JP2016098152A - 脆性基板の分断方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】クラックを有しないトレンチラインに沿った分断を簡素な工程で行う。【解決手段】脆性基板11の縁EGに刃先を乗り上げさせることによって、縁EG上の始点N1に欠けが形成される。始点N1に乗り上げた刃先を移動させることによって、始点N1から終点N3まで第1のトレンチラインTLが形成される。第1のトレンチラインTLはクラックレス状態が得られるように形成される。脆性基板11に応力を加えることにより、欠けを起点としたクラックを始点N1から終点N3へ伸展させることによって、第1のトレンチラインTLに沿って脆性基板11が分断される。【選択図】図2

Description

本発明は、脆性基板の分断方法に関する。
フラットディスプレイパネルまたは太陽電池パネルなどの電気機器の製造において、ガラス基板などの脆性基板を分断することがしばしば必要となる。まず基板上にスクライブラインが形成され、次にこのスクライブラインに沿って基板が分断される。スクライブラインは、刃先を用いて基板を機械的に加工することによって形成され得る。刃先が基板上を摺動または転動することで、基板上に塑性変形によるトレンチが形成されると同時に、このトレンチの直下には垂直クラックが形成される。その後、ブレーク工程と称される応力付与がなされる。これにより上記垂直クラックを厚さ方向に完全に進行させることで、基板が分断される。
基板が分断される工程は、基板にスクライブラインを形成する工程の直後に行われることが比較的多い。しかしながら、スクライブラインを形成する工程とブレーク工程との間において基板を加工する工程を行なうことも提案されている。
たとえば国際公開第2002/104078号の技術によれば、有機ELディスプレイの製造方法において、封止キャップを装着する前に各有機ELディスプレイとなる領域毎にガラス基板上にスクライブラインが形成される。このため、封止キャップを設けた後にガラス基板上にスクライブラインを形成したときに問題となる封止キャップとガラスカッターとの接触を回避させることができる。
また、たとえば国際公開第2003/006391号の技術によれば、液晶表示パネルの製造方法において、2つのガラス基板が、スクライブラインが形成された後に貼り合わされる。これにより1度のブレーク工程で2枚の脆性基板を同時にブレークすることができる。
国際公開第2002/104078号 国際公開第2003/006391号
上記従来の技術によれば、脆性基板への加工がスクライブラインの形成後に行われ、その後の応力付与によりブレーク工程が行われる。このことは、脆性基板への加工時にスクライブライン全体に沿って垂直クラックが既に存在していることを意味する。よって、この垂直クラックの厚さ方向におけるさらなる伸展が加工中に意図せず発生することで、加工中は一体であるべき脆性基板が分離されてしまうことがあり得た。また、スクライブラインの形成工程と基板のブレーク工程との間に基板の加工工程が行われない場合においても、通常、スクライブラインの形成工程の後かつ基板のブレーク工程の前に基板の搬送または保管が必要であり、その際に基板が意図せず分断されてしまうことがあり得た。
上記課題を解決するために本発明者は独自の分断技術を開発してきた。この技術によれば、脆性基板が分断される位置を規定するラインとして、まず、その直下にクラックを有しないトレンチラインが形成される。トレンチラインが形成されることにより、脆性基板が分断されることになる位置が規定される。その後、トレンチラインの直下にクラックが存在していない状態が維持されていれば、トレンチラインに沿った分断が容易には生じにくい。この状態を用いることで、脆性基板が分断されることになる位置を予め規定しつつも、分断されるべき時点より前に脆性基板が意図せず分断されることを防ぐことができる。
上述したようにトレンチラインは、通常のスクライブラインに比して、それに沿った分断が発生しにくい。このことは、意図しない分断を防ぐ意味では有用である一方で、意図的な分断を行うには、それに適した特別な処理を必要とすることを意味する。脆性基板の分断方法を簡素化するためには、この処理が容易なものであることが望ましい。
本発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、その直下にクラックを有しないトレンチラインに沿った分断を簡素な工程で行うことができる脆性基板の分断方法を提供することである。
脆性基板の分断方法は、以下の工程を有する。縁を有する表面が設けられた脆性基板が準備される。次に、脆性基板へ刃先を押し付けながら脆性基板上で刃先が移動させられる。刃先を移動させる工程は、脆性基板の縁に刃先を乗り上げさせることによって、縁上の一の位置である始点に欠けを形成する工程と、欠けを形成する工程によって始点に乗り上げた刃先を脆性基板の表面上へ押し付けながら表面上で刃先を移動させることによって脆性基板の表面上に塑性変形を発生させることで、始点から表面上の他の位置である終点まで第1のトレンチラインを形成する工程とを含む。第1のトレンチラインを形成する工程は、第1のトレンチラインの直下において脆性基板が第1のトレンチラインと交差する方向において連続的につながっている状態であるクラックレス状態が得られるように行われる。次に、脆性基板に応力を加えることにより、欠けを起点としたクラックを始点から終点へ伸展させることによって、第1のトレンチラインに沿って脆性基板が分断される。
本発明によれば、第1のトレンチラインに沿ってクラックを伸展させるきっかけとして、脆性基板の縁に形成された欠けが用いられる。この欠けは、第1のトレンチラインの形成開始時に移動する刃先が脆性基板の縁を乗り上げるだけで形成される。よって第1のトレンチラインに沿った脆性基板の分断を簡素な工程で行うことができる。
本発明の実施の形態1における脆性基板の分断方法を概略的に示すフロー図である。 本発明の実施の形態1における脆性基板の分断方法の一工程を概略的に示す上面図である。 図2の線III−IIIに沿う視野で本発明の実施の形態1における脆性基板の分断方法の工程を順に示す概略部分断面図(A)〜(C)である。 図2の線IVA−IVAに沿う概略断面図でありクラックレス状態におけるトレンチラインの構成を示す図(A)、および、トレンチライン直下にクラックラインが形成された状態を同様の視野で示す断面図(B)である。 本発明の実施の形態1における脆性基板の分断方法の一工程を概略的に示す上面図である。 本発明の実施の形態1における脆性基板の分断方法に用いられるスクライビング器具の構成を概略的に示す側面図である。 図6におけるスクライビングホイールおよびピンの構成を概略的に示す正面図(A)、および図7(A)の部分拡大図(B)である。 本発明の実施の形態1における脆性基板の分断方法の一工程を概略的に示す断面図である。 本発明の実施の形態1における脆性基板の分断方法の一工程を概略的に示す断面図である。 図9の矢印Xに対応する視野による概略的な側面図である。 本発明の実施の形態1における脆性基板の分断方法の一工程を概略的に示す断面図である。 本発明の実施の形態1における脆性基板の分断方法の一工程を概略的に示す断面図である。 本発明の実施の形態2における脆性基板の分断方法の一工程を概略的に示す上面図である。 本発明の実施の形態3における脆性基板の分断方法の一工程を概略的に示す上面図である。 本発明の実施の形態3における脆性基板の分断方法の一工程を概略的に示す上面図である。 本発明の実施の形態3における脆性基板の分断方法の一工程を概略的に示す上面図である。 本発明の実施の形態4における脆性基板の分断方法の一工程を概略的に示す部分上面図(A)〜(D)である。 図17(A)の線XVIIIA−XVIIIAに沿う概略部分断面図(A)、図17(B)の線XVIIIB−XVIIIBに沿う概略部分断面図(B)、図17(C)の線XVIIIC−XVIIICに沿う概略部分断面図(C)、および図17(D)の線XVIIID−XVIIIDに沿う概略部分断面図(D)である。 本発明の実施の形態5における脆性基板の分断方法に用いられるスクライビング器具の構成を概略的に示す側面図(A)、および図19(A)の矢印XIXに対応する視野による刃先の底面図(B)である。 本発明の実施の形態5の変形例における脆性基板の分断方法に用いられるスクライビング器具の構成を概略的に示す側面図(A)、および図20(A)の矢印XXに対応する視野による刃先の底面図(B)である。
以下、図面に基づいて本発明の各実施の形態における脆性基板の分断方法について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態におけるガラス基板11(脆性基板)の分断方法を概略的に示すフロー図である。図2は、ステップS20(図1)直後の状態を概略的に示す上面図である。図3は、図2の線III−IIIに沿う視野で工程を順に示す概略部分断面図(A)〜(C)である。
まずガラス基板11が準備される(図1:ステップS10)。ガラス基板11は、縁EGを有する上面SF1(表面)と、下面SF2とを有する。またガラス基板11は、上面SF1に垂直な厚さ方向DTを有する。また刃先が設けられたスクライビングホイール51Rを有するスクライビング器具が準備される。スクライビング器具の詳細については後述する。
次に、矢印M1(図3(A))に示すスクライビングホイール51Rの移動により、その刃先がガラス基板11の上面SF1の縁EGに接触する。次に、ガラス基板11へ刃先を押し付けながらガラス基板11上で刃先が移動させられる(図1:ステップS20)。以下、その工程について説明する。
まず、矢印M2(図3(B))に示すスクライビングホイール51Rの移動により、ガラス基板11の縁EGに刃先が乗り上げる。これにより、縁EG上の一の位置である始点N1(図2)に欠けCP(図3(C))が形成される(図1:ステップS20C)。
次に、上記のように欠けCPを形成する工程によって始点N1に乗り上げた刃先をガラス基板11の上面SF1上へ押し付けながら、矢印M3(図3(C))に示すように、上面SF1上で、刃先が設けられたスクライビングホイール51Rが移動させられる。これによって、ガラス基板11の上面SF1上に塑性変形が発生する。その結果、始点N1から、上面SF1上の他の位置である終点N3まで、トレンチラインTL(第1のトレンチライン)が形成される(図1:ステップS20T)。
図4(A)を参照して、トレンチラインTLを形成する工程は、トレンチラインTLの直下においてガラス基板11がトレンチラインTLと交差する方向DCにおいて連続的につながっている状態であるクラックレス状態が得られるように行われる。クラックレス状態においては、塑性変形によるトレンチラインTLは形成されているものの、それに沿ったクラックは形成されていない。よってガラス基板11に曲げモーメントが加わっても、トレンチラインTLに沿った分断は容易には生じない。クラックレス状態を得るためには、刃先がガラス基板11に押し付けられる荷重が過度に大きくならないようにすればよい。なお図4(B)は、図4(A)の比較例を示すものであり、トレンチラインTLと、それに沿ってその直下に延びるクラックであるクラックラインCLとが形成された状態を示す。
上述したトレンチラインTLの形成工程が必要に応じて繰り返されることにより、所望の数のトレンチラインが形成され得る。図2は、3つのトレンチラインTLが形成される場合を例示している。
図5を参照して、次にブレーク工程が行われる。具体的には、ガラス基板11に応力を加えることにより、欠けCPを起点としたクラックを始点N1から終点N3へ伸展させることによって、トレンチラインTLに沿ってガラス基板11が分断される(図1:ステップS30)。ブレーク工程はトレンチラインTLの数に応じて複数回行い得る。なおブレーク工程のより詳細な方法は後述する。
以上により、トレンチラインTLに沿ってガラス基板11が分断される。
図6および図7を参照して、次に、上述したスクライビングホイール51Rを有するスクライビング器具50Rの詳細について、以下に説明する。
スクライビング器具50Rは、スクライブヘッド(図示せず)に取り付けられることによってガラス基板11に対して相対的に移動することにより、ガラス基板11に対するスクライブを行うものである。スクライビング器具50Rは、スクライビングホイール51Rと、ホルダ52Rと、ピン53とを有する。スクライビングホイール51Rは、おおよそ円盤状の形状を有しており、その直径は、典型的には数mm程度である。スクライビングホイール51Rは、ホルダ52Rにピン53を介して、回転軸RX周りに回転可能に保持されている。
スクライビングホイール51Rは、刃先が設けられた外周部PFを有する。外周部PFは、回転軸RX周りに円環状に延びている。外周部PFは、図7(A)に示すように、目視レベルでは稜線状に切り立っており、それによって、稜線と傾斜面とからなる刃先を構成している。一方、顕微鏡レベルでは、スクライビングホイール51Rがガラス基板11内へ侵入することによって実際に作用する部分(図7(B)の二点鎖線よりも下方)において外周部PFの稜線は微細な表面形状MSを有する。表面形状MSは、正面視(図7(B))において、有限の曲率半径を有する曲線形状を有することが好ましい。
スクライビングホイール51Rは、超硬合金、焼結ダイヤモンド、多結晶ダイヤモンドまたは単結晶ダイヤモンドなどの硬質材料を用いて形成されている。上述した稜線および傾斜面の表面粗さを小さくする観点でスクライビングホイール51R全体が単結晶ダイヤモンドから作られてもよい。
次にスクライビング器具50Rの使用方法について説明する。スクライビング器具50Rの刃先をガラス基板11の表面SF1上において移動させることにより(図6参照)、トレンチラインTL(図3(C))を形成するスクライブが行われる。この際、刃先に加えられる荷重Fは、ガラス基板11の厚さ方向DTに平行な垂直成分Fpと、上面SF1に平行な面内成分Fiとを有する。スクライビングホイール51Rの転動(矢印RT)によるスクライビングホイール51Rの進行方向DBは面内成分Fiの方向と同じである。言い換えれば、トレンチラインTLの形成方向は、面内成分Fiの方向と同じである。
次に本実施の形態におけるブレーク工程に特に適した方法について、以下に説明する。
図8を参照して、ガラス基板11の上面SF1が敷物81を介してテーブル80に対向するように、トレンチラインTLが形成されたガラス基板11(図2)が敷物81を介してテーブル80上に置かれる。敷物81は、ガラス基板11およびテーブル80の材料に比して変形しやすい材料からなる。
図9および図10を参照して、ブレークバー85が準備される。ブレークバー85は、図10に示すように、ガラス基板11の表面を局所的に押し付けることができるように突出した形状を有することが好ましく、図10においては略V字状の形状を有する。図9に示すように、この突出部分は直線状に延在している。
次に、ブレークバー85がガラス基板11の下面SF2の一部に接触させられる。この接触部分は、下面SF2のうち厚さ方向(図9における縦方向)において欠けCPと対向する対向部分SF2Cから離れている。
次に、矢印CT1に示すように、上記接触部分が、トレンチラインTLに沿って拡張され、対向部分SF2Cの方へ近づく。上述した最初の接触時、またはそれに続く接触部分の拡張によって、ブレークバー85が下面SF2において、トレンチラインTLに対向する部分に接触し、かつ欠けCPに対向する部分からは離れた状態が生じる。
図11を参照して、矢印CT2に示すように、上記接触部分が対向部分SF2Cに達する。言い換えれば、ブレークバー85は、前述した工程によってトレンチラインTLに先に応力を印加し、その後、さらに欠けCPにも同時に応力を印加する。この応力により欠けCPからトレンチラインTLに沿ってクラックが伸展する(図12の矢印PR参照)。
以上のブレーク工程により、ガラス基板11の分断(図5)が行われる。
本実施の形態によれば、トレンチラインTLに沿ってクラックを伸展させるきっかけとして、ガラス基板11の縁EGに形成された欠けCPが用いられる。この欠けCPは、トレンチラインTLの形成開始時に移動する刃先がガラス基板11の縁EGを乗り上げるだけで形成される。よってトレンチラインTLに沿ったガラス基板11の分断を簡素な工程で行うことができる。
また欠けCPの形成には、スクライビングホイール51Rの刃先、すなわち回転する刃先、が用いられる。これにより、ダイヤモンドポイントのような固定された刃先が用いられる場合に比して、ガラス基板11の縁EGに刃先が乗り上げる際に刃先が受けるダメージが抑制される。
(実施の形態2)
図13を参照して、本実施の形態においては、トレンチラインTLの一部として高荷重区間HRを形成する工程と、トレンチラインTLの一部として低荷重区間LRを形成する工程とが行われる。高荷重区間HRは、始点N1から、始点N1と終点N3との間の途中点N2まで形成される。低荷重区間LRは途中点N2から終点N3まで形成される。低荷重区間LRを形成する工程において刃先に加えられる荷重は、高荷重区間HRを形成する工程で用いられる荷重よりも低い。
なお、上記以外の構成については、上述した実施の形態1の構成とほぼ同じであるため、同一または対応する要素について同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
本実施の形態によれば、トレンチラインTLのうち欠けCPから延びる部分である高荷重区間HRが、高荷重による塑性変形で形成される。これにより、低荷重区間LRで用いられる低荷重による塑性変形でトレンチラインTL全体が形成される場合に比して、欠けCPからトレンチラインTLへクラックが発生しやすくなる。よってブレーク工程(図8〜図12)において、欠けCPをきっかけとしたクラックをより確実に発生させることができる。よってこのクラックの伸展を用いた、トレンチラインTLに沿ったガラス基板11の分断をより確実に行うことができる。
なお図2においては終点N3がガラス基板11の縁EGから離れているが、終点N3はガラス基板11の縁EG上(図2の例においてはガラス基板11の表面SF1の右辺の縁上)に位置してもよい。
(実施の形態3)
図14を参照して、まず、実施の形態1とほぼ同様の方法により、その始点に欠けCPを伴い、かつ終点まで延びるトレンチラインTLが、方向DLへ向けて形成される。
図15を参照して、次に、荷重を加えることによって刃先をガラス基板11の上面SF1上へ押し付けながら、上面SF1上で刃先が方向DMへ向けて移動させられる。これによってガラス基板11の上面SF1上に塑性変形を発生させることで、トレンチラインTM(第2のトレンチライン)が点T1およびT6の間に形成される。トレンチラインTMの形成は、トレンチラインTL(図4(A))に関して実施の形態1において説明したのと同様に、トレンチラインTMに関してクラックレス状態が得られるように行われる。
点T1および点T2の間と、点T3およびT4の間と、点T5およびT6の間は、トレンチラインTMの一部として高荷重区間HRが形成される。点T2およびT3の間と、点T4およびT5の間は、トレンチラインTMの一部として低荷重区間LRが形成される。高荷重区間HRを形成する工程において刃先に加えられる荷重は、低荷重区間LRを形成する工程で用いられる荷重よりも高い。高荷重区間HRはトレンチラインTLと交差する。なおトレンチラインTMの形成方法は、トレンチラインTLの形成方法と同様のものを用いることができる。
次に、実施の形態1と同様のブレーク工程により、欠けCPを起点としてトレンチラインTLに沿ってクラックが伸展させられる。これによりトレンチラインTLに沿ってガラス基板11が分断される(図16)。この分断をきっかけとしてトレンチラインTMのうち高荷重区間HRにのみクラックが伸展する。この結果、トレンチラインTMの一部に沿ってクラックラインCLが形成される。具体的には、分断によって新たに生じた辺と、その辺を挟む1対の途中点のうちの一方との間の部分において、高荷重区間HRにクラックラインCLが形成される。
なお分断によって新たに生じた辺と、その辺を挟む1対の途中点のうちの他方との間の部分においては、高荷重区間HRであってもクラックラインCLが形成されにくい。この理由は、クラックラインCLに沿ったクラックの伸展のしやすさに方向依存性があるためである。この方向依存性は、ガラス基板11がスクライブされた際に生じる内部応力の分布に起因すると推測される。
高荷重区間HRにおいては、図4(B)に示すように、ガラス基板11はトレンチラインTMの直下においてクラックラインCLによって、トレンチラインTMの延在方向と交差する方向DCにおいて連続的なつながりが断たれている。ここで「連続的なつながり」とは、言い換えれば、クラックによって遮られていないつながりのことである。なお、上述したように連続的なつながりが断たれている状態において、クラックラインCLのクラックを介してガラス基板11の部分同士が接触していてもよい。
次に、実施の形態1と同様のブレーク工程によりガラス基板11に応力を加えることによって、クラックラインCLを起点として低荷重区間LRに沿ってクラックが伸展する。これにより、トレンチラインTMに沿ってガラス基板11が分断される。すなわち、前述したトレンチラインTLに沿った分断に加えてさらに、トレンチラインTMに沿った分断が行われる。
本実施の形態によれば、実施の形態1とほぼ同様の効果が得られる。またガラス基板11が分断される位置を、トレンチラインTLと、それに交差するトレンチラインTMとによって規定することができる。
(実施の形態4)
図17(A)および図18(A)を参照して、はじめに、本実施の形態におけるガラス基板11の分断装置について説明する。
分断装置は、スクライビング器具50Rと、コンベア70と、ブレークローラ61と、補助ローラ62とを有する。コンベア70は、ガラス基板11の上面SF1を露出しつつガラス基板11を方向CVへ搬送するものである。スクライビング器具50Rはスクライブヘッド(図示せず)に固定されており、コンベア70によって移動させられるガラス基板11と接触することによって、ガラス基板11の上面SF1をスクライブするものである。
ブレークローラ61は、ブレーク工程を行うためにガラス基板11の下面SF2を局所的に押し付ける部材である。補助ローラ62は、ブレークローラ61による下面SF2上への押し付けが行えるよう、反対面である上面SF1上でガラス基板11に接触するローラである。ブレークローラ61による押し付けによってガラス基板11が安定的に撓むことができるように、平面レイアウト(図17(A))において補助ローラ62はブレークローラ61と異なる位置に配置されており、好ましくは、回転軸方向(図17(A)における縦方向)においてブレークローラを挟むように配置されている。
なお、図17(A)および図18(A)において図を見やすくするために、コンベア70は二点鎖線によって模式的に示している。他の図においても同様である。
次に、上述した分断装置による分断方法について、以下に説明する。
コンベア70の搬送方向CVへの移動に従って、ガラス基板11が搬送方向CVへ搬送される。これにより、スクライビング器具50Rが有するスクライビングホイール51Rの刃先がガラス基板11の縁EGから上面SF1上へ乗り上げる。この乗り上げにより、ガラス基板11の縁EGに欠けCPが形成される。
上面SF1上に乗り上げた刃先は、ガラス基板11の搬送方向CVへの移動により、ガラス基板11の上面SF1に対して相対的に搬送方向CVと反対方向に移動する。上面SF1に対する刃先の相対的な移動方向は、方向DB(図17(A))に対応するものとされる。この移動中、刃先に荷重が加えられることで、上面SF1上に、欠けCPの位置を始点として有する、トレンチラインTLの高荷重区間HRが形成される。
図17(B)および図18(B)を参照して、ガラス基板11がさらに搬送された後、刃先に加えられる荷重が高荷重区間HRにおけるものよりも小さくされることにより、トレンチラインTLの低荷重区間LRの形成が開始される。
図17(C)および図18(C)を参照して、ガラス基板11がさらに搬送されることで、ブレークローラ61および補助ローラ62による、欠けCPが設けられた高荷重区間HRへの応力印加が行われる。これにより、欠けCPからクラックが伸展し、その結果、高荷重区間HRにクラックラインCLが形成される。図18(C)においては、クラックラインCLはガラス基板11を厚さ方向に貫通して下面SF2にまで達している。
図17(D)および図18(D)を参照して、ガラス基板11がさらに搬送されることで、ブレークローラ61および補助ローラ62による、低荷重区間LRへの応力印加が開始される。低荷重区間LRのうち応力印加を受けた部分まで、上述したクラックラインCLからクラックが伸展する。以降、ガラス基板11の搬送の進行に従って、低荷重区間LRにおいてクラックが伸展する。
クラックが伸展させられている際に、スクライビング器具50Rにより低荷重区間LRが形成されることで、低荷重区間LRが延長される。これにより、トレンチラインTLの終点が始点から遠ざかりつつ、トレンチラインTLが延長された長さに応じてガラス基板11の分断が進行する。すなわちガラス基板11の連続的な分断が進行する。
本実施の形態によれば、欠けCPをきっかけとして伸展するクラックを用いて、ガラス基板11を連続的に分断することができる。これにより、ガラス基板11の長さについての制約を受けずにガラス基板11を分断することができる。
また、高荷重区間HRと異なり低荷重区間LRにおいては、ブレークローラ61による応力印加を未だ受けていない部分にまでクラックが伸展しにくい。よって、図18(D)に示す連続分断工程において、クラックが刃先に達したり、さらに刃先の位置を超えて伸展したりすることが防止される。これにより、ガラス基板11の連続的な分断を安定的に行うことができる。
(実施の形態5)
図19(A)および(B)を参照して、ガラス基板11の縁EGに刃先が乗り上げる際のダメージが特に問題とならない場合は、固定された刃先を有するスクライビング器具50(図19(A)および(B))が用いられてもよい。
スクライビング器具50は、スクライブヘッド(図示せず)に取り付けられることによってガラス基板11に対して相対的に移動することにより、ガラス基板11に対するスクライブを行うものである。スクライビング器具50は刃先51およびシャンク52を有する。刃先51は、シャンク52に保持されている。
刃先51には、天面SD1(第1の面)と、天面SD1を取り囲む複数の面とが設けられている。これら複数の面は側面SD2(第2の面)および側面SD3(第3の面)を含む。天面SD1、側面SD2およびSD3は、互いに異なる方向を向いており、かつ互いに隣り合っている。刃先51は、天面SD1、側面SD2およびSD3が合流する頂点を有し、この頂点によって刃先51の突起部PPが構成されている。また側面SD2およびSD3は、刃先51の側部PSを構成する稜線をなしている。側部PSは突起部PPから線状に延びている。また側部PSは、上述したように稜線であることから、線状に延びる凸形状を有する。
刃先51はダイヤモンドポイントであることが好ましい。すなわち刃先51はダイヤモンドから作られていることが好ましい。この場合、容易に、硬度を高く、表面粗さを小さくすることができる。より好ましくは刃先51は単結晶ダイヤモンドから作られている。さらに好ましくは結晶学的に言って、天面SD1は{001}面であり、側面SD2およびSD3の各々は{111}面である。この場合、側面SD2およびSD3は、異なる向きを有するものの、結晶学上、互いに等価な結晶面である。
なお単結晶でないダイヤモンドが用いられてもよく、たとえば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法で合成された多結晶体ダイヤモンドが用いられてもよい。あるいは、微粒のグラファイトや非グラファイト状炭素から、鉄族元素などの結合材を含まずに焼結された多結晶体ダイヤモンド、またはダイヤモンド粒子を鉄族元素などの結合材によって結合させた焼結ダイヤモンドが用いられてもよい。
シャンク52は軸方向AXに沿って延在している。刃先51は、天面SD1の法線方向が軸方向AXにおおよそ沿うようにシャンク52に取り付けられることが好ましい。
スクライビング器具50を用いたトレンチラインTLの形成においては、押し付けられた刃先51が上面SF1上で方向DBへ摺動させられる。方向DBは、突起部PPから側部PSに沿って延びる方向を上面SF1上に射影した方向と反対の方向であり、軸方向AXを上面SF1上へ射影した方向と反対の方向におおよそ対応している。
なおトレンチラインTM(図15)の形成時のように、ガラス基板11の縁EGに欠けCPを形成する必要がない場合は、刃先51が方向DBと反対の方向DAに摺動されてもよい。この場合、ガラス基板11の上面SF1上での刃先の移動方向は逆(図15においては方向DMと反対の方向)とされる。
スクライビング器具50Rとスクライビング器具50とが、トレンチラインによって使い分けられてもよい。特に、実施の形態3において、トレンチラインTLの形成がスクライビング器具50Rによって行われる一方で、刃先の乗り上げを伴わないトレンチラインTMの形成がスクライビング器具50によって行われてもよい。
図20(A)および(B)を参照して、本実施の形態の変形例として、スクライビング器具50vが用いられてもよい。スクライビング器具50vの刃先51vは、頂点と、円錐面SCとを有する円錐形状を有する。刃先51vの突起部PPvは頂点で構成されている。刃先の側部PSvは頂点から円錐面SC上に延びる仮想線(図20(B)における破線)に沿って構成されている。これにより側部PSvは、線状に延びる凸形状を有する。
上記各実施の形態による脆性基板の分断方法はガラス基板に対して特に好適に適用されるが、脆性基板は、ガラス以外の材料から作られていてもよい。たとえば、ガラス以外の材料として、セラミックス、シリコン、化合物半導体、サファイア、または石英が用いられてもよい。
N1 始点
N2 途中点
N3 終点
EG 縁
CL クラックライン
CP 欠け
SF1 上面(表面)
HR 高荷重区間
SF2 下面
LR 低荷重区間
TL トレンチライン(第1のトレンチライン)
TM トレンチライン(第2のトレンチライン)
11 ガラス基板(脆性基板)
50,50R,50v スクライビング器具
51,51v 刃先
51R スクライビングホイール
52 シャンク
52R ホルダ
53 ピン
61 ブレークローラ
62 補助ローラ
70 コンベア
80 テーブル
81 敷物
85 ブレークバー

Claims (5)

  1. 縁を有する表面が設けられた脆性基板を準備する工程と、
    前記脆性基板へ刃先を押し付けながら前記脆性基板上で前記刃先を移動させる工程とを備え、前記刃先を移動させる工程は、
    前記脆性基板の前記縁に前記刃先を乗り上げさせることによって、前記縁上の一の位置である始点に欠けを形成する工程と、
    前記欠けを形成する工程によって前記始点に乗り上げた前記刃先を前記脆性基板の前記表面上へ押し付けながら前記表面上で前記刃先を移動させることによって前記脆性基板の前記表面上に塑性変形を発生させることで、前記始点から前記表面上の他の位置である終点まで第1のトレンチラインを形成する工程とを含み、前記第1のトレンチラインを形成する工程は、前記第1のトレンチラインの直下において前記脆性基板が前記第1のトレンチラインと交差する方向において連続的につながっている状態であるクラックレス状態が得られるように行われ、さらに
    前記脆性基板に応力を加えることにより、前記欠けを起点としたクラックを前記始点から前記終点へ伸展させることによって、前記第1のトレンチラインに沿って前記脆性基板を分断する工程を備える、脆性基板の分断方法。
  2. 前記刃先を移動させる工程は、回転軸周りに外周部を有するスクライビングホイールを用いて行われ、前記刃先は前記外周部に設けられている、請求項1に記載の脆性基板の分断方法。
  3. 前記第1のトレンチラインを形成する工程は、
    前記始点から前記始点と前記終点との間の途中点まで、前記第1のトレンチラインの一部として高荷重区間を形成する工程と、
    前記途中点から前記終点まで、前記第1のトレンチラインの一部として低荷重区間を形成する工程とを含み、前記低荷重区間を形成する工程において前記刃先に加えられる荷重は、前記高荷重区間を形成する工程で用いられる荷重よりも低い、請求項1または2に記載の脆性基板の分断方法。
  4. 荷重を加えることによって刃先を前記脆性基板の前記表面上へ押し付けながら前記表面上で前記刃先を移動させることによって前記脆性基板の前記表面上に塑性変形を発生させることで第2のトレンチラインを形成する工程をさらに備え、前記第2のトレンチラインを形成する工程は、前記第2のトレンチラインの直下において前記脆性基板が前記第2のトレンチラインと交差する方向において連続的につながっている状態であるクラックレス状態が得られるように行われ、前記第2のトレンチラインを形成する工程は、
    前記第2のトレンチラインの一部として低荷重区間を形成する工程と、
    前記第2のトレンチラインの一部として高荷重区間を形成する工程とを含み、前記高荷重区間を形成する工程において前記刃先に加えられる荷重は、前記低荷重区間を形成する工程で用いられる荷重よりも高く、前記高荷重区間は前記第1のトレンチラインと交差し、さらに
    前記第1のトレンチラインに沿って前記脆性基板を分断する工程をきっかけとして前記第2トレンチラインのうち前記高荷重区間にのみクラックが伸展することによって、前記第2のトレンチラインの一部に沿ってクラックラインを形成する工程と、
    前記脆性基板に応力を加えることによって前記クラックラインを起点として前記低荷重区間に沿ってクラックを伸展させることにより、前記第2のトレンチラインに沿って前記脆性基板を分断する工程とを備える、請求項1から3のいずれか1項に記載の脆性基板の分断方法。
  5. 前記第1のトレンチラインに沿って前記脆性基板を分断する工程において前記クラックが伸展している際に、前記第1のトレンチラインを形成する工程により前記第1のトレンチラインが延長される、請求項1から3のいずれか1項に記載の脆性基板の分断方法。
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