JP2016094955A - 電動式直動アクチュエータおよび電動式ブレーキ装置 - Google Patents

電動式直動アクチュエータおよび電動式ブレーキ装置 Download PDF

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Abstract

【課題】外輪部材の弾性変形による拡径によってその外輪部材の直線運動が阻害されるのを抑制する。【解決手段】ハウジング20内に軸方向に移動可能な外輪部材21を組込み、その外輪部材21の軸心上に電動モータによって回転駆動される回転軸34を設ける。回転軸34を中心にして回転自在に支持されたキャリア40で遊星ローラ49を回転自在に支持する。遊星ローラ49の外径面に外輪部材21の内径面に設けられた螺旋突条51に係合する円周溝52を形成し、回転軸34の回転により、その回転軸34との摩擦接触により遊星ローラ49を自転および公転させて外輪部材21を軸方向に直線移動させる。シリンダ室20aの内径面と外輪部材21の外径面間に形成されたスライド案内すき間の軸方向長さの範囲で、少なくとも遊星ローラ49と対応する部位のスライド案内すき間を量増しすき間ばめ部g1とする。【選択図】図2

Description

この発明は、電動モータの回転運動を直線運動に変換してブレーキパッド等の被駆動部材を直線駆動する電動式直動アクチュエータおよびその電動式直動アクチュエータを用いた電動式ブレーキ装置に関する。
電動モータのロータ軸の回転運動を運動変換機構により直線運動に変換して軸方向に移動自在に支持された被駆動部材を直線駆動する電動式直動アクチュエータとして下記の特許文献1および特許文献2に記載されたものが従来から知られている。
特許文献1および特許文献2に記載された電動式直動アクチュエータにおいては、ハウジングに形成された円筒状のシリンダ室内に外輪部材を摺動自在に組み込み、その外輪部材の軸心上に電動モータによって回転駆動される回転軸を設け、その回転軸と外輪部材との間に組込まれた遊星ローラを上記回転軸を中心にして回転自在に支持されたキャリアで回転自在に支持し、上記回転軸の回転により、その回転軸との摩擦接触によって遊星ローラを自転させつつ公転させ、その遊星ローラの外径面に形成された螺旋溝または円周溝と外輪部材の内径面に設けられた螺旋突条のねじ係合によって外輪部材を軸方向に直線移動させるようにしている。
上記電動式直動アクチュエータにおいては、遊星ローラに設けられた螺旋溝または円周溝と外輪部材に設けられた螺旋突条のねじ係合によって外輪部材を軸方向に直線移動させる構成であるため、遊星歯車式等の減速機構を別途組み込むことなく大きな増力機能を確保することができ、直動ストロークが比較的小さい電動式ブレーキ装置への採用に好適であるという特徴を有している。
特開2011−179535号公報 特開2012−149747号公報
ところで、特許文献1および特許文献2に記載された電動式直動アクチュエータにおいては、外輪部材を円滑に軸方向に摺動させるため、ハウジングにおけるシリンダ室の内径面に対して外輪部材をすき間ばめによる嵌めい合いとして、シリンダ室の内径面と外輪部材の外径面間にスライド案内すき間を設けている。そのスライド案内すき間は、外輪部材を円滑に摺動させる上において大きいほど外輪部材に作用するスライド抵抗が低減して好ましいが、大きくなり過ぎると、外輪部材がガタツキ、また、スキューする可能性があるため、普通、数十μm程度とされている。
しかし、上記のような大きさのスライド案内すき間においては、以下のような問題が生じる可能性がある。すなわち、外輪部材によりブレーキパッドを直線駆動し、そのブレーキパッドでディスクロータを押圧して、そのディスクロータに制動力を付与する電動式ブレーキ装置への電動式アクチュエータの採用において、ブレーキパッドがディスクロータを押圧する制動時、制動力が大きくなるにつれて遊星ローラから外輪部材に負荷される軸方向荷重が次第に大きくなる。また、ブレーキパッドから外輪部材に反力として軸方向荷重が負荷される。
このとき、外輪部材に負荷される軸方向荷重は、外輪部材の内径面に設けられた断面V字形の螺旋突条と遊星ローラの外径面に形成された断面V字形の螺旋溝または円周溝のテーパ面からなるねじ係合部に作用し、その軸方向荷重の一部は径方向の分力となって外輪部材を径方向外方に向けて押圧する。その押圧により外輪部材が径方向外方に向けて弾性変形して拡径し、その拡径部がスライド案内すき間を減少させ、場合によっては負のスライド案内すき間を形成して外輪部材の直線運動を阻害する。
また、ディスクロータの制動時、ディスクロータとの接触によってブレーキパッドに連れ回り力が負荷され、そのブレーキパッドを介して外輪部材に接線力が負荷される。その接線力の負荷により外輪部材がスキューし、外輪部材の拡径部がハウジングにおけるシリンダ室の内径面に強く接触する状態で摺動して、外輪部材の直線運動を阻害し、ときには接触部で摩耗や焼き付きを生じさせる可能性がある。
この発明の課題は、外輪部材の弾性変形による拡径によって直線運動が阻害されるのを抑制することである。
上記の課題を解決するため、この発明に係る電動式直動アクチュエータにおいては、ハウジングに形成された円筒状のシリンダ室内に円筒状の外輪部材をすき間ばめの嵌め合いをもってスライド自在に組込み、その外輪部材の軸心上に電動モータによって回転駆動される回転軸を設け、その回転軸の外径面と前記外輪部材の内径面間に組み込まれた遊星ローラを前記回転軸を中心にして回転自在に支持されたキャリアによって回転自在に支持し、その遊星ローラの外径面には前記外輪部材の内径面に設けられた螺旋突条に噛合する螺旋溝または円周溝を形成し、前記回転軸の回転により、その回転軸との摩擦接触により遊星ローラを自転および公転させて前記外輪部材を軸方向に直線移動させるようにした電動式直動アクチュエータにおいて、前記シリンダ室に対する外輪部材のすき間ばめ部を、少なくとも前記遊星ローラと対応する部位でのすき間量が前記外輪部材の弾性変形による拡径を吸収可能とするすき間量を径方向に量増した量増しすき間ばめ部とした構成を採用したのである。
また、この発明に係る電動式ブレーキ装置においては、電動式直動アクチュエータによりブレーキパッドを直線駆動し、そのブレーキパッドでディスクロータを押圧して、そのディスクロータに制動力を付与するようにした電動式ブレーキ装置において、前記電動式直動アクチュエータとしてこの発明に係る電動式直動アクチュエータを用いた構成を採用したのである。
上記の構成からなる電動式直動アクチュエータにおいて、電動モータの駆動により回転軸を回転すると、その回転軸との摩擦接触により遊星ローラが自転しつつ公転し、遊星ローラの外径面に形成された螺旋溝または円周溝と外輪部材の内径面に設けられた螺旋突条のねじ係合により外輪部材が軸方向に直線移動する。
このため、外輪部材またはキャリアに電動式ブレーキ装置のブレーキパッドを接続することにより、ブレーキパッドを直線駆動してディスクロータに押し付けることができ、ディスクロータに制動力を付与することができる。
ここで、ブレーキパッドがディスクロータを押圧する制動時、制動力が大きくなるにつれて遊星ローラから外輪部材に負荷される軸方向荷重が次第に大きくなる。その軸方向荷重は、外輪部材の内径面に設けられた断面V字形の螺旋突条と遊星ローラの外径面に形成された断面V字形の螺旋溝または円周溝のテーパ面からなるねじ係合部に作用し、その軸方向荷重の一部が径方向の分力となって外輪部材を径方向外方に向けて押圧する。その押圧により外輪部材が径方向外方に弾性変形して拡径する。
このとき、シリンダ室と外輪部材の相互において、シリンダ室に対する外輪部材の嵌め合い部が、少なくとも遊星ローラと対応する部位でのすき間量が外輪部材の弾性変形による拡径を吸収可能とするすき間量を径方向に量増した量増しすき間ばめ部とされているため、その量増しすき間ばめ部によって外輪部材の弾性変形による拡径部が吸収される。このため、外輪部材の拡径部がシリンダ室の内径面に強く接触するのが抑制され、外輪部材は直線運動が阻害されることはなく円滑に直線運動する。
ここで、ディスクロータの制動時、ディスクロータとの接触によってブレーキパッドに連れ回り力が負荷され、そのブレーキパッドと外輪部材の接触部に接線力が負荷される。このとき、ハウジングの開口端部における嵌め合いすき間が大きい場合に、接線力の負荷により外輪部材がスキューして、遊星ローラの外径面に形成された螺旋溝または円周溝と外輪部材の内径面に設けられた螺旋突条のねじ係合で負担する荷重に差が生じ、ねじ係合部の耐久性を低下させることになる。
そこで、量増しすき間ばめ部の軸方向位置を、ハウジングの開口端から遊星ローラのハウジング開口端側の軸端面までの部位を除く他の部位とするのがよい。このようにすると、ハウジングの開口端部におけるスライド案内すき間を微小な径方向すき間とすることができるため、外輪部材のスキューを抑制し、ねじ係合部の損傷防止に効果を挙げることができる。
また、量増しすき間ばめ部の軸方向位置を、外輪部材のスライド領域内とすることにより、上記シリンダ室の量増しすき間ばめ部の軸方向両側部における内径面で外輪部材の外径面を確実に摺動案内することができ、外輪部材のスキューをより効果的に抑制することができる。同時に、外輪部材が外方に大きく直線移動した場合でも、そのスライド方向の後端部外周が量増しすき間ばめ部に対向して嵌まり込むことがないため、ディスクロータから外輪部材に負荷された接線力によって外輪部材に抉れが生じるのを防止することができる。
この発明に係る電動式直動アクチュエータにおいては、上記のように、シリンダ室と外輪部材の相互において、シリンダ室に対する外輪部材の嵌め合いを、少なくとも遊星ローラと対応する部位でのすき間量が外輪部材の弾性変形による拡径を吸収可能とするすき間量を径方向に量増した量増しすき間ばめ部としたことにより、遊星ローラからねじ係合部を介して外輪部材に負荷される軸方向力により外輪部材が弾性変形して拡径した場合に、その拡径部を量増しすき間ばめ部で吸収することができる。したがって、外輪部材の弾性変形による拡径部がシリンダ室の内径面に強く接触するのが抑制され、外輪部材は直線運動が阻害されることはなく、常に円滑に直線運動させることができる。
この発明に係る電動式直動アクチュエータの実施の形態を示す縦断面図 図1の一部を拡大して示す断面図 図2のIII−III線に沿った断面図 外輪部材を摺動案内する案内部の他の例を示す断面図 外輪部材を摺動案内する案内部のさらに他の例を示す断面図 外輪部材を摺動案内する案内部のさらに他の例を示す断面図 この発明に係る電動式ブレーキ装置の実施の形態を示す縦断面図 図7の右側面図
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1乃至図3は、図7および図8に示す電動式ブレーキ装置Bに採用された電動式直動アクチュエータAを示す。
図7および図8に示す電動式ブレーキ装置においては、図示省略した車輪と一体に回転するディスクロータ10の外周囲にキャリパ11を設け、そのキャリパ11の一端部にディスクロータ10のアウタ側面の外周部と軸方向で対向する爪部12を設け、その爪部12でアウタ側ブレーキパッド13を支持している。
また、ディスクロータ10のインナ側面の外周部にインナ側ブレーキパッド14を対向配置し、そのインナ側ブレーキパッド14をキャリパ11の他側部に設けられた電動式直動アクチュエータAによりディスクロータ10に向けて移動させるようにしている。
ディスクロータ10のインナ側面の外周部にはマウント15が設けられている。マウント15は図示省略したナックルに支持されて固定の配置とされている。マウント15の両側部には対向一対のピン支持片16が設けられ、そのピン支持片16のそれぞれ端部にディスクロータ10に対して直交方向に延びるスライドピン17が設けられ、そのスライドピン17のそれぞれによってキャリパ11がスライド自在に支持されている。
また、マウント15は、図では詳細に示されていないが、アウタ側ブレーキパッド13およびインナ側ブレーキパッド14のそれぞれを回転不能(回り止め)とする状態でディスクロータ10に向けて移動可能に支持している。
図1に示すように、電動式直動アクチュエータAはハウジング20を有する。ハウジング20は、図7に示すキャリパ11に一体的に設けられて筒状をなし、その内側に設けられた円筒状のシリンダ室20aには円筒状の外輪部材21がすき間ばめの嵌めい合いをもってスライド自在に組み込まれている。
ハウジング20の一端には径方向外方に向けてベースプレート22が設けられ、そのベースプレート22の外側面およびハウジング20の一端開口がカバー23によって覆われており、上記ベースプレート22とカバー23とでギヤケースを形成している。
ベースプレート22には電動モータ24が支持され、その電動モータ24のロータ軸25の回転は、ベースプレート22とカバー23とで形成されるギヤケース内のギヤ減速機構30により減速されて出力される。
図1および図8に示すように、ギヤ減速機構30は、電動モータ24のロータ軸25に取付けられた入力ギヤ31と、その入力ギヤ31に噛合する中間ギヤ32と、その中間ギヤ32に噛合する出力ギヤ33とからなり、上記出力ギヤ33の外径は中間ギヤ32の外径より大きく、また、中間ギヤ32の外径は入力ギヤ31の外径より大径とされている。
図1に示すように、出力ギヤ33は回転軸34の一端部に支持されている。回転軸34はハウジング20の一端部内に組み込まれた軸受部材35を貫通し、その貫通部に組み込まれた複数の軸受36により回転自在に支持されて外輪部材21と同軸上の配置とされている。
ここで、軸受部材35は、ハウジング20の内径面に取り付けられた止め輪37によってギヤ減速機構30側に移動するのが防止されている。
図1および図2に示すように、回転軸34上には、その回転軸34を中心にして外輪部材21内で回転可能なキャリア40が組み込まれている。図2および図3に示すように、キャリア40は、軸方向で対向する一対のディスク41a、41bと、そのディスク41a、41bの対向間隔を一定に保持する複数の柱部材42からなる。
複数の柱部材42のそれぞれは、アウタ側ディスク41bに一体的に設けられ、その柱部材42の端面にねじ込まれたボルト43の締め付けによってインナ側ディスク41aが柱部材42に結合されている。
キャリア40は、一対のディスク41a、41bのそれぞれの内径面に組み込まれたすべり軸受44a、44bにより回転軸34を中心にして回転自在に支持され、上記回転軸34の軸端部に取付けられた止め輪45により回転軸34の軸端から抜け出るのが防止されている。
キャリア40における一対のディスク41a、41bのそれぞれには、軸方向で対向する一対の軸挿入孔46が周方向に間隔をおいて形成されている。対向一対の軸挿入孔46のそれぞれにはローラ軸47の軸端部が挿入され、それぞれのローラ軸47に対向一対の軸受48が嵌合され、その軸受48によって遊星ローラ49が回転自在に支持されている。
ここで、一対のディスク41a、41bに形成された軸挿入孔46は径方向に長い長孔とされている。ローラ軸47はその長孔の両端に当接する範囲において移動自在とされ、それぞれのローラ軸47の軸端部を包み込むようにかけ渡された径方向に弾性変形可能な弾性リング50によりローラ軸47が内向きに付勢されて、遊星ローラ49が回転軸34の外径面に押し付けられている。このため、回転軸34が回転すると、その回転軸34の外径面に対する摩擦接触によって遊星ローラ49が回転するようになっている。
遊星ローラ49の外径面には、外輪部材21に設けられた断面V字状の螺旋突条51のピッチと同一のピッチで複数の円周溝52が形成され、その円周溝52に螺旋突条51がねじ係合している。なお、円周溝52に代えて、螺旋突条51とリード角が相違してピッチが同一とされた螺旋溝を形成してもよい。
キャリア40における一対のディスク41a、41bのうち、軸受部材35側に位置するインナ側ディスク41aと遊星ローラ49の軸方向の対向部間には、遊星ローラ49側から順に、スラスト軸受53、加圧座板54および受圧座板55が組み込まれ、加圧座板54と受圧座板55は球面座56を介して接触している。また、受圧座板55とローラ軸47の嵌合面間には隙間が設けられ、その隙間の範囲内においてローラ軸47と加圧座板54は受圧座板55に対して調心自在とされている。
図1に示すように、インナ側ディスク41aと回転軸34を回転自在に支持する前述の軸受部材35との間にはバックアッププレート57とスラスト軸受58とが組み込まれ、外輪部材21から遊星ローラ49を介してキャリア40に負荷される軸方向の反力を上記スラスト軸受58で支持するようになっている。
外輪部材21のアウタ側端部内には押圧部材59が嵌合されている。押圧部材59の先端面には回り止め溝60が形成され、その回り止め溝60と図7に示すインナ側ブレーキパッド14のパッドホルダ18に設けられた回り止め突起19の係合によって外輪部材21はインナ側ブレーキパッド14に対して回り止めされている。
ハウジング20と外輪部材21のアウタ側端部間にはブーツ61が取り付けられ、そのブーツ61によってハウジング20のアウタ側の開口端と外輪部材21の先端部間が密閉されている。
上記の構成からなる電動式ブレーキ装置において、図7は、ディスクロータ10に対する制動力の解除状態を示し、一対のブレーキパッド13、14はディスクロータ10に対して離反している。
上記のような制動力の解除状態において、図1に示す電動モータ24を駆動すると、その電動モータ24のロータ軸25の回転がギヤ減速機構30により減速されて回転軸34に伝達され、回転軸34が制動方向に回転する。
回転軸34の外径面には、複数の遊星ローラ49のそれぞれ外径面が弾性接触しているため、上記回転軸34の回転により遊星ローラ49が回転軸34との接触摩擦により、自転しつつ公転する。
このとき、遊星ローラ49の外径面に形成された円周溝52は外輪部材21の内径面に設けられた螺旋突条51にねじ係合しているため、その円周溝52と螺旋突条51のねじ係合によって外輪部材21が軸方向に移動し、その外輪部材21に当接されたインナ側ブレーキパッド14がディスクロータ10に当接して、そのディスクロータ10を軸方向に押圧し始める。その押圧力の反力により爪部12に支持されたアウタ側ブレーキパッド13がディスクロータ10に接近する方向に向けてキャリパ11が移動し、アウタ側ブレーキパッド13がディスクロータ10に当接して、そのアウタ側ブレーキパッド13がインナ側ブレーキパッド14とでディスクロータ10の外周部を軸方向両側から強く挟持し、ディスクロータ10に制動力が負荷される。
上記のような制動力の付与時、制動力が大きくなるにつれて遊星ローラ49から外輪部材21に負荷される軸方向荷重が次第に大きくなる。
このとき、外輪部材21に負荷される軸方向荷重は、外輪部材21の内径面に設けられた断面V字形の螺旋突条51と遊星ローラ49の外径面に形成された断面V字形の螺旋溝または円周溝52のテーパ面からなるねじ係合部に作用し、その軸方向荷重の一部は径方向の分力となって外輪部材21を径方向外方に向けて押圧する。その押圧により外輪部材21が径方向外方に向けて弾性変形して拡径し、ハウジング20におけるシリンダ室20aの内径面と外輪部材21の外径面間のすき間ばめによるスライド案内すき間のすき間量を減少させる。
ここで、上記スライド案内すき間のすき間量が数十μm程度の標準的な大きさであると、外輪部材21の拡径部がシリンダ室20aの内径面に弾性接触して負のスライド案内すき間を形成し、外輪部材21の直線運動を阻害する。
上記のような不都合の発生を防止するため、実施の形態においては、図2に示すように、シリンダ室20aに対する外輪部材21のすき間ばめによる嵌め合いを、軸方向の全体にわたって外輪部材21の弾性変形による拡径を吸収可能とするすき間量を径方向に量増した量増しすき間ばめ部gとしている。具体的には、量増しすき間ばめ部gにおけるすき間量を標準的な大きさの数倍程度としている。
上記のように、ハウジング20におけるシリンダ室20aの内径面と外輪部材21の外径面間に形成された量増しすき間ばめ部gを設けることによって外輪部材21が弾性変形して拡径した場合に、その拡径部を量増しすき間ばめ部gで吸収することができる。
したがって、外輪部材21の弾性変形による拡径部がシリンダ室20aの内径面に強く接触するのが抑制され、外輪部材21は直線運動が阻害されることはなく、常に円滑に直線運動する。
図2においては、ハウジング20におけるシリンダ室20aの内径面と外輪部材21の外径面間におけるすき間ばめ部の軸方向の全体にわたって量増しすき間ばめ部gとしているが、これに限定されるものではない。
図4においては、遊星ローラ49と対応する部位のすき間ばめ部g1を量増しすき間ばめ部とし、他の残りの部位におけるすき間ばめ部g2を標準的な大きさの標準スライド案内すき間部としている。なお、量増しすき間ばめ部g1は、ハウジング20の内周面のうち遊星ローラ49と対応する部位に溝を設けることで形成している。
ここで、ディスクロータ10(図7参照)の制動時、ディスクロータ10との接触によってブレーキパッド14に連れ回り力が負荷され、そのブレーキパッド14を介して外輪部材21に接線力が負荷される。その接線力の負荷により外輪部材21がスキューし、外輪部材21の拡径部がシリンダ室20aの内径面に強く接触する状態で摺動して、外輪部材21の直線運動を阻害し、ときには接触部で摩耗や焼き付きを生じさせることになる。
また、外輪部材21がスキューすると、遊星ローラ49の外径面に形成された螺旋溝または円周溝52と外輪部材21の内径面に設けられた螺旋突条51のねじ係合で負担する荷重に差が生じ、ねじ係合部の耐久性を低下させることになる。
図4に示すように、遊星ローラ49と対応する部位のすき間ばめ部g1のみを量増しすき間ばめ部とすることにより、この量増しすき間ばめ部g1は外輪部材21のスライド領域内とされる。なお、外輪部材21のスライド領域内とは、外輪部材21の先端が、図4に示すように、ハウジング20の開口端から少し外部に突出する待機位置から図7に示すように、ブレーキパッド14が摩耗してパッドホルダ18がディスクロータ10に接触する位置まで移動した移動範囲をいう。
このように、量増しすき間ばめ部g1を外輪部材21のスライド領域内とすることで、シリンダ室20aの量増しすき間ばめ部g1の軸方向両側部における内径面で外輪部材21の外径面を確実に摺動案内することができる。
その結果、外輪部材21のスキューを効果的に抑制することができ、外輪部材21の円滑な直線運動が阻害されるのを防止し、同時に、ねじ係合部が損傷するのを防止することができる。
また、外輪部材21が外方に大きく直線移動した場合でも、そのスライド方向の後端部外周が量増しすき間ばめ部g1に対向して嵌まり込むことがないため、ディスクロータ10から外輪部材21に負荷された接線力によって外輪部材21に抉れが生じるのを防止することができる。
なお、ハウジング20の内径面において、ハウジング20の開口端から遊星ローラ49のアウタ側端面に至る範囲を除く他の部位を量増しすき間ばめ部としてもよい。この場合においても、ハウジング20の開口端部の内周で外輪部材21を摺動案内することができるため、外輪部材21のスキュー防止に効果を挙げることができる。
図4においては、ハウジング20の開口端部における内周に、量増しすき間ばめ部g1と間隔をおいてリング溝27を形成し、そのリング溝27に弾性を有するシールリング28を組み込み、そのシールリング28の内径面を外輪部材21の外径面に弾性接触させている。
上記のように、シールリング28を設けることで、外輪部材21の摺動案内面を潤滑する潤滑油脂の外部への漏洩を防止することができる。ここで、図5に示すように、リング溝27の形成位置を量増しすき間ばめ部g1とすることにより、量増しすき間ばめ部g1の軸方向長さを短縮することができ、量増しすき間ばめ部g1の形成を容易とすることができる。
図6においては、ハウジング20の内径面において、遊星ローラ49と対応する部位に、その遊星ローラ49の軸方向長さに相当する幅とされた環状溝29を設け、その環状溝29内にシールリング28を組み込んで、そのシールリング28の内径面を外輪部材21の外径面に弾性接触させるようにしている。
図6に示す場合においても、外輪部材21が拡径した際、その拡径部をシールリング28の弾性変形で吸収することができ、外輪部材21を円滑に摺動させることができる。また、シールリング28によって外輪部材21の摺動案内面を潤滑する潤滑油脂の外部への漏洩を防止することができる。
A 電動式直動アクチュエータ
B 電動式ブレーキ装置
10 ディスクロータ
20 ハウジング
20a シリンダ室
21 外輪部材
24 電動モータ
34 回転軸
40 キャリア
49 遊星ローラ
51 螺旋突条
52 円周溝

Claims (5)

  1. ハウジング(20)に形成された円筒状のシリンダ室(20a)内に円筒状の外輪部材(21)をすき間ばめの嵌め合いをもってスライド自在に組込み、その外輪部材(21)の軸心上に電動モータ(24)によって回転駆動される回転軸(34)を設け、その回転軸(34)の外径面と前記外輪部材(21)の内径面間に組み込まれた遊星ローラ(49)を前記回転軸(34)を中心にして回転自在に支持されたキャリア(40)によって回転自在に支持し、その遊星ローラ(49)の外径面には前記外輪部材(21)の内径面に設けられた螺旋突条(51)に噛合する螺旋溝または円周溝(52)を形成し、前記回転軸(34)の回転により、その回転軸(34)との摩擦接触により遊星ローラ(49)を自転および公転させて前記外輪部材(21)を軸方向に直線移動させるようにした電動式直動アクチュエータにおいて、
    前記シリンダ室(20a)に対する外輪部材(21)のすき間ばめ部を、少なくとも前記遊星ローラ(49)と対応する部位でのすき間量が前記外輪部材(21)の弾性変形による拡径を吸収可能とするすき間量を径方向に量増した量増しすき間ばめ部としたことを特徴とする電動式直動アクチュエータ。
  2. 前記量増しすき間ばめ部の軸方向位置を、前記ハウジング(20)の開口端から遊星ローラ(49)のアウタ側端面までの範囲を除く他の部位とした請求項1に記載の電動式直動アクチュエータ。
  3. 前記量増しすき間ばめ部の軸方向位置を、前記外輪部材(21)のスライド領域内とした請求項1又は2に記載の電動式直動アクチュエータ。
  4. 前記量増しすき間ばめ部内に、前記外輪部材(21)の外径面に弾性接触して外輪部材(21)の摺動部を潤滑する潤滑油脂の外部への漏洩を防止するシールリング(28)を装着した請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電動式直動アクチュエータ。
  5. 電動式直動アクチュエータ(A)によりブレーキパッド(14)を直線駆動し、そのブレーキパッド(14)でディスクロータ(10)を押圧して、そのディスクロータ(10)に制動力を付与するようにした電動式ブレーキ装置において、
    前記電動式直動アクチュエータ(A)が請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電動式直動アクチュエータからなることを特徴とする電動式ブレーキ装置。
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