学素子の製造方法
本発明の光学素子の製造方法は、樹脂基材と、上記樹脂基材上に形成され、上記式(1)で表される光配向性構成単位および熱架橋性構成単位を有する共重合体を含有する光配向性を有する熱硬化性組成物から形成される配向層と、上記配向層上に形成された位相差層とを有し、上記樹脂基材および上記配向層の剥離強度が上記配向層および上記位相差層の剥離強度よりも小さい転写用積層体を準備する転写用積層体準備工程と、被転写体および上記転写用積層体の上記位相差層を対向させ、上記被転写体上に上記転写用積層体を転写する転写工程と、上記被転写体上に転写された上記転写用積層体から上記樹脂基材を剥離する剥離工程とを有することを特徴とする製造方法である。
本発明の光学素子の製造方法について図面を参照して説明する。
図2(a)〜(d)は本発明の光学素子の製造方法の一例を示す工程図である。まず、図2(a)に示すように、樹脂基材2と、樹脂基材2上に形成され、上記式(1)で表される光配向性構成単位および熱架橋性構成単位を有する共重合体を含有する光配向性を有する熱硬化性組成物から形成される配向層3と、配向層3上に形成され、液晶層である位相差層4とを有する転写用積層体1を準備する。転写用積層体1においては、樹脂基材2および配向層3の剥離強度が、配向層3および位相差層4の剥離強度よりも小さくなっている。次に、図2(b)に示すように、被転写体11および転写用積層体1の位相差層4を対向させ、粘着層12を介して被転写体11上に転写用積層体1を転写する。次に、図2(c)に示すように、被転写体11上に転写された転写用積層体1から樹脂基材2を剥離する。これにより、図2(d)に示すように、被転写体11上に位相差層4および配向層3が転写された光学素子10が得られる。
本発明においては、光学部材上に上述の転写用積層体の位相差層および配向層を転写することにより光学素子を得ることができる。したがって、配向層により位相差層を保護することができ、水蒸気や熱等による液晶の配向不良を抑制することができる。さらには、良好な光学特性を得ることができる。
以下、本発明の光学素子の製造方法における各工程について説明する。
1.転写用積層体準備工程
本発明における転写用積層体準備工程は、樹脂基材と、上記樹脂基材上に形成され、上記式(1)で表される光配向性構成単位および熱架橋性構成単位を有する共重合体を含有する光配向性を有する熱硬化性組成物から形成される配向層と、上記配向層上に形成された位相差層とを有し、上記樹脂基材および上記配向層の剥離強度が上記配向層および上記位相差層の剥離強度よりも小さい転写用積層体を準備する工程である。
なお、樹脂基材および位相差層については、上記「A.転写用積層体」に記載したので、ここでの説明は省略する。以下、転写用積層体における他の構成について説明する。
(1)配向層
本発明における配向層は、樹脂基材上に形成され、上記式(1)で表される光配向性構成単位および熱架橋性構成単位を有する共重合体を含有する光配向性を有する熱硬化性組成物から形成されるものである。
上述したように、光配向性を有する熱硬化性組成物から形成される配向層とは、光配向性を有する熱硬化性組成物を含有する膜を熱硬化させ、さらに光配向させてなる配向層をいう。すなわち、配向層の形成においては、まず、樹脂基材上に光配向性を有する熱硬化性組成物を塗布し、加熱して、硬化膜を形成する。次に、硬化膜に偏光紫外線を照射して、配向層を形成する。
なお、配向層が上述の光配向性を有する熱硬化性組成物から形成されたものであることは、配向層から材料を採取し分析することで確認することができる。分析方法としては、NMR、IR、GC−MS、XPS、TOF−SIMSおよびこれらの組み合わせた方法を適用することができる。
なお、配向層のその他の点については、上記「A.転写用積層体」に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。
(2)その他の構成
本発明においては、後述するように、被転写体上に粘着層または接着層を介して転写用積層体を転写することができる。そのため、転写用積層体においては、位相差層上に粘着層または接着層が形成されていてもよい。また、粘着層または接着層上には剥離層が配置されていてもよい。なお、粘着層、接着層および剥離層については、上記「A.転写用積層体」に記載したので、ここでの説明は省略する。
2.転写工程
本発明における転写工程は、被転写体と上記転写用積層体の上記位相差層とを対向させ、上記被転写体上に上記転写用積層体を転写する工程である。
被転写体としては、例えば上記「B.光学素子」に記載した偏光板、位相差板等の光学部材や、被転写基材を用いることができる。
被転写体上に転写用積層体を転写する方法としては、例えば被転写体上に粘着層または接着層を介して転写用積層体を転写する方法が挙げられる。
粘着層および接着層は、転写用積層体に形成されていてもよく、被転写体に形成されていてもよい。
なお、粘着層および接着層については、上述したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
3.剥離工程
本発明における剥離工程は、上記被転写体上に転写された上記転写用積層体から上記樹脂基材を剥離する工程である。
樹脂基材の剥離方法としては、例えば物理的に引き離す方法等、一般的な方法が適用される。
4.その他
本発明においては、上記の転写工程および剥離工程を繰り返し行ってもよい。これにより、被転写体上に位相差層および配向層を繰り返し積層することができる。なお、各位相差層の位相差、ならびに位相差層および配向層の繰り返し積層数については、上記「B.光学素子」に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
[合成例1]光配向性モノマー1の合成
300mLフラスコ中、氷冷下において4−ビニル安息香酸20.15g(136mmol)、trans−4−ヒドロキシけい皮酸メチル21.0(118mmol)、ジメチルアミノピリジン0.458g(3.82mmol)をジクロロメタン130mlに溶解し、ジクロロメタン40mlに溶解したN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド28.0g(136mmol)を約10分かけて滴下した。15時間撹拌した後、反応溶液を冷却し、沈殿物をろ別した。溶媒を留去し、メタノールを添加し、再結晶により光配向性モノマー1を10.8g得た。
[合成例2]光配向性モノマー2の合成
200mLフラスコ中、窒素雰囲気下において、p−アセトキシスチレン20.0g(118mmol)を酢酸エチル80mLに溶解し、ナトリウムメトキシド9.08g(47.1mmol)を約30分かけてゆっくり滴下した。1時間半撹拌した後、TLCにより反応の終了を確認し、酢酸エチルで抽出した後、1N塩酸、純水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶媒を留去し、乾燥させることで、光配向性モノマー誘導体1を得た。
合成例1において、4−ビニル安息香酸を用いる代わりに光配向性モノマー誘導体1を等モル量用い、trans−4−ヒドロキシけい皮酸メチルを用いる代わりに、trans−けい皮酸を等モル量用いて、合成例1と同様に縮合することで、光配向性モノマー2を得た。
[合成例3]光配向性モノマー3の合成
合成例1において、trans−4−ヒドロキシけい皮酸メチルを用いる代わりにエチレングリコールを等モル量用いて、合成例1と同様に縮合することで、光配向性モノマー誘導体2を得た。
合成例1において、4−ビニル安息香酸を用いる代わりに光配向性モノマー誘導体2を等モル量用い、trans−4−ヒドロキシけい皮酸メチルを用いる代わりに、trans−けい皮酸を等モル量用いて、合成例1と同様に縮合することで、光配向性モノマー3を得た。
[合成例4]熱架橋性モノマー1の合成
光配向性モノマー誘導体1を合成例2と同様にして得た。200mLフラスコ中、窒素雰囲気、氷零下において、光配向性モノマー誘導体1 14.0g(118mmol)をジメチルホルムアミド100mlに溶解し、水酸化ナトリウム7.07g(177mmol)を添加し、15分撹拌した後、2−クロロエタノール10.5g(130mmol)を約10分かけて滴下した。16時間撹拌した後、TLCにより反応の終了を確認し、酢酸エチルで抽出した後、飽和炭酸水素水溶液、1N塩酸、純水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶媒を留去し、乾燥させることで、熱架橋性モノマー1を得た。
各モノマーの構造を下記表1に示す。
合成した各モノマーは、日本電子(株)製JEOL JNM−LA400WBを用いて、1H NMR測定により、化学構造を確認した。
Figure 2016099389
[製造例1]共重合体1の合成
ヒドロキシエチルメタクリレート1.30g、光配向性モノマー1 3.08g、重合触媒としてα、α′−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)44mgをジオキサン25mlに溶解し、90℃にて6時間反応させた。反応終了後、再沈殿法により精製することで、共重合体1を得た。得られた共重合体の数平均分子量は20300であった。
[製造例2〜6および比較製造例1]共重合体2〜6および比較共重合体1の合成
表1に示す光配向性モノマーまたは4−(6−メタクリルオキシヘキシル−1−オキシ)ケイ皮酸メチルエステル(CIN)および表1に示す熱架橋性モノマーを用いて、製造例1と同様に共重合体2〜6および比較共重合体1を合成した。
各共重合体を下記表2に示す。
合成した各共重合体の数平均分子量(以下、Mnと称す)は、東ソー(株)製HLC−8220 GPCを用いて、ポリスチレンを標準物質とし、NMPを溶離液としてゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)にて算出した。
Figure 2016099389
[実施例1]
(熱硬化性組成物1の調製)
下記に示す組成の熱硬化性組成物1を調製した。
・共重合体1:0.1g
・ヘキサメトキシメチルメラミン(HMM):0.01g
・p−トルエンスルホン酸1水和物(PTSA):0.0015g
・2−ヒドロキシブチルアクリレート(HOB−A):0.05g
・プロピレングリコールメチルエーテル(PGME):3.05g
(配向層の形成)
ポリエチレンテレフタレート基材の一面に、実施例1で調製した熱硬化性組成物をバーコートにより塗布し、100℃のオーブンで1分間加熱乾燥させ、硬化膜を形成した。この硬化膜表面にHg−Xeランプおよびグランテーラープリズムを用いて313nmの輝線を含む偏光紫外線を基板法線から垂直方向に10mJ/cm照射することで、配向層を形成した。
(位相差層の形成)
下記式で表される液晶性モノマーをシクロヘキサノンに固形分15質量%となるように溶解した溶液に、BASF株式会社製の光重合開始剤イルガキュア184を5質量%添加し、重合性液晶組成物を調製した。
Figure 2016099389
ポリエチレンテレフタレート基材の配向層が形成された面に、上記重合性液晶組成物をバーコートにより、550nmの透過光に対する面内のリタデーションがR1(550)=250nmとなるように塗布し、70℃のオーブンで1分間加熱し塗膜を形成した。この基板に窒素雰囲気化でHg−Xeランプを用いて365nmの輝線を含む非偏光の紫外線300mJ/cmを重合性液晶組成物の塗布面に照射して、位相差層を形成した。これにより、転写用積層体を得た。
(転写)
被転写体として、光学用粘着剤(綜研化学(株)製、SKダイン)を塗布したガラス基材を用意した。転写用積層体を位相差層の面がガラス基材の粘着剤と接するように貼り付けた。その後、ポリエチレンテレフタレート基材側を剥離した。
[実施例2〜10および比較例1〜2]
下記表3に示す熱硬化性組成物の組成および配向層の形成条件にて、実施例1と同様に、実施例2〜10および比較例1〜2の熱硬化性組成物を調製して配向層を形成し、位相差層を形成して転写用積層体を作製し、転写を行った。
[評価]
(剥離界面の確認)
転写用積層体を被転写体に転写し、ポリエチレンテレフタレート基材側を剥離した後の、被転写体側およびポリエチレンテレフタレート基材側のそれぞれについて赤外吸収スペクトルを測定した。
剥離後のポリエチレンテレフタレート基材の位相差層が形成されていた面に対して赤外吸収スペクトルを測定したところ、実施例1〜10では、ポリエチレンテレフタレート基材由来のピーク以外は確認できなかった。一方、比較例1〜2では、ポリエチレンテレフタレート基材由来のピーク以外に、1504cm−1および1603cm−1に共重合体の光配向性構成単位に含まれる芳香族由来の伸縮振動による吸収、および1550cm−1に架橋剤に含まれるトリアジン環由来の吸収を確認した。
また、被転写体に転写された位相差層の面に対して赤外吸収スペクトルを測定したところ、実施例1〜10では、1504cm−1および1603cm−1に共重合体の光配向性構成単位に含まれる芳香族由来の伸縮振動による吸収、および1550cm−1に架橋剤に含まれるトリアジン環由来の吸収を確認した。また、比較例1〜2では、1504cm−1および1603cm−1に共重合体の光配向性構成単位に含まれる芳香族由来の伸縮振動による吸収、および1550cm−1に架橋剤に含まれるトリアジン環由来の吸収を確認した
これらのことより、実施例1〜10では、基材および配向層の界面で剥離していると考えられる。これに対し、比較例1〜2では、配向層および位相差層の密着性が弱く、転写面が部分的に変化してしまい、安定的に基材および配向層の界面で剥離できないことが明らかとなった。
(位相差(初期値)の測定)
被転写体に位相差層が転写された積層体について、位相差層の面に対して位相差層の面内リタデーションを、王子計測機器(株)社製の位相差測定装置KOBRA−WRを用いて測定した。
(湿熱耐久性)
被転写体に位相差層が転写された積層体を、80℃90%RHのオーブンに1日保管した。オーブンから取り出し、30分静置した後、上記と同様に位相差層の面内リタデーションを測定し、初期値と比較して評価した。
(粘着剤および接着剤に対する安定性)
ガラス基材上に光学用粘着剤(綜研化学(株)製、SKダイン)を塗布した第1対向基材を用意し、被転写体に位相差層が転写された積層体に対し、積層体の配向層の面が第1対向基材の粘着剤と接するように貼り付け、第1測定用積層体を得た。
また、ガラス基材上に光学用紫外線硬化接着剤(東亜合成(株)製、アロニックスLCR0628A)を塗布した第2対向基材を用意し、被転写体に位相差層が転写された積層体に対し、積層体の配向層の面が第2対向基材の接着剤と接するように貼り付け、第2測定用積層体を得た。
第1測定用積層体および第2測定用積層体について、上記と同様に位相差層の面内リタデーションを測定し、初期値と比較して評価した。
Figure 2016099389
1 … 転写用積層体
2 … 樹脂基材
3 … 配向層
4 … 位相差層
10 … 光学素子
11 … 被転写体
12 … 粘着層
13 … 光学部材

Claims (11)

  1. 樹脂基材と、
    前記樹脂基材上に形成され、下記式(1)で表される光配向性構成単位が有する光配向性基の光二量化構造または光異性化構造、および、熱架橋性構成単位が有する熱架橋性基の架橋構造を有する共重合体を含有する配向層と、
    前記配向層上に形成された位相差層と
    を有し、前記樹脂基材および前記配向層の剥離強度が前記配向層および前記位相差層の剥離強度よりも小さいことを特徴とする転写用積層体。
    Figure 2016099389
    (ここで、式(1)中、Xは光配向性基、Lは2価の連結基または単結合、Rは水素原子または1価の有機基、kは1〜5を表す。)
  2. 前記架橋構造が、前記熱架橋性構成単位が有する前記熱架橋性基と架橋剤とが結合した架橋構造であることを特徴とする請求項1に記載の転写用積層体。
  3. 前記光配向性基がシンナモイル基であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の転写用積層体。
  4. 前記熱架橋性基がヒドロキシ基であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の転写用積層体。
  5. 光学部材と、
    前記光学部材上に形成された位相差層と、
    前記位相差層上に形成され、下記式(1)で表される光配向性構成単位が有する光配向性基の光二量化構造または光異性化構造、および、熱架橋性構成単位が有する熱架橋性基の架橋構造を有する共重合体を含有する配向層と
    を有することを特徴とする光学素子。
    Figure 2016099389
    (ここで、式(1)中、Xは光配向性基、Lは2価の連結基または単結合、Rは水素原子または1価の有機基、kは1〜5を表す。)
  6. 前記架橋構造が、前記熱架橋性構成単位が有する前記熱架橋性基と架橋剤とが結合した架橋構造であることを特徴とする請求項5に記載の光学素子。
  7. 樹脂基材と、前記樹脂基材上に形成され、下記式(1)で表される光配向性構成単位および熱架橋性構成単位を有する共重合体を含有する光配向性を有する熱硬化性組成物から形成される配向層と、前記配向層上に形成された位相差層とを有し、前記樹脂基材および前記配向層の剥離強度が前記配向層および前記位相差層の剥離強度よりも小さい転写用積層体を準備する転写用積層体準備工程と、
    被転写体および前記転写用積層体の前記位相差層を対向させ、前記被転写体上に前記転写用積層体を転写する転写工程と、
    前記被転写体上に転写された前記転写用積層体から前記樹脂基材を剥離する剥離工程と
    を有することを特徴とする光学素子の製造方法。
    Figure 2016099389
    (ここで、式(1)中、Xは光配向性基、Lは2価の連結基または単結合、Rは水素原子または1価の有機基、kは1〜5を表す。)
  8. 前記光配向性を有する熱硬化性組成物が架橋剤をさらに含有することを特徴とする請求項7に記載の光学素子の製造方法。
  9. 前記光配向性基が光二量化反応または光異性化反応を生じる官能基であることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の光学素子の製造方法。
  10. 前記光配向性基がシンナモイル基であることを特徴とする請求項7から請求項9までのいずれかに記載の光学素子の製造方法。
  11. 前記熱架橋性構成単位が有する熱架橋性基がヒドロキシ基であることを特徴とする請求項7から請求項10までのいずれかに記載の光学素子の製造方法。
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